(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129005
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】光学積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 1/111 20150101AFI20230907BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230907BHJP
C08J 7/043 20200101ALI20230907BHJP
【FI】
G02B1/111
B32B7/023
C08J7/043 Z CEY
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033737
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】真屋 良地
【テーマコード(参考)】
2K009
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
2K009AA05
2K009BB24
2K009BB28
2K009CC09
2K009CC24
2K009DD02
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4F100JN28
(57)【要約】
【課題】抗菌性と反射防止性とを有するとともに、黄色味が抑制されたニュートラルな色合いを有する光学積層体を提供する。
【解決手段】基材層と、この基材層の少なくとも一方の面に積層された中間層と、この中間層の上に積層され、かつ銀ナノ粒子を含む反射防止層とを含む積層体を調製する。前記反射防止層は、銀ナノ粒子を含む硬化性組成物の硬化物で形成されていてもよい。前記硬化性組成物は、フッ素非含有硬化性成分と、無機フィラーおよび/またはフッ素含有成分とをさらに含んでいてもよい。前記中間層は硬化性成分および(メタ)アクリル系レベリング剤を含む硬化性組成物の硬化物で形成されていてもよい。前記基材層は透明有機材料を含んでいてもよい。前記積層体は、反射光の色度b*の絶対値が5以下であってもよい。前記反射防止層は湿式コーティング層であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、この基材層の少なくとも一方の面に積層された中間層と、この中間層の上に積層され、かつ銀ナノ粒子を含む反射防止層とを含む積層体。
【請求項2】
前記反射防止層が、銀ナノ粒子を含む硬化性組成物の硬化物で形成されている請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記硬化性組成物が、フッ素非含有硬化性成分と、無機フィラーおよび/またはフッ素含有成分とをさらに含む請求項2記載の積層体。
【請求項4】
前記硬化性組成物が、フッ素非含有硬化性成分、無機フィラーおよびフッ素含有成分とをさらに含み、前記フッ素非含有硬化性成分が、3~6の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートであり、前記無機フィラーが中空シリカであり、かつ前記フッ素含有成分がフッ素含有硬化性成分である請求項3記載の積層体。
【請求項5】
前記中間層が硬化性成分および(メタ)アクリル系レベリング剤を含む硬化性組成物の硬化物で形成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記基材層が透明有機材料を含む請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記透明有機材料がポリエステルまたはセルロースエステルを含む請求項6記載の積層体。
【請求項8】
反射光の色度b*の絶対値が5以下である請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
前記反射防止層が湿式コーティング層である請求項1~8のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
中間層の上に反射防止層を積層する反射防止層形成工程を含む請求項1~9のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記反射防止層形成工程において、銀ナノ粒子を含む硬化性組成物を湿式コーティングする請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の積層体を備えた表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗菌性および反射防止性を有する光学積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から銀ナノ粒子は、各種の分野で利用されており、例えば、国際公開第2015/159517号(特許文献1)では、建材用途や車載用途の窓ガラスに利用される機能性ガラスに貼付される反射防止フィルムとして、透明基材の上に、反射防止構造として、ハードコート層、バインダー中に平均粒子径10~500nmの銀ナノディスクを含有する銀ナノディスク層、低屈折率層を順次積層したフィルムが開示されている。
【0003】
特開2019-157259号公報(特許文献2)には、耐摩耗性を有し、経済的である上に、殺菌効果も高いフィルムとして、スパッタリングによってタングステンとナノシルバーとを組み合わせた殺菌フィルムが開示されている。
【0004】
特開2014-238606号公報(特許文献3)には、微生物の付着やコロニー形成の可能性を最小限にする抗菌性医療デバイスとして、銀ナノ粒子を、シリコーン含有のモノマー又はマクロマーまたはプレポリマーを含む重合性流体組成物中に分散させた重合性分散体を型内で重合させて得られた抗菌性コンタクトレンズなどの医療デバイスが開示されている。
【0005】
特表2017-530079号公報(特許文献4)には、抗菌性、反射防止性および耐指紋性を有する多機能層が表面にコーティングされたガラス基板またはガラスセラミック基板として、ガラス基板に反射防止層をコーティングし、屈折率の異なる複数の層を形成した後、銀イオンでイオン交換し、さらに反射防止層の上に耐指紋性を有する層をコーティングしたガラス基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2015/159517号
【特許文献2】特開2019-157259号公報
【特許文献3】特開2014-238606号公報
