(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128889
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ガス冷却装置、及び、ガスの冷却方法
(51)【国際特許分類】
C10B 27/06 20060101AFI20230907BHJP
F28F 25/02 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
C10B27/06 Z
F28F25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033552
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】石川 翔太
(72)【発明者】
【氏名】石川 真也
(57)【要約】
【課題】熱交換器の設置スペースが低減されるとともに、ポンプの導入コスト及び動力コストを低減することが可能なガス冷却装置を提供すること。
【解決手段】ガスと液体とを向流接触させてガスを冷却するガス冷却装置100であって、底部に液溜まり部52を有する冷却塔50と、液溜まり部52から液体45を導出し、液溜まり部52よりも冷却塔50の上部に設けられた第1導入口11から液体を導入する第1流路10と、液溜まり部52に設けられ液体45を冷却する熱交換器20と、熱交換器20に冷媒を供給する第2流路22と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスと液体とを向流接触させて前記ガスを冷却するガス冷却装置であって、
底部に液溜まり部を有する冷却塔と、
前記液溜まり部から前記液体を導出し、当該液溜まり部よりも前記冷却塔の上部に設けられた第1導入口から前記液体を導入する第1流路と、
前記液溜まり部に設けられ前記液体を冷却する熱交換器と、
前記熱交換器に冷媒を供給する第2流路と、を備える、ガス冷却装置。
【請求項2】
前記冷却塔は前記液溜まり部に溢流堰を有し、前記熱交換器は前記溢流堰によって滞留する前記液体内に浸漬される、請求項1に記載のガス冷却装置。
【請求項3】
前記液溜まり部と前記第1導入口との間に設けられたチムニートレイで回収した前記液体を前記冷却塔から導出し、前記液溜まり部に導入する第3流路を備え、
前記第3流路は、前記熱交換器よりも下方に設けられた第2導入口から前記液溜まり部に前記液体を導入する、請求項1又は2に記載のガス冷却装置。
【請求項4】
前記第3流路は、前記チムニートレイで回収した前記液体をヘッド圧のみで前記第2導入口から前記液溜まり部に導入する、請求項3に記載のガス冷却装置。
【請求項5】
前記第3流路は流量調節弁を有し、当該流量調節弁で前記第3流路を流通する前記液体の流量を調節することによって前記チムニートレイにおける液位を所定の範囲に制御する、請求項3又は4に記載のガス冷却装置。
【請求項6】
前記第1流路はポンプを有し、前記第3流路は流量調節弁を有し、
当該流量調節弁で前記第3流路を流通する前記液体の流量を調節することによって前記液溜まり部の液位を所定の範囲に制御する、請求項3~5のいずれか一項に記載のガス冷却装置。
【請求項7】
前記冷却塔に導入される前記ガスはコークス炉ガスを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のガス冷却装置。
【請求項8】
前記液溜まり部の少なくとも一部は、前記冷却塔の前記液溜まり部以外の部分よりも水平方向に拡張されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のガス冷却装置。
【請求項9】
冷却塔を用いてガスと液体とを向流接触させるガスの冷却方法であって、
前記冷却塔の底部の液溜まり部に設けられ、前記冷却塔の外部から冷媒が供給される熱交換器によって前記液体を冷却する工程と、
前記熱交換器で冷却された前記液体を前記液溜まり部から導出し、当該液溜まり部よりも前記冷却塔の上部に設けられた第1導入口から前記液体を導入することによって前記液体を循環する工程と、を有する、ガスの冷却方法。
【請求項10】
