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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129083
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/22 20060101AFI20230907BHJP
   A61B 18/18 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
A61B18/22
A61B18/18 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033858
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】521031567
【氏名又は名称】株式会社ニューロライテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 一夫
【テーマコード(参考)】
4C026
4C160
【Fターム(参考)】
4C026AA03
4C026FF22
4C160MM32
(57)【要約】
【課題】光照射に伴う外装の発熱の影響を受けることなく、生体内の所望の部位を、その部位が持つ光に対する分光吸収、散乱特性に従い、前記部位に光を照射することで発熱を促し、焼灼することが可能な光照射装置を提供する。
【解決手段】患部に対して光を照射するための先端部を有する光照射装置であって、前記先端部は、中空の形状を有し、内周面が鏡面であり、光源から導光された光を内部に入射させるための入射口、及び前記鏡面で反射した光を外部に出射させるための出射口が設けられたリフレクタと、前記リフレクタの外周面との間に空隙が形成されるように前記リフレクタを覆う外装と、を備える光照射装置。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患部に対して光を照射するための先端部を有する光照射装置であって、
前記先端部は、
中空の形状を有し、内周面が鏡面であり、光源から導光された光を内部に入射させるための入射口、及び前記鏡面で反射した光を外部に出射させるための出射口が設けられたリフレクタと、
前記リフレクタの外周面との間に空隙が形成されるように前記リフレクタを覆う外装と、
を備える光照射装置。
【請求項2】
前記リフレクタの内周面は、第1の焦点と、第2の焦点とを有し、前記第1の焦点と、前記第2の焦点とを通る軸を回転軸とする回転楕円体の表面の一部と同様の形状であり、
前記入射口は、前記回転楕円体の中心に対して前記第1の焦点側に対応する位置に設けられ、
前記出射口は、前記回転楕円体の中心に対して前記第2の焦点側に対応する位置に設けられる、
請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
透光性を有し、前記出射口を塞ぐとともに前記リフレクタと内部空間を形成するキャップを更に備え、
前記第2の焦点に対応する位置は、前記内部空間の外側である、
請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記キャップの表面の形状は、前記出射口に対して前記リフレクタの外部に突出する曲面である、
請求項3に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記リフレクタの内周面は、前記回転楕円体の中心に対して前記第1の焦点側の半分の表面と同様の形状である、
請求項3又は4に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記外装は、前記回転楕円体の中心から、前記第2の焦点から前記第1の焦点へ向かう第1の方向へ離れるほど、前記空隙が広くなるように前記リフレクタを覆う、
請求項2~5のいずれか一項に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気胸に対しては、様々な治療方法が知られている。軽度の気胸に対しては、穿刺やドレナージが用いられる(例えば、特許文献1)。穿刺は、注射針又は留置針により胸腔内の空気を排気する処置である。ドレナージは、胸腔内にチューブを挿入し、胸腔内の空気を排気する処置である。一方、重度の気胸に対しては、腔鏡下肺嚢胞切除術が用いられる。腔鏡下肺嚢胞切除術は、肺表面に発生する嚢胞(ブラ)とその周辺部を切除し、ステープラーを用いて縫合を行う処置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再表2018/139055