【特許文献4】特表2017-530079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の技術では、金属ナノ粒子由来の抗菌性と反射防止性とを備えたフィルムは知られていない。また、銀ナノ粒子を利用して、湿式コーティングなどの簡便な方法で抗菌性を発現させる技術は知られていない。さらに、フィルムに銀ナノ粒子を含有させると、黄色味がかった色合いになる問題点も有している。
【0008】
従って、本開示の目的は、抗菌性と反射防止性とを有するとともに、黄色味が抑制されたニュートラルな色合いを有する光学積層体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、基材層の少なくとも一方の面に、中間層を介して、銀ナノ粒子を含む反射防止層を積層することにより、抗菌性と反射防止性とを有するとともに、黄色味が抑制されたニュートラルな色合いを有する光学積層体を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本開示の積層体は、基材層と、この基材層の少なくとも一方の面に積層された中間層と、この中間層の上に積層され、かつ銀ナノ粒子を含む反射防止層とを含む。前記反射防止層は、銀ナノ粒子を含む硬化性組成物の硬化物で形成されていてもよい。前記硬化性組成物は、フッ素非含有硬化性成分と、無機フィラーおよび/またはフッ素含有成分(特に、無機フィラーおよびフッ素含有成分)とをさらに含んでいてもよい。前記フッ素非含有硬化性成分は、3~6の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートであってもよい。前記無機フィラーは中空シリカであってもよい。前記フッ素含有成分はフッ素含有硬化性成分であってもよい。前記中間層は硬化性成分および(メタ)アクリル系レベリング剤を含む硬化性組成物の硬化物で形成されていてもよい。前記基材層は透明有機材料(特に、ポリエステルまたはセルロースエステル)を含んでいてもよい。前記積層体は、反射光の色度b*の絶対値が5以下であってもよい。前記反射防止層は湿式コーティング層であってもよい。
【0011】
本開示には、中間層の上に反射防止層を積層する反射防止層形成工程を含む前記積層体の製造方法も含まれる。前記反射防止層形成工程において、銀ナノ粒子を含む硬化性組成物を湿式コーティングしてもよい。
【0012】
本開示には、前記積層体を備えた表示装置も含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本開示では、基材層の少なくとも一方の面に、中間層を介して、銀ナノ粒子を含む反射防止層を積層しているため、積層体に抗菌性および反射防止性を付与できるとともに、黄色味が抑制されたニュートラルな色合いに調整できる。特に、特定の中間層の上に特定の硬化性組成物で反射防止層を形成することにより、透明であり、かつ黄色味が抑制された反射防止層を湿式コーティングで効率良く製造できるため、生産性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[反射防止層]
本開示の積層体(光学積層体)は、中間層の上に積層された反射防止層(低屈折率層)を有している。この反射防止層は、銀ナノ粒子を含み、抗菌性を有している。
【0015】
銀ナノ粒子の平均一次粒子径は100nm以下であってもよく、例えば0.5~100nm、好ましくは0.5~80nm、さらに好ましくは1~70nm、より好ましくは5~60nm、最も好ましくは10~50nmである。平均一次粒子径が大きすぎると、反射防止性が低下する虞がある。
【0016】
本開示において、銀ナノ粒子の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察結果に基づいて、任意の10個の平均値として求めることができる。
【0017】
銀ナノ粒子の表面は、保護剤で被覆されていてもよい。保護剤としては、例えば、脂肪族アミンおよび/または脂肪族カルボン酸(特に、脂肪族アミン)などが挙げられる。
【0018】
銀ナノ粒子の割合は、反射防止層中0.01質量%以上であってもよく、例えば0.01~30質量%、好ましくは0.05~10質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.3~3質量%、最も好ましくは0.5~1.5質量%である。銀ナノ粒子の割合が少なすぎると、抗菌性が低下する虞がある。
【0019】
反射防止層の屈折率は1.37以上であってもよく、例えば1.37~1.45、好ましくは1.37~1.4、さらに好ましくは1.37~1.39、より好ましくは1.37~1.38である。屈折率が高すぎると、反射防止性が低下する虞がある。なお、本開示において、屈折率は、JIS K7142に準拠して測定できる。
【0020】
反射折率層の厚み(平均厚み)は、例えば50~300nm、好ましくは60~150nm、さらに好ましくは80~120nm、より好ましくは90~110nmである。
【0021】
反射防止層は、銀ナノ粒子を含んでいればよく、低屈折率樹脂[例えば、メチルペンテン樹脂、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などのフッ素樹脂など]で形成された層であってもよいが、機械的特性などの点から、銀ナノ粒子を含む硬化性組成物の硬化物で形成された層であるのが好ましい。
【0022】
前記硬化性組成物(第1の硬化性組成物)は、湿式コーティングが容易である点から、銀ナノ粒子に加えて、フッ素非含有硬化性成分と、無機フィラーおよび/またはフッ素含有成分をさらに含むのが好ましい。
【0023】
(フッ素非含有硬化性成分)
フッ素非含有硬化性成分は、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のいずれであってもよいが、生産性などの点から、光硬化性樹脂が好ましい。光硬化性樹脂(光硬化樹脂前駆体成分)は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線により硬化または架橋して樹脂を形成可能な化合物であってもよい。
【0024】
フッ素非含有光硬化性成分には、単量体、オリゴマー(または樹脂、特に、低分子量樹脂)が含まれる。
【0025】
