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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129003
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ステータ、モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/16 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
H02K1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033733
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】綿引 正倫
(72)【発明者】
【氏名】赤津 観
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA29
5H601CC01
5H601DD01
5H601DD02
5H601GB12
5H601GB22
5H601GB23
5H601GB36
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コギングトルクを低減することができるステータおよびモータを提供する。
【解決手段】中心軸を中心とする環状のコアバック131と、コアバック131の内周面または外周面から径方向に延びるティース132と、ティース132の先端部において周方向の両側に突出するアンブレラ133と、を備える。周方向を向くティース132の側面に、軸方向に沿って延びる溝134を有する。溝134は、アンブレラ133のコアバック131側の端部よりもコアバック131側に位置する。アンブレラ133の径方向厚みtは、溝134の周方向の開口部における径方向開口幅W1以下である。アンブレラの周方向幅W2は、溝の周方向溝深さD以上である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心とする環状のコアバックと、
前記コアバックの内周面または外周面から径方向に延びるティースと、
前記ティースの先端部において周方向の両側に突出するアンブレラと、
を備え、
周方向を向く前記ティースの側面に、軸方向に沿って延びる溝を有し、
前記溝は、前記アンブレラの前記コアバック側の端部よりも前記コアバック側に位置し、
前記アンブレラの径方向厚みは、前記溝の周方向の開口部における径方向開口幅以下である、ステータ。
【請求項2】
前記アンブレラの周方向幅は、前記溝の周方向溝深さ以上である、
請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記溝は、径方向外側に向かうに従い周方向に沿う溝深さを段階的に深くする段差部を有する、
請求項1又は2に記載のステータ。
【請求項4】
前記溝の径方向の幅は、周方向の全体にわたって一定である、
請求項1又は2に記載のステータ。
【請求項5】
前記アンブレラの径方向の厚みは、周方向の全体にわたって一定である、
請求項1から3のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のステータと、
前記ステータと径方向に対向するロータと、
を備える、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータおよびモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、集中巻のステータを備えるモータにおいて、振動を抑制するために、ティースの先端に切り欠きが設けられた構成が知られる。
【0003】
また、特許文献2に開示されているように、ティースの先端面に切り欠きを有するステータにおいて、高い振動抑制効果を得ようとするとロータと対向する面積が減少し、モータの平均トルクが大きく低下する場合がある。そこで、特許文献2の課題に対応するために、アンブレラのコアバック側の端部よりもコアバック側に溝を位置させた構造を採用している。この構造によって、モータの平均トルクの低下を抑えながら振動を抑制できるステータを実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-264943号公報
【特許文献2】特開2021-158764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2で開示される構成では、モータの平均トルクの低下を抑制するとともに、トルクリップルを低減できるが、コギングトルクが増加する傾向があった。
【0006】
