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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129095
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20230907BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B25J15/00 C
B25J15/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033880
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山根 秀士
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CS08
3C707DS02
3C707ES17
3C707EU11
3C707EV23
3C707FS01
3C707FT13
3C707HS12
3C707HS27
3C707KS03
3C707KS04
3C707KS07
3C707KT01
3C707KT05
3C707NS19
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】ベース上に保持器によって物品を載置して搬送するハンドの搬送能力を向上させる。
【解決手段】ハンド10は、ベース3と、ベース3に対して所定の第1方向Xへ移動可能に支持され、物品Wを保持する第1保持器4と、第1保持器4を第1方向Xへ移動させる第1駆動装置5と、第1方向Xと交差する第2方向Zにおいて第1保持器4と並んで配置され、ベース3に対して第1方向Xへ移動可能に支持され、物品Wを保持する第2保持器6とを備えている。ベース3には、第1保持器4及び第2保持器6によって保持された物品Wが載置される。第2保持器6は、第2方向Zにおける第1保持器4に対する距離を調整可能に構成されている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに対して所定の第1方向へ移動可能に支持され、物品を保持する第1保持器と、
前記第1保持器を前記第1方向へ移動させる第1駆動装置と、
前記第1方向と交差する第2方向において前記第1保持器と並んで配置され、前記ベースに対して前記第1方向へ移動可能に支持され、物品を保持する第2保持器とを備え、
前記ベースには、前記第1保持器及び前記第2保持器によって保持された物品が載置され、
前記第2保持器は、前記第2方向における前記第1保持器からの距離を調整可能に構成されているハンド。
【請求項2】
請求項1に記載のハンドにおいて、
前記第2保持器を前記第2方向へ移動可能に支持するガイドと、
前記第2保持器を前記第2方向へ移動させる第2駆動装置とをさらに備えたハンド。
【請求項3】
請求項2に記載のハンドにおいて、
前記ガイドは、第1移動体と、前記第1移動体を前記ベースに対して前記第2方向へ移動可能に支持する第1ガイドと、前記第2保持器が設けられた第2移動体と、前記第2移動体を前記第1移動体に対して前記第2方向へ移動可能に支持する第2ガイドとを有し、
前記第2駆動装置は、前記第2保持器の移動量を調整可能な可変駆動装置と一定の移動量で前記第2保持器を移動させる固定駆動装置とを有し、
前記可変駆動装置及び前記固定駆動装置の一方は、前記第1移動体を駆動し、
前記可変駆動装置及び前記固定駆動装置の他方は、前記第2移動体を駆動するハンド。
【請求項4】
請求項3に記載のハンドにおいて、
前記第2方向は、上下方向であり、
前記第2移動体は、前記第1移動体よりも上方に配置され、
前記可変駆動装置は、前記第1移動体を駆動し、
前記固定駆動装置は、前記第2移動体を駆動するハンド。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のハンドにおいて、
前記可変駆動装置は、電動シリンダであり、
前記固定駆動装置は、エアシリンダであるハンド。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のハンドにおいて、
前記第1駆動装置は、モータと、前記モータの駆動力を伝達する伝達ベルトとを有し、
前記第1保持器は、前記伝達ベルトに連結されているハンド。
【請求項7】
請求項6に記載のハンドにおいて、