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気胸に対する新たな治療方法として、光プローブを用いてブラを焼灼して収縮させる技術が検討されている。一方、光プローブを用いてブラのような生体内の所望の部位を焼灼する場合、光照射に伴う光プローブ自体の発熱を考慮する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、光照射に伴う外装部の発熱の影響を受けることなく、生体内の所望の部位をその部位が持つ、光に対する分光吸収、散乱特性に従い、前記、部位に光を照射することで発熱を促し、焼灼することが可能な光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための発明は、患部に対して光を照射するための先端部を有する光照射装置であって、前記先端部は、中空の形状を有し、内周面が鏡面であり、光源から導光された光を内部に入射させるための入射口、及び前記鏡面で反射した光を外部に出射させるための出射口が設けられたリフレクタと、前記リフレクタの外周面との間に空隙が形成されるように前記リフレクタを覆う外装と、を備える光照射装置である。本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光照射に伴う外装の発熱の影響を受けることなく、生体内の所望の部位を、その部位が持つ光に対する分光吸収、散乱特性に従い、前記部位に光を照射することで発熱を促し、焼灼することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る光照射システムを説明する図である。
図2】実施形態に係る光照射装置を説明する図である。
図3】実施形態に係る光照射装置を説明する図である。
図4】実施形態に係る先端部を説明する断面図である。
図5A】実施形態に係るリフレクタを説明する断面図である。
図5B】実施形態に係るリフレクタを説明する図である。
図6A】実施形態に係る外装を説明する図である。
図6B】実施形態に係る外装を説明する図である。
図7A】実施形態に係るキャップを説明する図である。
図7B】実施形態に係るキャップを説明する図である。
図8A】実施形態に係る光照射装置を用いて気胸を治療する手順を説明する図である。
図8B】実施形態に係る光照射装置を用いて気胸を治療する手順を説明する図である。
図8C】実施形態に係る光照射装置を用いて気胸を治療する手順を説明する図である。
図9】変形例に係る光照射装置を説明する図である。
図10】変形例に係る光照射装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
==実施形態==
<<光照射システム>>
本実施形態の光照射システム1は、生体内の所望の部位に対して光を照射することにより、当該部位を焼灼するためのシステムである。本実施形態では、肺表面に発生した嚢胞(ブラ。所望の部位の一例)を焼灼することで、気胸の治療を行う例について説明する。図1は、光照射システム1を説明する図である。光照射システム1は、光源装置2と、光照射装置3とを備える。
【0010】
<光源装置>
光源装置2は、生体組織を焼灼するための光を生成する装置である。光源装置2は、焼灼する組織の光吸収/散乱特性に合わせた波長領域の光を生成する光源を有する。具体的に光源は、レーザ光源、LED光源、ハロゲンランプ、キセノンランプ等が用いられる。
【0011】
<光照射装置>
光照射装置3は、光源装置2が生成した光を生体組織に照射するための装置である。図2及び3は、本実施形態の光照射装置3を説明する図である。図2は、光照射装置3の側面図である。図3は、光照射装置3の断面図である。光照射装置3は、ケーブル部30と、把持部31と、先端部32とを有する。
【0012】
なお、光照射装置3のうち、把持部31と、先端部32との部分は、図2及び3に示した対称軸X1に対して略回転対称である。図3は、対称軸X1を通る平面上の光照射装置3の断面図を示している。
【0013】
[ケーブル部]
ケーブル部30は、光源装置2からの光を導光するための長尺の部材である。光を導光するための部材としては、例えば光ファイバーのような、光源装置2からの光を光照射装置3まで伝搬させる部材である。
【0014】
本実施形態のケーブル部30は、第1端30a及び第2端30bを有する。第1端30aは、先端部32に接続可能となっている(詳細は後述)。第2端30bは、光源装置2に接続可能となっている(図1)。第1端30aが先端部32に接続され、且つ第2端30bが光源装置2に接続されることにより、光源装置2からケーブル部30の第2端30bに入射した光は、ケーブル部30を伝搬し、先端部32に入射する。
【0015】
