(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012896
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】傾斜計測装置
(51)【国際特許分類】
G01C 9/00 20060101AFI20230119BHJP
E02D 1/00 20060101ALI20230119BHJP
G01D 21/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G01C9/00 B
E02D1/00
G01D21/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116643
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】390027177
【氏名又は名称】坂田電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301031392
【氏名又は名称】国立研究開発法人土木研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100180817
【弁理士】
【氏名又は名称】平瀬 実
(72)【発明者】
【氏名】須賀原 慶久
(72)【発明者】
【氏名】岩切 栄一
(72)【発明者】
【氏名】杉本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】高木 将行
【テーマコード(参考)】
2D043
2F076
【Fターム(参考)】
2D043AA02
2D043AC03
2D043AC05
2F076BA01
2F076BB09
2F076BC02
2F076BC04
2F076BD01
2F076BD17
2F076BE01
2F076BE17
(57)【要約】
【課題】従来よりも長い期間にわたってガイドパイプを使用することを可能にする。
【解決手段】傾斜計測装置は、一軸Aに沿って長さを有する本体部101と、一軸Aを介して互いに異なる方向に配置される第1車軸102及び第2車軸103と、第1車軸102及び第2車軸103が予め定められた回転中心を中心に回転するように、第1車軸102及び第2車軸103を本体部101に取り付けるリンク機構部106とを備える。リンク機構部106は、一軸Aに沿った第1方向からの力が加わると所定方向へ回転させるように第1車軸102に関連付けられた第1傾斜部IP1と、第1方向とは逆の方向であって一軸Aに沿った第2方向の力が加わると所定方向へ回転させるように第2車軸103に関連付けられた第2傾斜部IP2と、の少なくとも一方を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸に沿って長さを有する本体部と、
前記一軸を介して互いに異なる方向に配置される第1車軸及び第2車軸と、
前記第1車軸及び前記第2車軸が予め定められた回転中心を中心に回転するように、前記第1車軸及び前記第2車軸を前記本体部に取り付けるリンク機構部とを備え、
前記リンク機構部は、
前記一軸に沿った第1方向からの力が加わると所定方向へ回転させるように前記第1車軸に関連付けられた第1傾斜部と、
前記第1方向とは逆の方向であって前記一軸に沿った第2方向の力が加わると前記所定方向へ回転させるように前記第2車軸に関連付けられた第2傾斜部と、の少なくとも一方を含む
傾斜計測装置。
【請求項2】
前記第1傾斜部は、前記一軸に沿った位置において前記第1車輪に対して前記第1方向に位置付けられており、前記第1方向に向かうに従って前記一軸へ近づくように傾斜している
請求項1に記載の傾斜計測装置。
【請求項3】
前記第1傾斜部は、前記第1車輪に対して前記第1方向に位置する部分を含む
請求項2に記載の傾斜計測装置。
【請求項4】
前記第2傾斜部は、前記一軸に沿った位置において前記第2車輪に対して前記第2方向に位置付けられており、前記第2方向に向かうに従って前記一軸へ近づくように傾斜している
請求項1又は2に記載の傾斜計測装置。
【請求項5】
前記第2傾斜部は、前記第2車輪に対して前記第2方向に位置する部分を含む
請求項4に記載の傾斜計測装置。
【請求項6】
前記所定方向は、当該所定方向への回転によって、前記第1車軸及び前記第2車軸がそれぞれ前記第1方向及び前記第2方向へ移動する方向である
請求項1から5のいずれか1項に記載の傾斜計測装置。
【請求項7】
前記リンク機構部は、
前記第1車軸が挿設される第1ガイド孔と、
前記第2車軸が挿設される第2ガイド孔とを含み、
前記第1ガイド孔及び前記第2ガイド孔は、前記第1車軸及び前記第2車軸が前記回転中心を中心に回転するときに、前記第1車軸及び前記第2車軸のそれぞれを案内する長孔である
請求項1から6のいずれか1項に記載の傾斜計測装置。
【請求項8】
前記第1ガイド孔及び前記第2ガイド孔の各々は、前記第1車軸及び前記第2車軸の貫通方向に対して垂直な一方向に沿って直線状に延びる
請求項7に記載の傾斜計測装置。
【請求項9】
前記第1車軸及び前記第2車軸のそれぞれに取り付けられており、各々の直径が前記本体部の太さ以下である第1車輪及び第2車輪とをさらに備える
請求項1から8のいずれか1項に記載の傾斜計測装置。
【請求項10】
前記本体部は、前記一軸に対して垂直な方向に貫通する収容空間を形成し、前記リンク機構が取り付けられる収容空間部を含み、
前記第1車輪及び前記第2車輪は、前記第1車軸及び前記第2車軸が前記回転中心を中心に回転することによって、前記収容空間に出没自在である
請求項1から3のいずれか1項に記載の傾斜計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地滑り調査、地盤調査などにおいて、地中変位を計測するための傾斜計測装置が種々提案されている。傾斜計測装置には、地中に埋設されたガイドパイプを利用するものがあり、この種の傾斜計測装置では、ガイドパイプ内の孔を移動してガイドパイプの傾斜を計測することによって、地中変位が計測される。この種の傾斜計測装置では、例えば、1ヶ月、半年などの所定の時間間隔で継続的にガイドパイプの傾きが計測される。そして、計測された傾きの変化から、その時間間隔で生じた地中変位が求められる。
【0003】
例えば特許文献1に記載の傾斜計(上記の「傾斜計測装置」に相当)は、車輪を備え、地盤内に埋設された地中埋設管(上記の「ガイドパイプ」に相当)内にワイヤで懸吊される。地中埋設管には、その軸方向に沿って溝が設けられている。傾斜計は、車輪が溝を走行することで、地中埋設管を傾斜計が移動することができる。特許文献1の記載によれば、遠隔地から地中変位を監視する場合は、傾斜計自動挿入装置によってワイヤの巻取りと繰出しを自動制御し、傾斜計による走行計測を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の傾斜計では、長い期間(例えば数ヶ月から数年)にわたって地中埋設管を地中に埋設していると、計測時に傾斜計が地中埋設管の途中で移動し難くなり、その地中埋設管を使用した計測が困難になることがある。
【0006】
このような場合、使用困難になった古い地中埋設管に代わる新たな地中埋設管が埋設されることがある。
【0007】
新たな地中埋設管を埋設すると、その施工のコストがかかる。
【0008】
また、新たな地中埋設管を埋設すると、新旧の地中埋設管で埋設箇所が異なるなど、地中埋設管の傾きを計測する際の計測条件が変化する可能性がある。計測条件が変化すると、新旧の地中埋設管を使用して得られる地中変位を比較することが困難になり、古い地中埋設管を利用して得られた地中変位と新しい地中埋設管を利用して得られた地中変位との間の連続性が損なわれるおそれもある。
【0009】
このように、地中埋設管の使用が困難になった場合に、新たな地中埋設管を埋設することで対処することには問題がある。そのため、地中に埋設された地中埋設管は、長く使用できることが望ましいが、特許文献1は、そのための技術を開示していない。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、従来よりも長い期間にわたってガイドパイプを使用することが可能な傾斜計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る傾斜計測装置は、
一軸に沿って長さを有する本体部と、
前記一軸を介して互いに異なる方向に配置される第1車軸及び第2車軸と、
前記第1車軸及び前記第2車軸が予め定められた回転中心を中心に回転するように、前記第1車軸及び前記第2車軸を前記本体部に取り付けるリンク機構部とを備え、