前記伝達ベルトは、前記第1保持器によって保持された物品が載置される搬送面を有し、前記第1保持器と共に前記搬送面を移動させるハンド。
【請求項8】
請求項7に記載のハンドにおいて、
前記第1駆動装置は、少なくとも2本の前記伝達ベルトを有するハンド。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れか1つに記載のハンドにおいて、
前記ベースは、前記第1保持器によって保持された物品が載置される載置面と、前記載置面と反対側の底面とを有するベースプレートを含み、
前記伝達ベルトは、前記ベースプレートに沿って延びるように前記ベースプレートに配置され、
前記モータは、前記底面から突出しない状態で前記ベースに配置されているハンド。
【請求項10】
請求項9に記載のハンドにおいて、
前記第1保持器及び前記第2保持器への配管又は配線は、前記底面から突出しない状態で前記ベースに配置されているハンド。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のハンドにおいて、
前記ベースプレートは、他の物体が前記底面から突出していないハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、ハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物品を保持する保持器を備えたハンドが知られている。例えば、特許文献1には、物品を保持する保持器と物品を載置するベースとを有するハンドが開示されている。このハンドは、物品を保持した状態の保持器を所定の方向へ移動させ、物品をベース上に載置する。ハンドは、物品をベース上に載置した状態で搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/025019号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のハンドは、保持器を拡大することによって、様々なサイズの物品を保持できるように構成されている。しかしながら、ハンドの搬送能力にはさらなる向上が望まれており、前述のようなハンドにはさらなる改善の余地が残されている。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、保持器によって物品をベース上に載置して搬送するハンドの搬送能力を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示されたハンドは、ベースと、前記ベースに対して所定の第1方向へ移動可能に支持され、物品を保持する第1保持器と、前記第1保持器を前記第1方向へ移動させる第1駆動装置と、前記第1方向と交差する第2方向において前記第1保持器と並んで配置され、前記ベースに対して前記第1方向へ移動可能に支持され、物品を保持する第2保持器とを備え、前記ベースには、前記第1保持器及び前記第2保持器によって保持された物品が載置され、前記第2保持器は、前記第2方向における前記第1保持器からの距離を調整可能に構成されている。
【発明の効果】
【0007】
前記ハンドによれば、搬送能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ロボットシステムの構成を示す図である。
図2図2は、ハンドの斜視図である。
図3図3は、図2とは異なる状態のハンドの斜視図である。
図4図4は、ハンドの正面図である。
図5図5は、ハンドの側面図である。
図6図6は、ハンドの底面図である。
図7図7は、制御装置の概略的なハードウェア構成を示す図である。
図8図8は、制御部の機能ブロック図である。
図9図9は、物品の移送のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、ロボットシステム100の構成を示す図である。
【0010】
ロボットシステム100は、物品を移送するシステムである。ここでは、所定の位置に積み上げられた物品Wを目的位置に移送する場合について説明する。物品Wは、例えば、段ボール箱である。ロボットシステム100は、物品Wを移送するロボット1と、ロボット1を制御する制御装置2とを備えている。
【0011】
