(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128967
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】バナナ追熟予測装置およびバナナ追熟予測方法
(51)【国際特許分類】
A23N 15/06 20060101AFI20230907BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
A23N15/06 B
G01N21/27 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033675
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(71)【出願人】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】山田 秀
(72)【発明者】
【氏名】上田 真由
(72)【発明者】
【氏名】石橋 政三
【テーマコード(参考)】
2G059
4B061
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB11
2G059DD01
2G059DD16
2G059EE13
2G059FF04
2G059KK04
2G059MM03
2G059MM05
4B061AA01
4B061AB03
4B061AB07
4B061BA17
4B061BB20
(57)【要約】
【課題】追熟室内のバナナの追熟状態を予測する。
【解決手段】追熟室2内のバナナ3のカラー画像から色彩を判定する色彩判定部12aと、追熟スケジュールと追熟室2内の温度に基づいて温度累積値を算出する温度累積値算出部11aと、バナナ3の個体スコアの平均値を算出する平均値算出部12bと、個体スコアの平均値が閾値を超えたか否かを判定する平均値判定部12cと、個体スコアの平均値が閾値を超えたときに、追熟室2内の温度累積値を説明変数データ、個体スコアの平均値を目的変数データとして出力するデータ出力部13と、ロジスティック回帰モデル:1/(1+exp(-a(x-b)))において、説明変数データと目的変数データをもとに、最尤推定法によりa,bを算出する追熟モデル生成部14と、算出したa,bをロジスティック回帰モデルに当てはめてバナナ3の追熟状態を予測する追熟状態予測部15と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
追熟室内で追熟されるバナナの追熟状態を予測するバナナ追熟予測装置であって、
追熟スケジュールの設定、前記追熟室内の温度累積値の初期化、バナナの色彩の正規化を含む初期設定を行う設定部と、
前記追熟室内のバナナに照明をあてて撮影するバナナ撮影用カメラと、
前記追熟室内の温度を計測する温度計と、
前記バナナ撮影用カメラにより撮影したカラー画像から前記追熟室内のバナナの色彩を判定する色彩判定部と、
前記追熟スケジュールと前記温度計により計測した前記追熟室内の温度に基づいて前記追熟室内の温度累積値を算出する温度累積値算出部と、
前記色彩判定部の判定結果に基づいて前記追熟室内のバナナの個体スコアの平均値を算出する平均値算出部と、
前記平均値算出部により算出した前記個体スコアの平均値が閾値を超えたか否かを判定する平均値判定部と、
前記個体スコアの平均値が閾値を超えたと前記平均値判定部が判定したときに、前記追熟室内の温度累積値を説明変数データ、前記個体スコアの平均値を目的変数データとして出力するデータ出力部と、
前記データ出力部が出力する前記説明変数データと前記目的変数データをもとに、最尤推定法によりロジスティック回帰モデル:p=1/(1+exp(-a(x-b)))(但し、p:個体スコアの平均値、x:追熟室内の温度累積値、a:増加率、b:変曲点)のa,bを算出する追熟モデル生成部と、
前記個体スコアの平均値または前記追熟室内の温度累積値を設定し、前記追熟モデル生成部にて算出したa,bを前記ロジスティック回帰モデルに当てはめてバナナの追熟状態を予測する追熟状態予測部と、を備えたことを特徴とするバナナ追熟予測装置。
【請求項2】
追熟室内で追熟されるバナナの追熟状態を予測するバナナ追熟予測方法であって、
追熟スケジュールの設定、前記追熟室内の温度累積値の初期化、バナナの色彩の正規化を含む初期設定を行うステップと、
前記追熟室内の温度を読み込むステップと、
前記追熟室内のバナナに照明をあてて撮影するステップと、
前記撮影したカラー画像から前記追熟室内のバナナの色彩を判定するステップと、
前記追熟スケジュールと前記追熟室内の温度に基づいて前記追熟室内の温度累積値を算出するステップと、
前記追熟室内のバナナの色彩の判定結果に基づいて当該バナナの個体スコアの平均値を算出するステップと、
