(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012891
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】換気部材
(51)【国際特許分類】
E04B 9/02 20060101AFI20230119BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E04B9/02 300
E04B1/70 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116630
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】595133736
【氏名又は名称】株式会社トーコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】森村 匡弘
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001EA08
2E001FA19
2E001GA18
2E001NA07
2E001NB01
2E001NC01
2E001ND25
(57)【要約】
【課題】従来よりも更に防水性能に優れるブリッジ材を用いた換気部材を提供すること。
【解決手段】複数の換気孔17は、換気孔形成板12の長辺方向に併設され、それぞれの換気孔17は、換気孔形成板12の短辺方向となる孔長さHが、換気孔形成板12の長辺方向となる孔幅Wより長い長孔であり、換気孔17は、正面視では換気孔形成板12より換気通路A側に位置するブリッジ材18で覆われ、ブリッジ材18は、換気孔17の切り起こしによって形成され、側面視ではブリッジ材18と換気孔17とによってブリッジ側面開口19が形成され、換気孔17の孔長さHの一端部17uから1/2Hまでに形成されるブリッジ側面開口19による一端側ブリッジ側面開口面積19Suを、換気孔17の孔長さHの他端部17dから1/2Hまでに形成されるブリッジ側面開口19による他端側ブリッジ側面開口面積19Sdよりも大きくした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の外方と屋内との境界に設け、前記建造物の前記外方から前記屋内に給気し、又は前記屋内から前記建造物の前記外方に排気し、前記建造物の前記外方から前記屋内への雨水の侵入を防ぐ換気部材であって、
複数の換気孔が形成される換気孔形成板と、
前記換気孔形成板より前記屋内側に形成される換気通路と
を有し、
複数の前記換気孔は、前記換気孔形成板の長辺方向に併設され、
それぞれの前記換気孔は、前記換気孔形成板の短辺方向となる孔長さHが、前記換気孔形成板の前記長辺方向となる孔幅Wより長い長孔であり、
前記換気孔は、正面視では前記換気孔形成板より前記換気通路側に位置するブリッジ材で覆われ、
前記ブリッジ材は、前記換気孔の切り起こしによって形成され、
側面視では前記ブリッジ材と前記換気孔とによってブリッジ側面開口が形成され、
前記換気孔の前記孔長さHの一端部から1/2Hまでに形成される前記ブリッジ側面開口による一端側ブリッジ側面開口面積を、前記換気孔の前記孔長さHの他端部から1/2Hまでに形成される前記ブリッジ側面開口による他端側ブリッジ側面開口面積よりも大きくした
ことを特徴とする換気部材。
【請求項2】
前記換気孔形成板より前記屋内側に内部防水壁を有し、
前記内部防水壁は、前記換気孔の前記一端部側を固定端とし、前記換気孔の前記他端部側を換気通路端とし、
前記換気通路端によって、前記換気通路が狭められ、
換気通路端を、前記換気孔の前記一端部から1/2H以上の位置まで延出させた
ことを特徴とする請求項1に記載の換気部材。
【請求項3】
前記ブリッジ材が、
前記換気孔の前記一端部から連続する一端側ブリッジ部と、
前記換気孔の前記他端部から連続する他端側ブリッジ部と
を有し、
前記他端側ブリッジ部を、前記一端側ブリッジ部よりも長くした
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の換気部材。
【請求項4】
前記ブリッジ材が、
前記一端側ブリッジ部と前記他端側ブリッジ部との間に中間ブリッジ部を有し、
前記中間ブリッジ部の長さ方向仮想中心を、前記換気孔の前記一端部から1/2H以下の位置とした
ことを特徴とする請求項3に記載の換気部材。
【請求項5】
前記ブリッジ材の最屋内方向位置を、前記内部防水壁の前記換気通路端よりも前記固定端側とした