本発明の1つの態様は、上記事情に鑑みて、コギングトルクを低減することができるステータおよびモータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様によれば、中心軸を中心とする環状のコアバックと、前記コアバックの内周面または外周面から径方向に延びるティースと、前記ティースの先端部において周方向の両側に突出するアンブレラと、を備える。周方向を向く前記ティースの側面に、軸方向に沿って延びる溝を有する。前記溝は、前記アンブレラの前記コアバック側の端部よりも前記コアバック側に位置する。前記アンブレラの径方向厚みは、前記溝の周方向の開口部における径方向開口幅以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1つの態様によれば、モータにおいて、コギングトルクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態のモータの概略断面図である。
図2図2は、図1に示すII-II線断面図であって、実施形態のロータおよびステータの部分断面図である。
図3図3は、実施形態のステータコアの拡大平面図である。
図4図4は、実施形態のステータコアの拡大斜視図である。
図5図5は、実施形態のステータコアの作用を説明する拡大平面図である。
図6図6は、変形例のステータコアを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明においては、中心軸Jの軸方向、すなわち上下方向と平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。本実施形態において、上側(+Z)は、軸方向一方側に相当し、下側(-Z)は、軸方向他方側に相当する。なお、上下方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のモータ1は、ロータ20と、ステータ30と、ハウジング11と、複数のベアリング15,16と、を備える。ロータ20は、ステータ30と径方向に隙間をあけて対向する。本実施形態では、インナーロータ型のモータ1について説明するが、モータ1は、アウターロータ型のモータであってもよい。
【0012】
ロータ20は、中心軸Jを有するシャフト21と、図1および図2に示すように、ロータコア22と、複数のロータマグネット23と、を備える。
【0013】
シャフト21は、中心軸Jに沿って上下方向に延びる。本実施形態では、シャフト21は、軸方向に延びる円柱状である。シャフト21は、複数のベアリング15,16により、中心軸J回りに回転自在に支持される。複数のベアリング15,16は、軸方向に互いに間隔をあけて配置され、ハウジング11に支持される。ハウジング11は、軸方向に延びる筒状である。
【0014】
シャフト21は、ロータコア22に対して、圧入や接着などによって固定される。シャフト21は、ロータコア22に対して、樹脂部材などの他部材を介して固定されてもよい。シャフト21は、円柱状に限らず、例えば筒状でもよい。シャフト21の下端部は、ハウジング11の下面の開口部から下側へ突出する。
【0015】
ロータコア22は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成される積層鋼板である。ロータコア22は、筒状である。ロータコア22は、図2に示すように、軸方向から見て、外形が多角形状である。本実施形態では、ロータコア22の外形は、八角形状である。ロータコア22の外周面に並ぶ8つの平面部に、8個のロータマグネット23が固定される。ロータコア22は、軸方向から見た中心部に貫通孔を有する。ロータコア22の貫通孔にシャフト21が挿入される。ロータマグネット23の個数および極数は、任意に変更可能である。
【0016】
ステータ30は、ステータコア31と、インシュレータ32と、複数のコイル33と、を有する。ステータコア31は、中心軸Jを中心とする環状である。ステータコア31は、ロータ20の径方向外側においてロータ20を囲む。ステータコア31は、ロータ20と径方向に隙間をあけて対向する。ステータコア31は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成される積層鋼板である。
【0017】
ステータコア31は、図2に示すように、コアバック131と、複数のティース132と、を有する。コアバック131は、中心軸Jを中心とする環状である。本実施形態では、コアバック131は、軸方向に延びる円筒状である。コアバック131は、例えば、軸方向から見て多角形の筒状等でもよい。コアバック131の径方向外側面は、ハウジング11の周壁の内周面と固定される。
【0018】
ティース132は、コアバック131の内周面(径方向内側を向く面)から、径方向内側に突出する。ティース132は、コアバック131の内周面に複数配置される。本実施形態の場合、ステータコア31は、12本のティース132を有する。複数のティース132は、コアバック131の内周面に、周方向に互いに間隔をあけて配置される。ティース132の本数は、任意に変更可能である。ティース132は、図2に示すように、コアバック131の内周面からロータマグネット23と径方向に対向する先端面に向かう全長にわたって一定の周方向幅を有する。
