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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129029
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】大梁と小梁の接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20230907BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
E04B1/58 506F
E04B1/58 505G
E04B1/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033773
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】永峰 頌子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 文久
(72)【発明者】
【氏名】西 拓馬
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA13
2E125AB01
2E125AC15
2E125AF03
2E125AG03
2E125AG04
2E125AG12
2E125AG41
2E125AG57
2E125AG59
2E125BA55
2E125BB02
2E125BB22
2E125BD01
2E125BE02
2E125BE08
2E125BF01
2E125CA05
2E125CA14
2E125CA90
(57)【要約】
【課題】小梁を支持するリブの厚みが大梁と小梁の梁せいにより影響を受けず、リブの座屈の恐れがない大梁と小梁の接合構造を提供すること。
【解決手段】大梁10と小梁20の接合構造100であり、第1上フランジ12と第2上フランジ22の双方の上面12a,22aが面一であり、双方の上面12a,22aに跨がるスプライスプレート30に対して、第1上フランジ12と第2上フランジ22がボルト接合されており、第1ウェブ11の一部と第1下フランジ13に対して溶接接合もしくはボルト接合されるリブ41と、リブ41の上端に溶接接合されてリブ41に直交する方向に広がる受けプレート45とを備える受け材40の受けプレート45と、第2下フランジ23とがボルト接合され、第2下フランジ23の端部23aが、第1下フランジ13の幅Bの内部に位置決めされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ウェブと、第1上フランジと、第1下フランジとを備える大梁と、第2ウェブと、第2上フランジと、第2下フランジとを備え、該大梁に直交する小梁との接合構造であって、
前記第1上フランジと前記第2上フランジの双方の上面が面一であり、双方の上面に跨がるスプライスプレートに対して、該第1上フランジと該第2上フランジがボルト接合されており、
前記第1ウェブの一部と前記第1下フランジに対して溶接接合もしくはボルト接合されるリブと、該リブの上端に溶接接合されて該リブに直交する方向に広がる受けプレートと、を備える受け材の該受けプレートと、前記第2下フランジとがボルト接合されており、
前記第2下フランジの端部が、前記第1下フランジの幅の内部に位置決めされていることを特徴とする、大梁と小梁の接合構造。
【請求項2】
第1ウェブと、第1上フランジと、第1下フランジとを備える大梁と、第2ウェブと、第2上フランジと、第2下フランジとを備え、該大梁に直交する小梁とを有し、該大梁の左右に該小梁が接合される、大梁と小梁の接合構造であって、
前記第1上フランジと左右の前記第2上フランジのそれぞれの上面が面一であり、左右の該第2上フランジの上面にスプライスプレートが跨がり、該スプライスプレートは左右の該第2上フランジとボルト接合されており、
前記第1ウェブの一部と前記第1下フランジに対して溶接接合もしくはボルト接合されるリブと、該リブの上端に溶接接合されて該リブに直交する方向に広がる受けプレートと、を備える受け材の該受けプレートと、前記第2下フランジとがボルト接合されており、
前記第2下フランジの端部が、前記第1下フランジの幅の内部に位置決めされていることを特徴とする、大梁と小梁の接合構造。
【請求項3】
前記第2下フランジの端部は、前記第2上フランジの端部よりも前記第1ウェブに近接しており、
前記第2ウェブの端部が、第2上フランジとの接続箇所から前記第2下フランジとの接続箇所に向かって傾斜していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の大梁と小梁の接合構造。
【請求項4】
前記第2ウェブの上方の端部に収容溝が設けられ、該収容溝によりセットバックした位置に前記第2上フランジの端部が位置決めされ、前記第2ウェブの端部は前記第1ウェブに平行であり、
