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特開2023-128942検出システム、検出装置、検出方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128942
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】検出システム、検出装置、検出方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 63/06 20060101AFI20230907BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20230907BHJP
   D02J 1/22 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B65H63/06 Z
G01N21/27 A
D02J1/22 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033637
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】何 坤霖
(72)【発明者】
【氏名】柿原 佑亮
【テーマコード(参考)】
2G059
3F115
4L036
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE01
2G059EE11
2G059FF01
2G059FF04
2G059GG02
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM02
2G059MM03
2G059MM05
3F115AA01
3F115CA16
3F115CB05
3F115CC01
3F115CC08
3F115CC24
4L036AA00
4L036AA01
4L036MA04
4L036MA33
4L036PA01
4L036UA21
(57)【要約】
【課題】糸製造における紡糸工程において、糸状体の糸揺れを高精度に検出することが可能な検出システム、検出装置、検出方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】検出システムは、糸製造における紡糸工程において、紡糸口金から押出され、且つ、移動する糸状体の糸揺れを検出するための検出システムであって、移動する糸状体に光を照射する光源部と、光源部から光が照射された糸状体が撮像された入力画像を順次生成する撮像部と、撮像部により順次生成された複数の入力画像のそれぞれに含まれる複数の画素の階調値に基づいて、複数の入力画像における同一位置の画素の階調値の変動度合いを算出する算出部と、算出部により算出された変動度合いに基づいて、糸状体の糸揺れを検出する検出部と、検出部による検出結果を出力する出力部と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸製造における紡糸工程において、紡糸口金から押出され、且つ、移動する糸状体の糸揺れを検出するための検出システムであって、
前記移動する糸状体に光を照射する光源部と、
前記光源部から光が照射された前記糸状体が撮像された入力画像を順次生成する撮像部と、
前記撮像部により順次生成された複数の入力画像のそれぞれに含まれる複数の画素の階調値に基づいて、前記複数の入力画像における同一位置の画素の階調値の変動度合いを算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記変動度合いに基づいて、前記糸状体の糸揺れを検出する検出部と、
前記検出部による検出結果を出力する出力部と、
を有することを特徴とする検出システム。
【請求項2】
前記算出部は、前記同一位置の画素の階調値の変動度合いとして、前記入力画像内で前記糸状体が押し出される方向に沿って相互に隣接する画素群の階調値の平均値の変動度合いを算出する、請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
前記算出部は、前記変動度合いとして標準偏差を算出する、請求項1または2に記載の検出システム。
【請求項4】
前記算出部は、前記入力画像内で前記ガイドの延伸方向と直交する方向の複数の位置において前記変動度合いを算出し、
前記検出部は、前記複数の位置における変動度合いの合計又は平均に基づいて、前記糸揺れを検出する、請求項1~3の何れか一項に記載の検出システム。
【請求項5】
前記検出部は、前記変動度合いの合計又は平均が閾値以上である場合、前記糸状体が揺れていると判定する、請求項4に記載の検出システム。
【請求項6】
前記算出部は、前記入力画像内の各画素の階調値に基づいて、前記入力画像内で糸状体が含まれない参照領域を検出し、前記変動度合いの合計又は平均を、前記参照領域内の各画素の階調値を用いて補正する、請求項4または5に記載の検出システム。
【請求項7】
前記算出部は、前記入力画像内の複数の領域毎に、前記変動度合いを算出する、請求項1~6の何れか一項に記載の検出システム。
【請求項8】
前記算出部は、光が照射された糸状体が撮像された複数の学習用画像が入力された場合に前記複数の学習用画像における同一位置の画素の階調値の変動に関する情報を出力するように学習された学習モデルに、前記撮像部により順次生成された複数の入力画像を入力し、学習モデルから出力された情報に基づいて、前記変動度合いを算出する、請求項1~7の何れか一項に記載の検出システム。
【請求項9】
糸製造における紡糸工程において、紡糸口金から押出され、且つ、移動する糸状体の糸揺れを検出するための検出装置であって、
光が照射された、前記移動する糸状体が撮像された入力画像を順次取得する取得部と、
前記取得部により順次取得された複数の入力画像のそれぞれに含まれる複数の画素の階調値に基づいて、前記複数の入力画像における同一位置の画素の階調値の変動度合いを算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記変動度合いに基づいて、前記糸状体の糸揺れを検出する検出部と、
前記検出部による検出結果を出力する出力部と、
を有することを特徴とする検出装置。
【請求項10】
糸製造における紡糸工程において、紡糸口金から押出され、且つ、移動する糸状体の糸揺れを検出するための検出方法であって、
前記移動する糸状体に光を照射し、
光が照射された前記糸状体が撮像された入力画像を順次生成し、
順次生成された複数の入力画像のそれぞれに含まれる複数の画素の階調値に基づいて、前記複数の入力画像における同一位置の画素の階調値の変動度合いを算出し、
前記変動度合いに基づいて、前記糸状体の糸揺れを検出し、
検出結果を出力する、
ことを特徴とする検出方法。
【請求項11】
糸製造における紡糸工程において、紡糸口金から押出され、且つ、移動する糸状体の糸揺れを検出するための検出装置の制御プログラムであって、
光が照射された、前記移動する糸状体が撮像された入力画像を順次取得し、
順次生成された複数の入力画像のそれぞれに含まれる複数の画素の階調値に基づいて、前記複数の入力画像における同一位置の画素の階調値の変動度合いを算出し、
前記変動度合いに基づいて、前記糸状体の糸揺れを検出し、
検出結果を出力する、
ことを前記検出装置に実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出システム、検出装置、検出方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾式紡糸、溶融紡糸、湿式紡糸等の紡糸法による糸製造が実施されており、糸製造における紡糸工程において、糸を安定して製造することが要求されている。
【0003】
ヒータにより加熱されて走行するフィラメント糸から発する赤外線をセンサにより感知し、センサの検出信号の複数個のピーク値データに関する偏差の大きさにより糸揺れを検出する糸揺れ検出装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-138334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
糸製造における紡糸工程において、糸が安定して製造されているか否かを判定するために、製造中の糸状体の糸揺れを高精度に検出することが求められている。