前記冷却塔の前記液溜まり部と前記第1導入口との間に設けられたチムニートレイで回収される前記液体を前記冷却塔から導出し、前記冷却塔の前記液溜まり部に導入する工程を有する、請求項9に記載のガスの冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、ガス冷却装置、及び、ガスの冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉ガス、及び種々のガスを冷却するため、冷却塔が用いられている。ダイレクトクーラーとも称される冷却塔では、冷却塔の下部からコークス炉ガスを導入し、冷却塔の上部から冷却水を散水してガスと冷却水とを直接接触させている。例えば、特許文献1では、コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスと循環冷却水とを接触させる冷却塔を備える冷却装置が開示されている。この冷却塔の底部の集水部で集水された冷却水は冷却塔の外部に導出された後、ポンプによって冷却塔の外部に設けられた冷却器に導入され熱交換して冷却される。このようにして冷却された冷却水は冷却塔において循環使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却塔の外部に冷却器等の熱交換器を設けると、そのための設置スペースを確保することが必要となる。また、そのような熱交換器の内部を冷却水が流通する際には圧力損失が生じるため、ポンプの吐出圧を大きくする必要がある。本開示では、熱交換器の設置スペースが低減されるとともに、ポンプの導入コスト及び動力コストを低減することが可能なガス冷却装置及びガスの冷却方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、ガスと液体とを向流接触させて当該ガスを冷却するガス冷却装置であって、底部に液溜まり部を有する冷却塔と、液溜まり部から上記液体を導出し、当該液溜まり部よりも冷却塔の上部に設けられた第1導入口から液体を導入する第1流路と、液溜まり部に設けられ液体を冷却する熱交換器と、熱交換器に冷媒を供給する第2流路と、を備える、ガス冷却装置を提供する。
【0006】
上記ガス冷却装置は、冷却塔の底部の液溜まり部に熱交換器を備える。このため、冷却塔の外部に熱交換器を設置する場合に比べて、熱交換器の設置スペースを低減することができる。また、第2流路によって冷媒が供給される熱交換器は、液溜まり部に設けられる。このため、第1流路に熱交換器を設けなくても、ガスと向流接触する液体を冷却することができる。したがって、液体が第1流路を流通するために必要なポンプの能力を下げても十分に運転することが可能となり、ポンプの導入コスト及び動力コストを低減することができる。
【0007】
上記ガス冷却装置の冷却塔は液溜まり部に溢流堰を有し、熱交換器は溢流堰によって滞留する液体内に浸漬されてよい。これによって、液溜まり部において、熱交換器と液体とを十分に接触させることができる。したがって、熱交換器との熱交換によって液体を効率よく冷却することができる。
【0008】
上記ガス冷却装置のいずれかは、液溜まり部と第1導入口との間に設けられたチムニートレイで回収した液体を冷却塔から導出し、液溜まり部に導入する第3流路を備え、第3流路は、熱交換器よりも下方に設けられた第2導入口から液溜まり部に液体を導入してもよい。これによって、チムニートレイをオーバーフローして熱交換器と十分に接触せずに液溜まり部から導出される液体の量を低減することができる。したがって、ガスと接触して温度が高くなった液体と熱交換器とを十分に接触させることが可能となり、液体を効率よく冷却することができる。
【0009】
上記ガス冷却装置のいずれかにおいて、第3流路は、チムニートレイで回収した前記液体をヘッド圧のみで第2導入口から液溜まり部に導入してもよい。これによって、ポンプ等を設置することが不要となり、設備コスト及び動力コストを一層低減することができる。
【0010】
上記ガス冷却装置のいずれかにおいて、第3流路は流量調節弁を有し、当該流量調節弁で第3流路を流通する液体の流量を調節することによってチムニートレイにおける液位を所定の範囲に制御してもよい。これによって、チムニートレイのオーバーフローを抑制し、熱交換器と接触する液体の量を十分に多くすることができる。したがって、熱交換器によって液体を効率よく冷却することができる。
【0011】
上記ガス冷却装置のいずれかにおいて、第1流路はポンプを有し、第3流路は流量調節弁を有し、当該流量調節弁で第3流路を流通する液体の流量を調節することによって液溜まり部の液位を所定の範囲に制御してもよい。これによって、装置の立ち上げの際又は運転変動の際にも、液溜まり部の液位を確保することが可能となり、第1流路におけるポンプのキャビテーション及び空転等を十分に抑制することができる。
【0012】
上記ガス冷却装置のいずれかにおいて、冷却塔に導入されるガスはコークス炉ガスを含んでよい。コークス炉ガスの冷却装置は通常大型であり、その処理量は例えば10万Nm3/h程度である。このように冷却装置が大型であることから、設置スペースの低減効果、並びにポンプの導入コスト及び動力コストの低減効果をより一層大きくすることができる。
【0013】
上記ガス冷却装置のいずれかにおいて、液溜まり部の少なくとも一部は、冷却塔の液溜まり部以外の部分よりも水平方向に拡張されていてもよい。これによって、熱交換器の大型化が可能になるとともに、熱交換器の設置作業及びメンテナンスを円滑に行うことができる。
