(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129076
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】固体撮像素子パッケージおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20230907BHJP
H01L 23/08 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H01L23/02 F
H01L23/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033848
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】堀 充啓
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅大
(57)【要約】
【課題】本発明フレアやゴーストなどの光学的ノイズが発生を抑制し、良好な撮像特性を有する固体撮像素子パッケージの製造方法および固体撮像素子パッケージを提供する。
【解決手段】透明基板、熱硬化性樹脂を用いた成形体、接着層、および半導体基板をこの順に有する固体撮像素子パッケージの製造方法であって、熱硬化性樹脂は黒色の顔料または黒色の染料を必須成分として含有し、フレーム構造を有する。成形体のユニットが等間隔に矩形配列した集合体となるよう、透明基板上に成形加工する工程を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板、熱硬化性樹脂を用いた成形体、接着層、および半導体基板をこの順に有する固体撮像素子パッケージの製造方法であって、
(a)黒色の顔料または黒色の染料を必須成分として含有する熱硬化性樹脂を、フレーム構造を有する成形体であって、かつ、前記成形体のユニットが等間隔に矩形配列した集合体となるよう、透明基板上に成形加工する工程、
(b)前記フレーム構造の前記透明基板に接する面とは対となる面と、複数の固体撮像素子が搭載された半導体基板とを、接着層を介して接着させる工程、
(c)前記成形体および前記接着層を介して接着させた、前記透明基板および前記半導体基板を、一体で切断する工程、をこの順に有する、固体撮像素子パッケージの製造方法。
【請求項2】
透明基板、熱硬化性樹脂を用いた成形体、接着層、および半導体基板をこの順に有する固体撮像素子パッケージの製造方法であって、
(a)黒色の顔料または黒色の染料を必須成分として含有する熱硬化性樹脂を、フレーム構造を有する成形体であって、かつ、前記成形体のユニットが等間隔に矩形配列した集合体となるよう、透明基板上に成形加工する工程、
(d)前記フレーム構造を有する成形体付き透明基板を、ダイシングによって個片化して単一のフレーム構造の部材dを形成する工程、
(e)前記部材dの成形体と、単一の固体撮像素子を搭載した半導体基板を、接着層を介して接着させる工程、をこの順に有する、固体撮像素子パッケージの製造方法。
【請求項3】
前記成形体がリブ形状であり、前記成形体断面の透明基板側の幅が、その対となる側の幅よりも大きく、かつ、ガラス基板面の法線に対してリブ側面が勾配を有している、請求項1または2に記載の固体撮像素子パッケージの製造方法。
【請求項4】
前記成形体の勾配を有する形状の断面の勾配角度が2段階以上に変化している、請求項3に記載の固体撮像素子パッケージの製造方法。
【請求項5】
前記成形体の勾配を有する形状の断面は、連続した曲線部分を有する、請求項3に記載の固体撮像素子パッケージの製造方法。
【請求項6】
前記成形体の断面が、2段以上の階段状になっている、請求項3に記載の固体撮像素子パッケージの製造方法。
【請求項7】
前記成形体がトランスファー成形によって形成される、請求項1~6のいずれか1項に記載の固体撮像素子パッケージの製造方法。
【請求項8】
透明基板上に、熱硬化性樹脂を用いた成形体、接着層、および固体撮像素子を搭載した基板、がこの順に積層された固体撮像素子パッケージであって、
前記熱硬化性樹脂は、黒色の顔料または黒色の染料を必須成分として含有し、
前記熱硬化性樹脂は、前記透明基板上にリブ状の成形体を有し、前記リブはフレーム構造になるように形成され、かつそのリブ断面の透明基板側の幅が、その対となる側の幅よりも大きく勾配を有する形状の、固体撮像素子パッケージ。
【請求項9】
請求項8の勾配を有する形状が、以下(1)~(3)のうちの少なくともいずれか1つを満たす、固体撮像素子パッケージ。
(1) 断面勾配が2段階以上に変化している
(2) 断面形状が連続した曲線状になっている
(3) 断面が2段以上の階段状になっている
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂が、SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物からなる(A)成分、および1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する(B)成分を反応させてなる、請求項8または9のいずれか1項に記載の固体撮像素子パッケージ。
【請求項11】
前記(A)成分が、一般式(1)及び/又は(2)からなる構造であり、(B)成分が一般式(2)または(3)からなる構造である、請求項8~10のいずれか1項に記載の固体撮像素子パッケージ。
【化1】
(式中R1は炭素数1~50の一価の有機基または水素原子を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。)
【化2】
(式中、それぞれのR2、R3は、水素あるいは炭素数1~50の一価の有機基を表し、それぞれのR2、R3は異なっていても同一であってもよいが、(B)成分として用いる場合は少なくとも2個は水素である。nは1~1000の数を表す。)
【化3】
(式中、R4は水素あるいは炭素数1~6の有機基を表し、それぞれのR4は異なっていても同一であってもよいが、少なくとも2個は水素である。nは2~10の数を表す。)
【請求項12】
前記固体撮像素子パッケージが、CMOSイメージセンサパッケージまたはSPADセンサパッケージである、請求項8~11のいずれか1項に記載の固体撮像素子パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサなどの固体撮像素子はデジタルカメラやスマートフォン等に使用されており、近年では、監視用カメラ、車載用カメラ、工場自動化用カメラ、などの普及に伴い使用量が増大するとともに、小型化・高精細化がますます要求されてきている。
【0002】
固体撮像素子は、特許文献1および2に示すように、受光素子を搭載した半導体基板と、受光素子の外周を覆うようなフレーム構造を有する部材で中空構造を形成し、その上からガラスなどの透明基板で貼り合わされたパッケージ構造が代表的な構成の1つであり、それぞれの部材は、接着剤で貼り合わせて作成される。
【0003】
一般に、固体撮像素子パッケージの中空空間内に強い光が入射すると、中空空間内に迷光が発生し、強度の高い迷光が特定の画素に入射することが原因で、撮像した画像にフレアやゴーストと呼ばれる光学的ノイズが発生する課題がある。光学的ノイズはリブ材の側面やガラス面とリブを貼り合わせる際に用いる接着剤層で迷光が反射することが原因となる場合があり、改善の余地があった。特許文献1では、透光板に接着剤を介さずに直接樹脂成形を行うことで、接着剤層に入射光の迷光が当たり、散乱することによる受光素子への悪影響を防ぐことを目的とした例が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-129720号公報
【特許文献2】特開第2005-353826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1の発明は、樹脂組成やリブ構造についての記載が不十分であり、固体撮像素子への散乱をより低減する上ではさらなる検討が必要であった。また成形方法についても言及がなく、品質と生産性を両立させるための手段を検討する必要があった。
