(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129072
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】折れ戸および障子
(51)【国際特許分類】
E06B 3/96 20060101AFI20230907BHJP
E06B 3/16 20060101ALI20230907BHJP
E06B 3/48 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
E06B3/96 A
E06B3/16
E06B3/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033844
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 岳史
【テーマコード(参考)】
2E014
2E015
2E035
【Fターム(参考)】
2E014AA01
2E014BA02
2E015AA01
2E015DA03
2E015FA01
2E035BA01
2E035CA02
2E035CB03
2E035DA02
2E035DC01
(57)【要約】
【課題】適正な形態を維持することのできる折れ戸を提供する。
【解決手段】折れ戸10は、吊元側の第1障子16と戸先側の第2障子18とが相互の召し合せ部20を中間ヒンジ22によって折り畳み可能に連結されている。吊元框28の内周側見込面と32および第1下框34の各小口の中央高さより下の部分との間には突起60が設けられている。戸先框42の内周側見込面と第2上框46および第2下框48の各小口の中央高さより下の部分との間には突起60が設けられている。第1召し合せ框30の内周側見込面と第1上框32および第1下框34の各小口の中央高さより上の部分には突起60が設けられている。第2召し合せ框44の内周側見込面と第2上框46および第2下框48の各小口の中央高さより上の部分には突起60が設けられている。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊元側の第1障子と戸先側の第2障子とが相互の召し合せ部をヒンジによって折り畳み可能に連結されて、前記第2障子の戸先框が戸車によって支持されている折れ戸であって、
前記第1障子は、吊元框、前記召し合せ部を構成する第1召し合せ框、前記吊元框と前記第1召し合せ框との間を連結する第1上框および第1下框を有し、
前記第2障子は、前記戸先框、前記召し合せ部を構成する第2召し合せ框、前記戸先框と前記第2召し合せ框との間を連結する第2上框および第2下框を有し、
前記第1上框、前記第1下框、前記第2上框および前記第2下框の各小口は見付け面壁および見込み面壁に直交しており、
前記吊元框の内周側見込面と前記第1上框および前記第1下框の各小口の中央高さより下の部分との間に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる吊元側傾斜支持部と、
前記戸先框の内周側見込面と前記第2上框および前記第2下框の各小口の中央高さより下の部分との間に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる戸先側傾斜支持部と、
を有することを特徴とする折れ戸。
【請求項2】
前記第1召し合せ框の内周側見込面と前記第1上框および前記第1下框の各小口の中央高さより上の部分に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる第1召し合せ傾斜支持部と、
前記第2召し合せ框の内周側見込面と前記第2上框および前記第2下框の各小口の中央高さより上の部分に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる第2召し合せ傾斜支持部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の折れ戸。
【請求項3】
前記吊元側傾斜支持部は前記吊元框の内周側見込面に形成された吊元側突起であり、
前記戸先側傾斜支持部は前記戸先框の内周側見込面に形成された戸先側突起であり、
前記第1召し合せ傾斜支持部は前記第1召し合せ框の内周側見込面に形成された第1召し合せ突起であり、
前記第2召し合せ傾斜支持部は前記第2召し合せ框の内周側見込面に形成された第2召し合せ突起である
ことを特徴とする請求項2に記載の折れ戸。
【請求項4】
