(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129034
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】樹脂ペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 9/06 20060101AFI20230907BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20230907BHJP
C08F 8/16 20060101ALI20230907BHJP
B29B 7/84 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B29B9/06
C08F20/10
C08F8/16
B29B7/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033786
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平間 進
(72)【発明者】
【氏名】寒川 陽平
【テーマコード(参考)】
4F201
4J100
【Fターム(参考)】
4F201AA21
4F201BA02
4F201BC01
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK36
4F201BK73
4F201BL08
4F201BL29
4F201BL50
4J100AL03P
4J100AL29Q
4J100BC53H
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA25
4J100DA42
4J100FA03
4J100FA19
4J100GC26
4J100HA17
4J100HC75
4J100HE14
4J100JA28
4J100JA32
(57)【要約】
【課題】本発明は、サイズの均一性が高い樹脂ペレットを製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】単量体を重合させて熱可塑性樹脂を形成する重合工程と、前記重合工程により得た重合物から未反応の前記単量体を含む揮発性成分を脱揮するとともに、前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を押出成形する脱揮及び押出工程とを含む、樹脂ペレットの形成を実質的に同一の条件において2系列以上で行い、前記2系列以上で形成した樹脂ペレットを混合する混合工程を含む、樹脂ペレットの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体を重合させて熱可塑性樹脂を形成する重合工程と、
前記重合工程により得た重合物から未反応の前記単量体を含む揮発性成分を脱揮するとともに、前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を押出成形する脱揮及び押出工程とを含む、樹脂ペレットの形成を実質的に同一の条件において2系列以上で行い、
前記2系列以上で形成した樹脂ペレットを混合する混合工程を含む、樹脂ペレットの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂ペレットを構成する熱可塑性樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系樹脂が、主鎖に環構造を有する樹脂である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記脱揮及び押出工程よりも前に、環化縮合反応により、前記重合工程で形成した熱可塑性樹脂の主鎖に、環構造を形成する環化工程を含む請求項3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ペレットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂組成物からなる樹脂ペレットは、例えば、溶融状態の樹脂組成物をストランド状に押出し、該ストランドを冷却してストランドカッターで切断するストランドカット方式や、ダイスのノズル孔から押出した溶融状態の樹脂組成物を回転刃で切断し、切断片を冷却するセンターホットカット方式等により製造されている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の1系列のみで形成される樹脂ペレットでは、ペレットのサイズにバラツキが大きいことがあった。また、前記サイズのバラツキが大きい樹脂ペレットを用いてフィルム等の成形体を形成すると、樹脂ペレットのサイズ不均一に起因する成形体の品質低下が発生することもあった。
【0005】
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、サイズの均一性が高い樹脂ペレットを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は、以下の構成からなる。
[1] 単量体を重合させて熱可塑性樹脂を形成する重合工程と、
前記重合工程により得た重合物から未反応の前記単量体を含む揮発性成分を脱揮するとともに、前記熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を押出成形する脱揮及び押出工程とを含む、樹脂ペレットの形成を実質的に同一の条件において2系列以上で行い、
前記2系列以上で形成した樹脂ペレットを混合する混合工程を含む、樹脂ペレットの製造方法。
[2] 前記樹脂ペレットを構成する熱可塑性樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂である[1]に記載の製造方法。
[3] 前記(メタ)アクリル系樹脂が、主鎖に環構造を有する樹脂である[2]に記載の製造方法。
[4] 前記脱揮及び押出工程よりも前に、環化縮合反応により、前記重合工程で形成した熱可塑性樹脂の主鎖に、環構造を形成する環化工程を含む[3]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、サイズのバラツキが低減された樹脂ペレットを得ることができる。また、サイズのバラツキが低減された均一性の高い樹脂ペレットを用いれば、品質が一定な成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
樹脂ペレットのサイズのバラツキについて調査したところ、脱揮工程と押出工程を経て製造される樹脂ペレットにおいて大きくバラツキが生じることが判明した。脱揮工程では、揮発の程度によって溶融樹脂の粘度が変化する。押出しによって製造される樹脂ペレットのサイズも粘度の影響を受け、粘度が変化するとペレットサイズも変化しやすい。こうした脱揮工程と押出工程との組み合わせが、ペレットサイズのバラツキの原因であることを突き止めた。そして、本発明の製造方法では、樹脂ペレットの形成を実質的に同一の条件において2系列以上で行い、前記2系列以上で形成した樹脂ペレットを混合する混合工程を含むようにすると、それぞれの系列のバラツキが合わさることでバラツキに広がりが生じるのではなく、逆にバラツキが狭くなってサイズの均一性が向上した樹脂ペレットを得られることを見出した。ペレットサイズの均一性向上は、例えば、ペレットサイズの標準偏差及び/又は変動係数が低減されていることにより確認できる。樹脂ペレットのサイズが安定していれば、ペレットのサイズ不均一に起因する成形体の品質低下や、生産効率の低下を抑制することもできる。さらに、メルトフローレートが変動しやすい(メタ)アクリル系樹脂を含む樹脂ペレットであっても、2系列以上の樹脂ペレットを混合する混合工程を含む本発明の製造方法によれば、メルトフローレートのバラツキを小さくする(具体的には、標準偏差及び/又は変動係数を低減する)ことも容易である。特に、熱可塑性樹脂の主鎖に環構造を形成する環化工程を有する場合には、環化縮合反応時に揮発性成分が発生することに起因してメルトフローレートのバラツキが大きくなる恐れがあるところ、本発明の製造方法によれば、メルトフローレートが安定な樹脂ペレットを得ることができる。
なお本発明において、実質的に同一の条件において樹脂ペレットの形成を行うとは、同一設計の装置において、同一の処方にて樹脂ペレットを製造することを意味する。この同一条件における樹脂ペレットは、製造装置を洗浄したときや、使用装置を変更したとき等で複数の系列に分かれる。
【0009】
(1)重合工程
重合工程においては、1つ以上の単量体を単独重合、又は共重合して熱可塑性樹脂を形成する重合反応を行う。
単量体の重合は、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合のいずれで行ってもよいが、安全性が高く、異物混入の恐れが低い点で、溶液重合が好ましい。
重合形式としては、バッチ重合であっても、連続重合であってもよい。バッチ式で連続して行う場合、重合反応後に内容物を抜き出して空になった反応釜は、その内部を洗浄することなく、再び次のバッチの原料(単量体等)を仕込み、次の生産を開始してもよい。
【0010】
本発明の重合工程において形成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)等のオレフィン系樹脂;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等のハロゲン含有樹脂;ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド類;セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル系樹脂;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;マレイミド系樹脂;等が挙げられ、耐熱性及び透明性の観点から(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0011】