【0006】
実施形態に係る検出システム、検出装置、検出方法及び制御プログラムは、糸製造における紡糸工程において、糸状体の糸揺れを高精度に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る検出システムは、糸製造における紡糸工程において、紡糸口金から押出され、且つ、移動する糸状体の糸揺れを検出するための検出システムであって、移動する糸状体に光を照射する光源部と、光源部から光が照射された糸状体が撮像された入力画像を順次生成する撮像部と、撮像部により順次生成された複数の入力画像のそれぞれに含まれる複数の画素の階調値に基づいて、複数の入力画像における同一位置の画素の階調値の変動度合いを算出する算出部と、算出部により算出された変動度合いに基づいて、糸状体の糸揺れを検出する検出部と、検出部による検出結果を出力する出力部と、を有する。
【0008】
実施形態に係る検出システムにおいて、算出部は、同一位置の画素の階調値の変動度合いとして、入力画像内で糸状体が押し出される方向に沿って相互に隣接する画素群の階調値の平均値の変動度合いを算出することが好ましい。
【0009】
実施形態に係る検出システムにおいて、算出部は、変動度合いとして標準偏差を算出することが好ましい。
【0010】
実施形態に係る検出システムにおいて、算出部は、入力画像内でガイドの延伸方向と直交する方向の複数の位置において変動度合いを算出し、検出部は、複数の位置における変動度合いの合計又は平均に基づいて、糸揺れを検出することが好ましい。
【0011】
実施形態に係る検出システムにおいて、検出部は、変動度合いの合計又は平均が閾値以上である場合、糸状体が揺れていると判定することが好ましい。
【0012】
実施形態に係る検出システムにおいて、算出部は、入力画像内の各画素の階調値に基づいて、入力画像内で糸状体が含まれない参照領域を検出し、変動度合いの合計又は平均を、参照領域内の各画素の階調値を用いて補正することが好ましい。
【0013】
実施形態に係る検出システムにおいて、算出部は、入力画像内の複数の領域毎に、変動度合いを算出することが好ましい。
【0014】
実施形態に係る検出システムにおいて、算出部は、光が照射された糸状体が撮像された複数の学習用画像が入力された場合に複数の学習用画像における同一位置の画素の階調値の変動に関する情報を出力するように学習された学習モデルに、撮像部により順次生成された複数の入力画像を入力し、学習モデルから出力された情報に基づいて、変動度合いを算出することが好ましい。
【0015】
実施形態に係る検出装置は、糸製造における紡糸工程において、紡糸口金から押出され、且つ、移動する糸状体の糸揺れを検出するための検出装置であって、光が照射された、移動する糸状体が撮像された入力画像を順次取得する取得部と、取得部により順次取得された複数の入力画像のそれぞれに含まれる複数の画素の階調値に基づいて、複数の入力画像における同一位置の画素の階調値の変動度合いを算出する算出部と、算出部により算出された変動度合いに基づいて、糸状体の糸揺れを検出する検出部と、検出部による検出結果を出力する出力部と、を有する。
【0016】
実施形態に係る検出方法は、糸製造における紡糸工程において、紡糸口金から押出され、且つ、移動する糸状体の糸揺れを検出するための検出方法であって、移動する糸状体に光を照射し、光が照射された糸状体が撮像された入力画像を順次生成し、順次生成された複数の入力画像のそれぞれに含まれる複数の画素の階調値に基づいて、複数の入力画像における同一位置の画素の階調値の変動度合いを算出し、変動度合いに基づいて、糸状体の糸揺れを検出し、検出結果を出力する。
【0017】
実施形態に係る制御プログラムは、糸製造における紡糸工程において、紡糸口金から押出され、且つ、移動する糸状体の糸揺れを検出するための検出装置の制御プログラムであって、光が照射された、移動する糸状体が撮像された入力画像を順次取得し、順次生成された複数の入力画像のそれぞれに含まれる複数の画素の階調値に基づいて、複数の入力画像における同一位置の画素の階調値の変動度合いを算出し、変動度合いに基づいて、糸状体の糸揺れを検出し、検出結果を出力することを検出装置に実行させる。
【発明の効果】
【0018】
実施形態に係る検出システム、検出装置、検出方法及び制御プログラムは、糸製造における紡糸工程において、糸状体の糸揺れを高精度に検出することができる。
【0019】
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるだろう。前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る検出システム1の概略構成を示す図である。
図2】検出システム1を示す模式図である。
図3】検出装置500の概略構成を示す図である。
図4】検出処理の動作の例を示すフローチャートである。
図5】(A)は、基準画像Rの一例を示す模式図であり、(B)は、入力画像N1の一例を示す模式図である。
図6】吸光度と光の波長との関係を示すグラフである。
図7】(A)は、入力画像N2の一例を示す模式図であり、(B)は、入力画像内の水平方向位置と、各位置における光量との関係を示すグラフである。
図8】第1指標値と糸状体の凝固度合いとの関係を示すグラフである。
図9】総吸光度の一例を示すグラフである。
図10】(A)は、入力画像N3の一例を示す模式図であり、(B)は、入力画像N4の一例を示す模式図である。
図11】(A)は、階調平均値の一例を示すグラフであり、(B)は、第2指標値の一例を示すグラフである。
図12】(A)、(B)は、入力画像の区分について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態の一側面に係る検出システム、検出装置、検出方法及び制御プログラムについて図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0022】
図1は、実施形態に係る検出システム1の概略構成を示す図である。
【0023】
検出システム1は、糸製造における紡糸工程において、製造される糸の状態を検出するためのシステムである。図1に示すように、検出システム1は、光源装置100、撮像装置200、制御装置300、対象システム400及び検出装置500等を有する。光源装置100、撮像装置200、制御装置300及び検出装置500は、ネットワークNを介して相互に通信可能に接続される。ネットワークNは、インターネット又はイントラネット等である。なお、光源装置100、撮像装置200、制御装置300及び/又は検出装置500は、通信接続されていなくてもよい。また、光源装置100、撮像装置200及び/又は制御装置300は、USB(Universal Serial Bus)等のインタフェース規格に従って検出装置500と電気的に接続され、検出装置500と一体に構成されてもよい。
【0024】
図2は、検出システム1を示す模式図である。
【0025】
対象システム400は、紡糸により糸を製造するシステムであり、検出装置500により糸の状態が検出される検出対象である。以下では、対象システム400による紡糸の方法が乾式紡糸である場合について説明するが、対象システム400による紡糸の方法は、溶融紡糸、湿式紡糸等の他の方法でもよい。対象システム400は、チャンバー401、漏斗402及びローラ403等を有する。
【0026】
チャンバー401は、無色透明のガラス又はプラスチック等で形成され、第1流入口401a、第1流出口401b、第2流入口401c及び第2流出口401d等を含む。
【0027】
漏斗402は、無色透明のガラス又はプラスチック等で形成され、上端が第1流入口401aと対向し、下端が第1流出口401bと対向するように、チャンバー401内に配置される。漏斗402は、開口部402a及びガイド402bを含む。開口部402aは、上方ほど口径が大きく下方ほど口径が小さくなるように形成された円錐形状を有し、第1流入口401aから流入される糸の原料を蓄える。ガイド402bは、上端が開口部402aの下端に取り付けられ且つ下端が第1流出口401bと対向するように、下方に向かって延伸する円柱形状を有する。開口部402aとガイド402bの接続部分には、紡糸口金402cが設けられる。紡糸口金402cは、開口部402aに蓄えられた糸の原料が通過する複数のノズル(穴)である。
【0028】
