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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128982
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ラップフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230907BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20230907BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230907BHJP
   C08L 27/08 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C08J5/18 CEV
C08K5/103
C08L63/00 Z
C08L27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033697
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】榎本 整
(72)【発明者】
【氏名】野口 隆矢
(72)【発明者】
【氏名】富樫 迅
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA24X
4F071AA25X
4F071AA42
4F071AA71
4F071AA81
4F071AC06
4F071AC10
4F071AC19
4F071AE04
4F071AE05
4F071AF08Y
4F071AF20Y
4F071AF28
4F071AH04
4F071BC01
4F071BC12
4J002BD101
4J002CD162
4J002EH056
4J002FD022
4J002FD026
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】白斑点のような外観不良がなく、バリア性に優れるラップフィルムを提供すること。
【解決手段】塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体を含有する樹脂組成物からなるラップフィルムにおいて、樹脂組成物に、添加剤として、ジアセチル化モノグリセライド、及びエポキシ化大豆油を含有させ、樹脂組成物中の添加剤の含有量を、4.5~6.0質量%とし、樹脂組成物中のジアセチル化モノグリセライドの含有量を、0.9~3.5質量%とし、ラップフィルムの厚さを5~15μmとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体を含有する樹脂組成物からなるラップフィルムであり、
前記樹脂組成物が、添加剤として、ジアセチル化モノグリセライド、及びエポキシ化大豆油を含み、
前記樹脂組成物中の添加剤の含有量が、4.5~6.0質量%であり、
前記樹脂組成物中の前記ジアセチル化モノグリセライドの含有量が、0.9~3.5質量%であり、
厚さが5~15μmである、ラップフィルム。
【請求項2】
前記樹脂組成物中の前記エポキシ化大豆油の含有量が、1.9~3.0質量%である、請求項1に記載のラップフィルム。
【請求項3】
20℃で測定される、厚さ10μmあたりの酸素透過度が25~40cm/(m・day・atm)であり、
JIS-K7127に従って測定される、MD(縦)方向のヤング率が430~520MPaであり、
JIS-K7127に従って測定される、TD(横)方向のヤング率が350~430MPaである、請求項1又は2に記載のラップフィルム。
【請求項4】
塩化ビニリデン単位の質量と塩化ビニル単位の質量との合計に対する、塩化ビニリデン単位の質量の比率である、前記塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体における塩化ビニリデン含有率が、87質量%以上91質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のラップフィルム。
【請求項5】
前記塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体の重量平均分子量が、8.5万~10万である、請求項1~4のいずれか1項に記載のラップフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体を含む樹脂組成物からなるラップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニリデンを含む単量体の重合体であるポリ塩化ビニリデン系樹脂(以下、「PVDC樹脂」と略す)からなるフィルムは、容器への密着性、透明性、バリア性、耐熱性、保香性、ハリ・コシ感等の種々の特性に優れることから、家庭用又は産業用のラップフィルムとして広く使用されている。このような、ラップフィルムは、例えば特許文献1等に開示されている。