前記リンク機構部は、
前記一軸に沿った第1方向からの力が加わると所定方向へ回転させるように前記第1車軸に関連付けられた第1傾斜部と、
前記第1方向とは逆の方向であって前記一軸に沿った第2方向の力が加わると前記所定方向へ回転させるように前記第2車軸に関連付けられた第2傾斜部と、の少なくとも一方を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来よりも長い期間にわたってガイドパイプを使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る傾斜計測装置の正面図である。
【
図2】実施の形態1に係るリンク機構部、第1車輪及び第2車輪の開いた状態における正面拡大図である。
【
図3】実施の形態1に係るガイドパイプの長さ方向における断面の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係る傾斜計測装置の使用方法を説明するための図であって、(a)は、傾斜計測装置がパイプ孔の入り口Eに配置された状態を示し、(b)は、傾斜計測装置がパイプ孔の途中を移動する状態を示し、(c)は、傾斜計測装置がパイプ孔の計測限界位置に到達した状態を示す。
【
図5】実施の形態1に係るリンク機構部、第1車輪及び第2車輪の正面拡大図であって、開いた状態から閉じた状態になるまでの遷移を示す。
【
図6】地面に埋設されたガイドパイプに生じる変形の典型的な態様を示す図であって、(a)はせん断の一例を示し、(b)は傾倒の一例を示し、(c)は座屈の一例を示す。
【
図7】本発明の実施の形態2に係るリンク機構部、第1車輪及び第2車輪の開いた状態における正面拡大図である。
【
図8】実施の形態2に係るリンク機構部、第1車輪及び第2車輪の正面拡大図であって、開いた状態から閉じた状態になるまでの遷移を示す。
【
図9】本発明の実施の形態3に係るリンク機構部、第1車輪及び第2車輪の正面拡大図であり、開いた状態のリンク機構部、第1車輪及び第2車輪を実線で示し、閉じた状態のリンク機構部、第1車輪及び第2車輪を点線で示す。
【
図10】本発明の実施の形態4に係るリンク機構部、第1車輪及び第2車輪の開いた状態における正面拡大図である。
【
図11】実施の形態4に係るリンク機構部、第1車輪及び第2車輪の閉じた状態における正面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。全図を通じて同一の要素には同一の符号を付す。
【0015】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る傾斜計測装置100は、
図1の正面図に示すように、本体部101と、2対の第1車軸102及び第2車軸103と、2対の第1車輪104及び第2車輪105と、2つのリンク機構部106と、を備える。
【0016】
なお、傾斜計測装置100は、少なくとも1対の第1車軸102及び第2車軸103を備えればよい。傾斜計測装置100が備える第1車軸102及び第2車軸103の対の数と、リンク機構部106の数とは、第1車軸102及び第2車軸103の対の数に応じたものであればよい。
【0017】
本体部101は、概ね丸棒状であり、一軸Aに沿って長さを有する。本体部101の基端には、詳細後述するガイドワイヤGW、データケーブルCなどが適宜取り付けられる。なお、ガイドワイヤGW及びデータケーブルCは兼用でもよい。
【0018】
本実施の形態では、一軸Aに平行な方向を上下軸とし、後述するガイドワイヤGW及びデータケーブルCが取り付けられる基端を上端、その反対側の先端を下端として、上方及び下方を規定する。本体部101に対して第1車軸102が突き出す方向を左方、本体部101に対して第2車軸103が突き出す方向を右方として、左方及び右方を規定する。そして、左方及び右方が前方から見た左右に対応するように前方を規定し、その逆方向を後方としている。これらの方向は、説明のために用いるのであって、本願の発明を限定する趣旨ではない。
【0019】
本体部101は、2つの収容空間部110を含んでおり、収容空間部110の各々は、左右方向に貫通する収容空間を形成している。また、本体部101は、一軸Aの傾斜角を計測するセンサ、当該センサの電源など(不図示)を内蔵する。センサは、例えば、鉛直方向に対する一軸Aの角度を計測する。
【0020】
なお、本体部101は、丸棒状に限られず、一軸Aに沿って長さを有する形状であればよい。
【0021】
各対の第1車軸102及び第2車軸103は、互いに平行な車軸であって、一軸Aを含む仮想的な面内において一軸Aを介して互いに異なる方向に配置される。
【0022】
本実施の形態では、第1車軸102は、前後方向を向く車軸であって、一軸Aを含む上下方向及び左右方向に平行な面内において一軸Aに対して右方に配置されている。第2車軸103は、前後方向を向く車軸であって、一軸Aを含む上下方向及び左右方向に平行な面内において一軸Aに対して左方に配置されている。
【0023】
各対の第1車輪104及び第2車輪105は、第1車軸102及び第2車軸103のそれぞれに取り付けられている。すなわち、第1車輪104は、第1車軸102に取り付けられており、第2車輪105は、第2車軸103に取り付けられている。これにより、第1車輪104は、第1車軸102を中心に回転することができ、第2車輪105は、第2車軸103を中心に回転することができる。
【0024】
本実施の形態に係る第1車輪104及び第2車輪105の直径は等しく、本体部101の太さ以下である。なお、第1車輪104及び第2車輪105の各々の直径は、本体部101の太さより大きくてもよい。
【0025】
リンク機構部106の各々は、
図2の正面拡大図に示すように、第1車軸102及び第2車軸103を本体部101に取り付ける機構を構成する部位であり、収容空間部110に取り付けられている。第1車軸102及び第2車軸103は、これらが取り付けられたリンク機構部106によって一定の回転中心RCを中心に回転することができる。
【0026】
回転中心RCは、第1車軸102と第2車軸103との中間にあり、かつ、一軸A上にある。すなわち、前方から見ると、第1車輪104及び第2車輪105は、それぞれが取り付けられる第1車軸102及び第2車軸103とともに、回転中心RCに関して点対称に位置付けられる。
【0027】
リンク機構部106の各々は、第1車輪104及び第2車輪105が収容空間110に出没自在となる回転範囲で、回転中心RCを中心に第1車軸102及び第2車軸103を回転させるように構成される。これにより、第1車輪104及び第2車輪105の各々は、開いた状態と閉じた状態との間で変位することができる。
【0028】
ここで、開いた状態とは、幅Wが最大となる状態である。閉じた状態とは、幅Wが最小となる状態である。また、幅Wは、第1車輪104及び第2車輪105の一軸Aから最も遠い部分間の左右方向の長さである。
【0029】
本実施の形態では、第1車輪104及び第2車輪105の各々は、開いた状態と閉じた状態とで変位することによって概ね全体が収容空間110に出没自在である。すなわち、開いた状態において第1車輪104及び第2車輪105の各々の概ね全体が収容空間110の外に位置付けられる(
図2参照)。閉じた状態において第1車輪104及び第2車輪105の各々の概ね全体が収容空間110に収容される。
【0030】
なお、第1車輪104及び第2車輪105の各々は、開いた状態と閉じた状態とで変位することによって一部が収容空間110に出没自在であってもよい。すなわち、開いた状態では、第1車輪104及び第2車輪105の各々の一部が収容空間110の外に位置してもよい。また、閉じた状態では、開いた状態において収容空間110の外に位置する部分のうちの少なくとも一部が収容空間110に収容されるとよい。
【0031】
本実施の形態に係るリンク機構部106の各々は、第1支点R1、第2支点R2、第3支点R3、第4支点R4、第5支点R5、第6支点R6を含む。また、リンク機構部106の各々は、第1リンク部材L1、第2リンク部材L2、第3リンク部材L3及び第4リンク部材L4を含む。さらに、リンク機構部106の各々は、第1回転支援部材RP1と、第2回転支援部材RP2とを含む。
【0032】
支点R1~R6の各々は、例えば、概ね丸棒状の部材(軸部)によって構成される。リンク部材L1~L4及び回転支援部材RP1~RP2の各々は、厚さ方向に貫通する孔部を含む平板状の金属によって構成される。
【0033】
