(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128926
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】電力拠出制御装置、仮想発電システム、電力拠出制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20230907BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20230907BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20230907BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20230907BHJP
【FI】
H02J3/38 170
H02J3/32
H02J3/00 180
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033615
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 治良
(72)【発明者】
【氏名】木村 駿介
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G066AE03
5G066AE09
5G066HB07
5G066HB09
5G066JB03
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】発電装置及び蓄電池を組み合わせることで、個々の能力に比べて、調整力指令の発令から実際に要求電力量を拠出し得る応動時間を短くでき、かつ、継続時間帯の電力量を確保することにより、仮想発電所を活用し得る電力市場において商品価値の高い調整力に対応させる。
【解決手段】調整主体14から調整力指令があると、電力拠出制御装置18は一部又は全部の発電分の電力を拠出する(主制御部44)。燃料電池26が非稼働中に電力の拠出要求があると、充分な電力の発電となるまでの時間が、応動時間よりも長い場合がある。副制御部46では、不足分を蓄電池28からの放電で補填し、燃料電池26の稼働状況に応じて、燃料電池26及び蓄電池28の拠出比率を変更する。最終的には、主制御部44の制御に戻す。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を拠出するまでの応動時間、及び予め定められた要求電力量を継続して拠出する継続時間帯が設定された調整力指令を受けて、発電装置及び蓄電池からの電力の拠出を制御する電力拠出制御装置であって、
前記調整力指令に基づき前記発電装置を起動させて、要求電力量を拠出することを主制御として実行し、前記応動時間までに前記発電装置の起動時の立ち上がり時間に依存する電力量の不足分を前記蓄電池からの放電により補填する副制御を実行する制御部と、
を有する電力拠出制御装置。
【請求項2】
前記制御部が、
前記応動時間の経過後から、前記発電装置で発電する電力量が前記要求電力量に到達まで、前記発電装置の発電による電力量の増加に応じて、リアルタイムで前記蓄電池からの放電による電力量を減少させる、請求項1記載の電力拠出制御装置。
【請求項3】
前記制御部が、
前記応動時間の経過後から、前記発電装置で発電する電力量が前記要求電力量に到達まで、徐々に増加する前記発電装置の発電による電力量に複数のしきい値を設定し、前記しきい値を超える毎に、前記発電装置の発電による電力量と、前記蓄電池からの放電による電力量と、による電力拠出比率を段階的に調整する、請求項1又は請求項2記載の電力拠出制御装置。
【請求項4】
前記発電装置で発電する電力の出力上昇速度をパラメータとして所持しておき、前記蓄電池に出力下降速度として与えることで、拠出比率を連続的に変化させる、請求項3記載の電力拠出制御装置。
【請求項5】
前記発電装置が、水素と酸素とを化学反応させて発電する燃料電池である、請求項1~請求項4の何れか1項記載の電力拠出制御装置。
【請求項6】
仮想発電所を活用し得る電力市場と、
前記電力市場から、電力を拠出する時間帯、及び要求される電力量が設定された調整力指令を受ける複数の調整主体と、
前記複数の調整主体の各々からの調整力指令に基づいて、電力を拠出する請求項1~請求項4の何れか1項記載の複数の電力拠出制御装置と、
を有する仮想発電システム。
【請求項7】
前記調整主体が、
前記電力市場から要求される調整力指令を、階層的に分担するために、相対的に上層側の位置付けであり、前記調整主体から前記調整力指令を受ける複数のアグリゲーションコーディネータと、相対的に下層側の位置付けであり、各アグリゲーションコーディネータから前記調整力指令を受ける複数のリソースアグリゲータと、で構成され、