(メタ)アクリル系樹脂の重合に用いる単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びこれらの誘導体(以下、これらを総称して(メタ)アクリル系モノマーと称する場合がある)が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0012】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキル(好ましくはメタクリル酸C2-20アラルキル);(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸とヒドロキシ環状飽和炭化水素(好ましくは炭素数が5以上20以下のヒドロキシ環状飽和炭化水素)とのエステル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくはメタクリル酸エステルであり、より好ましくはメタクリル酸アルキルであり、さらに好ましくはメタクリル酸C1-10アルキルであり、よりさらに好ましくはメタクリル酸C1-7アルキルであり、特に好ましくはメタクリル酸C1-4アルキルである。
【0013】
(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、ヒドロキシ基導入誘導体、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;α-(1-ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-20アルキルが好ましく、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-15アルキルがより好ましく、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-10アルキルがさらに好ましく、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルがよりさらに好ましい。
α-(1-ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルとしては、α-(1-ヒドロキシC1-20アルキル)アクリル酸C1-20アルキルが好ましく、α-(1-ヒドロキシC1-20アルキル)アクリル酸C1-20アルキルには、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸n-ブチル、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸t-ブチル等のα-(ヒドロキシメチル)アクリル酸C1-20アルキル;α-(1-ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル等のα-(1-ヒドロキシC2-20アルキル)アクリル酸C1-20アルキル等が含まれる。
【0014】
また(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、クロトン酸メチル等のβ-C1-10アルキルアクリル酸C1-10アルキル;(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル等のハロゲン導入誘導体;(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル等のエーテル結合導入誘導体等も含まれる。
【0015】
(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、好ましくはヒドロキシ基導入誘導体であり、より好ましくはα-(1-ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルであり、さらに好ましくはα-(1-ヒドロキシC1-20アルキル)アクリル酸C1-20アルキルであり、よりさらに好ましくはα-(ヒドロキシメチル)アクリル酸C1-20アルキルである。
【0016】
(メタ)アクリル酸誘導体としては、前記メタクリル酸エステル誘導体のエステル結合を加水分解した化合物、例えば、クロトン酸、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2-(1-ヒドロキシエチル)アクリル酸等のα-ヒドロキシアルキルアクリル酸等が含まれる。
【0017】
後述する環化工程を含む場合には、(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシ基導入誘導体を用いることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシ基導入誘導体の使用量は、単量体成分の全量100質量%中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上、よりさらに好ましくは10質量%以上であり、例えば、70質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0018】
(メタ)アクリル系樹脂の重合に用いる(メタ)アクリル系モノマーは、単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルを必須モノマーとして含むのが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル(特にメタクリル酸エステル)を必須モノマーとして含むのがより好ましい。前記必須モノマーの使用量は、単量体成分の全量100質量%中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、よりさらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上であり、例えば、100質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0019】
(メタ)アクリル系樹脂は、前記(メタ)アクリル系モノマーと、さらに(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能な他のモノマーとを共重合して形成してもよい。前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、α-ヒドロキシメチルスチレン、α-ヒドロキシエチルスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル等のマレイン酸系モノマー;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル等のフマル酸系モノマー;N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール等の含窒素複素環系ビニル化合物;α-メチレン-γ-ブチロラクトン、α-メチレン-4-メチル-γ-ブチロラクトン、α-メチレン-3-メチル-γ-ブチロラクトン、α-メチレン-4,4-ジメチル-γ-ブチロラクトン、α-メチレン-δ-バレロラクトン等のラクトン環含有モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;メタリルアルコール、アリルアルコール等のビニルアルコール類;エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン等のオレフィン類;2-ヒドロキシメチル-1-ブテン;メチルビニルケトン;等が挙げられる。他のモノマーとしては、スチレン系モノマー、含窒素複素環系ビニル化合物が好ましく、スチレン系モノマーがより好ましい。他のモノマーは、1種のみを共重合成分として使用してもよく、2種以上を共重合成分として使用してもよい。
【0020】
他のモノマー(特にスチレン系モノマー)の使用量は、単量体成分の全量100質量%中、例えば、0質量%以上、好ましくは1質量%以上であり、例えば、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0021】
後述する環化工程を含まない場合には、他のモノマーとしてマレイン酸系モノマー、マレイミド系モノマー、ラクトン環含有モノマーを用いることが好ましい。他のモノマーとしてマレイン酸系モノマーを用いれば、(メタ)アクリル系樹脂の主鎖に無水マレインに由来する構造を導入することができ、マレイミド系モノマーを用いれば、(メタ)アクリル系樹脂の主鎖にN-置換マレイミドに由来する構造を導入することができ、ラクトン環含有モノマーを用いれば、(メタ)アクリル系樹脂の主鎖にメチレンラクトン環構造を導入することができる。マレイン酸系モノマー、マレイミド系モノマー、及び/又はラクトン環含有モノマーは、1種のみを共重合成分として使用してもよく、2種以上を共重合成分として使用してもよい。
重合工程において、他のモノマーとしてマレイン酸系モノマー、マレイミド系モノマー、及び/又はラクトン環含有モノマーを用いて、(メタ)アクリル系樹脂の主鎖に環構造を含ませる場合には、マレイン酸系モノマー、マレイミド系モノマー、及び/又はラクトン環含有モノマーの使用量は、単量体成分の全量100質量%中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、例えば、70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