具体的には、樹脂組成として黒色顔料を必須成分として含む材料を用いたフレーム構造を形成することによって、光学的ノイズが発生することを抑制し良好な撮像特性を有する固体撮像素子パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために検討を重ねた結果、以下に示す樹脂組成およびリブ形状を構成いて固体撮像素子パッケージを製造することによって上記の課題を解決し、本発明を完成するに至った。
【0007】
[1]透明基板、熱硬化性樹脂を用いた成形体、接着層、および半導体基板をこの順に有する固体撮像素子パッケージの製造方法であって、
(a)黒色の顔料または黒色の染料を必須成分として含有する熱硬化性樹脂を、フレーム構造を有する成形体であって、かつ、前記成形体のユニットが等間隔に矩形配列した集合体となるよう、透明基板上に成形加工する工程、
(b)前記フレーム構造の前記透明基板に接する面とは対となる面と、複数の固体撮像素子が搭載された半導体基板とを、接着層を介して接着させる工程、
(c)前記成形体および前記接着層を介して接着させた、前記透明基板および前記半導体基板を、一体で切断する工程、をこの順に有する、固体撮像素子パッケージの製造方法。
【0008】
[2] 透明基板、熱硬化性樹脂を用いた成形体、接着層、および半導体基板をこの順に有する固体撮像素子パッケージの製造方法であって、
(a)黒色の顔料または黒色の染料を必須成分として含有する熱硬化性樹脂を、フレーム構造を有する成形体であって、かつ、前記成形体のユニットが等間隔に矩形配列した集合体となるよう、透明基板上に成形加工する工程、
(d)前記フレーム構造を有する成形体付き透明基板を、ダイシングによって個片化して単一のフレーム構造の部材dを形成する工程、
(e)前記部材dの成形体と、単一の固体撮像素子を搭載した半導体基板を、接着層を介して接着させる工程、をこの順に有する、固体撮像素子パッケージの製造方法。
【0009】
[3] [1]または[2]に記載の固体撮像素子パッケージの製造方法において、前記成形体がリブ形状であり、前記成形体断面の透明基板側の幅が、その対となる側の幅よりも大きく、かつ、ガラス基板面の法線に対してリブ側面が勾配を有していることが好ましい。
【0010】
[4] [3]に記載の固体撮像素子パッケージの製造方法において、前記成形体の勾配を有する形状の断面の勾配角度が2段階以上に変化していることが好ましい。
【0011】
[5] [3]に記載の固体撮像素子パッケージの製造方法において、前記成形体の勾配を有する形状の断面は、連続した曲線部分を有することが好ましい。
【0012】
[6] [3]に記載の固体撮像素子パッケージの製造方法において、前記成形体の断面が、2段以上の階段状になっていることが好ましい。
【0013】
[7] [1]~[5]のいずれか1項に記載の固体撮像素子パッケージの製造方法において、前記成形体がトランスファー成形によって形成されることが好ましい。
【0014】
[8] 透明基板上に、熱硬化性樹脂を用いた成形体、接着層、および固体撮像素子を搭載した基板、がこの順に積層された固体撮像素子パッケージであって、
前記熱硬化性樹脂は、黒色の顔料または黒色の染料を必須成分として含有し、
前記熱硬化性樹脂は、前記透明基板上にリブ状の成形体を有し、前記リブはフレーム構造になるように形成され、かつそのリブ断面の透明基板側の幅が、その対となる側の幅よりも大きく勾配を有する形状の、固体撮像素子パッケージを用いることが好ましい。
【0015】
[9] [8]の勾配を有する形状が、以下(1)~(3)のうちの少なくともいずれか1つを満たす、固体撮像素子パッケージを用いることが好ましい。
(1) 断面勾配が2段階以上に変化している
(2) 断面形状が連続した曲線状になっている
(3) 断面が2段以上の階段状になっている
【0016】
[10] [8]または[9]のいずれかに記載の固体撮像素子パッケージにおいて、前記熱硬化性樹脂が、SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物からなる(A)成分、および1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する(B)成分を反応させてなることが好ましい。
【0017】
[11] [8]~[10]のいずれかに記載の固体撮像素子パッケージにおいて、前記(A)成分が、一般式(1)及び/又は(2)からなる構造であり、(B)成分が一般式(2)または(3)からなる構造であることが好ましい。
【化1】
(式中R1は炭素数1~50の一価の有機基または水素原子を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。)
【化2】
(式中、それぞれのR2、R3は、水素あるいは炭素数1~50の一価の有機基を表し、それぞれのR2、R3は異なっていても同一であってもよいが、(B)成分として用いる場合は少なくとも2個は水素である。nは1~1000の数を表す。)
【化3】
(式中、R4は水素あるいは炭素数1~6の有機基を表し、それぞれのR4は異なっていても同一であってもよいが、少なくとも2個は水素である。nは2~10の数を表す。)
【0018】
[12][8]~[11]のいずれかに記載の固体撮像素子パッケージにおいて、前記固体撮像素子パッケージが、CMOSイメージセンサまたはSPADセンサパッケージであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明を用いることで、従来以上に固体撮像素子に入射する迷光が低減し、フレアやゴーストなどの光学的ノイズの発生を抑制することができる。さらにこの発明により、このようなリブ状フレーム構造を有する透明基板からなる固体撮像素子パッケージを高効率で生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフレーム構造の格子状集合体が成形された透明基板の斜視図
【
図2】本発明の一実施形態に係るフレーム構造の角状集合体が成形された透明基板の斜視
図1
【
図3】本発明の一実施形態に係るフレーム構造の角状集合体が成形された透明基板の斜視
図2
【
図4】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子搭載基板の斜視図
【
図5】透明基板と半導体基板の貼り合わせおよび個片化プロセス図
【
図6】透明基板と半導体基板を個片化してから貼り合わせる製法のプロセス図
【
図7】個片化された固体撮像素子パッケージの一実施形態に係る断面模式
図1
【
図8】個片化された固体撮像素子パッケージの他の実施形態に係る断面模式
図2
【
図9】個片化された固体撮像素子パッケージの他の実施形態に係る断面模式
図3
【
図10】個片化された固体撮像素子パッケージの他の実施形態に係る断面模式
図4
【
図11】トランスファー成形による透明基板上への熱硬化性樹脂の成形加工プロセスの模式図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0022】
まず本発明の一実施形態に係る固体撮像素子パッケージの製造方法について示す。
【0023】
[一実施形態]
一実施形態における固体撮像素子パッケージは、
図7に示すように、透明基板1、熱硬化性樹脂を用いた成形体2、接着層5、および半導体基板3をこの順に有する。半導体基板3条には固体撮像素子4が搭載されている。
【0024】
一実施形態における固体撮像素子パッケージは、
(a)黒色の顔料または黒色の染料を必須成分として含有する熱硬化性樹脂を、フレーム構造を有する成形体であって、かつ、前記成形体のユニットが等間隔に矩形配列した集合体となるよう、透明基板上に成形加工する工程、
(b)前記フレーム構造の前記透明基板に接する面とは対となる面と、複数の固体撮像素子が搭載された半導体基板とを、接着層を介して接着させる工程、
(c)前記成形体および前記接着層を介して接着させた、前記透明基板および前記半導体基板を、一体で切断する工程、をこの順に有する。
【0025】
<(a)工程>
(a)成形体2は、透明基板上に成形加工される。
【0026】
[透明基板]
本発明における透明基板1にはガラスやサファイヤなどの透明セラミック、アクリル樹脂やポリカーボネート等の透明プラスチックを用いることができ、信頼性の観点からガラスや透明セラミックが好ましい。ガラスの種類は特に限定されないが、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
