(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128957
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】プラズマ電位センサ
(51)【国際特許分類】
H05H 1/00 20060101AFI20230907BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230907BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230907BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20230907BHJP
C23C 14/52 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H05H1/00 A
H01L21/302 101H
H01L21/31 C
C23C16/50
C23C14/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033662
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白水 博
【テーマコード(参考)】
2G084
4K029
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA05
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD14
2G084DD24
2G084DD55
2G084FF01
2G084FF23
2G084HH02
2G084HH22
2G084HH31
2G084HH33
2G084HH43
2G084HH57
4K029BD01
4K029DA03
4K029EA06
4K029JA01
4K030FA01
4K030GA02
4K030KA30
4K030KA39
4K030LA15
5F004AA16
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB29
5F004CA06
5F004CB05
5F045AA08
5F045BB08
5F045EH20
5F045GB08
(57)【要約】
【課題】プラズマ電位の検出精度を高める。
【解決手段】プラズマ処理装置100のチャンバ103の内壁に取り付け可能に構成され、チャンバ103内で生成されるプラズマの電位を検出するプラズマ電位センサ10は、チャンバ103の内壁に取り付けられる第1主面11と、使用時にプラズマに対向する第2主面12と、導電性を有する板状の検出電極13と、検出電極13よりも第1主面11側に設けられかつ検出電極13で検出された電気信号を処理する電子回路18であって、電気信号が入力される入力端子18aおよび処理結果を出力する出力端子18bを有する電子回路18と、検出電極13と入力端子18aとを電気的に接続する接続部23と、出力端子18bに電気的に接続された信号引出線14と、絶縁性を有すると共に、検出電極13、電子回路18、および信号引出線14を被覆する保護層15と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置が備えるチャンバの内壁に取り付け可能に構成され、前記チャンバ内で生成されるプラズマの電位を検出するプラズマ電位センサであって、
前記チャンバの内壁に取り付けられる第1主面と、
前記第1主面の反対側に位置しかつ使用時に前記プラズマに対向する第2主面と、
導電性を有する板状の検出電極と、
前記検出電極よりも前記第1主面側に設けられかつ前記検出電極で検出された電気信号を処理する電子回路であって、前記電気信号が入力される入力端子および処理結果を出力する出力端子を有する電子回路と、
前記検出電極と前記入力端子とを電気的に接続する接続部と、
前記出力端子に電気的に接続された信号引出線と、
絶縁性を有すると共に、前記検出電極、前記電子回路、および前記信号引出線を被覆する保護層と、
を備える、プラズマ電位センサ。
【請求項2】
前記検出電極は、前記第2主面側から見て前記電子回路の少なくとも一部を覆っている、請求項1に記載のプラズマ電位センサ。
【請求項3】