以下の説明では、ケーブル部30の第1端30aにおいて光源装置2からの光が出射する面を「端面30c」と称する。本実施形態では、ケーブル部30の端面30cは、平坦な形状である(図3)。
【0016】
[把持部]
把持部31は、術者が光照射装置3を操作する際に把持するための部材である。上述の通り、本実施形態では、把持部31は、対称軸X1に対して略回転対称である。
【0017】
把持部31は、筒状の部材であって、第1端31aと、第2端31bとを有する。また、把持部31は、内周面31cと、外周面31dとを有する。把持部31の内部には、ケーブル部30の第1端30aが配置される。
【0018】
把持部31の内周面31cは、ケーブル部30が把持部31の内部を通過することができれば、形状の制限は特に無い。
【0019】
把持部31の外周面31dのうち、第1端31aの近傍には、溝31eが設けられている(図4)。溝31eは、対称軸X1を中心とする螺旋状である。
【0020】
詳細は後述するが、把持部31の第1端31aと、先端部32の外装321の第2端321dとは、ネジ式で互いに固定される。このとき、把持部31の第1端31aは雄ネジに対応し、外装321の第2端321dは雌ネジに対応する。溝31eは、このときの雄ネジのネジ山に対応する。
【0021】
把持部31の外周面31dのうち、他の部分は、術者が把持し、光照射装置3を操作するのに適した形状であれば、形状の制限は特に無い。
【0022】
[先端部]
先端部32は、ケーブル部30と連結され、所望の部位に対して光を照射するための部材である。図4は、本実施形態の光照射装置3の先端部32の断面図である。
【0023】
先端部32は、リフレクタ320と、外装321と、キャップ322とを備える。
【0024】
(リフレクタ)
リフレクタ320は、光源装置2で生成された光(ケーブル部30で導光された光)を反射させ、所定の焦点(この例では後述する第2の焦点F2)に集光させるための部材である。リフレクタ320は、中空の形状であって、内周面320aと、外周面320bとを有する。リフレクタ320の内周面320aは、鏡面320jである。
【0025】
図5A及び図5Bは、リフレクタ320を説明する図である。図5Aは、対称軸X2を通る平面上のリフレクタ320の断面図であり、図5Bは、対称軸X2の方向から見たリフレクタ320の図である。本実施形態では、リフレクタ320は、対称軸X2に対して回転対称な部材である。
【0026】
リフレクタ320は、本体部320c、入射口320d、出射口320e及び固定部320fを有する。
【0027】
・本体部320c
本体部320cは、リフレクタ320のうち、内周面320aと、外周面320bと、鏡面320jとが設けられる部分であって、略均一な所定の厚さを有する。本実施形態では、リフレクタ320の内周面320aは、対称軸X2に対して回転対称な回転楕円体の表面の一部と同様の形状である。ここでの回転楕円体を、以下では「回転楕円体E」と称する。回転楕円体Eは、対称軸X2上に2つの焦点F(第1の焦点F1及び第2の焦点F2)を有する。回転楕円体Eの長軸Xaは対称軸X2上に配置され、回転楕円体Eの短軸Xbは対称軸X2に垂直に配置される。
【0028】
以下では、対称軸X2に平行な方向であり、第2の焦点F2から第1の焦点F1に向かう方向を「第1の方向D1」と称し、第1の方向D1に対して反対の方向を「第2の方向D2」と称する場合がある。
【0029】
鏡面320jは、リフレクタ320の内部で、内周面320aに到達した光を反射させるために設けられている。鏡面320jは、光を反射する材料を内周面320aにコーティングすることによって形成される。光を反射する材料としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)等の金属材料が用いられる。
【0030】
・入射口320d
入射口320dは、光源装置2で生成された光をリフレクタ320の内部に入射させる部分である。入射口320dは、回転楕円体Eの中心に対して、2つの焦点Fのうち第1の焦点F1側に対応する位置に設けられている。
【0031】
本実施形態では、入射口320dは、リフレクタ320の対称軸X2に平行な方向から見た形状が円形であり(図5B)、入射口320dの中心と、対称軸X2とは一致する。
【0032】
図4に示した通り、リフレクタ320の入射口320dには、ケーブル部30の第1端30aが接続されている。接続した状態において、ケーブル部30の端面30cは、第1の焦点F1に対して、第1の方向D1側に位置する。
【0033】
・出射口320e
出射口320eは、鏡面320jで反射した光をリフレクタ320の外部に出射させる部分である。出射口320eは、回転楕円体Eの中心に対して2つの焦点Fのうち第2の焦点F2側に対応する位置に設けられている。
【0034】