ロボット1は、例えば、産業用ロボットである。ロボット1は、ロボットアーム11と、ロボットアーム11に連結されたハンド10とを有する。この例では、ロボット1は、搬送車15と機器収容部16とをさらに有している。ロボットアーム11は、搬送車15に搭載されている。機器収容部16は、制御装置2を含む、ロボット1の制御に必要な機器を収容している。ロボット1は、搬送車15によって自律的に移動する。
【0012】
ロボットアーム11は、ハンド10の位置及び姿勢を変更する。ロボットアーム11は、垂直多関節型のロボットアームである。ロボットアーム11は、複数のリンク12と、複数のリンク12を接続する関節13と、複数の関節13を回転駆動するサーボモータ14(図7参照)とを有している。例えば、ロボットアーム11の一端部に位置するリンク12は、関節13を介して、鉛直方向に延びる回転軸回りに回転可能に搬送車15に連結されている。尚、ロボットアーム11は、水平多関節型、パラレルリンク型、直角座標型、又は極座標型のロボットアーム等であってもよい。
【0013】
ハンド10は、ロボットアーム11のエンドエフェクタである。ハンド10は、ロボットアーム11の先端に連結されている。具体的には、ハンド10は、複数のリンク12のうち搬送車15に連結されているリンク12とは反対側の端部のリンク12に連結されている。ハンド10は、ロボットアーム11の動作によって様々な姿勢をとることができる。
【0014】
搬送車15は、床面等の上でロボット1を移動させる。搬送車15は、車輪によって走行するものに限定されず、クローラ等の走行装置を有していてもよい。搬送車15は、AGV(Automated Guided Vehicle)等であってもよい。
【0015】
機器収容部16は、制御装置2に加えて、負圧発生装置17及びエア供給装置18を収容する。負圧発生装置17は、後述する吸引パッド41及び吸引パッド61に負圧を発生させる。例えば、負圧発生装置17は、真空ポンプである。エア供給装置18は、空気を圧送する。エア供給装置18は、後述する第1固定駆動装置82及び第2固定駆動装置83等へ空気を供給する。例えば、エア供給装置18は、エアポンプである。負圧発生装置17及びエア供給装置18は、制御装置2によって制御される。
【0016】
続いて、ハンド10の構成について詳しく説明する。図2は、ハンド10の斜視図である。図3は、図2とは異なる状態のハンド10の斜視図である。図4は、ハンド10の正面図である。図5は、ハンド10の側面図である。図6は、ハンド10の底面図である。尚、図2は、第1保持器4から第2保持器6までの距離が最大で且つ第1保持器4及び第2保持器6が最も前方に進出した状態を示す。図3は、第1保持器4から第2保持器6までの距離が最小で且つ第1保持器4及び第2保持器6が最も後方へ後退した状態を示す。
【0017】
ハンド10は、ベース3と、物品Wを保持する第1保持器4と、第1駆動装置5と、物品を保持する第2保持器6とを備えている。第1保持器4は、ベース3に対して所定の第1方向Xへ移動可能に支持されている。第1駆動装置5は、第1保持器4を第1方向へ移動させる。第2保持器6は、所定の第2方向Zにおいて第1保持器4と並んで配置され、ベース3に対して第1方向Xへ移動可能に支持されている。ベース3には、第1保持器4及び第2保持器6によって保持された物品Wが載置される。ハンド10は、第1保持器4及び第2保持器6によって物品Wを保持し、物品Wを保持した状態の第1保持器4及び第2保持器6を第1方向Xへ移動させることによって、物品Wをベース3上に載置する。
【0018】
そして、第2保持器6は、第2方向Zにおける第1保持器4からの距離を調整可能に構成されている。すなわち、第2保持器6は、第2方向Zにおける第1保持器4との間隔を調整可能に構成されている。ハンド10は、第2保持器6を第2方向Zへ移動可能に支持するガイド7と、第2保持器6を第2方向Zへ移動させる第2駆動装置8とをさらに備えていてもよい。つまり、第2保持器6は、ガイド7によって第2方向Zへ案内されつつ、第2駆動装置8によって第2方向Zへ移動させられる。これにより、第2方向Zにおける第1保持器4からの第2保持器6の距離が調整される。
【0019】
この例では、第2方向Zは、第1方向Xと略直交する。具体的には、第2方向Zは、上下方向である。また、第1方向X及び第2方向Zの両方と略直交する方向を第3方向Yとする。ここで、第1方向X、第2方向Z及び第3方向Yのそれぞれは、向きを問わない方向を意味する。
【0020】