【0014】
本開示は、冷却塔を用いてガスと液体とを向流接触させるガスの冷却方法であって、冷却塔の底部の液溜まり部に設けられ、冷却塔の外部から冷媒が供給される熱交換器によって液体を冷却する工程と、熱交換器で冷却された液体を液溜まり部から導出し、冷却塔の当該液溜まり部よりも冷却塔の上部に設けられた第1導入口から液体を導入することによって液体を循環する工程と、を有する、ガスの冷却方法を提供する。
【0015】
上記ガスの冷却方法は、冷却塔の底部の液溜まり部に設けられた熱交換器を用いてガスと接触する液体を冷却する。このため、冷却塔の外部に熱交換器を設置する場合に比べて、熱交換器の設置スペースを低減することができる。また、第1流路に熱交換器を設けなくても、ガスと向流接触する液体を冷却することができる。したがって、液体が第1流路を流通するために必要なポンプの能力を下げても十分に運転することが可能となり、ポンプの導入コスト及び動力コストを低減することができる。
【0016】
上記ガスの冷却方法は、冷却塔の液溜まり部と第1導入口との間に設けられたチムニートレイで回収される液体を冷却塔から導出し、冷却塔の液溜まり部に導入する工程を有してもよい。これによって、熱交換器と十分に接触せずに液溜まり部から導出される液体の量を低減することができる。したがって、ガスと接触して温度が高くなった液体と熱交換器とを十分に接触させることが可能となり、冷媒との熱交換によって液体を効率よく冷却することができる。
【発明の効果】
【0017】
熱交換器の設置スペースが低減されるとともに、ポンプの導入コスト及び動力コストを低減することが可能なガス冷却装置及びガスの冷却方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態のガス冷却装置を模式的に示す図である。
【
図2】第2実施形態のガス冷却装置を模式的に示す図である。
【
図3】第3実施形態のガス冷却装置を模式的に示す図である。
【
図4】第4実施形態のガス冷却装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、場合により図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面の符号の向きを基準とする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
図1に示す第1実施形態のガス冷却装置100は、COG(コークス炉ガス)と液体45とを冷却塔50において向流接触させてCOGを冷却する。液体45は工業用水等の水であってよく、COGに由来するアンモニアを含むアンモニア水であってもよい。冷却塔50は、下部に液体が滞留する液溜まり部52を有する。液溜まり部52とは、COGと接触した液体45が一旦溜まる部分をいい、運転時に液体45で満たされる部分をいう。
【0021】
冷却塔50は、液溜まり部52に滞留する液体45を冷却塔50の外部に導出するための第1導出口15が設けられている。第1導出口15から導出された液体45は、第1流路10を流通して冷却塔50の上部に設けられた第1導入口11から冷却塔50に導入される。このように、冷却塔50と第1流路10によって、液体45の循環経路が構成されている。第1導入口11は、単なる貫通孔であってもよいし、先端にシャワー状に液体を放出する管状又は円環状のノズルを有していてもよい。
【0022】
冷却塔50の液溜まり部52には、熱交換器20が内蔵されている。熱交換器20は、液溜まり部52に滞留する液体45中に浸漬されている。熱交換器20には、冷却塔50の外部から冷媒を供給する第2流路22が接続されている。第2流路22は、冷却塔50の外部から冷却塔50の下部を貫通して熱交換器20に接続されており、熱交換器20に冷媒を導入するとともに、熱交換器20内を流通し液体45と熱交換した冷媒を冷却塔50の外部に導出する。冷媒は、例えば、工業用水及び海水等の冷却水であってもよい。また、熱交換器20と第2流路22は、冷媒を冷却する冷却器(不図示)とともに、冷媒の循環経路を構成していてもよい。これによって、冷媒を循環しながら使用することができる。
【0023】
熱交換器20としては、プレート式熱交換器、多管式熱交換器、及びチューブ型熱交換式など、種々の構造のものを用いることできる。このうち、小型化が容易であるうえに効率的に液体45を冷却する観点から、プレート式熱交換器であってよい。熱交換器20の個数は限定されず、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
【0024】