前記複数のアグリゲーションコーディネータが、前記電力市場からの前記調整力指令に基づく電力量を各々分担して対応し、前記複数のリソースアグリゲータへ要求し、
前記複数のリソースアグリゲータが、所定の条件で振り分けた各群に属する前記複数の電力拠出制御装置に対して電力の拠出を要求し、かつ、拠出される電力量、前記応動時間、及び前記継続時間帯を監視する、請求項6記載の仮想発電システム。
【請求項8】
コンピュータを、
請求項1~請求項7の何れか1項記載の前記電力拠出制御装置として動作させる、
電力拠出制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を拠出するまでの応動時間、及び予め定められた要求電力量を継続して拠出する継続時間帯が設定された調整力指令を受けて、発電装置及び蓄電池からの電力の拠出を制御する電力拠出制御装置、電力拠出制御装置を含む仮想発電システム、電力拠出制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅で使用される電気等のエネルギーを制御するものとして住宅用機器制御装置又は住宅用機器制御システム(HEMS「Home Energy Management System」)が従来技術として知られている。また、近年、住宅やビル等に設置される小規模発電設備の普及に伴い、これら複数の小規模発電設備を制御してあたかも一つの発電所のように扱う仮想発電所(VPP「Virtual Power Plant」) の技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、HEMSおよびVPPを導入している場合に、蓄電池の制御をどちらにとっても意図通りに実現することが記載されている。より具体的には、特許文献1では、HEMSコントローラは、VPPゲートウェイからVPP制御開始指示を既に受信している場合において、気象警報の発令を取得したときに、VPPゲートウェイに対し状態通知を送信することでVPP制御を停止させ、気象警報の発令に基づいて蓄電池を充電する。
【0004】
また、特許文献2には、電力需要の適切な制御可能量を応答できる需給計画装置が記載されている。より具体的には、特許文献2では、電力需要の制御可能量の問い合わせに対して前記制御可能量を応答した後に前記制御可能量の応答範囲内で仮想発電所における事業者から要請される制御要請に基づいて、電力の需給計画を立てる需給計画装置であって、前記制御要請に応えることによって得られるメリットを加味して前記制御可能量を算出する計算部と、前記問い合わせに対して、前記計算部により算出される前記制御可能量を応答する応答部とを備える、需給計画装置。例えば、前記計算部は、前記制御要請に応えることによって得られるコストメリットを加味して前記制御可能量を算出する。
【0005】
なお、参考として、特許文献3には、発電機能および充電機能を有するサイトから電力系統への柔軟な電力の供給と受給を実現することを目的として、需給調整力提供システムは、各風力発電サイトの蓄電池の充放電の合算が調整力要求値となるように、調整力提供指令値を計算して指令する。需給調整力提供システムは、蓄電池が提供した調整力の積算値である調整力提供積算値、および、調整力提供積算値の上限値を受けて調整力提供積算指標を計算する進捗指標算出部201と、蓄電池の容量、充放電量、および各時刻における充電率を受けて、需給調整力可能量を計算する需給調整力可能量算出部202と、蓄電池の調整力提供指令値を計算する需給調整力指令算出部とを備えることが記載されている。
【0006】
また、参考として、特許文献4には、電力供給事業者で電源周波数や電圧を調整する必要がある場合の対処が、効果的かつ迅速に行えるようにすることを目的として、電力供給事業者からの商用交流電源又は自家発電手段で充電され、家屋内負荷又は外部負荷に放電する家庭用蓄電手段を備えたものに適用される。家庭用蓄電手段の制御手段では、蓄電手段の蓄電容量の内の予め決められた容量を、電力供給事業者からの指令で放電及び充電が可能な容量として確保する。その上で、電力供給事業者側では、商用交流電源の周波数を検出し、その検出した電源周波数の調整が必要な場合に、家庭用蓄電手段を備えた家屋に対して充電指令又は放電指令を送り、各家庭では、その充電指令又は放電指令を受信した場合に、蓄電手段の蓄電容量の内の予め決められた容量の範囲内で、蓄電手段の放電電流又は充電電流を変更させることが記載されている。
【0007】
ここで、仮想発電所における事業者から要請される制御要請には、様々な制限、特に、調整力に数段階の種類が存在する。調整力の違いは、特に、応動時間(指令後に要求される電力を拠出し得る時間)が短いほど、商品価値が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-023083号公報