前記吊元側突起、前記戸先側突起、前記第1召し合せ突起、前記第2召し合せ突起は、当接する小口の見込み方向の中心を挟んだ両側に設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の折れ戸。
【請求項5】
前記第1上框および前記第1下框には前記吊元框および前記第1召し合せ框に対してビスで固定するためのビスホールが形成されており、
前記吊元側突起、前記戸先側突起、前記第1召し合せ突起、前記第2召し合せ突起は、それぞれ一対が前記ビスホールを基準として見込み方向に関して対称の位置に配置されている
ことを特徴とする請求項3または4に記載の折れ戸。
【請求項6】
前記戸先框は、前記第2上框および前記第2下框と接続されている第1戸先框、および前記第1戸先框に対してヒンジによって折れ曲げ可能に連結されている第2戸先框を有し、
前記戸車は前記第2戸先框の下部に設けられていてレールによって移動方向が案内されている
ことを特徴とする請求項1~5に記載の折れ戸。
【請求項7】
吊元框、戸先框、前記吊元框と前記戸先框との間を連結する上框および下框を有する障子であって、
前記吊元框の内周側見込面に、前記上框および前記下框の各小口の中央高さより下の部分に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる第1突起が設けられ、
前記戸先框の内周側見込面に、前記上框および前記下框の各小口の中央高さより上の部分に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる第2突起が設けられている
ことを特徴とする障子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折れ戸および障子に関する。
【背景技術】
【0002】
開き戸では戸先框が面材等の重量によって垂れ下がってしまうことがある。そのため、特許文献1では、戸先側が吊元側よりも上にずれたほぼ平行四辺形とし、建具体の建具枠への取付けによる戸先側の垂れ下がりによって障子がほぼ長方形状となり、建具体の戸先側と建具枠との面内方向の隙間が許容値内とすることを提案している。この建具では、上框、下框の長手方向両端と吊元框との間にV字形状のライナーを介在させることにより上框、下框を傾斜させている。
【0003】
他方、吊元側の第1障子と戸先側の第2障子とが相互の召し合せ部をヒンジによって折り畳み可能に連結された折れ戸が知られている。第2障子の戸先框は戸車によって支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような折れ戸では第1障子および第2障子の各面材の重量の影響により召し合せ部が垂れ下がってしまい、それにより第2障子の戸先框が傾斜してしまう懸念がある。特許文献1に記載の障子は開き戸を対象としたものであって、召し合せ部がヒンジによって連結されていて第2障子の戸先框が戸車によって支持されている折れ戸にはそのまま適用することはできない。また、特許文献1に記載の障子はV字形状のライナーを介在させており、部品点数が増えるとともに組み立て作業が煩雑となる。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、適正な形態を維持することのできる折れ戸を提供することを目的とする。また、本発明は部品点数を軽減することのできる障子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる折れ戸は、吊元側の第1障子と戸先側の第2障子とが相互の召し合せ部をヒンジによって折り畳み可能に連結されて、前記第2障子の戸先框が戸車によって支持されている折れ戸であって、前記第1障子は、吊元框、前記召し合せ部を構成する第1召し合せ框、前記吊元框と前記第1召し合せ框との間を連結する第1上框および第1下框を有し、前記第2障子は、前記戸先框、前記召し合せ部を構成する第2召し合せ框、前記戸先框と前記第2召し合せ框との間を連結する第2上框および第2下框を有し、前記第1上框、前記第1下框、前記第2上框および前記第2下框の各小口は見付け面壁および見込み面壁に直交しており、前記吊元框の内周側見込面と前記第1上框および前記第1下框の各小口の中央高さより下の部分との間に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる吊元側傾斜支持部と、前記戸先框の内周側見込面と前記第2上框および前記第2下框の各小口の中央高さより下の部分との間に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる戸先側傾斜支持部と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる障子は、吊元框、戸先框、前記吊元框と前記戸先框との間を連結する上框および下框を有する障子であって、前記吊元框の内周側見込面に、前記上框および前記下框の各小口の中央高さより下の部分に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる第1突起が設けられ、前記戸先框の内周側見込面に、前記上框および前記下框の各小口の中央高さより上の部分に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる第2突起が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上框および下框が対応する傾斜支持部によって自重のない状態で傾斜し、自重のかかる状態になると適正な形態を維持することができる。傾斜支持部を突起として形成すると、部品点数を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態にかかる折れ戸を備える建具を示す正面図である。
【
図2】2つの折れ戸が閉じた状態の建具の横断面図である。
【
図3】2つの折れ戸が開いた状態の建具の横断面図である。
【
図4】2つの折れ戸が閉じた状態の建具の縦断面図である。
【
図8】吊元框の下部を内周側から見た縦面図である。
【
図11】第1召し合せ框を内周側から見た縦面図である。
【
図13】自重が作用していない状態の折れ戸の模式正面図である。
【
図14】第1変形例にかかる建具を示す正面図である。
【
図15】折れ戸が開いた状態の第1変形例にかかる建具の横断面図である。
【
図16】第2変形例にかかる建具を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる折れ戸および障子の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態にかかる折れ戸10を備える建具12を示す正面図である。建具12は、いわゆる両開き式であり、折れ戸10を2つ有している。
図2は、2つの折れ戸10が閉じた状態の建具12の横断面図である。
図3は、2つの折れ戸10が開いた状態の建具12の横断面図である。
図4は、2つの折れ戸10が閉じた状態の建具12の縦断面図である。建具12は建物の室内外を仕切っており、
図1は室内側から見た状態を示している。建具12は、室内の部屋(例えば浴室と更衣室)を仕切るものであってもよい。
【0013】
建具12は枠体14の開口内に2つの折れ戸10を備えている。枠体14は、2つの縦枠14aと、これらの縦枠14aの間を連結する上枠14bおよび下枠14cを四周枠組みすることによって構成したものである。枠体14を構成する縦枠14a、上枠14bおよび下枠14cは、アルミニウム合金によって成形した押し出し形材であり、それぞれが全長にわたってほぼ一様な断面を有するように形成してある。下枠14cにはレール14caが設けられている。2つの折れ戸10は互いの突き合わせ部以外については左右対称構造となっている。本願では説明の便宜上、2つの折れ戸10に同符号を付し、
図1における右側部のみ説明する。
【0014】
本出願において、見込み方向とは建具12の室内外方向をいう。見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な縦枠14a等の場合はその長手方向に直交する左右方向をいい、左右方向に長尺な上枠14b等の場合はその長手方向に直交する上下方向をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。
【0015】
折れ戸10では、吊元側の第1障子16と戸先側の第2障子18とが相互の召し合せ部20を中間ヒンジ22によって折り畳み可能に連結されている。第1障子16および第2障子18には面材24が設けられている。面材24は、例えば複層ガラスである。
【0016】
第1障子16は第1框体26の内周側に面材24が配設される構成となっている。第1框体26は、吊元框28、召し合せ部20を構成する第1召し合せ框30、吊元框28と第1召し合せ框30との間を連結する第1上框32および第1下框34が四周框組みされており、矩形の枠状を成している。第1障子16は、吊元框28が縦枠14aに対して吊元ヒンジ36によって連結されていることにより、開閉可能となっている。
【0017】
第2障子18は第2框体40の内周側に面材24が配設される構成となっている。第2框体40は、戸先框42、召し合せ部20を構成する第2召し合せ框44、戸先框42と第2召し合せ框44との間を連結する第2上框46および第2下框48が四周框組みされており、矩形の枠状を成している。