【0019】
各々のティース132は、ティース132の径方向内側の先端部において周方向の両側に突出するアンブレラ133を有する。ティース132の周方向の両側から突出するアンブレラ133は、ティース132の周方向を向く側面から周方向に突出する突出長が同一である。そして、周方向に隣り合うティース132の径方向内側の先端部に設けられるアンブレラ133同士は、周方向に互いに所定の間隔をあけて配置されている。
【0020】
アンブレラ133の径方向厚みtは、図3に示すように、周方向の全体に亘って一定の厚さ寸法で設けられている。アンブレラ133の径方向厚みtは、例えば0.3~1.0mm程度である。なお、本明細書において「或るパラメータが一定である」とは、或るパラメータが厳密に一定である場合と、或るパラメータが略一定である場合とを含む。「或るパラメータが略一定である」とは、例えば、一定とされる或るパラメータが製造時の公差などの範囲内でバラついていることを含む。例えば、本実施形態において「アンブレラ133の径方向厚みtが周方向の全体にわたって一定である」とは、アンブレラ133の径方向厚みtが周方向の全体にわたって略一定であってもよい。
【0021】
各々のティース132は、図3に示すように、周方向を向く2つの側面132a、132bを有する。一方の側面132aは、周方向一方側(上側から見て時計回り方向)を向く側面である。他方の側面132bは、周方向他方側(上側から見て反時計回り方向)を向く側面である。
【0022】
ティース132は、図4に示すように、周方向を向く側面132aおよび側面132bに、軸方向に延びる溝134をそれぞれ有する。本実施形態では、溝134は、ティース132の上端から下端にわたって直線状に延びる。溝134は、ティース132の上面および下面に開口する。溝134は、ティース132の上面および下面のいずれか一方にのみ開口する構成であってもよい。溝134は、ティース132の上面および下面の両方に開口しない構成であってもよい。側面132a、132bの溝134は、軸方向長さおよび位置のいずれか一方または両方が、互いに異なっていてもよい。
【0023】
溝134の軸方向長さが短すぎると、溝134を設けることによる振動低減効果が得られにくくなる。溝134の軸方向長さは、ロータマグネット23の軸方向長さと概ね一致することが好ましい。溝134の軸方向長さは、ロータマグネット23の軸方向長さの80%以上120%以下であることが好ましい。
【0024】
溝134は、図3に示すように、側面132aにおけるアンブレラ133のコアバック131側の端部133aよりもコアバック131側に位置する。
【0025】
本実施形態のステータ30は、アンブレラ133の径方向厚みtは溝134の周方向の開口部134aにおける径方向開口幅W1以下であり、かつアンブレラ133の周方向幅W2は溝134の周方向溝深さD以上である。溝134の開口部134aは、ティース132の側面132a、132bと面一の位置で開口する開口縁である。アンブレラ133の周方向幅W2は、周方向でティース132の側面132a、132bの位置より突出している部分の長さ寸法である。溝134の周方向溝深さDは、溝134の周方向の深さ寸法において最も深くなる場所の深さ(本実施形態では第1の溝部134A)である。本実施形態では、アンブレラ133の径方向厚みtは、溝134の周方向の開口部134aにおける径方向開口幅W1よりも小さい。アンブレラ133の周方向幅W2は、溝134の周方向溝深さDよりも大きい。
【0026】
例えば、溝134の径方向開口幅W1が0.3~2.0mmの場合には、アンブレラ133の径方向厚みtを0.3~1.0mmにできる。また、溝134の周方向溝深さDが0.3~2.0mmの場合には、アンブレラ133の周方向幅W2を0.3~2.0mmにできる。
【0027】
なお、本実施形態では、アンブレラ133の径方向厚みtが溝134の周方向の開口部134aにおける径方向開口幅W1以下で、かつアンブレラ133の周方向幅W2が溝134の周方向溝深さD以上となっているが、これに限られない。アンブレラ133の径方向厚みtが溝134の開口部134aにおける径方向開口幅W1以下であればよく、アンブレラ133の周方向幅W2は溝134の周方向溝深さDより小さくてもよい。
【0028】
溝134は、径方向外側に向かうに従い周方向に沿う溝深さを段階的に深くする1つの段差部134bを有する。すなわち、溝134は、径方向外側に位置する第1の溝部134Aと、第1の溝部134Aの径方向内側に位置する第2の溝部134Bと、を有する。段差部134bは、第1の溝部134Aおよび第2の溝部134Bによって構成されている。第1の溝部134Aの溝深さは、例えば0.3~2.0mmである。第2の溝部134Bの溝深さは、例えば0.3~1.7mmである。
【0029】
上記構成によれば、各々のティース132が、溝134を有することで、モータ1のトルク低下を抑制しつつ、ステータ30の磁束密度の高調波成分に起因する電磁加振力を低減できる。
【0030】
