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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129065
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ドリル加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 39/00 20060101AFI20230907BHJP
   B23Q 5/34 20060101ALI20230907BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B23B39/00 Z
B23Q5/34 510F
B23Q17/09 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033832
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
(72)【発明者】
【氏名】小河路 隆裕
【テーマコード(参考)】
3C029
3C036
【Fターム(参考)】
3C029CC05
3C036BB11
(57)【要約】
【課題】加工時のドリルの曲がりの低減を図る。
【解決手段】ドリル加工装置(10)は、ドリル(T)を回転して、対象物(O)を加工させるためのスピンドル(12)と、スピンドルの向きを調節するパラレルリンク機構(18)と、対象物を加工中に対象物からスピンドルの軸線方向と垂直な軸の周りのモーメント(Mx、My)を検出する力覚センサ(23)と、力覚センサが検出したモーメントに基づいて、パラレルリンク機構を制御して、スピンドルの向きを調節させる制御部(30)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルを回転して、対象物を加工させるためのスピンドルと、
前記スピンドルの向きを調節するパラレルリンク機構と、
前記スピンドルに印加される前記スピンドルの軸線方向と垂直な軸の周りのモーメントを検出する力覚センサと、
前記力覚センサが検出したモーメントに基づいて、前記パラレルリンク機構を制御して、前記スピンドルの向きを調節させる制御部と、
を備える、ドリル加工装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記モーメントが所定の閾値以上の場合に、前記モーメントが低減されるように前記パラレルリンク機構を制御する、
請求項1に記載のドリル加工装置。
【請求項3】
前記スピンドルを回転可能に保持する保持部を備え、
前記パラレルリンク機構は、
前記保持部に固定される第1のステージと、
前記第1のステージと対向する第2のステージと、
前記第1のステージと前記第2のステージとを自由度を有して接続する複数のリンクと、
前記複数のリンクを駆動する駆動部と、を有する、
請求項1または2に記載のドリル加工装置。
【請求項4】
前記第1のステージは、前記スピンドルが挿通される第1の挿通部を有し、
前記第2のステージは、前記スピンドルが挿通される第2の挿通部を有し、
前記複数のリンクは、前記スピンドルの周りに配置される、
請求項3に記載のドリル加工装置。
【請求項5】
前記力覚センサは、前記スピンドルが挿通される挿通部を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のドリル加工装置。
【請求項6】
前記スピンドルと前記対象物との間の距離を調節する距離調節機構を備え、
前記力覚センサは、前記スピンドルの軸線方向の力を検出し、
前記制御部は、前記力に基づいて、前記距離調節機構を制御して、前記スピンドルと前記対象物との間の距離を調節させる、
請求項請求項1から5のいずれか1項に記載のドリル加工装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記力が所定の閾値以上の場合に、前記力が低減されるように前記距離調節機構を制御する、
請求項6に記載のドリル加工装置。
【請求項8】
前記スピンドルと前記対象物との間の距離を調節する距離調節機構を備え、
前記力覚センサは、前記スピンドルの軸線の周りのモーメントを検出し、
前記制御部は、前記スピンドルの軸線の周りのモーメントに基づいて、前記距離調節機構を制御して、前記スピンドルと前記対象物との間の距離を調節させる、
