IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スタンレー電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-灯具 図1
  • 特開-灯具 図2
  • 特開-灯具 図3
  • 特開-灯具 図4
  • 特開-灯具 図5A
  • 特開-灯具 図5B
  • 特開-灯具 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128943
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/36 20180101AFI20230907BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20230907BHJP
   F21S 41/37 20180101ALI20230907BHJP
   F21V 17/00 20060101ALI20230907BHJP
   F21V 7/09 20060101ALI20230907BHJP
   F21V 7/28 20180101ALI20230907BHJP
   F21V 7/06 20060101ALI20230907BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20230907BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230907BHJP
【FI】
F21S41/36
F21S41/148
F21S41/37
F21V17/00 250
F21V7/09 510
F21V7/28 250
F21V7/06 100
F21W102:13
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033639
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 歩
(72)【発明者】
【氏名】今 大輔
(72)【発明者】
【氏名】金近 正之
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晴臣
【テーマコード(参考)】
3K011
【Fターム(参考)】
3K011CA06
(57)【要約】
【課題】再帰性反射材を内蔵する小型の灯具を提供する。
【解決手段】ランプ装置1は、発光素子2と、発光素子2からの可視光Lvを前方に反射するミラー部5Mを有するリフレクタ5を備えている。ミラー部5Mは、樹脂体51とその表面上に形成された島状金属層52からなる光反射面を有し、さらに、ミラー部5Mの裏面側にミリ波Leを反射する再帰性反射材7が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光を前方に反射するミラー部を有するリフレクタと、を備え、
前記ミラー部は、樹脂体と前記樹脂体の表面上に形成された金属光沢を有する島状金属層からなる光反射面とを有し、
前記ミラー部の後方に、レーダ波を反射する再帰性反射材が設けられていることを特徴とする灯具。
【請求項2】
前記再帰性反射材は、前記樹脂体の前記光反射面と対向する面側に一体成型されている、請求項1に記載の灯具。
【請求項3】
前記光反射面の前記島状金属層はレーダ波の透過率が90%以上である、請求項1又は2に記載の灯具。
【請求項4】
前記再帰性反射材は、リフレックスリフレクタ又はコーナーリフレクタであり、反射面にレーダ波を反射する金属被膜を有している、請求項1~3の何れか1項に記載の灯具。
【請求項5】
前記リフレクタは、放物面型の形状を有し、
前記光源は、前記放物面の焦点位置に配設されている、請求項1~4の何れか1項に記載の灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に用いられる灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるセンサとして、カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging)、ミリ波レーダ等の装置が知られている。特に、ミリ波レーダは、夜間や逆光の環境、濃霧、降雨及び降雪等の悪天候の影響を受けず、高い耐環境性能を維持するため、運転支援システム等において重要なセンサである。
【0003】