【特許文献2】特開2020-027383号公報
【特許文献3】特開2020-048386号公報
【特許文献4】特開2008-141926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の家庭用蓄電システムでは、発電装置としての燃料電池及び蓄電池を備えるものの、電力供給端末として、大規模な調整力(仮想発電所の電力需要量)の拠出が困難であり、応動時間の短い要求に応えることが困難となっている。すなわち、燃料電池では、急峻に起動することができない。例えば、蓄電池の放電の際の立ち上がり時間に比べて、目的の発電による電力となるまでの立ち上がり時間が長い。このため、必然的に応動時間の長い要求(商品価値が比較的低い調整力)にしか対応することができない。
【0010】
一方、蓄電池は、立ち上がり時間が短いものの、蓄電量に限界があり、放電量を大きくすると要求される継続時間帯の電力をまかなうことができない場合がある。
【0011】
本発明は、発電装置及び蓄電池を組み合わせることで、個々の能力に比べて、調整力指令の発令から実際に要求電力量を拠出し得る応動時間を短くでき、かつ、継続時間帯の電力量を確保することにより、仮想発電所を活用し得る電力市場において商品価値の高い調整力に対応させることができる電力拠出制御装置、仮想発電システム、電力拠出制御プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る電力拠出制御装置は、電力を拠出するまでの応動時間、及び予め定められた要求電力量を継続して拠出する継続時間帯が設定された調整力指令を受けて、発電装置及び蓄電池からの電力の拠出を制御する電力拠出制御装置であって、前記調整力指令に基づき前記発電装置を起動させて、要求電力量を拠出することを主制御として実行し、前記応動時間までに前記発電装置の起動時の立ち上がり時間に依存する電力量の不足分を前記蓄電池からの放電により補填する副制御を実行する制御部と、を有している。
【0013】
本発明によれば、電力拠出制御装置は、電力を拠出するまでの応動時間、及び予め定められた要求電力量を継続して拠出する継続時間帯が設定された調整力指令を受けて、発電装置及び蓄電池からの電力の拠出を制御する。
【0014】
このとき、制御部では、調整力指令に基づき発電装置を起動させて、要求電力量を拠出することを主制御として実行する。また、応動時間までに発電装置の起動時の立ち上がり時間に依存する電力量の不足分を前記蓄電池からの放電により補填する副制御を実行する。
【0015】
このように、発電装置及び蓄電池を組み合わせることで、個々の能力に比べて、調整力指令の発令から実際に要求電力量を拠出し得る応動時間を短くでき、かつ、継続時間帯の電力量を確保することにより、仮想発電所になり得る電力市場として商品価値の高い調整力に対応することができる。
【0016】
本発明において、前記制御部が、前記応動時間の経過後から、前記発電装置で発電する電力量が前記要求電力量に到達まで、前記発電装置の発電による電力量の増加に応じて、リアルタイムで前記蓄電池からの放電による電力量を減少させることを特徴としている。
【0017】
発電装置の発電による電力量の拠出を最大限優先することで、蓄電池の蓄電量の減少を極力を抑えることができる。
【0018】
本発明において、前記制御部が、前記応動時間の経過後から、前記発電装置で発電する電力量が前記要求電力量に到達まで、徐々に増加する前記発電装置の発電による電力量に複数のしきい値を設定し、前記しきい値を超える毎に、前記発電装置の発電による電力量と、前記蓄電池からの放電による電力量と、による電力拠出比率を段階的に調整することを特徴としている。また、前記発電装置で発電する電力の出力上昇速度をパラメータとして所持しておき、前記蓄電池に出力下降速度として与えることで、拠出比率を連続的に変化させることを特報としている。
【0019】
例えば、応動時間の経過後から、発電装置で発電する電力量が前記要求電力量に到達まで、徐々に増加していく傾向の発電装置の発電量に追従して、蓄電池の放電による電力量を調整するのは、蓄電池の放電制御にかかる負担が大きい。
【0020】
そこで、徐々に増加する発電装置の発電による電力量に複数のしきい値を設定した。そして、しきい値を超える毎に、発電装置の発電による電力量と、蓄電池からの放電による電力量と、による電力拠出比率を段階的に調整する。これにより、蓄電池の放電制御にかかる負担を小さくすることができる。もしくは、徐々に増加する発電装置の出力上昇速度に合わせて蓄電池の放電制御を行ってもよい。
【0021】
本発明において、前記発電装置が、水素と酸素とを化学反応させて発電する燃料電池であることを特徴としている。
【0022】
燃料電池の特性として、起動から目的の発電量になるまでの立ち上がり時間が顕著に存在し、その立ち上がり時間は、仕様によって様々である。