前記信号引出線の前記第2主面側の前記保護層の内部に設けられ、前記信号引出線と電気的に絶縁された状態で、前記第2主面側から見て前記信号引出線の少なくとも一部を覆う補助電極をさらに備える、請求項1または2に記載のプラズマ電位センサ。
【請求項4】
前記補助電極は、前記検出電極と前記電子回路との間に延在する、請求項3に記載のプラズマ電位センサ。
【請求項5】
前記検出電極と前記電子回路との間に設けられ、前記検出電極と電気的に絶縁された状態で、前記第1主面側から見て前記検出電極の少なくとも一部を覆うガード電極をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のプラズマ電位センサ。
【請求項6】
前記ガード電極は、前記検出電極と仮想短絡されている、請求項5に記載のプラズマ電位センサ。
【請求項7】
前記ガード電極は、オペアンプを介して前記検出電極と仮想短絡されている、請求項6に記載のプラズマ電位センサ。
【請求項8】
前記電子回路は、前記電子回路に電力を供給する電源端子を有し、
前記電源端子に電気的に接続されかつ前記保護層に被覆された電源線をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のプラズマ電位センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ電位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品や回路基板を製造する様々な工程において、処理室内でプラズマを発生させて、処理対象物の表面をエッチングもしくはクリーニングするプラズマ処理装置が用いられている。処理室内でプラズマ放電が正常に起こっているかどうかを判断するために、処理室の側壁にプラズマ電位測定用のプローブ電極を設けた構成がある。プローブ電極は、プラズマ放電の変化に応じて誘発される電荷または電位を検出する。
【0003】
例えば、特許文献1では、プラズマに対向する面の少なくとも一部に開口部が設けられた導電性支持部材と、導電性支持部材の開口部に設置された誘電体部材とを有し、誘電体部材の片側表面にプローブ電極を設けてなる窓型プローブが提案されている。
【0004】
プローブ電極の電荷または電位は、通常、アナログ-デジタル変換器(ADC)によりデジタル値に変換され、デジタル値の時系列データを数学的に処理することにより、異常放電が発生したか否かが判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のプローブ電極(あるいは、プラズマ電位センサ)の検出信号は、外部配線を介して、検出信号を処理する電子回路に送られる。特にこの外部配線が長い場合、外部ノイズなどに当該検出信号が埋もれてしまい、プラズマ電位を精度よく検出できないおそれがある。このような状況において、本開示は、プラズマ電位の検出精度を高めることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る一局面は、プラズマ電位センサに関する。当該プラズマ電位センサは、プラズマ処理装置が備えるチャンバの内壁に取り付け可能に構成され、前記チャンバ内で生成されるプラズマの電位を検出するプラズマ電位センサであって、前記チャンバの内壁に取り付けられる第1主面と、前記第1主面の反対側に位置しかつ使用時に前記プラズマに対向する第2主面と、導電性を有する板状の検出電極と、前記検出電極よりも前記第1主面側に設けられかつ前記検出電極で検出された電気信号を処理する電子回路であって、前記電気信号が入力される入力端子および処理結果を出力する出力端子を有する電子回路と、前記検出電極と前記入力端子とを電気的に接続する接続部と、前記出力端子に電気的に接続された信号引出線と、絶縁性を有すると共に、前記検出電極、前記電子回路、および前記信号引出線を被覆する保護層と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、プラズマ電位の検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係るプラズマ電位センサが用いられるプラズマ処理装置の一例の概略構造を断面で示す概念図である。
【
図2】実施形態1に係るプラズマ電位センサを示す図であって、(a)は平面図であり、(b)はII-II線に沿った断面図である。
【
