IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宇部エクシモ株式会社の特許一覧

特開2023-128890中空無機粒子、該中空無機粒子を含む樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた半導体用パッケージ、および前記中空無機粒子の製造方法
<>
  • 特開-中空無機粒子、該中空無機粒子を含む樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた半導体用パッケージ、および前記中空無機粒子の製造方法 図1
  • 特開-中空無機粒子、該中空無機粒子を含む樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた半導体用パッケージ、および前記中空無機粒子の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128890
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】中空無機粒子、該中空無機粒子を含む樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた半導体用パッケージ、および前記中空無機粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20230907BHJP
   B01J 13/20 20060101ALI20230907BHJP
   B01J 13/04 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
B01J13/20
B01J13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033556
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】中野 達也
(72)【発明者】
【氏名】三好 英範
(72)【発明者】
【氏名】小池 匡
【テーマコード(参考)】
4G005
4G072
【Fターム(参考)】
4G005AA04
4G005AB01
4G005BA12
4G005BB06
4G005BB24
4G005DA05Z
4G005DA13W
4G005DC15W
4G005DC42W
4G005DC58Y
4G005DD07X
4G005DD13X
4G005EA03
4G005EA06
4G005EA09
4G072AA01
4G072BB07
4G072BB16
4G072DD04
4G072DD05
4G072DD06
4G072HH28
4G072HH30
4G072JJ23
4G072JJ38
4G072JJ47
4G072KK13
4G072LL06
4G072LL11
4G072MM01
4G072MM03
4G072MM23
4G072MM31
4G072MM36
4G072RR12
4G072TT01
4G072TT06
4G072UU01
4G072UU07
(57)【要約】
【課題】樹脂の機械的特性および電気的特性を補うことができ、かつ、一定以上の吸水性能を付与することができる中空無機粒子を提供すること。
【解決手段】粒子内部に空間を一つ有する球状中空粒子であって、窒素ガスを用いてガス吸着法により測定した比表面積が50m/g以下であり、吸水率が0.2~20%である、中空無機粒子を提供する。本技術の中空無機粒子は、コアとなる粒子を、ケイ素化合物を用いて被覆する被覆工程と、前記コアとなる粒子を除去するコア粒子除去工程と、前記コア粒子除去工程後の中空無機粒子をアルカリ性溶液中で加熱するアルカリ加熱工程と、を行うことで製造することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子内部に空間を一つ有する球状中空粒子であって、
窒素ガスを用いてガス吸着法により測定した比表面積が50m/g以下であり、
吸水率が0.2~20%である、中空無機粒子。
【請求項2】
平均粒子外径が0.05~5μmである、請求項1に記載の中空無機粒子。
【請求項3】
粒子内径/粒子外径が0.55~0.93である、請求項1又は2に記載の中空無機粒子。
【請求項4】
下記の一般式(1)で表されるケイ素化合物を原料とする無機粒子である、請求項1から3のいずれかに記載の中空無機粒子。
[化1]

(式中、Rは非加水分解性基であって、炭素数1~20のアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基または炭素数7~20のアラルキル基、Rは炭素数1~6のアルキル基、nは0~3の整数を示し、Rが複数ある場合、各Rはたがいに同一であっても異なっていてもよく、ORが複数ある場合、各ORはたがいに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項5】
シランカップリング剤による表面処理が施されている、請求項1から4のいずれかに記載の中空無機粒子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の中空無機粒子を含む樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂組成物を用いた半導体用パッケージ。
【請求項8】
コアとなる粒子を、シリコーン系化合物を用いて被覆する被覆工程と、
前記コアとなる粒子を除去するコア粒子除去工程と、
前記コア粒子除去工程後の中空無機粒子をアルカリ性溶液中で加熱するアルカリ加熱工程と、
を有する、中空無機粒子の製造方法。
【請求項9】
コアとなる粒子が有機高分子からなる粒子である、請求項8に記載の中空無機粒子の製造方法。
【請求項10】