【0023】
そこで、蓄電池の放電による電力量を補填することで、発電装置として、立ち上がり時間が顕著に存在する燃料電池であっても、調整力指令に応じた要求電力量を拠出することができる。
【0024】
本発明に係る仮想発電システムは、仮想発電所を活用し得る電力市場と、前記電力市場から、電力を拠出する時間帯、及び要求される電力量が設定された調整力指令を受ける複数の調整主体と、前記複数の調整主体の各々からの調整力指令に基づいて、電力を拠出する前記複数の電力拠出制御装置と、を有している。
【0025】
本発明によれば、仮想発電所を活用し得る電力市場と、電力市場から、電力を拠出する時間帯、及び要求される電力量が設定された調整力指令を受ける複数の調整主体と、複数の調整主体の各々からの調整力指令に基づいて、電力を拠出する複数の電力拠出制御装置と、を組み合わせることで、蓄電池の放電による電力量を補填することで、発電装置として、立ち上がり時間が顕著に存在する燃料電池システムであっても、要求電力量を拠出することができる仮想発電システムを構築することができる。
【0026】
本発明において、前記調整主体が、前記電力市場から要求される調整力指令を、階層的に分担するために、相対的に上層側の位置付けであり、前記調整主体から前記調整力指令を受ける複数のアグリゲーションコーディネータと、相対的に下層側の位置付けであり、各アグリゲーションコーディネータから前記調整力指令を受ける複数のリソースアグリゲータと、で構成され、前記複数のアグリゲーションコーディネータが、前記電力市場からの前記調整力指令に基づく電力量を各々分担して対応し、前記複数のリソースアグリゲータへ要求し、前記複数のリソースアグリゲータが、所定の条件で振り分けた各群に属する前記複数の電力拠出制御装置に対して電力の拠出を要求し、かつ、拠出される電力量、前記応動時間、及び前記継続時間帯を監視することを特徴としている。
【0027】
調整手段を、複数のアグリゲーションコーディネータ、及び複数のリソースアグリゲータとし、これらを階層的に設定することで、末端である複数の電力拠出制御装置を確実に管理することができ、例えば、一部に調整力指令に対応できない電力拠出制御装置が存在しても、上層側(アグリゲーションコーディネータ)に影響されることなく、下層側(リソースアグリゲータ)で対応するといったリスク分散が可能となる。
【0028】
本発明に係る電力拠出制御プログラムは、コンピュータを、請求項1~請求項6の何れか1項記載の前記電力拠出制御装置として動作させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0029】
以上説明した如く本発明では、発電装置及び蓄電池を組み合わせることで、個々の能力に比べて、調整力指令の発令から実際に要求電力量を拠出し得る応動時間を短くでき、かつ、継続時間帯の電力量を確保することにより、仮想発電所を活用し得る電力市場において商品価値の高い調整力に対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施の形態に係る仮想発電システムの全体構成図である。
【
図2】本実施の形態に係る仮想発電システムの命令系統の処理の流れを示すブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係るアグリゲーションコーディネータによる調整力指令ルーチンを示す制御フローチャートである。
【
図4】リソースアグリゲータによる調整力実行ルーチンを示す制御フローチャートである。
【
図5】本実施の形態に係るリソース(電力拠出制御装置)による拠出制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図6】本実施の形態の実施例1に係る所定の調整力に基づく、燃料電池と蓄電池との出力比率特性図である。
【
図7】本実施の形態の実施例2に係る電力供給端末における、発電推移特性図である。
【
図8】本実施の形態の実施例3(変形例)に係る所定の調整力に基づく、燃料電池と蓄電池との出力比率特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本実施の形態に係る仮想発電システム10(VPP/バーチャル・パワー・プラント)の概略図が示されている。
【0032】
仮想発電システム10は、大概的には、さまざまな再生可能エネルギーや蓄電池、自家発電装置などの電源を束ね、その地域にまるで大きな1つの発電所があるかのように電力を安定的に供給できる仕組みを言う。
【0033】
本実施の形態に係る仮想発電システム10は、仮想的(バーチャル)に、例えば、同一エリア内の電力供給源(後述する、燃料電池システム16)をコントロールするシステムであり、従来の、所謂大規模発電所にとって代わる電力インフラとして機能させる。
【0034】