支点R1~R6の各々を構成する軸部は、関連付けられたリンク部材L1~L4及び回転支援部材RP1~RP2の孔部に挿設される。これによって、リンク部材L1~L4及び回転支援部材RP1~RP2は、連付けられた支点R1~R6を中心として回転することができる。孔部と軸部の各組は、互いに回転可能であるが、互いにスライド移動(上下前後の移動)がほぼできない程度の嵌まり具合いで嵌まり合う。また、支点R1~R6の各々を構成する部材は、関連付けられたリンク部材L1~L4が前後方向に移動できないように孔部を係止するように構成されるとよい。
【0034】
これにより、支点R1~R6の各々は、取り付けられたリンク部材L1~L4及び回転支援部材RP1~RP2を互いに前後方向の軸を中心として回転可能に保持することができる。なお、リンク部材L1~L4、回転支援部材RP1~RP2及び支点R1~R6の構成は、ここで説明したものに限られず、取り付けられたリンク部材L1~L4を互いに回転可能に保持できるように適宜の形態で構成されてよい。
【0035】
このようなリンク部材L1~L4及び回転支援部材RP1~RP2は、第1車輪104と第2車輪105とを前後から挟むように対をなして設けられる。なお、リンク部材L1~L4及び回転支援部材RP1~RP2は、前後に対をなして設けられなくてもよく、各々が1つの棒状の部材で構成されてもよい。
【0036】
詳細には、第1支点R1及び第2支点R2は、一軸A上において回転中心RCから等しい距離で収容空間部110に設けられる支点である。第1支点R1は、回転中心RCよりも上方にて本体部101に固定されている。第2支点R2は、回転中心RCよりも下方にて本体部101に固定されている。
【0037】
また、第1支点R1及び第2支点R2の各々には、外力が加わっていない場合に開いた状態となるように、
図2の点線の矢印Tで示す方向へ力を第1リンク部材L1及び第2リンク部材L2の各々に加えるバネなどの弾性部材(不図示)を含む。
【0038】
第1リンク部材L1は、第1支点R1を中心として回転可能に本体部101取り付けられる部材であって、開いた状態において第1支点R1に対して右下方に延びる部位の端部近傍に第1車軸102が取り付けられる。また、第1リンク部材L1は、開いた状態において、第1支点R1を挟んで左上方と右下方とのそれぞれに第4支点R4と第3支点R3とが設けられる。
【0039】
第2リンク部材L2は、第2支点R2を中心として回転可能に本体部101取り付けられる部材であって、開いた状態において第2支点R2に対して左上方に延びる部位の端部近傍に第2車軸103が取り付けられる。また、第2リンク部材L2は、開いた状態において、第2支点R2を挟んで左上方と右下方とのそれぞれに第6支点R6と第5支点R5とが設けられる。
【0040】
第3リンク部材L3は、第3支点R3及び第5支点R5との間を接続する部材であって、開いた状態において概ね上下方向に延びる。第4リンク部材L4は、第4支点R4及び第6支点R6との間を接続する部材であって、開いた状態において概ね上下方向に延びる。
【0041】
このような、第1支点R1~第2支点R2で関連付けられたリンク部材L1~L4によって、詳細後述するように、第1車軸102及び第2車軸103は回転中心RCを中心に予め定められた範囲で回転することができる。この回転に伴って、第1車輪104及び第2車輪105は、開いた状態における位置と、閉じた状態における位置との間で変位することができる。ここで、「開いた状態」とは、第1車輪104及び第2車輪105の幅Wが最大となる状態であり、「閉じた状態」とは、第1車輪104及び第2車輪105の幅Wが最小となる状態であり、以下においても同様である。
【0042】
第1回転支援部材RP1は、開いた状態において、右上端部近傍に配置される第1車軸102と、左下端部近傍に設けられる第5支点R5との間を接続する部材であって、第1ガイド孔111と、第1傾斜部IP1とを含む。
【0043】
第1ガイド孔111は、第1車軸102が挿設される長孔であり、第1車軸102及び第2車軸103が回転中心RCを中心に回転するときに第1車軸102を案内する。第1ガイド孔111は、開いた状態において、上端からやや左方に傾斜しつつ下方へ概ね直線状に延びる。
【0044】
第1傾斜部IP1は、上下方向の位置において第1車輪104よりも下方に位置付けられており、下方に向かうに従って一軸Aへ近づくように左方へ傾斜している部位である。
【0045】
図2に示すように下方からの力F1が第1傾斜部IP1に加わると、第1回転支援部材RP1は、
図2で左回りに第5支点R5を中心として回転する。これに伴って、第1車軸102は、第1ガイド孔111を形成する部位から力を受けて、第1ガイド孔111に沿って移動するとともに、
図2で右回りに第1支点R1を中心として回転する。これにより、第1車軸102は、回転中心RCを中心として所定方向に回転する。
【0046】
このように、第1傾斜部IP1は、下方からの力F1が加わると回転中心RCを中心として第1車軸102及び第2車軸103を所定方向へ回転させるように、第1車軸102に関連付けられている。所定方向とは、
図2で右回りである。すなわち、当該所定方向への回転によって、第1車軸102が下方へ移動するとともに、第2車軸103が上方へ移動する。
【0047】
また、第1傾斜部IP1は、第1車輪104に対して下方に位置する部分を含む。本実施の形態では、第1傾斜部IP1は、
図2に示すように、本体部101の近傍から第1車輪104の中心よりも右方(一軸Aから離れる方向)にまで延在している。ここで、「延在」とは、延びるように存在していることを意味し、以下においても同様である。
【0048】
第2回転支援部材RP2は、開いた状態において左下端部近傍に配置される第2車軸103と、第4支点R4との間を接続する部材であって、第2ガイド孔112と、第2傾斜部IP2とを含む。
【0049】
第2ガイド孔112は、第2車軸103が挿設される長孔であり、第1車軸102及び第2車軸103が回転中心RCを中心に回転するときに第2車軸103を案内する。第2ガイド孔112は、開いた状態において、下端からやや右方に傾斜しつつ上方へ概ね直線状に延びる。
【0050】
第2傾斜部IP2は、上下方向の位置において第2車輪105よりも上方に位置付けられており、上方に向かうに従って一軸Aへ近づくように右方へ傾斜している部位である。
【0051】
図2に示すように上方からの力F2が第2傾斜部IP2に加わると、第2回転支援部材RP2は、
図2で左回りに第4支点R4を中心として回転する。これに伴って、第2車軸103は、第2ガイド孔112を形成する部位から力を受けて、第2ガイド孔112に沿って移動するとともに、
図2で右回りに第2支点R2を中心として回転する。これにより、第2車軸103は、回転中心RCを中心として所定方向に回転する。
【0052】
このように、第2傾斜部IP2は、上方からの力F2が加わると回転中心RCを中心として第1車軸102及び第2車軸103を所定方向へ回転させるように、第2車軸103に関連付けられている。所定方向とは、上述の通り、
図2で右回りである。
【0053】
また、第2傾斜部IP2は、第1車輪105に対して上方に位置する部分を含む。本実施の形態では、第2傾斜部IP2は、
図2に示すように、本体部101の近傍から第2車輪105の中心よりも左方(一軸Aから離れる方向)にまで延在している。
【0054】
(傾斜計測装置100の使用方法)
傾斜計測装置100の基端には、ガイドワイヤGWと、データケーブルCとが接続される。データケーブルCは、傾斜計測装置100とデータロガー115との間でデータを送受するためのケーブルである。
【0055】
傾斜計測装置100による計測では、計測の対象となる地盤Gに予め埋設されるガイドパイプPが使用される。ガイドパイプPは、予め定められた長さを有し、少なくとも一方が開放したパイプ孔が長さ方向に沿って内部に設けられたパイプである。ガイドパイプPの材料は、適宜選定されてよいが、例えば金属である。ガイドパイプPは、その長さ方向が概ね鉛直方向に沿うように地盤Gに埋設されることが多い。
【0056】
ガイドパイプPの長さ方向における断面は、
図3に示すように、概ね円環状である。ガイドパイプPの内壁には、ガイドパイプPの長さ方向に沿って延びる溝GR1~GR4が設けられている。溝GR1~GR4は、傾斜計測装置100による計測時に第1車輪104又は第2車輪105が嵌め込まれる溝であって、長さ方向の断面において中心PCを介して互いに対向するように対をなして設けられる。
【0057】
図3では、ガイドパイプPの周方向に沿って等間隔で4つの溝GR1~GR4が設けられる例を示す。
図3に示すガイドパイプPでは、長さ方向の断面において、GR1及びGR2が中心PCを介して互いに対向し、GR3及びGR4が中心PCを介して互いに対向する。なお、ガイドパイプPには少なくとも1対の溝が設けられればよい。
【0058】
図4は、本実施の形態に係る傾斜計測装置の使用方法を説明するための図である。