コア粒子除去工程が、200℃以上、1200℃以下で焼成する工程を含む、請求項8又は9に記載の中空無機粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空無機粒子、該中空無機粒子を含む樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた半導体用パッケージ、および前記中空無機粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空無機粒子は、フィラー、スペーサー、セラミックス原料、樹脂改良剤、吸着剤、電子材料、半導体材料、塗料、化粧料等、幅広い分野で用いられている。近年、中空無機粒子の性能の向上や各種用途に応じた特性の付与等を目的に、様々な技術が開発されつつある。
【0003】
例えば、特許文献1には、粉末X線回折測定において、面間隔(d)が1~12nmの範囲に相当する回折角(2θ)にピークを示す、粒子内部に空気を含有する中空シリカ粒子(A)、又は焼成により消失して中空部位を形成する材料を内包するコアシェル型シリカ粒子(B)を、950℃を超える温度で焼成する、中空シリカ粒子の製造方法が開示されている。この製造方法で製造された中空シリカ粒子は、平均粒子径が0.1~1μmで、粒子全体の80%以上が平均粒子径±30%以内の粒子径を有し、かつBET比表面積が30m/g未満であることを特徴とする。
【0004】
電子機器等のパッケージングにも、中空無機粒子が使用されている。電子機器等は水分を嫌い、パッケージング内の水分量を低く保つため、吸水性のある材料(水分ゲッター材)を内部に導入することがある。また、パッケージングに樹脂材料が使用される場合、その機械的特性を補う理由でシリカなどのフィラーを添加して使用されることが一般的である。
【0005】
ここで、この樹脂材料により低誘電特性や高耐電気絶縁性が求められる場合、それら電気特性を補うため、フィラーとして中空部を持つ中空無機粒子を利用することは有効であると言われている。このフィラーに対しては、パッケージングの内部に水分を持ち込まないために、より低吸水であることが必要と考えられているが、逆に吸水性を持たせることで、フィラーに水分ゲッター材としての効果も持たせることができる。
【0006】
つまり、フィラーとして使用される中空無機粒子にある一定以上の吸水性能を付与することで、樹脂の機械的特性および電気的特性を補い、更に、パッケージング内の水分量を低く保つことが可能となり、パッケージの信頼性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-203115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、樹脂材料に低誘電特性を付与するために用いる中空無機粒子は、吸水性が低いのが実情である。逆に、中空無機粒子の吸水性を高めてしまうと、これを用いた樹脂材料の誘電率は上昇してしまうといった問題があった。
【0009】
そこで、本技術では、樹脂の機械的特性および電気的特性を補うことができ、かつ、一定以上の吸水性能を付与することができる中空無機粒子を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本技術では、まず、粒子内部に空間を一つ有する球状中空粒子であって、
窒素ガスを用いてガス吸着法により測定した比表面積が50m/g以下であり、
吸水率が0.2~20%である、中空無機粒子を提供する。
本技術に係る中空無機粒子の平均粒子外径は、0.05~5μmとすることができる。
本技術に係る中空無機粒子の粒子内径/粒子外径は、0.55~0.93とすることができる。
本技術に係る中空無機粒子は、下記の一般式(1)で表されるケイ素化合物を原料とすることができる。
[化1]

(式中、Rは非加水分解性基であって、炭素数1~20のアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基または炭素数7~20のアラルキル基、Rは炭素数1~6のアルキル基、nは0~3の整数を示し、Rが複数ある場合、各Rはたがいに同一であっても異なっていてもよく、ORが複数ある場合、各ORはたがいに同一であっても異なっていてもよい。)
本技術に係る中空無機粒子は、シランカップリング剤による表面処理が施されていてもよい。
【0011】
本技術に係る中空無機粒子は、樹脂組成物に用いることができる。
該樹脂組成物は、半導体用パッケージに用いることができる。
【0012】
本技術では、次に、コアとなる粒子を、ケイ素化合物を用いて被覆する被覆工程と、
前記コアとなる粒子を除去するコア粒子除去工程と、
前記コア粒子除去工程後の中空無機粒子をアルカリ性溶液中で加熱するアルカリ加熱工程と、
を有する、中空無機粒子の製造方法を提供する。
本技術に係る製造方法で用いる前記コアとなる粒子としては、有機高分子からなる粒子を用いることができる。
本技術に係る製造方法の前記コア粒子除去工程は、200℃以上、1200℃以下で焼成する工程を含むことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、樹脂の機械的特性および電気的特性を補うことができ、かつ、一定以上の吸水性能を付与することができる中空無機粒子を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本技術に係る中空無機粒子1の断面構造の一例を示す断面イメージ図である。
図2】本技術に係る中空無機粒子1の製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0016】
<1.中空無機粒子1>
図1は、本技術に係る中空無機粒子1の断面構造の一例を示す断面イメージ図である。本発明に係る中空無機粒子1は、粒子内部に空間を一つ有する球状中空粒子である。即ち、本技術に係る中空無機粒子1は、外殻11と、中空12と、からなる。以下、本技術に係る中空無機粒子1の特徴について、詳細に説明する。
【0017】
本技術に係る中空無機粒子1の外殻11は、比表面積が50m/g以下と緻密な構造を呈しており、細孔の少ない構造である。