仮想発電システム10は、仮想発電所を活用し得る電力市場(一般送配電事業者が需給バランスを整える需給調整市場等)12と、電力市場12から調整力指令(詳細後述)を受ける複数の調整主体14と、複数の調整主体の各々からの調整力指令に基づいて、燃料電池システム16からの電力の拠出を制御する複数の電力拠出制御装置18とによって構成される。
【0035】
なお、電力市場12は、一般送配電事業者に限定されるものではなく、例えば、発電部門や小売部門に特化した事業者が独自に調整力を調達する場合を含む。
【0036】
調整指令とは、当該調整力指令を受けてから電力の拠出までの応動時間、及び要求される電力量(要求電力量)を継続して拠出する継続時間帯が設定された電力拠出を要求する指令情報である。電力市場12は、調整主体14へ、調整指令を出力する。
【0037】
ここで、電力市場12の内、需給調整市場が発信する調整指令には、電力を拠出するまでの応動時間、及び予め定められた要求電力量を継続して拠出する継続時間帯の違いにより、以下の表1に示す5種類の調整力が存在する。
【0038】
【0039】
本実施の形態に係る仮想発電システム10の電力市場12では、表1における、「三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示」)を目的とする調整力とした調整力指令を送出し、電力拠出制御装置18の制御により、各家庭に設置された燃料電池システム16から電力を拠出するようにしている。
【0040】
なお、目的とする調整力は、「三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示」)に限らず、一次調整力及び二次調整力を目的としてもよい。
【0041】
図1に示される如く、調整主体14は階層化されており、本実施の形態では、上層側としての複数のアグリゲーションコーディネータ20と、下層側としての複数のリソースアグリゲータ22とで構成され、2階層構造となっている。なお、階層数は2階層に限定されるものではなく、3以上の階層であってもよい。また、1階層でアグリゲーションコーディネータ20が直接複数のリソースを制御してもよい。
【0042】
上層側のアグリゲーションコーディネータ20は、電力市場12から要求される調整力指令を、下層側のリソースアグリゲータ22に分担する役目を有する。
【0043】
リソースアグリゲータ22は、アグリゲーションコーディネータ20から、自身が担当する調整力指令(例えば、応動時間及び継続時間帯が同一で、要求電力量が異なる指令)を受ける。
【0044】
複数のリソースアグリゲータ22には、リソース24に接続されている。複数のリソースアグリゲータ22に接続された各々のリソース24は、複数の電力拠出制御装置18を備えている。
【0045】
電力拠出制御装置18は、本発明の第1制御部と第2制御部として機能するものであり、燃料電池システム16から出力され、リソースアグリゲータ22へ拠出する電力の拠出を管理する。なお、本発明の第1制御部及び第2制御部は、電力拠出制御装置18の中で、ICチップ又はマイクロコンピュータ等の単一の制御デバイスでそれぞれの機能を実行してもよいし、それぞれ別々の制御デバイスでそれぞれの機能を実行させるようにしてもよい。
【0046】
燃料電池システム16は、図示しない商用電源による電力と、燃料電池26の発電による電力と、蓄電池28に蓄積された電力とを併用し、各家庭の電力供給源となるコージェネレーションシステムである。
【0047】
燃料電池26による発電、及び蓄電池28の充放電は、商用電源からの電力を含め、システム制御部29によって一括管理され、家庭で消費される電力に見合う電力を供給している。
【0048】
電力拠出制御装置18は、システム制御部29による家庭内の電力供給制御に加え、リソースアグリゲータ22からの調整力指令に基づき、燃料電池システム16の燃料電池26で発電した電力、及び蓄電池28の蓄積された電力を、リソースアグリゲータ22へ拠出する電力(拠出電力)として利用するように制御する。
【0049】
図2は、
図1で説明した電力市場12、調整主体14(アグリゲーションコーディネータ20及びリソースアグリゲータ22)、及び電力拠出制御装置18(燃料電池システム16からの電力拠出制御主体)を連携して、電力市場12への電力拠出のための調整力指令制御、及び電力拠出時の拠出電力監視制御のための機能ブロック図である。
【0050】
なお、
図2の機能ブロック図の各ブロックは、各部のハード構成を限定するものではなく、機能別に分類したものであり、一部又は全部を調整力指令制御プログラム及び拠出電力監視制御プログラムに基づき動作するソフトウェアで構築してもよい。
【0051】
また、複数のアグリゲーションコーディネータ20、複数のリソースアグリゲータ22、複数のリソース24は、それぞれ同一構成であるので、その内の1つの構成の説明を説明し、その他については構成の説明を省略する。