ことを特徴とする請求項2に記載の換気部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば軒裏換気装置に用いられる換気部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、特に水平方向から吹き込む雨水が換気孔から浸入することを防止できる換気部材を提案し、換気孔にブリッジ材を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示しているように、換気孔にブリッジ材を設けることで、換気孔から流入する雨水をブリッジ材で遮ることができ、防水性能を高めることができる。
ところで、換気部材は、可能な限り開口面積を大きくしたいが、開口面積を大きくすれば雨水は部材内部に侵入しやすくなる。
そこで、開口面積を大きくしても防水性能に優れたブリッジ材が求められる。
【0005】
本発明は、従来よりも更に防水性能に優れるブリッジ材を用いた換気部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の換気部材10は、建造物の外方と屋内との境界に設け、前記建造物の前記外方から前記屋内に給気し、又は前記屋内から前記建造物の前記外方に排気し、前記建造物の前記外方から前記屋内への雨水の侵入を防ぐ換気部材10であって、複数の換気孔17が形成される換気孔形成板12と、前記換気孔形成板12より前記屋内側に形成される換気通路Aとを有し、複数の前記換気孔17は、前記換気孔形成板12の長辺方向に併設され、それぞれの前記換気孔17は、前記換気孔形成板12の短辺方向となる孔長さHが、前記換気孔形成板12の前記長辺方向となる孔幅Wより長い長孔であり、前記換気孔17は、正面視では前記換気孔形成板12より前記換気通路A側に位置するブリッジ材18で覆われ、前記ブリッジ材18は、前記換気孔17の切り起こしによって形成され、側面視では前記ブリッジ材18と前記換気孔17とによってブリッジ側面開口19が形成され、前記換気孔17の前記孔長さHの一端部17uから1/2Hまでに形成される前記ブリッジ側面開口19による一端側ブリッジ側面開口面積19Suを、前記換気孔17の前記孔長さHの他端部17dから1/2Hまでに形成される前記ブリッジ側面開口19による他端側ブリッジ側面開口面積19Sdよりも大きくしたことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の換気部材10において、前記換気孔形成板12より前記屋内側に内部防水壁15を有し、前記内部防水壁15は、前記換気孔17の前記一端部17u側を固定端15cとし、前記換気孔17の前記他端部17d側を換気通路端15dとし、前記換気通路端によって、前記換気通路Aが狭められ、換気通路端15dを、前記換気孔17の前記一端部17uから1/2H以上の位置まで延出させたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の換気部材10において、前記ブリッジ材18が、前記換気孔17の前記一端部17uから連続する一端側ブリッジ部18uと、前記換気孔17の前記他端部17dから連続する他端側ブリッジ部18dとを有し、前記他端側ブリッジ部18dを、前記一端側ブリッジ部18uよりも長くしたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の換気部材10において、前記ブリッジ材18が、前記一端側ブリッジ部18uと前記他端側ブリッジ部18dとの間に中間ブリッジ部18cを有し、前記中間ブリッジ部の長さ方向仮想中心Xを、前記換気孔17の前記一端部17uから1/2H以下の位置としたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項2に記載の換気部材10において、前記ブリッジ材18の最屋内方向位置18bを、前記内部防水壁15の前記換気通路端よりも前記固定端15c側としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の換気部材によれば、換気孔から流入した空気は、ブリッジ材によって左右に流れ方向を変更する際に一端側への流れを生じさせることができ、ブリッジ材によって流れ方向を変更させることで、雨水を屋内に侵入しにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例による軒裏換気装置の断面図及び同軒裏換気装置を軒天無しの建造物の軒裏に設置した状態を示す断面図
【
図3】本実施例による換気部材の要部正面図及び断面図
【
図4】本実施例による換気部材の防水性能試験結果を示す図
【