【0003】
ラップフィルムにおいて、上記の種々の優れた特性をバランスよく発現させるためには、PVDC樹脂に対して、可塑剤や安定剤等の種々の添加剤が配合されることが多い(特許文献1の段落0020を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-168750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他方で、ラップフィルムに限らず、種々の製品において、添加剤としての化学物質の使用量の削減についての消費者の要望がある。
しかし、単純に、ラップフィルムにおける添加剤の使用量を削減すると、ラップフィルムの種々の特性が悪化してしまい、特に、白斑点のような外観不良がなく、バリア性に優れるラップフィルムの提供が困難である。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、白斑点のような外観不良がなく、バリア性に優れるラップフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体を含有する樹脂組成物からなるラップフィルムにおいて、樹脂組成物に、添加剤として、ジアセチル化モノグリセライド、及びエポキシ化大豆油を含有させ、樹脂組成物中の添加剤の含有量を、4.5~6.0質量%とし、樹脂組成物中のジアセチル化モノグリセライドの含有量を、0.9~3.5質量%とし、ラップフィルムの厚さを5~15μmとすることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体を含有する樹脂組成物からなるラップフィルムであり、
樹脂組成物が、添加剤として、ジアセチル化モノグリセライド、及びエポキシ化大豆油を含み、
樹脂組成物中の添加剤の含有量が、4.5~6.0質量%であり、
樹脂組成物中のジアセチル化モノグリセライドの含有量が、0.9~3.5質量%であり、
厚さが5~15μmである、ラップフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、白斑点のような外観不良がなく、バリア性に優れるラップフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪ラップフィルム≫
ラップフィルムは、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体を含有する樹脂組成物からなる。かかる樹脂組成物は、添加剤として、ジアセチル化モノグリセライド、及びエポキシ化大豆油を含む。
樹脂組成物中の添加剤の含有量は、4.5~6.0質量%であり、5.0~6.0質量%がより好ましい。
樹脂組成物中のジアセチル化モノグリセライドの含有量は、0.9~3.5質量%であり、2.2~3.5質量%がより好ましい。
ラップフィルムの厚さは、5~15μmである。
上記のラップフィルムは、白斑点のような外観不良がなく、バリア性に優れる。
【0011】
上記のラップフィルムは、バリア性に優れる。具体的には、ラップフィルムについて、20℃で測定される、厚さ10μmあたりの酸素透過度が、25~40cm/(m・day・atm)であるのが好ましく、30~38cm/(m・day・atm)であるのがより好ましい。
また、ラップフィルムについて、40℃90%RHで測定される、厚さ10μmあたりの水蒸気透過度が、5~15cm/(m・day・atm)であるのが好ましく、6~13cm/(m・day・atm)であるのが好ましい。
【0012】
さらに、上記のラップフィルムは、良好なヤング率を示す。
具体的には、JIS-K7127に従って測定される、MD(縦)方向のヤング率が430~520MPaであるのが好ましく、439~514MPaであるのがより好ましい。
JIS-K7127に従って測定される、TD(横)方向のヤング率が350~430MPaであるのが好ましく、354~423MPaであるのがより好ましい。
【0013】
<樹脂組成物>
上記の通り、ラップフィルムは、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体と、添加剤とを含む樹脂組成物からなる。
【0014】
樹脂組成物のアセトン抽出量は、10~13質量%であるのが好ましい。アセトン抽出量は、実施例について後述する方法により測定される。
アセトン抽出量は、実施例において後述する方法により測定できる。
アセトン抽出量が、上記の範囲内であると、添加剤を減らしても白斑点を発生させず、加工性も問題なく、フィルムを得ることができる。
【0015】