さらに本実施形態では、アンブレラ133の径方向厚みtが溝134の開口部134aにおける径方向開口幅W1以下である。これにより、溝134による磁束Eを周方向に流れやすくする特性と、ティース132の先端の磁気飽和による磁束Eを周方向に流れにくくする特性とが互いに相殺する関係となる。そのため、コギングトルクを低減することができる。また、溝134が設けられないティース132に比べて、トルクリプルを低減することもできる。本実施形態では、例えば、トルクリプルの6次成分を特に好適に低減できる。
【0031】
さらに具体的に説明する。例えば、本実施形態のステータ30において溝134が省略されて単に径方向厚みtが小さく薄肉のアンブレラ133のみが設けられた構成の場合には、図5に符号E2で示すように、アンブレラ133の周方向外側を迂回してティース132の周方向を向く側面132a、132bに流入する磁束Eが増加し、コギングトルクが増大してしまう。一方、アンブレラ133の径方向厚みtを比較的大きくした状態で溝134を設けると、アンブレラ133からティース132のうちの溝134同士の間の部分に磁束Eが流れる際に、磁束Eが周方向に大きく曲がって流れる。そのため、この周方向に大きく曲がって流れる磁束Eによって、ロータ20を逆向きに回転させる力が大きくなり、コギングトルクが増大しやすい。
【0032】
これに対して、図5に示すように、本実施形態のステータ30では、薄肉のアンブレラ133と溝134が設けられている。このように本実施形態のステータ30では、溝134を設け、かつ径方向厚みtを薄くして磁気飽和しやすいアンブレラ133とすることで、ロータマグネット23の磁束Eをティース132の内側により多く誘導することができ、アンブレラ133の周方向外側から迂回させてティース132の側面132a、132bからティース132内に流入する磁束Eを抑制できる。さらに本実施形態では、アンブレラ133の径方向厚みtが溝134の開口部134aの径方向開口幅W1以下となっているので、径方向厚みtが薄いアンブレラ133では磁気飽和が起こりやすく、アンブレラ133からティース132へと流れる磁束Eが少なくなりやすい。これにより、図5に符号E1で示すように、ロータ20からティース132のうち溝134同士の間の部分に流れる磁束Eの周方向の曲りが小さくできる。また、溝134の開口部134aの径方向開口幅W1がアンブレラ133の径方向厚みt以上となるため、溝134の開口部134aの径方向開口幅W1を好適に大きくできる。これにより、溝134の開口部134aによって、磁束Eがティース132の側面132a、132bからティース132に流入することを好適に抑制できる。したがって、本実施形態では、コギングトルクを効率よく低下できる。
【0033】
以上のように、アンブレラ133の径方向厚みtを単純に小さくする構成はコギングトルクを増大させる構成として知られていたが、本願発明者らは、溝134が設けられたティース132に対してアンブレラ133の径方向厚みtを小さくする構成を採用することで、ティース132に溝134が設けられたモータ1においてコギングトルクを低減できることを見出した。これにより、溝134を設けてモータ1の平均トルクの低下を抑制し、かつ、トルクリプルを低減しつつ、アンブレラ133の径方向厚みtを小さくすることで、コギングトルクも低減できるステータ30が得られた。
【0034】
また、本実施形態では、アンブレラ133の周方向幅W2が溝134の周方向溝深さD以上である。これにより、アンブレラ133の周方向の長さを大きくできる。そのため、図5に符号E2で示すような、アンブレラ133の周方向外側から迂回してティース132の側面132a、132bからティース132内に流入する磁束Eをより好適に低減できる。したがって、より好適にコギングトルクを低減することができる。
【0035】
なお、溝134の周方向溝深さDは、深くし過ぎると、溝134の底部とアンブレラ133の端部133a、すなわちティース132との接続部との周方向の距離が大きくなって、図5に符号E1で示すようにティース132の先端から流入する磁束Eが周方向に大きく曲がりやすいことから、溝134がコギングトルクに与える影響が大きくなり、コギングトルクの低減効果が小さくなる恐れがある。これに対して、本実施形態では、溝134の周方向溝深さDがアンブレラ133の周方向幅W2以下となる。そのため、溝134の周方向溝深さDを好適に小さくでき、コギングトルクの低減効果が小さくなることを抑制できる。
【0036】
また、本実施形態では、溝134が径方向外側に向かうに従い周方向に沿う溝深さを段階的に深くする段差部134bを有する。具体的に本実施形態では、溝134は、段差部134bが設けられることで、第1の溝部134Aと第2の溝部134Bとを備えている。これにより、溝134に段差部134bを設けて溝深さを段階的に設けることにより、磁束Eの周方向への曲りをより小さくできる。したがって、コギングトルクをより好適に低減できる。そして、このように段階的に溝134の溝深さを調整できるので、溝134を所望の平均トルクとトルクリップルを実現できる深さを有する形状にしやすい。