【0018】
戸先框42は、第2上框46および第2下框48と接続されている第1戸先框42a、および第1戸先框42aに対して戸先ヒンジ50によって折れ曲げ可能に連結されている第2戸先框42bを有している。第2戸先框42bの下部には、レール14caに沿って転動する戸車52が設けられている。つまり、第2戸先框42bはレール14caによって移動方向が案内される構成となっている。
【0019】
第1障子16と第2障子18とは高さおよび幅が等しくなっている。第1框体26および第2框体40の各框材は、上記の枠材と同様にアルミニウム合金によって成形した押し出し形材である。また、各框材の小口は見付け面壁および見込み面壁に対して直交している。ただし、後述するように各上框、各下框の小口は建具12として組み立てられた状態では鉛直面に対して傾斜する。中間ヒンジ22は、中継材54を介した2つのヒンジ22aによって構成されている。第1障子16および第2障子18は、折れ戸10の閉じた状態では枠体14の内周側に収まる。2つの折れ戸10がそれぞれ閉じた状態では、互いの戸先框42同士が当接し合い、枠体14の開口が完全に塞がれるようになっている。
【0020】
第1障子16および第2障子18は、折れ戸10が開いた状態では枠体14の開口から突出して互いに対面するようになっており
図3における左右方向幅が十分小さくなる。2つの折れ戸10がそれぞれ開いた状態ではそれぞれの左右方向幅が小さいため、建具12は広い開口が得られる。
【0021】
図5は、第1上框32の縦断面図である。
図5に示すように第1上框32は、室外側見付け壁32a、室内側見付け壁32b、上側見込み壁32c、下側見込み壁32dを有しており、これらの4つの壁によって略正方形の中空部32eを形成している。第1上框32には4つのビスホール56が形成されている。ビスホール56は吊元框28および第1召し合せ框30に対してビス止めするためのものであり、C字形状の断面であり、中空部32e内で長尺方向に延在している。なお、第2障子18における第2上框46および第2下框48にも同様のビスホール56が同数設けられている。第2上框46および第2下框48のビスホール56は、戸先框42および第2召し合せ框44に対してビス止めするためのものである。
【0022】
4つのビスホール56は見込み方向および見付け方向に関して略対称の位置に設けられている。具体的には、上側の2つのビスホール56(以下、ビスホール56uとも呼ぶ。他の框材も同様とする。)は上側見込み壁32cに設けられ、下側の2つ(以下、ビスホール56dとも呼ぶ。他の框材も同様とする。)は下側見込み壁32dに設けられている。2つのビスホール56uは第1上框32の小口の中央高さMより上にあり、2つのビスホール56dは中央高さMより下にある。中央高さMは4つの壁によって形成される中空部(この場合中空部32e)を基準とすればよい。
【0023】
また、室外側の2つのビスホール56は上下対称であり、室内側の2つのビスホール56は上下対称である。室外側の2つのビスホール56と室内側の2つのビスホール56とは、小口の見込み方向の中心Cを挟んだ両側に設けられており、より具体的には中心Cを基準としてほぼ対称位置にある。
【0024】
図6は、第1下框34の縦断面図である。
図6に示すように、第1下框34は、室外側見付け壁34a、室内側見付け壁34b、上側見込み壁34c、下側見込み壁34dを有しており、これらの4つの壁によって略正方形の中空部34eを形成している。第1下框34は第1上框32とほぼ同様の形状となっており、4つのビスホール56を有している。第1下框34における4つのビスホール56は、中央高さMおよび中心Cを基準とした相対位置が第1上框32における4つのビスホール56と同じになっている。
【0025】
図7は、吊元框28を内周側から見た縦面図である。
図8は、吊元框28の下部を内周側から見た縦面図である。
図9は、吊元框28の横断面図である。
図10は、突起60とその周辺の断面図である。
図7、
図8においては、第1上框32および第1下框34の各小口と当接する範囲をドット地として符号を付している。吊元框28には、上方に4つ、下方に4つの合計8つの貫通孔58が形成されている。上方の4つの貫通孔58は第1上框32における4つのビスホール56と同じ位置に形成されている。下方の4つの貫通孔58は第1下框34における4つのビスホール56と同じ位置に形成されている。ビスホール56uに対応する貫通孔58を貫通孔58uとも呼び、ビスホール56dに対応する貫通孔58を貫通孔58dとも呼ぶ。
【0026】