以下、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、及び添加剤について説明する。
【0016】
[塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体]
塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体(以下、単に「共重合体」ともいう。)は、塩化ビニリデン由来の構成単位である塩化ビニリデン単位と、塩化ビニル由来の構成単位である塩化ビニル単位とを含有する。
上記共重合体は、好ましくは、塩化ビニリデン60~98質量%及び塩化ビニル2~40質量%、より好ましくは塩化ビニリデン70~95質量%及び塩化ビニル5~30質量%、さらに好ましくは塩化ビニリデン87~91質量%及び塩化ビニル9~13質量%を懸濁重合又は乳化重合して製造される。
つまり、共重合体において、塩化ビニリデン単位の質量と塩化ビニル単位の質量との合計に対する、塩化ビニリデン単位の質量の比率である、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体における塩化ビニリデン含有率は、60~98質量%が好ましく、70~95質量%がより好ましく、87質量%以上91質量%以下がさらに好ましい。
塩化ビニリデンと、塩化ビニルとが上記の比率で共重合されると、フィルム成形時の押出加工性と得られたフィルムのガスバリア性とのバランスが良好である傾向がある。
【0017】
上記共重合体において、塩化ビニリデン単位1個と塩化ビニル単位1個とが連続する二連子部位(VD-VC部位)のモル分率は、全構成単位に対し、25.3モル%以上26.7モル%以下が好ましく、25.6モル%以上26.5モル%以下がより好ましい。上記モル分率が上記範囲内であると、得られるフィルムの密着性が向上しやすい。なお、本明細書において、二連子部位のモル分率とは、実施例において詳述する通り、上記フィルムに対するNMR測定の結果に基づき算出される値をいう。
【0018】
上記共重合体において、塩化ビニル単位2個が連続する二連子部位(VC-VC部位)のモル分率は、全構成単位に対し、3.5モル%以上5.0モル%が好ましく、3.7モル%以上4.5モル%以下がより好ましい。上記モル分率が上記範囲内であると、得られるフィルムの密着性がさらに向上しやすい。
【0019】
上記共重合体の重量平均分子量は、8.5万~10万が好ましく、9.0万~10万がより好ましく、9.0万~9.5万がさらに好ましい。なお、本明細書において、分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定されたポリスチレン換算の分子量をいう。重量平均分子量がこの範囲であると、添加剤を減らしても押出加工性と成膜性が優れる傾向がある。
【0020】
[添加剤]
樹脂組成物は、上記の共重合体とともに、添加剤を含む。
樹脂組成物は、添加剤として、ジアセチル化モノグリセライド(以下、DALGとも記す)、及びエポキシ化大豆油(以下、ESBOとも記す)を必須に含む。
また、加工性の点で、樹脂組成物が、DALGとともにアセチルトリブチルシトレート(以下、ATBCとも記す)を含むのが好ましい。
ATBC、及びDALGは、可塑剤である。ESBOは、安定剤である。
【0021】
樹脂組成物中の添加剤の含有量は、4.5~6.0質量%であり、5.0~6.0質量%がより好ましい。
樹脂組成物中のDALGの含有量は、0.9~3.5質量%であり、好ましくは1.8~3.5質量%であり、2.2~3.5質量%がより好ましい。
樹脂組成物が上記の範囲内のDALGを含むことにより、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体が良好に可塑化されつつ、好ましい動摩擦係数を示すラップフィルムを得やすい。
樹脂組成物がATBCを含む場合、樹脂組成物中のATBCの含有量は、0.3~3.6質量%が好ましく、0.3~2.7質量%がより好ましく、0.4~2.3質量%がさらに好ましい。
かかる範囲内の量で、添加剤、及びDALGを含有する樹脂組成物を、厚さ5~15μmで製膜することで、白斑点のような外観不良がなく、バリア性に優れるラップフィルムが得られる。
【0022】
なお、本出願の明細書、及び特許請求の範囲において、樹脂組成物中の成分Xの含有量が、Y質量%であるとは、樹脂組成物全体の質量に対する、成分Xの質量の比率がY質量%であることを意味する。
【0023】
樹脂組成物は、上記の所定の要件を満たす範囲で、DALG、及びESBO以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤は、有機物であっても、無機物であってもよい。
その他の添加剤としては、DALG以外の可塑剤、ESBO以外の安定剤、界面活性剤、並びに滑剤等が挙げられる。その他の添加剤は、単独で使用されても、2種以上併用されてもよい。
