(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128895
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】溶接機モニタ装置、および、溶接システム
(51)【国際特許分類】
B23K 9/10 20060101AFI20230907BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20230907BHJP
B23K 10/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B23K9/10 A
B23K31/00 M
B23K10/00 502Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033564
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 道隆
【テーマコード(参考)】
4E082
【Fターム(参考)】
4E082AA00
4E082BA01
4E082CA01
4E082EA04
(57)【要約】
【課題】作業者の不正による溶接品質の低下を防止できる溶接機モニタ装置を提供する。
【解決手段】複数の溶接機Bを監視する溶接機モニタ装置Aにおいて、複数の溶接機Bと通信を行う通信部12と、溶接機Bに設定するための溶接条件を決定する制御部15とを備えた。通信部12は、複数の溶接機Bからそれぞれ情報を受信し、制御部15が決定した溶接条件を溶接機Bに送信し、複数の溶接機Bのそれぞれに、設定された溶接条件の変更を停止させるロック信号を送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の溶接機を監視する溶接機モニタ装置であって、
前記複数の溶接機と通信を行う通信部と、
前記複数の溶接機に含まれる第1溶接機に設定するための第1溶接条件を決定する制御部と、
を備え、
前記通信部は、
前記複数の溶接機からそれぞれ情報を受信し、
前記制御部が決定した前記第1溶接条件を、前記第1溶接機に送信し、
前記複数の溶接機のそれぞれに、設定された設定溶接条件の変更を停止させるロック信号を送信する、
溶接機モニタ装置。
【請求項2】
前記通信部が受信する情報は、前記複数の溶接機にそれぞれ設定された前記設定溶接条件を含み、
前記制御部は、前記設定溶接条件を表示手段に表示させる、
請求項1に記載の溶接機モニタ装置。
【請求項3】
前記通信部が受信する情報は、前記複数の溶接機がそれぞれ検出した検出値を含み、
前記制御部は、前記通信部が受信した前記検出値を外部サーバに蓄積して記憶させる、
請求項1または2に記載の溶接機モニタ装置。
【請求項4】
コード情報を読み取る読取部と、
前記コード情報に対応付けた第1溶接条件を記憶する記憶部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記読取部が読み取った前記コード情報に基づいて前記記憶部から読み出すことで、前記第1溶接条件を決定する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の溶接機モニタ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の溶接機モニタ装置と、
前記複数の溶接機と、
を備え、
前記第1溶接機は、
前記通信部から前記第1溶接条件を受信した場合、当該第1溶接条件を前記設定溶接条件として設定し、
前記通信部から前記ロック信号を受信した場合、前記設定溶接条件の変更を停止し、
前記設定溶接条件に応じて溶接を行う、
溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の溶接機の監視を行う溶接機モニタ装置、および、溶接機モニタ装置を備えた溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、溶接機の溶接電流および溶接電圧などのデータを収集して監視する溶接機モニタ装置が導入されている。例えば、特許文献1には、溶接機の溶接電流および溶接電圧などを検出して、これらのデータが上下限の範囲内であるか否かを表示する溶接機モニタ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造現場では、不届きな作業者が、作業を早く終わらせるために、設定電流などの溶接条件を勝手に変更して溶接を行う場合がある。設定された溶接条件を変更して溶接を行った場合、製品の溶接品質が低下する場合がある。特許文献1の溶接機モニタ装置が多数の溶接機を同時に監視する場合、管理者は、作業者の不正により溶接条件が変更されたことにすぐ気付くことが困難である。