また、ミリ波レーダは、対象物までの距離や方向、対象物との相対速度を直接検出できるため、近距離の対象物であっても高速かつ高精度に検出できるという特徴を有している。近年では、他車からのミリ波を反射する反射材を備えたヘッドライトが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1のロービームランプユニットは、照射レンズの一部、特にロービーム配光での光照射に影響を与えない領域(フランジ部)に再帰反射ステップが形成されている。この再帰反射ステップは、直角三角錐形状をした突起で構成される単位ステップが、フランジ部の後面に多数配列されている(特許文献1/段落0020,0021、図3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-185480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のロービームランプユニットでは、再帰反射素子をランプユニット内のランプ反射面以外の位置に配置する必要があるため、ランプユニット自体を大型化して再帰反射素子を収容するか、再帰反射素子のサイズを縮小せざるを得ないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、再帰性反射材を内蔵する小型の灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の灯具は、光源と、前記光源からの光を前方に反射するミラー部を有するリフレクタと、を備え、
前記ミラー部は、樹脂体と前記樹脂体の表面上に形成された金属光沢を有する島状金属層からなる光反射面とを有し、前記ミラー部の後方に、レーダ波を反射する再帰性反射材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明において、光源からの光は、リフレクタのミラー部で反射され、前方に出射される。このミラー部は、樹脂体の表面上に島状金属層を形成した光反射面を有しているため、外部(例えば、他車)から発せられたレーダ波は、ミラー部を透過する。
【0010】
また、ミラー部の後方には、レーダ波を反射する再帰性反射材が設けられている。このため、ミラー部を透過したレーダ波をこの再帰性反射材で反射させて、例えば他車に自車の位置を認識させることができる。本灯具は、リフレクタと再帰性反射材の配置に大きなスペースを必要としないため、装置を小型化することができる。
【0011】
本発明の灯具において、前記再帰性反射材は、前記樹脂体の前記光反射面と対向する面側に一体成型されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、再帰性反射材は、ミラー部を構成する樹脂体の光反射面と対向する面側(裏面側)に一体成型されており、複数の三角錐構造で構成されている。1つの三角錐形状は、3つの直角二等辺三角形を互いに直角に組み合わせて角錐型にしており、ミラー部に向かって開口している。複数の三角錐構造からなる構成において、三角錐構造はコーナ状に反射面を配置することで、他の再帰性反射形状よりも反射波の指向性を広くすることができ、レーダ波の入射角に関わらず、均一な反射波を得られるという効果がある。
【0013】
また、再帰性反射材はリフレクタの立体形状に沿って形成されているため、様々な方向から入射するレーダ波を反射することが可能であり、上記三角錐構造の効果に加え、さらに反射効率を向上させることができる。また、一体型のリフレクタとしてコストダウンにつなげることができる。
【0014】
また、本発明の灯具において、前記光反射面の前記島状金属層はレーダ波の透過率が90%以上であることが好ましい。
【0015】
本発明の島状金属層は、レーダ波を90%以上透過する。このため、本灯具のリフレクタは、外部から発せられたレーダ波を確実に透過させて、その後方の再帰性反射材で反射させることができる。
【0016】
また、本発明の灯具において、前記再帰性反射材はリフレックスリフレクタ又はコーナーリフレクタであり、反射面にレーダ波を反射する金属被膜を有していることが好ましい。
【0017】
再帰性反射材として、例えばリフレックスリフレクタを用いることができる。リフレックスリフレクタの反射面は反射性の金属被膜を有しているため、入射したレーダ波を、リフレックスリフレクタの反射面で複数回反射を繰り返して、入射方向に戻すことができる。
【0018】
また、本発明の灯具において、前記リフレクタは、放物面型の形状を有し、前記光源は、前記放物面の焦点位置に配設されていることが好ましい。
【0019】
リフレクタは放物面型の形状となっているため、2つの焦点が存在する。そして、焦点位置に光源を配設することで、光源からの光を目的の方向に反射し、出射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用灯具の正面図である。
図2図1のランプ装置の水平方向(A-A線)の断面図である。
図3図1のランプ装置の垂直方向(B-B線)の断面図である。
図4図3の領域Sの拡大図である。
図5A】再帰性反射材の裏面側を示す図。
図5B】再帰性反射材の表面側を示す図。