樹脂組成物中の、ATBC、DALG、及びESBO以外の添加剤の含有量は、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0024】
樹脂組成物が、ATBCを含む場合、バリア性に優れるラップフィルムを得やすい点で、樹脂組成物中の、ATBCの含有量とDALGの含有量との合計は2.5~4.5質量%が好ましく、2.7~4.0質量%がより好ましい。
樹脂組成物が、ATBCを含む場合、バリア性に優れるラップフィルムを得やすい点で、樹脂組成物中の、ATBCの含有量とESBOの含有量との合計は2.4~4.0質量%が好ましく、2.4~3.5質量%がより好ましい。
バリア性に優れるラップフィルムを得やすい点で、樹脂組成物中の、DALGの含有量とESBOの含有量との合計は、1.9~6.0質量%が好ましく、3.4~6.0質量%がより好ましく、5.0~5.5質量%がさらに好ましく、5.2~5.5質量%が特に好ましい。
バリア性に優れるラップフィルムを得やすい点で、樹脂組成物に含まれる添加剤の質量に対する、DALGの含有量とESBOの含有量との合計は、31.7質量%~100質量%が好ましく、56.7~100質量%がより好ましく、83.3~100質量%がさらに好ましく、86.7~100質量%が特に好ましい。
【0025】
(可塑剤)
可塑剤として、DALGが必須に使用される。前述の通り、樹脂組成物が、DALGとともにATBCを可塑剤として含むのが好ましい。DALGとしては、例えば、ジアセチルモノラウリルグリセリド等が使用される。
その他の添加剤としての可塑剤としては、ジオクチルフタレート、アセチルクエン酸トリブチル、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、アセチル化ジグリセリド、アセチル化トリグリセリド等が挙げられる。可塑剤は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
ラップフィルムにおける白斑点の発生の抑制の点で、樹脂組成物中の、その他の可塑剤、特にジブチルセバケート、及びジオクチルセバケートの含有量が、0.5質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以下であるのがより好ましく、0質量%であるのが特に好ましい。
【0026】
(安定剤)
安定剤として、ESBOが必須に使用される。
その他の添加剤としての安定剤としては、エポキシ化亜麻仁油等のESBO以外のエポキシ化植物油、アルキルエステルのアミド誘導体、水酸化マグネシウム、ピロリン酸四ナトリウム等のその他の安定剤が挙げられる。安定剤は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
バリア性に優れるラップフィルムを得やすい点で、樹脂組成物中のESBOの含有量は、1~3質量%が好ましく、1.6~2.9質量%がさら好ましく、2.0~2.8質量%が最も好ましい。
【0027】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
(滑剤)
滑剤としては、例えば、二酸化珪素、ゼオライト、炭酸カルシウム等の無機滑剤;飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、及びチオエーテル系化合物等の有機滑剤等が挙げられる。滑剤は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、ブチルアミド、吉草酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘニン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。置換アミドとしては、例えば、N-オレイルパルチミン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。チオエーテル系化合物としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
【0030】
<ラップフィルムの製造方法>
ラップフィルムの製造方法は、典型的には、塩化ビニリデンと塩化ビニルとを重合させて塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体を得る重合工程と、前記共重合体を成形する成形工程とを含む。
【0031】
重合工程において、重合方法としては、例えば、不均一系重合法である懸濁重合法及び乳化重合法が挙げられ、作業性、生産性、省資源性、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体の純度等の点で、懸濁重合法が好ましい。重合温度、重合時間等の重合条件は、所望する物性、及び所望する分子量の共重合体が得られるように、周知の重合条件に従って適宜選択される。