図6】本発明の他の実施例による換気部材を用いた軒裏換気装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による換気部材は、複数の換気孔が形成される換気孔形成板と、換気孔形成板より屋内側に形成される換気通路とを有し、複数の換気孔は、換気孔形成板の長辺方向に併設され、それぞれの換気孔は、換気孔形成板の短辺方向となる孔長さHが、換気孔形成板の長辺方向となる孔幅Wより長い長孔であり、換気孔は、正面視では換気孔形成板より換気通路側に位置するブリッジ材で覆われ、ブリッジ材は、換気孔の切り起こしによって形成され、側面視ではブリッジ材と換気孔とによってブリッジ側面開口が形成され、換気孔の孔長さHの一端部から1/2Hまでに形成されるブリッジ側面開口による一端側ブリッジ側面開口面積を、換気孔の孔長さHの他端部から1/2Hまでに形成されるブリッジ側面開口による他端側ブリッジ側面開口面積よりも大きくしたものである。本実施の形態によれば、換気孔から流入した空気は、ブリッジ材によって左右に流れ方向を変更する際に一端側への流れを生じさせることができ、ブリッジ材によって流れ方向を変更させることで、雨水を屋内に侵入しにくくできる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による換気部材において、換気孔形成板より屋内側に内部防水壁を有し、内部防水壁は、換気孔の一端部側を固定端とし、換気孔の他端部側を換気通路端とし、換気通路端によって、換気通路が狭められ、換気通路端を、換気孔の一端部から1/2H以上の位置まで延出させたものである。本実施の形態によれば、ブリッジ材によって流れ方向を固定端の方向に変更することができ、換気通路端によって狭められた換気通路に直接向かう流れを無くすことができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による換気部材において、ブリッジ材が、換気孔の一端部から連続する一端側ブリッジ部と、換気孔の他端部から連続する他端側ブリッジ部とを有し、他端側ブリッジ部を、一端側ブリッジ部よりも長くしたものである。本実施の形態によれば、ブリッジ材によって左右に流れ方向を変更する際に一端側への流れをより強めることができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による換気部材において、ブリッジ材が、一端側ブリッジ部と他端側ブリッジ部との間に中間ブリッジ部を有し、中間ブリッジ部の長さ方向仮想中心を、換気孔の一端部から1/2H以下の位置としたものである。本実施の形態によれば、換気孔から流入した空気を換気孔の一端部側への流れとし、換気通路に直接向かう空気を少なくできる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第2の実施の形態による換気部材において、ブリッジ材の最屋内方向位置を、内部防水壁の換気通路端よりも固定端側としたものである。本実施の形態によれば、換気通路に直接向かう空気を少なくできる。
【実施例0014】
以下本発明の一実施例による換気部材を用いた軒裏換気装置について説明する。
図1は本実施例による軒裏換気装置の断面図及び同軒裏換気装置を軒天無しの建造物の軒裏に設置した状態を示す断面図である。
図1(a)は同軒裏換気装置の断面図、
図1(b)は同軒裏換気装置を軒天無しの建造物の軒裏に設置した状態を示す断面図を示している。
【0015】
図1(b)に示す建造物は、柱91の上端に軒桁92を設け、軒桁92の上部には垂木93を傾斜して設けている。垂木93の上面には野地板95が敷設されている。垂木93の端面には鼻隠し下地96を設けている。鼻隠し下地96の屋外側面には、鼻隠し(垂下部材)97が配置される。柱91には外壁下地98を設けている。外壁下地98の屋外側面には、通気胴縁94と外壁材99が配置される。
本実施例による換気部材10は、建造物の外方と屋内との境界に設け、建造物の外方から屋内に給気し、又は屋内から建造物の外方に排気し、建造物の外方から屋内への雨水の侵入を防ぐ。
図1に示す軒裏換気装置は、建造物の外壁材99の上方で、外壁材99より外方に配置される鼻隠し97より内方に配置される。
【0016】
本実施例による軒裏換気装置は、外壁材99の上端を覆う見切縁20と、見切縁20の上方に配置される換気部材10とを備えている。
見切縁20は、外壁材99の上端を覆う見切縁上面板21と、見切縁上面板21の前端から垂下させた見切縁前面板22と、見切縁上面板21の後端から垂下させた見切縁後面板23とからなる。見切縁後面板23の鉛直方向長さは、見切縁前面板22の鉛直方向長さより長く、見切縁前面板22の鉛直方向長さの1.5倍から3倍の長さが好ましい。見切縁前面板22の下部には屋内方向側に折り曲げられて折返し部22aを形成し、見切縁後面板23の下部には前方側に折り曲げられて折返し部23aを形成している。