ローラ403は、第1流出口401bの下方に、チャンバー401外に配置され、漏斗402から排出された糸を巻き取る。
【0029】
糸製造における紡糸工程において、糸の原料は、熱で気化する溶剤に溶かした状態で第1流入口401aから漏斗402の開口部402aに流入される。開口部402aに蓄えられた糸の原料は、紡糸口金402cから押出され、ガイド402b内を下方に移動する(落下する)。一方、制御装置300により熱空気が第2流入口401cから送り込まれ、第2流出口401dから排出されることにより、チャンバー401内は温められる。紡糸口金402cから押出され、ガイド402b内を移動する複数の糸状体は、溶剤が蒸発することにより繊維状となり、第1流出口401bから排出され、ローラ403により巻き取られる。
【0030】
なお、対象システム400においてガイド402bは省略されてもよい。その場合も、開口部402aに蓄えられた糸の原料は、紡糸口金402cから押出され、糸状体として下方に移動(落下)し、第1流出口401bから排出され、ローラ403により巻き取られる。
【0031】
光源装置100は、光源部の一例である。光源装置100は、発光器及びインタフェース回路等を有する。発光器は、LED(Light Emitting Diode)等であり、光、特に380nm~780nmの波長を有する可視光線を照射する。インタフェース回路は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の通信プロトコルに従った通信インタフェース回路であり、ネットワークNと通信接続する。なお、インタフェース回路は、USB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路であり、検出装置500と電気的に接続されてもよい。
【0032】
光源装置100は、検出装置500から受信した照射制御信号に従って、移動する複数の糸状体、又は、糸状体が存在しない状態の対象システム400に光を照射する。なお、光源装置100は、ボタン等の操作装置を有し、操作装置を用いた利用者による操作に従って光を照射してもよい。
【0033】
撮像装置200は、撮像部の一例である。撮像装置200は、ガイド402b(糸状体の移動経路)を挟んで光源装置100と対向するように配置される。撮像装置200は、撮像素子、結像光学系、A/D変換器及びインタフェース回路等を有する。撮像素子は、CCD(Charge Coupled Device)又はC-MOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等による撮像素子(撮像センサ)である。撮像素子は、2次元に配列され、受光した光量に応じたアナログ信号を出力する。結像光学系は、レンズ等を含み、撮像素子上に像を結ぶ。A/D変換器は、撮像素子から出力されたアナログ信号を増幅し、アナログ/デジタル変換する。インタフェース回路は、光源装置100のインタフェース回路と同様の回路である。
【0034】
撮像装置200は、検出装置500から受信した撮像制御信号に従って、所定間隔(例えば0.1秒)ごとに、光源装置100から光が照射された複数の糸状体を撮像し、光源装置100から光が照射された複数の糸状体が撮像された入力画像を順次生成する。また、撮像装置200は、検出装置500から受信した撮像制御信号に従って、糸状体が存在しない状態で光源装置100から光が照射された対象システム400の背景を撮像する。撮像装置200は、複数の糸状体が存在しない状態で光源装置100から光が照射された対象システム400の背景が撮像された基準画像を生成する。撮像装置200は、生成した入力画像及び基準画像を検出装置500に出力する。
【0035】
撮像装置200は、糸状体が押し出される方向、即ちガイド402bの延伸方向が、入力画像及び基準画像の垂直方向と一致するように配置される。即ち、入力画像及び基準画像において、垂直方向は、糸状体が押し出される方向であり、水平方向は、糸状体が押し出される方向と直交する方向である。なお、撮像装置200は、ボタン等の操作装置を有し、操作装置を用いた利用者による操作に従って、入力画像及び基準画像を生成し、インタフェース回路に接続された記憶媒体に出力してもよい。
【0036】
制御装置300は、糸製造を実行させるように対象システム400を制御する。対象システム400による紡糸の方法が乾式紡糸である場合、制御装置300は、チャンバー401に熱空気を送るための送風機と、熱空気の温度を調節するための温度調節器とを含む。対象システム400による紡糸の方法が溶融紡糸である場合、制御装置300は、チャンバー401内を冷却するための冷却機と、冷却機により冷却される温度を調節するための温度調節器とを含む。対象システム400による紡糸の方法が湿式紡糸である場合、制御装置300は、移動する糸状体を凝固させるための凝固液の濃度を調節するための調節器または凝固液の温度を調節するための調節器を含む。
【0037】
制御装置300は、インタフェース回路、記憶装置及び処理回路等をさらに有する。インタフェース回路は、光源装置100のインタフェース回路と同様の回路である。記憶装置504は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。処理回路は、例えばCPU(Central Processing Unit)、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等である。
【0038】
制御装置300は、検出装置500から受信した調整制御信号に従って、熱空気の温度、冷却する温度、又は、凝固液の濃度等の制御パラメータを調整する。なお、光源装置100は、ボタン等の操作装置を有し、操作装置を用いた利用者による操作に従って、制御パラメータを調整してもよい。
【0039】
図3は、検出装置500の概略構成を示す図である。
【0040】
検出装置500は、操作装置501、表示装置502、インタフェース装置503、記憶装置504及び処理回路510等を有する。操作装置501、表示装置502、インタフェース装置503、記憶装置504及び処理回路510は、CPUバス等を介して相互に接続される。
【0041】
操作装置501は、タッチパネル式の入力デバイス又はキーボード、マウス等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。
【0042】
表示装置502は、出力部の一例である。表示装置502は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。
【0043】
インタフェース装置503は、出力部の一例である。インタフェース装置503は、TCP/IP等の通信プロトコルに従った通信インタフェース回路を有する通信装置である。インタフェース装置503は、イーサネット(登録商標)等の通信規格に従って、ネットワークNと通信接続する。インタフェース装置503は、ネットワークNを介して光源装置100、撮像装置200又は制御装置300から受信したデータを処理回路510に送る。また、インタフェース装置503は、処理回路510から受け取ったデータを、ネットワークNを介して光源装置100、撮像装置200又は制御装置300に送信する。なお、インタフェース装置503は、USB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、光源装置100、撮像装置200又は制御装置300と電気的に接続してデータを送受信してもよい。
【0044】
記憶装置504は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置504には、検出装置500の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置504にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。コンピュータプログラムは、所定のサーバ等からインストールされてもよい。
【0045】
処理回路510は、予め記憶装置504に記憶されているプログラムに基づいて動作する。処理回路510は、例えばCPUである。処理回路510として、DSP、LSI、ASIC、FPGA等が用いられてもよい。処理回路510は、操作装置501、表示装置502、インタフェース装置503及び記憶装置504等と接続され、各装置を制御する。処理回路510は、インタフェース装置503を介して撮像装置200から入力画像を受信し、受信した入力画像に基づいて、複数の糸状体の凝固度合い又は糸揺れを検出する。