図4(a)に示すように、傾斜計測装置100は、地上から地盤Gに埋設されたガイドパイプPのパイプ孔の入り口Eから、下端を先頭に挿入される。このとき、第1車輪104及び第2車輪105は、互いに対向する溝GRの対(例えば、GR1及びGR2のそれぞれ)に嵌め込まれる。ここで、溝GRは、溝GR1~GR4の総称であり、以下においても同様である。
【0059】
開いた状態における幅Wは、互いに対向する溝GRの底B(すなわち、ガイドパイプPの溝GRを形成する内壁のうち、周方向に沿った部分)の間の距離よりもやや大きく設定される。そのため、第1車輪104及び第2車輪105を溝に嵌め込む際には、例えば作業者が第1車輪104及び第2車輪105を押すことによって幅Wを小さくして、傾斜計測装置100は、パイプ孔の入り口Eに位置付けられるとよい。第1車輪104及び第2車輪105が互いに対向する溝GRの組に嵌ると、弾性部材によって幅Wは大きくなる。これにより、第1車輪104及び第2車輪105が、互いに対向する溝GRの組に嵌った状態が維持される。
【0060】
そして、傾斜計測装置100は、ガイドワイヤGWによって吊り下げられる。ガイドワイヤGWは、モータ、作業者などによって繰り出されることで、
図4(b)に示すように、下端を先頭としてパイプ孔を奥方へ移動する。このとき、傾斜計測装置100は、第1車輪104及び第2車輪105が互いに対向する溝GRに嵌め込まれた状態で移動するので、ガイドパイプPに沿って移動することができる。
【0061】
傾斜計測装置100は、
図4(c)に示すようにガイドパイプPについて予め定められる計測限界位置に到達すると、ガイドワイヤGWは巻き取られる。これにより、傾斜計測装置100は、上端を先頭としてパイプ孔を入り口Eへ向かって手前方向へ移動する。
【0062】
パイプ孔を移動中の傾斜計測装置100は、所定区間(例えば傾斜計測装置100の全長分に応じた長さ)を移動する度に、内蔵するセンサによって、例えば鉛直方向に対する自身の傾斜角を計測する。また、パイプ孔の入り口Eに傾斜計測装置100を挿入した位置からのガイドワイヤGWの繰り出し量は、繰り出し量計116によって計測される。ガイドワイヤGWの繰り出し量を計測することによって、移動中の傾斜計測装置100のガイドパイプPにおける通過位置を計測することができる。
【0063】
傾斜計測装置100は、データケーブルCを介して接続されたデータロガー115に計測した傾斜角を、逐次出力する。また、繰り出し量計116は、計測したガイドワイヤGWの繰り出し量を無線通信などによって逐次、データロガー115に出力する。これにより、データロガー115には、傾斜計測装置100の通過位置における傾斜角が蓄積される。
【0064】
傾斜計測装置100は、概ねガイドパイプPに沿って移動するので、パイプ孔を移動する間に傾斜計測装置100によって計測された傾斜角は、通過位置におけるガイドパイプPの傾斜に相当する。従って、データロガー115は、通過位置と傾斜角とが対応付けられた計測データを収集することができる。パイプ孔の入り口Eに到達すると、ガイドワイヤGWの巻き取りは終了し、傾斜計測装置100が回収される。
【0065】
データロガー115に収集された計測データを解析することによって、地中におけるガイドパイプPの深度に応じた傾斜角を求めることができる。地中変位が発生すると、それに従ってガイドパイプPが傾斜するので、例えば異なる2つの計測時点での計測データに基づいて得られたガイドパイプPの深度に応じた傾斜角から、当該2つの計測時点の間で生じた地中変位を求めることができる。
【0066】
詳細には例えば、ある測定時点T1において、通過位置(ガイドワイヤGWの繰り出し量)と傾斜角θ1(度)とが対応付けられた計測データが得られたとする。各区間の上端及び下端の間の距離をL1とすると、水平方向の位置の差分ΔX1(m)は、L1×sinθ1により求めることができる。測定位置の深度D(m)は、ガイドワイヤGWの繰り出し量と概ね等しいものとして、差分ΔX1(m)を足し合わせることによって、測定時点T1における入り口Eからの深度D(m)に応じた、ガイドパイプPの概ね中心の水平位置X1(m)を求めることができる。
【0067】
また、測定時点T1よりも後の測定時点T2において、通過位置(ガイドワイヤGWの繰り出し量)と傾斜角θ2(度)とが対応付けられた計測データが得られたとする。この場合も同様にして、測定時点T2における入り口Eからの深度D(m)に応じた、ガイドパイプPの概ね中心の水平位置X2(m)を求めることができる。
【0068】
深度D(m)が共通する水平位置X1(m)と水平位置X2(m)との差を求めることによって、計測時点T1とT2との間で深度D(m)にて生じた地中変位(m)を求めることができる。
【0069】
なお、深度D(m)に応じたガイドパイプPの概ね中心の水平位置X1,X2(m)、地中変位の求め方の一例をここでは説明したが、これらの方法は、適宜変更されてもよい。
【0070】
(リンク機構部106による車輪104,105の動作)
本実施の形態に係る傾斜計測装置100では、リンク機構部106を備えることによって、傾斜計測装置100を前方から見た
図5に示すように、第1車輪104及び第2車輪105を関連付けて、回転中心RCを中心に回転させることができる。
【0071】
図5は、本実施の形態に係るリンク機構部106の動作によって、第1車輪104及び第2車輪5が開いた状態から閉じた状態になるまでの遷移を示す図である。
図5では、リンク部材L1~L2及び回転支援部材RP1~RP2の骨格を実線で表し、支点R1~R6を黒丸で表してモデルによってリンク機構部106を示している。
【0072】
なお、
図5では、異なる太さの実線によって、リンク部材L1~L2及び回転支援部材RP1~RP2の骨格(前方から見た場合の部材の中心)を示している。また、太い点線によってリンク部材L3~L4の骨格を示している。これは、同図におけるリンク部材L1~L4及び回転支援部材RP1~RP2の各々の区別を容易にするためである。また、
図5では、各状態における第1ガイド孔111及び第2ガイド孔112の位置を点線で示している。
【0073】
図5(a)は、開いた状態におけるリンク機構部106による車輪104,105の状態を示す図であって、
図2に示すリンク機構部106による車輪104,105の状態に対応する。
【0074】
図5(b)は、開いた状態と閉じた状態との間の第1状態におけるリンク機構部106による車輪104,105の状態を示す図であり、
図5(c)は、開いた状態と閉じた状態との間の第2状態におけるリンク機構部106による車輪104,105の状態を示す図である。
図5(d)は、閉じた状態におけるリンク機構部106による車輪104,105の状態を示す図である。
【0075】
図5(a)~(d)を参照すると分かるように、リンク部材L1~L4及び回転支援部材RP1~RP2がそれぞれに取り付けられた支点R1~R6を中心に回転することによって、第1車軸102及び第2車軸103は、第1ガイド孔111及び第2ガイド孔112のそれぞれの長さ方向に従って移動することができる。これにより、第1車軸102及び第2車軸103は回転中心RCを中心に回転し、第1車輪104及び第2車輪105は開いた状態と閉じた状態との間の任意の状態に変位することができる。
【0076】
開いた状態から閉じた状態に変化する場合、第1車軸102及び第2車軸103は、回転中心RCを中心に、一回転方向(
図5では右回り)に回転する。この一回転方向の回転に伴って、上述の通り、第1車輪104及び第2車輪105の幅Wは、次第に小さくなる。
【0077】
図5(d)に示す閉じた状態では、第1車輪104及び第2車輪105の全体が収容空間の中に収容されており、第1車輪104及び第2車輪105の幅Wは最小となっている。そのため、閉じた状態では、傾斜計測装置100全体の左右方向の長さが、本体部101の太さと同じになる。
【0078】
第1車軸102及び第2車軸103は、回転中心RCを中心に、上記の一回転方向とは逆の回転方向(
図5では左回り)に回転することで、閉じた状態から開いた状態に変化することもできる。この逆の回転方向の回転に伴って、第1車輪104及び第2車輪105の幅Wは、次第に大きくなる。
【0079】
(ガイドパイプPの変形部位を通過する方法)
従来の傾斜計測装置(例えば、特許文献1に記載の傾斜計)では、長い期間(例えば数ヶ月から数年)にわたってガイドパイプPを地中に埋設していると、計測時に傾斜計測装置がガイドパイプPの途中で移動し難くなることがある。
【0080】
その原因を明らかにするため、発明者らは、傾斜計測装置の移動が困難になったガイドパイプPを調査した。その結果、発明者らは、パイプ孔が部分的又は局所的なガイドパイプPの変形が、傾斜計測装置100の移動が困難になる主たる原因であることをつきとめた。