前記個体スコアの平均値が閾値を超えたか否かを判定するステップと、
前記個体スコアの平均値が前記閾値を超えたと判定したときに、前記追熟室内の温度累積値を説明変数データ、前記個体スコアの平均値を目的変数データとして出力するステップと、
前記説明変数データと前記目的変数データをもとに、最尤推定法によりロジスティック回帰モデル:p=1/(1+exp(-a(x-b)))(但し、p:個体スコアの平均値、x:追熟室内の温度累積値、a:増加率、b:変曲点)のa,bを算出するステップと、
前記個体スコアの平均値または前記追熟室内の温度累積値を設定し、前記算出したa,bを前記ロジスティック回帰モデルに当てはめてバナナの追熟状態を予測するステップと、を含むことを特徴とするバナナ追熟予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追熟室内に保管されるバナナの追熟状態を予測するバナナ追熟予測装置およびバナナ追熟予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バナナは、収穫されると、追熟室内に保管され、1週間~10日かけて糖度を上げた後に出荷される。
【0003】
さらに説明すると、産地で収穫されたバナナは、下記特許文献1の従来の技術の欄にも記載されているように、そのままの状態で市場に出荷されるのではなく、収穫時に未熟成の青いバナナを店頭市場に出す前に追熟室内に保管し、追熟室内の温度を制御することで追熟状態を調整し、適度に追熟されたときに出荷される。
【0004】
ところで、下記特許文献1では、追熟室内におけるバナナの追熟状態を知るため、換気可能手段を有し、多数のバナナ果実が収納される熟成加工室内に、バナナの果皮に接触する測定端部を配置し、加工室外の加工室に近接した位置に、クロロフィル又はカロチノイドに吸収される波長を有する単色光を生成する単色光生成手段および光電変換手段を備えた光度計を配置し、測定端部と単色光生成手段および光電変換手段との間を光伝達手段で接続し、加工室から離れた場所にある管理室内に配置した表示手段に光度計で得られた測定情報に基づくバナナ果皮色相状態を表示するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に開示される従来の方法では、バナナの果皮色を直接測定して表示することにより、バナナの果皮色から追熟状態を外部から知ることができるが、バナナの追熟状態を予測することはできなかった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、追熟室内のバナナの追熟状態を予測することができるバナナ追熟予測装置およびバナナ追熟予測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載されたバナナ追熟予測装置は、追熟室内で追熟されるバナナの追熟状態を予測するバナナ追熟予測装置であって、
追熟スケジュールの設定、前記追熟室内の温度累積値の初期化、バナナの色彩の正規化を含む初期設定を行う設定部と、
前記追熟室内のバナナに照明をあてて撮影するバナナ撮影用カメラと、
前記追熟室内の温度を計測する温度計と、
前記バナナ撮影用カメラにより撮影したカラー画像から前記追熟室内のバナナの色彩を判定する色彩判定部と、
前記追熟スケジュールと前記温度計により計測した前記追熟室内の温度に基づいて前記追熟室内の温度累積値を算出する温度累積値算出部と、
前記色彩判定部の判定結果に基づいて前記追熟室内のバナナの個体スコアの平均値を算出する平均値算出部と、
前記平均値算出部により算出した前記個体スコアの平均値が閾値を超えたか否かを判定する平均値判定部と、
前記個体スコアの平均値が閾値を超えたと前記平均値判定部が判定したときに、前記追熟室内の温度累積値を説明変数データ、前記個体スコアの平均値を目的変数データとして出力するデータ出力部と、
前記データ出力部が出力する前記説明変数データと前記目的変数データをもとに、最尤推定法によりロジスティック回帰モデル:p=1/(1+exp(-a(x-b)))(但し、p:個体スコアの平均値、x:追熟室内の温度累積値、a:増加率、b:変曲点)のa,bを算出する追熟モデル生成部と、
前記個体スコアの平均値または前記追熟室内の温度累積値を設定し、前記追熟モデル生成部にて算出したa,bを前記ロジスティック回帰モデルに当てはめてバナナの追熟状態を予測する追熟状態予測部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載されたバナナ追熟予測方法は、追熟室内で追熟されるバナナの追熟状態を予測するバナナ追熟予測方法であって、
追熟スケジュールの設定、前記追熟室内の温度累積値の初期化、バナナの色彩の正規化を含む初期設定を行うステップと、
前記追熟室内の温度を読み込むステップと、
前記追熟室内のバナナに照明をあてて撮影するステップと、