【0005】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、作業者の不正による溶接品質の低下を防止できる溶接機モニタ装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される溶接機モニタ装置は、複数の溶接機を監視する溶接機モニタ装置であって、前記複数の溶接機と通信を行う通信部と、前記複数の溶接機に含まれる第1溶接機に設定するための第1溶接条件を決定する制御部と、を備え、前記通信部は、前記複数の溶接機からそれぞれ情報を受信し、前記制御部が決定した前記第1溶接条件を、前記第1溶接機に送信し、前記複数の溶接機のそれぞれに、設定された設定溶接条件の変更を停止させるロック信号を送信する。
【0008】
なお、「第1溶接条件」および「設定溶接条件」は、溶接において設定されるパラメータであり、溶接電流、溶接電圧、および溶接ワイヤの送給速度の少なくともいずれかの設定値を含む。また、「第1溶接条件」および「設定溶接条件」は、これらの設定値に関連付けられた条件番号である場合も含む。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記通信部が受信する情報は、前記複数の溶接機にそれぞれ設定された前記設定溶接条件を含み、前記制御部は、前記設定溶接条件を表示手段に表示させる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記通信部が受信する情報は、前記複数の溶接機がそれぞれ検出した検出値を含み、前記制御部は、前記通信部が受信した前記検出値を外部サーバに蓄積して記憶させる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記溶接機モニタ装置は、コード情報を読み取る読取部と、前記コード情報に対応付けた第1溶接条件を記憶する記憶部と、をさらに備え、前記制御部は、前記読取部が読み取った前記コード情報に基づいて前記記憶部から読み出すことで、前記第1溶接条件を決定する。
【0012】
本発明の第2の側面によって提供される溶接システムは、本発明の第1の側面によって提供される溶接機モニタ装置と、前記複数の溶接機と、を備え、前記第1溶接機は、前記通信部から前記第1溶接条件を受信した場合、当該第1溶接条件を前記設定溶接条件として設定し、前記通信部から前記ロック信号を受信した場合、前記設定溶接条件の変更を停止し、前記設定溶接条件に応じて溶接を行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、溶接機モニタ装置は、各溶接機にロック信号を送信することで溶接機での設定溶接条件の変更を停止させる。これにより、溶接機側で設定溶接条件を変更できなくなるので、作業者は、勝手に設定溶接条件を変更できない。したがって、本発明に係る溶接機モニタ装置は、作業者の不正による溶接品質の低下を防止できる。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る溶接機モニタ装置を備えた溶接システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図3】溶接条件設定処理の処理手順を示すフローチャートの一例である。
【
図4】溶接機モニタ装置の変形例を示すブロック図である。
【
図5】溶接システムの変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
図1は、第1実施形態に係る溶接機モニタ装置Aを備えた溶接システムCを説明するための図であり、溶接システムCの全体構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、溶接システムCは、溶接機モニタ装置Aおよび複数の溶接機B(B1~Bn)を備えている。
【0019】