見切縁20は、ビス41によって通気胴縁94や外壁下地98に固定する。
【0017】
換気部材10は、見切縁上面板21の上面に対向して配置される換気部材底面板11と、換気部材底面板11の前端から立ち上げた換気孔形成板12と、換気孔形成板12の一端から屋内方向に延出させた換気部材天面板13と、換気部材底面板11の後端から立ち上げた換気部材後面板14と、換気部材天面板13の後端から垂下させた内部防水壁15と、鼻隠し97に至る換気部材前方板16とからなる。
内部防水壁15は、換気孔形成板12の屋内側に配置される。
本実施例に示すように、外壁材99の上端を覆う見切縁20を備えることが好ましいが、見切縁20を備えない場合には、換気部材10を外壁材99の上方に配置する。
【0018】
換気孔形成板12には、換気孔17が形成されている。
換気孔形成板12と内部防水壁15との間A1(
図2参照)、内部防水壁15と換気部材底面板11との間、及び内部防水壁15と換気部材後面板14との間A2(
図2参照)に換気通路Aが形成される。
換気通路Aは、換気部材底面板11より上方であって換気部材天面板13より下方に形成される。
内部防水壁15の換気孔形成板12側と、内部防水壁15の換気部材後面板14側とには換気通路Aが形成される。
換気部材前方板16にはビス孔16aを設けることが好ましい。ビス孔16aを設けることで、換気部材前方板16を、ビス42を用いて鼻隠し下地96又は破風板を取り付ける破風板下地に取り付けることができ、施工性に優れる。
【0019】
第1防水パッキン31は、見切縁上面板21の上面に配置され、第2防水パッキン32は、見切縁後面板23の前面に配置される。
第1防水パッキン31及び第2防水パッキン32は、発泡性のゴム又は樹脂素材であり、防水性能と耐久性能が高いEPDMゴムや熱可塑性エラストマーが好ましい。
第1防水パッキン31及び第2防水パッキン32は、見切縁20の幅方向長さと同じ長さで帯状に成形されており、粘着剤によって見切縁20に固定される。
第1防水パッキン31は、見切縁上面板21の奥行方向の中央部に配置することが好ましい。
第2防水パッキン32は、見切縁前面板22の下端以下の位置に配置することが好ましい。
第1防水パッキン31は、
図1(b)に示す施工時には、見切縁上面板21と換気部材底面板11との間で圧縮されて施工される。
また、第2防水パッキン32は、
図1(b)に示す施工時には、見切縁後面板23の前面と外壁材99との間で圧縮されて施工される。
【0020】
なお、換気部材後面板14の一端には、換気孔形成板12の方向に延出させた折返し部14aを設けることが好ましい。仮に換気部材後面板14に到達する雨水があったとしても、雨水は折返し部14aによって換気通路Aに折り返されるため、小屋裏に侵入することはない。
また、換気孔形成板12の下部には水抜き孔12aを設けることが好ましい。水抜き孔12aを設けることで、雨水が換気孔17から侵入したとしても、侵入した雨水は換気通路Aにおいて水抜き孔12aから排出される。
【0021】
図2は
図1(b)の要部拡大断面図である。
本実施例による軒裏換気装置は、見切縁上面板21の奥行寸法L1を外壁材99の厚さL2よりも大きくすることで、見切縁前面板22と外壁材99との間に水切空間Bを形成している。
また、本実施例による軒裏換気装置は、換気部材底面板11の前端は、見切縁上面板21の前端より前方に突出させている。そして、見切縁前面板22と鼻隠し97との間には、見切縁側通気路Cが形成され、換気孔形成板12と鼻隠し97との間には、換気部材側通気路Dが形成される。
従って、見切縁側通気路Cは、換気部材側通気路Dよりも、通気路奥行寸法が大きく、換気部材側通気路Dと見切縁側通気路Cとの通気路奥行寸法を異ならせている。
【0022】
本実施例によれば、第1防水パッキン31により見切縁上面板21と換気部材底面板11との間の防水を行い、第2防水パッキン32により見切縁後面板23の前面と外壁材99との間の防水を行うため、外壁材99の上端と換気部材10との間での防水性能を確保でき、外壁材99に沿って上昇する雨水は、水切空間Bに導かれ、見切縁前面板22に沿って落下するために、換気孔形成板12には導かれず、換気孔17から換気通路Aに流入しないので防水性能に優れる。
【0023】
また、本実施例によれば、雨水は、見切縁側通気路C及び換気部材側通気路Dを上昇しなければ換気孔17に至らないため、換気通路Aに流入しにくく、更に防水性に優れる。