本実施形態では、出射口320eは、リフレクタ320の対称軸X2に平行な方向から見た形状が円形であり(図5B)、出射口320eの中心と、対称軸X2とは一致する。
【0035】
本実施形態では、リフレクタ320の内周面320aは、回転楕円体Eの中心に対して一方の焦点F(この例では、第1の焦点F1)側の半分の表面と同様の形状となっている。そのため、出射口320eの直径は、回転楕円体Eの短軸Xbの長さに等しい。
【0036】
なお、第1の方向D1は、リフレクタ320の対称軸X2に平行な方向であり、出射口320eから入射口320dに向かう方向であるともいえる。同様に、第2の方向D2は、リフレクタ320の対称軸X2に平行な方向であり、入射口320dから出射口320eに向かう方向であるともいえる。
【0037】
・固定部320f
固定部320fは、リフレクタ320を外装321に対して固定するための部分である。
【0038】
固定部320fは、リフレクタ320の外周面320bにおいて、対称軸X2から最も離れた位置に設けられ、対称軸X2から離れる方向に凸の形状を有する(図5A)。
【0039】
本実施形態において、リフレクタ320は対称軸X2に対して回転対称であるため、固定部320fも対称軸X2に対して回転対称である。更に、固定部320fは、対称軸X2から離れた位置に設けられている。従って、固定部320fは、対称軸X2に対して回転対称な環状である(図5B)。
【0040】
また、本実施形態において、外周面320bにおいて対称軸X2から最も離れた位置とは、外周面320bにおいて短軸Xbが通る位置である。このような構成のため、固定部320fは、出射口320eの縁部に沿って設けられている。
【0041】
固定部320fは、第1固定面320gと、第2固定面320hと、第3固定面320iとを有する。第1固定面320gと、第2固定面320hとは互いに平行な平面であり、対称軸X2に対して垂直である。第1固定面320gと、第2固定面320hとは共に、対称軸X2の方向から見た形状が、対称軸X2を中心とし、所定の幅を有する環状である(図5B)。また、第1固定面320gの外周と、第2固定面320hの外周とは互いに一致する(図5B)。
【0042】
第3固定面320iは、第1固定面320gと、第2固定面320hとを接続する面であり、対称軸X2からの距離は均一である。
【0043】
・リフレクタ320を介した光の伝搬について
以下では、「回転楕円体Eの焦点F(第1の焦点F1及び第2の焦点F2)に対応する位置」を、「リフレクタ320の焦点F(第1の焦点F1及び第2の焦点F2)」と称する。回転楕円体の一般的な性質から、リフレクタ320は以下の性質を有することがいえる。
【0044】
リフレクタ320の内部において、リフレクタ320の一方の焦点Fを通過した光は、鏡面320jで反射した場合、リフレクタ320の他方の焦点Fに向けて進行方向を変え、リフレクタ320の他方の焦点Fを通過する。更に、リフレクタ320の他方の焦点Fを通過した光は、鏡面320jで反射した場合、リフレクタ320の一方の焦点Fに向けて進行方向を変え、リフレクタ320の一方の焦点Fを通過する。
【0045】
以上のリフレクタ320の性質から、光源装置2で生成された光は、以下のように伝搬する。
【0046】
光源装置2で生成された光は、ケーブル部30を伝搬し、ケーブル部30の端面30cから出射する(つまり、光照射装置3のリフレクタ320の内部に入射する)。このとき、ケーブル部30の端面30cに対して多様な角度を持って進行する光が、ケーブル部30の端面30cから出射する。
【0047】
ケーブル部30の端面30cから出射した光の一部は、第1の焦点F1に直接到達し、第1の焦点F1を通過する。第1の焦点F1を通過した光は、鏡面320jにおいて1回反射した後に、第2の焦点F2に向けて進行方向を変える。そして、第2の焦点F2に集光し、第2の焦点F2の近傍に位置する生体組織が効率良く焼灼される。
【0048】
このとき、ケーブル部30の端面30cからリフレクタ320に入射した光のうち、第1の焦点F1を通過する光の量が多いほど、焼灼のための光の照度を効率的に高くすることができる。
【0049】
(外装)
外装321は、リフレクタ320を覆うための部材である。外装321は、リフレクタ320の外周面320bとの間に空隙32aが形成されるようにリフレクタ320を覆う。
【0050】
・外装321の形状
図6A及び図6Bは、外装321を説明する図である。図6Aは、対称軸X3を通る平面上の外装321の断面図であり、図6Bは、対称軸X3の方向から見た外装321の図である。本実施形態では、外装321は、対称軸X3に対して略回転対称である。
【0051】
外装321は、略筒状の部材であって、第1端321cと、第2端321dとを有する。また、外装321は、内周面321aと、外周面321bとを有する。