複数の溶接機Bは、それぞれ溶接のための電力を出力する電源装置である。複数の溶接機Bは、例えば溶接ラインに配置され、それぞれが各工程での溶接作業に用いられる。各溶接機Bは、作業者によって操作される溶接トーチ(図示なし)に電力を供給し、溶接トーチの先端と被加工物との間にアークを発生させて、アーク溶接を行う。各溶接機Bは、内部構成として、電源部21、通信部22、記憶部23、操作部24、検出部25、および制御部26を備えている。
【0020】
電源部21は、電力系統から入力される三相交流電力をアーク溶接に適した直流電力に変換して出力する。電源部21に入力される三相交流電力は、整流回路(図示なし)によって直流電力に変換され、インバータ回路(図示なし)によって交流電力に変換される。そして、トランス(図示なし)によって降圧され、整流回路(図示なし)によって直流電力に変換されて出力される。なお、電源部21の構成は、上記したものに限定されない。電源部21は、制御部26で設定された溶接条件に応じた電力を出力する。
【0021】
通信部22は、溶接機モニタ装置Aとの間で通信を行う。通信部22は、制御部26から入力される信号を、溶接機モニタ装置Aに送信する。通信部22が溶接機モニタ装置Aに送信する信号には、例えば、検出部25で検出された溶接電流および溶接電圧などの検出値、ならびに、溶接機Bに現在設定されている溶接条件の条件番号などがある。また、通信部22は、溶接機モニタ装置Aから受信した信号を、制御部26に出力する。通信部22が溶接機モニタ装置Aから受信する信号には、例えば、溶接条件を設定するための条件番号、および、溶接機Bの溶接条件の変更を停止させるロック信号などがある。なお、溶接機モニタ装置Aとの間で送受信される信号は、上記したものに限定されない。通信部22は、例えば、イーサネット(登録商標)等の通信規格による有線通信を行う。なお、通信の規格は限定されない。また、通信部12は、無線通信によって溶接機モニタ装置Aと通信を行ってもよい。
【0022】
記憶部23は、メモリを備えており、各種情報を記憶する。溶接工程において最適な溶接条件は、被加工物の材質、板厚、継ぎ手形状、および開先形状などによって異なる。CAE(Computer Aided Engineering)を用いた溶接工程の設計において、これらのパラメータを入力することで、最適な溶接条件が決定される。記憶部23は、溶接機Bが行う可能性のある各溶接工程に最適な溶接条件を、条件番号に対応付けて、あらかじめ記憶している。溶接条件および対応する条件番号は、溶接機モニタ装置Aで編集されて溶接機Bに送信され、記憶部23に記憶される。
【0023】
操作部24は、例えば操作ボタンおよび操作ダイアルなどの操作手段を備えており、作業者による操作手段の操作に応じた操作信号を制御部26に出力する。操作部24は、例えば溶接条件を変更する場合などに操作される。ただし、溶接機Bが溶接機モニタ装置Aからロック信号を受信した場合は、操作部24による溶接条件の変更が停止される。
【0024】
検出部25は、例えば、溶接電流を検出する電流センサ、および、溶接電圧を検出する電圧センサを備えている。検出部25は、各センサが検出した検出値を制御部26に出力する。なお、検出部25は、電流センサおよび電圧センサのいずれか一方のみを備えてもよいし、その他のセンサを備えてもよい。例えば、検出部25は、溶接ワイヤの送給速度などを検出してもよい。
【0025】
制御部26は、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されており、溶接機Bを制御する。制御部26は、設定された溶接条件に応じて電力を出力するように、電源部21を制御する。具体的には、制御部26は、検出部25から入力された検出値が、設定された溶接条件に一致するように制御を行う。また、制御部26は、検出部25から入力された検出値を、通信部22を介して、溶接機モニタ装置Aに送信する。なお、制御部26は、検出部25が検出した検出値をすべて送信してもよいし、一部(例えば、溶接電流および溶接電圧)の検出値だけを送信してもよい。
【0026】
制御部26は、通信部22を介して溶接機モニタ装置Aから受信した条件番号に対応する溶接条件を設定する。具体的には、制御部26は、受信した条件番号に対応する溶接条件を記憶部23から読み出して設定する。また、制御部26は、溶接機モニタ装置Aからロック信号を受信した場合、溶接条件の変更を停止する。具体的には、制御部26は、操作部24から、溶接条件を変更するための操作信号を入力されても、溶接条件を変更しない。ロック信号を受信した場合に停止される溶接条件の変更とは、溶接条件の項目(溶接電流、溶接電圧など)ごとの設定値の変更、および、条件番号の変更による溶接条件全体の変更の両方を含む。