なお、本発明において主鎖に環構造を有するとは、環構造を形成する炭素原子の少なくとも1つが、熱可塑性樹脂の主鎖に含まれる態様を示す。
【0022】
前記無水マレイン酸に由来する構造又は前記N-置換マレイミドに由来する構造としては、例えば、下記一般式(1)に示される構造が好ましく挙げられる。なお、下記一般式(1)において、X1が酸素原子である場合には無水マレイン酸に由来する構造となり、X1が窒素原子である場合にはN-置換マレイミドに由来する構造となる。
【0023】
【0024】
上記一般式(1)におけるR1、R2は、互いに独立して、水素原子又はメチル基であり、X1は酸素原子又は窒素原子である。X1が酸素原子であるとき、R3は存在しない。X1が窒素原子のとき、R3は、水素原子、炭素数が1以上6以下の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基又はフェニル基である。
【0025】
前記メチレンラクトン環構造としては、例えば、下記一般式(11)に示される構造が好ましく挙げられる。
【0026】
【0027】
上記一般式(11)におけるR11、R12、R13及びR14は、互いに独立して、水素原子又は炭素数が1以上18以下の炭化水素基であり、Aは-(CR11R12)-と-(CR13R14)-とを結ぶ単結合、又は-(CR15R16)-であり、R15、R16は、互いに独立して、水素原子又は炭素数が1以上18以下の炭化水素基である。
式(11)において、Aが単結合の場合、式(11)に示される構造は5員環のラクトン環構造を有する態様であり、Aが-(CR15R16)-の場合、式(11)に示される構造は6員環のラクトン環構造を有する態様となる。
式(11)における炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数が1以上18以下の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基等)、エテニル基、プロペニル基等の炭素数が2以上18以下の不飽和脂肪族炭化水素基(アルケニル基等)、フェニル基、ナフチル基等の炭素数が6以上18以下の芳香族炭化水素基(アリール基等)が挙げられ、アルキル基が好ましく、炭素数1以上10以下のアルキル基がより好ましい。
【0028】
単量体の重合を溶液重合で行う場合に使用可能な溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。重合溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒が好ましく、より好ましく芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒であり、よりさらに好ましくは芳香族炭化水素系溶媒であり、特に好ましくはトルエンである。これらの重合溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
単量体の重合を溶液重合で行う場合、重合反応液中の単量体成分の合計濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。重合反応における溶媒の使用量としては、重合反応液中の単量体成分の合計濃度が前記範囲内であれば特に限定されない。
【0030】
重合工程においては、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。
【0031】
重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)・二塩酸塩、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)等のアゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシオクトエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート等の有機過酸化物等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水素引き抜き力が強い有機過酸化物を用いることが好ましい。
【0032】
重合開始剤の使用量は、重合速度を高め、未反応の単量体成分の残存量を低減させる観点から、単量体成分の全量に対して、例えば、500ppm以上、好ましくは1000ppm以上、より好ましくは1500ppm以上である。また、重合開始剤の使用量は、単量体成分の全量に対して、例えば、2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下である。
【0033】
重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤;硫酸第一鉄等の遷移金属塩;等の重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
【0034】
重合工程においては、必要に応じて連鎖移動剤を使用してもよい。反応系内に連鎖移動剤を添加することにより、熱可塑性樹脂を低分子量化させることができる。連鎖移動剤としては、有機チオール化合物;四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化合物;α-メチルスチレンダイマー、α-テルピネン、γ-テルピネン、ジペンテン、ターピノーレン等の不飽和炭化水素化合物等が挙げられる。これら連鎖移動剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、転化率の低下を抑制できる点から、1-ドデカンチオール等の有機チオール化合物が好ましい。
【0035】
連鎖移動剤の使用量は、単量体成分の全量に対して、例えば、200ppm以上、好ましくは400ppm以上、より好ましくは500ppm以上であり、例えば、5質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0036】
前述したような単量体、並びに必要に応じて用いる溶媒、重合開始剤、及び連鎖移動剤の添加方法は特に限定されない。その添加方法としては、それぞれ、全量を初期に反応釜に仕込んでもよく、一部を初期に反応釜に仕込み、残部は重合反応中に反応系内(反応釜)へ一括又は継続して添加してもよい。前記継続は連続であってもよく、分割添加等のような断続であってもよいが、連続又は間隔が10分以下の断続であることが好ましく、連続であることがより好ましい。
【0037】
単量体を重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合反応の効率を高める観点から、窒素ガス等の不活性ガスであることが好ましい。
【0038】
単量体を重合させる際の重合温度は、例えば、40℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、重合開始剤を用いる場合には、使用する重合開始剤の10時間半減期温度以上とするのが好ましい。なお10時間半減期温度とは、重合開始剤の半減期が10時間となる温度のことを意味する。また重合温度は、例えば、180℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下であり、溶媒を用いる場合には、使用する溶媒のリフラックス温度以下とするのが好ましい。
【0039】
単量体を重合させる際の重合時間は、特に限定されず、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2~8時間程度である。
【0040】
全ての単量体、及び必要に応じて溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤を添加した後、必要に応じて熟成を行ってもよい。熟成により単量体の転化率がさらに向上する。熟成工程では、適当な温度、例えば、重合温度±30℃程度で(好ましくは重合温度で、又は重合温度以上で)攪拌を継続することが好ましい。熟成の時間は、例えば、0時間以上10時間以下、好ましくは1時間以上5時間以下である。
【0041】
重合反応終了時の単量体の転化率は、例えば、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上である。
【0042】
重合工程により得られる重合物(好ましくは、重合溶液)中の熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、5.0万以上、好ましくは7.0万以上、より好ましくは9.0万以上、さらに好ましくは10.0万以上であり、例えば、30.0万以下、好ましくは25.0万以下、より好ましくは20.0万以下である。熱可塑性樹脂の重量平均分子量が前記範囲内にあることにより、樹脂としての必要な強度を維持しながら、成形時の流動性も良好な樹脂組成物を得ることができる。
【0043】
熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂の場合、重合工程により得られる重合物(好ましくは、重合溶液)中の(メタ)アクリル系樹脂の全構成単位における、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位(すなわち、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びこれらの誘導体に由来する構成単位)の合計含有割合は、透明性の観点から、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは75質量%以上である。上限は特になく、100質量%であってもよい。