【0081】
また、傾斜計測装置100の移動を困難にするガイドパイプPの変形の態様には、主に、
図6に示すようなガイドパイプPのせん断、傾倒、座屈であることも判明した。
【0082】
せん断は、
図6(a)に一例を示すように、ガイドパイプPの軸方向に沿って比較的近い距離(予め定められた距離以内)に、ガイドパイプPが異なる方向へ屈曲又は湾曲する変形である。
【0083】
傾倒は、
図6(b)に一例を示すように、ガイドパイプPが屈曲又は湾曲する変形であって、比較的近い距離に異なる方向への傾倒が生じていない場合である。
【0084】
座屈は、
図6(c)に一例を示すように、ガイドパイプPが上下方向から圧縮されたような変形である。座屈が生じているガイドパイプPでは、当該部位においてガイドパイプPの概ね全周の部材が内側へ巻き込まれるように変形してガイドパイプPの中へ突き出すことがある。
【0085】
本実施の形態に係る傾斜計測装置100では、開いた状態において、第1車輪104及び第2車輪105は、それぞれの第1車軸102及び第2車軸103よりも外方が露出している。
【0086】
ここで、第1車輪104及び第2車輪105についての外方とは、一軸Aから離れる方向であり、本実施の形態に係る第1車輪104では右方、本実施の形態に係る第2車輪105では左方に相当する。また、露出とは、傾斜計測装置100を前方から見て、その方向に当該部材よりも突き出た部材がないことを意味する。
【0087】
まず例えば、下端を先頭に移動する場合において、座屈などによって第1車輪104の半径を超えない大きさで突き出た変形部位が第1車輪104に接触するとする。或いは、上端を先頭に移動する場合に、座屈などによって第2車輪105の半径を超えない大きさで突き出た変形部位が第2車輪105に接触するとする。
【0088】
このような比較的小さな変形量であれば、第1車輪104のうちの第1車軸102よりも外方の部分、又は、第2車輪105のうちの第2車軸103よりも外方の部分が、変形部位と最初に接触する。この場合、第1車輪104又は第2車輪105は、内方へ向かう成分を含む力を変形部位から受けることになる。ここで、内方とは、上述の外方とは逆の方向、すなわち一軸Aに近づく方向であり、本実施の形態に係る第1車輪104では左方、本実施の形態に係る第2車輪105では右方に相当する。
【0089】
そのため、第1車輪104又は第2車輪105が変形部位から受ける力によって、第1車軸102及び第2車軸103は、回転中心RCを中心に回転して、幅Wが小さくなるように第1車輪104及び第2車輪105が変位する。その結果、傾斜計測装置100は、当該変形部位を通過することができる。
【0090】
このように、ガイドパイプPに生じたせん断、傾倒、座屈などによる変形の量が小さい場合には、第1車輪104及び第2車輪105のうち、第1車軸102及び第2車軸103よりも外方の部分が露出していることで、傾斜計測装置100は、変形部位を概ね通過することができる。
【0091】
次に、例えば、下端を先頭に下方へ移動する場合において、第1車輪104の半径を超える大きさで突き出た変形部位が第1車輪104に接触するとする。或いは、上端を先頭に上方へ移動する場合において、第2車輪105の半径を超える大きさで突き出た変形部位が第2車輪105に接触するとする。
【0092】
このとき、第1回転支援部材RP1(第1傾斜部IP1)及び第2回転支援部材RP2(第2傾斜部IP2)を有していない従来の傾斜計測装置では、第1車輪104は、その下端又は下端近傍に下方からの力を受ける。また、第2車輪105は、その上端又は上端近傍に上方からの力を受ける。
【0093】
第1車輪104に対する下方からの力、第2車輪105に対する上方からの力はいずれも、回転中心RCを中心として所定方向(
図2で右回り)に第1車軸102及び第2車軸103を回転させる力とは、逆の方向の力である。そのため、第1車軸102及び第2車軸103は回転中心RCを中心に回転することができず、幅Wを小さくすることができないことが多い。その結果、傾斜計測装置100は、当該変形部位で引っ掛かり、当該変形部位を通過することができないことが多い。
【0094】
これに対して、本実施の形態に係る傾斜計測装置100は、第1傾斜部IP1を含む。第1傾斜部IP1は、上述したように、下方からの力F1が加わると回転中心RCを中心として第1車軸102及び第2車軸103を所定方向へ回転させるように、第1車軸102に関連付けられている。そのため、下端を先頭に下方へ移動する場合において、第1車輪104の半径を超える大きさで突き出た変形部位が第1車輪104に接触した場合であっても、幅Wが小さくなるように第1車輪104及び第2車輪105が変位し、傾斜計測装置100は、当該変形部位を通過することができる。
【0095】
また、本実施の形態に係る傾斜計測装置100は、第2傾斜部IP2を含む。第2傾斜部IP2は、上述したように、上方からの力F2が加わると回転中心RCを中心として第1車軸102及び第2車軸103を所定方向へ回転させるように、第2車軸103に関連付けられている。そのため、上端を先頭に移動する場合において、第2車輪105の半径を超える大きさで突き出た変形部位が第2車輪105に接触した場合であっても、幅Wが小さくなるように第1車輪104及び第2車輪105が変位し、傾斜計測装置100は、当該変形部位を通過することができる。
【0096】
このように、本実施の形態に係る傾斜計測装置100によれば、比較的大きな変形が生じたガイドパイプPであっても、当該変形部位を通過できる可能性が高くなる。従って、従来よりも長い期間にわたってガイドパイプを使用することが可能になる。
【0097】
これまで、本発明の実施の形態1に係る傾斜計測装置100について説明した。
【0098】
本実施の形態に係る傾斜計測装置100では、第1傾斜部IP1及び第2傾斜部IP2を備える。これにより、上述の通り、変形が生じたガイドパイプPの変形部位を通過できる可能性が高くなる。従って、従来よりも長い期間にわたってガイドパイプPを使用することが可能になる。
【0099】
本実施の形態に係る傾斜計測装置100では、第1傾斜部IP1は、第1車輪104に対して下方に位置する部分を含む。また、第2傾斜部IP1は、第2車輪105に対して上方に位置する部分を含む。
【0100】
これにより、変形部位が半径を超えて突き出す場合に、第1傾斜部IP1又は第2傾斜部IP2がより確実に当該変形部位に接触することができる。その結果、第1車輪104及び第2車輪105の幅Wが小さくなるので、変形が生じたガイドパイプPの変形部位を通過できる可能性がより高くなる。従って、従来よりも一層長い期間にわたってガイドパイプPを使用することが可能になる。
【0101】
本実施の形態に係る傾斜計測装置100では、第1ガイド孔111及び第2ガイド孔112を備える。これにより、第1車軸102及び第2車軸103が円滑に移動して、回転中心RCを中心として回転させることができる。そのため、ガイドパイプPの変形に応じて幅Wを円滑に変えることができる。従って、傾斜計測装置100は、当該変形部位を通過することが可能になる。
【0102】
本実施の形態に係る傾斜計測装置100では、第1ガイド孔111及び第2ガイド孔112の各々は、第1車軸102及び第2車軸103の貫通方向(本実施の形態では、前後方向)に対して垂直な一方向に沿って直線状に延びる。
【0103】
第1ガイド孔111及び第2ガイド孔112が直線状に延びた簡易な構成である。一般的に、直線状に延びた長孔は、屈曲或いは湾曲した部分を含む長孔よりも容易に設けることができる。そのため、第1回転支援部材RP1と第2回転支援部材RP2とのそれぞれに、回転中心RCを中心に第1車軸102及び第2車軸103を回転させるためのガイド孔111,112を容易に設けることができる。従って、従来よりも長い期間にわたってガイドパイプPを使用することを容易に実現することが可能になる。
【0104】
本実施の形態に係る傾斜計測装置100では、第1車輪104及び第2車輪105の各々の直径が本体部101の太さ以下である。これにより、第1車輪104及び第2車輪105の直径が本体部101の太さよりも太い場合よりも、第1車輪104及び第2車輪105の幅Wが小さくなるので、変形によって細くなったパイプ孔を通過し易くすることができる。そのため、変形が生じたガイドパイプPであっても、移動できる可能性が高くなる。
【0105】
従って、従来よりも長い期間にわたってガイドパイプPを使用することが可能になる。
【0106】