【0052】
外装321の外周面321bのうち、第1端321cの近傍の部分には、溝321eが設けられている。溝321eは、外装321の対称軸X3を中心とする螺旋状である。
【0053】
詳細は後述するが、外装321の第1端321cと、キャップ322とは、ネジ式で互いに固定される。このとき、外装321の第1端321cは雄ネジに対応し、キャップ322は雌ネジに対応する。溝321eは、このときの雄ネジのネジ山に対応する。
【0054】
外装321の内周面321aは、リフレクタ320が外装321に収納された状態(すなわち、外装321に覆われた状態)のときに、リフレクタ320の外周面320bとの間に空隙32aが形成されるような形状となっている。
【0055】
具体的に、本実施形態では、空隙32aは、リフレクタ320の外周面320bと、外装321の内周面321aとの間の距離が均一となる形状である(図4)。つまり、本実施形態では、外装321の内周面321aは、リフレクタ320の外周面320bの形状と相似であり、リフレクタ320の外周面320bよりもサイズが大きい曲面の形状である。
【0056】
外装321の内周面321aのうち、第2端321dの近傍の部分には、溝321fが設けられている。溝321fは、対称軸X2を中心とする螺旋状である。
【0057】
前述のように、把持部31の第1端31aと、先端部32の外装321の第2端321dとは、ネジ式で互いに固定される。このとき、把持部31の第1端31aは雄ネジに対応し、外装321の第2端321dは雌ネジに対応する。溝321fとは、このときの雌ネジのネジ山に対応する。
【0058】
外装321は、第1端321cに、固定面321gを有する。固定面321gは、リフレクタ320を外装321に対して固定するための機能を有する(後述)。固定面321gは、対称軸X3に直交する平面であり、内周面321aと、外周面321bとを接続する面である。
【0059】
・外装321と、把持部31との関係
外装321と、把持部31とは、ネジ式で互いに固定される。図4は、外装321と、把持部31とが互いに固定された状態を示している。
【0060】
このとき、外装321の第2端321d側の内周面321aに設けられた溝321fと、把持部31の第1端31a側の外周面31dに設けられた溝31eとが係合している。更に、このとき、対称軸X2は、対称軸X1に一致している。
【0061】
つまり、外装321の第2端321dと、把持部31の第1端31aが対向し、外装321の対称軸X3と、対称軸X1とが互いに一致した状態で、両者を対称軸X1(又は対称軸X3)に対して互いに逆向きに所定の方向に回転させることによって、両者を互いに固定したり、分離したりすることができる。
【0062】
・外装321と、リフレクタ320との関係
リフレクタ320が外装321に収納されて覆われた状態において、外装321の対称軸X3と、リフレクタ320の対称軸X2とは、対称軸X1上で互いに一致している。
【0063】
また、この状態において、リフレクタ320の固定部320fの第2固定面320hの一部と、外装321の固定面321gとが接触している。これによって、リフレクタ320が、外装321に対して、外装321の第1端321cから第2端321dの方向へ移動することが抑止される。
【0064】
上述のように、外装321の内周面321aは、リフレクタ320が外装321に収納されて覆われた状態において、リフレクタ320の外周面320bの形状に対し、リフレクタ320の外側に所定の距離だけ離れた曲面の形状に等しい。
【0065】
以上のことから、リフレクタ320が外装321に収納されて覆われた状態において、リフレクタ320の外周面320bと、外装321の内周面321aとの間の距離が均一となる空隙32aが形成される。
【0066】
このような外装321と、リフレクタ320との構成によれば、リフレクタ320の鏡面320jで反射した光によって発生した熱の外装321への拡散を、空隙32aによって抑制することができる。これによって、リフレクタ320で発生した熱によって、光照射装置3自体が発熱することを防止することができる。
【0067】
(キャップ)
キャップ322は、リフレクタ320の出射口320eを塞ぐための部材である。キャップ322は、透光性を有する。
【0068】
・キャップ322の形状
図7A及び図7Bは、キャップ322を説明する図である。図7Aは、対称軸X3を通る平面上のキャップ322の断面図であり、図7Bは、対称軸X4の方向から見たキャップ322の図である。本実施形態では、キャップ322は、対称軸X4に対して略回転対称なキャップ状の部材であって、内周面322aと、外周面322bとを有する。
【0069】