【0046】
処理回路510は、記憶装置504に記憶されたコンピュータプログラムを読み取り、読み取ったコンピュータプログラムに従って動作する。これにより、処理回路510は、取得部511、算出部512、検出部513及び出力制御部514として機能する。
【0047】
図4は、検出装置500の検出処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0048】
以下、図4に示したフローチャートを参照しつつ、検出装置500の検出処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置504に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路510により検出装置500の各要素と協働して実行される。
【0049】
最初に、漏斗402に糸の原料が注がれておらず、対象システム400に糸状体が存在しない状態で、取得部511は、インタフェース装置503を介して光源装置100に、光の照射を要求するための照射制御信号を送信する。これにより、光源装置100によって、糸状体が存在しない対象システム400に光が照射される。取得部511は、インタフェース装置503を介して撮像装置200に、基準画像の生成を要求するための撮像制御信号を送信し、基準画像を、インタフェース装置503を介して撮像装置200から受信することにより取得する。取得部511は、取得した基準画像を記憶装置504に記憶する(ステップS101)。
【0050】
なお、撮像装置200が基準画像を記憶媒体に出力している場合、取得部511は、基準画像を、インタフェース装置503に接続された記憶媒体から読み出すことにより取得する。
【0051】
図5(A)は、基準画像Rの一例を示す模式図である。
【0052】
図5(A)に示すように、基準画像Rには、チャンバー401と、漏斗402のガイド402bが含まれており、糸状体は含まれていない。
【0053】
次に、利用者により、糸の原料が漏斗402に注がれる。これにより、糸の原料が紡糸口金402cから押出され、糸状体がガイド402b内を移動する。この状態で、取得部511は、インタフェース装置503を介して光源装置100に、光の照射を要求するための照射制御信号を送信する。これにより、光源装置100によって、ガイド402b内を移動する複数の糸状体に光が照射される。取得部511は、インタフェース装置503を介して撮像装置200に、入力画像の生成を要求するための撮像制御信号を送信し、入力画像を、インタフェース装置503を介して撮像装置200から受信することにより取得する。取得部511は、取得した入力画像を記憶装置504に記憶する(ステップS102)。
【0054】
ステップS102の処理は、所定間隔ごとに実行され、取得部511は、入力画像を順次取得する。光源装置100が光を照射し続けている場合、照射制御信号の送信は省略されてもよい。また、撮像装置200が入力画像を順次生成し続けている場合、撮像制御信号の送信は省略されてもよい。撮像装置200が入力画像を記憶媒体に出力している場合、取得部511は、入力画像を、インタフェース装置503に接続された記憶媒体から読み出すことにより取得する。
【0055】
図5(B)は、入力画像N1の一例を示す模式図である。
【0056】
図5(B)に示すように、入力画像N1には、チャンバー401と、漏斗402のガイド402bが含まれ、さらに複数の糸状体B1、B2、B3が含まれている。
【0057】
次に、算出部512は、入力画像内でガイド402bが含まれ且つ複数の糸状体が含まれ得る対象領域と、入力画像内でガイド402bが含まれ且つ複数の糸状体が含まれない参照領域とを特定する(ステップS103)。例えば、算出部512は、入力画像内の各画素の階調値に基づいて対象領域及び参照領域を検出することにより、対象領域及び参照領域を特定する。階調値は、特定の色の成分値(色値)又は輝度値等である。算出部512は、取得部511により取得された所定数の入力画像のそれぞれから糸状体を検出し、何れかの入力画像において糸状体が検出された領域を対象領域として特定し、全ての入力画像において糸状体が検出されなかった領域を参照領域として特定する。
【0058】
例えば、算出部512は、入力画像内で、水平方向に延伸する所定ラインにおいて、左端側の画素から順に、各画素と各画素の右側に隣接する画素との階調値の差を算出する。算出部512は、所定ライン内で階調値の差が階調閾値を越える画素をエッジ画素として検出する。階調閾値は、事前の実験により、ガイド402bの水平方向の端部、又は、糸状体の水平方向の端部における階調値の差からマージンを減じた値に設定される。算出部512は、所定ライン内で検出されたエッジ画素のうち、最も左端側に位置するエッジ画素と、最も右端側に位置するエッジ画素とをガイド402bの端部に対応するガイド端部画素として検出する。算出部512は、二番目に左端側に位置するエッジ画素と、二番目に右端側に位置するエッジ画素とを糸状体の端部に対応する糸状体端部画素として検出する。
【0059】
図5(B)に示す例では、所定ラインLにおいて、ガイド402bの端部に対応する画素E1がガイド端部画素として検出される。また、所定ラインLにおいて、最も左端側に位置する糸状体B1の左端に対応する画素E2と、最も右端側に位置する糸状体B3の右端に対応する画素E2とが糸状体端部画素として検出される。
【0060】
算出部512は、各入力画像から検出された左側のガイド端部画素と糸状体端部画素のうち、最も左端側に位置するガイド端部画素及び糸状体端部画素の間の領域を参照領域として特定する。同様に、算出部512は、各入力画像から検出された右側のガイド端部画素と糸状体端部画素のうち、最も右端側に位置するガイド端部画素及び糸状体端部画素の間の領域を参照領域として特定する。算出部512は、特定した左側の参照領域と右側の参照領域の間の領域を対象領域として特定する。
【0061】
図5(B)に示す例では、ガイド402b内の中央部に位置する領域A1が対象領域として特定され、領域A1とガイド402bの端部との間の領域A2が参照領域として特定されている。
【0062】
なお、対象領域及び参照領域は、利用者により操作装置501を用いて設定されてもよい。
【0063】
次に、算出部512は、第1補正処理を実行する(ステップS104)。算出部512は、第1補正処理において、入力画像内の複数の画素の階調値を、基準画像の対応する画素の階調値を用いて補正する。例えば、算出部512は、入力画像内の各画素の階調値から、基準画像の対応する画素の階調値を減算することにより、入力画像内の各画素の階調値を補正する。算出部512は、入力画像内の全ての画素の階調値を補正する。なお、算出部512は、入力画像の対象領域及び参照領域内の画素の階調値のみを補正してもよい。
【0064】
これらにより、算出部512は、入力画像内の各位置における光源装置100から照射される光の強度のばらつき、チャンバー401又はガイド402bの表面の汚れ等の影響を受けないように、入力画像を補正することができる。したがって、検出装置500は、検出システム1が使用される環境の影響を受けることなく、糸状体の凝固度合い又は糸揺れを高精度に検出することができる。
【0065】
次に、算出部512は、第2補正処理を実行する(ステップS105)。算出部512は、第2補正処理において、入力画像の対象領域内の画素の階調値を、参照領域内の画素の階調値を用いて補正する。例えば、算出部512は、対象領域内の各画素の階調値から、参照領域内の全ての画素の階調値の平均値を減算することにより、対象領域内の画素の階調値を補正する。なお、算出部512は、対象領域内の各画素の階調値から、参照領域内の全ての画素の階調値の平均値を除算することにより、対象領域内の画素の階調値を補正してもよい。また、算出部512は、対象領域内の全画素の階調値の最大値(又は最小値)が、参照領域内の全画素の階調値の最大値(又は最小値)と一致するように、対象領域内の各画素の階調値を正規化してもよい。
【0066】
これらにより、算出部512は、各入力画像が生成されるタイミングにおける光源装置100から照射される光の強度のばらつき等の影響を受けないように、入力画像を補正することができる。したがって、検出装置500は、検出システム1が使用される環境の影響を受けることなく、糸状体の凝固度合い又は糸揺れを高精度に検出することができる。