【0032】
成形工程において、成形方法としては、例えば、溶融押出法、溶液流延法、及びカレンダー法等が挙げられ、作業性、生産性、省資源性、樹脂フィルムの特性等の点で、溶融押出法が好ましい。溶融押出法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられ、インフレーション法が好ましい。インフレーション法では、必要な設備そのものが簡易であり、小さな金型から幅の広いフィルムを製造できる。
【0033】
<ラップフィルム>
本発明に係るラップフィルムは、本発明に係る樹脂フィルムからなる。当該ラップフィルムは、当該樹脂フィルムと同様、密着性に優れる。
【実施例0034】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
〔実施例1~3、比較例1、及び比較例2〕
塩化ビニリデン(VD)と塩化ビニル(VC)とを、表1に記載の比率(VD/VC)で混合して懸濁重合を行い、共重合体を得た。得られた共重合体に対して、添加剤であるATBC、DALG、ESBO、及びジブチルセバケート(DBS)を、樹脂組成物中のそれぞれの含有量が、表1に記載の含有量となるように加え、混合し、コンパウンドを作製した。ついで、単軸押出機を用いて、樹脂温度約185℃にてコンパウンドを環状に溶融押出し、10℃の冷却槽で急冷した後、室温にてインフレーション二軸延伸を行い、スリットし、表1に記載の厚さのフィルムを得た。
なお、実施例1~3では同一の共重合体を用いた。また、比較例1、及び比較例2では同一の共重合体を用いた。
【0036】
得られた共重合体について、下記の方法に従って二連子部位の比率の測定を行った。測定結果を表1に記す。
【0037】
<二連子部位の比測定>
作製したフィルムについて、塩化ビニル単位2個が連続する二連子部位(VD-VD部位)の割合、塩化ビニリデン単位1個と塩化ビニル単位1個とが連続する二連子部位(VD-VC部位)の割合、及び、塩化ビニル単位2個が連続する二連子部位(VC-VC部位)の割合を、NMRによる測定結果に基づき、モル分率として算出した。
【0038】
フィルム1gを採取し、THFを50ml加え、50℃で溶解させた。その後、メタノール300mLを徐々に加え、再沈殿させた。再沈殿物を濾過・乾燥し、再沈殿物を精製した。精製した再沈殿物を35mg採取し、試験管に入れ、測定溶媒である重水素化THFを0.75ml加え均一に溶解させた。溶液を0.35ml採取し、高分解能プロトン核磁気共鳴装置(株式会社JEOL RESONANCE製「FT-NMR JNM-EX270」)にてNMR測定を行った。間隔時間5秒、積算回数128回という条件で測定を行い、テトラメチルシランのシグナルを基準とした化学シフトを横軸としたスペクトルを得た。
【0039】
以下、塩化ビニリデン単位(-CH-CCl-)をA、塩化ビニル単位(-CH-CHCl-)をBと表記し、スペクトル上に得られたシグナル1、2、及び3を以下の通り帰属した。
・シグナル1(約5.2~4.5ppm)をBのCHシグナル(塩化ビニル由来の構成単位のメチン(CH)基)に帰属した。
・シグナル2(約4.2~3.8ppm)をAAの片方のAのCHシグナル(塩化ビニリデン由来の構成単位のメチレン(CH)基)に帰属した。
・シグナル3(約3.5~2.8ppm)をAB及びBA両方のAのCHシグナル(塩化ビニリデン由来の構成単位のメチレン(CH)基)に帰属した。
【0040】
これらのシグナルのスペクトル面積値(NMRスペクトルにおけるシグナルの面積)から、構成単位又は二連子部位のモル分率を求めた。なお、各モル分率を以下の通り表記する。
・Aのモル分率(モル%):P(A)
・Bのモル分率(モル%):P(B)
・AA(塩化ビニリデン単位2個が連続する二連子部位)のモル分率(モル%):P(AA)
・AB(塩化ビニリデン単位1個と塩化ビニル単位1個とが連続する二連子部位)のモル分率(モル%):P(AB)
・BB(塩化ビニル単位2個が連続する二連子部位)のモル分率(モル%):P(BB)
【0041】
上記の通り帰属したシグナル1、2、及び3の面積値(NMRスペクトルにおけるピークの面積)から、上記スペクトル上のシグナルの積分値を以下の通りに割り当てた。
・シグナル1(約5.2~4.5ppm)の積分値をBのH1個分
・シグナル2(約4.2~3.8ppm)の積分値をAのH2個分
・シグナル3(約3.5~2.8ppm)の積分値をAのH4個分
【0042】
下記の式が成り立つのを用いて、各モル分率を計算した。
・P(A) + P(B) = 100
・P(AA) + P(BB) + P(AB) + P(BA) = 100
・P(AB) = P(BA)
・P(A) = P(AA) + P(AB)
・P(B) = P(BB) + P(BA)
【0043】
P(A)及びP(B)を次式(数3)により求める。