本実施の形態に係る傾斜計測装置100では、第1車輪104及び第2車輪105は、第1車軸102及び第2車軸103が回転中心RCを中心に回転することによって、収容空間に出没自在である。これにより、ガイドパイプPの変形部位を通過する際に、第1車輪104及び第2車輪105の少なくとも一部が収容空間に没入することができる。これにより、収容空間に没入できない場合よりも、第1車輪104及び第2車輪105の幅Wが小さくなるので、変形によって細くなったパイプ孔を通過し易くすることができる。そのため、変形が生じたガイドパイプPであっても、移動できる可能性が高くなる。
【0107】
従って、従来よりも長い期間にわたってガイドパイプPを使用することが可能になる。
【0108】
なお、傾斜計測装置100は、第1傾斜部IP1及び第2傾斜部IP2のいずれか一方のみを備えてもよい。これにより、下端を先頭に移動する場合と上端を先頭に移動する場合との少なくとも一方の場合において、比較的大きな変形が生じたガイドパイプPであっても、当該変形部位を通過できる可能性が高くなる。従って、従来よりも長い期間にわたってガイドパイプを使用することが可能になる。
【0109】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1とは異なるリンク機構部の構成について説明する。本実施の形態に係る傾斜計測装置は、リンク機構部を除いて、実施の形態1に係る傾斜計測装置100と概ね同様に構成されてよい。
【0110】
本実施の形態に係るリンク機構部206の概要は、実施の形態1に係るリンク機構部106と同様である。すなわち、リンク機構部206は、
図7の正面拡大図に示すように、一定の回転中心RCを中心に第1車軸102及び第2車軸103が回転するように、第1車軸102及び第2車軸103を本体部101に取り付ける機構を構成する部位であり、収容空間部110に取り付けられている。回転中心RCは、第1車軸102と第2車軸103との中間にあり、かつ、一軸A上にある。
【0111】
また、リンク機構部206は、第1車輪104及び第2車輪105が収容空間に出没自在となる回転範囲で、回転中心RCを中心に第1車軸102及び第2車軸103を回転させるように構成される。これにより、第1車輪104及び第2車輪105の各々は、開いた状態と閉じた状態との間で変位することができる。
【0112】
詳細には、本実施の形態に係るリンク機構部206は、中心支点RRC、第7支点R7、第8支点R8、第9支点R9、第10支点R10、第11支点R11、第12支点R12を含む。また、リンク機構部206は、中心回転リンク部材LC1、第5リンク部材L5、第6リンク部材L6、第7リンク部材L7、第8リンク部材L8を含む。さらに、リンク機構部206は、第3回転支援部材RP3と、第4回転支援部材RP4とを含む。
【0113】
支点RRC,R7~R12の各々は、支点R1~R6の各々と同様に、概ね丸棒状の部材によって構成される。リンク部材LC1、L5~L8及び回転支援部材RP3~RP4の各々は、リンク部材L1~L4及び回転支援部材RP1~RP2の各々と同様に、厚さ方向に貫通する孔部を含む平板状の金属によって構成される。支点RRC,R7~R12の各々を構成する部材は、関連付けられたリンク部材LC1,L5~L8及び回転支援部材RP3~RP4の孔部に挿設される。これによって、リンク部材LC1,L5~L8及び回転支援部材RP3~RP4は、連付けられた支点RRC,R7~R12を中心として回転することができる。
【0114】
より詳細には、中心支点RRCは、一軸A上において第1支点R1及び第2支点R2の中間にて収容空間部110に設けられる支点である。すなわち、中心支点RRCは、回転中心RCに設けられる。
【0115】
また、中心支点RRCには、外力が加わっていない場合に開いた状態となるように、
図7の点線の矢印Tで示す方向へ力を中心回転リンク部材LC1に加えるバネなどの弾性部材(不図示)を含んでもよい。
【0116】
中心回転リンク部材LC1は、中心支点RRCを中心として回転できるように取り付けられる。
【0117】
中心回転リンク部材LC1は、開いた状態において、中心支点RRCに対して右上方に位置する第9支点R9が設けられる。中心回転リンク部材LCは、開いた状態において、第9支点R9に対して右下方に位置する端部近傍に第1車輪102が取り付けられる。
【0118】
また、中心回転リンク部材LC1は、開いた状態において中心支点RRCに対して左下方に位置する第10支点R10が設けられる。中心回転リンク部材LC1は、開いた状態において、第10支点R10に対して左上方に位置する端部近傍に第2車輪103が取り付けられる。
【0119】
第7支点R7及び第8支点R8は、一軸A上において回転中心RCから等しい距離で収容空間部110に設けられる支点である。第7支点R7は、回転中心RCよりも下方にて本体部101に固定されている。第8支点R8は、回転中心RCよりも上方にて本体部101に固定されている。
【0120】
第5リンク部材L5及び第6リンク部材L6は、第7支点R7及び第8支点R8のそれぞれを中心として回転できるように取り付けられる。第5リンク部材L5は、開いた状態において、第7支点R7の概ね右方に位置する第11支点R11が設けられる。第6リンク部材L6は、開いた状態において、第8支点R8の概ね左方に位置する第12支点R12が設けられる。
【0121】
第7リンク部材L7は、第9支点R9及び第11支点R11との間を接続する部材であって、開いた状態において第9支点R9から第11支点R11へ概ね右下方に延びる。第8リンク部材L8は、第10支点R10及び第12支点R12との間を接続する部材であって、開いた状態において第10支点R10から第12支点R12へ概ね左上方に延びる。
【0122】
このような、中心支点RRC及び第7支点R7~第12支点R12で関連付けられたリンク部材LC1及びL5~L8によって、詳細後述するように、第1車軸102及び第2車軸103は回転中心RCを中心に予め定められた範囲で回転することができる。この回転に伴って、第1車輪104及び第2車輪105は、開いた状態における位置と、閉じた状態における位置との間で変位することができる。
【0123】
第3回転支援部材RP3は、開いた状態において、右上端部近傍に配置される第1車軸102と、左下端部近傍に設けられる第11支点R11との間を接続する部材であって、実施の形態1と同様の第1ガイド孔111及び第1傾斜部IP1とを含む。説明を簡明にするため、本実施の形態に係る第1ガイド孔111及び第1傾斜部IP1の詳細な説明は省略する。
【0124】
第4回転支援部材RP4は、開いた状態において、左下端部近傍に配置される第2車軸103と、右上端部近傍に設けられる第12支点R12との間を接続する部材であって、実施の形態1と同様の第2ガイド孔112及び第2傾斜部IP2とを含む。説明を簡明にするため、本実施の形態に係る第2ガイド孔112及び第2傾斜部IP2の詳細な説明は省略する。
【0125】
本実施の形態に係る傾斜計測装置の使用方法は、実施の形態1に係る傾斜計測装置100の使用方法と同様である。説明を簡明にするため、本実施の形態に係る傾斜計測装置の使用方法の詳細な説明は省略する。
【0126】
(リンク機構部206による車輪104,105の動作)
本実施の形態に係る傾斜計測装置では、リンク機構部206を備えることによって、傾斜計測装置を前方から見た
図8に示すように、第1車輪104及び第2車輪105を関連付けて、回転中心RCを中心に回転させることができる。
【0127】
図8は、本実施の形態に係るリンク機構部206の動作によって、第1車輪104及び第2車輪105が開いた状態から閉じた状態になるまでの遷移を示す図である。
図8では、
図5と同様に、リンク部材LC1,L5~L8及び回転支援部材RP3~RP4の各々の区別を容易にするため、異なる太さの実線によってリンク部材LC1,L5~L6及び回転支援部材RP3~RP4の骨格を示し、太い点線によってリンク部材L7~L8の骨格を示している。また、
図8においても、各状態における第1ガイド孔111及び第2ガイド孔112の位置を点線で示している。
【0128】
図8(a)は、開いた状態におけるリンク機構部206による車輪104,105の状態を示す図であって、
図7に示すリンク機構部206による車輪104,105の状態に対応する。
【0129】
図8(b)は、開いた状態と閉じた状態との間の第1状態におけるリンク機構部206による車輪104,105の状態を示す図であり、
図8(c)は、開いた状態と閉じた状態との間の第2状態におけるリンク機構部206による車輪104,105の状態を示す図である。
図8(d)は、閉じた状態におけるリンク機構部206による車輪104,105の状態を示す図である。
【0130】