図3】実施形態2に係るプラズマ電位センサを示す図であって、(a)は平面図であり、(b)はIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】実施形態3に係るプラズマ電位センサを示す図であって、(a)は平面図であり、(b)はIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】実施形態4に係るプラズマ電位センサを示す図であって、(a)は平面図であり、(b)はV-V線に沿った断面図である。
【
図6】実施形態4に係るプラズマ電位センサが備える電子回路の一部を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係るプラズマ電位センサの実施形態について例を挙げて以下に説明する。しかしながら、本開示は以下に説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0011】
本開示に係るプラズマ電位センサは、プラズマ処理装置が備えるチャンバの内壁に取り付け可能に構成され、当該チャンバ内で生成されるプラズマの電位を検出するプラズマ電位センサである。プラズマ処理装置は、例えば、プラズマエッチング装置、プラズマクリーニング装置、プラズマダイサー、プラズマアッシング装置、またはプラズマCVD装置であってもよい。本開示に係るプラズマ電位センサは、第1主面と、第2主面と、検出電極と、電子回路と、接続部と、信号引出線と、保護層とを備える。
【0012】
第1主面は、チャンバの内壁に取り付けられる主面である。第1主面は、例えば、貼付けにより、接着により、または嵌込みにより、チャンバの内壁に取り付けられてもよい。第1主面は、プラズマ電位センサの外部に露出していてもよい。第1主面は、平坦であってもよいし平坦でなくてもよい。
【0013】
第2主面は、第1主面の反対側に位置する主面である。第2主面は、プラズマ電位センサの使用時にチャンバ内のプラズマに対向する。第2主面は、プラズマ電位センサの外部に露出していてもよい。第2主面は、平坦であってもよいし平坦でなくてもよい。第2主面は、第1主面と平行であってもよいし平行でなくてもよい。
【0014】
検出電極は、導電性を有する板状の電極である。検出電極の形状は、例えば、矩形板状であってもよいが、これに限られるものではない。検出電極は、チャンバの内壁を構成する材料と同じ材料(例えば、アルミニウムやステンレス鋼など)で構成されてもよいし、あるいは他の導電性材料(例えば、銅やアルミニウムなど)で構成されてもよい。検出電極は、プラズマ電位センサの使用時において、チャンバ内に生成されるプラズマの電位に対応する電荷が誘起され得る。
【0015】
電子回路は、検出電極よりも第1主面側に設けられる。電子回路は、検出電極で検出された電気信号を処理する。電子回路は、当該電気信号が入力される入力端子と、処理結果を出力する出力端子とを有する。電子回路は、例えば、基板に実装されており、基板は矩形板状であってもよい。第1主面側または第2主面側から見て、電子回路の大きさは、検出電極の大きさ以下であってもよい。入力端子に入力される電気信号は、アナログ信号であってもよい。電子回路は、入力されたアナログ信号を増幅してもよいし、あるいはデジタル信号に変換してもよい。出力端子は、増幅されたアナログ信号またはデジタル信号を処理結果として出力してもよい。
【0016】
接続部は、検出電極と入力端子とを電気的に接続する。接続部は、導電性を有する材料(例えば、金属)で構成されてもよい。
【0017】
信号引出線は、電子回路の出力端子に接続される。信号引出線は、導電性を有する材料(例えば、金属)で構成されてもよい。
【0018】
保護層は、絶縁性を有する。保護層は、例えば、ガラスまたは絶縁性樹脂で構成されてもよい。保護層は、検出電極、電子回路、および信号引出線を被覆する。保護層の外面の一部は、プラズマ電位センサの第1主面を構成してもよい。保護層の外面の別の一部は、プラズマ電位センサの第2主面を構成してもよい。
【0019】
以上の構成を有するプラズマ電位センサは、プラズマ処理装置のチャンバ内で生成されるプラズマの電位を検出するために、当該チャンバの内壁(あるいは、側壁)の任意の空きスペースに取り付けることが可能である。したがって、プラズマ処理装置の構成を変更することなく、ユーザの要望に応じてプラズマ電位の測定位置を設定することができる。
【0020】