【0018】
粒子の吸水率を高める手法として、多孔質化し、細孔に水分子を吸着させる手法が一般的であるが、中空粒子の外殻を多孔質化すると、中空粒子内部に液状物が浸透する可能性がある。内部に液状物が浸透すると、混練する対象物内に空気層を付与することができなくなり、低誘電率化、低屈折率化の効果が得られなくなる。
【0019】
一方、本技術に係る中空無機粒子1の外殻11は、細孔の少ない構造であるにも関わらず、本技術に係る中空無機粒子1は、後述する実施例に示す通り、吸水率が0.2~20%と高いことを特徴とする。このため、中空無機粒子1の内部への液状物の浸透は抑制しつつも、吸湿作用を発揮できる。その結果、吸湿作用を有する中空無機粒子1でありながら、樹脂等の他材料と混合する際に、空気層を付与することも可能で、本技術に係る中空無機粒子1を用いた各種製品に、誘電率の低下作用や屈折率の低下作用を付与することもできる。
【0020】
本技術において「比表面積」とは、窒素ガスを用いたガス吸着法により測定した値である。本技術に係る中空無機粒子1の比表面積は、50m/g以下であれば特に限定されないが、好ましくは40m/g以下であり、より好ましくは30m/g以下であり、さらに好ましくは20m/gである。比表面積が低いほど、細孔の少ない構造となる。
【0021】
本技術において「吸水率」とは、30度90%RH下に48時間静置した際の重量増加率である。本技術に係る中空無機粒子1の吸水率の下限値は、0.2%以上であれば特に限定されないが、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは2%以上である。本技術に係る中空無機粒子1の吸水率を0.2%以上とすることで、吸湿作用が高まり、本技術に係る中空無機粒子1を用いた各種製品に、誘電率の低下作用や屈折率の低下作用を付与すると共に、例えば、パッケージング内の水分量を低く保つことが可能となり、パッケージの信頼性を向上できる。
【0022】
本技術に係る中空無機粒子1の吸水率の上限値は、20%以下であれば特に限定されないが、好ましくは18%以下、より好ましくは15%以下である。本技術に係る中空無機粒子1の吸水率を20%以下とすることで、樹脂等の他材料と混合する際に、水の影響による粘度上昇、分散不良等を低減することができる。
【0023】
本技術に係る中空無機粒子1の粒子外径L1は、目的に応じて適宜設計することができる。本技術では特に、中空無機粒子1の平均粒子外径L1を、0.05~5μmとすることが好ましく、0.1~3μmとすることがより好ましく、0.5~2μmとすることが更に好ましい。
【0024】
本技術に係る中空無機粒子1の粒子外径L1を、0.05μm以上とすることで、凝集せずに一次粒子の状態で分散している粒子の割合が多くなる。また、本技術に係る中空無機粒子1の粒子外径L1を、5μm以下とすることで、樹脂等の他材料と混合する際に、粒子の充填率を高めることが可能となり、低誘電率、低屈折率等の目的とする効果を十分に発揮させることができる。
【0025】
また、本技術に係る中空無機粒子1の粒子内径L2と粒子外径L1は、目的に応じて適宜設計することができる。本技術では特に、粒子内径L2/粒子外径L1を、0.55~0.93とすることが好ましく、0.58~0.89とすることがより好ましく、0.63~0.85とすることが更に好ましい。
【0026】
本技術に係る中空無機粒子1の粒子内径L2/粒子外径L1を、0.55以上とすることで、混練する材料に十分な空気層を作ることができ、その結果、低誘電率、低屈折率等の目的とする効果を十分に発揮させることができる。また、本技術に係る中空無機粒子1の粒子内径L2/粒子外径L1を、0.93以下とすることで、外殻の厚みが薄くなることを防止し、粒子の強度を向上させることができる。
【0027】
本技術に係る中空無機粒子1のCV値(粒度分布の変動係数)は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されない。本技術では特に、中空無機粒子1のCV値は、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。
【0028】
本技術の係る中空無機粒子1のCV値が20%以下であると、平均粒子外径よりも大きな粒子の割合が少なくなり、粗大粒子の混入が嫌われる用途に適した材料となる。
【0029】
なお、本技術において、CV値は、以下の数式により算出した値である。
CV値(%)={[粒子外径の標準偏差(μm)]/[平均粒子外径(μm)]}×100
【0030】
本技術に係る中空無機粒子1の真球度は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されない。本技術では特に、中空無機粒子1の真球度は、0.8以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましい。
【0031】
本技術に係る中空無機粒子1の真球度が、0.8以上であると、樹脂等の他材料と混合する際に、粒子の流動性が高くなり、粘度の上昇を抑制することができる。
【0032】
なお、本技術において、真球度は、以下の数式により算出した値である。
真球度=[粒子外径の短径]/[粒子外径の長径]
【0033】
本技術に係る中空無機粒子1を形成する材料は特に限定されず、一般的な無機粒子に用いることができる材料で形成することができる。本技術では特に、下記の一般式(1)で表されるケイ素化合物を用いることが好ましい。
【0034】
【化1】

(式中、Rは非加水分解性基であって、炭素数1~20のアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基または炭素数7~20のアラルキル基、Rは炭素数1~6のアルキル基、nは0~3の整数を示し、Rが複数ある場合、各Rはたがいに同一であっても異なっていてもよく、ORが複数ある場合、各ORはたがいに同一であっても異なっていてもよい。)
【0035】