前記収容溝に前記第1上フランジの端部が収容されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の大梁と小梁の接合構造。
【請求項5】
前記第2ウェブは、その上方の端部に、前記第1ウェブに平行な垂直落ち込み部を備え、該垂直落ち込み部からその下方の端部に向かって前記第1ウェブ側へ傾斜する傾斜部を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の大梁と小梁の接合構造。
【請求項6】
前記リブが、第3ウェブと第3フランジを有するCT形鋼もしくはプレートの組立てユニットにより形成され、
前記第3フランジが前記第1ウェブもしくは前記第1下フランジにボルト接合されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の大梁と小梁の接合構造。
【請求項7】
前記第1上フランジと前記スプライスプレートがボルト接合されていないことを特徴とする、請求項2,請求項2に従属する請求項3乃至6のいずれか一項に記載の大梁と小梁の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大梁と小梁の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨造の建物では、大梁に対して小梁が接合されることにより、各階の床架構が形成される。大梁は、鉄骨柱に接合されて地震や風、床荷重等を負担する梁であり、小梁は、柱に対して直接接合されずに大梁に接合され、主に床荷重を支持して大梁に荷重を伝達する梁である。鉄骨柱に対して大梁は例えば剛接合され、大梁に対してその一方側もしくは両側から直交する小梁がピン接合されることにより、柱と大梁、小梁のそれぞれの部材が相互に接合される。
【0003】
大梁に対する小梁の接合は一般に、大梁のフランジとウェブに対してブラケットやガセットプレートを溶接接合しておき、ブラケット等と小梁をスプライスプレートを介して高力ボルトにてボルト接合することにより行われる。ここで、ブラケットは、小梁と同寸法の形鋼材(H形鋼等)により形成され、大梁の例えば上フランジやウェブに対して溶接接合される。このように大梁に対してブラケットを接合するに際して、ブラケットの端部を大梁のフランジやウェブに当接するように加工する必要があり、この複雑な端部加工には手間と時間を要するといった課題がある。さらに、大梁と小梁の標準的な継手(標準継手)では、ブラケットの長さが長くなる傾向にあり(例えば柱芯から1m以上)、大梁の同一箇所の左右にブラケットが接合される場合も往々にしてあり、通常は工場にて大梁とブラケットを溶接接合した上でこのユニットを現場搬送することから、運搬効率が極めて悪いといった課題もある。
【0004】
ここで、特許文献1には、上記するブラケットを不要とした大梁と小梁の接合構造が提案されている。具体的には、小梁の上フランジは、大梁の上フランジの上面に重ねてボルト接合された上側接合プレートにおいて、大梁の上フランジから側方に突出する部分の下面にボルト接合され、小梁の下フランジは、大梁のウェブに溶接されてウェブから側方に突出する下側接合プレートの上面に重ねてボルト接合され、下側接合プレートは、大梁に接合されたリブ部材に下面が接合して補強され、リブ部材は平板状のプレートであり、大梁のウェブおよび下フランジに溶接により接合されて下側接合プレートの幅方向の中間に位置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6266269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の大梁と小梁の接合構造によれば、大梁に溶接接合されるブラケットを不要にできることから、上記するブラケットを備える接合構造の内包する様々な課題を解消することができる。その一方で、小梁と下側接合プレートから作用するせん断力をリブ部材のせん断抵抗力のみで処理することになるため、例えば大梁と小梁の段差が小さくなってリブ部材の高さが低くなるに従い、リブ部材の厚みを厚くする必要があり、従って大梁と小梁の段差が小さい場合は現実的な接合構造となり難い。また、ブラケットが存在しないことから小梁による一面せん断となるため、ブラケットと小梁を接合する標準継手と比較した際に、小梁の上フランジとスプライスプレートを繋ぐボルトや、小梁の下フランジと下側接合プレートを繋ぐボルトの本数の総計が増加する傾向にあり、所定のボルトピッチで各ボルトを配置することからリブ部材の長さも自ずと長くなるため、リブ部材に座屈が生じ易くなる恐れもある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、大梁と小梁の接合に際して、ブラケットを不要にしながら、小梁を支持するリブの厚みが大梁と小梁の梁せいにより影響を受けず、リブの座屈の恐れがない大梁と小梁の接合構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による大梁と小梁の接合構造の一態様は、