より詳しくは、ベース3は、第1保持器4によって保持された物品Wが載置されるベースプレート31を有している。ベースプレート31は、平面視で、第1方向Xを長手方向とし、第3方向Yを短手方向とする略矩形状の外形を有する。ベースプレート31の厚さ方向は、第2方向Zと一致する。ベースプレート31は、上面31aと、上面31aと反対を向く底面31bとを有している。また、ベースプレート31は、上面31aのうち第3方向Yにおける両端部に設けられ、第1方向Xへ延びる2つの摺動プレート31cを有している。摺動プレート31cは、第1保持器4によって保持された物品Wが載置される載置面31dを有する。載置面31dは、第2方向Z、具体的には上方を向いている。載置面31dは、比較的小さな摩擦係数を有し、物品Wが摺動する摺動面として機能する。
【0021】
ベースプレート31のうち第1方向Xにおける一端部には、図5に示すように、ロボットアーム11の先端部が取り付けられるアタッチメント32が設けられている。アタッチメント32に、ロボットアーム11の先端のリンク12が取り付けられる。ロボットアーム11を動かすことによって、ハンド10は、任意の姿勢をとることができる。
【0022】
尚、説明の便宜上、ベースプレート31の厚さ方向、即ち、第2方向Zが上下方向を向く姿勢で、ハンド10の構成を説明する。この姿勢は、ハンド10が通常、使用される際の姿勢であり、基本姿勢と称する。また、第1方向Xにおいて、アタッチメント32の方を後とし、アタッチメント32と反対側を前とする。すなわち、第1方向Xにおいて、ロボットアーム11から離れる方を前方とし、ロボットアーム11に近づく方を後方とする。
【0023】
ベースプレート31の上面31aには、第1方向Xへ延びる2本のレール33が設けられている。各レール33には、図3及び図4に示すように、ブロック34が第1方向Xへ移動可能に取り付けられている。つまり、レール33及びブロック34は、第1方向Xへ摺動可能なリニアガイドを形成する。
【0024】
第1駆動装置5は、モータ51と、モータ51の駆動力を伝達する伝達ベルト52とを有している。より詳しくは、第1駆動装置5は、2本の伝達ベルト52を有している。
【0025】
モータ51は、正逆回転が可能な電動モータである。モータ51は、ベースプレート31に取り付けられている。より詳しくは、モータ51は、図2及び図5に示すように、ベースプレート31のうち第1方向Xの後端部に配置されている。モータ51は、底面31bから突出しない状態でベース3に配置されている。
【0026】
伝達ベルト52は、無端ベルトである。各伝達ベルト52は、図5に示すように、ベースプレート31に設けられた駆動ローラ53及び従動ローラ54に巻回されている。各組の駆動ローラ53及び従動ローラ54は、ベースプレート31において、第1方向Xへ並んで配置されている。駆動ローラ53は、ベースプレート31のうち第1方向Xの後端部に配置され、従動ローラ54は、ベースプレート31のうち第1方向Xの前端部に配置されている。駆動ローラ53の軸心及び従動ローラ54の軸心は、第3方向Yへ延びている。駆動ローラ53及び従動ローラ54は、それぞれの軸心を中心に回転可能にベースプレート31に設けられている。具体的には、駆動ローラ53及び従動ローラ54はそれぞれ、ベースプレート31に厚さ方向に貫通形成された貫通孔に配置されている。
【0027】
モータ51の駆動力は、ギヤ列等の減速装置を介して駆動ローラ53に伝達される。モータ51は、2つの駆動ローラ53に対して共通である。
【0028】
伝達ベルト52は、図2及び図3に示すように、ベースプレート31の上面31aに沿って第1方向Xへ延び、駆動ローラ53に巻回されると共に貫通孔を介してベースプレート31の底面31bの方へ回り、図6に示すように、底面31bに沿って第1方向Xへ延び、従動ローラ54に巻回されると共に貫通孔を介してベースプレート31の上面31aの方へ回る。結果として、伝達ベルト52は、ベースプレート31に沿って延びるようにベースプレート31に配置されている。2本の伝達ベルト52は、第3方向Yへ並んで配置されている。
【0029】
伝達ベルト52には、第1保持器4が連結されている。詳しくは、伝達ベルト52には、キャリッジ56が固定されている。キャリッジ56は、伝達ベルト52のうち上面31aに沿って延びる部分に固定されている。キャリッジ56は、ブロック34にも固定されている。つまり、キャリッジ56は、伝達ベルト52によって第1方向Xへ駆動されると共に、レール33によって第1方向Xへ案内される。キャリッジ56は、第2方向Z及び第3方向Yへは移動不能である。キャリッジ56は、第1保持器4を支持している。