第1導入口11と液溜まり部52の間には、上方から下方に向かって、充填層56及びチムニートレイ35がこの順に設けられている。充填層56は、COGと液体との接触効率を高くするために設けられるものであり、例えば、ラシヒリング等の充填物が充填されていてよい。第1導入口11は充填層56よりも上方に設けられ、チムニートレイ35は充填層56よりも下方に設けられている。これによって、第1導入口11から導入された液体45は充填層56を通過した後、チムニートレイ35に回収される。
【0025】
COGを冷却塔50に導入する第3導入口51は、充填層56とチムニートレイ35との間に設けられている。第3導入口51から導入されるCOGは、冷却塔50内を上昇して充填層56を通過する。このとき、第1導入口11から導入される液体と向流接触して冷却される。第3導入口51から導入されるCOGの温度は、例えば50~80℃であってよい。冷却塔50内を上昇しながら液体45と接触して冷却されたCOGは、冷却塔50(充填層56)の上部に設けられた第2導出口58から外部に導出される。冷却塔50から外部に導出される際のCOGの温度は、例えば35~50℃であってよい。
【0026】
冷却塔50内でガスと接触した液体は、充填層56の下方に設けられるチムニートレイ35で回収される。ガス冷却装置100は、チムニートレイ35で回収された液体45を、冷却塔50から導出し、液溜まり部52に導入する第3流路30を備える。第3流路30は、チムニートレイ35よりも上方に設けられた第3導出口38から液体45を導出し、液溜まり部52に設けられた第2導入口32から液体45を導入する。第3導出口38からの液体45の導出、第3流路30の流通、及び第2導入口32からの液体45の導入は、液体45のヘッド圧のみで行ってよい。これによって、設備コスト及び動力コストを低減することができる。
【0027】
液溜まり部52は、溢流堰54によって、互いに液位が異なる第1液溜まり部52Aと第2液溜まり部52Bの2つに区画されている。上流側にある第1液溜まり部52Aは溢流堰54によって液体が滞留するようになっている。このため、第1液溜まり部52Aの方が、下流側にある第2液溜まり部52Bよりも液体45の液位が高くなっている。第3流路30を流通した液体45が導入される第2導入口32は第1液溜まり部52Aに設けられている。これによって、冷却塔50内における液体45の量が変動しても、熱交換器20を第1液溜まり部52Aに滞留する液体45中に十分に浸漬することができる。これによって、ガスと接触することによって温度が上昇した液体45と熱交換器20とを十分に接触させることができる。
【0028】
溢流堰54は、平板状の部材で構成され、上端から液体45が溢流する構成であってよい。ただし、このような形状に限定されず、例えば、液体45が流通可能な貫通孔を有する板状部材であってもよい。この場合、貫通孔から液体45が溢流する。貫通孔の位置によって、第1液溜まり部52Aの液位を調節することができる。
【0029】
チムニートレイ35で回収された液体を導入する第2導入口32は、熱交換器20よりも下方に設けられている。熱交換器20よりも下方から導入された液体45は、溢流堰54の上端に向かって流通する。このため、熱交換器20と第2導入口32から導入された液体45とが十分に接触する。したがって、循環使用される液体45を十分に冷却することができる。第2導入口32から導入される液体と熱交換器20との接触効率を一層高くする観点から、液溜まり部52を平面視したときに、第2導入口32と溢流堰54の中央部と間に熱交換器20が配置されるようにしてもよい。
【0030】
第1液溜まり部52Aで熱交換器20と接触して十分に冷却された液体45は、溢流堰54の上端を超えて第2液溜まり部52Bへ溢流する。第2液溜まり部52Bには液体45を第1流路10に導出するための第1導出口15が設けられている。第2液溜まり部52Bに溢流した液体45は第1導出口15から導出され第1流路10を流通して、充填層56よりも上方に設けられた第1導入口11から冷却塔50の内部に導入される。
【0031】
第1流路10は、配管14と、液体45を吸引及び吐出するポンプ12と、を備える。ガス冷却装置100では、冷却塔50に内蔵された熱交換器20を用いて液体45を冷却できるため、第1流路10は熱交換器を備えていなくてよい。これによって、熱交換器の設置スペースが不要となり、ガス冷却装置100全体の設置スペースを低減することができる。また、ポンプ12の能力を削減することができる。したがって、設備コスト及び動力コストを低減することができる。
【0032】
図2に示す第2実施形態のガス冷却装置102では、冷却塔50Aが下部に水平方向(径方向)に拡がる拡張部57を備える。拡張部57は、冷却塔50Aの他の部分よりも水平方向に拡張されている。冷却塔50Aにおいて、液溜まり部52は、拡張部57に含まれている。このため、液溜まり部52の体積が、