第1ウェブと、第1上フランジと、第1下フランジとを備える大梁と、第2ウェブと、第2上フランジと、第2下フランジとを備え、該大梁に直交する小梁との接合構造であって、
前記第1上フランジと前記第2上フランジの双方の上面が面一であり、双方の上面に跨がるスプライスプレートに対して、該第1上フランジと該第2上フランジがボルト接合されており、
前記第1ウェブの一部と前記第1下フランジに対して溶接接合もしくはボルト接合されるリブと、該リブの上端に溶接接合されて該リブに直交する方向に広がる受けプレートと、を備える受け材の該受けプレートと、前記第2下フランジとがボルト接合されており、
前記第2下フランジの端部が、前記第1下フランジの幅の内部に位置決めされていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、大梁の第1ウェブの一部と第1下フランジに対してリブが溶接接合もしくはボルト接合され、リブの上端に受けプレートが溶接接合され、受けプレートと小梁の第2下フランジとがボルト接合されるとともに、小梁の第2下フランジの端部が大梁の第1下フランジの幅の内部に位置決めされていることにより、小梁から作用するせん断力に対してリブは支圧抵抗力により対抗することが可能になる(せん断抵抗から支圧抵抗への移行)。このことにより、大梁と小梁の段差が小さくなってリブの高さが低い場合でも、リブの厚みを厚くすることなく所望の対抗力を得ることができる。さらに、小梁の第2下フランジの端部が大梁の第1下フランジの幅の内部に位置決めされることで、第2下フランジの長さを可及的に短くでき、このことに付随してリブの長さを短くできることから、リブに生じ得る座屈も解消することができる。
【0010】
また、本発明による大梁と小梁の接合構造の他の態様は、
第1ウェブと、第1上フランジと、第1下フランジとを備える大梁と、第2ウェブと、第2上フランジと、第2下フランジとを備え、該大梁に直交する小梁とを有し、該大梁の左右に該小梁が接合される、大梁と小梁の接合構造であって、
前記第1上フランジと左右の前記第2上フランジのそれぞれの上面が面一であり、左右の該第2上フランジの上面にスプライスプレートが跨がり、該スプライスプレートは左右の該第2上フランジとボルト接合されており、
前記第1ウェブの一部と前記第1下フランジに対して溶接接合もしくはボルト接合されるリブと、該リブの上端に溶接接合されて該リブに直交する方向に広がる受けプレートと、を備える受け材の該受けプレートと、前記第2下フランジとがボルト接合されており、
前記第2下フランジの端部が、前記第1下フランジの幅の内部に位置決めされていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、大梁の左右に小梁がある形態においても、左右の小梁に対応するそれぞれのリブの厚みを厚くすることなく所望の対抗力を得ることができ、リブの長さを短くしてリブに生じ得る座屈を解消することができる。
【0012】
また、本発明による大梁と小梁の接合構造の他の態様において、
前記第2下フランジの端部は、前記第2上フランジの端部よりも前記第1ウェブに近接しており、
前記第2ウェブの端部が、第2上フランジとの接続箇所から前記第2下フランジとの接続箇所に向かって傾斜していることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、第2ウェブの端部が、第2上フランジとの接続箇所から第2下フランジとの接続箇所に向かって傾斜していることにより、小梁におけるシンプルな形状変更にて、第2下フランジの端部を第1下フランジの幅の内部に位置決めすることができる。
【0014】
また、本発明による大梁と小梁の接合構造の他の態様において、
前記第2ウェブの上方の端部に収容溝が設けられ、該収容溝によりセットバックした位置に前記第2上フランジの端部が位置決めされ、前記第2ウェブの端部は前記第1ウェブに平行であり、
前記収容溝に前記第1上フランジの端部が収容されていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、例えば大梁の第1上フランジの張り出し長さに関わらず、小梁の第2ウェブと第2下フランジを大梁の第1ウェブに近接した位置に位置決めすることができる。
【0016】
また、本発明による大梁と小梁の接合構造の他の態様において、
前記第2ウェブは、その上方の端部に、前記第1ウェブに平行な垂直落ち込み部を備え、該垂直落ち込み部からその下方の端部に向かって前記第1ウェブ側へ傾斜する傾斜部を備えていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、第2ウェブが、その上方の端部において第1ウェブに平行な垂直落ち込み部を備え、さらにこの垂直落ち込み部からその下方の端部に向かって第1ウェブ側へ傾斜する傾斜部を備えていることにより、小梁におけるシンプルな形状変更にて、第2下フランジの端部を第1下フランジの幅の内部に位置決めすることができる。