なお、(メタ)アクリル系重合体における各構成単位の含有割合は、(メタ)アクリル系重合体を重溶媒に溶解させ、1H-NMRを測定して各構成単位に対応するピーク面積比を算出することで求められる。
【0044】
(2)環化工程
熱可塑性樹脂は、耐熱性の観点から、主鎖に環構造を有していることが好ましい。
熱可塑性樹脂が主鎖に有する環構造としては、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、無水マレイン酸構造、及びN-置換マレイミド構造からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
主鎖に環構造を有する熱可塑性樹脂は、例えば、上記のように重合工程における単量体としてマレイン酸系モノマー、マレイミド系モノマー、及び/又はラクトン環含有モノマーを用いることや、重合反応後に環化縮合反応を行う(環化工程)ことにより形成することができる。
【0045】
環化縮合反応により形成される主鎖環構造としては、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造等が挙げられる。
【0046】
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から形成される樹脂ペレットを用いて光学部材を製造する場合、光学特性に優れる光学部材が得られる点から、熱可塑性樹脂の主鎖環構造としては、好ましくはラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造であり、より好ましくはラクトン環構造である。また耐湿熱性の観点においては、主鎖環構造としては、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、N-置換マレイミドに由来する構造が好ましく、より好ましくはラクトン環構造である。
【0047】
前記ラクトン環構造は、例えば、4員環以上8員環以下であり、環構造の安定性に優れることから5員環又は6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。6員環のラクトン環構造としては、例えば、下記一般式(2)に示される構造が挙げられる。
【0048】
【0049】
上記一般式(2)において、R4、R5及びR6は、互いに独立して、水素原子又は炭素数が1以上20以下の有機残基であり、当該有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
一般式(2)における有機残基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数が1以上20以下の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基等)、エテニル基、プロペニル基等の炭素数が2以上20以下の不飽和脂肪族炭化水素基(アルケニル基等)、フェニル基、ナフチル基等の炭素数が6以上20以下の芳香族炭化水素基(アリール基等)、これら飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基における水素原子の一つ以上が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エーテル基及びエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0050】
ラクトン環構造は、熱可塑性樹脂が有するヒドロキシ基と、エステル基又はカルボキシル基との間で脱アルコール又は脱水環化縮合(環化縮合反応)をすることにより形成できる。このため、環化縮合反応によりラクトン環構造を形成する場合には、前記重合工程において、α-(1-ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキル等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーを単独重合するか、又は前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系モノマーとを共重合して、分子鎖にヒドロキシ基とエステル基又はカルボキシル基とが導入された熱可塑性樹脂を形成することが好ましい。
【0051】
環化縮合反応によりラクトン環構造を熱可塑性樹脂の主鎖に形成する場合、熱可塑性樹脂におけるラクトン環構造の含有割合が、例えば、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、例えば、70質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下となるように環化縮合反応を行うことが好ましい。
【0052】
なお、熱可塑性樹脂におけるラクトン環構造の含有割合は、公知の方法、例えば、核磁気共鳴(1H-NMR)法、及び/又は赤外分光分析(IR)法により評価できる。
【0053】
前記無水グルタル酸構造又は前記グルタルイミド構造としては、例えば、下記一般式(3)に示される構造が挙げられる。なお、下記一般式(3)において、X2が酸素原子である場合には無水グルタル酸構造となり、X2が窒素原子である場合にはグルタルイミド構造となる。
【0054】
【0055】
上記一般式(3)におけるR7、R8は、互いに独立して、水素原子又はメチル基であり、X2は酸素原子又は窒素原子である。X2が酸素原子であるとき、R9は存在せず、X2が窒素原子のとき、R9は、水素原子、炭素数が1以上6以下の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はフェニル基である。
【0056】
無水グルタル酸構造は、熱可塑性樹脂が有するカルボキシル基と、エステル基又は他のカルボキシル基との間で、脱アルコール又は脱水環化縮合(環化縮合反応)をすることにより形成できる。このため、環化縮合反応により無水グルタル酸構造を形成する場合には、前記重合工程において、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリル酸を単独重合するか、或いは(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とを共重合して、分子鎖にカルボキシル基と、エステル基又は他のカルボキシル基とが導入された熱可塑性樹脂を形成することが好ましい。
【0057】
グルタルイミド構造は、熱可塑性樹脂が有するカルボキシル基と、エステル基又は他のカルボキシル基との間で、脱アルコール又は脱水環化縮合(環化縮合反応)をして無水グルタル酸構造を形成した後に、イミド化剤によりイミド化することにより形成できる。イミド化は、環化縮合反応に引き続き行ってもよく、環化縮合反応後に、後述の脱揮及び押出工程をした後に行ってもよいが、環化縮合反応後に、後述の脱揮及び押出工程をした後に行うのが好ましい。
【0058】
イミド化剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-ブチルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン;シクロヘキシルアミン等の炭素数3~12のシクロアルキル基を有するシクロアルキルアミン;アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の炭素数6~10のアリール基を有するアリールアミン等が挙げられる。これらのイミド化剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。イミド化剤としては、得られる樹脂ペレットの透明性の観点から、シクロヘキシルアミン、アニリン、トルイジンが好ましく、アニリンがより好ましい。イミド化剤の使用量は、所望のイミド化率を達成するように適宜調整すればよい。
【0059】
イミド化は、公知の方法で行えばよく、例えば、環化縮合反応をした熱可塑性樹脂を溶媒に溶解し、該溶液にイミド化剤を添加してイミド化する方法や、環化縮合反応をした熱可塑性樹脂を、押出機等を用いて溶融状態としてイミド化剤を添加してイミド化をする方法が挙げられる。イミド化の際の反応温度は、例えば、160℃以上400℃以下である。
【0060】
イミド化の際に用いる溶媒としては、イミド化に対して不活性な溶媒が好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等の脂肪族アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、クロロトルエン等の芳香族系化合物;エーテル系化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0061】
イミド化後は、未反応のイミド化剤を除去することが好ましい。例えば、押出機を用いてイミド化を行った場合には、押出機に、大気圧以下に減圧させることができるベントを設けてイミド化剤を除去することができる。
【0062】
無水グルタル酸構造或いはグルタルイミド構造を熱可塑性樹脂の主鎖に形成する場合、熱可塑性樹脂における無水グルタル酸構造或いはグルタルイミド構造の含有割合が、例えば、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、例えば、70質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下となるように環化縮合反応及び必要に応じてイミド化を行うことが好ましい。