図1の冷却塔50よりも大きくなっている。したがって、液溜まり部52に配置される熱交換器20を大型化して、液体45の冷却をより円滑に行うことができる。また、熱交換器20の設置作業及びメンテナンス作業を円滑にすることができる。
【0033】
拡張部57のサイズ及び位置は特に限定されない。例えば、
図2では液溜まり部52を含む部分が拡張部57となっているが、液溜まり部52の一部が拡張されるような構造であってもよい。ガス冷却装置102は、冷却塔50Aが拡張部57を備えること以外は、第1実施形態のガス冷却装置100と同様の構成を有する。したがって、第1実施形態のガス冷却装置100の説明内容を適用することができる。
【0034】
図3に示す第3実施形態のガス冷却装置103では、チムニートレイ35上に滞留する液体45の液位を検知する液位検知部37と、第3流路30を流通する液体45の流量を調節する流量調節弁34と、を備える。流量調節弁34で液体45の流量を調節することによって、チムニートレイ35上に滞留する液体45の液位を所定の範囲に制御してもよい。これによって、液体45がチムニートレイ35をオーバーフローして、液溜まり部52に流下することを抑制し、第3流路30を経由して液溜まり部52に導入される液体の量を十分に多くすることができる。したがって、熱交換器20によって液体を効率よく冷却することができる。チムニートレイ35上に滞留する液体45の液位の制御は、例えばPID制御によって行ってもよい。
【0035】
ガス冷却装置103は、液位検知部37及び流量調節弁34を備えること以外は、第1実施形態のガス冷却装置100と同様の構成を有する。したがって、第1実施形態のガス冷却装置100の説明内容を適用することができる。
【0036】
図4に示す第4実施形態のガス冷却装置104では、第2液溜まり部52Bに滞留する液体45の液位を検知する液位検知部36と、第3流路30を流通する液体45の流量を調節する流量調節弁34と、を備える。流量調節弁34で液体45の流量を調節することによって、第2液溜まり部52Bに滞留する液体45の液位を所定の範囲に制御する。これによって、例えば、第1流路10に備えられるポンプ12のキャビテーション及び空転の発生を十分に抑制することができる。特に、ガス冷却装置104の運転を開始する際、又は運転変動の際に冷却塔50の液量が変動する場合があるため、このようなときに第2液溜まり部52Bに滞留する液体45の液位が所定の範囲になるように流量調節弁34で液体45の流量を調節することが有効である。第2液溜まり部52Bに滞留する液体45の液位の制御は、例えばPID制御によって行ってもよい。
【0037】
ガス冷却装置104は、液位検知部36及び流量調節弁34を備えること以外は、第1実施形態のガス冷却装置100と同様の構成を有する。したがって、第1実施形態のガス冷却装置100の説明内容を適用することができる。
【0038】
ガス冷却装置の幾つかの実施形態を説明したが、本開示のガス冷却装置は上記実施形態に限定されない。例えば、変形例では、各実施形態の構成を兼ね備えていてもよい。すなわち、第3実施形態及び第4実施形態の変形例では、冷却塔50の代わりに、第2実施形態の拡張部57を有する冷却塔50Aを備えていてもよい。第3実施形態の変形例では、液位検知部37とともに、第4実施形態の液位検知部36を備えていてもよい。この場合、例えば、運転開始時又は運転変動時は、第2液溜まり部52Bの液位を検知する液位検知部36の検知信号に基づいて流量調節弁34の流量を調節し、定常運転時はチムニートレイ35上に滞留する液体45の液位を検知する液位検知部37に基づいて流量調節弁34の流量を調節するようにしてもよい。
【0039】
上記各実施形態ではCOGを冷却しているが、冷却するガスはCOGに限定されず、COGを含むガスであってよく、COGを含まないガスであってもよい。そのようなガスとしては、ボイラの排ガス、高炉ガス、その他のプラントで発生する排ガス等が挙げられる。なお、通常COGの冷却設備は大型であることから、COGの冷却設備が上記各実施形態又はその変形例のガス冷却装置を備えることによって、設置スペースの低減効果、並びにポンプの導入コスト及び動力コストの低減効果を、より一層大きくすることができる。
【0040】
上述の実施形態では、いずれも液体45を循環して使用している。各ガス冷却装置は、循環する液体45の量の増減に応じて、液体45を補給するための補給部、及び/又は、液体45を排出するための排出部を有していてもよい。例えば、水分濃度が飽和しているCOGを冷却すると液体45の量が増加するため、排出部で液体45を排出して液体45の量を調整してもよい。また、冷却塔50,50Aは、例えば円柱形状を有しているが、この形状も特に限定されない。第2導入口32及び第1導出口15を冷却塔50,50Aの側面に設けることは必須ではなく、冷却塔50,50Aの底面に設けてもよい。冷却塔50,50A内で液体を回収するのはチムニートレイ35に限定されない。冷却塔の内部を流下する液体45の少なくとも一部を回収することが可能なものであればよい。