ここで、非加水分解性基であるRにおいて、炭素数1~20のアルキル基としては、炭素数1~10のものが好ましく、またこのアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0036】
非加水分解性基であるRにおいて、(メタ)アクリロイルオキシ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1~20のアルキル基としては、上記置換基を有する炭素数1~10のアルキル基が好ましく、またこのアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。この置換基を有するアルキル基の例としては、γ-アクリロイルオキシプロピル基、γ-メタクリロイルオキシプロピル基、γ-グリシドキシプロピル基、3,4-エポキシシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0037】
非加水分解性基であるRにおいて、炭素数2~20のアルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基が好ましく、また、このアルケニル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基などが挙げられる。
【0038】
非加水分解性基であるRにおいて、炭素数6~20のアリール基としては、炭素数6~10のものが好ましく、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。炭素数7~20のアラルキル基としては、炭素数7~10のものが好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0039】
炭素数1~6のアルキル基であるRは、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0040】
前記一般式(I)で表されるケイ素化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン等が挙げられ、これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0041】
本技術に係る中空無機粒子1は、樹脂等の他材料と混合する際の流動性向上や粘度上昇抑制を目的として、その表面を樹脂やシランカップリング剤等により処理していてもよい。
【0042】
シランカップリング剤の具体例としては、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、アルキルトリエトキシシラン、アルキルトリメトキシシラン、ジアルキルジエトキシシラン、ジアルキルジメトキシシラン、アルキルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0043】
以上説明した本技術に係る中空無機粒子1の用途は特に限定されず、一般的な中空無機粒子1の様々な用途に適用することができる。本技術に係る中空無機粒子1は、特に、半導体用パッケージ用の粒子として好適に用いることができる。
【0044】
<2.中空無機粒子1の製造方法>
図2は、本技術に係る中空無機粒子1の製造方法のフロー図である。本技術に係る中空無機粒子1の製造方法は、少なくとも、被覆工程S1と、コア粒子除去工程S2と、アルカリ加熱工程S3と、を行う方法である。また、本技術では、必要に応じて、コア粒子分散液調製工程S4、乾燥工程S5を行うことも可能である。以下、各工程について、時系列に沿って、詳細に説明する。
【0045】
(1)コア粒子分散液調製工程S4
コア粒子分散液調製工程S4は、コア粒子と水とを撹拌混合して、コア粒子分散液を調製する工程である。コア粒子分散液調製工程S4では、必要に応じて、その他添加剤を加えることも可能である。
【0046】
本技術において用いることができるコア粒子としては、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な中空無機粒子の製造で用いることができるコア粒子を、自由に選択して用いることができる。例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリル酸メチル(PMA)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、フェノール樹脂(PF)、メラミン樹脂(MF)、エポキシ樹脂(EP)、ポリエステル樹脂(PEs)、ジビニルベンゼン重合体、等の有機高分子からなる粒子や、炭化水素化合物、エステル化合物、炭素数6~22の脂肪酸、炭素数6~22のアルコール等の有機化合物若しくはシリコーンオイル等の無機化合物をエマルション状にした粒子を挙げることができる。
【0047】
本技術において用いることができるコア粒子は球状であることが好ましい。また、その平均粒子外径は、目的とする中空の大きさに応じて、自由に設計することができる。本技術では特に、コア粒子の平均粒子外径を、0.04~5.8μmとすることが好ましく、0.08~3.5μmとすることがより好ましく、0.4~2.4μmとすることが更に好ましい。
【0048】
コア粒子の平均粒子外径を、0.04μm以上とすることで、凝集せずに一次粒子の状態で分散している粒子の割合が多くなる。また、コア粒子の平均粒子外径を、5.8μm以下とすることで、樹脂等の他材料と混合する際に、粒子の充填率を高めることが可能となり、低誘電率、低屈折率等の目的とする効果を十分に発揮させることができる。
【0049】
コア粒子分散液には、目的に応じて、任意の添加剤を用いることができる。コア粒子分散液で用いることができる添加剤としては、例えば、コア粒子を溶媒に分散する目的で使用される。これらの添加剤は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な添加剤を、自由に選択して用いることができる。コア粒子分散液において用いることができる添加剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫酸(PVS)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)を挙げることができる。