図8(a)~(d)を参照すると分かるように、実施の形態1と同様に、リンク部材LC1,L5~L8及び回転支援部材RP3~RP4がそれぞれに取り付けられた支点RRC,R7~R12を中心に回転することによって、第1車軸102及び第2車軸103は、回転中心RCを中心に回転することができる。
【0131】
開いた状態から閉じた状態に変化する場合、第1車軸102及び第2車軸103は回転中心RCを中心に一回転方向(
図8では右回り)に回転することによって、第1車輪104及び第2車輪105の幅Wは、次第に小さくなる。
【0132】
図8(d)に示す閉じた状態では、第1車輪104及び第2車輪105の全体が収容空間の中に収容されており、第1車輪104及び第2車輪105の幅Wは最小となっている。そのため、第4状態では、傾斜計測装置100全体の左右方向の長さが、本体部101の太さと同じになる。
【0133】
第1車軸102及び第2車軸103は、回転中心RCを中心に、上記の一回転方向とは逆の回転方向(
図8では左回り)に回転することで、閉じた状態から開いた状態に変化することもできる。この逆の回転方向の回転に伴って、第1車輪104及び第2車輪105の幅Wは、次第に大きくなる。
【0134】
このように、本実施の形態に係るリンク機構部206によっても、車輪104,105は、実施の形態1と同様に動作する。そのため、実施の形態1に係る傾斜計測装置100と同様に、ガイドパイプPの変形部位を通過することができる。
【0135】
本実施の形態に係るリンク機構部206を備える傾斜計測装置によっても、実施の形態1に係る傾斜計測装置100と同様の効果を奏する。
【0136】
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態1とは異なるリンク機構部の構成について説明する。本実施の形態に係る傾斜計測装置は、リンク機構部を除いて、実施の形態1に係る傾斜計測装置100と概ね同様に構成されてよい。
【0137】
本実施の形態に係るリンク機構部306の概要は、実施の形態1に係るリンク機構部106と同様である。すなわち、リンク機構部306は、
図9の正面拡大図に示すように、一定の回転中心RCを中心に第1車軸102及び第2車軸103が回転するように、第1車軸102及び第2車軸103を本体部101に取り付ける機構を構成する部位であり、収容空間部110に取り付けられている。回転中心RCは、第1車軸102と第2車軸103との中間にあり、かつ、一軸A上にある。
【0138】
また、リンク機構部306は、第1車輪104及び第2車輪105が収容空間に出没自在となる回転範囲で、回転中心RCを中心に第1車軸102及び第2車軸103を回転させるように構成される。これにより、第1車輪104及び第2車輪105の各々は、開いた状態と閉じた状態との間で変位することができる。
【0139】
なお、
図9では、開いた状態のリンク機構部306、第1車輪104及び第2車輪105を実線で示し、閉じた状態のリンク機構部306、第1車輪104及び第2車輪105を点線で示している。同図に示すように、本実施の形態に係る傾斜計測装置では、閉じた状態において第1車輪104及び第2車輪105の一部が、収容空間110に収容される。
【0140】
詳細には、本実施の形態に係るリンク機構部306は、実施の形態2と概ね同様の中心支点RRC及び中心回転リンク部材LC1を含む。ただし、本実施の形態に係る中心回転リンク部材LC1には、支点R9~R10が設けられていない点で、実施の形態2に係る中心回転リンク部材LC1と異なる。説明を簡明にするため、本実施の形態に係る中心支点RRC及び中心回転リンク部材LC1の詳細な説明は省略する。
【0141】
このような、中心支点RRCに関連付けられた中心回転リンク部材LC1によって、第1車軸102及び第2車軸103は回転中心RCを中心に予め定められた範囲で回転することができる。この回転に伴って、第1車輪104及び第2車輪105は、開いた状態における位置と、閉じた状態における位置との間で変位することができる。
【0142】
さらに、リンク機構部306は、第5回転支援部材RP5と、第6回転支援部材RP6とを含む。
【0143】
第5回転支援部材RP5は、例えば金属製、樹脂製の弾性を有する板状の部材であって、上端が第1車軸102に固定され、下端が本体部110の外面と接触するように上端から傾斜した部分を含んで延びる。当該傾斜した部分の下面を形成する部位は、実施の形態1と概ね同様の第1傾斜部IP1を構成する。説明を簡明にするため、本実施の形態に係る第1傾斜部IP1の詳細な説明は省略する。
【0144】
第5回転支援部材RP5は、外力が加わっていない開いた状態では、
図9に示すように、下端が本体部110の外面と接触した状態を維持する。
【0145】
また、第5回転支援部材RP5は、
図9に示すように下方からの力F1が第1傾斜部IP1に加わると、上端に固定された第1車軸102を左方へ押しながら、下端が本体部110の外面と接触した状態を維持しつつ次第に下方へ移動することができる。このとき、第1車軸102は、第5回転支援部材RP5の上端から力を受けて、回転中心RCを中心として所定方向(
図9で右回り)に回転する。これにより、第5回転支援部材RP5は、
図9の実線で示す開いた状態と同図の点線で示す閉じた状態との間の任意の状態に変化することができる。
【0146】
このように、本実施の形態においても第1傾斜部IP1は、実施の形態1と同様に、下方からの力F1が加わると回転中心RCを中心として第1車軸102及び第2車軸103を所定方向へ回転させるように、第1車軸102に関連付けられている。
【0147】
第6回転支援部材RP6は、例えば金属製、樹脂製の弾性を有する板状の部材であって、下端が第2車軸103に固定され、上端が本体部110の外面と接触するように下端から傾斜した部分を含んで延びる。当該傾斜した部分の上面を形成する部位は、実施の形態1と概ね同様の第2傾斜部IP2を構成する。説明を簡明にするため、本実施の形態に係る第2傾斜部IP2の詳細な説明は省略する。
【0148】
第6回転支援部材RP6は、外力が加わっていない開いた状態では、
図9に示すように、上端が本体部110の外面と接触した状態を維持する。
【0149】
また、第6回転支援部材RP6は、
図9に示すように上方からの力F2が第2傾斜部IP2に加わると、下端に固定された第2車軸103を右方へ押しながら、上端が本体部110の外面と接触した状態を維持しつつ次第に下方へ移動することができる。このとき、第2車軸103は、第6回転支援部材RP6の上端から力を受けて、回転中心RCを中心として所定方向(
図9で右回り)に回転する。これにより、第6回転支援部材RP6は、
図9の実線で示す開いた状態と同図の点線で示す閉じた状態との間の任意の状態に変化することができる。
【0150】
このように、本実施の形態においても第2傾斜部IP2は、実施の形態1と同様に、上方からの力F2が加わると回転中心RCを中心として第1車軸102及び第2車軸103を所定方向へ回転させるように、第2車軸103に関連付けられている。
【0151】
本実施の形態に係る傾斜計測装置の使用方法は、実施の形態1に係る傾斜計測装置100の使用方法と同様である。説明を簡明にするため、本実施の形態に係る傾斜計測装置の使用方法の詳細な説明は省略する。
【0152】
(リンク機構部306による車輪104,105の動作)
本実施の形態に係る傾斜計測装置では、リンク機構部306を備えることによって、上述のように、第1車輪104及び第2車輪105を関連付けて、回転中心RCを中心に回転させることができる。この回転に伴って、第1車輪104及び第2車輪105の幅Wは、開いた状態と閉じた状態との間の任意の大きさになる。このように、本実施の形態に係るリンク機構部306によっても、車輪104,105は、実施の形態1と同様に動作する。そのため、実施の形態1に係る傾斜計測装置100と同様に、ガイドパイプPの変形部位を通過することができる。
【0153】
本実施の形態に係るリンク機構部306を備える傾斜計測装置によっても、実施の形態1に係る傾斜計測装置100と同様の効果を奏する。
【0154】
(実施の形態4)
実施の形態4では、実施の形態1とは異なるリンク機構部の構成について説明する。本実施の形態に係る傾斜計測装置は、リンク機構部を除いて、実施の形態1に係る傾斜計測装置100と概ね同様に構成されてよい。
【0155】
本実施の形態に係るリンク機構部406の概要は、実施の形態1に係るリンク機構部106と同様である。すなわち、リンク機構部406は、
図10~11の正面拡大図に示すように、一定の回転中心RCを中心に第1車軸102及び第2車軸103が回転するように、第1車軸102及び第2車軸103を本体部101に取り付ける機構を構成する部位であり、収容空間部110に取り付けられている。回転中心RCは、第1車軸102と第2車軸103との中間にあり、かつ、一軸A上にある。