また、本実施例によれば、換気部材側通気路Dと見切縁側通気路Cとの通気路奥行寸法を異ならせることで、雨水の流速が変化するため乱流が発生し、雨水は換気通路Aに流入しにくい。
また、本実施例によれば、見切縁側通気路Cを上昇する雨水を換気部材底面板11に衝突させることができ、雨水は換気通路Aに流入しにくい。
【0024】
本実施例による軒裏換気装置は、換気孔形成板12は外壁材99より前方に位置させ、換気部材後面板14は外壁材99より屋内方向に位置させている。
従って、換気通路Aの奥行寸法を大きくでき、換気通路Aに流入した雨水を換気通路Aに留めることができ、屋内に雨水が侵入することはない。
【0025】
また、本実施例による軒裏換気装置は、内部防水壁15を、換気部材天面板13の後端から垂下させ、換気部材後面板14を、換気部材底面板11の後端から立ち上げており、換気孔17から換気通路Aに流入する空気は、換気孔形成板12と内部防水壁15との間A1では下方に向けた流れとなり、内部防水壁15と換気部材後面板14との間A2では上方に向けた流れとなる。
このように、雨水は、内部防水壁15によって下方に向けた流れの後に上方に向けた流れとなるために、屋内に侵入することはない。
なお、本実施例による軒裏換気装置では、外気は、換気部材側通気路Dから換気通路Aを通って建造物の内部に給気される。
【0026】
図3は本実施例による換気部材の要部正面図及び断面図である。
それぞれの換気孔17は、換気孔形成板12の短辺方向となる孔長さHが換気孔形成板12の長辺方向となる孔幅Wより長い長孔であり、換気孔形成板12の長辺方向に複数併設されている。
図3(a)に示すように、換気孔17は、正面視では換気孔形成板12より換気通路A側に位置するブリッジ材18で覆われている。ブリッジ材18は、換気孔17の切り起こしによって形成している。換気孔17をブリッジ材18で覆うことで、換気孔17に吹き付けられる雨水を、ブリッジ材18で遮ることができる。
【0027】
図3(b)に示すように、側面視ではブリッジ材18と換気孔17とによってブリッジ側面開口19が形成されている。
換気孔17の孔長さHの一端部17uから1/2Hまでに形成されるブリッジ側面開口19による一端側ブリッジ側面開口面積19Suを、換気孔17の孔長さHの他端部17dから1/2Hまでに形成されるブリッジ側面開口19による他端側ブリッジ側面開口面積19Sdよりも大きくしている。
従って、換気孔17から流入した空気は、ブリッジ材18によって左右に流れ方向を変更する際に一端側への流れを生じさせることができ、ブリッジ材18によって流れ方向を変更させることで、雨水を屋内に侵入しにくくできる。すなわち、換気孔17から流入した空気は、ブリッジ材18によって左右に流れ方向を変更する際に上方側への流れとなり、内部防水壁15と換気部材底面板11との間の換気通路Aに直接向かわないので、雨水を分離しやすく、換気通路Aから屋内への雨水の侵入を防止できる。
ブリッジ材18は、換気孔17の一端部17uから連続する一端側ブリッジ部18uと、換気孔17の他端部17dから連続する他端側ブリッジ部18dとからなり、他端側ブリッジ部18dを一端側ブリッジ部18uよりも長くしている。
従って、ブリッジ材18によって左右に流れ方向を変更する際に上方側への流れをより強めることができる。
内部防水壁15は、換気孔17の一端部17u側を固定端15cとし、換気孔17の他端部17d側を換気通路端15dとし、換気通路端15dによって、換気通路Aを狭めている。
【0028】
ブリッジ材18の最屋内方向位置18bは、内部防水壁15の換気通路端15dよりも固定端15c側の位置としている。
従って、内部防水壁15の換気通路端15dより低い位置に空気が直接向かうことを更に防止できる。なお、本実施例では、最屋内方向位置18bは、一端側ブリッジ部18uと他端側ブリッジ部18dとの間の変曲部である。
内部防水壁15の換気通路端15dは、換気孔17の一端部17uから1/2H以上の位置まで固定端15cから延出させている。
従って、ブリッジ材18によって流れ方向を固定端15cの方向に変更することができ、換気通路端15dによって狭められた換気通路Aに直接向かう流れを無くすことができる。すなわち、内部防水壁15の換気通路端15dより低い位置に空気が直接向かうことを防止できる。
【0029】
図4は本実施例による換気部材の防水性能試験結果を示す図である。
図4(a)は本実施例による換気部材であり、
図4(b)は比較例による換気部材である。
本実施例による換気部材では換気孔17の孔長さHを29mmとし、比較例による換気部材では換気孔17の孔長さHを22.5mmとした。