また、プラズマ電位センサは、検出電極で検出された電気信号を処理する電子回路と、検出電極と電子回路の入力端子とを電気的に接続する接続部とを備える。このため、プラズマ電位センサ(例えば、特許文献1のプローブ電極)と電子回路とを外部配線で接続する従来の構成に比べて、外部ノイズの影響を受けにくくなる。従来の外部配線に対応する接続部がプラズマ電位センサに内蔵されるコンパクトな構成を有し、当該外部配線よりも外部ノイズを拾いにくいためである。そして、電子回路の出力端子からは、外部ノイズの影響をほとんど受けない電気信号を処理した処理結果が出力される。この処理結果は、チャンバ内のプラズマの電位を高精度に反映したものとなる。したがって、本開示のプラズマ電位センサによると、プラズマ電位の検出精度を高めることができる。
【0021】
検出電極は、第2主面側から見て電子回路の少なくとも一部を覆っていてもよい。ここで、検出電極は、第2主面側から見て、電子回路の80%以上を覆っていることが好ましく、電子回路の全体を覆っていることがより好ましい。この構成によると、検出電極によって、プラズマから電子回路への影響を抑えることができる。したがって、電子回路の意図しない動作が阻止され、プラズマ電位の検出精度をより一層高めることが可能となる。
【0022】
プラズマ電位センサは、信号引出線の第2主面側の保護層の内部に設けられ、信号引出線と電気的に絶縁された状態で、第2主面側から見て信号引出線の少なくとも一部を覆う補助電極をさらに備えてもよい。ここで、補助電極は、第2主面側から見て、信号引出線の80%以上を覆っていることが好ましく、信号引出線の全体を覆っていることがより好ましい。このような補助電極を設けることで、プラズマと信号引出線との間で相互干渉が生じるのを抑制できる。具体的には、プラズマから信号引出線への影響で処理結果の信号が影響を受けることや、信号引出線からプラズマへの影響でプラズマの状態が影響を受けることが補助電極によって抑制される。補助電極には、所定の電圧が印加されていてもよい。当該所定の電圧は、例えば、チャンバの側壁に印加される電圧と同じであってもよく、接地電圧であってもよい。
【0023】
補助電極は、検出電極と電子回路との間に延在してもよい。補助電極は、第1主面と平行な方向から見て、検出電極と電子回路との間に延在してもよい。この構成によると、補助電極によって、検出電極と電子回路との間に形成される浮遊容量の影響を低減することができる。すなわち、検出電極が検出する電気信号が当該浮遊容量を介して電子回路の動作に影響を与えることや、電子回路の動作に起因して生じる電荷が当該浮遊容量を介して検出電極の検出信号に影響を与えることが抑制される。したがって、プラズマ電位の検出精度をより一層高めることができる。
【0024】
プラズマ電位センサは、検出電極と電子回路との間に設けられ、検出電極と電気的に絶縁された状態で、第1主面側から見て検出電極の少なくとも一部を覆うガード電極をさらに備えてもよい。ここで、ガード電極は、第1主面側から見て、検出電極の80%以上を覆っていることが好ましく、検出電極の全体を覆っていることがより好ましい。ガード電極は、第1主面と平行な方向から見て、検出電極と電子回路との間に設けられてもよい。このようなガード電極を設けることで、検出電極と電子回路との間に形成される浮遊容量の影響を低減して、プラズマ電位センサの検出精度をより一層高めることができる。
【0025】
ガード電極は、検出電極と仮想短絡されていてもよい。この構成によると、検出電極の電位とガード電極の電位とが互いに等しくなり、上述の浮遊容量と検出電極との間における電荷の往来が抑制される。したがって、検出電極に誘起された電荷の略全てを、接続部を介して電子回路の入力端子に送ることが可能となり、プラズマ電位センサの検出精度をより一層高めることができる。
【0026】
なお、ガード電極が検出電極と仮想短絡されているとは、検出電極の電位変動に対して、ガード電極の電位が検出電極と同電位となるように制御されることを意味する。しかしながら、通常の短絡とは異なり、検出電極からガード電極に向かって、あるいはガード電極から検出電極に向かって電流が流れ込むわけでは必ずしもなく、検出電極に流れる電流は、ガード電極に流れる電流とは独立に制御され得る。
【0027】
ガード電極は、オペアンプを介して検出電極と仮想短絡されていてもよい。オペアンプは、複数のトランジスタを組み合わせて構成されるカレントミラー回路を含んでもよい。オペアンプは、一般的なオペアンプ回路として市販されているICチップで構成されてもよい。
【0028】