請求項請求項1から7のいずれか1項に記載のドリル加工装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記スピンドルの軸線の周りのモーメントが所定の閾値以上の場合に、前記スピンドルの軸線の周りのモーメントが低減されるように前記距離調節機構を制御する、
請求項8に記載のドリル加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリル加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドリルを用いて加工対象に穴を形成するドリル加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、加工対象にドリルを押し付けたときに、ドリルにブレが生じ、ドリルが曲がることがある。このようなドリルの曲がりは、加工穴の曲がり、さらには、ドリルの破損を引き起こす可能性がある。この対策として、曲がり、および折れが生じ難い高強度のドリルを用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-136789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ドリル自体の強度の向上には一定の限界がある。また、強度の向上を図らない一般的なドリルにおいても折れ、曲がりを低減することが好ましい。
【0005】
本発明の一態様は、加工時のドリルの曲がりの低減を図ったドリル加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るドリル加工装置は、スピンドルと、パラレルリンク機構と、力覚センサと、制御部と、を備える。スピンドルは、ドリルを回転して、対象物を加工させる。パラレルリンク機構は、スピンドルの向きを調節する。力覚センサは、対象物を加工中に対象物からスピンドルの軸線方向と垂直な軸の周りのモーメントを検出する。制御部は、力覚センサが検出したモーメントに基づいてパラレルリンク機構を制御して、スピンドルの向きを調節させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、加工時のドリルの曲がりの低減を図ったドリル加工装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るドリル加工装置を表す図である。
図2】本発明の実施形態に係るドリル加工装置の一部を切断した状態を表す一部断面図である。
図3】ドリル加工装置の動作手順の一例を表すフロー図である。
図4】対象物を切削加工中のドリル加工装置を表す一部拡大図である。
図5】本発明の変形例に係るドリル加工装置を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るドリル加工装置10を表す図である。上下方向をZ軸とし、上下方向に垂直な平面上の直交する方向をX軸、Y軸とするXYZ座標を設定する。以下、図1に基づき、ドリル加工装置10を説明する。
【0010】
ドリル加工装置10は、チャック11、スピンドル12、シャフト13、プーリ14、スピンドル保持部15、パラレルリンク機構18、取付ステー21、サーボシリンダ22、力覚センサ23、および制御部30を有する。
【0011】
チャック11は、ドリルTをチャッキングして保持する。スピンドル12は、チャック11に接続され、シャフト13およびプーリ14を介して、モータおよびベルトによって、回転される。この結果、ドリルTは、回転され、対象物(加工対象)Oを切削して、対象物Oに穴Hを形成する。すなわち、スピンドル12は、ドリルTを回転して、対象物Oを加工させる。
【0012】
スピンドル保持部(保持部)15は、スピンドル12を回転可能に保持する。なお、この詳細は後述する。
【0013】
パラレルリンク機構18は、力覚センサ23を介して取付ステー21に接続される。パラレルリンク機構18は、取付ステー21に対して、傾きを調節可能に、スピンドル保持部15を保持する。すなわち、パラレルリンク機構18は、スピンドル保持部15を介して、スピンドル12の向き、結局は、対象物Oに対するスピンドル12の角度(結局は、ドリルTの角度)を調節する。なお、図1では、スピンドル12の軸線Aの方向(以下、軸線方向ともいう)をZ軸に合わせた状態を表している。
【0014】