【0063】
なお、熱可塑性樹脂における無水グルタル酸構造及びグルタルイミド構造の含有割合は、公知の方法、例えば、特開2006-131689号公報に記載の手法により求めることができる。
【0064】
環化縮合反応は、溶媒の存在下で行ってもよく、環化縮合反応で使用可能な溶媒としては、前述の重合反応で使用可能な溶媒と同じ種類挙げられ、好ましい態様も同様である。
前記重合反応を溶液重合で行った場合、溶液重合で使用した溶媒を一旦除去した後に新たに溶媒を添加してもよく、溶液重合で使用した溶媒を引き続き環化反応での溶媒として使用してもよいが、生産効率の点から溶液重合で使用した溶媒を引き続き環化反応での溶媒として使用することが好ましい。
【0065】
環化縮合反応液中の熱可塑性樹脂の濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。環化縮合反応における溶媒の使用量としては、環化縮合反応液中の熱可塑性樹脂の濃度が前記範囲内であれば特に限定されない。
【0066】
環化縮合反応は、触媒(環化触媒)の存在下で行うことが好ましい。環化触媒としては、酸、塩基及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。酸、塩基及びそれらの塩は有機物であっても無機物であってもよく、特に限定されない。なかでも、環化反応の触媒としては、有機リン化合物、又はアルカリ金属を有する化合物を用いることが好ましい。有機リン化合物、アルカリ金属を有する化合物を環化触媒として用いることにより、環化縮合反応を効率的に行うことができるとともに、得られる熱可塑性樹脂の着色を低減することができる。
【0067】
環化触媒として用いることができる有機リン化合物としては、例えば、アルキル(アリール)亜ホスホン酸及びこれらのモノエステル又はジエステル;ジアルキル(アリール)ホスフィン酸及びこれらのエステル;アルキル(アリール)ホスホン酸及びこれらのモノエステル又はジエステル;アルキル(アリール)亜ホスフィン酸及びこれらのエステル;亜リン酸モノエステル、ジエステル又はトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2-エチルヘキシル、リン酸オクチル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ-2-エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニル等のリン酸モノエステル、ジエステル又はトリエステル;モノ-、ジ-又はトリ-アルキル(アリール)ホスフィン;アルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化モノ-、ジ-又はトリ-アルキル(アリール)ホスフィン;ハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、触媒活性が高く、着色性が低いことから、リン酸モノエステル又はジエステルが特に好ましい。
【0068】
環化触媒として用いることができるアルカリ金属を有する化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機カルボン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、触媒活性が高く、着色性が低いことから、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムが好ましく、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウムがより好ましい。
【0069】
環化触媒の使用量は、例えば、重合工程で得られた熱可塑性樹脂100質量部に対して0.001質量部以上1質量部以下とすることが好ましい。
【0070】
環化工程の反応温度は、例えば、50℃以上300℃以下であり、反応時間は、例えば、5分間以上6時間以下である。環化工程は、重合反応を行う反応釜で行い、さらにオートクレーブや多管式熱交換器等で環化工程を進行させることが好ましい。
【0071】
(3)脱揮及び押出工程
脱揮とは、溶融状態の樹脂から、溶媒、残存単量体等の揮発性成分を除去する処理をいう。また、環化工程を含む場合には、溶融状態の樹脂から、脱揮処理により環化縮合反応により副生したアルコールも除去される。
脱揮が不十分であると、樹脂組成物中の残存揮発分が多く、成形時に発泡が生じて成形不良となる可能性がある。一方、脱揮した樹脂を溶融状態のまま押出してペレットにすると、ペレットサイズのバラツキが大きくなる。本発明では、2系列以上で形成した樹脂ペレットを混合しており、このことによってペレットサイズのバラツキを抑制できる。
【0072】
脱揮に使用する装置としては、溶融樹脂を扱うことが可能な装置である限り、特に限定されないが、例えば、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる装置、ベント付押出機等が使用できる。
【0073】
脱揮にベント付押出機を用いる場合、押出しを、該押出機により引き続き行うことができる。押出機は、シリンダと、シリンダ内に設けられたスクリューとを有し、加熱手段を備えていることが好ましい。シリンダには、ベントが1つ又は複数設けられていることが好ましく、ベントは、押出機内の移送方向に対して、少なくとも原料投入部の下流側に設けられることがより好ましく、原料投入部の上流側にも設けられてもよい。押出機内に供給された熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を、スクリューで混練しながら押出機の上流側から下流側へ移送される過程で脱揮が進む。
【0074】
脱揮は、例えば、温度150℃以上350℃以下で、減圧度13.3hPa以上(例えば、13.3hPa以上800hPa以下)で減圧して行うことが好ましい。脱揮温度が150℃より低いと、脱揮が不十分となり残存揮発分が多くなるという問題があり、脱揮温度が350℃より高いと、着色や分解が発生するという問題があるため好ましくない。
【0075】
押出しは、例えば、温度200℃以上300℃以下で、圧力10MPa以上20MPa以下で行うことが好ましい。
【0076】
前述の重合工程、環化工程、及び/又は脱揮及び押出工程においては、必要に応じて、公知の各種添加剤を用いることができる。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤;フェノール系酸化防止剤(例えば、ヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、トコフェロール、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等)、リン系酸化防止剤(例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等)、硫黄系酸化防止剤(例えば、2-メルカプトベンズイミダゾール、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート等)等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;位相差上昇剤、位相差低減剤、位相差安定剤等の位相差調整剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;相溶化剤;安定化剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
添加剤の使用量は、特に限定されないが、得られる樹脂組成物の固形分100質量%中における添加剤の含有割合が、好ましくは0質量%以上5質量%以下、より好ましくは0質量%以上2質量%以下の範囲内となるように調整するのがよい。
【0078】
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、例えば、5.0万以上、好ましくは6.0万以上、より好ましくは7.0万以上、さらに好ましくは8.0万以上であり、例えば、30.0万以下、好ましくは25.0万以下、より好ましくは20.0万以下である。樹脂組成物の重量平均分子量が前記範囲内にあることにより、樹脂としての必要な強度を維持しながら、成形時の流動性も良好な樹脂組成物を得ることができる。
【0079】
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物は、耐熱性の観点から、100℃以上にガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。樹脂組成物は、100℃以上にガラス転移温度を複数有していてもよい。樹脂組成物が有するガラス転移温度は、より好ましくは110℃以上であり、さらに好ましくは120℃以上である。成形時の加工性を高める観点からは、樹脂組成物が有するガラス転移温度は、300℃未満が好ましく、200℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましい。
樹脂組成物が有するガラス転移温度は、JIS K7121の規定に準拠して、始点法により求めることができる。
【0080】
(4)切断工程
脱揮及び押出工程後の溶融状態の樹脂組成物を、切断機でペレット形状に切断することにより樹脂ペレットを形成する。切断方式としては、特に限定されず、ストランド状に押出された溶融状態の樹脂組成物を冷却してストランドカッターで切断するストランドカット方式であっても、ノズル孔から押出した溶融状態の樹脂組成物を回転刃で切断するセンターホットカット方式やアンダーウォーターカット方式であってもよい。