【0030】
第1保持器4は、図2に示すように、複数の吸引パッド41と、吸引パッド41を支持するバックプレート42と、バックプレート42が取り付けられる支持ベース43とを有している。
【0031】
支持ベース43は、底壁43aと、底壁43aに設けられた一対の支持壁43bと、バックプレート42が取り付けられる取付プレート43cとを有している。底壁43aは、図5に示すように、厚さ方向が第2方向Zを向く状態で、第3方向Yへ延びている。底壁43aのうち第3方向Yの両端部に一対の支持壁43bが配置されている。一対の支持壁43bは、厚さ方向が第3方向Yを向く状態で、第2方向Zへ延びている。取付プレート43cは、厚さ方向が第1方向Xを向く状態で、底壁43a及び一対の支持壁43bに固定されている。取付プレート43cは、底壁43a及び一対の支持壁43bの前方に配置されている。
【0032】
バックプレート42は、その厚み方向を第1方向Xに向けた状態で、取付プレート43cに取り付けられている。
【0033】
吸引パッド41は、蛇腹状に形成された中空のパッドである。吸引パッド41は、変形可能である。吸引パッド41は、バックプレート42のうち前方を向く面に取り付けられている。複数の吸引パッド41は、バックプレート42において行列状に配列されている。吸引パッド41は、前方を向く開口を有している。
【0034】
吸引パッド41は、配管を介して負圧発生装置17に接続されている。負圧発生装置17が負圧を発生することによって、吸引パッド41の開口に接近又は接触する物品が吸引される。複数の吸引パッド41は、共通の配管系統、又は、複数の独立した配管系統を介して負圧発生装置17に接続され得る。複数の吸引パッド41が複数の独立した配管系統を介して負圧発生装置17に接続される場合には、複数の吸引パッド41に個別に、又は、グループごとに吸引を実行させることができる。
【0035】
キャリッジ56は、このように構成された第1保持器4を第2方向Zへ移動可能に、且つ第1方向X及び第3方向Yへ移動不能に支持している。
【0036】
詳しくは、キャリッジ56は、図2に示すように、底壁56aと、底壁56aに設けられた一対の支持壁56bと、一対の支持壁56bに固定された一対のレール56cと、一対のレール56cに第2方向Zへ摺動可能に連結された一対のブロック56dとを有している。
【0037】
一対の支持壁56bは、厚さ方向が第3方向Yを向く状態で、間隔を空けて第3方向Yへ並んで配置されている。各支持壁56bは、第2方向Zへ、即ち、上下方向へ延びている。支持壁56bには、対応するレール56cが固定されている。レール56cは、第2方向Zへ延びている。レール56c及びブロック56dは、第2方向Zへ摺動可能なリニアガイドを形成する。一対のレール56c及び一対のブロック56dは、第3方向Yにおいて、一対の支持壁56bの内側であって支持ベース43の一対の支持壁43bの外側に配置されている。
【0038】
一対のブロック56dは、一対の支持壁43bに固定されている。そのため、一対の支持壁43b、即ち、支持ベース43は、レール56cに沿って第2方向Zへ移動可能となる。支持ベース43には、第1保持器4が固定されているので、第1保持器4も第2方向Zへ移動可能となる。
【0039】
さらに、第1保持器4及びキャリッジ56には、図5に示すように、第1保持器4を第2方向Z、即ち、上下方向へ移動させる昇降装置9が設けられている。昇降装置9は、取付プレート43cの後方おいて底壁43a上に配置されている。
【0040】
昇降装置9は、エアシリンダである。昇降装置9は、第2方向Zへ延びると共に、第2方向Zへ移動可能なピストンロッドを有している。昇降装置9は、第1保持器4の支持ベース43に固定され、ピストンロッドがキャリッジ56の底壁56aに固定されている。昇降装置9には、エアチューブを介してエア供給装置18が接続されている。エアチューブには、昇降装置9へのエアの供給状態を切り替える電磁弁が設けられている。昇降装置9は、エアの供給状態が切り替えられることによって、ピストンロッドを後退させた第1位置と、ピストンロッドを進出させた第2位置とでピストンロッドを択一的に移動させる。第1位置は、支持ベース43が底壁56aに最も接近した位置であり、このときの第1保持器4の位置は、第2方向Zにおける最下位置である。第2位置は、支持ベース43が底壁56aから最も離れた位置であり、このときの第1保持器4の位置は、第2方向Zにおける最上位置である。