取付ステー21は、力覚センサ23、パラレルリンク機構18に接続され、サーボシリンダ22によって昇降される。サーボシリンダ22は、シリンダ機構を有し、取付ステー21を昇降させる。この結果、サーボシリンダ22は、取付ステー21、力覚センサ23、パラレルリンク機構18、およびスピンドル保持部15を介して、対象物Oに対するスピンドル12(結局は、ドリルT)の距離を調節する。すなわち、サーボシリンダ22は、スピンドル12と対象物Oとの間の距離を調節する距離調節機構として機能する。
【0015】
図2は、ドリル加工装置10の一部を切断した状態を表す一部断面図である。以下、図2に基づき、ドリル加工装置10の詳細を説明する。なお、判りやすさのため、図2において、パラレルリンク機構18の詳細は記載を省略している。
【0016】
図2に示すように、スピンドル12は、部材12a~12cを有する。部材12a~12cは、同軸の略円柱形状を有し、一体的に形成される。部材12bは、部材12a、部材12cよりも径が大きく、スピンドル保持部15の内部に保持される。
【0017】
スピンドル保持部15は、底部材15a、筒状部材15b、潤滑機構15c、15d、押さえ部15e、15fを有する。底部材15aは、パラレルリンク機構18に接続され、パラレルリンク機構18によって傾きが調節される。筒状部材15bは、スピンドル12の部材12bの外周に対応する内周を有し、部材12bを収納する。潤滑機構15c、15dは、例えば、ベアリング機構であり、筒状部材15b内のスピンドル12(部材12b)を回転可能に、上下から保持する。押さえ部15e、15fは、潤滑機構15c、15dを筒状部材15b内に保持するための固定部材である。
【0018】
図1に戻って、説明を続ける。パラレルリンク機構18は、ステージ18a、18b、複数のリンク18c、複数の駆動部18d、複数の接続部材18e、18fを有し、ステージ18bに対するステージ18aの向きを調節する。
【0019】
ステージ18aは、スピンドル保持部15に固定される第1のステージとして機能し、ステージ18bは、ステージ18aと対向する第2のステージとして機能する。ステージ18a、18bは、略リング形状を有し、スピンドル12、スピンドル保持部15が配置される開口S1、S2を有する。開口S1、S2は、スピンドル12が挿通される第1、第2の挿通部として機能する。
【0020】
複数(例えば、6つ)のリンク18cは、並んで配置され、接続部材18e、18fを介して、ステージ18a、ステージ18bを接続する。複数のリンク18cは、スピンドル12、スピンドル保持部15の外周の周りに配置される。これにより、パラレルリンク機構18の動作は、スピンドル12の回転を妨げることがなくなる。
【0021】
複数のリンク18cは、互いにスライド可能な筒状部材181、棒状部材182を有し、その長さを調節できる。複数のリンク18cの長さを調節することで、ステージ18bに対するステージ18aの向きを調節できる。複数のリンク18cは、ステージ18a(第1ステージ)とステージ18b(第2のステージ)とを自由度(ここでは、長さ可変)を有して接続する。駆動部18dは、リンク18cを駆動し、その長さを変化させる。これにより、複数のリンク18cを用いて、ステージ18a,18b間の角度を調節できる。
【0022】
再び図2に戻って、説明を続ける。力覚センサ23は、コア部23a、フレーム部23b、複数のビーム部23c、複数の歪検出素子23d、およびカバー23e、23fを有する。コア部23a、フレーム部23b、ビーム部23cの全体は、応力によって歪む起歪体として機能する。
【0023】
コア部23aおよびフレーム部23bは、略リング形状を有し、スピンドル12、スピンドル保持部15が配置される開口S3(内周)を有する。開口S3は、スピンドル12が挿通される挿通部として機能する。これにより、力覚センサ23は、スピンドル12の回転を妨げることがない。コア部23aは、カバー23eを介して、パラレルリンク機構18のステージ18bに接続される。フレーム部23bは、カバー23fを介して、取付ステー21に接続される。図示はしないが、コア部23aとカバー23fとの間に、取付ステー21からの力がコア部23aに印加されないためのギャップが設けられる。同様に、フレーム部23bとカバー23eとの間に、パラレルリンク機構18(ステージ18b)からの力がフレーム部23bに印加されないためのギャップが設けられる。複数(例えば、4つ)のビーム部23cは、コア部23aとフレーム部23bとの間をスピンドル12の軸線Aと垂直な方向(径方向)に接続する棒状の部材であり、コア部23aとフレーム部23b間の相対変位に応じて変形する。複数の歪検出素子23dは、複数のビーム部23cに配置され、複数のビーム部23cの歪みを検出する。