【0081】
前記押出工程で用いる押出機の下流側(例えば、シリンダの先端)には、ダイスが設けられていることが好ましく、ダイスのノズル孔から溶融状態の樹脂組成物を所望の形状で押出すことができる。ダイスが有するノズル孔の形状としては特に限定はされず、例えば、円筒形状であることが好ましい。ダイスが有するノズル孔の数は、1以上であればよく、例えば100以上であってもよい。ダイスが有するノズル孔の孔径は、例えば円筒形状の場合には、直径1mm以上10mm以下とすることができる。
またダイスには、ポリマーフィルタが設けられていることが好ましい。
【0082】
溶融状態の樹脂組成物は、冷却することにより固化させる。冷却方法としては、空冷であっても水冷であってもよいが、水冷が好ましい。
【0083】
切断後は、必要に応じて、洗浄、液固分離、乾燥等の後処理を行ってもよい。洗浄方法としては、例えば、水洗等が挙げられ、液固分離方法としては、例えば、遠心分離や減圧篩等が挙げられ、乾燥方法としては、例えば、空気乾燥や真空乾燥等が挙げられる。
【0084】
(5)混合工程
混合工程においては、実質的に同一の条件、つまり同一設計の装置において、同一の処方にて形成した2系列以上の樹脂ペレットを混合する。
【0085】
なお、本発明において混合とは、2系列以上の樹脂ペレットが一様に混ざり合うことを必須とするものではなく、2系列以上の樹脂ペレットが同じ空間内(ホッパーやサイロ等の容器内)で共存していることを意味する。
【0086】
混合方法は、特に限定されず、例えば、混合機を用いて混合してもよい。また、2系列以上の樹脂ペレットをホッパー等の同一の容器に投入することにより混合する方法が簡便で好ましい。2系列以上の樹脂ペレットを同一容器に投入する場合、投入順は特に限定されず、2系列以上の樹脂ペレットを同時に投入してもよく、A及びBの2系列(又は3系列以上)の樹脂ペレットを、系列ごとにA1、A2、A3…、B1、B2、B3…等のように複数のグループに分け、次いで、A1、B1、A2、B2、…の順で投入する等のようにグループ単位で交互に(又はランダムに)投入してもよい。さらにA及びBの2系列(又は3系列以上)の樹脂ペレットを、まずは全てのA系列のペレットを投入し、次いで全てのB系列のペレットを投入する等のように系列順に投入してもよい。系列順に投入する場合でも、系列の境界で混合が生じ、また容器から払い出す際に、ペレットの流れが一様でないためにさらに混合が進む。
また、前記容器(以下、第1容器という)に投入した樹脂ペレットを払い出し、再び容器(以下、第2容器という)に投入することでさらに混合度合いを高めてもよい。例えば、第1容器からの払い出し時に複数のグループに分けての払い出しを行い、各グループを第2容器に投入するときに、各グループを第1容器から払い出したときとは異なる順序で(好ましくはランダムな順序で)第2容器に投入してもよい。この第2容器への再投入のときには、同一の第1容器から払い出された樹脂ペレットのグループを投入するのみならず、異なる第1容器から払い出されたグループ(ただし、これらは実質的に同一の条件において製造された樹脂ペレット)を同じ第2容器に混入させてもよい。
【0087】
混合する系列数を多くするほど、サイズの均一性が高い樹脂ペレットを得られる傾向がある。
【0088】
実質的に同一の条件で製造した2系列以上の樹脂ペレットを混合する場合には、最も割合の大きい系列の樹脂ペレット(最も割合が大きい系列の樹脂ペレットが2つ以上ある場合は、そのいずれか1つ)100質量部に対して、他の系列の樹脂ペレットを、それぞれ、0.1質量部以上100質量部以下とすることが好ましく、1質量部以上100質量部以下とすることがより好ましく、10質量部以上100質量部以下とすることがさらに好ましく、30質量部以上100質量部以下とすることがよりさらに好ましい。
【0089】
(6)樹脂ペレット
混合工程後に得られる樹脂ペレットは、実質的に同一の条件において製造した2列以上の樹脂ペレットが混合されているため、ペレットサイズの均一性が高い。さらに好ましくは、混合工程後に得られる樹脂ペレットは、メルトフローレートのバラツキも小さい。
【0090】
樹脂ペレットの形状は特に限定されず、例えば、球状(楕円体状も含む)、柱状(例えば、円柱状や角柱状)等の形状が挙げられる。
【0091】
樹脂ペレットサイズは特に制限されず、その使用目的等により適宜設定することができる。
樹脂ペレットの切断面(切断工程の切断機で形成された面)での最大直径は、例えば、0.5mm以上15mm以下が好ましく、1.0mm以上10mm以下がより好ましい。
樹脂ペレットの前記切断面において前記最大直径と直交する方向で最も長くなる部分の長さ(直交径)は、例えば、0.5mm以上15mm以下が好ましく、1.0mm以上10mm以下がより好ましい。
樹脂ペレットの前記切断面の垂直方向の長さ(ペレット長又はペレット厚)は、例えば、0.5mm以上10mm以下が好ましく、1.0mm以上8.0mm以下がより好ましい。
【0092】
前記最大直径、直交径、及びペレット長(又はペレット厚)の標準偏差及び変動係数は、いずれも、樹脂ペレットのサイズ均一性を示し、いずれか1つ以上(好ましくは全て)の値が小さいことが好ましい。また、混合後の樹脂ペレットは、混合前の全ての系列の樹脂ペレットに対して、前記最大直径、直交径、及びペレット長(又はペレット厚)のいずれか(好ましくは全て)の標準偏差又は変動係数(好ましくは両方)が低下していることが好ましい。
【0093】
例えば、混合後の樹脂ペレットは、ペレットサイズの標準偏差及び/又は変動係数が、以下のように小さいことが好ましい。
(最大直径≦ペレット長の場合)
最大直径及び直交径の標準偏差(mm)は、それぞれ、0.65以下が好ましく、0.60以下がより好ましく、0.55以下がさらに好ましい。
最大直径及び直交径の変動係数は、それぞれ、0.014以下が好ましく、0.012以下がより好ましい。
ペレット長の標準偏差(mm)は、0.65以下が好ましく、0.60以下がより好ましく、0.55以下がさらに好ましい。
ペレット長の変動係数は、0.022以下が好ましく、0.020以下がより好ましく、0.018以下がさらに好ましい。
(最大直径>ペレット厚の場合)
最大直径及び直交径の標準偏差(mm)は、それぞれ、0.80以下が好ましく、0.75以下がより好ましく、0.70以下がさらに好ましい。
最大直径及び直交径の変動係数は、それぞれ、0.016以下が好ましく、0.014以下がより好ましい。
ペレット厚の標準偏差(mm)は、0.80以下が好ましく、0.70以下がより好ましく、0.60以下がさらに好ましい。
ペレット厚の変動係数は、0.035以下が好ましく、0.030以下がより好ましく、0.025以下がさらに好ましい。
【0094】
樹脂ペレットのメルトフローレートは、JIS K 7210(B法)に準拠して温度240℃、荷重10kgf(98N)で測定した値が、成形加工性の観点から、8g/10分以上であることが好ましく、10g/10分以上であることがより好ましく、また50g/10分以下であることが好ましく、40g/10分以下であることがより好ましく、30g/10分以下であることがさらに好ましい。
前記メルトフローレートの標準偏差及び変動係数は、メルトフローレートの安定性を示し、それらの値が小さいことが好ましい。また、混合後の樹脂ペレットは、混合前の全ての系列の樹脂ペレットに対して、メルトフローレートの標準偏差及び/又は変動係数が低下していることが好ましい。
例えば、前記メルトフローレートの標準偏差(g/10分)は、0.75以下が好ましく、0.70以下が好ましく、0.60以下がより好ましい。前記メルトフローレートの変動係数は、0.050以下が好ましく、0.045以下が好ましく、0.040以下がより好ましい。
【0095】
樹脂ペレットが残存単量体や環化縮合反応により副生するアルコール、水分等の揮発性成分を含有する場合、外観に優れる成形体を形成可能な観点から、これらの揮発性成分の含有量は少ないことが好ましい。また、混合後の樹脂ペレットは、混合前の全ての系列の樹脂ペレットに対して、揮発性成分含有量の標準偏差及び/又は変動係数が低下していることが好ましい。
【0096】
樹脂ペレット中の残存単量体(特にメタクリル酸メチル残揮)量は、成形加工性の観点から、3000ppm以下が好ましく、2500ppm以下がより好ましく、2300ppm以下がさらに好ましい。なお樹脂ペレット中の残存単量体量は、後述の実施例に記載の方法によって求めた値である。また本発明において特に記載がない限り、「ppm」は質量換算で求められる値を意味する。
前記残存単量体(特にメタクリル酸メチル残揮)量の標準偏差(ppm)は、例えば、120以下が好ましく、110以下が好ましく、100以下がより好ましい。前記残存単量体(特にメタクリル酸メチル残揮)量の変動係数は、例えば、0.065以下が好ましく、0.060以下が好ましく、0.055以下がより好ましい。
【0097】
樹脂ペレット中のアルコール(特にメタノール)量は、成形加工性の観点から、200ppm以下が好ましく、180ppm以下がより好ましく、150ppm以下がさらに好ましい。なお樹脂ペレット中のアルコール量は、後述の実施例に記載の方法によって求めた値である。
前記アルコール(特にメタノール)量の標準偏差(ppm)は、例えば、15以下が好ましく、10以下が好ましく、8以下がより好ましい。前記アルコール(特にメタノール)量の変動係数は、例えば、0.120以下が好ましく、0.110以下が好ましく、0.100以下がより好ましい。
【0098】