【0027】
溶接機モニタ装置Aは、複数の溶接機B(B1~Bn)の監視を行う装置である。溶接機モニタ装置Aは、汎用的なコンピュータ(例えば、ノート型コンピュータ、デスクトップ型コンピュータ、またはタブレット型端末など)に、溶接機モニタプログラムをインストールすることで実現される。溶接機モニタプログラムは、コンピュータを溶接機モニタ装置Aとして機能させるためのプログラムであり、後述する溶接条件設定処理を行うプログラムなどを含んでいる。溶接機モニタプログラムは、例えば、USBメモリなどの記憶媒体に記憶された状態で提供される。なお、溶接機モニタプログラムは、通信回線を介してサーバからダウンロードされてもよい。本実施形態では、溶接機モニタ装置Aが、汎用的なノート型コンピュータに溶接機モニタプログラムをインストールすることで実現された場合について説明する。なお、溶接機モニタ装置Aは、コンピュータにあらかじめ溶接機モニタプログラムが記憶された専用装置であってもよい。溶接機モニタ装置Aは、内部構成として、表示部11、通信部12、記憶部13、操作部14、および制御部15を備えている。
【0028】
表示部11は、例えば液晶表示装置などの表示手段を備えており、各種表示を行う。表示部11は、制御部15からの指示により、画像を表示手段に表示させる。
【0029】
通信部12は、複数の溶接機Bとの間で通信を行う。通信部12は、制御部15から入力される信号を、各溶接機Bに送信する。通信部12が各溶接機Bに送信する信号には、例えば、各溶接機Bに溶接条件を設定するための条件番号、および、各溶接機Bの溶接条件の変更を停止させるロック信号などがある。また、通信部12は、各溶接機Bから受信した信号を、制御部15に出力する。通信部12が各溶接機Bから受信する信号には、例えば、各溶接機Bで検出された溶接電流および溶接電圧などの検出値、ならびに、各溶接機Bに現在設定されている溶接条件の条件番号などがある。なお、各溶接機Bとの間で送受信される信号は、上記したものに限定されない。
【0030】
記憶部13は、各種情報を記憶する。記憶部13は、一次記憶部としてのROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)と、二次記憶部とを備えている。ROMは、読み取り専用の記憶媒体であって、基本プログラムが記憶されている。RAMは、書き換え可能な記憶媒体であって、応用プログラムを格納するエリアとプログラムを処理するためのワークエリアとを提供する。二次記憶部は、例えばフラッシュメモリやハードディスクなどであり、ダウンロードした応用プログラムや各種データを記憶している。本実施形態では、USBメモリなどの記憶媒体からインストールされた溶接機モニタプログラムが、記憶部13の二次記憶部に記憶されている。また、記憶部13は、溶接機モニタ装置Aが監視する複数の溶接機Bの情報(MACアドレスなどの識別情報および名称)を記憶している。各溶接機Bの情報は、溶接機モニタプログラムの実行により、自動的に収集されて記憶されたり、管理者が操作部14を操作して入力することで記憶される。
【0031】
操作部14は、例えばキーボードおよびマウスなどの操作手段を備えており、管理者による操作手段の操作に応じた操作信号を制御部15に出力する。
【0032】
制御部15は、溶接機モニタ装置Aが備える各部の動作を統括制御する構成であり、CPU(Central Processing Unit)によって実現されている。制御部15は、記憶部13に記憶された溶接機モニタプログラムを実行し、これに応じて、表示部11に表示を行わせ、操作部14から操作信号を入力され、通信部12を介して各溶接機Bと通信を行う。溶接機モニタ装置Aは、各溶接機Bを監視するための様々な機能を有する。各機能は、メニュー画面から機能を選択することで、実行される。例えば、一括監視機能が選択された場合、制御部15は、通信部12を介して各溶接機Bから入力される溶接電流および溶接電圧などの検出値を表示する一括監視画面として、表示部11の表示手段に表示させる。
【0033】
また、本実施形態では、溶接機モニタ装置Aは、溶接条件設定機能を備えている。溶接条件設定機能は、各溶接機Bに一括で溶接条件を設定し、各溶接機Bでの溶接条件の変更を停止させる機能である。溶接条件設定機能は、メニュー画面または一括監視画面から選択されることで実行される。溶接条件設定機能が選択された場合、溶接条件設定画面が、表示部11の表示手段に表示される。