【0156】
また、リンク機構部406は、第1車輪104及び第2車輪105が収容空間に出没自在となる回転範囲で、回転中心RCを中心に第1車軸102及び第2車軸103を回転させるように構成される。これにより、第1車輪104及び第2車輪105の各々は、開いた状態と閉じた状態との間で変位することができる。
【0157】
なお、
図10は、開いた状態のリンク機構部406、第1車輪104及び第2車輪105を示す。
図11は、閉じた状態のリンク機構部406、第1車輪104及び第2車輪105を示す。
【0158】
詳細には、本実施の形態に係るリンク機構部406は、実施の形態2と同様の中心支点RRCと、中心回転リンク部材LC2とを含む。説明を簡明にするため、本実施の形態に係る中心支点RRCのより詳細な説明は省略する。
【0159】
中心回転リンク部材LC2は、リンク部材LC1と同様に、厚さ方向に貫通する孔部を含む平板状の金属によって構成され、当該孔部には中心支点RRCを構成する丸棒状の軸部が挿設される。これによって、中心回転リンク部材LC2は、中心支点RRCを中心として回転できるように取り付けられる。本実施の形態においても、中心支点RRCには、外力が加わっていない場合に開いた状態となるように、
図10の点線の矢印Tで示す方向へ力を中心回転リンク部材LC2に加えるバネなどの弾性部材(不図示)を含む。
【0160】
中心回転リンク部材LC2は、開いた状態において、中心支点RRCに対して右下方に位置する端部近傍に第1車輪102が取り付けられ、中心支点RRCと第1車輪102との間に第1係合部EP1が固定されている。第1係合部EP1は、前後方向に延びる丸棒状の部材によって構成され、後述する第1第1ガイド孔411に挿設される。
【0161】
また、中心回転リンク部材LC2は、開いた状態において中心支点RRCに対して左上方に位置する端部近傍に第2車輪103が取り付けられ、中心支点RRCと第2車輪103との間に第2係合部EP2が固定されている。第2係合部EP2は、前後方向に延びる丸棒状の部材によって構成され、後述する第2ガイド孔412に挿設される。
【0162】
このような、中心支点RRCに関連付けられた中心回転リンク部材LC2によって、第1車軸102及び第2車軸103は回転中心RCを中心に予め定められた範囲で回転することができる。この回転に伴って、第1車輪104及び第2車輪105は、開いた状態における位置(
図10参照)と、閉じた状態における位置(
図11参照)との間で変位することができる。
【0163】
また、本実施の形態に係るリンク機構部406は、第13支点R13、第14支点R14、第7回転支援部材RP7及び第8回転支援部材RP8を含む。
【0164】
第13支点R13及び第14支点R14の各々は、支点RRCなどと同様に、概ね丸棒状の軸部によって構成される。回転支援部材RP7~RP8の各々は、中心回転リンク部材LC2と同様に、厚さ方向に貫通する孔部を含む平板状の金属によって構成される。第13支点R13を構成する軸部は、第7回転支援部材RP7の孔部に挿設され、第14支点R14を構成する軸部は、第8回転支援部材RP8の孔部に挿設される。これによって、回転支援部材RP7~RP8は、関連付けられた支点R13~R14のそれぞれを中心として回転することができる。
【0165】
詳細には、第13支点R13は、支点RRCの右上に固定されており、開いた状態において第7回転支援部材RP7の左上端近傍に設けられる。
【0166】
第7回転支援部材RP7は、閉じた状態において第1車輪104が収容される形状をなし、第1ガイド孔411と、実施の形態1と概ね同様の第1傾斜部IP1とを含む。説明を簡明にするため、本実施の形態に係る第1傾斜部IP1のより詳細な説明は省略する。
【0167】
第1ガイド孔411は、円弧状の長孔であって、第13支点R13と、閉じた状態において第1車輪104が収容される部位との間に設けられる。第1ガイド孔411には上述の通り、第1係合部EP1が挿設される。
【0168】
図10に示すように下方からの力F1が第1傾斜部IP1に加わると、第7回転支援部材RP7は、第13支点R13を中心として
図10で右周りに回転する。このとき、第1係合部EP1が第1ガイド孔411を形成する部位に押されることによって、下方への力が第7回転支援部材RP7に加えられる。そのため、第1車軸102は、第7回転支援部材RP7とともに、回転中心RCを中心として所定方向(
図10で右回り)に回転する。これにより、第7回転支援部材RP7は、
図10に示す開いた状態と
図11に示す閉じた状態との間の任意の状態に変化することができる。
【0169】
このように、本実施の形態においても第1傾斜部IP1は、実施の形態1と同様に、下方からの力F1が加わると回転中心RCを中心として第1車軸102及び第2車軸103を所定方向へ回転させるように、第1車軸102に関連付けられている。
【0170】
第14支点R14は、支点RRCの右上に固定されており、開いた状態において第8回転支援部材RP8の右下端近傍に設けられる。
【0171】
第8回転支援部材RP8は、閉じた状態において第2車輪105が収容される形状をなし、第2ガイド孔412と、実施の形態1と概ね同様の第2傾斜部IP2とを含む。説明を簡明にするため、本実施の形態に係る第2傾斜部IP2のより詳細な説明は省略する。
【0172】
第2ガイド孔412は、円弧状の長孔であって、第14支点R14と、閉じた状態において第2車輪105が収容される部位との間に設けられる。第2ガイド孔412には上述の通り、第2係合部EP2が挿設される。
【0173】
図10に示すように上方からの力F2が第2傾斜部IP2に加わると、第8回転支援部材RP8は、第14支点R14を中心として
図10で右周りに回転する。このとき、第2係合部EP2が第2ガイド孔412を形成する部位に押されることによって、上方への力が第8回転支援部材RP8に加えられる。そのため、第2車軸103は、第8回転支援部材RP8とともに、回転中心RCを中心として所定方向(
図10で右回り)に回転する。これにより、第8回転支援部材RP8は、
図10に示す開いた状態と
図11に示す閉じた状態との間の任意の状態に変化することができる。
【0174】
このように、本実施の形態においても第2傾斜部IP2は、実施の形態1と同様に、上方からの力F2が加わると回転中心RCを中心として第1車軸102及び第2車軸103を所定方向へ回転させるように、第2車軸103に関連付けられている。
【0175】
本実施の形態に係る傾斜計測装置の使用方法は、実施の形態1に係る傾斜計測装置100の使用方法と同様である。説明を簡明にするため、本実施の形態に係る傾斜計測装置の使用方法の詳細な説明は省略する。
【0176】
(リンク機構部406による車輪104,105の動作)
本実施の形態に係る傾斜計測装置では、リンク機構部406を備えることによって、上述のように、第1車輪104及び第2車輪105を関連付けて、回転中心RCを中心に回転させることができる。この回転に伴って、第1車輪104及び第2車輪105の幅Wは、開いた状態と閉じた状態との間の任意の大きさになる。このように、本実施の形態に係るリンク機構部406によっても、車輪104,105は、実施の形態1と同様に動作する。そのため、実施の形態1に係る傾斜計測装置100と同様に、ガイドパイプPの変形部位を通過することができる。
【0177】
本実施の形態に係るリンク機構部406を備える傾斜計測装置によっても、実施の形態1に係る傾斜計測装置100と同様の効果を奏する。
【0178】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、これらに限られるものではない。例えば、本発明は、これまで説明した実施の形態及び変形例の一部又は全部を適宜組み合わせた形態、その形態に適宜変更を加えた形態をも含む。
【符号の説明】
【0179】
100 傾斜計測装置
101 本体部
102 第1車軸
103 第2車軸
104 第1車輪
105 第2車輪
106,206,306,406 リンク機構部
110 収容空間部
111,411 第1ガイド孔
112,412 第2ガイド孔
115 データロガー
116 繰り出し量計
A 一軸
RC 回転中心 R1~R14 第1支点~第14支点
L1~L8 第1リンク部材~第8リンク部材
RP1,RP3,RP5,RP7 第1回転支援部材
RP2,RP4,RP6,RP8 第2回転支援部材
IP1 第1傾斜部
IP2 第2傾斜部
RRC 中心支点
LC1,LC2 中心回転リンク部材
G 地盤
P ガイドパイプ
PC 中心
E 入り口
RRC 中心支点
LC 中心回転リンク部材