【0041】
このように、第1保持器4は、第2方向Zへ移動可能にキャリッジ56に支持されると共に、昇降装置9によって第2方向Zへ移動させられる。
【0042】
第2保持器6は、図2に示すように、ガイド7を介してキャリッジ56に取り付けられている。第2保持器6は、複数の吸引パッド61と、吸引パッド61を支持するバックプレート62とを有している。バックプレート62は、その厚さ方向が第1方向Xを向くように配置される。
【0043】
吸引パッド61は、蛇腹状に形成された中空のパッドである。吸引パッド61は、変形可能である。吸引パッド61は、バックプレート62のうち前方を向く面に取り付けられている。複数の吸引パッド61は、バックプレート62において行列状に配列されている。吸引パッド61は、前方を向く開口を有している。
【0044】
吸引パッド61は、配管を介して負圧発生装置17に接続されている。負圧発生装置17が負圧を発生することによって、吸引パッド61の開口に接近又は接触する物品が吸引される。複数の吸引パッド61は、共通の配管系統、又は、複数の独立した配管系統を介して負圧発生装置17に接続され得る。複数の吸引パッド61が複数の独立した配管系統を介して負圧発生装置17に接続される場合には、複数の吸引パッド61に個別に、又は、グループごとに吸引を実行させることができる。
【0045】
第1駆動装置5は、モータ51によって伝達ベルト52を移動させることによって、キャリッジ56を第1方向Xへ移動させる。これにより、第1駆動装置5は、第1保持器4を第1方向Xへ移動させる。第2保持器6もガイド7を介してキャリッジ56に取り付けられているので、第1駆動装置5は、第1保持器4及び第2保持器6の両方を第1方向Xへ移動させる。第1駆動装置5は、第1保持器4及び第2保持器6を、第1方向Xにおいて所定の第1位置と第1位置よりも後方の第2位置との間で移動させる。第1位置は、図2及び図5に示すように、第1保持器4の吸引パッド41及び第2保持器6の吸引パッド61がベースプレート31の前端よりも第1方向Xの前方へ突出する位置である。第1位置は、第1保持器4及び第2保持器6が物品Wの吸着を実行するときの位置である。第2位置は、図3に示すように、吸引パッド41及び吸引パッド61がベースプレート31の前端よりも第1方向Xの後方へ後退した位置である。第2位置は、第1保持器4及び第2保持器6によって保持された物品Wをベースプレート31上に載置するときの位置である。
【0046】
伝達ベルト52は、図3に示すように、第1保持器4によって保持された物品Wが載置される搬送面52aを有している。搬送面52aは、伝達ベルト52の外周面である。具体的には、第1保持器4が第2位置に位置するときには、第1保持器4よりも前方において、伝達ベルト52の一部がベースプレート31の上面31aに露出している。伝達ベルト52のうち、ベースプレート31の上面31aにおいて第1保持器4よりも前方に位置する部分の外周面が搬送面52aである。つまり、伝達ベルト52は、第1保持器4と共に搬送面52aを移動させる。第2方向Zにおける搬送面52aの位置、即ち、上下方向の高さは、載置面31dと略同じである。搬送面52aの摩擦係数は、載置面31dの摩擦係数よりも大きい。
【0047】
ガイド7は、図4に示すように、第1移動体71と、第1移動体71をベース3に対して第2方向Zへ移動可能に支持する第1ガイド74と、第2保持器6が設けられた第2移動体72と、第2移動体72を第1移動体71に対して第2方向Zへ移動可能に支持する第2ガイド75とを有している。この例では、第2保持器6は、第3移動体73及び第3ガイド76を介して第2移動体72に設けられている。第3移動体73に、第2保持器6が取り付けられている。第3ガイド76は、第3移動体73を第2移動体72に対して第2方向Zへ移動可能に支持する。第2移動体72は、第1移動体71よりも上方に配置されている。第3移動体73は、第2移動体72よりも上方に配置されている。
【0048】
第1ガイド74は、支持ベース43に固定された一対のブロック74aと、ブロック74aに第2方向Zへ摺動可能に連結されたレール74bとを有している。
【0049】