前記撮影したカラー画像から前記追熟室内のバナナの色彩を判定するステップと、
前記追熟スケジュールと前記追熟室内の温度に基づいて前記追熟室内の温度累積値を算出するステップと、
前記追熟室内のバナナの色彩の判定結果に基づいて当該バナナの個体スコアの平均値を算出するステップと、
前記個体スコアの平均値が閾値を超えたか否かを判定するステップと、
前記個体スコアの平均値が前記閾値を超えたと判定したときに、前記追熟室内の温度累積値を説明変数データ、前記個体スコアの平均値を目的変数データとして出力するステップと、
前記説明変数データと前記目的変数データをもとに、最尤推定法によりロジスティック回帰モデル:p=1/(1+exp(-a(x-b)))(但し、p:個体スコアの平均値、x:追熟室内の温度累積値、a:増加率、b:変曲点)のa,bを算出するステップと、
前記個体スコアの平均値または前記追熟室内の温度累積値を設定し、前記算出したa,bを前記ロジスティック回帰モデルに当てはめてバナナの追熟状態を予測するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、追熟期間における前半のバナナの追熟状態のデータを用いて後半のバナナの追熟状態を予測することができる。これにより、バナナの追熟状態の予測を元にして、出荷先相手が所望する追熟状態のバナナの出荷を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るバナナ追熟予測装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明に係るバナナ追熟予測方法の手順を示すフローチャートである。
【
図3】追熟期間全てのデータを用いたときの追熟室内の温度累積値と追熟室内のバナナの個体スコアの平均値の関係の具体例を示す図である。
【
図4】
図3と同じ条件で本発明に係るバナナ追熟予測方法により追熟期間における前半のデータを用いて後半を予測したときの追熟室内の温度累積値と追熟室内のバナナの個体スコアの平均値の関係の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態のバナナ追熟予測装置1は、収穫後に追熟室2内に保管されるバナナ3の追熟状態を予測するもので、追熟室2内の環境を計測する各種の測定計4、追熟室2内に保管されるバナナ3に照明を当てる照明器5、照明器5で照らされた追熟室2内のバナナ3を撮影するバナナ撮影用カメラ6、設定部7、中央演算処理装置8、表示部9を備えて概略構成される。
【0014】
測定計4は、追熟室2内環境の物理量を所定時間(例えば1時間)ごとに計測するもので、温度計4a、湿度計4b、CO2 計4c、エチレン濃度計4dから構成される。
【0015】
温度計4aは、追熟室2内のバナナ3近傍に設けられ、バナナ3を追熟する上で最も重要な物理量である追熟室2内の温度を計測する。湿度計4bは、追熟室2内の湿度を計測する。CO2 計4cは、追熟室2内のCO2 濃度を計測する。エチレン濃度計4dは、追熟室2内のエチレン濃度を計測する。これら所定時間(例えば1時間)ごとに計測された情報(追熟室2内の温度、湿度、CO2 濃度、エチレン濃度)は中央演算処理装置8に逐次送られる。
【0016】
設定部7は、初期設定を含め、追熟室2内に保管されたバナナ3を追熟するために必要な各種設定を行う。初期設定としては、追熟スケジュールの設定、追熟室2内の温度累積値の初期化、バナナ3の色彩の正規化がある。
【0017】
追熟スケジュールは、追熟期間(例えば7日~10日)、エチレンガス注入スケジュール(例えば500ppm以上の濃度で最初の24時間)、温度スケジュール(例えば20℃(24時間)→18℃(24時間)→以後16℃、22℃(24時間)→20℃(24時間)→以後18℃など)からなる。
【0018】
追熟室2内の温度累積値とは、バナナ3に与える熱量、すなわち、温度(追熟室2内の温度)×時間(温度スケジュールの時間)に相当するものである。
【0019】
バナナ3の個体スコアは、バナナ3の色彩を正規化することで決定される。具体的には、追熟に伴って変化するバナナ3の色彩を複数段階のカラーコードに分け、カラーコードを0.0~1.0に数値化する。カラーコードの例としては、ドール(登録商標)のバナナカラーチャートが挙げられる。本実施の形態では、バナナ3の色彩をオールグリーン(カラーコード1)、ライトグリーン(カラーコード2)、ハーフグリーン(カラーコード3)、ハーフイエロー(カラーコード4)、グリーンチップ(カラーコード5)、フルイエロー(カラーコード6)の6段階に分け、カラーコード1→0.0、カラーコード2→0.2、カラーコード3→0.4、カラーコード4→0.6、カラーコード5→0.8、カラーコード6→1.0に数値化している。つまり、個体スコアが0では、バナナが未成熟であり、個体スコアが1に近づくほど、バナナの追熟が進んでいることを示す。