【0052】
(アグリゲーションコーディネータ20)
アグリゲーションコーディネータ20は、電力市場12から調整力指令を受ける調整力受信部30を備えている。本実施の形態で受け取る調整力指令は、表1に示す三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示」)である。
【0053】
調整力受信部30は、受信した調整力を、調整力配分部32に送出する。調整力配分部32では、管轄する複数のリソースアグリゲータ22の電力拠出能力(事前に情報把握)に応じて、調整力(要求する発電量)を配分する。
【0054】
調整力配分部32は、送信部34に接続されており、管轄する複数のリソースアグリゲータ22に、配分した要求電力量の調整力(配分調整力)を送信する。
【0055】
配分調整力は、基本的には、応動時間及び継続時間帯が同一で、全体として要求する電力量の一部を要求するものである。
【0056】
なお、複数のリソースアグリゲータ22へ送信する配分調整力を、時系列で応動時間及び継続時間帯を異ならせ、総合的に、アグリゲーションコーディネータ20が電力市場12から受けた三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示」)を満たすようにしてもよい。
【0057】
また、アグリゲーションコーディネータ20は、複数のリソースアグリゲータ22から、図示しない電力供給ラインにより集めた電力に関する情報(電力情報)を監視する上層電力情報監視部35を備えている。
【0058】
上層電力情報監視部35では、各リソースアグリゲータ22からの電力情報に基づき、調整力を監視すると共に、それぞれの電力情報を集約して電力市場12へ拠出する。電力市場12では、三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示」)で設定された電力を、電力需要家へ提供する。
【0059】
(リソースアグリゲータ22)
リソースアグリゲータ22は、配分調整力受信部36を備えており、前述したアグリゲーションコーディネータ20の送信部34から、配分調整力を受信する。
【0060】
配分調整力受信部36は、選択部38に接続され、受信した配分調整力を送出する。
【0061】
選択部38では、リソースアグリゲータ22が担当するリソース24に属する電力拠出制御装置18を選択する。電力拠出制御装置18は、それぞれが担当する燃料電池システム16の能力(事前に情報把握)を監視している。
【0062】
選択部38は、配分調整力送信部40を介して、選択部38で選択した電力拠出制御装置18のそれぞれに対して、要求電力量の調整力(個別調整力)を送信する。
【0063】
また、リソースアグリゲータ22は、複数のリソース24から、図示しない電力供給ラインにより集めた電力に関する情報(電力情報)を監視する下層電力情報監視部42を備えている。
【0064】
下層電力情報監視部42では、リソース24の各電力拠出制御装置18から受けた電力情報に基づき、調整力を監視すると共に、それぞれの電力情報を集約してアグリゲーションコーディネータ20へ拠出する。
【0065】
(リソース24)
リソース24は、1つのリソースアグリゲータ22が管理する電力拠出制御装置18の集合体である。
【0066】
電力拠出制御装置18は、それぞれ燃料電池システム16による電力拠出を制御する。
【0067】
燃料電池システム16は、システム制御部29、燃料電池26、及び蓄電池28を備えている。システム制御部29は、燃料電池システム16が設置された家屋(家庭等)で消費する電力を制御するものであり、図示しない商用電源からの電力と、例えば、都市ガスを原料とする燃料電池26による発電と、主として燃料電池26で発電した余剰電力を充電すると共に必要に応じて放電する蓄電池28の充放電とを総合的に制御し、家屋内で消費する電力を確保する。
【0068】
一方、電力拠出制御装置18は、家屋内で消費する電力とは別に、リソースアグリゲータ22から要求された調整力(個別調整力)に基づいて、燃料電池システム16から電力を拠出する制御を行う。
【0069】
電力拠出制御装置18は、主制御部44と副制御部46とを備えている。
【0070】
主制御部44は、調整力指令に基づき前記発電装置を起動させて、要求電力量を拠出する。
【0071】
このとき、燃料電池26の状況(特に、発電停止期間)によっては、調整力に設定された応動時間(本実施の形態では、三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示」)なので、応動時間は15分)に間に合わない場合がある。
【0072】
そこで、副制御部46では、応動時間までに燃料電池26の起動時の立ち上がり時間に依存する電力量の不足分を、蓄電池28からの放電により補填する。