【0067】
なお、第1補正処理及び第2補正処理のうちの何れか一方又は両方は、省略されてもよい。
【0068】
以下、ステップS106~S109において、検出装置500は、糸状体の凝固度合いの検出処理を実行する。
【0069】
最初に、算出部512は、紡糸口金402cから押出され且つ移動する複数の糸状体が吸収した光の総吸光度を算出する(ステップS106)。算出部512は、入力画像の対象領域内の各画素の階調値に基づいて、総吸光度を算出する。特に、算出部512は、入力画像の対象領域内の各画素の特定の色の成分値に基づいて、総吸光度を算出する。特定の色は、例えば赤色、緑色、青色、マゼンタ、シアン及び黄色のうちの何れかの色である。
【0070】
光源装置100から出射され、ガイド402bに入射される光の光量I0と、ガイド402bを透過する光の光量Iとの間には、以下の式(1)が成立する。
【数1】
ここで、εは、吸収係数であり、光が透過する物質の性質に応じた固定値を有する。cは光が透過する物質の濃度である。lは光が透過する物質の長さ(光路長)である。(εcl)は、吸光度を示す。
【0071】
式(1)から以下の式(2)が成立する。
【数2】
即ち、光が単位光路長の物質を通過するとき、光の減衰量は、その物質の性質、濃度及び光の強度に比例する。
【0072】
図6は、吸光度と光の波長との関係を示すグラフである。
【0073】
図6の横軸は光の波長を示し、縦軸は吸光度を示す。グラフ601は、光が、凝固していない未凝固状態である糸状体を透過したときの吸光度を示す。グラフ602は、光が、凝固し過ぎである過凝固状態である糸状体を透過したときの吸光度を示す。グラフ603は、光が糸状体を透過していないときの吸光度を示す。図6に示すように、光が、未凝固状態である糸状体を通過したときと、過凝固状態である糸状体を通過したときとで、吸光度は大きく変化する。特に、吸光度は、特定の色成分(赤色成分、緑色成分等)において大きく変化する。したがって、算出部512は、入力画像の対象領域内の各画素の特定の色の成分値を用いることにより、糸状体が吸収した光の吸光度を高精度に算出することができる。
【0074】
例えば、検出装置500は、事前の実験により、各画素の特定の色の成分値と、各画素に対応する位置において糸状体が吸収した光の吸光度との関係を示す関係式を作成しておく。算出部512は、その関係式を用いて各画素の特定の色の成分値を吸光度に変換し、入力画像の対象領域内の各画素における吸光度の合計を総吸光度として算出する。なお、上記したように、各画素の特定の色の成分値と吸光度とは一定の関係を有しているため、算出部512は、各画素の特定の色の成分値を吸光度とみなし、入力画像の対象領域内の各画素の特定の色の成分値の合計を総吸光度とみなしてもよい。これらにより、算出部512は、糸状体が吸収した光の吸光度を短時間に算出することができ、検出処理の処理負荷を低減させることができる。
【0075】
なお、算出部512は、第1色及び第1色と異なる第2色のそれぞれについて総吸光度を算出してもよい。例えば、第1色は、赤色、緑色及び青色のうちの何れかの色(例えば赤色)であり、第2色は、赤色、緑色及び青色のうちの何れか他の色(例えば青色)である。なお、第1色は、マゼンタ、シアン及び黄色のうちの何れかの色であり、第2色は、マゼンタ、シアン及び黄色のうちの何れか他の色でもよい。
【0076】
また、算出部512は、入力画像の対象領域内の各画素の輝度値に基づいて総吸光度を算出してもよい。その場合、算出部512は、各画素の輝度値と、各画素に対応する位置において糸状体が吸収した光の吸光度との関係を示す関係式を作成しておく。算出部512は、その関係式を用いて各画素の輝度値を吸光度に変換し、入力画像の対象領域内の各画素における吸光度の合計を総吸光度として算出する。
【0077】
このように、算出部512は、撮像装置200により生成され、取得部511により取得された入力画像に含まれる複数の画素の階調値に基づいて、総吸光度を算出する。
【0078】
図7(A)は、入力画像N2の一例を示す模式図である。
【0079】
図7(A)に示す、入力画像N2では、入力画像N1に示した複数の糸状体B1、B2、B3のうち、糸状体B1及びB2が重なって表示されている。ガイド402bは円柱形状を有しているため、撮像装置200の各撮像素子の撮像方向上に複数の糸状体が配置されて、入力画像内で複数の糸状体が重なって表示される可能性がある。また、複数の糸状体が重ならないように紡糸口金402cを配置しても、糸揺れが発生し、入力画像内で複数の糸状体が重なって表示される可能性がある。
【0080】
図7(B)は、入力画像内の水平方向位置と、各位置における光量との関係を示すグラフである。
【0081】
図7(B)の横軸は入力画像内の水平方向位置を示し、縦軸は各位置における光量(対数)を示す。グラフ700は、糸状体を透過していない光の光量を示し、グラフ701、702及び703は、それぞれ糸状体を透過した光の赤色成分、緑色成分及び青色成分の光量を示す。グラフ701、702及び703に示すように、各水平方向位置における、糸状体を透過した光の赤色成分、緑色成分及び青色成分の光量(糸状体を透過していない光の光量に対する減衰量)は、その位置における糸状体の重なり度合いにより変動する。上記したように、吸光度は、光が透過する物質の長さ(光路長)に比例する。そのため、糸状体が重なっている位置では、光の減衰量が大きくなり、各色成分の成分値が小さくなる。しかしながら、入力画像内で糸状体の重なりが発生している場合、その分だけ、糸状体が存在しない領域が増大する。糸状体が存在しない領域では、光が減衰せず、各色成分の成分値が大きくなる。全ての位置における各色成分の光量(糸状体を透過していない光の光量に対する減衰量)の総和、即ちグラフ700と、グラフ701、702、703のそれぞれとで囲まれる領域の面積は、略一定となる。
【0082】
算出部512は、画素毎に糸状体の重なりを考慮するのではなく、対象領域内の全画素に対してまとめて総吸光度を算出する。これにより、算出部512は、総吸光度の演算にかかる処理負荷の増大を抑制させつつ、総吸光度を高精度に算出することができる。
【0083】
なお、対象領域内の画素毎に糸状体が含まれるか否かを判定し、糸状体が含まれる画素についてのみ吸光度を算出し、算出した各吸光度の平均値を総吸光度の代わりに使用して糸状体の凝固度合いを検出することも可能である。しかしながら、対象領域内で糸状体が含まれる画素の数は、糸状体の重なりの発生度合いにより変化するため、各吸光度の平均値は、糸状体の重なりの発生度合いにより変動する。一方、総吸光度は、糸状体の重なりの発生度合いによって変動しない。そのため、検出装置500は、総吸光度に基づいて糸状体の凝固度合いを検出することにより、糸状体の凝固度合いをより高精度に検出することができる。
【0084】
次に、算出部512は、算出した総吸光度に基づいて、紡糸口金402cから押出され且つ移動する複数の糸状体の凝固度合いに関する第1指標値を算出する(ステップS107)。第1指標値は、総吸光度に基づく指標値の一例である。例えば、算出部512は、特定の色の総吸光度自体を第1指標値として算出する。
【0085】
算出部512は、第1色の総吸光度と、第2色の総吸光度との差を第1指標値として算出してもよい。チャンバー401又はガイド402bの表面に汚れが付着している場合、第1色の成分値と、第2色の成分値は、その汚れによって同様の影響を受ける。算出部512は、第1色の総吸光度と、第2色の総吸光度との差を第1指標値として算出することにより、チャンバー401又はガイド402bの表面の汚れによる影響をキャンセルするように第1指標値を算出することができる。
【0086】
なお、算出部512は、まず、入力画像の対象領域内の各画素の第1色の吸光度と第2色の吸光度との差を算出しておき、算出した差の合計を第1指標値として算出してもよい。その場合も、第1色の総吸光度と第2色の総吸光度との差を第1指標値とする場合と、同一の値を有する第1指標値が算出される。
【0087】
図8は、第1色の総吸光度と第2色の総吸光度との差を第1指標値とした場合の、第1指標値と糸状体の凝固度合いとの関係を示すグラフである。
【0088】