図4では正面図を省略しているが、本実施例の換気部材と比較例の換気部材は、換気孔17の孔幅Wと換気孔17の設置ピッチを同一とし、換気孔形成板12の長辺方向に複数の換気孔17を同数併設している。
従って、本実施例の換気部材における換気孔17の開口面積は、比較例の換気部材と比べ29/22.5倍と大きくなり、防水性能に関して不利側の条件となる。
また、本実施例の換気部材と比較例の換気部材の換気孔17の位置を孔長さHの1/2Hの位置で合わせることにより、防水性能に関して同条件としている。
防水性能試験条件は、いずれの換気部材に対しても、散水量を4L/m
2・min、風速25m/s、送風口から換気部材までの距離を1mとし、試験時間を10minとした。
図4(c)は本実施例による換気部材を用いた場合の試験結果、
図4(d)は比較例による換気部材を用いた場合の試験結果であり、
図1に示す鼻隠し下地96と外壁下地98とを屋内側から見た状態である。
図4(d)では、鼻隠し下地96に水滴Yが付着しているのに対して、図(c)では、鼻隠し下地96には水滴Yは付着していない。
このように、比較例よりも防水性能に関して不利側の条件であるにも関わらず、比較例よりもブリッジ側面開口19を大きくした本実施例による換気部材では、比較例よりも高い防水性能を示した。
【0030】
図5は本発明の他の実施例による換気部材の断面図である。
図5では、断面図だけを示すが、換気孔17は、孔長さHが孔幅Wより長い長孔であり、換気孔形成板12の長辺方向に複数併設されている。
換気孔17は、正面視では換気孔形成板12より内部防水壁15側に位置するブリッジ材18で覆われている。ブリッジ材18は、換気孔17の切り起こしによって形成している。
【0031】
図5(a)に示す換気部材は、ブリッジ材18を、換気孔17の一端部17uから連続する一端側ブリッジ部18uと、換気孔17の他端部17dから連続する他端側ブリッジ部18dとで形成し、一端側ブリッジ部18uを曲面にて形成し、他端側ブリッジ部18dを平面にて形成している。
図5(a)に示す換気部材においても、他端側ブリッジ部18dを一端側ブリッジ部18uよりも長くしている。
従って、ブリッジ材18によって左右に流れ方向を変更する際に上方側への流れをより強めることができる。
【0032】
図5(a)に示す換気部材においても、側面視ではブリッジ材18と換気孔17とによってブリッジ側面開口19が形成されている。
換気孔17の一端部17uから1/2Hまでに形成されるブリッジ側面開口19による一端側ブリッジ側面開口面積19Suは、換気孔17の他端部17dから1/2Hまでに形成されるブリッジ側面開口19による他端側ブリッジ側面開口面積19Sdよりも大きくしている。
従って、換気孔17から流入した空気は、ブリッジ材18によって左右に流れ方向を変更する際に上方側への流れとなり、内部防水壁15と換気部材底面板11との間の換気通路Aに直接向かわないので、雨水を分離しやすく、換気通路Aから屋内への雨水の侵入を防止できる。
ブリッジ材18の最屋内方向位置18bは、内部防水壁15の換気通路端15d以上の位置としている。従って、内部防水壁15の換気通路端15dより低い位置に空気が直接向かうことを更に防止できる。なお、本実施例では、最屋内方向位置18bは、一端側ブリッジ部18uと他端側ブリッジ部18dとの間の変曲部である。
内部防水壁15の換気通路端15dは、換気孔17の一端部17uから1/2H以下に位置させている。従って、内部防水壁15の換気通路端15dより低い位置に空気が直接向かうことを更に防止できる。
【0033】
図5(b)に示す換気部材は、ブリッジ材18を、換気孔17の一端部17uから連続する一端側ブリッジ部18uと、換気孔17の他端部17dから連続する他端側ブリッジ部18dと、一端側ブリッジ部18uと他端側ブリッジ部18dとの間に位置する中間ブリッジ部18cとで形成し、一端側ブリッジ部18u、中間ブリッジ部18c、及び他端側ブリッジ部18dを平面にて形成している。
図5(b)に示す換気部材においても、他端側ブリッジ部18dを一端側ブリッジ部18uよりも長くしている。
従って、ブリッジ材18によって左右に流れ方向を変更する際に上方側への流れをより強めることができる。
【0034】
図5(b)に示す換気部材においても、側面視ではブリッジ材18と換気孔17とによってブリッジ側面開口19が形成されている。
換気孔17の一端部17uから1/2Hまでに形成されるブリッジ側面開口19による一端側ブリッジ側面開口面積19Suは、換気孔17の他端部17dから1/2Hまでに形成されるブリッジ側面開口19による他端側ブリッジ側面開口面積19Sdよりも大きくしている。