樹脂ペレット中の水分量は、成形加工性の観点から、200ppm以下が好ましく、180ppm以下がより好ましく、150ppm以下がさらに好ましい。なお樹脂ペレット中の水分量は、後述の実施例に記載の方法によって求めた値である。
前記水分量の標準偏差(ppm)は、例えば、30以下が好ましく、25以下が好ましく、20以下がより好ましい。前記水分量の変動係数は、例えば、0.320以下が好ましく、0.300以下が好ましく、0.280以下がより好ましい。
【0099】
樹脂ペレットにおける各特性値、及びその標準偏差は、例えば、任意に10個以上のペレットを採取して相加平均(1次平均値)を求める操作を10回以上行い、各特性ごとに10以上の1次平均値を求め、この1次平均値の相加平均(2次平均値)を各特性値とし、1次平均値の標準偏差を各特性値の標準偏差として求めることができる。また、樹脂ペレットにおける各特性値の変動係数は、前記2次平均値と前記標準偏差から求めることができる。
【0100】
本発明の製造方法で製造した樹脂ペレットは、サイズの均一性が高く、好ましくはメルトフローレートのバラツキが小さいため、品質が一定な成形体を形成することができる。また、原料樹脂ペレットのサイズ不均一に起因する製造トラブルの発生を低減できるため、成形体の生産性を向上することも可能である。
【0101】
(7)成形体
本発明の製造方法で製造した樹脂ペレットは、種々の形態に成形して、各種製品乃至部品として使用できる。成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、中空成形、カレンダ成形、回転成形、真空成形、圧縮成形等が挙げられる。成形体の形状は用途に応じて適宜設定すればよく、例えば、シート、フィルム、レンズ、チューブ、パイプ、袋、容器等が挙げられる。中でも、樹脂ペレットを形成する樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂である場合には、光学特性、機械的強度、成型加工性、表面硬度等の諸特性のバランスに優れることから、光学用途の成形体(光学部材)として有用である。光学用途の成形体として、例えば、フィルムが挙げられ、具体的には、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルムが挙げられる。また、成形体は光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野に利用でき、例えば、太陽電池、或いはヘッドマウントディスプレーや液晶プロジェクター等の光学製品における導光板、拡散板、前面板、透明基板、タッチパネル等の透明導電性基板等のようなシートや板状物も挙げられる。さらに、光学用品、車載用品、照明機器やOA機器等の家庭用品として、レンズやレンズアレイ、レンズカバー、光ファイバー、テールランプ、メーターカバー、ヘッドランプ、ランプカバー、導光棒等のような成形体も挙げられる。他にも、自動車や各種機器の内外装、或いは加飾フィルムとしても好適に使用できる。
【0102】
成形体は、本発明の製造方法で製造した樹脂ペレットのみからなる成形体であってもよく、本発明の製造方法で製造した樹脂ペレットと他のペレットとの混合ペレットから構成される成形体であってもよい。
【0103】
成形温度は、特に限定されないが、150℃以上350℃以下の範囲が好ましく、200℃以上300℃以下の範囲がより好ましい。
【実施例0104】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0105】
始めに、以下の実施例で採用した測定方法について説明する。
【0106】
(1)重量平均分子量
樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置及び測定条件は以下の通りである。
測定システム:東ソー製GPCシステムHLC-8220
測定側カラム構成:
・ガードカラム(東ソー製、TSK guardcolumn SuperHZ-L)
・分離カラム(東ソー製、TSK Gel Super HZM-M)、2本直列接続
リファレンス側カラム構成:
・リファレンスカラム(東ソー製、TSK gel SuperH-RC)
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
展開溶媒の流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS-オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
【0107】
(2)ガラス転移温度
樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121の規定に準拠して、始点法により求めた。具体的には、示差走査熱量計(株式会社リガク製、Thermo plus EVO DSC-8230)を用い、窒素ガスフロー(100ml/分)下、約10mgの試料を常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から評価した。リファレンスには、α-アルミナを用いた。
【0108】
(3)環化率(無水グルタル酸化率、イミド化率)
(メタ)アクリル系樹脂における無水グルタル酸化率又はイミド化率は、1803cm-1付近のカルボン酸無水物基に由来する吸収と、1720cm-1付近のエステルカルボニル基に由来する吸収と、1680cm-1付近のイミドカルボニル基に由来する吸収との強比から決定した。ここで、無水グルタル酸化率又はイミド化率は、全カルボニル基においてカルボン酸無水物基又はイミドカルボニル基が占める割合である。
【0109】
(4)樹脂ペレットのサイズ
樹脂ペレットの切断面(切断工程の切断機で形成された面)での最大直径、前記切断面において前記最大直径と直交する方向で最も長くなる部分の長さ(直交径)、及び前記切断面の垂直方向の長さ(ペレット長又はペレット厚)を測定した。
【0110】
(5)メルトフローレート(MFR)
樹脂ペレットのMFRは、メルトインデクサー(タカラ工業社製)を用いて、JIS K 7210(B法)に準拠して、温度240℃、荷重98N(10kgf)で測定した。
【0111】
(6)揮発性成分含有量
(6-1)メタクリル酸メチル(MMA)
樹脂ペレット中のMMA残揮量は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC-2014)を用い、炭酸ジフェニルを内部標準として検量線を作成して定量した。
(6-2)メタノール(MeOH)
樹脂ペレット中のMeOH量は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC-2014)を用い、炭酸ジフェニルを内部標準として検量線を作成して定量した。
(6-3)水分
樹脂ペレット中の水分量は、水分気化装置(三菱化学社製、VA-100)に接続された、微量水分測定装置(三菱化学社製、CA-100)を用い、カールフィッシャー容量滴定法により求めた。詳しくは、ペレット約1.0gを精秤後、250℃に保温した上記水分気化装置に導入し2分間加熱する。ここで発生した全水分を、五酸二リンを通じて乾燥した窒素ガスにより上記水分気化装置へ導入し、カールフィッシャー容量滴定法により含水量を求める。
【0112】
(7)樹脂ペレットの諸特性(最大直径、直交径、ペレット長(ペレット厚)、MFR、揮発成分含有量)の平均値、標準偏差及び変動係数
混合前の各系列及び混合後の樹脂ペレットの諸特性の平均値、標準偏差及び変動係数の測定は、次のようにして行った。まず任意に抜き出された10個のペレットについて諸特性を調べ、諸特性ごとに相加平均(1次平均値)を算出する。この操作を15回繰り返し、諸特性ごとに15個の1次平均値を算出する。15個の1次平均値の相加平均(2次平均値)と標準偏差を求め、これを各系列及び混合後の樹脂ペレットにおける諸特性の平均値及び標準偏差とする。前記諸特性の平均値及び標準偏差から変動係数を求める。
【0113】
(実施例1)
撹拌装置、温度センサー、冷却コンデンサ、及び窒素導入管を備えた反応釜に、メタクリル酸メチル83.5部、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル12部、トルエン90.4部、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(株式会社ADEKA製:アデカスタブ(登録商標)2112)0.05部、及びn-ドデシルメルカプタン0.07部を仕込み、窒素を通じつつ、105℃まで昇温した。昇温に伴う還流が始まった時点で、重合開始剤としてtert-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富株式会社製:ルペロックス(登録商標)570)0.09部を添加すると共に、tert-アミルパーオキシイソノナノエート0.18部とスチレン4.5部とを2時間かけて滴下しながら約105~110℃の還流下で溶液重合を進行させ、滴下終了後、同温度で更に4時間の熟成を行った。
【0114】