【0018】
また、本発明による大梁と小梁の接合構造の他の態様は、
前記リブが、第3ウェブと第3フランジを有するCT形鋼もしくはプレートの組立てユニットにより形成され、
前記第3フランジが前記第1ウェブもしくは前記第1下フランジにボルト接合されていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、リブがCT形鋼もしくはプレートの組立てユニットにより形成されて、そのフランジ(第3フランジ)が大梁の第1ウェブもしくは第1下フランジにボルト接合されていることにより、リブの剛性を高めることができ、大梁に対するリブの取り付け性が良好になる。
【0020】
また、本発明による大梁と小梁の接合構造の他の態様において、
前記第1上フランジと前記スプライスプレートがボルト接合されていないことを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、大梁の左右に小梁があって、左右の小梁の第2上フランジに対して共通のスプライスプレートがボルト接合されている場合には、左右の第2上フランジからスプライスプレートの左右領域に作用する曲げモーメントが相殺もしくはほぼ相殺されることから、スプライスプレートには片側に偏った曲げモーメントが生じ難い。このことから、大梁の第1上フランジとスプライスプレートのボルト接合を省略する構成とすることで、ボルト本数を可及的に低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明から理解できるように、本発明の大梁と小梁の接合構造によれば、大梁と小梁の接合に際して、ブラケットを不要にしながら、小梁を支持するリブの厚みが大梁と小梁の梁せいにより影響を受けず、リブの座屈の恐れがない大梁と小梁の接合構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を大梁の途中位置から見た側面図である。
図2】第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例の変形例を大梁の途中位置から見た側面図である。
図4】第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例の別の変形例を大梁の途中位置から見た側面図である。
図5】第2実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を大梁の途中位置から見た側面図である。
図6】第3実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を大梁の途中位置から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、各実施形態に係る大梁と小梁の接合構造について添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0025】
[第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造]
はじめに、図1乃至図4を参照して、第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例について説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を大梁の途中位置から見た側面図であり、図2は、第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例の斜視図である。以下、各実施形態の説明では、大梁と、その左右にある梁せいが同一の小梁との接合構造について説明するが、実施形態に係る接合構造はその他、大梁と、その左右いずれか一方にある小梁との接続構造であってもよいし、大梁と、左右にある梁せいの異なる小梁との接合構造であってもよい。
【0026】
図1及び図2に示す接合構造100は、相対的にサイズの大きなH形鋼により形成される大梁10の左右に、大梁10に対して直交する方向に延設するH形鋼により形成される小梁20が配設され、相互に接合されることにより構成される。
【0027】
大梁10は、第1ウェブ11と、第1上フランジ12と、第1下フランジ13を備え、小梁20は、第2ウェブ21と、第2上フランジ22と、第2下フランジ23を備える。
【0028】
第1上フランジ12と第2上フランジ22の双方の上面12a,22aは面一であり、双方の上面12a,22aにスプライスプレート30が跨がり、スプライスプレート30と第1上フランジ12及び第2上フランジ22が複数(図示例は八つ)の高力ボルト35によりボルト接合されている。
【0029】