【0024】
力覚センサ23は、パラレルリンク機構18、スピンドル保持部15を介して、スピンドル12に印加される(対象物Oの加工中に対象物OからドリルTに印加される)モーメントM(Mx、My、Mz)、および力F(Fx、Fy、Fz)を検出する。モーメントMx、My、Mzはそれぞれ、X軸、Y軸、Z軸周りのモーメントであり、力Fx、Fy、Fzはそれぞれ、X軸、Y軸、Z軸方向の力である。ここでは、モーメントMx、Myは、スピンドル12の軸線Aの方向と垂直な軸の周りのモーメントを意味する。モーメントMzは、スピンドル12の軸線Aの周りのモーメントを意味する。また、力Fzは、スピンドル12の軸線方向の力を意味する。
【0025】
制御部30は、力覚センサ23によって検出されたモーメントM、力Fに応じて、次のような制御を行う。
【0026】
制御部30は、モーメントMx、Myに基づいて、パラレルリンク機構18を制御して、スピンドル12の向きを調節させる。これにより、加工時のドリルTの曲がりの低減が図られる。より具体的には、制御部30は、モーメントMx、Myが閾値Th1以上になると、モーメントMx、Myが低減されるように(閾値Th1より小さくなるように)、パラレルリンク機構18を制御する。これにより、閾値に基づいて、モーメントを低減できる。
【0027】
制御部30は、力Fzに基づいて、サーボシリンダ22を制御して、スピンドル12と対象物Oとの間の距離を調節させる。これにより、切りくずの詰まり等に起因するドリルTの破損防止が図られる。より具体的には、制御部30は、力Fzが閾値Th2以上になると、力Fzが低減されるように(閾値Th2より小さくなるように)、サーボシリンダ22を制御する。これにより、閾値Th2に基づいて、力を低減できる。
【0028】
制御部30は、モーメントMzに基づいて、サーボシリンダ22を制御して、スピンドル12と対象物Oとの間の距離を調節させる。これにより、切りくずの詰まり等に起因するドリルの破損防止が図られる。より具体的には、制御部30は、モーメントMzが閾値Th3以上になると、モーメントMzが低減されるように(閾値Th3より小さくなるように)、サーボシリンダ22を制御する。これにより、閾値Th3に基づいて、スピンドル12の軸線の周りのモーメントを低減できる。
【0029】
以下、ドリル加工装置10の動作を説明する。図3は、ドリル加工装置10の動作手順の一例を表すフロー図である。
【0030】
ドリル加工装置10が起動され、加工が開始される(ステップS1)。すなわち、ドリル加工装置10は、ドリルTを保持して回転することによって、対象物Oに穴Hを形成する。このとき、対象物OからドリルTにモーメントM、力Fが印加される。
【0031】
モーメントMx、Myは、例えば、対象物Oに対して、ドリルTが完全には直交していないこと、何らかの不均一性(例えば、対象物Oの材質または表面形状の不均一性)によって生じ得る。
【0032】
力覚センサ23は、スピンドル12に印加されるモーメントM、力Fを検出する(ステップS2)。結局は、対象物OからドリルTに印加されるモーメントM(Mx、My、Mz)、力F(Fx、Fy、Fz)が検出される。
【0033】
このうち、モーメントMx、Myは、ドリルTの曲がり、さらには、穴Hの曲がり、ドリルTの破損の原因となり得る。特に、(1)穴Hを深くしたいとき、(2)径の小さな穴Hを形成したいときに、モーメントMx、Myは問題になり易い。穴Hを深くしたいときには、長いドリルTを用いることになり、モーメントMx、MyによるドリルTの曲がりが大きくなる。径の小さな穴Hを形成したいときには、細いドリルT(例えば、φ0.2mm、φ0.01mm)を用いることになり、モーメントMx、MyによるドリルTの曲がりが大きくなる。
【0034】
図4は、対象物Oを切削加工中のドリル加工装置を表す一部拡大図である。対象物Oの切削中に、モーメントMyによりドリルTが曲がっている。曲がったドリルTの先端は、スピンドル12の軸線A(本来のドリルTの軸線)に対して、角度θを有する。穴Hを掘り進むことで、この角度θが大きくなると、ドリルTの曲げの限界に達して、ドリルTは破損する。
【0035】