【0020】
中央演算処理装置8は、追熟室2内のバナナ3の追熟状態を予測する際に各部を統括制御するもので、追熟室環境計測部11、追熟状態計測・制御部12、データ出力部13、追熟モデル生成部14、追熟状態予測部15を含んで構成される。
【0021】
追熟室環境計測部11は、計測計4にて計測した情報(追熟室2内の温度、湿度、CO2 濃度、エチレン濃度)を取得して追熟室2内環境の物理量を具体的数値として計測しており、温度累積値算出部11aを備える。
【0022】
温度累積値算出部11aは、初期設定された追熟スケジュールの温度スケジュールと計測計4の温度計4aにより計測した追熟室2内の温度に基づいて追熟室2内の温度累積値(追熟室2内の温度×温度スケジュールの時間)を算出する。
【0023】
追熟状態計測・制御部12は、照明器5の点灯/消灯制御、バナナ撮影用カメラ6により撮影したバナナ3のカラー画像の取得を行っており、色彩判定部12a、平均値算出部12b、平均値判定部12cを備える。本実施の形態では、照明器5は白色光を発光する照明を用いた。
【0024】
色彩判定部12aは、照明器5により照らされたバナナ3をバナナ撮影用カメラ6により撮影したバナナ3のカラー画像から追熟室2内のバナナ3の色彩をバナナ3ごとに判定する。具体的には、追熟室2内に置いた、バナナ3とカラーコードチャートを同時に撮影し、撮影したバナナ3のカラー画像とカラーコードチャートのカラー画像を比較して、追熟室2内のバナナ3の色彩がカラーコードチャートのオールグリーン、ライトグリーン、ハーフグリーン、ハーフイエロー、グリーンチップ、フルイエローの何れに該当するかをバナナ3ごとに判定する。本実施の形態では、追熟室2内でバナナ3とカラーコードチャートを同時に撮影することで、照明器5による発色の影響をなくしている。
【0025】
平均値算出部12bは、色彩判定部12aの判定結果に基づいて追熟室2内のバナナ3の個体スコアの平均値(0.0~1.0)を算出する。
【0026】
平均値判定部12cは、平均値算出部12bにより算出したバナナ3の個体スコアの平均値が予め設定される閾値(例えば0.5)を超えたか否かを判定する。
【0027】
データ出力部13は、バナナ3の個体スコアの平均値が閾値を超えたと平均値判定部12cが判定したときに、追熟室2内の温度累積値を説明変数データ、バナナ3の個体スコアの平均値を目的変数データとしてデータを出力する。
【0028】
追熟モデル生成部14は、ロジスティック回帰モデル:p=1/(1+exp(-a(x-b)))(但し、p:バナナ3の個体スコアの平均値、x:追熟室2内の温度累積値、a:増加率、b:変曲点)において、データ出力部13が出力する説明変数データと目的変数データをもとに、最尤推定法によりa(増加率),b(変曲点)を算出する。
【0029】
追熟状態予測部15は、ロジスティック回帰モデルに対し、追熟モデル生成部14にて算出したa(増加率),b(変曲点)を当てはめてバナナ3の追熟状態を予測する。具体的には、追熟モデル生成部14にて算出したa(増加率),b(変曲点)をロジスティック回帰モデルに当てはめ、バナナ3の個体スコアの平均値pを設定し、設定したバナナ3の個体スコアの平均値pが得られるまでに要する追熟室2内の温度累積値xを予測する。または、追熟モデル生成部14にて算出したa(増加率),b(変曲点)をロジスティック回帰モデルに当てはめ、追熟室2内の温度累積値xを設定し、設定した追熟室2内の温度累積値xで得られるバナナ3の個体スコアの平均値pを予測する。
【0030】
表示部9は、例えば液晶表示器などの各種表示器で構成され、設定画面の表示、追熟スケジュールの表示、計測計4が計測した情報(追熟室2内の温度、湿度、CO2 濃度、エチレン濃度)の表示、予測結果の表示などを行う。
【0031】
次に、上記のように構成されるバナナ追熟予測装置1を用いたバナナ3の追熟状態の予測方法について
図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0032】
収穫した所定数のバナナ3を追熟室2に保管し、初期設定を行う(ST1)。初期設定では、追熟スケジュールの設定、追熟室2内の温度累積値の初期化、バナナ3の色彩の正規化を行う。
【0033】
初期設定を終え、追熟スケジュールに従ってバナナ3の追熟が開始されると、計測計4の温度計4aにより追熟室2内の温度を所定時間(例えば1時間)ごとに読み込む(ST2)。
【0034】
続いて、追熟状態計測・制御部12により照明器5を点灯してバナナ3を照らし、バナナ撮影用カメラ6によりバナナ3を所定時間(例えば6時間)ごとに撮影する。撮影したカラー画像は追熟状態計測・制御部12の色彩判定部12aに逐次送られる。そして、色彩判定部12aは、バナナ撮影用カメラ6により撮影したカラー画像から追熟室2内のバナナ3の色彩をバナナ3ごとに判定する(ST3)。