【0050】
また、コア粒子を合成する際に用いた溶媒、添加剤をそのまま用いても良い。特に、合成で使用される分散剤、乳化剤はコア粒子を溶媒に安定して分散させる目的から、添加してあることが望ましい。溶媒、添加剤を使用した粒子の合成方法としては、例えば、分散重合、ソープフリー重合、乳化重合、膨潤シード重合、膜乳化法、を挙げることができる。
【0051】
また、コア粒子分散液は市販の樹脂粒子分散液を使用する事ができる。分散媒には本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、自由に選択して用いることができる。例えば、水、メタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコール等のグリコール類、1-メトキシ―2-プロパノール等のグリコールエーテル類などが挙げられる。この中でも本技術では合成時の溶媒に水を用いることから、分散媒には水を選択することが望ましい。
【0052】
(2)被覆工程S1
被覆工程S1は、コア粒子を、ケイ素化合物を用いて被覆する工程である。被覆工程S1では、分散剤添加工程S11と、界面活性剤添加工程S12と、触媒添加工程S13と、ケイ素化合物添加工程S14と、を行う。
【0053】
(2-1)分散剤添加工程S11
分散剤添加工程S11は、前記コア粒子分散液調製工程S4で調製されたコア粒子分散液に、分散剤を添加する工程である。
【0054】
本技術で用いることができる分散剤は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な中空無機粒子の製造で用いることができる分散剤を、自由に選択して用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリエチレングリコール(PEG)などのノニオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫酸(PVS)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)などのアニオン性界面活性剤を挙げることができる。この中でも本技術では特に、ノニオン性界面活性剤が好ましく、さらにポリビニルアルコール(PVA)を用いることがより好ましい。ノニオン性界面活性剤を用いることで、カチオン性界面活性剤と合わせて使用しても粒子の凝集を促進しない点で好ましい。さらに、ポリビニルアルコール(PVA)に含まれる親水基はシラノール基と相互作用を示すため、より好ましい。
【0055】
分散剤添加工程S11を経た後のコア粒子分散液中の分散剤の濃度は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されないが、1g/L以上であることが好ましい。コア粒子分散液中の分散剤の濃度をこの範囲にすることで、粒子同士の合一を防ぐことができる。
【0056】
(2-2)界面活性剤添加工程S12
界面活性剤添加工程S12は、前記分散剤添加工程S11を経た後のコア粒子分散液に、カチオン性界面活性剤を添加する工程である。本技術では、カチオン性界面活性剤を用いることで、中空12が中空無機粒子の中心部に存在し、外殻11の厚みが均一な粒子を得ることができる。
【0057】
また、本技術では、前記分散剤添加工程S11を経た後に、界面活性剤添加工程S12を行うことで、粒子同士の合一を防ぐと同時に、粒子表面のカチオン性界面活性剤濃度を上昇させ、コア粒子の偏りを防止することができる。その結果、中空12が中空無機粒子の中心部に存在し、外殻11の厚みが均一な粒子を得ることができる。
【0058】
本技術で用いることができるカチオン性界面活性剤は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な中空無機粒子の製造で用いることができるカチオン性界面活性剤を、自由に選択して用いることができる。例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)等のカチオン性高分子界面活性剤、ポリビニルアミン、テトラメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミドなどのカチオン性低分子界面活性剤を挙げることができる。この中でも本技術では特に、カチオン性高分子界面活性剤であるポリエチレンイミン(PEI)、またはポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)を用いることが好ましい。カチオン性高分子界面活性剤を用いることで、粒子表面に吸着されやすくなり、よりコア粒子の偏りを防止する効果が高まる。
【0059】
界面活性剤添加工程S12を経た後のコア粒子分散液中のカチオン性界面活性剤の濃度は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されないが、0.05~5g/Lであることが好ましい。コア粒子分散液中のカチオン性界面活性剤の濃度をこの範囲にすることで、中空12が中空無機粒子の中心部に存在し、外殻11の厚みが均一な粒子を得ることができる。
【0060】
(2-3)触媒添加工程S13
触媒添加工程S13は、コア粒子分散液に、後述するケイ素化合物添加工程S14において進行する加水分解縮合反応の触媒となる物質を添加する工程である。
【0061】
触媒添加工程S13は、後述するケイ素化合物の加水分解縮合反応の前または同時であれば、その順番は特に限定されない。即ち、前記分散剤添加工程S11の前後または同時、前記界面活性剤添加工程S12の前後または同時、後述するケイ素化合物添加工程S14の前または同時のいずれに行っても良い。