吊元框28には、上方に4つ、下方に4つの合計8つの突起(吊元側傾斜支持部、吊元側突起)60が形成されている。ただし、設計条件によっては突起60の数を増減させてもよく、例えば上方に2つ、下方に2つの合計4つの突起を設けるようにしてもよい。後述する第2障子18における突起60についても同様である。各突起60は内周側に突出している(
図9、
図10参照)。突起60は、例えばパンチによって形成されている。突起60は円錐台形状となっているがこれに限らず、例えば打ち抜き孔の周囲に形成される環状突起であってもよいし、その他の凸形状体であってもよい。
【0027】
上方の4つの突起60は、第1上框32のビスホール56dおよびこれに対応した上方の2つの貫通孔58dに対して一対ずつ見込み方向に関して対称の位置に配置されている。つまり、各突起60は見込み方向に関して近傍のビスホール56dおよび貫通孔58dから距離Xの位置にある。距離Xは比較的短く設定されている。
【0028】
このような上方の4つの突起60は、第1上框32の各小口の中央高さMより下の部分にあって、当該第1上框32の下方部分である下側見込み壁34dの端面に当接する。つまり、上方の4つの突起60は、第1上框32の小口を鉛直面に対して傾斜させる作用がある。第1上框32は、吊元側で小口の下方部が内周側に押し出されることから、召し合せ部20に向かって持ち上がるような傾斜となる(
図13参照)。
【0029】
突起60は、当接する小口の見込み方向の中心Cを挟んだ両側に設けられていることから第1上框32の小口の下部をバランスよく押し出し、反対側先端部が見込み方向にずれることがない。各突起60はビスホール56dの近傍に形成されていることから、ビスB(
図13参照)の締結に起因する力が効果的に伝達されて第1上框32の小口の下部を確実に押し出すことができる。各突起60は一対がビスホール56dを基準として見込み方向に関して対称の位置に配置されていることから、各ビスB(
図13参照)の締結に起因する力がバランスよく第1上框32の小口に伝達される。第1上框32の小口は4つの突起60によって押し出されるため応力が分散されて、局所的に変形することがない。なお、複数の突起60の配置関係によるこのような作用は、下方の4つの突起60および後述する第1召し合せ框30における8つの突起60についても同様である。
【0030】
下方の4つの突起60は、第1下框34のビスホール56dおよびこれに対応した下方の2つの貫通孔58dに対して一対ずつ見込み方向に関して対称の位置に配置されている。下方の4つの突起60は、ビスホール56dおよびこれに対応した下方の2つの貫通孔58dを基準とした相対位置が上方の4つの突起60と同じになっている。つまり、下方の4つの突起60は、第1下框34の小口を鉛直面に対して傾斜させる作用がある。第1下框34は、吊元側で小口の下方部が内周側に押し出されることから、召し合せ部20に向かって持ち上がるような傾斜となる(
図13参照)。この傾斜角度は第1上框32と等しくなっている。下方の4つの突起60は、上方の4つの突起60と同様の作用を第1下框34に対して奏する。
【0031】
図11は、第1召し合せ框30を内周側から見た縦面図である。
図12は、第1召し合せ框30の横断面図である。
図11においては、第1上框32の各小口と当接する範囲をドット地として符号を付している。
【0032】
第1召し合せ框30には、上方に4つ、下方に4つの合計8つの貫通孔58が形成されている。上方の4つの貫通孔58は第1上框32における4つのビスホール56と同じ位置に形成されている。下方の4つの貫通孔58は第1下框34における4つのビスホール56と同じ位置に形成されている。
【0033】
第1召し合せ框30には、上方に4つ、下方に4つの合計8つの突起(第1召し合せ傾斜支持部、第1召し合せ突起)60が形成されている。各突起60は、吊元框28のものと同じものであり内周側に突出している。上方の4つの突起60は、第1上框32のビスホール56uおよびこれに対応した上方の2つの貫通孔58uに対して一対ずつ見込み方向に関して対称の位置に配置されている。下方の4つの突起60は、第1下框34のビスホール56uおよびこれに対応した下方の2つの貫通孔58uに対して一対ずつ見込み方向に関して対称の位置に配置されている。
【0034】
すなわち、吊元框28における各突起60が第1上框32の下側見込み壁32dおよび第1下框34の下側見込み壁34dに沿った位置に形成されているのに対して、第1召し合せ框30における各突起60は第1上框32の上側見込み壁32cおよび第1下框34の上側見込み壁34cに沿った位置に形成されている。