単量体としては、例えば、単官能性単量体[(メタ)アクリル酸エステル、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系単量体;ビニルピロリドンなどのビニル系単量体など]、2官能性単量体[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレート]、3官能以上の多官能性単量体[グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの3~6官能性単量体など]などが例示できる。これらのうち、分子中に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートが汎用される。
【0026】
オリゴマーまたは樹脂としては、例えば、ビスフェノールA-アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート[2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性エポキシ(メタ)アクリレート]、ポリエステル(メタ)アクリレート[2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性ポリエステル(メタ)アクリレート]、ウレタン(メタ)アクリレート[2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性ウレタン(メタ)アクリレート]、シリコーン(メタ)アクリレート[2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性シリコーン(メタ)アクリレート]、重合性基を有する(メタ)アクリル系重合体などが例示できる。
【0027】
これらのフッ素非含有光硬化性成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、反射防止層の機械的特性の点から、2官能以上の多官能性単量体であってもよく、3官能以上の多官能性単量体が好ましく、3~6官能性単量体[特に、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの3~6の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート]がさらに好ましい。
【0028】
フッ素非含有光硬化性成分は、2官能以上の多官能性単量体(特に3~6官能性単量体)を50質量%以上含むのが好ましく、80質量%以上含むのがさらに好ましく、90質量%以上含むのがより好ましい。フッ素非含有光硬化性成分は、2官能以上の多官能性単量体のみであってもよい。
【0029】
銀ナノ粒子の割合は、フッ素非含有硬化性成分100質量部に対して、例えば0.1~100質量部、好ましくは1~80質量部、さらに好ましくは3~50質量部、より好ましくは5~30質量部、最も好ましくは10~20質量部である。銀ナノ粒子の割合が少なすぎると、抗菌性が低下する虞があり、逆に多すぎると、反射防止層の機械的特性が低下する虞がある。
【0030】
(無機フィラーおよび/またはフッ素含有成分)
無機フィラーとしては、低屈折率の無機フィラーが好ましい。低屈折率の無機フィラーとしては、例えば、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子、金属硫化物粒子、金属ハロゲン化物粒子などの金属化合物粒子などが例示できる。金属化合物の金属としては、例えば、Mg、Ca、B、Siなどが例示できる。
【0031】
これらの無機フィラーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのフィラーのうち、シリカが好ましく、ヘイズの上昇を抑制でき、透明性を向上できる点から、中空シリカが特に好ましい。中空シリカは、特開2001-233611号公報、特開2003-192994号公報などに記載されている中空シリカであってもよい。
【0032】
前記無機フィラー(特に、中空シリカ)の個数平均粒径は100nm以下、好ましくは80nm以下(例えば10~80nm)、さらに好ましくは20~70nm程度である。
【0033】
前記無機フィラーは、カップリング剤(チタンカップリング剤、シランカップリング剤)により表面改質されていてもよい。
【0034】
フッ素含有成分には、フッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、フッ素含有光硬化性成分などが含まれる。これらのうち、フッ素含有光硬化性成分が汎用される。
【0035】
フッ素含有光硬化性成分は、前記反射防止層の項で例示したフッ素非含有光硬化性成分である単量体およびオリゴマーのフッ化物であってもよい。フッ素含有光硬化性成分としては、例えば、フッ化アルキル(メタ)アクリレート[例えば、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートやトリフルオロエチル(メタ)アクリレートなど]、フッ化(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、フルオロエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フルオロポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フルオロプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、フッ素含有エポキシ(メタ)アクリレート、フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0036】
これらのフッ素含有光硬化性成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0037】
これらのうち、(メタ)アクリロイル基を有するフルオロポリエーテル化合物、フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、フッ素およびエステル含有ウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0038】
前記硬化性組成物は、無機フィラー、フッ素含有成分の少なくとも一方を含むことによって低屈折率に調整されていればよいが、反射防止性に優れる点などから、低屈折率の無機フィラーとフッ素含有成分との組み合わせを含むのが好ましい。
【0039】
無機フィラーとフッ素含有成分とを組み合わせる場合、フッ素含有成分の割合は、前記無機フィラー(特に、中空シリカ)100質量部に対して0.1質量部以上であってもよく、例えば0.1~100質量部、好ましくは1~50質量部、さらに好ましくは2~30質量部、より好ましくは3~10質量部、最も好ましくは4~7質量部である。フッ素含有成分の割合が少なすぎると、反射防止性が低下する虞がある。
【0040】