図6】本発明の第2実施形態に係る車両用灯具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下においては、本発明の好適な実施形態について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。なお、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付して説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るランプ装置1の正面図である。また、図2図1のランプ装置1の水平方向(A-A線)の断面図であり、図3図1のランプ装置1の垂直方向(B-B線)の断面図である。
【0023】
ランプ装置1は灯具であって、特に車両の前部左右に配置されるヘッドランプとして利用される。図1のランプ装置1は、ヘッドランプを構成する複数のランプ装置のうちの1つを示している。ランプ装置1は走行用のヘッドランプであるが、テールランプ、バックライト等の外部に向けて光を出射する目的、機能を有する装置であってもよい。
【0024】
図2の断面図(図1のA-A線断面)に示すように、ランプ装置1は、円筒型のハウジング10内に放物面型のリフレクタ5が収容さている。また、ハウジング10内の前面側は、アウターレンズ11で覆われている。ハウジング10は、樹脂製又は金属製である。なお、ハウジング10の後端には、シールガスケット12が設けられている。
【0025】
また、図3の断面図(図1のB-B線断面)に示すように、ハウジング10内には、それぞれ発光素子2が実装された回路基板3,4(本発明の「光源」)が配設されている。以下では、下側の回路基板3と、発光素子2からの可視光が反射されるリフレクタ5の下半分の曲面について説明する。
【0026】
回路基板3は、リフレクタ5の略中央に位置決めされて固定されている。回路基板3上には、LEDからなる発光素子2が、その光出射方向が下向きとなるように実装されている。なお、回路基板3とリフレクタ5の固定は、接着剤による接着以外に、ネジや熱カシメによって行ってもよい。
【0027】
発光素子2は、リフレクタ5の放物面の焦点位置に配設されていることが好ましい。発光素子2を焦点位置(2つある焦点の下方側)に配設することで、可視光をリフレクタ5で前方に反射し、出射させることができる。
【0028】
図4は、図3の領域S(下方のハウジング10は省略)の拡大図である。
【0029】
リフレクタ5の表面側はミラー部5Mとなっており、ミラー部5Mは、樹脂体51と、樹脂体51上に形成された島状金属層52とからなる。樹脂体51は、ポリーカボネート、アクリル、ポリイミド、エポキシ、ポリプロピレン等の樹脂で形成されている。
【0030】
島状金属層52は微細なアイランドの集合体であって、金属光沢を有するとともにミリ波Le(76~81GHz帯の電磁波。本発明の「レーダ波」に相当。)を透過可能な金属被膜である。島状金属層52は、ミリ波Leの透過率が90%以上であることが好ましい。これにより、リフレクタ5は、外部から発せられたミリ波Leを確実に透過させ、その後方の再帰性反射材7で反射させることができる。
【0031】
ここで、島状金属層52は、微細なクラックによって金属層が区画され、アイランド状の構造を有している。また、島状金属層52は、発光素子2からの光を十分な反射率で反射し得る。このため、ミラー部5Mは、リフレクタとしての機能を十分に発揮する。
【0032】
島状金属層52の金属には、例えばアルミニウム、インジウム、パラジウム、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、銀、銀合金、錫、錫合金等を用いることができるが、これらに限定されない。島状金属層52、これらの金属の無電界めっき等によって形成することができる。
【0033】
リフレクタ5(ミラー部5M)の裏面側は、ミリ波Leを反射する再帰性反射材7が設けられている。正確には、樹脂体51の島状金属層52と対向する面側に再帰性反射材7である黒色金属層53を塗布することで、一体成型されている。このため、一物品として、サイズダウン及びコストダウンにつなげることができる。
【0034】
なお、樹脂体51は、ポリーカボネート等の発砲樹脂であってもよい。その場合、発砲樹脂体の表面の凹凸を平坦化する平坦樹脂層を設けることが好ましい。また、平坦樹脂層上に島状金属層52を設ければよい。
【0035】
発砲樹脂体は、例えば樹脂中に炭酸ガス等を封入し、気泡を発生させることで形成することができる。発砲樹脂は誘電率が低いため、より良好なレーダ波の透過特性を得ることができる。また、平坦樹脂層は、粘性の高いエポキシ樹脂等の樹脂を吹き付けることで形成することができる。
【0036】