【0035】
このような第1召し合せ框30の突起60は、第1上框32および第1下框34の各小口の中央高さMより上の部分にあって、上側見込み壁32cおよび上側見込み壁34cの端面に当接する。つまり、第1召し合せ框30の突起60は、第1上框32および第1下框34の小口を鉛直面に対して傾斜させる作用がある。第1上框32、第1下框34は、召し合せ部20側で小口の上方部が内周側に押し出されることから、吊元側に向かって下がるような傾斜となる(
図13参照)。これにより、第1障子16は平行四辺形となり、第1召し合せ框30は吊元框28より若干高い位置となるように付勢される。
【0036】
つまり、第1上框32および第1下框34は、それぞれ吊元框28からは小口の下方部分が突起60によって押し出され、第1召し合せ框30からは小口の上方部分が対称的に押し出されておりバランスが保たれている。ただし、設計条件により突起60は吊元框28だけに設けられていても第1上框32および第1下框34を傾斜させる作用は得られる。
【0037】
図13は、自重が作用していない状態の折れ戸10の模式正面図である。
図13に示すように、第2障子18は第1障子16に対してほぼ対称形状となっている。すなわち、第1障子16における第1框体26、吊元框28、第1召し合せ框30、第1上框32および第1下框34は、第2障子18における第2框体40、戸先框42、第2召し合せ框44、第2上框46および第2下框48に対応している。第2上框46は基本的に第1上框32と同じである。第2下框48は基本的に第1下框34と同じである。戸先框42には吊元框28と同様の対称位置に8つの突起(戸先側傾斜支持部、戸先側突起)60が内周側に突出するように形成されている。第2召し合せ框44には第1召し合せ框30と同様の対称位置に8つの突起(第2召し合せ傾斜支持部、第2召し合せ突起)60が内周側に突出するように形成されている。
【0038】
第2上框46および第2下框48はそれぞれ、戸先側で小口の下方部が突起60によって内周側に押し出されるとともに、召し合せ部20側で小口の上方部が突起60によって内周側に押し出されることから、戸先側に向かって下がるような傾斜となる。ただし、設計条件により突起60は戸先框42だけに設けられていても第2上框46および第2下框48を傾斜させる作用は得られる。
【0039】
第2上框46および第2下框48の傾斜は、第1上框32および第1下框34の傾斜と逆向きであり、傾斜度合いは等しい。つまり、第2障子18は第1障子16と逆向きの平行四辺形を形成する。
図13では第1障子16および第2障子18について90度を超える角度θ1、および90度未満の角度θ2の箇所を図示している。ただし、第1障子16および第2障子18がこのような平行四辺形を形成するのは、枠体14に組み付ける前で、平面上に載置されていて自重が作用していない状態とする。
【0040】
ところで、折れ戸10は吊元側が吊元ヒンジ36により縦枠14aで支持されており、戸先側が戸車52により下枠14cで支持されているが、召し合せ部20は枠体14に支持されていない。面材24はある程度の重量があるため、召し合せ部20には
図13の矢印で示すように下方に垂れ下がる傾向があり、さらにこれに起因して第1障子16および第2障子18は召し合せ部20に引き込まれるように傾斜する傾向がある。
【0041】
そうすると、各突起60の作用によって傾斜している第1上框32、第1下框34、第2上框46および第2下框48はそれぞれわずかに変形してほぼ水平となり、平行四辺形を形成していた第1障子16および第2障子18は
図1に示すような矩形となる。なお、本実施の形態では、各上框および各下框の変形は、垂れ下がり量(主に当接上部62(
図1参照)が開くことによる垂れ下がり)の10%程度としている。第1障子16および第2障子18が矩形となることで召し合せ部20が垂れ下がることが抑制され、戸先框42は鉛直向きに維持される。突起60の突出量は、第1障子16および第2障子18が矩形に維持されるように計算、実験、シミュレーションなどによって設定するとよい。
【0042】
上記したが、
図1に示すように建具12は互いの突き合わせ部以外が対称な2つの折れ戸10を有している。2つの折れ戸10にはそれぞれ矢印で示すように自重がかかるが、突起60の作用により双方の戸先框42は鉛直向きに維持されて当接し合う。そのため、当接上部62に隙間が生じることがない。折れ戸10の第1障子16および第2障子18は矩形となるため、各ヒンジ22,36,50や内部機構に無理な力が加わることがない。
【0043】
図14は、第1変形例にかかる建具12Aを示す正面図である。