無機フィラーおよびフッ素含有成分の総量は、反射防止層中10質量%以上であってもよく、例えば10~99質量%、好ましくは30~98質量%、さらに好ましくは50~97質量%、より好ましくは70~95質量%、最も好ましくは80~93質量%である。総量の割合が少なすぎると、反射防止性が低下する虞がある。
【0041】
無機フィラーおよびフッ素含有成分の総量は、フッ素非含有硬化性成分100質量部に対して、例えば10~5000質量部、好ましくは100~3000質量部、さらに好ましくは300~2000質量部、より好ましくは500~1500質量部、最も好ましくは800~1200質量部である。総量の割合が少なすぎると、反射防止性が低下する虞があり、逆に多すぎると、反射防止層の機械的特性が低下する虞がある。
【0042】
(硬化剤)
前記硬化性組成物は、フッ素非含有硬化性成分の種類に応じて、さらに硬化剤を含んでいてもよい。例えば、熱硬化性成分では、アミン類、多価カルボン酸類などの硬化剤を含んでいてもよく、光硬化性成分では光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アセトフェノン類またはプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。
【0043】
光重合開始剤などの硬化剤の割合は、フッ素非含有硬化性成分100質量部に対して、例えば0.1~20質量部、好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは1~5質量部である。
【0044】
硬化性組成物は、さらに硬化促進剤を含んでいてもよい。特に、光硬化性成分は、光硬化促進剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸エステルなど)、ホスフィン系光重合促進剤などを含んでいてもよい。
【0045】
(他の成分)
前記硬化性組成物は、フッ素非含有硬化性成分、無機フィラーおよび/またはフッ素含有成分に加えて、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、慣用の添加剤、例えば、シランカップリング剤(例えば、チオール基を有するシランカップリング剤など)、レベリング剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、界面活性剤、水溶性高分子、前記無機フィラー以外の充填剤、架橋剤、着色剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、消泡剤などが例示できる。
【0046】
他の成分の割合は、フッ素非含有硬化性成分100質量部に対して、例えば0.01~100質量部、好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは0.5~5質量部である。
【0047】
[中間層]
本開示の積層体(光学積層体)は、反射防止層と基材層との間に中間層が介在している。反射防止層は、基材層との間に中間層の上に介在させることにより、抗菌性および反射防止性を有する積層体とすることができる。
【0048】
中間層の厚み(平均厚み)は、例えば1~20μm、好ましくは1.5~10μm、さらに好ましくは2~8μm、より好ましくは4~7μmである。
【0049】
なお、本開示において、中間層の平均厚みは、光学式膜厚計を用いて、任意の10箇所を測定し、平均値を算出して求めることができる。
【0050】
中間層は機能層であってもよい。機能層としては、例えば、ハードコート層、防眩層、偏光層、屈折率調整層、粘着層などが挙げられる。これらのうち、湿式コーティングによって反射防止層を形成し易い点から、ハードコート層が好ましい。
【0051】
中間層(特に、ハードコート層)は、硬化性成分(中間層用硬化性成分)を含む硬化性組成物(第2の硬化性組成物)の硬化物で形成されている。
【0052】
(硬化性成分)
硬化性成分は、熱硬化性成分、光硬化性成分のいずれであってもよいが、生産性などの点から、光硬化性成分が好ましい。光硬化性成分としては、反射防止層の項で例示された光硬化性成分などが例示できる。前記光硬化性成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
前記光硬化性成分のうち、2官能以上の多官能性単量体が好ましく、5官能以上の多官能性単量体(例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの5~6官能性単量体など)との組み合わせが特に好ましい。
【0054】
中間層用硬化性成分の割合は、中間層中10質量%以上であってもよく、例えば10~90質量%、好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは30~70質量%、より好ましくは40~60質量%である。
【0055】
(表面調整剤)
中間層を形成するための硬化性組成物は、反射防止層との濡れ性を向上させるために、表面調整剤を含むのが好ましい。中間層が表面調整剤を含むことにより、湿式コーティングによって容易に反射防止層を形成できるとともに、中間層の上に反射防止層を強固に密着できる。
【0056】
表面調整剤は、表面張力低下能を有していればよく、慣用のレベリング剤であってもよい。慣用のレベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、アセチレングリコール系レベリング剤、アクリル系レベリング剤などが例示できる。これらのレベリング剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、反射防止層の濡れ性(リコート性)を向上できる点から、フッ素系レベリング剤および/または(メタ)アクリル系レベリング剤が好ましい。
【0057】
フッ素系レベリング剤としては、フルオロ脂肪族炭化水素骨格を有するレベリング剤であればよい。フルオロ脂肪族炭化水素骨格としては、例えば、フルオロメタン、フルオロエタン、フルオロプロパン、フルオロイソプロパン、フルオロブタン、フルオロイソブタン、フルオロt-ブタン、フルオロペンタン、フルオロヘキサンなどのフルオロC1-10アルカンなどが挙げられる。これらのフルオロ脂肪族炭化水素骨格は、少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されていればよいが、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロ脂肪族炭化水素骨格が好ましい。
【0058】