【0062】
本技術で用いることができる触媒は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な中空無機粒子の製造で用いることができる触媒を、自由に選択して用いることができる。例えば、アンモニア、アミンの少なくとも一方を挙げることができる。アミンとしては、例えばモノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミンなどが挙げられる。この中でも本技術では特に、毒性が少なく、粒子から除去することが容易であり、かつ安価であるという観点から、アンモニアを用いることが好ましい。
【0063】
触媒添加工程S13における触媒の添加量は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、目的に応じて自由に設定することができる。
【0064】
(2-4)ケイ素化合物添加工程S14
ケイ素化合物添加工程S14では、前記分散剤添加工程S11、および前記界面活性剤添加工程S12を経た後のコア粒子分散液に、ケイ素化合物を添加する工程である。ケイ素化合物添加工程S14では、コア粒子の表面においてケイ素化合物の加水分解縮合反応が進行することにより、コア粒子の表面がケイ素化合物で被覆される。
【0065】
本技術で用いることができるケイ素化合物としては、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な中空無機粒子の製造で用いることができるシリコーン系化合物を、自由に選択して用いることができる。例えば、前記の一般式(1)で表されるケイ素化合物を用いることが好ましい。前記の一般式(1)で表されるケイ素化合物の詳細については、前述の通りであるため、ここでは説明を割愛する。
【0066】
ケイ素化合物添加工程S14におけるケイ素化合物の添加量は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、中空無機粒子1の外殻11を所望の厚みに調整する目的に応じて設定することができる。
【0067】
ケイ素化合物添加工程S14において、ケイ素化合物は、水、若しくはメタノール、エタノール等の低級アルコールをはじめとした有機溶媒と混合した溶液の状態でコア粒子分散液に添加してもよい。ケイ素化合物溶液の調製方法は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な溶液の調製方法を用いて調製することができる。例えば、ケイ素化合物と水とを撹拌混合して、ケイ素化合物溶液を調製することができる。
【0068】
ケイ素化合物添加工程S14において、目的に応じて、任意の添加剤をケイ素化合物の添加と同時に別途添加することができる。用いることができる添加剤としては、例えば、分散剤添加工程S11にて添加したポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン等の分散剤、界面活性剤添加工程S12にて添加したポリエチレンイミン(PEI)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)等のカチオン性界面活性剤、触媒添加工程S13にて添加したアンモニア、アミン等の触媒を挙げることができる。これらの添加剤は、ケイ素化合物に予め添加した後、ケイ素化合物添加工程S14において使用することもできる。
【0069】
ケイ素化合物のコア粒子分散液への添加方法は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な中空無機粒子の製造で用いることができる添加方法を、自由に選択して用いることができる。本技術では特に、滴下法を用いることが好ましい。滴下法を用いることで、CV値(粒度分布の変動係数)が小さく、粒径の揃った粒子を得ることができる。また、滴下法を用いることで、外殻11の厚みも揃った中空無機粒子1を得ることができ(粒子間で外殻11の厚みに差がない)、例えば、中空無機粒子1を樹脂等の他材料と混合する際に、撹拌やロールミル等で粒子に外力が加わった場合でも、破損しにくいといった効果を発揮することができる。更に、滴下法を用いることで、粒子同士の固着接着を防止することができ、粒子解砕・樹脂混練時に粒子が破壊されず、また、樹脂混練後における凝集も防止することができる。
【0070】
なお、外殻11の薄い中空無機粒子1を製造する場合は、滴下法を用いずに、一度に添加しても、外殻11が均一の厚さの中空無機粒子1を得ることができる。
【0071】
ケイ素化合物添加工程S14におけるケイ素化合物滴下の速度も、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では特に、ケイ素化合物の変性を防ぐために、ケイ素化合物の添加時間が24時間以内となるような滴下速度とすることが好ましい。
【0072】
(3)コア粒子除去工程S2
前記被覆工程S1を行った後に、コア粒子を除去する工程である。前記被覆工程S1を行うことで、コア粒子は、ケイ素化合物によって被覆された状態であるため、この状態でコア粒子を除去することで、ケイ素化合物からなる外殻11のみが残り、中空無機粒子1を製造することができる。なお、コア粒子除去工程S2を行う前に、必要に応じて、遠心分離等による固液分離や、洗浄、乾燥等を行うこともできる。
【0073】
コア粒子除去工程S2において行うコア粒子の除去方法は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な中空無機粒子の製造で用いることができる除去方法を、自由に選択して用いることができる。例えば、耐溶剤性の低いコア粒子、あるいは有機化合物若しくは無機化合物をエマルション状にしたコア粒子を用いる場合は有機溶媒によってコア粒子を除去する方法を選択することができ、加熱によって除去できるコア粒子を用いる場合は加熱や焼成によってコア粒子を除去する方法を選択することができる。本技術では特に、焼成によってコア粒子を除去することが好ましい。焼成を行うことで、コア粒子の除去と、外殻11層の緻密化を同時に行うことができる。