図15は、折れ戸10が開いた状態の建具12Aの横断面図である。建具12Aは、いわゆる片開き式であり枠体14Aの開口内に1つの折れ戸10を備えている。枠体14Aは、一対の縦枠14Aa,上枠14Abおよび下枠14Acが四周枠組みされている。縦枠14Aaは、上記の枠体14における縦枠14aと同寸法となっている。上枠14Abおよび下枠14Acは、上記の枠体14における上枠14bおよび下枠14cの半分の長さである。折れ戸10は上記の建具12におけるものと実質的に同じである。上記のとおり折れ戸10は、突起60の作用によって第1障子16および第2障子18が矩形に維持されるため、召し合せ部20の垂れ下がりがなく、戸先框42が鉛直向きに維持される。そのため、戸先框42と縦枠14Aaとの当接上部64に隙間が生じることがない。
【0044】
このように、本実施の形態にかかる折れ戸10では、吊元框28の内周側見込面に、第1上框32および第1下框34の各小口の中央高さMより下の部分に突起60が設けられていて各小口を鉛直面に対して傾斜させる。また、戸先框42の内周側見込面に、第2上框46および第2下框48の各小口の中央高さMより下の部分に突起60が設けられていて各小口を鉛直面に対して傾斜させる。これにより、自重のない状態では、第1障子16と第2障子18とは逆傾斜の平行四辺形となり、自重のかかる状態では矩形となり、適正な形態を維持することができる。
【0045】
第1上框32、第1下框34、第2上框46および第2下框48の各小口を傾斜させる手段は、吊元框28、第1召し合せ框30、戸先框42および第2召し合せ框44の各内周側見込み面に形成された突起60であり、部品点数が増えることがなくコストを低減することができ、さらに組み立て作業が容易となる。突起60はパンチなどにより容易に形成することができる。第1上框32、第1下框34、第2上框46および第2下框48の各小口は突起60によって傾斜するため小口自体を傾斜加工する必要はなく、長尺方向に対して鉛直に切断すればよく、通常の加工機による加工が可能である。第1上框32、第1下框34、第2上框46および第2下框48の各小口を傾斜させる手段(吊元側傾斜支持部、戸先側傾斜支持部、第1召し合せ傾斜支持部、第2召し合せ傾斜支持部)は、設計条件によっては突起60に限らず、吊元框28、第1召し合せ框30、戸先框42および第2召し合せ框44の内周側見込面と各小口との間に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させるものであればよい。
【0046】
図16は、第2変形例にかかる建具12Bを示す正面図である。建具12Bは、ドアや縦滑り出し式などの開き戸であり、枠体14Bの開口内に本発明の実施形態にかかる障子70を備えている。枠体14Bは、一対の縦枠14Ba,上枠14Bbおよび下枠14Bcが四周枠組みされている。障子70は、吊元框72、戸先框74、上框76および下框78が四周框組された框体の内部に面材24を備えている。障子70は上記の第1障子16と同様の構成であり、吊元框72、戸先框74、上框76および下框78が吊元框28、第1召し合せ框30、第1上框32および第1下框34に相当する。吊元框72は一方の縦枠14Baと吊元ヒンジ36によって回転可能に連結されており、障子70が開閉可能になっている。
【0047】
吊元框72には吊元框28と同様に各小口の中央高さより下の部分に突起60(第1突起)が設けられており、戸先框74には第1召し合せ框30と同様に各小口の中央高さより上の部分に突起60(第2突起)が設けられており、自重のない状態で障子70を並行四辺形とし、自重のかかっている状態で障子70が矩形になるように作用している。このような建具12Bおよび障子70では、戸先框74の垂れ下がりと傾斜とを抑制することができる。
【0048】
このような障子70は、突起60によって適正な形態が維持される。突起60は吊元框72および戸先框74に形成されていることから部品点数が増えることがなくコストを低減することができ、さらに組み立て作業が容易となる。
【0049】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0050】