さらに、フルオロ脂肪族炭化水素骨格は、エーテル結合を介した繰り返し単位であるポリフルオロアルキレンエーテル骨格を形成していてもよい。繰り返し単位としてのフルオロ脂肪族炭化水素基は、フルオロメチレン、フルオロエチレン、フルオロプロピレン、フルオロイソプロピレンなどのフルオロC1-4アルキレン基からなる群より選択された少なくとも1種であってもよい。これらのフルオロ脂肪族炭化水素基は、同一であってもよく、複数種の組み合わせであってもよい。フルオロアルキレンエーテル単位の繰り返し数(重合度)は、例えば、10~3000、好ましくは30~1000、さらに好ましくは50~500程度であってもよい。
【0059】
フッ素系レベリング剤としては、市販のフッ素系レベリング剤を使用できる。市販のフッ素系レベリング剤としては、例えば、ダイキン工業(株)製オプツールシリーズのレベリング剤(「DSX」、「DAC-HP」)、AGCセイミケミカル(株)製サーフロンシリーズのレベリング剤(「S-242」、「S-243」、「S-420」、「S-611」、「S-651」、「S-386」など)、ビックケミー・ジャパン(株)製BYKシリーズのレベリング剤(「BYK-340」など)、Algin Chemie社製ACシリーズのレベリング剤(「AC 110a」、「AC 100a」など)、DIC(株)製メガファックシリーズのレベリング剤(「メガファックF-114」、「メガファックF-410」、「メガファックF-444」、「メガファックEXP TP-2066」、「メガファックF-430」、「メガファックF-472SF」、「メガファックF-477」、「メガファックF-552」、「メガファックF-553」、「メガファックF-554」、「メガファックF-555」、「メガファックR-94」、「メガファックRS-72-K」、「メガファックRS-75」、「メガファックF-556」、「メガファックEXP TF-1367」、「メガファックEXP TF-1437」、「メガファックF-558」、「メガファックEXP TF-1537」など)、住友スリーエム(株)製FCシリーズのレベリング剤(「FC-4430」、「FC-4432」など)、(株)ネオス製フタージェントシリーズのレベリング剤(「フタージェント100」、「フタージェント100C」、「フタージェント110」、「フタージェント150」、「フタージェント150CH」、「フタージェントA-K」、「フタージェント501」、「フタージェント250」、「フタージェント251」、「フタージェント222F」、「フタージェント208G」、「フタージェント300」、「フタージェント310」、「フタージェント400SW」など)、北村化学産業(株)製PFシリーズのレベリング剤(「PF-136A」、「PF-156A」、「PF-151N」、「PF-636」、「PF-6320」、「PF-656」、「PF-6520」、「PF-651」、「PF-652」、「PF-3320」など)などが例示できる。
【0060】
(メタ)アクリル系レベリング剤としては、(メタ)アクリル系骨格を有するレベリング剤であればよい。(メタ)アクリル系骨格としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキル;ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコール(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、(メタ)アクリル酸C1-10アルキルなどの(メタ)アクリル酸アルキルと、(ポリ)オキシアルキレングリコール(メタ)アクリレートとの組み合わせが好ましい。
【0061】
(メタ)アクリル系レベリング剤としては、市販の(メタ)アクリル系レベリング剤を使用できる。市販の(メタ)アクリル系レベリング剤としては、ビックケミー・ジャパン(株)製BYKシリーズのレベリング剤(「BYK-350」、「BYK-354」、「BYK-355」、「BYK-356」、「BYK-358N」、「BYK-361N」、「BYK-381」、「BYK-392」、「BYK-394」、「BYK-399」、「BYK-3440」、「BYK-3441」など)、楠本化成(株)製ディスパロンシリーズのレベリング剤(「ディスパロン1970」、「ディスパロン230」、「ディスパロン230HF」、「ディスパロンLF-1980」、「ディスパロンLF-1980」、「ディスパロンLF-1982」、「ディスパロンLF-1983」、「ディスパロンLF-1984」、「ディスパロンLF-1985」、「ディスパロンUVX-35」、「ディスパロンUVX-36」など)などが例示できる。
【0062】
これらのうち、反射防止層との濡れ性に優れる点から、(メタ)アクリル系レベリング剤が特に好ましい。
【0063】
表面調整剤の割合は、中間層用硬化性樹脂100質量部に対して、例えば1~500質量部、好ましくは10~300質量部、さらに好ましくは20~200質量部、より好ましくは30~150質量部、最も好ましくは50~100質量部である。表面調整剤の割合が少なすぎると、反射防止層との濡れ性が低下する虞があり、多すぎると、中間層の機械的特性が低下する虞がある。
【0064】
(硬化剤および他の成分)
中間層を形成するための硬化性組成物も、反射防止層の項で例示された硬化剤および他の成分(表面調整剤以外の他の成分)をさらに含んでいてもよい。好ましい態様および割合も反射防止層と同様である。
【0065】
[基材層]
基材層(光透過性基材層または透明基材層)は、透明材料で形成されていればよい。透明材料は、用途に応じて選択でき、ガラスなどの無機材料であってもよく、有機材料であってもよい。無機材料としては、例えば、ガラス、石英、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなどが挙げられる。有機材料としては、例えば、セルロースエステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、(メタ)アクリル系重合体などが例示できる。
【0066】
これらのうち、強度や成形性などの点から、有機材料(透明有機材料)が汎用され、セルロースエステル、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましい。
【0067】
セルロースエステルとしては、セルローストリアセテート(TAC)などのセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセテートC3-4アシレートなどが挙げられる。
【0068】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリアルキレンアリレートなどが挙げられる。
【0069】