【0034】
図2は、表示部11の表示手段に表示される溶接条件設定画面3の一例を示す図である。
【0035】
本実施形態では、溶接機モニタ装置Aが監視する複数の溶接機Bは、複数のグループに分けて登録されている。溶接条件設定画面3では、複数の溶接機Bはグループごとに表示され、グループを選択するためのタブ31が表示されている。本実施形態では、例えば10個のグループが設定されている。管理者は、操作部14の操作手段を操作することで、複数のタブ31から所望のグループを選択する。例えば、管理者は、マウスを操作してポインタを所望のグループを示すタブ31に重なるように移動させ、クリックすることで選択する。なお、操作の方法は限定されない。また、複数の溶接機Bはグループに分けられず、1画面で全部が表示されてもよい。
図2は、「Group 1」を示すタブ31が選択され、「Group 1」に登録されている10台の溶接機Bの溶接条件を設定する状態を示している。
【0036】
図2に示すように、溶接条件設定画面3には、10台の溶接機Bに応じて、10個の設定欄32が図の上下方向に並んで配置されている。各設定欄には、対応する溶接機Bの名称(「Welder01」~「Welder10」)が表示されている。名称の左側には、当該溶接機Bを選択するためのチェックボックスが配置されている。管理者は、溶接条件の設定を行う溶接機Bに対応するチェックボックスにチェックをいれる。名称の右側には、設定する溶接条件の条件番号を入力するための入力枠が配置されている。管理者は、操作部14の操作手段を操作することで、溶接条件を変更したい溶接機Bに対応する入力枠に、条件番号を入力する。例えば、管理者は、マウスにより入力枠を選択して、キーボードから条件番号を入力する。管理者は、これから実施する溶接ラインの各溶接工程に応じて、当該溶接工程の設計時に決定された最適な溶接条件に対応する条件番号を、溶接機Bごとに入力する。入力枠の右側には、当該溶接機Bに現在設定されている条件番号が表示されている。現在設定されている条件番号は、通信部12を介して、溶接機Bから受信される。設定欄32は、溶接機Bが登録されていない場合、または、対応する溶接機Bが通信切断状態である場合などには、グレーアウト表示され、チェックボックスおよび入力枠への入力ができない状態になる。
【0037】
10個の設定欄32の下方には、全選択欄33が配置されている。「全選択」の表示の左側には、全選択/全解除のためのチェックボックスが配置されている。当該チェックボックスにチェックを入れると、すべての設定欄32のチェックボックスにチェックがいれられる。また、当該チェックボックスのチェックをはずすと、すべての設定欄32のチェックボックスのチェックがはずされる。「全選択」の表示の右側には、設定する溶接条件の条件番号を一括入力するための一括入力枠が配置されている。当該一括入力枠に条件番号を入力し、右側に配置された一括入力ボタン34を操作(例えば、カーソルを重ねてクリック)すると、チェックボックスにチェックがいれられた設定欄32の各入力枠に、一括入力枠の条件番号が入力される。
【0038】
全選択欄33の下方には、設定ボタン35が配置されている。当該設定ボタン35が操作(例えば、カーソルを重ねてクリック)されると、チェックボックスにチェックがいれられた設定欄32に対応する各溶接機Bに、各入力枠の条件番号が送信される。条件番号を受信した溶接機Bは、受信した条件番号に対応する溶接条件を設定する。また、この場合、各溶接機Bにロック信号が送信される。ロック信号を受信した溶接機Bは、溶接条件の変更を停止する。
【0039】
図3は、制御部15が行う溶接条件設定処理の処理手順を示すフローチャートの一例である。溶接条件設定処理は、メニュー画面などで溶接条件設定機能が選択された場合に実行される。
【0040】
まず、各溶接機Bに設定されている溶接条件の条件番号が読み出される(S1)。具体的には、制御部15は、通信部12を介して、各溶接機Bに条件番号を要求する要求信号を送信する。要求信号を受信した各溶接機Bは、制御部26に設定されている条件番号を、溶接機モニタ装置Aに送信する。
【0041】
次に、登録されているすべての溶接機Bの条件番号が受信されたか否かが判別される(S2)。具体的には、制御部15は、通信部12からすべての溶接機Bの条件番号を入力されたか否かを判別する。すべての溶接機Bの条件番号が受信されていない場合(S2:NO)、所定時間が経過したか否かが判別される(S3)。所定時間が経過していない場合(S3:NO)、ステップS2に戻って、ステップS2,S3の判別が繰り返される。