【0073】
これにより、燃料電池システム16全体としては、応動時間までに、要求される電力量を確保して、リソースアグリゲータ22へ拠出することができる。
【0074】
また、副制御部46では、蓄電池28からの放電による電力量を、燃料電池26の発電による電力量の変化(徐々に増加する電力量)に応じて、徐々に減少させる制御を実行し、最終的には、副制御部46による補填を終了し、主制御部44での制御に基づく、電力拠出(100%燃料電池26の発電による電力量の拠出)に移行する。
【0075】
以下に、本実施の形態の作用を、
図3~
図5のフローチャートに従い説明する。
【0076】
(アグリゲーションコーディネータ20での制御)
図3は、アグリゲーションコーディネータ20における調整力指令ルーチンを示す制御フローチャートである。
【0077】
ステップ100では、電力市場12から調整力指令情報を受信したか否かを判断する。このステップ100で否定判定された場合は、このルーチンは終了する。
【0078】
また、ステップ100で肯定判定されると、ステップ102へ移行して、調整力の種類を特定する。本実施の形態では、三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示」)であることを特定し、ステップ104へ移行する。
【0079】
ステップ104では、リソースアグリゲータ22へ指令するためのポートフォリオを作成し、次いで、ステップ106へ移行して、作成したポートフォリオに基づき、各々のリソースアグリゲータに配分調整力を指令し、ステップ108へ移行する。
【0080】
ステップ108では、応動確認時間が経過したか否かを判断する。このステップ108で肯定判定された場合は、例えば、約1分間隔で、ステップ110へ移行して、監視しているリソースアグリゲータ22の応動を確認し、次いで、ステップ112へ移行して応動状況を電力市場12へ通知し、ステップ108へ戻る。
【0081】
一方、ステップ108で否定判定された場合は、ステップ114へ移行して、所定調整時間(継続時間帯に相当)が結果したか否かを判断する。この所定時間(継続時間帯)は、三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示」)の場合は、3時間である。ステップ114で否定判定された場合は、ステップ108へ戻り、ステップ108又はステップ114で肯定判定されるまで繰り返し、ステップ114で肯定判定された場合は、このルーチンは終了する。
【0082】
(リソースアグリゲータ22での制御)
図4は、リソースアグリゲータ22における配分調整力指令ルーチンを示す制御フローチャートである。
【0083】
ステップ120では、アグリゲーションコーディネータ20から、配分調整力指令を受信したか否かを判断する。このステップ120で否定判定された場合は、このルーチンは終了する。
【0084】
また、ステップ120で肯定判定されると、ステップ122へ移行して、担当するリソース24から応動する電力拠出制御装置18の選択を行い、次いで、ステップ124へ移行して、選択した電力拠出制御装置18へ、個別調整力を指令し、ステップ126へ移行する。
【0085】
ステップ126では、応動確認時間が経過したか否かを判断する。このステップ126で肯定判定された場合は、例えば、約1分間隔で、ステップ128へ移行して、監視している電力拠出制御装置18が制御している燃料電池システム16の応動を確認し、次いで、ステップ130へ移行して応動状況をアグリゲーションコーディネータ20へ通知し、ステップ126へ戻る。
【0086】
一方、ステップ126で否定判定された場合は、ステップ132へ移行して、所定調整時間(継続時間帯に相当)が結果したか否かを判断する。この所定時間(継続時間帯)は、三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示」)の場合は、3時間である。ステップ132で否定判定された場合は、ステップ126へ戻り、ステップ126又はステップ132で肯定判定されるまで繰り返し、ステップ132で肯定判定された場合は、このルーチンは終了する。
【0087】
(電力拠出制御装置18での制御)
図5は、それぞれのリソースアグリゲータ22が担当するリソース24に属するそれぞれの電力拠出制御装置18が管理する燃料電池システム16の電力拠出制御の流れを示すフローチャートである。
【0088】
ステップ150では、リソースアグリゲータ22から、個別調整力指令を受信したか否かを判断する。このステップ150で否定判定された場合は、このルーチンは終了する。
【0089】
また、ステップ150で肯定判定されると、ステップ152へ移行して、燃料電池システム16のシステム制御部29による制御の一部又は全部を、電力拠出制御装置18へ移行し、ステップ154へ移行する。