電子回路は、電子回路に電力を供給する電源端子を有してもよい。プラズマ電位センサは、電源端子に電気的に接続されかつ保護層に被覆された電源線をさらに備えてもよい。この構成によると、電源線および電源端子を介して電子回路に電力が供給される。電源線には、外部の電源装置から電力が供給されてもよい。
【0029】
以上のように、本開示によれば、プラズマ電位センサが電子回路や接続部を内蔵することにより、プラズマ電位の検出精度を高めることができる。
【0030】
以下では、本開示に係るプラズマ電位センサの一例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する一例のプラズマ電位センサの構成要素には、上述した構成要素を適用できる。以下で説明する一例のプラズマ電位センサの構成要素は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。以下で説明する一例のプラズマ電位センサの構成要素のうち、本開示に係るプラズマ電位センサに必須ではない構成要素は省略してもよい。なお、以下で示す図は模式的なものであり、実際の部材の形状や数を正確に反映するものではない。
【0031】
《実施形態1》
本開示の実施形態1について説明する。本実施形態のプラズマ電位センサ10は、プラズマ電位の検出対象であるプラズマを生成するプラズマ処理装置100において使用される。以下では、まずプラズマ処理装置100について説明し、続けてプラズマ電位センサ10について説明する。
【0032】
(プラズマ処理装置)
プラズマ処理装置は、処理室と、処理室に設けられ、処理対象物が載置される電極部と、電極部に高周波電力を印加する高周波電源部と、を備える。処理室にプラズマ発生用ガスを供給し、電極部に高周波電力を印加すると、処理室内にプラズマが発生する。発生したプラズマは、例えば、電極部に載置された処理対象物の表面のエッチングやクリーニングに用いられ得る。プラズマ処理装置には、プラズマ電位を検出するための検出回路が接続されている。検出回路の出力は、信号解析部と接続している。信号解析部は、検出回路の出力に基づいてプラズマ電位を検出し、検出されたプラズマ電位に基づき、生成されたプラズマが正常か否かを判定する。
【0033】
図1は、プラズマ電位の検出対象であるプラズマが生成されるプラズマ処理装置100の概略構造を断面で示す概念図である。処理室103aは、水平なベース部101と、蓋部102とにより構成されるチャンバ(真空チャンバ)103を密閉状態にすることにより形成される。蓋部102は、昇降手段(図示せず)によって昇降自在に配設されている。蓋部102が下降して、ベース部101の上面に当接することにより、チャンバ103は密閉状態になる。このとき、蓋部102とベース部101との間にはシール部材104が介在しており、これによって、処理室103aの密閉状態が担保される。処理室103aでは、処理対象物109がプラズマ処理される。ベース部101には開口部101aが設けられており、開口部101aを塞ぐように、絶縁部材106を介して電極部105が嵌め込まれている。電極部105の上面は、絶縁層107で覆われている。絶縁層107の上面には、処理対象物109を位置決めするためのガイド部材108が配置されている。
【0034】
ベース部101の開口部101aの周縁には、貫通孔101bが形成されている。貫通孔101bには、管路111が挿入されており、管路111には、ベントバルブ112、ガス供給バルブ113、真空バルブ114、および真空計115が接続されている。ガス供給バルブ113および真空バルブ114には、さらにガス供給部116および真空ポンプ117がそれぞれ接続されている。真空バルブ114を開くと共に真空ポンプ117を稼働させることにより、処理室103a内のガスが排出されて、減圧状態になる。処理室103a内の真空度は真空計115によって測定される。一方、ガス供給バルブ113を開けると、プラズマ発生幼ガスが、ガス供給部116から処理室103a内に供給される。ガス供給部116は流量調整機構を内蔵しており、処理室103a内に供給されるプラズマ発生用ガスの流量が調整される。ベントバルブ112を開けると、処理室103a内に大気が供給される。
【0035】