【0042】
ステップS3において、所定時間が経過した場合(S3:YES)、溶接条件設定画面3(
図2参照)が表示される(S4)。具体的には、制御部15は、溶接条件設定画面3を生成するための情報を表示部11に出力し、表示部11が表示手段に溶接条件設定画面3を表示させる。制御部15は、溶接条件設定画面3を生成するための情報として、各溶接機Bから受信した条件番号を表示部11に出力する。表示部11は、
図2に示すように、各溶接機Bに対応する設定欄32の入力枠の右側に条件番号を表示させる。また、制御部15は、ある溶接機Bから条件番号を受信できなかった場合、当該溶接機Bが通信切断状態であると判断し、その旨を表示部11に出力する。この場合、表示部11は、対応する溶接機Bの設定欄32をグレーアウト表示させる。なお、ステップS3において、所定時間が経過した場合(S3:YES)、条件番号が受信されていない溶接機Bに対して、再度、条件番号が読み出されてもよい。また、ステップS2において、登録されているすべての溶接機Bの条件番号が受信された場合(S2:YES)、所定時間の経過を待つことなく、溶接条件設定画面3が表示される(S4)。
【0043】
次に、設定ボタン35が操作されたか否かが判別される(S5)。具体的には、制御部15は、操作部14から入力される操作信号に基づいて、溶接条件設定画面3の設定ボタン35がクリックされたか否かを判別する。設定ボタン35が操作されていない場合(S5:NO)、ステップS5に戻って、ステップS5の判別が繰り返される。この間、管理者は、溶接条件設定画面3での入力を行う。管理者は、入力が終わると、設定ボタン35をクリックする。設定ボタン35が操作された場合(S5:YES)、各溶接機Bに条件番号が送信される(S6)。具体的には、制御部15は、溶接条件設定画面3においてチェックボックスにチェックがいれられた設定欄32に対応する各溶接機Bに対して各入力枠の条件番号を送信するように、通信部12に指示する。各溶接機Bは、溶接機モニタ装置Aから条件番号を受信した場合、当該条件番号に対応する溶接条件を記憶部23から読み出して設定する。各溶接機Bは、溶接条件を適切に設定できた場合、当該条件番号を含む応答信号を溶接機モニタ装置Aに送信する。一方、各溶接機Bは、溶接条件の設定に失敗した場合(記憶部23から読み出せなかった場合)、元々設定されていた条件番号を含む応答信号を溶接機モニタ装置Aに送信する。
【0044】
次に、条件番号を送信したすべての溶接機Bから応答信号が受信されたか否かが判別される(S7)。応答信号が受信されていない場合(S7:NO)、ステップS7に戻って、ステップS7の判別が繰り返される。つまり、条件番号を送信したすべての溶接機Bから応答信号が受信されるのを待つ。応答信号が受信された場合(S7:YES)、溶接条件設定画面3において、入力枠の右側の現在の条件番号が更新される(S8)。具体的には、制御部15は、各溶接機Bに対して、ステップS6において送信した条件番号と、ステップS7において受信した応答信号に含まれている条件番号とを比較する。制御部15は、両者が一致した場合、当該溶接機Bにおいて、溶接条件が適切に設定されたと判断し、溶接条件設定画面3における現在の条件番号を、変更後の条件番号(受信した応答信号に含まれている条件番号)に変更する。一方、制御部15は、両者が一致しない場合、当該溶接機Bにおいて、溶接条件の設定に失敗したと判断し、溶接条件設定画面3における現在の条件番号の右側に、「設定失敗」の表示を行う。
【0045】
次に、各溶接機Bにロック信号が送信され(S9)、ステップS5に戻る。ロック信号は、条件番号を送信した溶接機Bだけでなく、条件番号を送信しなかった(変更しなかった)溶接機Bにも送信され、溶接機モニタ装置Aと通信が確立しているすべての溶接機Bに送信される。各溶接機Bは、溶接機モニタ装置Aからロック信号を受信した場合、溶接条件の変更を停止する。溶接条件設定処理は、管理者によって終了が選択された場合に終了し、表示手段での表示は、メニュー画面に戻る。なお、
図3のフローチャートに示す処理手順は一例であって、制御部15が行う溶接条件設定処理の処理手順は、上述したものに限定されない。
【0046】
次に、溶接機モニタ装置Aの作用効果について説明する。
【0047】