ポリカーボネートとしては、例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネートなどのビスフェノール型ポリカーボネートなどが例示できる。
【0070】
これらのうち、機械的特性や透明性、光学的等方性などのバランスに優れる点から、TACなどのセルロースアセテート、PETなどのポリエステルが好ましく、セルロースアセテートが特に好ましい。
【0071】
透明材料(特に、透明有機材料)の割合は、基材層中50質量%以上(例えば50~100質量%)あってもよく、好ましくは80質量%以上(例えば80~99質量%)、さらに好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
【0072】
基材層も、反射防止層の項で例示された他の成分を含んでいてもよい。好ましい態様および割合も反射防止層と同様である。
【0073】
基材層は、1軸または2軸延伸フィルムであってもよいが、低複屈折であり、光学的に等方性に優れる点から、未延伸フィルムであってもよい。
【0074】
基材層は、表面処理(例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾンや紫外線照射処理など)されていてもよく、易接着層を有していてもよい。
【0075】
基材層の厚み(平均厚み)は、例えば5~2000μm、好ましくは15~1000μm、さらに好ましくは20~500μm、より好ましくは30~100μmである。
【0076】
[積層体の特性]
本開示の積層体は、反射防止性に優れるとともに、黄色味が抑制されたニュートラルな色合いを有している。
【0077】
本開示の積層体において、反射光の色度(反射色相)b*の絶対値は、例えば5以下であり、好ましくは3以下(例えば0.05~3)、さらに好ましくは2以下(例えば0.1~2)、より好ましくは1以下(例えば0.2~1)、最も好ましくは0.5以下(例えば0.3~0.5)である。反射光の色度b*が5を超えると、黄色味や青色味が増してくすんで見え、透明性が低下してニュートラルな色合いを維持できない虞がある。
【0078】
本開示の積層体において、反射光の色度(反射色相)a*の絶対値は、例えば10以下であり、好ましくは8以下(例えば0.1~8)、さらに好ましくは5以下(例えば0.3~5)、より好ましくは4以下(例えば0.5~4)、最も好ましくは3以下(例えば1~3)である。反射光の色度a*が10を超えると、赤味色や緑色味が増してくすんで見え、透明性が低下してニュートラルな色合いを維持できない虞がある。
【0079】
本開示の積層体において、透過光の色度(透過色相)b*の絶対値は、例えば5以下であり、好ましくは4以下(例えば0.05~4)、さらに好ましくは3以下(例えば0.1~3)、より好ましくは2以下(例えば0.2~2)、最も好ましくは1.5以下(例えば0.3~1.5)である。透過光の色度b*が5を超えると、黄色味や青色味が増してくすんで見え、透明性が低下してニュートラルな色合いを維持できない虞がある。
【0080】
本開示の積層体において、透過光の色度(透過色相)a*の絶対値は、例えば3以下であり、好ましくは1以下(例えば0.02~1)、さらに好ましくは0.5以下(例えば0.03~0.5)、より好ましくは0.3以下(例えば0.05~0.3)、最も好ましくは0.2以下(例えば0.1~0.2)である。透過光の色度a*が3を超えると、赤味色や緑色味が増してくすんで見え、透明性が低下してニュートラルな色合いを維持できない虞がある。
【0081】
本開示の積層体において、明度L*は、例えば50以下であり、好ましくは40以下(例えば1~40)、さらに好ましくは30以下(例えば3~30)、より好ましくは20以下(例えば5~20)、最も好ましくは15以下(例えば10~15)である。明度L*が大きすぎると、反射防止性を維持できない虞がある。
【0082】
本開示の積層体において、視感反射率Y(%)は、例えば5%以下(例えば0~5%)であってもよく、好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、より好ましくは2.5%以下、最も好ましくは2%以下である。視感反射率Yが大きすぎると、反射防止性が低下する虞がある。
【0083】
なお、本開示において、反射色相b*、透過色相b*、反射色相a*、透過色相a*、明度L*および視感反射率Yは、JIS Z8781に準拠して、分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製「U-3010」)を用いて測定できる。
【0084】
本開示の積層体の透過像鮮明度(IC)は、0.5mm幅の光学櫛を使用した場合、80%以上であってもよく、例えば80~99%、好ましくは85~98%、さらに好ましくは90~97%、より好ましくは92~96%、最も好ましくは93~95%である。透過像鮮明度が小さすぎると、視認性が低下する虞がある。
【0085】
なお、本開示において、透過像鮮明度は、JIS K7374に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0086】
本開示の積層体のヘイズは、例えば10%以下であってもよく、例えば0.01~5%、好ましくは0.03~3%、さらに好ましくは0.05~1%、より好ましくは0.1~0.8%、最も好ましくは0.15~0.5%である。ヘイズが大きすぎると、視認性が低下する虞がある。
【0087】
なお、本開示において、ヘイズは、JIS K7136に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0088】
本開示の積層体は、透明性に優れている。前記光学積層体の全光線透過率は、例えば70%以上であってもよく、例えば70~100%、好ましくは90~99%、さらに好ましくは92~98%、より好ましくは93~97%である。全光線透過率が低すぎると、透明性が低下する虞がある。
【0089】
なお、本開示において、全光線透過率は、JIS K7361に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0090】
本開示の積層体の厚み(平均厚み)は、例えば3~2000μm、好ましくは5~1000μm、さらに好ましくは10~500μmである。
【0091】
[積層体の製造方法]
本開示の積層体の製造方法としては、中間層の上に反射防止層を積層する反射防止層形成工程を含んでいればよいが、生産性を向上できる点から、前記反射防止層形成工程において、銀ナノ粒子を含む硬化性組成物を湿式コーティングするのが好ましい。
【0092】