【0035】
また、追熟室環境計測部11の温度累積値算出部11aは、追熟室2内の温度累積値(追熟室2内の温度×温度スケジュールの時間)を算出する(ST4)。
【0036】
そして、追熟状態計測・制御部12の平均値算出部12bは、色彩判定部12aの判定結果に基づいて追熟室2内のバナナ3の個体スコアの平均値を算出する(ST5)。
【0037】
続いて、追熟状態計測・制御部12の平均値判定部12cは、平均値算出部12bにより算出したバナナ3の個体スコアの平均値が閾値(0.5)以上か否かを判別する(ST6)。
【0038】
そして、バナナ3の個体スコアの平均値が閾値(0.5)以上であると判別すると(ST6-Yes)、データ出力部13が追熟室2内の温度累積値を説明変数データ、バナナ3の個体スコアの平均値を目的変数データとしてデータを出力する(ST7)。
【0039】
なお、バナナ3の個体スコアの平均値が閾値(0.5)以上でないと判別すると(ST6-No)、ST2に戻り、ST2~ST5の処理を繰り返し実行する。
【0040】
続いて、追熟モデル生成部14は、ロジスティック回帰モデル:p=1/(1+exp(-a(x-b)))において、データ出力部13が出力する説明変数データと目的変数データをもとに、最尤推定法によりa(増加率)とb(変曲点)を算出する(ST8)。
【0041】
なお、最尤推定法は、与えられたデータ(追熟室2内の温度累積値による説明変数データ、バナナ3の個体スコアの平均値による目的変数データ)からそれが従う確率分布の母数(a(増加率)、b(変曲点))を点推定する周知の方法である。
【0042】
そして、追熟状態予測部15は、ロジスティック回帰モデルにa(増加率),b(変曲点)を当てはめ、追熟状態を予測する(ST9)。この追熟状態の予測では、ロジスティック回帰モデルにa,bを当てはめ、バナナ3の個体スコアの平均値pまたは追熟室2内の温度累積値xを決めることにより、バナナ3の個体スコアpの平均値が得られるまでに要する追熟室2内の温度累積値xを予測したり、追熟室2内の温度累積値xで得られるバナナ3の個体スコアの平均値pを予測することができる。すなわち、追熟期間の途中までのデータを用いた処理により、所望とするカラーコードのバナナ3に追熟させるまでに要する時間や、追熟室2内の温度累積値によって得られるバナナ3のカラーコードを予測することができる。
【0043】
[追熟状態の予測結果の具体例]
追熟期間:7日間、エチレンガスの注入スケジュール:所定濃度で最初の24時間のみ、温度スケジュール:22℃(24時間)→20℃(24時間)→18℃(5日間)として追熟スケジュールを設定し、6時間おきに追熟室2内のバナナ3を撮影して追熟状態の調査を行った。
【0044】
そして、追熟室2内の温度累積値(追熟室2内の温度×温度スケジュールの時間)と追熟室2内のバナナ3の個体スコアの平均値の関係を調べたところ、追熟期間全て(7日間)のデータを用いた場合は
図3に示す結果が得られ、
図2のフローチャートに基づくバナナ追熟予測方法により追熟期間における前半(4日間)のデータを用いて後半(3日間)を予測した場合は
図4に示す結果が得られた。
【0045】
両者を比較すると、ロジスティック回帰モデルのa(増加率)に関しては、
図3の追熟期間全てのデータを用いた場合:a[10
-3]=1.825に対し、
図4の追熟期間の前半のデータを用いて予測した場合:a[10
-3]=1.502となり、両者で多少のずれはあるものの特徴を捉えた値の予測結果が得られた。また、ロジスティック回帰モデルのb(変曲点)に関しては、
図3の追熟期間全てのデータを用いた場合:b[10
3 ]=0.909に対し、
図4の追熟期間の前半のデータを用いて予測した場合:b[10
3 ]=0.961となり、両者でほぼ一致するという結果が得られた。
【0046】
このように、上述した実施の形態によれば、追熟期間における前半のバナナの追熟状態のデータを用いて後半のバナナの追熟状態を予測することができる。これにより、バナナの追熟状態の予測を元にして、出荷先相手が所望する追熟状態のバナナの出荷を行うことが可能となる。
【0047】
以上、本発明に係るバナナ追熟予測装置およびバナナ追熟予測方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 バナナ追熟予測装置
2 追熟室
3 バナナ
4 測定計
4a 温度計
4b 湿度計
4c CO2 計
4d エチレン濃度計
5 照明器
6 バナナ撮影用カメラ
7 設定部
8 中央演算処理部
9 表示部
11 追熟室環境計測部
11a 温度累積値算出部
12 追熟状態計測・制御部
12a 色彩判定部
12b 平均値算出部
12c 平均値判定部
13 データ出力部
14 追熟モデル生成部
15 追熟状態予測部