【0037】
また、本実施形態では、アンブレラ133の径方向厚みtが周方向の全体にわたって一定であるので、アンブレラ133の径方向厚みtを周方向の全体にわたって薄くできる。これによりアンブレラ133を通ってティース132へと流れる磁束Eをより好適に少なくすることができ、磁束Eの周方向の曲りをより好適に小さくできる。したがって、コギングトルクをより好適に低減できる。また、アンブレラ133の径方向厚みtが周方向の全体亘って一定であるので、ステータ30を製造しやすくなる利点がある。
【0038】
また、図6に示す変形例によるステータ30Aは、ティース132の側面132a、132bに設けられる溝135の径方向の幅が周方向の全体にわたって一定である。すなわち、第1変形例による溝135には、上記実施形態のような段差部134b、第1の溝部134A、および第2の溝部134Bが設けられていない。溝135の周方向溝深さDは、上述した第1の溝部134Aの深さ寸法と同じである。変形例による溝135は、側面132aにおけるアンブレラ133のコアバック131側の端部133aよりもコアバック131側に位置する。
【0039】
変形例のステータ30Aは、アンブレラ133の径方向厚みtが溝135の開口部135aにおける径方向開口幅W1以下であり、かつアンブレラ133の周方向幅W2が溝135の周方向溝深さD以上である。溝135の開口部135aは、ティース132の側面132a、132bと面一の位置で開口する開口縁である。アンブレラ133の周方向幅W2は、周方向でティース132の側面132a、132bの位置より突出している部分の長さ寸法である。溝135の周方向溝深さDは、溝135の周方向の深さ寸法において最も深くなる場所の深さである。なお、本変形例の場合も、アンブレラ133の径方向厚みtが溝135の開口部135aにおける径方向開口幅W1以下であればよく、アンブレラ133の周方向幅W2は溝135の周方向溝深さDより小さくてもよい。
【0040】
本変形例によれば、上記実施形態のような段差部134bを設ける場合に比べて簡単な溝形状となるので、ステータ30Aの製造を容易に行うことができる。
【0041】
以上に、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0042】
上記実施形態では、溝134の第1の溝部134Aが第2の溝部134Bよりも径方向外側に位置している。すなわち、径方向外側の第1の溝部134Aが第2の溝部134Bよりも周方向溝深さDが深い構成となっているが、第2の溝部134Bの方が第1の溝部134Aよりも周方向溝深さDが深い構成とすることも可能である。また、第1の溝部134Aおよび第2の溝部134Bの断面形状を変更することも可能である。すなわち、例えば、各次数の高調波成分に対する低減作用を調整したい場合には、第1の溝部134Aおよび第2の溝部134Bの形状および大きさを変更することができる。
【0043】
本実施形態および変形例のモータ1は、ティース132の周方向の両側面132a、132bに溝134を設けた構成としている。ここで、上側から見て時計回りにロータ20が回転する。溝134、135は、ロータ20の回転方向Tの前方側に向かって開口する溝134、135のみがティース132に設けられる構成であってもよい。すなわち、ステータ30、30Aは、ロータ20の回転方向の前方側を向くティース132の側面132aのみに溝134、135を有する構成としてもよい。
【0044】
上記実施形態および変形例では、溝134、135は、軸方向から見た断面形状が矩形状である構成としたが、溝134(第1の溝部134A、第2の溝部134B)、135の断面形状は、他の形状であってもよい。例えば、溝134、135の軸方向から見た断面形状は、円弧状、楕円弧状などの曲線形状であってもよい。溝134、135の軸方向から見た断面形状は、周方向他方側に位置する底面部分に円弧状、楕円弧状などの曲線形状を有していてもよい。あるいは、溝134、135の軸方向から見た断面形状は、三角形状、五角形状などの多角形状であってもよい。
【0045】
また、本実施形態および変形例では、溝134、135は、径方向内側に配置されているが、溝134、135の位置を径方向外側に変更してもよい。例えば、溝134、135を、アンブレラ133の端部133aとコアバック131との径方向の中間位置M近傍、あるいは中間位置Mよりも径方向外側の位置に配置してもよい。
【0046】
以上、本明細書において説明した構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0047】
1…モータ、20…ロータ、30、30A…ステータ、131…コアバック、132…ティース、132a,132b…側面、133…アンブレラ、134,135…溝、134a,135a…開口部、134b…段差部、134A…第1の溝部、134B…第2の溝部、J…中心軸、M…中間位置、T…回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6