【0027】
[熱硬化性樹脂を用いた成形体]
成形体2は、黒色の顔料または黒色の染料を必須成分として含有する熱硬化性樹脂により形成される。成形体は、フレーム構造を有し、前記成形体のユニットが等間隔に矩形配列した集合体となるよう、透明基板上に成形加工される。成形体としては、リブ状のものが好ましく用いられる。
【0028】
(フレーム構造)
フレーム構造としては、角状、格子状、円状等が挙げられ、
図1は格子状の形状である。角状は例えば
図2または3のような構造、円状は、
図2または
図3の角状の四角形状のリブ構造が円形のそれに置き換わった構造である。後述するトランスファー成形によってこれらの成形体を作製する場合は、
図1または
図3のようにすべての樹脂が連結した構造とすることが、樹脂の充填性を高める観点で好ましい。
【0029】
通常、固体撮像素子は長方形や正方形の形状であるため、固体撮像素子パッケージのサイズを小型化する観点でフレーム構造を角状(例えば
図2や
図3)または格子状(
図1)にすることが好ましい。さらには、成形体の流動性を確保する観点、製品に余分なランナー形状が残らないという観点で格子状が好ましい。
フレーム構造が角状または格子状の場合、フレーム構造の内周側及び/又は外周側の4角にはR形状を持たせることが好ましい。中でも、内周側にR形状を有することがより好ましく、内周側および外周側にR形状を有することがさらに好ましい。これは、はんだリフローやヒートサイクル試験時において4角への応力集中が緩和され、フレーム構造を有するリブの剥離やクラックが改善し信頼性が向上するためである。具体的なR値はリブの外周側においては0.01mm~1.0mmが好ましく、内周側においては0.01mm~1.0mmが好ましい。
【0030】
フレーム構造の開口部の大きさは固体撮像素子の大きさにより任意に選択可能である。具体的には開口部の一辺(フレームの内寸)が2~50mmが好ましく、特に3~45mmが好ましい。また開口部の長さは縦と横で異なっていてもよい。
【0031】
前記フレーム構造は後工程でダイシングなどの方法により切断して個片化する場合、等間隔の矩形配列にすることで同じピッチで切断できるため生産効率が良くなる。ここで言う「等間隔」とは、縦方向及び/又は横方向を意味し、縦方向と横方向でそれぞれ異なっていてもよい。例えば正方形のフレーム構造を有する透明基板であれば縦方向も横方向も同じピッチで切断することが好ましいが、長方形のフレーム構造であれば、基板の切断長さは縦方向と横方向ではそれぞれのピッチは異なっていてもよい。
【0032】
(リブ形状)
本明細書におけるリブ断面の形状は、
図7のように透明基板側の幅が、その対となる側の幅よりも大きく、かつ、ガラス基板面の法線に対してリブ側面が勾配を有する形状を有していることが好ましい。これにより固体撮像素子パッケージが実装時にガラス面が上になって、成形体台形断面の下辺より上辺が長くなる。このような形状とすることで、リブ側面に入射する光の反射角が大きくなって固体半導体素子に迷光が低減するため、光学的ノイズが抑制される。
加工性の観点から、
図7にθで示される勾配は、1~70度が好ましく、5~60度がより好ましい。
【0033】
本明細書における成形体2の勾配を有する形状としては、勾配が2段階以上に変化していてもよい。例えば
図8に示すように2段階に変化していてもよい。この変化はガラス面に近いほど勾配が大きくなる方が好ましい。この場合のそれぞれの勾配も前記の範囲で設定することが好ましい。このような構造とすることで、チップに実装されるワイヤーとリブに十分な間隔を与え、ワイヤーの実装マージンの低下なく、有効画素領域以外のガラス面の遮光面積が増えるため、さらに迷光が低減し、光学的ノイズが抑制される。
【0034】
同様の効果を狙うため、本発明における成形体2の勾配を有する形状としては、連続した曲線部分を有してもよい。例えば
図9に示すような曲線構造である。この曲線構造は
図9に示すような単純な弧型構造の他、2段以上の波型構造、非定形の曲線構造などを有していてもよい。曲面は形成する弧の接線とガラス面の法線の角度を勾配と定義し、この勾配は前記の範囲で設定されることが好ましい。リブ側面から中央に近づくに連れて、成形体の体積が減少するような構造(すなわち中空部の体積が増加するような構造)が好ましい。
【0035】
また同様の効果を狙うため、本発明における成形体2の勾配を有する形状としては、2段以上の階段状になっていてもよい。例えば
図10に示すような構造である。この階段状構造はガラス面に近いほど、樹脂の底面積が大きくなることが好ましい。
【0036】
これらの構造は、リブ側面から中央に近づくに連れて中空部の体積が増え、チップに実装されるワイヤーたわみ部とリブの間隔が広がり、パッケージサイズを変えることなくワイヤー実装マージンが大きくなるため、生産効率が向上する点で好ましい。また同じサイズの固体撮像素子を実装しながらパッケージサイズを小型にできる点でも好ましい。
これらの勾配を有する形状は単独で用いてもよいし、複数の形状(例えば、階段+曲線)を組み合わせてもよい。
【0037】
(黒色の顔料または黒色の染料)
この成形体に用いる熱硬化性樹脂は、黒色の顔料または黒色の染料を含有する。これらの成分を含有させることによって固体撮像素子パッケージ内に入射した光のうち、リブの側面に反射する光の多くがリブに吸収されるため、固体撮像素子の迷光が低減し光学的ノイズが抑制される。
【0038】
ここで使用される黒色の顔料または黒色の染料としては、熱硬化性樹脂中にて使用される際に顔料または染料が黒色に見えればよく、典型的には、後述のように厚さ1mmにおいて、300~700nmの波長帯での光学濃度(OD)が、1.0以上を満たす。黒色の顔料または黒色の染料としては例えば無機黒色顔料、有機黒色顔料、有機染料などが挙げられる。無機黒色顔料としては、例えばカーボンブラック、黒色低次酸窒化チタン、クロム酸塩系黒色顔料、鉄黒などが挙げられる。黒色有機顔料としては、例えばアントラキノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、アゾ系黒色顔料、ラクタム系黒色顔料等が挙げられる。有機染料としては、例えばアニリンブラックなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。また2種以上の有彩色の顔料を、得られる混合物が黒色となるように、すなわち可視光領域の波長の光を広く吸収するように配合した混色顔料を用いてもよい。有彩色の顔料として例えば、無機顔料としてはアンバー、シェンナなどの褐色顔料、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの白色顔料、鉛丹、弁柄などの赤色系顔料、黄鉛、亜鉛黄などの黄色顔料、ウルトラマリン青、プルシアン青などの青色顔料などが挙げられる。有機顔料としては、イソインドリノン、イソインドリン、アゾメチン、アントラキノン、アントロン、キサンテンなどを主成分とする黄色顔料、ジケトピロロピロール、ペリレン、アントラキノン(アントロン)、ペリノン、キナクリドン、インジゴイドなどを主成分とする橙色顔料、キナクリドン、ジケトピロロピロール、アントラキノン、ペリレン、ペリノン、インジゴイドなどを主成分とする赤色顔料、フタロシアニン、アントラキノン、インジゴイドなどを主成分とする青色顔料、フタロシアニン、アゾメチン、ペリレンなどを主成分とする緑色顔料などが挙げられる。
【0039】
顔料または染料の含有量は全硬化性組成物全体に占める合計量が0.1~20重量%であることが好ましく、0.5~10重量%であることがさらに好ましい。0.1重量%未満となる場合は、入射光の吸収が不十分となり、光学的ノイズの抑制が低減されない。また、20重量%を超えると熱硬化性樹脂の混合状態が悪化し、まとまりが悪くなり、強度が不十分となるため好ましくない。
【0040】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
これらの中では、耐熱性および加工性の観点から、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂が好ましい。
【0041】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリウレタン、エポキシ変性ポリエステル、エポキシ変性ポリブタジエン、エポキシ変性シリコーンなどが挙げられる。