(数3)
P(B):P(A) =シグナル1の積分値:(シグナル2の積分値+シグナル3の積分値/2)/2
P(A)=100-P(B)
【0044】
P(AA)及びP(BB)を(数4)及び(数5)により求める。
(数4)
P(AA):P(AB)=シグナル2の積分値:シグナル3の積分値/2
P(AB)=P(A)-P(AA)
(数5)
P(BB)=100-P(AA)-P(AB)-P(BA)
【0045】
上記の方法において得られた、樹脂組成物について、以下の方法に従いメタノール抽出量の測定と、アセトン抽出量の測定とを行った。
また、得られたフィルムを用いて、目視による白斑点の有無の確認と、以下の方法に従った、ヤング率、動摩擦係数、酸素透過度、及び水蒸気透過度の測定とを行った。
これらの評価結果、測定結果を表1に記す。
【0046】
<メタノール抽出量の測定方法>
樹脂組成物(コンパウンド)10gを円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出器を用いてメタノール約120mLで90℃24時間抽出を行った。抽出終了後、90℃でメタノールをドライアップし、残渣を105℃で1時間乾燥させた。乾燥後、抽出物の入ったフラスコをデシケーターで放冷し、抽出物の入ったフラスコの質量を求めた。メタノール抽出量を、次式により求めた。
メタノール抽出量[%]=(B-A)/C×100
A:抽出物の入ったフラスコの質量(g)
B:フラスコの質量(g)
C:試料の質量(g)(C=10gである。)
【0047】
<アセトン抽出量の測定方法>
上記の方法によりメタノール抽出された後の試料5gを三角フラスコに入れ、アセトン150mLを加えて、還流冷却器を付けて50℃で、アセトン中の試料を5時間撹拌して抽出を行った。得られた抽出液から抽出液100mLを分取し、抽出液100mLをろ紙No.5A(「JIS P 3801-1995 ろ紙(化学分析用)」の規格に準ずる。)でろ過した。得られたろ液を、予め乾燥して質量を量った容量150mLの平底フラスコに入れた。使用したろ過に使用した器具を四塩化炭素で洗浄し、洗浄液を平底フラスコに加えた。次いで、80℃に温度調整された恒温水槽中で、ろ液に含まれるアセトンをドライアップした。その後、105℃に調整した乾燥機で、抽出物の入った平底フラスコを1時間乾燥した。乾燥された平底フラスコをデシケーターで1時間放冷して抽出物の入ったフラスコの質量を求めた。アセトン抽出量は、次式により求めた。
アセトン抽出量%={(A-B)×E/(C×D)}×100%
A:抽出物の入った平底フラスコの質量(g)
B:平底フラスコの質量(g)
C:試料の質量(g)(C=5gのことである。)
D:回収した抽出液量(mL)
E:抽出に使用したアセトン量(mL)(E=150mLのことである)
【0048】
<ヤング率の測定方法>
JIS-K7127に従って、フィルムのMD方向に平行な方向と、TD方向に平行な方向とに、長さ200mm、幅20mmでフィルムを切り出して測定試料を得た。測定は23℃、50%RHの雰囲気中で行った。(株)A&D製のTENSILON RTC-1210Aにて、チャック間距離10cmにセットしたラップフィルムを上下に10mm/分の速度で引っ張り、2.5%変位した点(ストローク2.5mm)での強度を40倍して、100%変位へ換算する事で、ヤング率の値を得た(単位:MPa)。
【0049】
<動摩擦係数の測定方法>
株式会社トリニティーラボ製の静・動摩擦測定器(Type:TL201Ts)を用い、触覚接触子を使用し、触覚接触子に垂直荷重20gを掛け、フィルムの試料をステージに固定した状態で、フィルムのMDに速度3.3mm/minで触覚接触を移動させ、動摩擦係数を測定した。
【0050】
<酸素透過度の測定方法>
MOCON社製のOX―TRAN 2/21型を用い、ASTM D3985-81に従って酸素透過度を測定し(単位:cm/m・day・atm)、単位厚み(10μm)当たりの値で表1に示した。測定は20℃Dryの条件下で行った。
【0051】
<水蒸気透過度の測定方法>
MOCON社製 PERMATRAN―W(登録商標) 3/33型を用い、JIS K7129-1992に従って水蒸気透過度を測定し(単位:g/m・day)、単位厚み(10μm)当たりの値で表1に示した。測定は40℃、90%RHの条件下で行った。
【0052】
【表1】
【0053】
表1によれば、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体と、添加剤としての、ジアセチル化モノグリセライド、及びエポキシ化大豆油とを含む樹脂組成物からなり、樹脂組成物中の添加剤の含有量が、4.5~6.0質量%であり、樹脂組成物中の前記ジアセチル化モノグリセライドの含有量が、0.9~3.5質量%であり、厚さが5~15μmであるラップフィルムは、白斑点のような外観不良がなく、バリア性に優れることが分かる。