【0090】
ステップ154では、燃料電池26は発電中か否かを判断し、否定判定された場合は、燃料電池26の起動を指示して、ステップ156へ移行する。また、ステップ154で肯定判定された場合は、ステップ158へ移行する。
【0091】
ステップ158では、蓄電池28に蓄電されている電力量を確認し、次いで、ステップ160へ移行して燃料電池26の発電による電力量を確認し、ステップ162へ移行する。
【0092】
ステップ162では、発電による電力量に応じて、蓄電池28による電力を補填する。すなわち、発電では不足する電力量を、蓄電池28の放電により補填すると共に、徐々に、上昇する発電による電力が、個別調整力に基づく電力に到達した時点で(不足解消で)、蓄電池28による放電を終了する。
【0093】
次のステップ164では、所定調整時間(継続時間帯に相当)が結果したか否かを判断する。この所定時間(継続時間帯)は、三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示」)の場合は、3時間である。ステップ164で否定判定された場合は、ステップ158へ戻り、上記工程を繰り返す。
【0094】
また、ステップ164で肯定判定された場合は、燃料電池システム16の制御を通常制御(システム制御部29による制御)に移行して、このルーチンは終了する。
【実施例0095】
(実施例1)
図6は、本実施の形態に係る仮想発電システム10において、電力市場12に集約された、調整力指令に基づく電力量(一例として5MW)の推移を示す、燃料電池26の発電による電力量と、蓄電池28の放電による電力量との出力比率特性図である。
【0096】
本実施の形態では、三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示」)なので、指令の発令から15分後には、5MWの電力量が必要である。
【0097】
図6の実線で示す特性は、燃料電池26の起動まで、最大の45分がかかることを想定しており、このため、要求電力拠出起点(横軸の0分の時点)から30分は、蓄電池28の放電による電力が100%拠出することになる。
【0098】
その後(横軸の30分の時点)、燃料電池26の発電による電力の増加に伴い、蓄電池28の放電による電力の拠出率を下げていき(
図6の実線Aで示す変化度合い参照)、燃料電池26の発電による電力が、要求電力に到達したら(横軸の90分の時点)、燃料電池の発電による電力が100%拠出する。
【0099】
なお、リソース24内に属する燃料電池26の起動まで時間は一律ではないため(全てが最大時間の45分を要する訳ではないため)、
図6の点線B~点線Dに示すように、燃料電池26と蓄電池28との拠出比率は変化する。
【0100】
(実施例2)
図7は、各家庭、すなわち、各燃料電池システムにおける、調整力指令に基づく、電力推移特性図である。
【0101】
図7の点線Eは、VPP制御(仮想発電システム10の稼働)をしないときの家庭負荷(電力消費)であり、実施例2では、燃料電池26の発電、及び蓄電池28の放電が実行されていないことを想定しており、これが、家庭負荷のベースラインとなる。
【0102】
調整力指令(本実施の形態では、三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示」)があると、VPP制御が開始され、
図6に示されるように、まず、蓄電池28の放電が開始される。その後、燃料電池26の発電が開始されてからは、徐々に、燃料電池26の発電による電力拠出の比率が上がる。結果的(
図7では、横軸90分の時点)に、燃料電池26の発電による電力拠出が100%となり、継続時間帯まで(横軸180分の時点)電力拠出を継続し、VPP制御が終了する。
【0103】
このVPP制御期間中の家庭負荷は、ベースライン(
図7の点線E参照)に対して、VPP制御による電力拠出量分だけ下がることになる(
図7の点線F参照)。例えば、この差分(調整力Δ)は、商用電源からの電力が供給される。
【0104】
(実施例3)
実施例3は、本実施の形態の実行による電力市場12へ拠出される電力量の推移(実施例1)に対する変形例である。
【0105】
実施例1では、燃料電池26の発電による電力量が増加するに従い、所謂リアルタイムに、蓄電池28の放電による電力拠出を減少させるようにしたが、実施例3では、燃料電池26の発電による電力量に複数のしきい値を設定し、それぞれのしきい値を超える毎に、段階的に、燃料電池26の発電による電力と、蓄電池28の放電による電力との拠出比率を変化させた。また、1階層でアグリゲーションコーディネータ20が直接複数のリソースを制御してもよい。
【0106】
これにより、電力拠出制御装置18の制御負担が軽減され、比較的低コストで調整力を確保することができる。