不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和ジカルボン酸とグリコールの反応物を有するポリマーの総称である。不飽和ジカルボン酸としてはフマル酸、無水マレイン酸などが挙げられる。とグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。これらの組み合わせからなる共縮合体を、スチレンなど不飽和基を有するモノマーと併せて共重合することで、三次元構造を形成することも可能であり、これを用いることでより耐熱性や加工性に優れる材料となる。
【0042】
フェノール樹脂としては、一般的なノボラック型フェノール樹脂やレゾール型フェノール樹脂を使用することができる。
【0043】
中でもケイ素樹脂が特に好ましく、例えば付加型シリコーン樹脂、縮合型シリコーン樹脂、シロキサン結合含有硬化性有機樹脂、炭素-ケイ素結合含有樹脂などがある。さらに耐熱性の観点から、付加型シリコーン樹脂、縮合型シリコーン樹脂、シロキサン結合含有硬化性有機樹脂が好ましい。その中でも特に(A)成分としてSiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物、(B)成分としてSiH基を1分子中に少なくとも2個含有する化合物、(C)成分としてヒドロシリル化触媒を用いた、シロキサン結合含有硬化性有機樹脂が好ましい。これを用いることによって、接着強度および耐熱信頼性が向上する。これらの各成分についてさらに詳細を説明する。
【0044】
((A)成分)
(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物である。
具体的な例としては、ジビニルベンゼン類、ジビニルビフェニル、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマーや、ビスフェノールAジアリルエーテルや、ビス〔4-(2-アリルオキシ)フェニル〕スルホン、フェノールノボラック樹脂等の芳香環含有エポキシ樹脂に結合するグリシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置換したもの等が挙げられる。また、その他ポリエステル系、ポリアクリル酸エステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系等の有機重合体骨格や、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系、脂肪族アルコール系の有機骨格に炭素―炭素二重結合を2個以上有する各種化合物を使用することができる。
【0045】
また、下記一般式(1)
【化1】
(式中R1は炭素数1~50の一価の有機基または水素原子を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。)で表される有機化合物を用いることもできる。これらの具体的なものとしては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0046】
これらのSiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に2個以上含有する化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートを用いることがより好ましく、基材に対する接着性の観点からジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートがさらに好ましい。
【0047】
また(A)成分としては、シリコーン樹脂を用いてもよい。添加することによって耐熱性向上や反り低減やじん性改善の効果が期待できる。シリコーン樹脂としては分子内に炭素-炭素二重結合を平均1個以上含む鎖状ポリオルガノシロキサン、ラダー状のポリオルガノシロキサンまたはポリオルガノシルセスキオキサン、かご状のポリオルガノシロキサンまたはポリオルガノシルセスキオキサンなどが挙げられる。
【0048】
(A)成分と併せて、耐熱性向上やじん性改善などの目的でエポキシ樹脂を用いることも可能である。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリウレタン、エポキシ変性ポリエステル、エポキシ変性ポリブタジエン、エポキシ変性シリコーンなどが挙げられる。
【0049】
これらの中では耐熱性や入手性の観点で、鎖状ポリオルガノシロキサンが好ましく、例えば、下記一般式(2)
【化2】
(式中、それぞれのR2、R3は、水素あるいは炭素数1~50の一価の有機基を表し、それぞれのR2、R3は異なっていても同一であってもよい。nは1~1000の数を表す。)で表される化合物が挙げられる。
R2、R3としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1~20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1~15の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1~10の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR2、R3の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、メトキシ基、エトキシ基、ビニル基、アリル基、グリシジル基等が挙げられる。
【0050】
これらSiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物は単独で使用しても2種類以上を併用しても構わない。
本発明における(A)成分は、得られる硬化物の強度や、耐熱性等の観点から、炭素-炭素二重結合を1分子中に平均して2個以上含有していることが好ましく、より好ましくは2個含有することが好ましい。また貯蔵安定性が良好となりやすいという観点からは、1分子中に6個以下含有していることが好ましく、1分子中に4個以下含有していることがより好ましい。
【0051】
(A)成分の量としては、(A)成分および後述する(B)成分の合計の重量を100重量%としたとき、合計の重量に対する(A)成分の重量が10重量%以上であることが好ましく、12.5重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上であることがさらに好ましい。
【0052】
(A)成分としてはその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの官能基を有している場合には得られる硬化性組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0053】
また(A)成分と併せて、SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有する化合物を用いてもよい。このような化合物を用いた場合、後述する(B)成分に対して(A)成分の架橋密度を抑制する構造となるため、低弾性率で比較的柔軟な樹脂となる。このような化合物としては特に限定はないが、具体的な例としては、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-ウンデセン、出光石油化学社製リニアレン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、2-メチル-1-ヘキセン、2,3,3-トリメチル-1-ブテン、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン等のような鎖状脂肪族炭化水素系化合物類、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、ノルボルニレン、エチリデンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、カンフェン、カレン、αピネン、βピネン等のような環状脂肪族炭化水素系化合物類、スチレン、αメチルスチレン、インデン、フェニルアセチレン、4-エチニルトルエン、アリルベンゼン、4-フェニル-1-ブテン等のような芳香族炭化水素系化合物、アルキルアリルエーテル、アリルフェニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のアリルエーテル類、ビニルシクロヘキセンオキサイド、3-ビニルオキセタン-3-オール、2-フェニル-2-ビニルオキセタン、グリセリンモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン等の脂肪族系化合物類、1,2-ジメトキシ-4-アリルベンゼン、o-アリルフェノール等の芳香族系化合物類、モノアリルジベンジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等の置換イソシアヌレート類、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェニルシラン等のシリコーン化合物等が挙げられる。