図8の横軸は凝固度合いを示し、縦軸は第1指標値を示す。凝固度合いは、数値が大きいほど糸状体がより凝固していることを示し、数値が小さいほど糸状体が凝固していないことを示す。図8のグラフ上の各点は、様々な状態の糸状体を撮像した実験において、各糸状体の実際の凝固度合いと、入力画像から算出された第1指標値とに対応する位置に配置されている。ライン811は、各点を通過する近似直線を示す。図8に示すように、第1指標値(第1色の総吸光度と第2色の総吸光度との差)は、糸状体の凝固度合いと略線形の関係を有している。したがって、算出部512は、第1色の総吸光度と第2色の総吸光度との差を第1指標値として用いることにより、糸状体の凝固度合いを高精度に検出することができる。
【0089】
また、算出部512は、第1色の総吸光度と、第2色の総吸光度との比を第1指標値として算出してもよい。紡糸口金402cから押出され且つガイド402b内を移動する糸状体の径は、糸揺れの発生等により、変動する可能性がある。上記したように、吸光度は、光が通過する物質の長さ(光路長)により変動し、光路長に比例して大きくなるため、糸状体の径に比例して大きくなる。算出部512は、第1色の総吸光度と、第2色の総吸光度との比を第1指標値として算出することにより、糸状体の径の大きさの変動による影響をキャンセルするように第1指標値を算出することができる。
【0090】
次に、検出部513は、算出部512により算出された第1指標値に基づいて、糸製造における紡糸工程において紡糸口金402cから押出され且つ移動する複数の糸状体の凝固度合いを検出する(ステップS108)。即ち、検出部513は、算出部512により算出された総吸光度に基づいて、複数の糸状体の凝固度合いを検出する。または、検出部513は、第1色の総吸光度と第2色の総吸光度との差又は比に基づいて、複数の糸状体の凝固度合いを検出する。
【0091】
検出部513は、第1指標値が第1閾値以上である場合、糸状体が凝固し過ぎていると判定し、凝固度合いとして過凝固状態を検出する。第1閾値は、事前の実験により、過凝固状態の糸状体が撮像された入力画像から算出された第1指標値の最小値に設定される。検出部513は、第1指標値が第1閾値より低い第2閾値以下である場合、糸状体がまだ凝固していないと判定し、凝固度合いとして未凝固状態を検出する。第2閾値は、事前の実験により、未凝固状態の糸状体が撮像された入力画像から算出された第1指標値の最大値に設定される。一方、検出部513は、第1指標値が第1閾値未満であり且つ第2閾値より大きい場合、糸状体が適切に凝固していると判定し、凝固度合いとして良凝固状態を検出する。
【0092】
図9は、第1指標値の一例を示すグラフである。
【0093】
図9の横軸は時刻を示し、縦軸は各時刻において算出された第1指標値を示す。グラフ900は、各時刻における第1指標値を示す。第1指標値が第1閾値以上である場合、糸状体は凝固し過ぎていると判定され、第1指標値が第2閾値以下である場合、糸状体は凝固していないと判定され、第1指標値が第1閾値未満であり且つ第2閾値より大きい場合、糸状体は適切に凝固していると判定される。検出部513は、第1指標値に基づいて、糸状体の凝固度合いを適切に検出することができる。
【0094】
なお、検出部513は、算出部512により算出された総吸光度自体を糸状体の凝固度合いとして検出してもよい。
【0095】
また、検出部513は、第1指標値が、第1閾値より大きい第3閾値以上である場合、チャンバー401又はガイド402bに汚れが付着している等、対象システム400に異常が発生していると判定してもよい。第3閾値は、事前の実験により、対象システム400に異常が発生していない状態で、過凝固状態の糸状体が撮像された入力画像から算出された第1指標値の最大値に設定される。
【0096】
次に、出力制御部514は、検出部513による検出結果、即ち糸状体の凝固度合いを表示装置502に表示することにより出力する(ステップS109)。なお、出力制御部514は、検出部513による検出結果を、インタフェース装置503を介して外部装置に送信することにより出力してもよい。検出部513による検出結果を受信した外部装置は、受信した検出結果を表示する。利用者は、表示された検出結果を参照し、制御装置300において、糸製造に係る制御パラメータ(温度等)を適切に調整することができる。
【0097】
また、出力制御部514は、第1指標値が第3閾値以上である場合、対象システム400に異常が発生していることを表示装置502に表示し又はインタフェース装置503を介して外部装置に送信することにより、対象システム400の異常を利用者に通知する。これにより、利用者は、対象システム400に異常が発生していることを認識し、対象システム400を適切に復旧させることができる。
【0098】
また、出力制御部514は、インタフェース装置503を介して制御装置300に、制御パラメータの調整を要求するための調整制御信号を送信してもよい。例えば、出力制御部514は、第1指標値の目標値の入力を受付け、第1指標値が当該目標値に近づくように制御装置300を制御してよい。具体的な制御方法としてはPID制御等が挙げられる。これにより、例えば未凝固が発生している場合、熱空気の温度を低下させ、過凝固が発生している場合、熱空気を上昇させるように、制御装置300に対象システム400を制御させることが可能となる。また、出力制御部514は、インタフェース装置503を介して制御装置300に、運転モードの切り替えを要求するための切替制御信号を送信してもよい。例えば、出力制御部514は、未凝固又は過凝固が発生している場合、糸製造を停止させるように、制御装置300に対象システム400を制御させる。または、出力制御部514は、未凝固又は過凝固が発生している場合、利用者から運転又は原料供給等についての状況の目視検査の完了が通知されるまで糸製造を停止させるように、制御装置300に対象システム400を制御させる。これらにより、検出システム1は、糸を安定して製造することが可能となる。
【0099】
以下、ステップS110~S116において、検出装置500は、糸状体の糸揺れの検出処理を実行する。
【0100】
最初に、算出部512は、入力画像の対象領域内で水平方向の各位置毎に、垂直方向に沿って相互に隣接する画素群の階調値の平均値を算出する。即ち、算出部512は、対象領域内で、垂直方向に沿ったライン毎に、各ラインに含まれる画素群の階調値の平均値を算出する。以下では、対象領域内で垂直方向に沿って相互に隣接する画素群の階調値の平均値を階調平均値と称する場合がある。算出部512は、水平方向の各位置について算出した階調平均値を記憶装置504に記憶する(ステップS110)。検出装置500は、糸状体が押し出される方向に沿って配置された画素群の階調値の平均値を用いて糸状体の糸揺れを検出することにより、入力画像内のノイズの影響を除去でき、糸状体の糸揺れをより高精度に検出できる。
【0101】
次に、算出部512は、水平方向の各位置毎に、取得部511により取得された最新の所定数の入力画像について算出された階調平均値の変動度合いを算出する(ステップS111)。所定数は、二以上の任意の数に設定される。例えば、算出部512は、変動度合いとして、標準偏差を算出する。算出部512は、標準偏差を算出することにより、各階調平均値のばらつきの度合いを簡易に且つ高精度に算出することができる。なお、変動度合いとして、分散、半値幅等、各階調平均値のばらつきを示す他の任意の値が使用されてもよい。
【0102】
なお、ステップS110の処理が省略され、算出部512は、階調平均値を算出することなく、入力画像の対象領域内の全ての画素について、最新の所定数の入力画像において相互に対応する各画素の階調値の変動度合いを算出してもよい。但し、その場合、変動度合いの算出にかかる処理負荷が増大する。また、算出部512は、入力画像の対象領域内で、水平方向に延伸する所定のライン内の画素についてのみ、最新の所定数の入力画像において相互に対応する各画素の階調値の変動度合いを算出してもよい。その場合、入力画像内のノイズ等の影響により、算出される変動度合いの精度が低くなる。算出部512は、入力画像における所定位置の画素の階調値の変動度合いとして、垂直方向に隣接する複数の画素の階調値の平均値の変動度合いを算出することにより、低負荷に且つ高精度に変動度合いを算出できる。
【0103】