電極部105には、整合器118を介して高周波電源部119が電気的に接続されている。一方、蓋部102は接地部110に接地されている。処理室103a内にプラズマ発生用ガスを供給すると共に高周波電源部119を稼働させると、電極部105と蓋部102との間に高周波電圧が印加される。これにより、処理室103a内にプラズマが発生する。整合器118は、プラズマを発生させるプラズマ放電回路(図示せず)と高周波電源部119とのインピーダンスを整合させる。ベントバルブ112、ガス供給バルブ113、真空バルブ114、真空計115、ガス供給部116、真空ポンプ117、および高周波電源部119は、制御部120内の装置制御部124により制御される。すなわち、装置制御部124は、プラズマ処理動作を実行させる通常の動作制御機能を備える。制御部120には、表示部130、入力部140、およびプラズマ電位センサ10が接続される。表示部130には、後述する信号解析部121による異常判定の結果などが示される。入力部140には、プロセスレシピなどが入力される。
【0036】
チャンバ103の内壁(側壁)には、プラズマ電位センサ10が、この例では貼付けにより、取り付けられている。プラズマ電位センサ10の構成について、詳しくは後述する。
【0037】
処理室103a内でプラズマ放電が起こると、プラズマ電位センサ10の検出電極13(後述)に当該プラズマの状態に応じた電位および電荷が誘起される。検出電極13に誘起された電荷は、アナログ信号としてプラズマ電位センサ10の電子回路18(後述)に送られ、そこでデジタル信号に変換されるかあるいは増幅される。デジタル信号または増幅アナログ信号は、制御部120の信号解析部121に送られる。信号解析部121は、送られた信号に基づき、プラズマの状態が正常であるか否かを判定する。プラズマの状態が正常ではなく、異常放電状態であると判定された場合、リトライ処理、累積プラズマ処理、メンテナンス判定などが実行され得る。なお、リトライ処理、累積プラズマ処理、メンテナンス判定は、全てが実行される必要はなく、これらのうち1つ以上の処理が実行される。
【0038】
上記装置制御部124は、図示しないが、処理履歴記憶部、リトライ処理部、累積プラズマ処理部、およびメンテナンス判定機能部を備えてもよい。すなわち、装置制御部124は、上述した通常の動作制御機能に加えて、信号解析部121による異常放電の検出結果に基づいて、処理室103a内のプラズマ放電の状態を判定し、当該プラズマ処理の再設定を行い得る。プラズマ放電の状態の判定およびプラズマ処理の再設定は、リトライ処理部、累積プラズマ処理部、およびメンテナンス判定部によって実行され得る。処理履歴記憶部は、メモリに一時的に記録された電子回路18からの信号の時間変化や、信号解析部121が異常放電の検出の判定に要した中間データを、プラズマ処理装置100による処理履歴データとして記憶する。これにより、当該プラズマ処理装置100によって処理が行われた処理対象物109について、詳細な処理履歴データを取得することができ、品質管理や生産管理のためのトレーサビリティが確保される。
【0039】
(プラズマ電位センサ)
プラズマ電位センサ10は、プラズマ処理装置100が備えるチャンバ103内で生成されるプラズマの電位を検出するための機器である。プラズマ電位センサ10は、チャンバ103の内壁の形状に沿って変形できる程度の可撓性を有してもよい。プラズマ電位センサ10は、
図2に示すように、第1主面11と、第2主面12と、検出電極13と、電子回路18と、第1接続部23と、信号引出線14と、第1および第2電源線21,22と、保護層15とを備える。
【0040】
第1主面11は、チャンバ103の内壁に取り付けられる主面である。本実施形態において、第1主面11は、貼付けによりチャンバ103の内壁に取り付けられるが、これに限られるものではない。第1主面11は、プラズマ電位センサ10の外部に露出している。第1主面11は、平坦になっている。
【0041】
第2主面12は、第1主面11の反対側に位置する主面である。第2主面12は、プラズマ電位センサ10の使用時にチャンバ103内のプラズマに対向する。第2主面12は、プラズマ電位センサ10の外部に露出している。第2主面12は、平坦になっている。第2主面12は、第1主面11と平行になっている。
【0042】
検出電極13は、導電性を有する矩形板状の電極である。検出電極13は、第2主面12側から見て電子回路18を覆っている。検出電極13は、プラズマ電位センサ10の使用時において、チャンバ103内に生成されるプラズマの電位に対応する電荷が誘起され得る。誘起された電荷の信号は、第1接続部23を経由して電子回路18に送られる。
【0043】