【0054】
((B)成分)
(B)成分は1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に制限は無く、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
【0055】
これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましい。鎖状ポリオルガノシロキサンの例としては、下記一般式(2)
【化2】
(式中、それぞれのR2、R3は、水素あるいは炭素数1~50の一価の有機基を表し、それぞれのR2、R3は異なっていても同一であってもよいが、少なくとも2個は水素である。nは1~1000の数を表す。)で表される化合物が挙げられる。
R2、R3としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1~20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1~15の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1~10の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR2、R3の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、メトキシ基、エトキシ基、ビニル基、アリル基、グリシジル基等が挙げられる。
【0056】
環状ポリオルガノシロキサンの例としては、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R4は水素あるいは炭素数1~6の有機基を表し、それぞれのR4は異なっていても同一であってもよいが、少なくとも2個は水素である。nは2~10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。なお、上記一般式(VI)におけるR24は、C、H、Oから構成される炭素数1~6の有機基であることが好ましく、炭素数1~6の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがさらに好ましい。また、nは3~10の数であることが好ましい。一般式(3)で表される化合物中の置換基R1は、C、H、Oから構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0057】
一般式(3)で表される化合物としては、1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられ、入手容易性の観点からは、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
(B)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0058】
((B)成分の好ましい構造)
(B)成分の揮発性が低くなり得られる硬化性樹脂組成物からのアウトガスの問題が生じ難いという観点及び該組成物から得られる硬化物に実用的な強度・靭性を与えるという観点から、揮発性が実質上なく、シロキサン骨格に加えて有機化合物由来の骨格が導入された成分を有することが、シロキサン骨格だけから構成される化合物よりも好ましい。該化合物の製造法は限定されないが(B)成分は、SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物(α)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物(β)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることが好ましい。
【0059】
((α)成分)
ここで(α)成分は上記した(A)成分の説明の中で示したSiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物と同じもの(α1)も用いることができる。(α1)成分を用いると得られる硬化物の架橋密度が高くなり力学強度が高い硬化物となりやすい。
【0060】
その他、SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に1個含有する化合物(α2)も用いることができる。(α2)成分としては、SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に1個含有する化合物であれば特に限定されない。
(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。(α2)成分の具体的な例としては、前述した(A)成分以外に炭素-炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機化合物などが挙げられる。
【0061】
(α2)成分の構造は線状でも枝分かれ状でもよく、分子量は特に制約はなく種々のものを用いることができる。分子量分布も特に制限ないが、混合物の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
(α2)成分としてはその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの官能基を有している場合には得られる硬化性樹脂組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。エポキシ基の中では、グリシジル基やシクロヘキセンオキサイドに様な環状エポキシ基が特に好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。具体的にはモノアリルジグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキサイド、アリロキシエチルメタクリレート、アリロキシエチルアクリレート、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記のような(α1)成分あるいは/および(α2)成分としては単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0062】
((β)成分)
(β)成分は、上記(B)成分の説明で挙げた各種化合物を使用することができ、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましく、さらには1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
(β)成分のその他の例として、ビスジメチルシリルベンゼンなどのSiH基を有する化合物をあげることができる。
上記したような各種(β)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0063】
((α)成分と(β)成分の反応)
次に、本発明の(B)成分として、(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応して得ることができる化合物を用いる場合の、(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応に関して説明する。