大梁10の第1ウェブ11の途中位置から第1下フランジ13に亘り、鋼板により形成されるリブ41が溶接部50を介して溶接接合されており、リブ41の上端には、リブ41に直交する方向(例えば水平方向)に延設して鋼板により形成される受けプレート45が、リブ41と第1ウェブ11の双方に溶接接合されている。リブ41と受けプレート45により、受け材40が構成される。ここで、この大梁10とリブ41の溶接をはじめとして各構成部材同士の溶接には、アークスポット溶接やアークスタッド溶接、ガスシールドアーク溶接、プラズマ溶接や、エレクトロスラグ溶接、電子ビーム溶接、レーザービーム溶接など、多様な溶接法が適用できる。また、図示例は、リブ41と受けプレート45の双方が第1ウェブ11に対して溶接接合される形態であるが、例えばリブ41と受けプレート45の双方にエンドプレートが溶接接合され、エンドプレートと第1ウェブ11がボルト接合される形態等であってもよい。
【0030】
図1に示すように、リブ41の正面視形状は台形(もしくは略台形)であり、第1下フランジ13との当接端面から上方の受けプレート45との当接端面に向かって、末広がりにテーパー状に傾斜している。
【0031】
受けプレート45の上面に小梁20の第2下フランジ23が載置され、複数(図示例は計八つ)の高力ボルト35によりボルト接合されている。
【0032】
図1に示すように、小梁20の第2ウェブ21の端部21aは、第2上フランジ22との接続箇所から第2下フランジ23との接続箇所に向かって傾斜している。より詳細には、図示例は、第2上フランジ22の端面と第2下フランジ23の端面が、端部21aと同様に傾斜しており、従って小梁20の第1ウェブ11に対向する端面の全域が傾斜している。
【0033】
このように、少なくとも第2ウェブ21の端部21aが下方に向かって第1ウェブ11に近接する態様で傾斜していることにより、第2下フランジ23の端部23aが、第1下フランジ13の幅B(フランジの片側の幅B)の内部に位置決めされる。
【0034】
このように、小梁20の第2下フランジ23の端部23aが大梁10の第1下フランジ13の幅Bの内部に位置決めされることにより、小梁20から作用するせん断力Sに対してリブ41は支圧抵抗力qにより対抗することが可能になる。このことにより、仮に大梁10と小梁20の段差が小さくなってリブ41の高さが低い場合でも、リブ41の厚みを厚くすることなく所望の対抗力(支圧抵抗力)を得ることができる。
【0035】
さらに、小梁20の第2下フランジ23の端部23aが大梁10の第1下フランジ13の幅Bの内部に位置決めされることで、リブ41の上辺の長さtを可及的に短くすることができる。すなわち、受けプレート45と第2下フランジ23のボルト接合には、設計上必要となる本数の高力ボルト35が配設され、各高力ボルト35の間には所定のボルトピッチが必要になることから、受けプレート45の長さはこの高力ボルト35の本数により決定される。従って、仮に小梁の端部が従来一般の構造のように鉛直に延びている形態では、第1ウェブ11に最も近い高力ボルト35の位置は図1に示す例よりも第1ウェブ11から離れた位置となり、そこからさらに三本の高力ボルト35が所定のボルトピッチを持って配設され、第1ウェブ11から最も離れた位置にある高力ボルト35からへりあきを確保した位置に受けプレートの端部とリブの端部がくることになる。従って、リブの長さは図示例のリブ41の長さtに比べて格段に長くなることから、リブに生じ得る座屈が懸念される。
【0036】
これに対して、接合構造100では、小梁20の第2ウェブ21の端部21aが大梁10の第1下フランジ13の幅Bの内部に位置決めされることから、第1ウェブ11に最も近い高力ボルト35の位置を可及的に第1ウェブ11に近接させることができ、このことによって受けプレート45とリブ41の上端の長さtを可及的に短くできる。リブ41の長さtが短くなることで、リブ41に生じ得る座屈を解消することが可能になる。
【0037】
また、大梁10の左右にあるそれぞれの小梁20には、各小梁20の自重や各小梁20が支持する床荷重等に起因する曲げモーメントMが作用し、曲げモーメントMはボルト接合されているスプライスプレート30に伝達される。各小梁20が同程度の長さであり、設計上の床荷重等が同程度である場合は、スプライスプレート30の左右には反対向きで同程度の大きさの曲げモーメントMが作用することから、これらの曲げモーメントMは相互に相殺されることになる。従って、接合構造100では、大梁10の第1上フランジ12とスプライスプレート30とのボルト接合を省略する構成を適用でき、このことにより高力ボルトの本数を低減することが可能になる。
【0038】
次に、図3図4を参照して、第1実施形態に係る接合構造100の変形例について説明する。ここで、図3図4はいずれも、第1実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例の変形例を大梁の途中位置から見た側面図である。
【0039】