キャップ322は、筒状の側部322cと、側部322cの一端を閉じ、外側に突出する頂部322dとを有する。キャップ322は、略均一な所定の厚さを有する。
【0070】
キャップ322の外周面322bのうち、側部322cに対応する部分は、円筒の形状である。キャップ322の外周面322bのうち、頂部322dに対応する部分は、半球の形状である。
【0071】
キャップ322の内周面322aのうち、側部322cに対応する部分には、溝322eが形成されている。溝322eは、キャップ322の対称軸X4を中心とする螺旋状である。
【0072】
前述のように、外装321の第1端321cと、キャップ322とは、ネジ式で互いに固定される。このとき、外装321の第1端321cは雄ネジに対応し、キャップ322は雌ネジに対応する。溝322eとは、このときの雌ネジのネジ山に対応する。
【0073】
キャップ322の内周面322aのうち、側部322cと、先端部32との境界に対応する部分には、固定面322fが設けられている。固定面322fは、対称軸X4に対して垂直な平面である(図7A)。
【0074】
本実施形態では、固定面322fは、対称軸X4に平行な方向から見た形状が、対称軸X4を中心とし、所定の幅を有する円周状である(図7B)。
【0075】
・キャップ322と、外装321との関係
キャップ322と、外装321とは、ネジ式で互いに固定される。図4に示した状態において、キャップ322と、外装321とが互いに固定されている。
【0076】
このとき、キャップ322の内周面322aに設けられた溝322eと、外装321の第1端321cの近傍の外周面321bに設けられた溝321eとが係合している。更に、このとき、キャップ322の対称軸X4と、外装321の対称軸X3とは、対称軸X1上において互いに一致している。
【0077】
つまり、キャップ322の開口と、外装321の第1端321cが対向し、キャップ322の対称軸X4と、外装321の対称軸X3とが互いに一致した状態で、両者を対称軸X4(又は対称軸X3)に対して互いに逆向きに所定の方向に回転させることによって、両者を互いに固定したり、分離したりすることができる。
【0078】
・キャップ322と、外装321と、リフレクタ320との関係
図4に示したキャップ322と、外装321とが互いに固定された状態において、リフレクタ320の固定部320fは、キャップ322と、外装321とに挟持されている。
【0079】
このとき、キャップ322の対称軸X4と、外装321の対称軸X3と、リフレクタ320の対称軸X2とは、対称軸X1上において互いに一致している。
【0080】
具体的には、固定部320fの第1固定面320gは、キャップ322の固定面322fに接触している。固定部320fの第2固定面320hは、外装321の固定面321gに接触している。固定部320fの第3固定面320iは、キャップ322の外周面322bのうち、側部322cに対応する部分に接触している。
【0081】
これらのことから、リフレクタ320は、キャップ322と、外装321とに対して、リフレクタ320の対称軸X2方向及び対称軸X2に垂直な方向への移動が抑止される。つまり、リフレクタ320と、外装321との間の空隙32aの形状は、一意的に決定され、固定される。
【0082】
・キャップ322と、リフレクタ320との関係
図4に示したキャップ322と、外装321とが互いに固定された状態において、キャップ322は、出射口320eを塞ぐとともにリフレクタ320と内部空間を形成する。ここでの内部空間とは、キャップ322の内周面322aのうち頂部322dに対応する部分と、リフレクタ320の内周面320aとによって形成される空間である。
【0083】
リフレクタ320の第2の焦点F2に対応する位置は、内部空間の外側である。つまり、光源装置2からの光のうち第1の焦点F1を通過した光は、鏡面320jで反射した後、内部空間の外側に集光する。
【0084】
このようなキャップ322と、リフレクタ320との構成によれば、光源からの光を集光させる位置(第2の焦点F2)を光照射装置3の外側に設けることができる。そして、第2の焦点F2を所望の部位に位置させることにより、所望の部位を効率良く焼灼することができる。
【0085】
<<光照射システムの使用方法>>
本実施形態の光照射システム1の使用方法について説明する。この例では、上述の通り、気胸を治療する手順について説明する。図8A~8Cは、実施形態に係る光照射装置3を用いて気胸を治療する手順を説明する図である。図8Aに示すように、気胸とは、肺5の表面に空気が溜った嚢胞(ブラ51)が発生した状態である。図8B及び8Cは、図8Aの領域Aを拡大して示している。
【0086】