【0064】
尚、(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応すると、本発明の(B)成分を含む複数の化合物の混合物が得られることがあるが、そこから(B)成分を分離することなく混合物のままで用いて本発明の硬化性樹脂組成物を作製することもできる。
(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合の(α)成分と(β)成分の混合比率は、特に限定されないが、得られる(B)成分と(A)成分とのヒドロシリル化による硬化物の強度を考えた場合、(B)成分のSiH基が多い方が好ましいため、一般に混合する(α)成分中のSiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合の総数(X)と、混合する(β)成分中のSiH基の総数(Y)との比が、Y/X≧2であることが好ましく、Y/X≧3であることがより好ましい。また(B)成分の(A)成分との相溶性がよくなりやすいという点からは、10≧Y/Xであることが好ましく、5≧Y/Xであることがより好ましい。
【0065】
(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば次のようなものを用いることができる。白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金-オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH2)2(PPh3)2、Pt(CH2=CH2)2Cl2)、白金-ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4]m)、白金-ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4)、白金-ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)3]4、Pt[P(OBu)3]4)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金-炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金-オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0066】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl2O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0067】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性樹脂組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、(β)成分のSiH基1モルに対して10-8モル、より好ましくは10-6モルであり、好ましい添加量の上限は(β)成分のSiH基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1,2-ジエステル系化合物、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10-2モル、より好ましくは10-1モルであり、好ましい添加量の上限は102モル、より好ましくは10モルである。
【0068】
反応させる場合の(α)成分、(β)成分、触媒の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、(α)成分に触媒を混合したものを、(β)成分に混合する方法が好ましい。(α)成分、(β)成分の混合物に触媒を混合する方法だと反応の制御が困難である。(β)成分と触媒を混合したものに(α)成分を混合する方法をとる場合は、触媒の存在下(β)成分が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
反応温度としては種々設定できるが、この場合好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
【0069】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0070】
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
(α)成分と(β)成分を反応させた後に、溶媒あるいは/および未反応の(α)成分あるいは/および(β)成分を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる(B)成分が揮発分を有さないため(A-1)成分との硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは60℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0071】
以上のような、(α)成分と(β)成分の反応物である(B)成分の例としては、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビス〔4-(2-アリルオキシ)フェニル〕スルホンと1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルシクロヘキセンと1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジシクロペンタジエンと1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、アリルグリシジルエーテルと1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、αメチルスチレンと1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルノルボルネンとビスジメチルシリルベンゼンとの反応物等を挙げることができる。
【0072】
((C)成分)
ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金-オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH2)2(PPh3)2、Pt(CH2=CH2)2Cl2)、白金-ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4]m)、白金-ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4)、白金-ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)3]4、Pt[P(OBu)3]4)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号および3159662号明細書中に記載された白金-炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金-オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0073】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl2O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0074】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性樹脂組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、(A-2)成分のSiH基1モルに対して10-8モル、より好ましくは10-6モルであり、好ましい添加量の上限は(A-2)成分のSiH基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