前記硬化性組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、硬化性組成物が銀ナノ粒子に加えて、フッ素非含有硬化性樹脂と、無機フィラーおよび/またはフッ素含有化合物とをさらに含む場合、少なくとも固形分を均一に溶解または分散できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類[メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1-メトキシ-2-プロパノール)など]、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが例示できる。また、溶媒は混合溶媒であってもよい。これらの溶媒のうち、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン類、イソプロパノールなどのアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのセロソルブ類が好ましく、脂肪族ケトン類、イソプロパノールなどのアルコール類およびセロソルブ類からなる群より選択された二種以上の組み合わせ(例えば、脂肪族ケトン類とアルコール類との組み合わせ、脂肪族ケトン類とセロソルブ類との組み合わせ、脂肪族ケトン類とアルコール類とセロソルブ類との組み合わせ)が特に好ましい。
【0093】
前記硬化性組成物中の溶質(銀ナノ粒子、フッ素非含有硬化性樹脂と、無機フィラーおよび/またはフッ素含有化合物、その他添加剤)の濃度は、流延性やコーティング性などを損なわない範囲で選択でき、例えば0.1~30質量%、好ましくは0.3~20質量%、さらに好ましくは0.5~10質量%、最も好ましくは1~5質量%である。
【0094】
塗布方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、バーコーター法やグラビアコーター法などが汎用される。なお、必要であれば、塗布液は複数回に亘り塗布してもよい。
【0095】
前記硬化性組成物を流延または塗布した後、乾燥させて溶媒を蒸発させてもよい。乾燥は、自然乾燥であってもよいが、溶媒の沸点に応じて、例えば30~200℃、好ましくは50~150℃、さらに好ましくは80~120℃の温度で乾燥させてもよい。
【0096】
得られた積層体は、フッ素非含有硬化性樹脂が光硬化性樹脂である場合、光照射して硬化させることにより反射防止層が得られる。光照射は、光硬化性樹脂の種類などに応じて選択でき、通常、紫外線、電子線などが利用できる。汎用的な光源は、通常、紫外線照射装置である。
【0097】
光源としては、例えば、紫外線の場合は、Deep UV ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム-カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを利用できる。照射光量(積算光量としての照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なり、例えば10~10000mJ/cm2、好ましくは20~5000mJ/cm2、さらに好ましくは30~3000mJ/cm2である。光照射は、必要であれば、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0098】
本開示の積層体の製造方法としては、基材層の上に中間層を積層する中間層形成工程をさらに含んでいてもよい。中間層形成工程において、中間層を積層する方法としては、慣用の方法を利用でき、中間層を形成する組成物を溶媒に溶解または分散した塗工液を塗布して乾燥する方法を利用でき、前記組成物が硬化性樹脂を含む場合は、反射防止層と同様の方法で乾燥後に硬化することができる。塗布方法は、好ましい態様も含め、反射防止層形成工程と同様である。
【0099】
溶媒としては、前記反射防止層形成工程で用いられる溶媒を利用できる。前記溶媒のうち、メチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン類が好ましい。乾燥温度は、例えば30~200℃、好ましくは50~120℃、さらに好ましくは60~100℃である。
【0100】
中間層を形成するための組成物中の溶質(樹脂成分、表面調整剤など)の濃度は、流延性やコーティング性などを損なわない範囲で1~90質量%程度の範囲から選択でき、例えば5~80質量%、好ましくは10~70質量%、さらに好ましくは20~60質量%、より好ましくは30~50質量%である。
【実施例0101】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例および比較例で用いた原料およびフィルムの詳細ならびにコート液の調製方法は以下の通りであり、実施例および比較例で得られた光学積層体は以下の方法で評価した。
【0102】
[原料]
ハードコート液:日本化工塗料(株)製「FC-3201」、固形分46質量%
アクリル系レベリング剤:BYK社製「BYK399」
反射防止コート液:日揮触媒化成(株)製「ELCOM P-5063」、固形分3質量%
多官能アクリレート:ペンタエリスリトールトリおよびテトラアクリレート、ダイセルオルネクス(株)製「PETRA」
フッ素含有硬化性化合物溶液:信越化学工業(株)製「KY-1203」、固形分20質量%
銀ナノインク:(株)ダイセル製「Picosil DNS-0163I」。
【0103】
[フィルム]
セルローストリアセテート(TAC)フィルム:富士フイルム(株)製「フジタックTG60UL」、厚み60μm。
【0104】
[ハードコート層および反射防止層の厚み]
光学式膜厚計を用いて、各積層体試料における任意の10箇所を測定し、平均値を算出した。
【0105】
[ヘイズ]
ヘイズメーター(日本電色(株)製「NDH-5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠し、反射防止層表面が受光器側となるように配置して、各積層体試料のヘイズを測定した。
【0106】
[全光線透過率]
JIS K7361に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製「NDH5000W」)を用いて、各積層体試料の全光線透過率を測定した。
【0107】
[透過像鮮明度(IC)]
写像測定器(スガ試験機(株)製「ICM-1T」)を用いて、JIS K7374に準拠し、各積層体試料の透過像鮮明度を測定した。写像測定器の光学櫛のうち、0.5mm幅の光学櫛における透過像鮮明度を測定した。
【0108】
[透過色相(a*b*)]