【0074】
焼成によってコア粒子を除去する場合の焼成条件は、本技術の効果を損なわない限り、コア粒子の材質等に応じて、自由に設定することができる。焼成温度の下限値としては、例えば、200℃以上、好ましくは300℃以上、より好ましくは400℃以上である。焼成温度を200℃以上とすることで、コア粒子の除去率を向上させることができる。
【0075】
また、焼成温度の上限値としては、例えば、1200℃以下、好ましくは1100℃以下、より好ましくは1000℃以下である。焼成温度を1200℃以下とすることで、中空無機粒子1の吸水率を向上させることができる。
【0076】
また、焼成炉内の雰囲気は、空気下であってもよいが、窒素やアルゴン等の不活化ガスによって、酸素濃度を調整した不活性雰囲気であってもよい。不活性雰囲気で焼成することにより、コア粒子が熱分解(吸熱反応)するため、発熱を抑えることができる。そのため、大量に焼成しても外殻11層の割れを防止することができ、また、温度のコントロールがしやすくなる。
【0077】
なお、空気下の焼成と不活化雰囲気での焼成とを組み合わせることも可能である。例えば、不活性雰囲気で焼成を行った後、更に、空気下での焼成を行うこともできる。空気下での焼成を行うことで、粒子に含まれる有機成分を除去することができる。
【0078】
(4)アルカリ加熱工程S3
アルカリ加熱工程S3は、前記コア粒子除去工程S2後の中空無機粒子1をアルカリ性溶液中で加熱する工程である。このアルカリ加熱工程S3を行うことで、粒子表面のシラノール基等の量が増大し、中空無機粒子1の吸水率を向上させることができる。pH、加熱温度、加熱時間を変更することにより、吸水率を任意に調整することが可能である。
【0079】
アルカリ加熱工程S3で用いるアルカリ性溶液のpHは、アルカリ性であれば特に限定されないが、例えば、pH7~14、好ましくはpH8~14、より好ましくはpH9~14である。pHを変更することにより、中空無機粒子1の吸水率を任意に調整することが可能である。
【0080】
アルカリ加熱工程S3で用いることができるアルカリ性溶液の種類も、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、自由に選択することができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液、アンモニア、アミン等の水溶液が挙げられる。
【0081】
アルカリ加熱工程S3における加熱温度は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。加熱温度の下限値としては、例えば、30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上である。加熱温度を30℃以上とすることで、中空無機粒子1の吸水率を向上させることができる。
【0082】
また、加熱温度の上限値としては、例えば、90℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。加熱温度を90℃以下とすることで、水溶液の取り扱いが容易になり取り扱い上の安全性が増す。
【0083】
アルカリ加熱工程S3における加熱時間も、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。加熱時間の下限値としては、例えば、5分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上である。加熱時間を5分以上とすることで、中空無機粒子1の吸水率を向上させることができる。
【0084】
また、加熱時間の上限値としては、例えば、24時間以下、好ましくは12時間以下、より好ましくは6時間以下である。加熱時間を24時間以下とすることで、生産性の向上に寄与する。
【0085】
アルカリ加熱工程S3における加熱温度、加熱時間を変更することにより、中空無機粒子1の吸水率を任意に調整することが可能である。
【0086】
アルカリ加熱工程S3では、撹拌をしながら加熱することも可能である。撹拌は、継続的に撹拌してもよいし、適宜、間隔をあけて複数回撹拌することも自由である。
【0087】
(5)乾燥工程S5
乾燥工程S5は、アルカリ加熱工程S3後の中空無機粒子1を乾燥させる工程である。乾燥工程S5を行う前に、必要に応じて、アルカリ性水溶液を除去するために洗浄を行うこともできる。
【0088】
乾燥工程S5における乾燥方法は、本技術の効果を損なわない限り、無機粒子の乾燥に用いることができる乾燥方法を自由に設定することができる。例えば、自然乾燥、加熱乾燥、通風乾燥、減圧乾法等が挙げられ、これらを組み合わせて行うことも可能である。
【実施例0089】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0090】
<実験例1>
実験例1では、中空無機粒子の形態の違いによる強度や吸水率の違いについて、検証を行った。
【0091】
1.中空無機粒子の製造
<実施例1~5>
(1)コア粒子分散液の調製
コア粒子として、平均粒径0.5μmのポリスチレン(PSt)粒子と、水:メタノール=1:1溶液とを撹拌混合することにより、濃度9wt%のコア粒子分散液5000gを得た。
【0092】
(2)ケイ素化合物溶液の調製
テトラエトキシシラン(TEOS)1000gと、メタノール1000gとを、30℃で1分間撹拌してケイ素化合物溶液を調製した。
【0093】
(3)分散剤の添加
(1)にて作製したコア粒子分散液5000gに、濃度5wt%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液100gを添加し、30℃で10分撹拌した。
【0094】
(4)触媒の添加
PVAを添加したコア粒子分散液に、触媒として25%アンモニア水1000gを添加した。