【0075】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1,2-ジエステル系化合物、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10-2モル、より好ましくは10-1モルであり、好ましい添加量の上限は102モル、より好ましくは10モルである。
【0076】
((D)成分)
熱硬化性樹脂には、強度改善、流動性調整、分散状態改善、かさ増しなどを目的として(D)成分を加えてもよい。
(D)成分は、シリカであり、0~1000℃の温度範囲において、熱膨張係数が0.45~0.60×10-6/℃の無機フィラーである。
シリカの形状や大きさについては特に限定はなく、例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機充填材を例示することができる。
シリカの形状としては、破砕状、片状、球状、棒状等、各種のものが用いられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0077】
(D)成分の含有量は全硬化性組成物全体に占める合計量が30~90重量%であることが好ましく、30重量%より少ないと、組成物における(A)成分や(B)成分の比率が相対的に増加して熱膨張係数が高くなり、透明基板の反りが大きくなるため好ましくない。また90重量%を超えると、組成物を混合する際に、(A)成分および(B)成分の分散性が悪化することや、組成物の成形性が悪くなるため好ましくない。さらには35~90重量%であることが更に好ましく、40~88重量%であることがより好ましい。
【0078】
シリカの中では、成形性、電気特性等の物性バランスがよいという点において溶融シリカが好ましく、パッケージの熱伝導性が高くなり易く放熱性の高いパッケージ設計が可能になるという点においては結晶性シリカが好ましい。シリカの平均粒径や粒径分布としては、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として使用あるいは/および提案されているものをはじめ、特に限定なく各種のものが用いられるが、通常用いられる平均粒径の下限は0.1μm、流動性が良好になりやすいという点から好ましくは0.3μmであり、通常用いられる平均粒径の上限は120μm、流動性が良好になりやすいという点から好ましくは60μm、より好ましくは55μmである。
【0079】
(D)成分以外にもさらに無機充填材を用いることが可能である。無機充填材としては各種のものが用いられるが、アルミナ、ジルコン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、無機バルーン、銀粉等の無機充填材をはじめとして、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として一般に使用あるいは/および提案されている無機充填材等を挙げることができる。これらの無機充填材としては、半導体素子へダメージを与え難いという観点からは、低放射線性であることが好ましい。
【0080】
(樹脂組成物の作製)
本発明の熱硬化性樹脂を形成するための樹脂組成物の各成分を混合する手段としては、従来エポキシ樹脂等に用いられおよび/または提案されている種々の手段を用いることができる。例えば、2本ロールまたは3本ロールなどのロール型混錬装置、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等の撹拌機、プラストミル等の溶融混練機等が挙げられる。これらのうち、高充填であっても無機充填材の十分な分散性が得られやすいという点においては、3本ロール、溶融混練機が好ましい。無機充填材の混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよい。また、常圧下に行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。高充填であっても無機充填材の十分な分散性が得られやすいという点においては、加熱状態で混合することが好ましく、無機充填材表面の塗れ性を向上し十分な分散性が得られやすいという点においては減圧状態で混合することが好ましい。
【0081】
混合して得られた樹脂組成物は、後述するトランスファー成形に用いる場合は固体のタブレット形状に加工することが好ましい。タブレットの形状は、特に限定されず、円柱状、角柱状、円盤状、球状などの形状を含むが、トランスファー成形において一般的な円柱状が好ましい。
【0082】
本明細書において、成形体として使用される熱可塑性樹脂は、光学ノイズを抑制する観点で、厚さ1mmにおいて、300~700nmの波長帯での光学濃度(OD)が、1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。
【0083】
(成形方法)
本明細書における熱硬化性樹脂を用いた成形体2は、トランスファー成形や射出成形、または圧縮成形により形成されることが好ましく、バリが発生し難いトランスファー成形や射出成形により形成されることが特に好ましく、材料の調整及び工程管理が容易なトランスファー成形により形成されることが特に好ましい。
【0084】
トランスファー成形を用いることによって、フレーム構造のリブの厚みの設計を容易に行うことができる。リブの厚みは0.05~3mmが好ましく、0.1~2mmがさらに好ましい。
【0085】
トランスファー成形の方法としては、例えば
図11<1>に示すような、樹脂ランナー部と成形体2を形成するための切削加工がなされた上金型7と、透明基板1の厚み分の座繰りの窪みを有する下金型8を用いて行うことができる。あらかじめ所定の温度に加熱した上金型7および下金型8を準備し、樹脂を金型内に押し込むためのプランジャ9の上に樹脂組成物10を投入してから<2>のように金型同士で透明基板を挟み込んでクランプ固定する。樹脂組成物10は金型の熱によって低粘度化するため、<3>のようにプランジャを押し上げて注入することで透明基板上の金型空隙部に流入し、フレーム構造が形成される。そして<3>のクランプ状態を維持しながら所定時間加熱を続けると樹脂組成物10が硬化される。硬化後、金型から離型すると、<4>のように透明基板上に成形体が形成される。その後、樹脂ランナー部11を除去することによって、目的の成形体(例えば
図1,3など)が得られる。
【0086】
得られた成形体は、後硬化させるために所定温度で加熱してもよい。加熱温度は100℃~300℃が好ましい。100℃以上にすることで硬化反応をより進行させることができる。また300℃以下とすることで、樹脂の高温劣化を抑制することができる。
本発明の成形体2は表面に粗面化加工がされていてもよい。粗面化することによってリブ側面の入射光がさらに拡散されて、固体撮像素子への迷光が低減する。粗面化の方法としては、成形金型にあらかじめ梨地加工やジグザグ形状などの凹凸を施す方法や、成形体にブラスト加工を行う方法などが挙げられる。
【0087】
<(b)工程>
(b)工程は、フレーム構造の透明基板に接する面とは対となる面と、複数の固体撮像素子が搭載された半導体基板とを、接着層を介して接着させる工程、を有する。
【0088】
[接着層]
接着層は、接着剤を塗布することによって得られる。この時使用する接着剤としては、熱硬化性接着剤、光硬化性接着剤、湿気硬化性接着剤、溶剤型接着剤などを様々なものを使用することができるが、耐熱信頼性の観点から熱硬化型接着剤が特に好ましい。熱硬化型接着剤としては、例えばエポキシ樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、ポリイミド樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤などが挙げられる。
【0089】
接着剤の塗布方法としては、筆や棒によって接着剤を塗り広げる描画法、ディスペンサにより所定部に塗布するディスペンサ法、スプレーコーターにより所定部に噴霧するスプレー法、接着剤の液面または接着剤含浸材に接着面を接触させて塗布するスタンプ法、印刷機を使って塗布する印刷法などが挙げられる。この中では均一に塗布できる観点および量産性の観点で、スタンプ法または印刷法による塗布が好ましい。
【0090】
[半導体基板]
一方半導体基板は、