次に、図5A図5Bを参照して、再帰性反射材7の詳細を説明する。図5Aは、再帰性反射材7の裏面側を示している。再帰性反射材7はコーナーリフレクタであり、後方に凸となる正四面体(ミラー部5M側は開口)を配列して構成されている。
【0037】
すなわち、再帰性反射材7は、複数の三角錐構造で構成される。1つの三角錐形状は、3つの直角二等辺三角形を互いに直角に組み合わせて角錐型にしている。複数の三角錐構造からなる構成において、三角錐構造はコーナ状に反射面を配置することで、他の再帰性反射形状よりも反射波の指向性を広くすることができ、ミリ波Leの入射角に関わらず、均一な反射波を得られるという効果がある。
【0038】
また、図5Bは、再帰性反射材7の表面(反射面)側を示している。再帰性反射材7の反射面には、ミリ波Leを反射するアルミニウム等の黒色金属層53が設けられている。再帰性反射材7は、いわゆるリフレックスリフレクタ(リトロリフレクタ)でもよいため、その凸部は正四面体に限られない。また、コーナーリフレクタ、リフレックスリフレクタは、単一かつ大型の凸部を有する構造でもよいし、高さの異なる複数種類の凸部を組合せた構造であってもよい。
【0039】
アウターレンズ11の前方から入射したミリ波Leは、リフレクタ5のミラー部5Mを透過し、再帰性反射材7の凸部で複数回反射され、入射方向に反射される(図4参照)。この凸部は、再帰性反射材7の放物面型の立体形状に沿って形成されているため、正面方向からアウターレンズ11の入射したミリ波Leのみならず、斜め方向から入射したミリ波Leも入射方向に反射される(図2参照)。そのため、ミリ波Leの反射効率を向上させることができる。
【0040】
このように、本実施形態のランプ装置1は、従来製品と比較して、外部から発せられるミリ波Leを検知する検知角度が水平方向で約±54°程度に向上する。従って、例えばドライバーは、自車にとって死角位置を走行する二輪車等の存在を認識することができ、巻き込み事故の発生を防止することができる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、図6の示す断面図を参照して、本発明の第2実施形態に係るランプ装置20を説明する。
【0042】
ランプ装置20は円筒型のハウジングを有し、その内部に回路基板3、リフレクタ25、再帰性反射材27が収容されている。回路基板3はリフレクタ25の略中央に固定され、回路基板3上にはLEDからなる発光素子2が、その光出射方向が下向きとなるように実装されている。また、本実施形態の再帰性反射材27は、リフレクタ25(ミラー部25M)の後方に、リフレクタ25とは別部材のブラケット30と一体に設けられている。
【0043】
リフレクタ25は放物面型の立体形状を有し、表面側はミラー部25Mであり、裏面側は特に加工も皮膜もされていない。ミラー部25Mは、第1実施形態のミラー部5Mと同様に、樹脂体51と、樹脂体51上に形成された島状金属層52とからなる。
【0044】
島状金属層52は微細なアイランドの集合体であって、金属光沢を有するとともにミリ波Leを透過可能(透過率90%以上)な金属被膜である。これにより、リフレクタ25は、外部から発せられたミリ波Leを確実に透過させ、再帰性反射材27で反射させることができる。
【0045】
再帰性反射材27はブラケット30の平板部に形成されており、正四面体の凸部を複数有するコーナーリフレクタである。再帰性反射材27は、ブラケット30の開口に嵌入させて固定することが好ましい。
【0046】
また、再帰性反射材27の反射面には、ミリ波Leを反射するアルミニウム等の黒色金属層53が設けられている。このため、外部(例えば、他車)から発せられ、リフレクタ25を透過したミリ波Leは、その後方の再帰性反射材27に入射し、入射方向に反射される。
【0047】
このように、再帰性反射材27がブラケット30の平板部に取り付けられるので、ランプ装置20の全体サイズを大型化することなく、第1実施形態の再帰性反射材7よりもミリ波Leの反射部を大きくすることができる。
【0048】
再帰性反射材27は、リフレックスリフレクタであればよく、その構造は正四面体に限られない。また、コーナーリフレクタ、リフレックスリフレクタは、単一かつ大型の凸部を有していてもよいし、高さの異なる複数種類の凸部を組合せた構造であってもよい。
【0049】
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1,20…ランプ装置、2…発光素子、3,4…回路基板、5,25…リフレクタ、5M,25M…ミラー部、7,27…再帰性反射材、10…ハウジング、11…アウターレンズ、12…シールガスケット、30…ブラケット、51…樹脂体、52…島状金属層、53…黒色金属層。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6