図3に示す接合構造100Aと図4に示す接合構造100Bは、CT形鋼により形成されるリブ42を備えた受け材40Aを有する点において、接合構造100と相違する。リブ42は、第3ウェブ43と第3フランジ44を備えている。ここで、リブ42は、CT形鋼の他にも、平鋼等のプレートが相互に組立てられた(接合された)、組立てユニットにより形成されてもよい。
【0040】
接合構造100Aは、大梁10の第1下フランジ13と第3フランジ44が高力ボルト35によりボルト接合される。
【0041】
一方、接合構造100Bは、大梁10の第1ウェブ11と第3フランジ44が高力ボルト35によりボルト接合される。。
【0042】
接合構造100A,100Bともに、リブ42がCT形鋼により形成されて、その第3フランジ44が大梁10の第1ウェブ11もしくは第1下フランジ13にボルト接合されていることにより、リブ42の剛性を高めることができ、大梁10に対するリブ42の取り付け性が良好になる。ここで、図示を省略するが、リブが、接合構造100A,100Bの双方の第3フランジ44を有する形態、すなわち、第1下フランジ13と第1ウェブ11にそれぞれボルト接合される二つの第3フランジ44と、第3ウェブ43とを有する形態が適用されてもよい。
【0043】
[第2実施形態に係る大梁と小梁の接合構造]
次に、図5を参照して、第2実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例について説明する。ここで、図5は、第2実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を大梁の途中位置から見た側面図である。
【0044】
接合構造100Cは、小梁20の大梁10に対向する端面の形態が接合構造100と相違する。
【0045】
小梁20の端部21bは、第2上フランジ22の端部から第2ウェブ21の端部の上方に亘って設けられている、第1ウェブ11に平行な垂直落ち込み部21cと、垂直落ち込み部21cからその下方と第2下フランジ23の端部に亘って設けられている、第1ウェブ11側へ傾斜する傾斜部21dとを備えている。
【0046】
接合構造100Cによっても、第2下フランジ23の端部23aを第1下フランジ13の幅Bの内部に位置決めすることができ、図1に示すように、小梁20から作用するせん断力Sに対してリブ41は支圧抵抗力qにより対抗することが可能になり、仮に大梁10と小梁20の段差が小さくなってリブ41の高さが低い場合でも、リブ41の厚みを厚くすることなく所望の対抗力を得ることができる。ここで、接合構造100Cにおいても、接合構造100A,100Bと同様に、CT形鋼やプレートの組立てユニットにより形成されるリブ42が適用されてもよい。
【0047】
[第3実施形態に係る大梁と小梁の接合構造]
次に、図6を参照して、第3実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例について説明する。ここで、図6は、第3実施形態に係る大梁と小梁の接合構造の一例を大梁の途中位置から見た側面図である。
【0048】
接合構造100Dは、小梁20の大梁10に対向する端面の形態が接合構造100,100Cと相違する。
【0049】
小梁20の端部21eは、第2上フランジ22の端部から第2ウェブ21の端部の上方に亘って設けられている、収容溝21fを備えており、収容溝21fに第1上フランジ12の端部が収容されている。収容溝21fにより、第2上フランジ22の端部は端部21eの一般部よりもセットバックした位置に位置決めされる。
【0050】
接合構造100Dによっても、第2下フランジ23の端部23aを第1下フランジ13の幅Bの内部に位置決めすることができ、図1に示すように、小梁20から作用するせん断力Sに対してリブ41は支圧抵抗力qにより対抗することが可能になり、仮に大梁10と小梁20の段差が小さくなってリブ41の高さが低い場合でも、リブ41の厚みを厚くすることなく所望の対抗力を得ることができる。ここで、接合構造100Dにおいても、接合構造100A,100Bと同様に、CT形鋼により形成されるリブ42が適用されてもよい。
【0051】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0052】
10:大梁
11:第1ウェブ
12:第1上フランジ
12a:上面
13:第1下フランジ
20:小梁
21:第2ウェブ
21a:端部(傾斜部)
21b:端部
21c:垂直落ち込み部
21d:傾斜部
21e:端部
21f:収容溝
22:第2上フランジ
23:第2下フランジ
23a:端部
30:スプライスプレート
35:ボルト(高力ボルト)
40,40A:受け材
41:リブ
42:CT形鋼(リブ)
43:第3ウェブ
44:第3フランジ
45:受けプレート
50:溶接部
100,100A,100B,100C,100D:大梁と小梁の接合構造(接合構造)
S:せん断力
M:曲げモーメント
q:支圧抵抗力
B:幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6