図2に示す基板3の上に固体撮像素子4が配置される。これらの固体撮像素子は、成形体2の開口部4の中に配置にするよう等間隔かつ矩形配列となるよう実装される。
【0091】
半導体基板の材質・構成には特に限定はなく、剛性、寸法安定性および耐熱性を鑑みて好適なものを選択できる。例えば半導体基板としては、ポリイミド、ポリエステル、セラミック、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン、フェノール樹脂等の有機物や、紙やガラス繊維不織布などに前記の有機物を含侵させて加熱硬化させた構造物、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、窒化ケイ素などのセラミックなどの絶縁性の基板が挙げられる。これら絶縁性基板の表面または内部に、金属配線パターンや金属バンプを有する回路を形成することができる。
【0092】
半導体基板に固体撮像素子を実装する場合は、一般的な半導体実装の手法を用いることができ、例えばダイボンダを用いて素子を半導体基板に接着したのち、ワイヤーボンダを用いて素子配線部と半導体基板の配線部をワイヤー接続することで実装が可能である。また、素子の裏面をはんだや導電性ペーストなどを用いて基板配線と接合することでフリップチップ実装を行うことも可能である。
【0093】
成形体2が形成された透明基板と半導体基板は接着、切断され、単一の固体撮像素子パッケージが製造される。その一例として、
図5<1>のように、成形体2のフレーム構造の開口部中央に固体撮像素子4が位置するよう調整して、
図5<2>に示すように、成形体2の透明基板に接する面の対となる面に接着剤5を塗布する。そして
図5<3>のように貼り合わせを行ってから、
図5<4>のようにダイシングによって切断し個片化する。個片化されたパッケージは例えば
図7に示すような構造となる。
【0094】
[他の実施形態]
(製造方法)
本明細書における他の実施形態に係る固体撮像素子パッケージの製造方法として、
(a)黒色の顔料または黒色の染料を必須成分として含有する熱硬化性樹脂を、フレーム構造を有する成形体であって、かつ、前記成形体のユニットが等間隔に矩形配列した集合体となるよう、透明基板上に成形加工する工程、
(d)前記フレーム構造を有する成形体付き透明基板を、ダイシングによって個片化して単一のフレーム構造の部材dを形成する工程、
(e)前記部材dの成形体と、単一の固体撮像素子を搭載した半導体基板を、接着層を介して接着させる工程、をこの順に有していてもよい。
【0095】
(a)については、一実施形態と同様である。
【0096】
<(d)工程>
(d)については、成形体2が形成された透明基板1のみを
図6<1>のように個片化することができる。ダイシング加工は、ダイシングマシン、スクライバー、レーザー加工機などを用いることができ、加工精度および加工コストの観点からダイシングマシンを用いることが好ましい。
その後、半導体基板3を透明基板1と対応するように
図6<2>のように個片化する。
【0097】
<(e)工程>
(e)については、
図6<3>のように成形体2の、透明基板に接する面の対となる面に、接着層3として使用される接着剤を塗布してから
図6<4>のように貼り合わせる方法などが挙げられる。
ただし、本図の<1>と<2>の順序は任意である。
【0098】
「対応するように」とは、個片化できるサイズであれば良く、透明基板の方が半導体基板よりも大きくてもよく、半導体基板の方が透明基板よりも大きくても良く、透明基板と半導体基板が同じサイズであってもよいが、同じサイズであることが好ましい。
また、すでに個片化された半導体基板の上に固体撮像素子を搭載したものと、<1>で個片化した透明基板を貼り合わせて用いてもよい。
この方法を用いた場合、成形体2が形成された透明基板や半導体基板の各個片の不良品を除去して製造することができるため、製品の歩留まりが向上する。
【0099】
本発明の固体撮像素子パッケージは特にCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ―パッケージやSPAD(Single Photon Avalanche Diode)センサーなど、高性能な画素制御を求められる用途で好適に用いることが可能である。
【実施例0100】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0101】
(合成例1)
5Lの四つ口フラスコに、攪拌装置、滴下漏斗、冷却管をセットした。このフラスコにトルエン1800g、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート200g、トルエン200g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.3gの混合液を滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した後、未反応の1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去した。1H-NMRの測定によりこのものは1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応した以下の構造を有することがわかった。
【化4】
【0102】
(合成例2)
2Lオートクレーブにトルエン700g、1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサン470gを加えて、内温が105℃になるように加熱した。そこに、ビス〔4-(2-アリルオキシ)フェニル〕スルホン52gと、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.06g、トルエン15gの混合物を滴下した。滴下中、内温が110℃まで上昇した。未反応の1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエン、キシレンを減圧留去した。1H-NMRによりこのものは1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がビス〔4-(2-アリルオキシ)フェニル〕スルホンと反応した以下の構造を有することがわかった。
【化5】
【0103】
(樹脂組成物の作製)
表1に示す通り、樹脂組成物を3本ロールにより混合して作製した。黒色顔料としてはカーボンブラック(東海カーボン製、シースト#8300)を使用した。(A)成分としては、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート(四国化成製)とビニル末端ポリジメチルシロキサン(Gelest製、PDV-1625)を使用した。(B)成分としては、合成例1または合成例2で得られた反応物を使用した。(C)成分としては、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)を使用した。その他の成分としては、シリカ(デンカ製、FB9454)、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛(堺化学工業製、G103)を使用した。
各製造例で得られた樹脂組成物は円柱型タブレット状に賦形した。
【表1】
【0104】
(パッケージ積層体個片の作製)
トランスファー成形装置(G-LINEマニュアルプレス、アピックヤマダ製)を用いて、0.2mmガラス基板(Schott製D263 T eco)上に上記タブレット状の樹脂組成物を注入し、厚さ0.5mm、開口部寸法が5mm×5mm、リブ幅が0.5mm、勾配10度の格子状成形体を得た。成形条件は、成形温度165℃、成形時間120sec、型締力40ton、注入圧力15MPa、注入速度10mm/secとした。成形後、熱風オーブンにて180℃、1時間後硬化(アフターキュア)した。
【0105】
得られた成形体付きガラス基板の樹脂部分に熱硬化性エポキシ接着剤を塗布し、アルミナセラミック基板に貼り合わせ、200℃で2時間硬化し接着させ積層体を得た。
ダイシングマシン(ディスコ製DAD323)によって得られた積層体の格子辺の中央に沿ってダイス状に切断し、積層体個片を得た。
【0106】
上記の方法によって良好な積層体個片が得られたので、固体撮像素子を搭載した半導体基板においても同様の物を製造することが可能である。