このように、算出部512は、撮像装置200により順次生成され且つ取得部511により順次取得された複数の入力画像のそれぞれに含まれる複数の画素の階調値に基づいて、複数の入力画像における同一位置の画素の階調値の変動度合いを算出する。算出部512は、複数の入力画像における同一位置の画素の階調値の変動度合いとして、入力画像内で糸状体が押し出される方向に沿って相互に隣接する画素群の階調値の平均値の変動度合いを算出する。また、算出部512は、入力画像内で糸状体が押し出される方向と直交する方向の複数の位置において変動度合いを算出する。
【0104】
図10(A)は、所定時刻に生成された入力画像N3の一例を示す模式図であり、図10(B)は、その所定時刻の所定時間後に生成された入力画像N4の一例を示す模式図である。
【0105】
図10(A)、(B)に示すように、入力画像N3、N4には、複数の糸状体B4、B5、B6が含まれる。但し、入力画像N4では、糸揺れが発生しており、水平方向において、複数の糸状体B4、B5、B6のうち、糸状体B4及びB6の位置は、入力画像N3における糸状体B4及びB6の位置から変化している。したがって、入力画像N3において糸状体S4、S6が存在し且つ入力画像N4において糸状体B4、B6が存在しない位置P4、P6では、入力画像N3と入力画像N4とで階調値が変化する。一方、入力画像N3及びN4の両方において糸状体が存在しない位置P0、及び、入力画像N3及びN4の両方において糸状体B5が存在する位置P5では、入力画像N3と入力画像N4とで階調値が変化しない。
【0106】
図11(A)は、階調平均値の一例を示すグラフである。
【0107】
図11(A)の横軸は時刻を示し、縦軸は各時刻において算出された階調平均値を示す。グラフ1101は、糸状体が常に存在しない位置P0における階調平均値の遷移を示す。グラフ1102は、糸状体が常に存在する位置P5における階調平均値の遷移を示す。グラフ1103は、糸状体の状態が、糸状体が存在する状態と存在しない状態とで変化する位置P4における階調平均値の遷移を示す。グラフ1101、グラフ1102に示すように、糸状体の状態が変化しない位置P0及びP5における階調平均値は、時間の経過に従って変化しないため、位置P0及びP5における変動度合いは小さい。一方、グラフ1103に示すように、糸状体の状態が変化する位置P4における階調平均値は、時間の経過に従って変化するため、位置P4(及びP6)における変動度合いは大きい。
【0108】
算出部512は、複数の入力画像における同一位置の画素の階調値の変動度合いを用いることにより、糸揺れが発生しているか否かを高精度に判定することができる。
【0109】
次に、算出部512は、算出した変動度合いに基づいて、紡糸口金402cから押出され且つ移動する糸状体の糸揺れに関する第2指標値を算出する(ステップS112)。例えば、算出部512は、水平方向の各位置毎に算出した変動度合いの合計を、第2指標値として算出する。なお、算出部512は、水平方向の各位置毎に算出した変動度合いの平均を、第2指標値として算出してもよい。また、算出部512は、対象領域内の全ての画素について算出した変動度合いの合計又は平均を、第2指標値として算出してもよい。検出装置500は、複数の位置について算出した変動度合いの合計又は平均を用いて糸状体の糸揺れを検出することにより、入力画像内のノイズの影響を除去でき、糸状体の糸揺れをより高精度に検出できる。なお、算出部512は、入力画像内の一画素についてのみ変動度合いを算出し、その変動度合いを第2指標値として算出してもよい。
【0110】
図11(B)は、第2指標値の一例を示すグラフである。
【0111】
図11(B)の横軸は時刻を示し、縦軸は各時刻において算出された第2指標値を示す。グラフ1111は、糸揺れが発生している糸状体が撮像された入力画像について算出された第2指標値の遷移を示す。グラフ1111に示すように、糸揺れが発生している場合、第2指標値は時間の経過に従って変化するが、あるタイミングでは十分に大きい値を有する。
【0112】
なお、算出部512は、ステップS105において第2補正処理を実行する代わりに、第2指標値、即ち変動度合いの合計又は平均を、参照領域内の画素の階調値を用いて補正してもよい。例えば、算出部512は、対象領域と同様にして、参照領域についても第2指標値を算出する。なお、算出部512は、第2指標値として変動度合いの合計を算出する場合、参照領域について算出した第2指標値に、参照領域の面積(画素数)に対する対象領域の面積(画素数)の比を乗算する。これにより、算出部512は、対象領域の第2指標値の算出対象の画素数と、参照領域の第2指標値の算出対象の画素数とを一致させることができる。算出部512は、対象領域について算出した第2指標値から、参照領域について算出した第2指標値を減算することにより、対象領域について算出した第2指標値を補正する。なお、算出部512は、対象領域について算出した第2指標値から、参照領域について算出した第2指標値を除算することにより、対象領域について算出した第2指標値を補正してもよい。これらにより、算出部512は、各入力画像が生成されるタイミングにおける光源装置100から照射される光の強度のばらつき等の影響を受けないように、入力画像を補正することができる。したがって、検出装置500は、検出システム1が使用される環境の影響を受けることなく、糸状体の糸揺れを高精度に検出することができる。
【0113】
また、算出部512は、ディープラーニング等の所定の学習方式により事前学習された学習モデルを用いて、変動度合いを算出してもよい。その場合、検出装置500は、光が照射された糸状体が撮像された複数の学習用画像が入力された場合に、その複数の学習用画像における同一位置の画素の階調値の変動に関する情報を出力するように学習された学習モデルを記憶装置504に予め記憶する。例えば、学習モデルは、複数の学習用画像内で相互に対応する画素における階調値の変動が大きいほど大きい値を有し、変動が小さいほど小さい値を有する出力値を出力する。算出部512は、撮像装置200により順次生成され且つ取得部511により順次取得された複数の(所定数の)入力画像を入力し、学習モデルから出力された情報に基づいて、変動度合いを算出する。算出部512は、学習モデルから出力された出力値を変動度合いとする。なお、算出部512は、学習モデルから出力された出力値に所定のオフセット値を加算もしくは減算した値、又は、所定の係数を乗算もしくは除算した値を変動度合いとして算出してもよい。これらにより、算出部512は、変動度合いを高精度に且つ低負荷に算出することができる。
【0114】
次に、検出部513は、算出部512により算出された第2指標値が所定閾値以上であるか否かを判定する(ステップS113)。所定閾値は、事前の実験により、糸揺れが発生している糸状体が撮像された入力画像から算出された第2指標値の最小値に設定される。
【0115】
検出部513は、第2指標値が所定閾値未満である場合、糸製造における紡糸工程において紡糸口金402cから押出され且つ移動する糸状体が揺れていないと判定する(ステップS114)。
【0116】
一方、検出部513は、第2指標値が所定閾値以上である場合、糸製造における紡糸工程において紡糸口金402cから押出され且つ移動する糸状体が揺れていると判定する(ステップS115)。
【0117】
図11(B)に示す例では、時刻tにおいて、第2指標値が所定閾値以上となり、糸状体が揺れていると判定される。
【0118】
このように、検出部513は、算出部512により算出された変動度合いに基づいて、糸製造における紡糸工程において紡糸口金402cから押出され且つ移動する糸状体の糸揺れを検出する。また、検出部513は、算出部512により算出された第2指標値、即ち変動度合いの合計又は平均に基づいて、糸揺れを検出する。これにより、検出部513は、糸揺れが発生しているか否かを高精度に判定することができる。
【0119】
次に、出力制御部514は、検出部513による検出結果、即ち糸揺れが発生しているか否かを表示装置502に表示することにより出力する(ステップS116)。なお、出力制御部514は、検出部513による検出結果を、インタフェース装置503を介して外部装置に送信することにより出力してもよい。検出部513による検出結果を受信した外部装置は、受信した検出結果を表示する。利用者は、表示された検出結果を参照し、制御装置300において、糸製造に係る制御パラメータ(温度等)を適切に調整することが可能となる。
【0120】