電子回路18は、検出電極13よりも第1主面11側に設けられる。電子回路18は、検出電極13で検出された電気信号を処理する。電子回路18は、当該電気信号が入力される入力端子18aと、処理結果を出力する出力端子18bと、電子回路18に電力を供給する電源端子18cとを有する。電子回路18は、矩形板状の基板19に実装される。当該基板19は、検出電極13の表面に垂直な方向から見て、検出電極13よりも小さい。入力端子18aに入力される電気信号は、アナログ信号であり、電子回路18は、当該アナログ信号をデジタル信号に変換する。出力端子18bは、デジタル信号を処理結果として出力する。
【0044】
第1接続部23は、検出電極13と入力端子18aとを電気的に接続する。第1接続部23は、検出電極13の表面に垂直な方向に延びているが、これに限られるものではない。第1接続部23は、導電性の金属で構成される。第1接続部23は、接続部の一例である。
【0045】
信号引出線14は、電子回路18の出力端子18bに接続される。信号引出線14は、導電性の金属で構成される。信号引出線14は、信号引出線14と制御部120とを接続する配線(図示せず)に接続される端子部(図示せず)を有してもよい。当該端子部は、プラズマ電位センサ10の外部に露出していてもよい。
【0046】
第1および第2電源線21,22は、それぞれ電子回路18の電源端子18cに接続される。第1および第2電源線21,22には、外部の電源装置(図示せず)から電力が供給される。第1および第2電源線21,22の一方は、電源電圧が印加される。第1および第2電源線21,22の他方は、接地電圧が印加される。ただし、第1電源線21と第2電源線22との間に電子回路18が動作するための電圧が印加されるのであれば、各電源線21,22に印加される電圧は任意に設定可能である。第1および第2電源線21,22は、それぞれ電源線の一例である。
【0047】
保護層15は、絶縁性を有する。本実施形態の保護層15は、ガラスで構成されるが、これに限られるものではない。保護層15は、検出電極13、電子回路18、第1接続部23、信号引出線14、ならびに第1および第2電源線21,22を被覆する。保護層15は、
図2(a)に示すように、検出電極13の表面に垂直な方向から見て、検出電極13、信号引出線14、ならびに第1および第2電源線21,22の外郭形状に沿った形状を有する。
【0048】
《実施形態2》
本開示の実施形態2について説明する。本実施形態のプラズマ電位センサ10は、補助電極16を備える点で上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0049】
図3に示すように、プラズマ電位センサ10は、信号引出線14の第2主面12側に設けられた補助電極16を備える。補助電極16は、信号引出線14の第2主面12側の保護層15の内部に設けられ、信号引出線14と絶縁された状態で、第2主面12側から見て信号引出線14を覆う。補助電極16は、第1電源線21を兼ねていて、例えば蓋部102と電気的に接続されることにより、接地電圧が印加される。補助電極16は、第2主面12側から見て第2電源線22も覆っている。補助電極16は、第2主面12側から見て検出電極13を覆っていなくてもよい。
【0050】
補助電極16は、第2接続部24により電子回路18のグランド線(図示せず)に接続されている。第2接続部24は、電子回路18(基板19)の表面に垂直な方向に延びているが、これに限られるものではない。第2接続部24は、導電性の金属で構成される。第2接続部24は、第1接続部23と電気的に絶縁されている。つまり、補助電極16は、検出電極13と電気的に絶縁されている。
【0051】
《実施形態3》
本開示の実施形態3について説明する。本実施形態のプラズマ電位センサ10は、補助電極16の構成が上記実施形態2と異なる。以下、上記実施形態2と異なる点について主に説明する。
【0052】
図4に示すように、本実施形態の補助電極16は、検出電極13と電子回路18との間に延在している。補助電極16は、第2主面12側から見て、電子回路18の半分以上(50%以上)を覆っていてもよいし、60%以上を覆っていてもよいし、70%以上を覆っていてもよい。
【0053】
《実施形態4》
本開示の実施形態4について説明する。本実施形態のプラズマ電位センサ10は、ガード電極17を備える点で上記実施形態3と異なる。以下、上記実施形態3と異なる点について主に説明する。
【0054】