従って、換気孔17から流入した空気は、ブリッジ材18によって左右に流れ方向を変更する際に上方側への流れとなり、内部防水壁15と換気部材底面板11との間の換気通路Aに直接向かわないので、雨水を分離しやすく、換気通路Aから屋内への雨水の侵入を防止できる。
【0035】
ブリッジ材18の最屋内方向位置18bは、内部防水壁15の換気通路端15d以上の位置としている。従って、内部防水壁15の換気通路端15dより低い位置に空気が直接向かうことを更に防止できる。なお、本実施例では、最屋内方向位置18bは、一端側ブリッジ部18uと他端側ブリッジ部18dとの間の変曲部である。
内部防水壁15の換気通路端15dは、換気孔17の一端部17uから1/2H以下に位置させている。従って、内部防水壁15の換気通路端15dより低い位置に空気が直接向かうことを更に防止できる。
【0036】
中間ブリッジ部18cの長さ方向仮想中心Xは、換気孔17の一端部17uから1/2H以下の位置としている。
従って、換気孔17から流入した空気を換気孔17の一端部17u側への流れとし、換気通路Aに直接向かう空気を少なくできる。すなわち、換気孔17から流入した空気を上方側への流れとし、内部防水壁15と換気部材底面板11との間の換気通路Aに直接向かう空気を少なくできる。
【0037】
図6は本発明の他の実施例による換気部材を用いた軒裏換気装置の断面図である。
図6では、軒天有りの建造物の軒裏に設置する換気部材10を示している。野縁100には軒天板101が取り付けられている。
図6に示す換気部材10は、建造物の軒天板101の端部で、鼻隠し下地96の下方に配置される。
換気部材10は、複数の換気孔17が形成される換気孔形成板12を有しており、換気孔17の切り起こしによって形成されるブリッジ材18を備えている。換気孔形成板12及びブリッジ材18については、上記実施例と同一構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。なお、
図6に示す実施例においても、
図5(a)(b)に示す他の実施例による換気部材10で説明した換気孔形成板12及びブリッジ材18を適用することができる。
内部防水壁15は、換気孔17の一端部17u側を固定端15cとし、換気孔17の他端部17d側を換気通路端15dとし、換気通路端15dによって、換気通路Aを狭めている。
【0038】
本実施例による換気部材10は、換気孔形成板12の一方の長辺には、外方取付板51を立ち上げている。外方取付板51は、換気孔形成板12に垂直に形成される。
内部防水壁15の固定端15cは、換気孔形成板12から立ち上げて外方取付板51に向けて延出させている。内部防水壁15は外方取付板51に向けて斜めに立ち上げている。内部防水壁15の換気通路端15dは、換気孔17の一端部17uから1/2H以上の位置まで固定端15cから延出させている。従って、ブリッジ材18によって流れ方向を固定端15cの方向に変更することができ、換気通路端15dによって狭められた換気通路Aに直接向かう流れを無くすことができる。
【0039】
ブリッジ材18の最屋内方向位置18bは、内部防水壁15の換気通路端15dよりも固定端15c側の位置としている。
内部防水壁15の換気通路端15dには、内方取付板52の一端が接続されている。内方取付板52は、内部防水壁15の換気通路端15dから延出させている。内方取付板52は換気孔形成板12に平行に形成している。
換気孔形成板12の他方の長辺には、内方水切り板53を立ち下げている。内方水切り板53は、換気孔形成板12に垂直に形成される。
【0040】
外方取付板51には、延出板54と位置決め当て部55を形成している。
延出板54は、外方取付板51から延出させて換気孔17及び一部の内方取付板52の上方に配置される。
延出板54の下面であって、内方取付板52に対向する位置に熱膨張材56を設けている。
熱膨張材56は、熱膨張した状態では、延出板54と内方取付板52との間の換気通路Aを閉塞する。熱膨張材56を換気孔17の上方に配置される延出板54に設けることで、換気孔17から流れ込む熱風に対して感度良く膨張し、換気通路Aを塞ぐことができる。
【0041】
外方取付板51は、位置決め当て部55を鼻隠し下地96の下面又は鼻隠し下地96の下面に配置された梁の下面に当て止めし、ビス42によって鼻隠し下地96に固定する。
外方取付板51を鼻隠し下地96に固定した後に、内方取付板52を野縁100にビス42によって固定する。
換気孔形成板12の他方側、内部防水壁15、及び内方取付板52とで囲まれる空間に、軒天板101の端部(一端)を挿入する。