このように、加工開始当初の僅かな不具合(対象物OへのドリルTの僅かな非直交、対象物Oの僅かな不均一性)がモーメントMx、Myの発生原因となる。その結果、ドリルTの曲がりを生じ、その曲がりが是正されずに大きな不具合(例えば、ドリルTの破損)を招く可能性がある。本実施形態のドリル加工装置10は、このような場合に、ドリルTの曲がりを低減して、大きな不具合の発生を防止する。
【0036】
このため、制御部30は、モーメントMx、Myが所定の閾値Th1以上か(Mx、My≧Th1)を判断し(ステップS3)、この判断がYESの場合、パラレルリンク機構18を制御して、スピンドル12の向きを調節する(ステップS3)。この結果、モーメントMx、Myが低減され、ドリルTの曲がりが低減される。この結果、ドリルTの破損を防止できる。
【0037】
また、このような制御が、加工の当初から行われると、ドリルTが常時真っすぐな状態を維持することが容易となる。この場合、穴Hの曲がりが低減される。すなわち、図4の角度θが0に近い状態を維持し易くなり、加工精度の向上に寄与し得る。
【0038】
また、制御部30は、力Fz、モーメントMzがそれぞれ所定の閾値Th2、Th3以上か(Fz≧Th2、Mz≧Th3)を判断し(ステップS5)、この判断がYESの場合、サーボシリンダ22を制御して、スピンドル12と対象物Oとの間の距離(結局は、スピンドル12の押し込み量)を調節する(ステップS6)。この結果、力Fz、モーメントMzが低減され、ドリルTの破損を防止できる。
【0039】
力Fz、モーメントMzは、例えば、切りくずにドリルTが接触することで発生する。穴Hの中に詰まった切りくずにドリルTが接触して、大きな力Fz、モーメントMzが印加されると、ドリルTが破損する怖れがある。特に、穴Hを深くしたいときに、力Fz、モーメントMzが問題となり易い。穴Hを掘り進んで深くなると、切削時に形成された切りくずが穴Hに詰まりやすくなる。
【0040】
ここでは、判りやすさのために、モーメントMx、Myに基づく制御と、力Fz、モーメントMzに基づく制御とを順に行った例を示している。この順序は逆でも良いし、同時並行的に行ってもよい。
【0041】
以上のように、本実施形態では、スピンドル12に印加されるモーメントMx、Myを閾値Th1より小さくして、ドリルTの曲がりを低減し、ひいては、ドリルTの破損を防止できる。さらに、加工の当初から、ドリルTの曲がりを低減することで、形成される穴Hの直進性(加工精度)の向上が図られる。
【0042】
また、本実施形態では、スピンドル12に印加される力Fz、モーメントMzを閾値Th2、Th3より小さくして、切りくずの詰まりに起因するドリルTの破損を防止できる。
【0043】
(変形例)
以下、変形例に係るドリル加工装置10を説明する。図5は、本発明の変形例に係るドリル加工装置10を表す図である。変形例に係るドリル加工装置10は、取付ステー21を折り曲げて、部材21a、21b、21cに区分し、部材21bをスピンドル保持部15とサーボシリンダ22の間に垂直に配置している。この結果、スピンドル保持部15とサーボシリンダ22の間の距離が低減され、ドリル加工装置10がコンパクト化されている。
【0044】
実施形態では、モーメントMz、力Fzが閾値Th2、Th3以上の場合、制御部30は、サーボシリンダ22を制御している。これに替えて、サーボシリンダ22の動作を停止し、それ以上のスピンドル12(ドリルT)の押し込みを防止してもよい。また、音声出力装置、表示装置を用いて、音声または光を発して、ドリル加工装置10のオペレータに警告を発してもよい。
【0045】
実施形態では、リンク18cを長さ調節可能としているが、折り曲げ可能としてもよい。この場合、リンク18c折り曲げの角度を調節することで、ステージ18bに対するステージ18aの向きを調節できる。
【0046】
実施形態では、力覚センサ23は、取付ステー21とパラレルリンク機構18の間に配置されているが、他の箇所に配置してもよい。力覚センサ23は、ドリルTから、スピンドル12、スピンドル保持部15、パラレルリンク機構18を経由して、取付ステー21に至る経路上、例えば、スピンドル保持部15とパラレルリンク機構18の間に配置できる。
【0047】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
10……ドリル加工装置、12 スピンドル、15……スピンドル保持部、18……パラレルリンク機構、22……サーボシリンダ、23……力覚センサ、30……制御部
図1
図2
図3
図4
図5