本実施形態によると、溶接機モニタ装置Aは、溶接条件設定処理において、各溶接機Bに条件番号を送信し、通信が確立しているすべての溶接機Bにロック信号を送信する。ロック信号を受信した溶接機Bは、操作部24による溶接条件の変更を停止する。これにより、溶接機B側で溶接条件を変更できなくなるので、作業者は、勝手に溶接条件を変更できない。したがって、溶接機モニタ装置Aは、作業者の不正による溶接品質の低下を防止できる。また、溶接機モニタ装置Aは、溶接条件設定処理によって、溶接条件の変更が必要な溶接機Bに、一括で溶接条件の変更を行う。管理者は、溶接条件の変更が必要な溶接機Bに、それぞれ個別に手動で変更する必要がない。したがって、溶接機モニタ装置Aは、実施する溶接ラインの変更における手間を簡略化でき、管理者の負担を軽減できる。
【0048】
また、本実施形態によると、溶接機モニタ装置Aは、溶接条件設定処理において、各溶接機Bから設定されている溶接条件の条件番号を受信し、溶接条件設定画面3の対応する溶接機Bの設定欄32に表示させる。これにより、管理者は、溶接条件設定画面3を見ることで、各溶接機Bに現在設定されている条件番号を容易に認識できる。
【0049】
また、本実施形態によると、溶接機モニタ装置Aは、各溶接機Bに溶接条件の条件番号を設定することで、溶接条件を設定する。したがって、溶接条件の項目(溶接電流、溶接電圧など)毎の設定値を設定する場合と比較して、管理者の負担が軽減される。
【0050】
なお、本実施形態においては、溶接機モニタ装置Aが各溶接機Bに溶接条件の条件番号を設定する場合について説明したが、これに限られない。溶接機モニタ装置Aは、条件番号の代わりに、溶接条件の項目毎の設定値を各溶接機Bに設定してもよい。
【0051】
図4は、溶接機モニタ装置Aの変形例を示すブロック図である。当該変形例において、溶接機モニタ装置Aは、読取部16をさらに備えている。読取部16は、コード情報(バーコードまたはQRコード(登録商標)など)を読み取るための読取手段を備えている。読取部16は、読取手段が読み取ったコード情報を制御部15に出力する。本変形例では、記憶部13は、溶接ラインの識別番号と、当該溶接ラインにおける各溶接工程の最適な溶接条件に対応する条件番号の組とを対応付けて記憶している。管理者は、溶接条件設定画面3での各設定欄32の入力枠への条件番号の入力において、これから実施する溶接ラインの識別番号のコード情報を読取部16の読取手段を用いて読み取ることで、一括で入力できる。制御部15は、読取部16から入力されるコード情報(溶接ラインの識別番号)に対応する条件番号の組を記憶部13から読み出して、溶接条件設定画面3の各設定欄32の入力枠へ、対応する条件番号を入力する。本変形例によると、溶接条件設定画面3での管理者の入力が簡略化できる。
【0052】
図5は、溶接システムCの変形例を示すブロック図である。
図5においては、複数の溶接機B(B1~Bn)の記載を省略している。当該変形例において、溶接システムCは、サーバ4をさらに備えている。サーバ4は、通信網を介して、溶接機モニタ装置Aと通信を行う。溶接機モニタ装置Aの制御部15は、各溶接機Bから受信した溶接電流および溶接電圧などの検出値を、通信部12を介してサーバ4に送信する。なお、制御部15は、受信した検出値を、記憶部13に記憶してから、まとめてサーバ4に送信してもよいし、直接、サーバ4に送信してもよい。サーバ4は、溶接機モニタ装置Aから受信した検出値を、蓄積して記憶する。また、溶接機モニタ装置Aは、各溶接機Bに送信した条件番号を、サーバ4にも送信する。サーバ4は、溶接機モニタ装置Aから受信した条件番号も蓄積して記憶する。なお、溶接機モニタ装置Aがサーバ4に送信して蓄積記憶させる情報は、限定されない。サーバ4は、通信網を介して、他の部門の各コンピュータ5とも通信を行う。サーバ4は、各コンピュータ5から納期データ・受注価格・工数データなどの情報を受信して記憶する。サーバ4に蓄積された各情報は統合されて、データドリブンな経営およびマーケティングなどに利用される。これにより、DX(Digital Transformation)が推進される。
【0053】
本発明に係る溶接機モニタ装置、および、溶接システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る溶接機モニタ装置、および、溶接システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0054】
A:溶接機モニタ装置、12:通信部、13:記憶部、15:制御部、16:読取部、4:サーバ、B:溶接機、C:溶接システム