【0095】
(5)ケイ素化合物溶液の添加
分散剤、および触媒を添加したコア粒子分散液に、(2)で調製したケイ素化合物溶液を、3時間かけて滴下した。これによって、コア粒子にケイ素化合物を被覆させることで、ケイ素化合物被覆樹脂粒子を得た。
【0096】
(6)分離、洗浄、乾燥
得られたケイ素化合物被覆樹脂粒子を遠心分離により固液分離し、メタノールで3回洗浄した。洗浄後のケイ素化合物被覆樹脂粒子を2日間かけて自然乾燥し、さらに110℃で加熱乾燥させた。
【0097】
(7)コア粒子の除去
乾燥させたケイ素化合物被覆樹脂粒子を、電気炉により、空気雰囲気下にて下記の表1に記載の温度にて6時間加熱することで、ケイ素化合物被覆樹脂粒子中のコア粒子が除去された中空無機粒子を得た。
【0098】
(8)アルカリ加熱
得られた中空無機粒子を、pH=12に調整した水酸化ナトリウム水溶液の中に入れ、60℃にて1時間撹拌した。
【0099】
(9)分離、洗浄、乾燥
アルカリ性水溶液中での加熱処理後に、遠心分離により固液分離し、メタノールで3回洗浄した。洗浄後の中空無機粒子を2日間かけて自然乾燥し、さらに110℃で加熱乾燥させた。
【0100】
<比較例1及び2>
前記実施例1~5の(1)~(6)を行った後、乾燥させたケイ素化合物被覆樹脂粒子を、電気炉により、空気雰囲気下にて下記の表1に記載の温度にて6時間加熱することで、ケイ素化合物被覆樹脂粒子中のコア粒子が除去された中空無機粒子を得た。
【0101】
<比較例3>
一般的な無機粒子の製造方法を用いて、中空を有さないケイ素化合物の中実無機粒子を製造し、電気炉により、空気雰囲気下にて下記の表1に記載の温度にて6時間加熱することで、ケイ素化合物の中実無機粒子を得た。
【0102】
2.評価
製造した中空無機粒子、及び中実無機粒子の平均粒子径、比表面積、及び吸水率について、下記の方法を用いて測定した。また、製造した中空無機粒子、又は中実無機粒子を用いた樹脂サンプルの透湿度、誘電率、及び線膨張係数について、下記の方法を用いて測定した。なお、参考例として、粒子を用いずに樹脂サンプルを調製し、透湿度、誘電率、及び線膨張係数を測定した。
【0103】
(1)平均粒子径
製造した中空無機粒子、及び中実無機粒子について、それぞれをサンプリングし、FE-SEM(JSM-6700F,日本電子株式会社)観察により粒子70個の粒径を測長し、平均粒子径を算出した。
【0104】
(2)比表面積
窒素ガスを用いたガス吸着法により測定した。
【0105】
(3)吸水率
150℃で乾燥させた中空無機粒子、又は中実無機粒子15gを、30℃90%RHの恒温恒湿チャンバーに48時間静置し、その前後の重量変化から吸水率を求めた。
【0106】
(4)透湿度
エポキシ樹脂(jER828、三菱ケミカル株式会社製):硬化剤(YH306、三菱ケミカル株式会社製):2-エチル-4-メチルイミダゾール=5:6:0.05の重量比で混合した樹脂混合物に対して、中空無機粒子、又は中実無機粒子の比率が30体積%となるように添加し、スパチュラにより混練した。次に、混練した樹脂混合物をさらにギャップ0.08mmに調整したロールミル(卓上ロールミル、小平製作所製)を3回繰り返して行うことで、樹脂混合物を調製した。得られた樹脂混合物を加熱硬化させ、厚さ1mmの板状サンプルを作製した。板状サンプルについて、カップ法にて透湿度を測定した。
【0107】
(5)誘電率
エポキシ樹脂(jER828、三菱ケミカル株式会社製):硬化剤(YH306、三菱ケミカル株式会社製):2-エチル-4-メチルイミダゾール=5:6:0.05の重量比で混合した樹脂混合物に対して、中空無機粒子、又は中実無機粒子の比率が20体積%となるように添加し、スパチュラにより混練した。次に、混練した樹脂混合物をさらにギャップ0.08mmに調整したロールミル(卓上ロールミル、小平製作所製)を3回繰り返して行うことで、樹脂混合物を調製した。得られた樹脂混合物を、1.2mm×1.2mm×70mmの型に流し入れ、120℃にて6時間加熱硬化させ、誘電率評価用サンプルを作製した。得られたサンプルについて、120℃にて3時間加熱乾燥した後、空洞共振器摂動法を用いて、周波数5.8GHzにて誘電率測定を行った。
【0108】
(6)線膨張係数
エポキシ樹脂(jER828、三菱ケミカル株式会社製):硬化剤(YH306、三菱ケミカル株式会社製):2-エチル-4-メチルイミダゾール=5:6:0.05の重量比で混合した樹脂混合物に対して、中空無機粒子、又は中実無機粒子の比率が20体積%となるように添加し、スパチュラにより混練した。次に、混練した樹脂混合物をさらにギャップ0.08mmに調整したロールミル(卓上ロールミル、小平製作所製)を3回繰り返して行うことで、樹脂混合物を調製した。得られた樹脂混合物を、5mm×5mm×10mmの型に流し入れ、120℃にて6時間加熱硬化させ、線膨張係数評価用サンプルを作製した。得られたサンプルについて、熱分析装置を用いて、20~110℃間の線膨張係数の測定を行った。
【0109】
3.結果
結果を下記の表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
4.考察
表1に示す通り、実施例1~5の中空無機粒子は、比較例1~3の粒子に比べて吸水率が高いにも関わらず、誘電率や線膨張係数は同等であった。即ち、一般的な無機粒子は、吸水率が高くなるに従って、これを用いた熱硬化樹脂の誘電率や線膨張係数は、上昇するのが常識であるが、本技術に係る中空無機粒子は、吸水率が高いにも関わらず、これを用いた熱硬化樹脂の誘電率や線膨張係数も低く維持できることが分かった。
【0112】
また、表1に示す通り、実施例1~5の中空無機粒子を用いた熱硬化樹脂は、比較例1~3の粒子を用いた熱硬化樹脂に比べて、透湿度が低い結果であった。この結果から、本技術に係る中空無機粒子は、低湿度が望まれる半導体等のパッケージの材料として、好適に使用できることが分かった。
【符号の説明】
【0113】
1:中空無機粒子
11:外殻
12:中空
図1
図2