光照射装置3を用いた気胸の治療は、例えば、一般的な硬性鏡下の手術に準じて行うことができる。硬性鏡下の手術に当たっては、予め患者の腹壁を複数箇所切開し、複数の切開口の各々からトラカールが挿入される。
【0087】
術者は、一のトラカールを介して患者の腹腔内に炭酸ガスを注入し、腹腔内に空間を形成する。そして、術者は、このトラカールを介して硬性鏡を挿入する。術者は、硬性鏡で映し出された腹腔内の様子をモニタで観察しなから治療を行うことができる。
【0088】
次いで、術者は、光照射装置3の把持部31を把持し、他のトラカールを介して光照射装置3の先端部32を患者の腹腔内に挿入し、ブラ51に向けて先端部32を近接させ、押し当てる(図8B)。このとき、キャップ322の外周面322bが半球の形状であるため、ブラ51がキャップ322の外周面322bと接触する部分を、略均一に押圧することができる。
【0089】
そして、術者は、キャップ322の外周面322bをブラ51に更に押し当てていくことにより、ブラ51の内部の空気を肺5に戻す(図8C)。
【0090】
術者は、この状態(図8C)で術者とは別の操作者が光源装置2をオンにし、光を照射することによりブラ51を焼灼する。
【0091】
このとき、リフレクタ320の外周面320bと、外装321の内周面321aとの間に形成された空隙32aにより、リフレクタ320の鏡面320jで反射した光によって発生した熱の、外装321への拡散が抑制される。これによって、リフレクタ320で発生した熱による光照射装置3自体の発熱を低減し、キャップ322を介してブラ51にのみ確実に熱を加えることができる。
【0092】
すなわち、本実施形態に係る、光照射装置3によれば、外装部の発熱の影響を受けることなく、生体内の所望の部位を焼灼することができる。焼灼したブラ51は収縮し、ブラ51の破裂を防止することができる。
【0093】
==変形例1==
図9は、本変形例の光照射装置4を説明する図である。本変形例の光照射装置4は、実施形態の光照射装置3に比べると、外装421の構成のみが異なっている。
【0094】
本変形例の外装421は、回転楕円体Eの中心から、第2の焦点F2から第1の焦点F1へ向かう第1の方向D1へ離れるほど、外装421と、リフレクタ320との間の空隙42aが広くなるようにリフレクタ320を覆う。
【0095】
換言すると、本変形例の外装421は、出射口320eに対し、入射口320dの方向に離れるほど、空隙42aが広くなるようにリフレクタ320を覆う。
【0096】
本変形例では、外装421は、略筒状の部材であって、第1端421cと、第2端421dとを有する。更に外装421は、内周面421aと、外周面421bとを有する。
【0097】
外装421の内周面421aは、円柱体の表面の形状と同様である点で、実施形態の外装321とは異なっている。
【0098】
このような構成によれば、リフレクタ320の外周面320bと、外装421の内周面421aとの間に形成される空隙42aが広くなるため、リフレクタ320で発生した熱の外装421への拡散を更に抑制することができる。
【0099】
==変形例2==
図10は、本変形例の光照射装置6を説明する図である。本変形例の光照射装置6は、上記実施形態の光照射装置3に比べると、リフレクタ320の内部に光を入射させるための構成のみが異なっている。
【0100】
上記実施形態では、光照射装置3は、光源装置2からの光を導光するためのケーブル部30と、ケーブル部30に連結され、患部に光を照射するための先端部32とを有する態様を示した。本変形例では、上記実施形態の光源装置2及びケーブル部30に代えて、把持部31の内部であって、リフレクタ320の入射口329d付近に、光源素子7を配置する構成としている。光源素子7としては、例えばLED素子等を用いることができる。
【0101】
本変形例の光源素子7は、出射面7aを有している。光源素子7で生成された光は、出射面7aから光源素子7の外部へ出射される。出射面7aは、実施形態のケーブル部30の端面30cと同様の位置となるように配置される。つまり、出射面7aは、対称軸X1等に対して垂直となるように配置される。
【0102】
このような構成によれば、ケーブル部30が不要となるため、操作者にとって、光照射装置6を操作しやすくなる。
【0103】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0104】
例えば、上記実施形態では、リフレクタ320の鏡面320jは、光を反射する材料を内周面320aにコーティングすることによって形成されることとしたが、これに限られるものではない。例えば、リフレクタ320自体を、上述した光を反射する材料を用いて形成することとしてもよい。
【0105】
==まとめ==