なお、出力制御部514は、インタフェース装置503を介して制御装置300に、制御パラメータの調整を要求するための調整制御信号を送信してもよい。例えば、出力制御部514は、第1指標値の目標値の入力を受付け、第1指標値が当該目標値に近づくように制御装置300を制御してよい。具体的な制御方法としてはPID制御等が挙げられる。これにより、例えば糸揺れが発生している場合、熱空気の温度を低下させるように、制御装置300に対象システム400を制御させることが可能となる。また、出力制御部514は、インタフェース装置503を介して制御装置300に、運転モードの切り替えを要求するための切替制御信号を送信してもよい。例えば、出力制御部514は、糸揺れが発生している場合、糸製造を停止させるように、制御装置300に対象システム400を制御させる。または、出力制御部514は、糸揺れが発生している場合、利用者から運転又は原料供給等についての状況の目視検査の完了が通知されるまで糸製造を停止させるように、制御装置300に対象システム400を制御させる。これにより、検出システム1は、糸を安定して製造することが可能となる。
【0121】
また、ステップS106~S109の処理、及び、ステップS110~S116の処理のうちの何れか一方が省略され、検出装置500は、糸状体の凝固度合いの検出処理、及び、糸状体の糸揺れの検出処理のうちの何れか一方のみを実行してもよい。
【0122】
また、検出装置500は、糸状体の糸揺れの検出処理において、少なくとも一つの糸状体の糸揺れを検出すればよい。したがって、糸状体の糸揺れの検出処理が実行される際、光源装置100は、移動する少なくとも一つの糸状体に光を照射し、撮像装置200は、少なくとも一つの糸状体が撮像された入力画像を生成すればよい。なお、検出装置500は、糸状体の糸揺れの検出処理において、複数の糸状体の糸揺れを検出してもよい。
【0123】
以上詳述したように、検出装置500は、光が照射された複数の糸状体が撮像された入力画像に基づいて、糸状体の凝固度合いを検出する。これにより、検出装置500は、糸製造における紡糸工程において、糸状体の凝固度合いを高精度に検出することができる。
【0124】
また、検出装置500は、光が照射された複数の糸状体が撮像された入力画像に基づいて、糸状体の糸揺れを検出する。これにより、検出装置500は、糸製造における紡糸工程において、糸状体の糸揺れを高精度に検出することができる。
【0125】
利用者は、糸製造に係るパラメータ(温度等)を適切に調整することが可能となる。したがって、検出システム1は、糸を安定して製造することが可能となる。
【0126】
以上、好適な実施形態について説明してきたが、実施形態はこれらに限定されない。例えば、算出部512は、入力画像を複数の領域に区分し、入力画像内の区分した複数の領域毎に、総吸光度を算出してもよい。
【0127】
図12(A)、(B)は、入力画像の区分について説明するための模式図である。
【0128】
図12(A)、(B)には、図5(B)に示した入力画像N1が示されている。図12(A)に示す例では、入力画像N1は、水平方向において複数の領域R1~R3に区分されている。一方、図12(B)に示す例では、入力画像N1は、垂直方向において複数の領域R4~R6に区分されている。
【0129】
図4のステップS106において、算出部512は、入力画像を水平方向及び/又は垂直方向において複数の領域に区分し、区分した複数の領域毎に、特定の色又は第1色及び第2色について総吸光度を算出する。ステップS107において、算出部512は、区分した複数の領域毎に、算出した総吸光度に基づいて第1指標値を算出する。ステップS108において、検出部513は、区分した複数の領域毎に、算出部512により算出された第1指標値に基づいて、複数の糸状体の凝固度合いを検出する。ステップS109において、出力制御部514は、区分した複数の領域毎に、検出部513による検出結果を出力する。
【0130】
入力画像を水平方向において複数の領域に区分することにより、検出装置500は、ガイド402bの内側部分における凝固度合いと外側部分における凝固度合いとを独立して検出できる。一方、入力画像を水平方向において複数の領域に区分することにより、検出装置500は、ガイド402bの上側(上流側)部分における凝固度合いと下側(下流側)部分における凝固度合いとを独立して検出できる。これらにより、検出装置500は、一部の領域でのみ発生している過凝固又は未凝固を高精度に検出することができる。利用者は、領域毎の検出結果に基づいて、漏斗402が適切に設置されているか否か、又は、糸の原料が適切に供給されているか否か等を認識することができる。
【0131】
なお、検出部513は、各領域について算出された第1指標値の差分に基づいて、対象システム400に異常が発生しているか否かを判定してもよい。その場合、ステップS108において、検出部513は、複数の領域の全ての組合せについて第1指標値の差分を算出し、何れかの差分が閾値以上である場合に、対象システム400に異常が発生していると判定する。対象システム400に異常が発生した場合、ステップS109において、出力制御部514は、対象システム400に異常が発生していることを表示装置502に表示し又はインタフェース装置503を介して外部装置に送信することにより、利用者に通知する。また、出力制御部514は、インタフェース装置503を介して制御装置300に、上記した調整制御信号又は切替制御信号を送信してもよい。検出装置500は、領域毎の状態が異なる場合に異常の発生を検出でき、対象システム400の異常をより高精度に検出することができる。
【0132】
また、第1指標値と比較するための第1閾値及び/又は第2閾値は、領域毎に異なる値に設定されてもよい。例えば、第1閾値及び/又は第2閾値は、上側の領域ほど小さい値に設定され、下側の領域ほど大きい値に設定される。糸状体は落下中に凝固していくため、糸状体が凝固している可能性が低い上側の領域と、糸状体が凝固している可能性が高い下側の領域とで閾値を異ならせることにより、検出部513は、過凝固状態又は未凝固状態をより高精度に検出できる。
【0133】
同様に、算出部512は、各入力画像を複数の領域に区分し、各入力画像内の区分した複数の領域毎に、複数の入力画像における同一位置の画素の階調値の変動度合いを算出してもよい。
【0134】
図4のステップS110において、算出部512は、入力画像を水平方向及び/又は垂直方向において複数の領域に区分し、区分した複数の領域毎に、階調平均値を算出する。ステップS111において、算出部512は、区分した複数の領域毎に、複数の入力画像における同一位置の画素の階調値の変動度合いを算出する。ステップS112において、算出部512は、区分した複数の領域毎に、算出した変動度合いに基づいて第2指標値を算出する。ステップS113において、検出部513は、区分した複数の領域毎に、算出部512により算出された第2指標値に基づいて、複数の糸状体の糸揺れを検出する。ステップS109において、出力制御部514は、区分した複数の領域毎に、検出部513による検出結果を出力する。
【0135】
入力画像を水平方向において複数の領域に区分することにより、検出装置500は、ガイド402bの内側部分における糸揺れと外側部分における糸揺れとを独立して検出できる。一方、入力画像を水平方向において複数の領域に区分することにより、検出装置500は、ガイド402bの上側(上流側)部分における糸揺れと下側(下流側)部分における糸揺れとを独立して検出できる。これらにより、検出装置500は、一部の領域でのみ発生している糸揺れを高精度に検出することができる。利用者は、領域毎の検出結果に基づいて、漏斗402が適切に設置されているか否か、又は、糸の原料が適切に供給されているか否か等を認識することができる。
【0136】
また、検出装置500は、一台の装置で構成されるものに限定されず、複数の装置で構成されてもよい。その場合、クラウドコンピューティングの形態で検出処理のサービスが提供されるように、ネットワーク上に複数の検出装置が分散して配置され、各検出装置が協働して検出処理を分担してもよい。
【符号の説明】
【0137】
1 検出システム
100 光源装置
200 撮像装置
500 検出装置
502 表示装置
503 インタフェース装置
511 取得部
512 算出部
513 検出部
514 制御部
図1
図2
図3
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図5
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