【0041】
各実施形態の変形例では、液溜まり部52に溢流堰54を設けなくてもよい。また、液溜まり部52に2つ以上の溢流堰54を並べ、液溜まり部52を3つ以上に区画してもよい。この場合、各液溜まり部52に熱交換器20を設けてもよい。
【0042】
一実施形態に係るガスの冷却方法は、冷却塔を用いてガスと液体とを向流接触させるガスの冷却方法であって、冷却塔の底部の液溜まり部に設けられ、冷却塔の外部から冷媒が供給される熱交換器によって液体を冷却する冷却工程と、熱交換器で冷却された液体を液溜まり部から導出し、当該液溜まり部よりも冷却塔の上部に設けられた第1導入口から液体を導入することによって液体を循環する循環工程と、を有する。
【0043】
上記方法は、冷却塔の液溜まり部と第1導入口との間に設けられたチムニートレイで回収される液体を冷却塔から導出し、冷却塔の液溜まり部に導入する導入工程を有していてもよい。
【0044】
上述のガスの冷却方法は、上述のガス冷却装置100,102,103,104及びこれらの変形例のいずれかを用いて行ってもよい。したがって、上述のガス冷却装置の説明内容は、本実施形態のガスの冷却方法にも適用される。
【0045】
例えば、ガス冷却装置100,102,103,104のいずれかを用いるガスの冷却方法では、冷却工程は、複数に区画される液溜まり部52のうち、上流側に配置される第1液溜まり部52Aで行ってよい。冷却工程の後、冷却工程で冷却された液体45が、溢流堰54を溢流して第2液溜まり部52Bに溢流する流出工程を有していてもよい。流出工程の後、第2液溜まり部52Bに設けられた第1導出口15から液体を導出する循環工程を行ってよい。
【0046】
例えば、ガス冷却装置103を用いてガスの冷却方法を行う場合、チムニートレイ35上に滞留する液体45の液位を検知する第1検知工程と、当該液位に基づいて第3流路30を流通する液体45の流量を調節する流量調節工程とを行ってもよい。これによって、液体45がチムニートレイ35をオーバーフローして、液溜まり部52に流下することを抑制し、第3流路30を経由して液溜まり部52に導入される液体の量を十分に多くすることができる。したがって、熱交換器20によって液体45を効率よく冷却することができる。
【0047】
例えば、ガス冷却装置104を用いてガスの冷却方法を行う場合、第2液溜まり部52Bに滞留する液体45の液位を検知する第2検知工程と、当該液位に基づいて第3流路30を流通する液体45の流量を調節する流量調節工程とを行ってもよい。これによって、例えば、第1流路10に備えられるポンプ12のキャビテーション及び空転の発生を十分に抑制することができる。
【0048】
上述のガスの冷却方法は、いずれも、冷却塔50,50Aの底部の液溜まり部52(第1液溜まり部52A)に設けられた熱交換器20を用いてガスと接触する液体45を冷却する。このため、冷却塔50,50Aの外部に熱交換器を設置する場合に比べて、設置スペースを低減することができる。また、第1流路10に熱交換器を設けなくても、ガスと向流接触する液体45を冷却することができる。したがって、液体45が第1流路10を流通するために必要なポンプの能力を下げても十分に運転することが可能となり、ポンプの導入コスト及び動力コストを低減することができる。
【0049】
本実施形態のガスの冷却方法は、上述のガス冷却装置100,102,103,104及びこれらの変形例とは異なるガス冷却装置を用いて行ってもよい。
【0050】
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上述の各実施形態では、冷却塔50に一つの充填層56が設けられていたが、充填層56はなくてもよいし、2つ以上の充填層が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示によれば、熱交換器の設置スペースが低減されるとともに、ポンプの導入コスト及び動力コストを低減することが可能なガス冷却装置及びガスの冷却方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
10…第1流路、11…第1導入口、12…ポンプ、14…配管、15…第1導出口、20…熱交換器、22…第2流路、30…第3流路、32…第2導入口、34…流量調節弁、35…チムニートレイ、36,37…液位検知部、38…第3導出口、45…液体、50,50A…冷却塔、51…第3導入口、52…液溜まり部、52A…第1液溜まり部、52B…第2液溜まり部、54…溢流堰、56…充填層、57…拡張部、58…第2導出口、100,102,103,104…ガス冷却装置。