以上、実施形態の光照射装置3は、患部に対して光を照射するための先端部32を有する光照射装置3であって、先端部32は、中空の形状を有し、内周面320aが鏡面320jであり、光源から導光された光を内部に入射させるための入射口320d、及び鏡面320jで反射した光を外部に出射させるための出射口320eが設けられたリフレクタ320と、リフレクタ320の外周面320bとの間に空隙32aが形成されるようにリフレクタ320を覆う外装321と、を備える。
【0106】
このような構成によれば、リフレクタ320の外周面320bと、外装321の内周面321aとの間に空隙32aが形成される。空隙32aは、リフレクタ320の鏡面320jで反射した光によって発生した熱の、外装321への拡散を抑制する。これによって、リフレクタ320で発生した熱による光照射装置3自体の発熱を低減できる。すなわち、本実施形態に係る、光照射装置3によれば、外装321の発熱の影響を受けることなく、生体内の所望の部位を、その部位が持つ光に対する分光吸収、散乱特性に従い、前記部位に光を照射することで発熱を促し、焼灼することができる。
【0107】
また、実施形態の光照射装置3において、リフレクタ320の内周面320aは、第1の焦点F1と、第2の焦点F2とを有し、第1の焦点F1と、第2の焦点F2とを通る軸を回転軸とする回転楕円体Eの表面の一部と同様の形状であり、入射口320dは、回転楕円体Eの中心に対して第1の焦点F1側に対応する位置に設けられ、出射口320eは、回転楕円体Eの中心に対して第2の焦点F2側に対応する位置に設けられる。このような構成によれば、光源からの光は、リフレクタ320の内部において第1の焦点F1を通過すると、第2の焦点F2を通過することになる。これによって、光源からの光を第2の焦点F2の近傍に集光することができる。従って、光照射装置3によれば、生体内の所望の部位を効率良く焼灼することができる。
【0108】
また、実施形態の光照射装置3は、透光性を有し、出射口320eを塞ぐとともにリフレクタ320と内部空間を形成するキャップ322を更に備え、第2の焦点F2に対応する位置は、内部空間の外側である。このような構成によれば、リフレクタ320の内部が閉鎖され、中空の状態に保たれるため、リフレクタ320の内部において光の進行を妨げる異物の侵入を防ぐことができる。従って、光照射装置3によれば、生体内の所望の部位を更に効率良く焼灼することができる。
【0109】
また、実施形態の光照射装置3において、キャップ322の表面の形状は、出射口320eに対してリフレクタ320の外部に突出する曲面である。このような構成によれば、キャップ322の表面をブラ51に押し付けることにより、ブラ51の中に溜まった空気を除いた状態でブラ51を焼灼することができる。従って、光照射装置3によれば、容易にブラ51を確実に焼灼することができる。
【0110】
また、実施形態の光照射装置3において、リフレクタ320の内周面320aは、回転楕円体Eの中心に対して第1の焦点F1側の半分の表面と同様の形状である。このような構成によれば、出射口320eのサイズを最大限のサイズにすることができる。これによって、光照射装置3を小型化することができる。
【0111】
また、変形例1の光照射装置4において、外装321は、回転楕円体Eの中心から、第2の焦点F2から第1の焦点F1へ向かう第1の方向へ離れるほど、空隙42aが広くなるようにリフレクタ320を覆う。このような構成によれば、リフレクタ320の外周面320bと、外装321の内周面321aとの間に形成される空隙42aが広くなるため、リフレクタ320で発生した熱の外装321への拡散を更に抑制することができる。これによって、これによって、リフレクタ320で発生した熱による光照射装置3自体の発熱を更に低減できる。
【符号の説明】
【0112】
1:光照射システム
2:光源装置
3:光照射装置
30:ケーブル部
30a:第1端
30b:第2端
30c:端面
31:把持部
31a:第1端
31b:第2端
31c:内周面
31d:外周面
31e:溝
32:先端部
32a:空隙
320:リフレクタ
320a:内周面
320b:外周面
320c:本体部
320d:入射口
320e:出射口
320f:固定部
320g:第1固定面
320h:第2固定面
320i:第3固定面
320j:鏡面
321:外装
321a:内周面
321b:外周面
321c:第1端
321d:第2端
321e:溝
321f:溝
321g:固定面
322:キャップ
322a:内周面
322b:外周面
322c:側部
322d:頂部
322e:溝
322f:固定面
4:光照射装置
42a:空隙
421:外装
5:肺
51:ブラ
6:光照射装置
7:光源素子
7a:出射面
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10