図5に示すように、プラズマ電位センサ10は、検出電極13と電子回路18との間に設けられたガード電極17を備える。ガード電極17は、検出電極13と電気的に絶縁された状態で、第1主面11側から見て検出電極13の全体を覆う。また、ガード電極17は、第2主面12側から見て電子回路18の全体を覆う。
【0055】
ガード電極17は、第3接続部25により電子回路18が備える第1オペアンプ18d(後述)に接続されている。第3接続部25は、電子回路18(基板19)の表面に垂直な方向に延びているが、これに限られるものではない。第3接続部25は、導電性の金属で構成される。第3接続部25は、第1接続部23と電気的に絶縁されている。つまり、ガード電極17は、検出電極13と電気的に絶縁されている。なお、ガード電極17には、第1接続部23が非接触で挿通される貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0056】
図6は、本実施形態の電子回路18の一部を抜き出して示す回路図である。この回路図に示される電子部品や各配線は、プラズマ電位センサ10の電子回路18に含まれる。
図6に示すように、電子回路18は、第1オペアンプ18dと、第2オペアンプ18eとを備える。ガード電極17は、第1オペアンプ18dを介して検出電極13と仮想短絡されている。第1オペアンプ18dは、オペアンプの一例である。
【0057】
第1オペアンプ18dの非反転入力端子は、電子回路18内の配線18fを介して、第1接続部23(検出電極13)と接続されている。第1オペアンプ18dの出力端子は、電子回路18内の配線18gを介して、第3接続部25(ガード電極17)と接続されている。第1オペアンプ18dの出力端子は、また、帰還抵抗を介することなく第1オペアンプ18dの反転入力端子とも接続されている。これにより、第1オペアンプ18dは、利得が1の非反転増幅回路を構成し、第1オペアンプ18dの非反転入力端子に電気的に接続される検出電極13と、第1オペアンプ18dの反転入力端子に電気的に接続されるガード電極17とは、仮想短絡されている。
【0058】
オペアンプの仮想短絡の効果により、ガード電極17に電気的に接続される第1オペアンプ18dの反転入力端子の電位は、検出電極13に電気的に接続される第1オペアンプ18dの非反転入力端子の電位と同じ電位になるように動作する。
【0059】
第2オペアンプ18eの反転入力端子は、抵抗R1を介して第1接続部23(検出電極13)に接続されている。第2オペアンプ18eの非反転入力端子は、接地されている。第2オペアンプ18eの出力端子は、帰還抵抗R2を介して第2オペアンプ18eの反転入力端子に接続されている。これにより、第2オペアンプ18eは反転増幅回路を構成し、検出電極13の電位を増幅した電圧が第2オペアンプ18eの出力端子に出力される。出力電圧は、制御部120の信号解析部121に送られる。
【0060】
第2オペアンプ18eにおいて、帰還抵抗R2に代えて、キャパシタC1(図示せず)を出力端子と反転入力端子との間に接続してもよい。この場合、第2オペアンプ18eは積分回路を構成し、検出電極13に誘起された電荷量を増幅し、増幅された電荷量に対応する電圧が出力端子に出力される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示は、プラズマ電位センサに利用できる。
【符号の説明】
【0062】
10:プラズマ電位センサ
11:第1主面
12:第2主面
13:検出電極
14:信号引出線
15:保護層
16:補助電極
17:ガード電極
18:電子回路
18a:入力端子
18b:出力端子
18c:電源端子
18d:第1オペアンプ(オペアンプ)
18e:第2オペアンプ
18f,18g:配線
19:基板
21:第1電源線(電源線)
22:第2電源線(電源線)
23:第1接続部(接続部)
24:第2接続部
25:第3接続部
100:プラズマ処理装置
101:ベース部
101a:開口部
101b:貫通孔
102:蓋部
103:チャンバ
103a:処理室
104:シール部材
105:電極部
106:絶縁部材
107:絶縁層
108:ガイド部材
109:処理対象物
110:接地部
111:管路
112:ベントバルブ
113:ガス供給バルブ
114:真空バルブ
115:真空計
116:ガス供給部
117:真空ポンプ
118:整合器
119:高周波電源部
120:制御部
121:信号解析部
124:装置制御部
130:表示部
140:入力部