本発明にかかる折れ戸は、吊元側の第1障子と戸先側の第2障子とが相互の召し合せ部をヒンジによって折り畳み可能に連結されて、前記第2障子の戸先框が戸車によって支持されている折れ戸であって、前記第1障子は、吊元框、前記召し合せ部を構成する第1召し合せ框、前記吊元框と前記第1召し合せ框との間を連結する第1上框および第1下框を有し、前記第2障子は、前記戸先框、前記召し合せ部を構成する第2召し合せ框、前記戸先框と前記第2召し合せ框との間を連結する第2上框および第2下框を有し、前記第1上框、前記第1下框、前記第2上框および前記第2下框の各小口は見付け面壁および見込み面壁に直交しており、前記吊元框の内周側見込面と前記第1上框および前記第1下框の各小口の中央高さより下の部分との間に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる吊元側傾斜支持部と、前記戸先框の内周側見込面と前記第2上框および前記第2下框の各小口の中央高さより下の部分との間に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる戸先側傾斜支持部と、を有することを特徴とする。このような折れ戸では、上框および下框が対応する傾斜支持部によって自重のない状態で傾斜し、自重のかかる状態になると適正な形態を維持することができる。
【0051】
本発明にかかる折れ戸は、前記第1召し合せ框の内周側見込面と前記第1上框および前記第1下框の各小口の中央高さより上の部分に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる第1召し合せ傾斜支持部と、前記第2召し合せ框の内周側見込面と前記第2上框および前記第2下框の各小口の中央高さより上の部分に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる第2召し合せ傾斜支持部と、を有してもよい。これにより、折れ戸は一層適正な形態に維持される。
【0052】
本発明にかかる折れ戸は、前記吊元側傾斜支持部は前記吊元框の内周側見込面に形成された吊元側突起であり、前記戸先側傾斜支持部は前記戸先框の内周側見込面に形成された戸先側突起であり、前記第1召し合せ傾斜支持部は前記第1召し合せ框の内周側見込面に形成された第1召し合せ突起であり、前記第2召し合せ傾斜支持部は前記第2召し合せ框の内周側見込面に形成された第2召し合せ突起であってもよい。このように、傾斜支持部を突起として形成すると、部品点数を軽減することができる。
【0053】
本発明にかかる折れ戸は、前記吊元側突起、前記戸先側突起、前記第1召し合せ突起、前記第2召し合せ突起は、当接する小口の見込み方向の中心を挟んだ両側に設けられていてもよい。これにより各上框および各下框はバランスよく支持される。
【0054】
本発明にかかる折れ戸は、前記第1上框および前記第1下框には前記吊元框および前記第1召し合せ框に対してビスで固定するためのビスホールが形成されており、前記吊元側突起、前記戸先側突起、前記第1召し合せ突起、前記第2召し合せ突起は、それぞれ一対が前記ビスホールを基準として見込み方向に関して対称の位置に配置されていてもよい。これにより、ビスによる力が上框および下框に対して効果的に作用する。
【0055】
本発明にかかる折れ戸は、前記戸先框は、前記第2上框および前記第2下框と接続されている第1戸先框、および前記第1戸先框に対してヒンジによって折れ曲げ可能に連結されている第2戸先框を有し、前記戸車は前記第2戸先框の下部に設けられていてレールによって移動方向が案内されていてもよい。
【0056】
本発明にかかる障子は、吊元框、戸先框、前記吊元框と前記戸先框との間を連結する上框および下框を有する障子であって、前記吊元框の内周側見込面に、前記上框および前記下框の各小口の中央高さより下の部分に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる第1突起が設けられ、前記戸先框の内周側見込面に、前記上框および前記下框の各小口の中央高さより上の部分に設けられて当該小口を鉛直面に対して傾斜させる第2突起が設けられていることを特徴とする。このような障子によれば、上框および下框が対応する突起によって自重のない状態で傾斜し、自重のかかる状態になると適正な形態を維持することができる。このような傾斜手段を突起によって実現することで部品点数を低減させることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 折れ戸、12,12A,12B 建具、14ca レール、16 第1障子、18 第2障子、20 召し合せ部、22 中間ヒンジ、24 面材、26 第1框体、28 吊元框、30 第1召し合せ框、32 第1上框、34 第1下框、36 吊元ヒンジ、40 第2框体、42 戸先框、42a 第1戸先框、42b 第2戸先框、44 第2召し合せ框、46 第2上框、48 第2下框、50 戸先ヒンジ、52 戸車、54 中継材、56,56d,56u ビスホール、58,58d,58u 貫通孔、60 突起、70 障子、C 中心、M 中央高さ