JIS Z8781に準拠して、分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製「U-3010」)を用いて、各積層体試料の透過色相を測定した。
【0109】
[反射色相(L*a*b*)および視感反射率(Y)]
JIS Z8722に準拠して分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製「U-3900H」)を用いて、各積層体試料の反射色相および視感反射率を測定した。各積層体試料は反射防止層の反対面を市販の黒色アクリル板に光学糊で貼り付け、裏面からの反射ができるだけ影響しないようにしたものを測定した。
【0110】
[抗菌性]
JIS Z2801:2012に基づき、黄色ブドウ球菌および大腸菌の抗菌活性値を測定した。各積層体試料の反射防止層表面の抗菌性測定の結果、未加工品に対する抗菌加工品の抗菌活性値が2.0以上の試料について、抗菌性を有するとした。
【0111】
参考例1
(クリアハードコート液の調製)
ハードコート液100質量部、メチルエチルケトン50質量部、アクリル系レベリング剤40質量部を混合し、クリアハードコート液を調製した。
【0112】
(クリアハードコート液の塗工)
得られたクリアハードコート液を、ワイヤーバー(#16)を用いて、TACフィルム上に流延した後、80℃のオーブン内に1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚み約6μmのハードコート層を形成した。高圧水銀ランプにより紫外線をハードコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理し、ハードコートフィルムを得た。
【0113】
(非抗菌反射防止コート液の調製)
反射防止コート液100質量部、メチルイソブチルケトン24.72質量部、イソプロパノール6.18質量部、多官能アクリレート1.50質量部、フッ素含有硬化性化合物溶液0.82質量部0.02質量部を混合し、非抗菌反射防止コート液を調製した。
【0114】
(非抗菌反射防止コート液の塗工)
得られた抗菌反射防止コート液を用いて、ハードコートフィルムのハードコート層の上に流延した後、80℃のオーブン内に1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚み約100nmの非抗菌反射防止層を形成した。高圧水銀ランプにより紫外線をハードコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理し、積層体(銀含有量0質量%)を得た。
【0115】
実施例1
(抗菌反射防止コート液の調製)
反射防止コート液100質量部、メチルイソブチルケトン25.03質量部、イソプロパノール6.26質量部、多官能アクリレート1.50質量部、フッ素含有硬化性化合物溶液0.82質量部、銀ナノインク0.02質量部を混合し、抗菌反射防止コート液を調製した。
【0116】
(抗菌反射防止コート液の塗工)
得られた抗菌反射防止コート液を用いて、参考例1と同様の方法で得られたハードコートフィルムのハードコート層の上に流延した後、80℃のオーブン内に1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚み約100nmの抗菌反射防止層を形成した。高圧水銀ランプにより紫外線をハードコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理し、積層体(銀含有量0.3質量%)を得た。
【0117】
実施例2
(抗菌反射防止コート液の調製)
反射防止コート液100質量部、メチルイソブチルケトン25.73質量部、イソプロパノール6.43質量部、多官能アクリレート1.50質量部、フッ素含有硬化性化合物溶液0.82質量部、銀ナノインク0.07質量部を混合し、抗菌反射防止コート液を調製した。
【0118】
(抗菌反射防止コート液の塗工)
得られた抗菌反射防止コート液を用いて、参考例1と同様の方法で得られたハードコートフィルムのハードコート層の上に流延した後、80℃のオーブン内に1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚み約100nmの抗菌反射防止層を形成した。高圧水銀ランプにより紫外線をハードコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理し、積層体(銀含有量1質量%)を得た。
【0119】
実施例3
(抗菌反射防止コート液の調製)
反射防止コート液100質量部、メチルイソブチルケトン27.75質量部、イソプロパノール6.94質量部、多官能アクリレート1.50質量部、フッ素含有硬化性化合物溶液0.82質量部、銀ナノインク0.21質量部を混合し、抗菌反射防止コート液を調製した。
【0120】
(抗菌反射防止コート液の塗工)
得られた抗菌反射防止コート液を用いて、参考例1と同様の方法で得られたハードコートフィルムのハードコート層の上に流延した後、80℃のオーブン内に1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚み約100nmの抗菌反射防止層を形成した。高圧水銀ランプにより紫外線をハードコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理し、積層体(銀含有量3質量%)を得た。
【0121】
参考例および実施例で得られた積層体の光学特性評価した結果を表1に示す。
【0122】
【0123】
さらに、実施例で得られた積層体は抗菌性を評価した結果、いずれの積層体も抗菌性を有していた。そのため、表1の結果から明らかなように、実施例で得られた積層体は、抗菌性を有するとともに、銀を含有しない参考例1と同様に、透明性に優れ、黄色味が抑制されたニュートラルな色合いを有していた。
本開示の積層体は、反射防止性を要求される用途、例えば、建材や自動車の窓ガラス、表示装置のディスプレイなどに利用できる。なかでも、液晶表示装置(LCD)、陰極管表示装置、有機または無機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)、リアプロジェクションテレビディスプレイなどの表示装置の表面に利用される反射防止フィルムとして好適に利用でき、特に、高精細な画像が要求される用途、例えば、ゲーム機器、スマートフォン、パーソナルコンピュータ(PC)(タブレットPC、ノート型またはラップトップ型PC、デスクトップ型PCなど)、ペンタブレットなどのコンピュータ用ポインティングデバイス、テレビなどの表示装置に特に好適である。