次に、反応釜内の重合溶液に、環化触媒としてリン酸ステアリル(SC有機化学株式会社製:Phoslex A-18)0.075部を加えて、約90~110℃の還流下で2時間、ラクトン環構造を形成する環化縮合反応を進行させた。次に、240℃に加熱した多管式熱交換器に重合溶液を通して環化縮合反応を完結させた後、バレル温度250℃、減圧度13.3~400hPa(10~300mmHg)、リアベント数1個及びフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーが設けられており、リーフディスク型ポリマーフィルタ(濾過精度5μm)が先端部に配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52.5)に、100部/h(樹脂量換算)の処理速度で導入して、混錬及び脱揮を実施した。その際、別途準備したイオン交換水を1.5部/hの投入速度で第2及び第4ベントの上流から、オクチル酸亜鉛トルエン溶液(日本化学産業株式会社製、ニッカオクチックス亜鉛1.8%;環化触媒失活剤)、フェノール系酸化防止剤(株式会社ADEKA社製、アデカスタブ(登録商標)AO-60)、及び硫黄系酸化防止剤(株式会社ADEKA社製、アデカスタブ(登録商標)AO-412S)からなるトルエン溶液(混合比は、質量比にして、33.74:1:1)を0.165部/hの投入速度で第3ベントの上流から、それぞれ投入した。
【0115】
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂組成物を、ポリマーフィルタで濾過しながら押出機の先端から排出した。なお、押出機のシリンダ先端に設けられた押出ダイには、直径4mmの細孔が円周に沿って多数、貫通形成され、ウォータリングカット方式のカッターが取り付けられており、そこで使用する冷却水は、孔径1μmのフィルタ(オルガノ株式会社製、製品名:ミクロポアフィルタ1EU)で濾過し、30±10℃の範囲内の温度に保持されていたものである。また、カット、水冷固化後に遠心乾燥機による脱水設備が設けられ、気体による搬送により、貯蔵サイロへ搬送する構成となっている。
【0116】
得られたラクトン環構造を主鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂を含む樹脂組成物は、ガラス転移温度が124℃、重量平均分子量が13.2万であった。
【0117】
上記の樹脂ペレットの形成を2系列(以下、2系列をそれぞれ系列A、系列Bと称する)で行った。系列Aと系列Bとは、同一設計の装置にて同一処方で製造したものであるが、具体的に使用された装置が異なっている。貯蔵サイロにおいて系列Aの樹脂ペレットと系列Bの樹脂ペレットとを攪拌混合した。
【0118】
系列A、系列Bで形成したそれぞれの樹脂ペレット、及び混合後の樹脂ペレットのサイズ(最大直径、直交径、ペレット厚)の1次平均値、2次平均値、標準偏差及び変動係数を表1に示す。また、系列A、系列Bで形成したそれぞれの樹脂ペレット、及び混合後の樹脂ペレットのメルトフローレート及び揮発性成分含有量の1次平均値、2次平均値、標準偏差及び変動係数を表2に示す。なお表1中、ペレットサイズの測定単位は「mm」である。
【0119】
【0120】
【0121】
表1に示すように、実質的に同一の条件で形成した系列A及び系列Bの樹脂ペレットを混合する工程を含む実施例1の製造方法によれば、ペレットサイズの標準偏差及び変動係数が低減された均一性の高い樹脂ペレットを得ることができた。さらに、表2に示すように、実施例1の製造方法によれば、得られる樹脂ペレットのメルトフローレート及び揮発性成分含有量の標準偏差と変動係数も低減されていた。
【0122】
(実施例2)
実施例1と同様にして樹脂ペレットを2系列(以下、2系列をそれぞれ系列C、系列Dと称する)で形成した。系列Cと系列Dとは、同一設計の装置にて同一処方で製造したものであるが、具体的に使用された装置が異なっている。貯蔵サイロにはじめに系列Cの樹脂ペレットを投入し、その後、系列Cの樹脂ペレット上に系列Dの樹脂ペレットを投入した。そして、貯蔵サイロの下部に設置された排出口から系列Cの樹脂ペレットと系列Dの樹脂ペレットとが混合された樹脂ペレットを取得した。
【0123】
系列C、系列Dで形成したそれぞれの樹脂ペレット、及び混合後の樹脂ペレットのサイズ(最大直径、直交径、ペレット厚)の1次平均値、2次平均値、標準偏差及び変動係数を表3に示す。なお表3中、ペレットサイズの測定単位は「mm」である。
【0124】
【0125】
表3に示すように、実質的に同一の条件で形成した系列C及び系列Dの樹脂ペレットを混合する工程を含む実施例2の製造方法によれば、ペレットサイズの標準偏差及び変動係数が低減された均一性の高い樹脂ペレットを得ることができた。
【0126】
(実施例3)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた反応釜に、メタクリル酸メチル79.4部、メタクリル酸20.6部、重合溶媒としてトルエン90.0部とメタノール22.5部との混合溶媒、及び酸化防止剤(株式会社ADEKA製、商品名:アデカスタブ2112)0.05部を仕込み、反応釜内に窒素ガスを通じながら73℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まった時点で、重合開始剤としてジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業株式会社製、商品名:V-601)0.25部を反応釜内に添加するとともに、トルエン7.3部とメタノール1.8部との混合溶媒にジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業株式会社製、商品名:V-601)0.35部を溶解させた溶液を2時間かけて反応釜内に滴下しながら、約71~76℃の還流下で溶液重合を行ない、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)の滴下終了後に、さらに4時間かけて熟成を行なった。得られた重合溶液中の(メタ)アクリル系樹脂におけるメタクリル酸に由来の繰返し単位の含有率は20.6%であった。また、当該(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は11万であった。
【0127】
次に、環化触媒としてナトリウムメトキシド0.1部をメタノール9.9部に溶解させた溶液10部を20分間かけて約65~70℃の温度で反応釜内の重合溶液に滴下し、均一な重合溶液とした。
【0128】
前記で得られた重合溶液をバレル温度290℃、回転数70rpm、減圧度13.3~400hPa(10~300mmHg)、リアベント数が1個、フォアベント数が2個のベントタイプスクリュー二軸押出機(孔径:15mm、L/D:45)内に樹脂量換算で300g/hの処理速度で導入し、この二軸押出機内で脱揮を行ない、軸内滞留時間0.9分間程度で押出すことにより、無水グルタル酸構造を主鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂を含む樹脂組成物から形成される透明な樹脂ペレットを得た。
【0129】
前記で得られた無水グルタル酸構造を主鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂を含む樹脂組成物は、ガラス転移温度が131℃、重量平均分子量が10万であった。また、前記で得られた無水グルタル酸構造を主鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂における環化率(無水グルタル酸化率)は17.5%であった。
【0130】
前記で得られた無水グルタル酸構造を主鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂を含む樹脂組成物から形成される樹脂ペレットを、バレル温度290℃、回転数300rpm、減圧度13.3~400hPa(10~300mmHg)、ベント数が1個のベントタイプスクリュー二軸押出機(孔径:15mm、L/D:45)内に樹脂量換算で420g/hの処理速度でホッパーから導入し、ホッパーの後よりイミド化剤としてアニリンを液添ポンプにて101g/hの投入速度で注入し、軸内滞留時間2.1分間程度で押出すことにより、グルタルイミド構造を主鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂を含む樹脂組成物から形成される透明な樹脂ペレットを得た。
【0131】
なお、樹脂ペレットは押出機の先端に装着したダイスを通過させ、冷却水を満たした水槽で冷却することにより、樹脂組成物のストランドを得た後、冷却後のストランドを切断機(ペレタイザ)に導入することで得た。使用する冷却水は、孔径1μmのフィルタ(オルガノ株式会社製、製品名:ミクロポアフィルタ1EU)で濾過し、30±10℃の範囲内の温度に保持されていたものである。切断後の樹脂ペレットは、貯蔵サイロへ搬送した。
【0132】
前記で得られたグルタルイミド構造を主鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂を含む樹脂組成物は、ガラス転移温度が162℃、重量平均分子量が9万であった。また、前記で得られたグルタルイミド構造を主鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂におけるイミド化率は44.1%であった。
【0133】
上記の樹脂ペレットの形成を2系列(以下、2系列をそれぞれ系列E、系列Fと称する)で行った。系列Eと系列Fとは、同一設計の装置にて同一処方で製造したものであるが、具体的に使用された装置が異なっている。貯蔵サイロにおいて系列Eの樹脂ペレットと系列Fの樹脂ペレットとを攪拌混合した。
【0134】
系列E、系列Fで形成したそれぞれの樹脂ペレット、及び混合後の樹脂ペレットのサイズ(最大直径、直交径、ペレット長)の1次平均値、2次平均値、標準偏差及び変動係数を表4に示す。なお表4中、ペレットサイズの測定単位は「mm」である。
【0135】
【0136】
表4に示すように、実質的に同一の条件で形成した系列E及び系列Fの樹脂ペレットを混合する工程を含む実施例3の製造方法によれば、ペレットサイズの標準偏差及び変動係数が低減された均一性の高い樹脂ペレットを得ることができた。