一対のブロック74aは、第3方向Yにおいて、支持ベース43の一対の支持壁43bの内側に配置されている。ブロック74aは、対応する支持壁43bの上端部に固定されている。2本のレール74bも、第3方向Yにおいて、一対の支持壁43bの内側に配置されている。レール74bは、第2方向Zへ延びている。ブロック74a及びレール74bは、第2方向Zへ摺動可能なリニアガイドを形成する。ここでは、ブロック74aが支持壁43bに固定されているので、レール74bが支持壁43bに対して第2方向Zへ移動する。
【0050】
第1移動体71は、一対の支持壁71aと、一対の支持壁71aを互いに連結する連結壁71bとを有している。
【0051】
一対の支持壁71aは、その厚さ方向が第3方向Yを向く状態で、間隔を空けて第3方向Yへ並んで配置されている。一対の支持壁71aは、第3方向Yにおいて、2本のレール74bの内側に配置されている。各支持壁71aは、第2方向Zへ、即ち、上下方向へ延びている。各支持壁71aは、対応するレール74bに固定されている。連結壁71bは、一対の支持壁71aの上端部に固定されている。一対の支持壁71aが2本のレール74bに固定されているので、第1移動体71は、第2方向Zへのレール74bの移動に伴ってレール74bと一体的に第2方向Zへ移動する。
【0052】
第2ガイド75は、第1移動体71の一対の支持壁71aに固定された一対のレール75aと、一対のレール75aに第2方向Zへ摺動可能に連結された一対のブロック75bとを有している。
【0053】
一対のレール75aは、間隔を空けて第3方向Yへ並んで配置されている。一対のレール75aは、第3方向Yにおいて、一対の支持壁71aの内側に配置されている。各レール75aは、第2方向Zへ、即ち、上下方向へ延びている。各レール75aは、対応する支持壁71aに固定されている。一対のブロック75bも、第3方向Yにおいて、一対の支持壁71aの内側に配置されている。レール75a及びブロック75bは、第2方向Zへ摺動可能なリニアガイドを形成する。レール75aが支持壁71aに固定されているので、ブロック75bが支持壁71aに対して第2方向Zへ移動する。
【0054】
第2移動体72は、一対の支持壁72aと、一対の支持壁72aを互いに連結する連結壁72bとを有している。
【0055】
一対の支持壁72aは、その厚さ方向が第3方向Yを向く状態で、間隔を空けて第3方向Yへ並んで配置されている。一対の支持壁72aは、第3方向Yにおいて、一対のブロック75bの内側に配置されている。各支持壁72aは、第2方向Zへ、即ち、上下方向へ延びている。各支持壁72aは、対応するブロック75bに固定されている。支持壁72aの下端部が、ブロック75bに固定されている。連結壁72bは、一対の支持壁72aの上端部に固定されている。一対の支持壁72aが2つのブロック75bに固定されているので、第2移動体72は、第2方向Zへのブロック75bの移動に伴ってブロック75bと一体的に第2方向Zへ移動する。
【0056】
ここで、第1移動体71の連結壁71bは、図2に示すように、第1方向Xにおいて、一対の支持壁71aに対してオフセットした位置に配置されている。そのため、ブロック75bに固定され、第2方向Zへ延びる支持壁72aは、連結壁71bに干渉しない。
【0057】
第3ガイド76は、第2移動体72の一対の支持壁72aに固定された一対のレール76aと、一対のレール76aに第2方向Zへ摺動可能に連結された一対のブロック76bとを有している。
【0058】
一対のレール76aは、間隔を空けて第3方向Yへ並んで配置されている。一対のレール76aは、第3方向Yにおいて、一対の支持壁72aの内側に配置されている。各レール76aは、第2方向Zへ、即ち、上下方向へ延びている。各レール76aは、対応する支持壁72aに固定されている。一対のブロック76bも、第3方向Yにおいて、一対の支持壁72aの内側に配置されている。レール76a及びブロック76bは、第2方向Zへ摺動可能なリニアガイドを形成する。レール76aが支持壁72aに固定されているので、ブロック76bが支持壁72aに対して第2方向Zへ移動する。
【0059】
第3移動体73は、一対の支持壁73aと、一対の支持壁73aを互いに連結する連結壁73bとを有している。
【0060】
一対の支持壁73aは、その厚さ方向が第3方向Yを向く状態で、間隔を空けて第3方向Yへ並んで配置されている。一対の支持壁73aは、第3方向Yにおいて、一対のブロック76bの内側に配置されている。各支持壁73aは、第2方向Zへ、即ち、上下方向へ延びている。各支持壁73aは、対応するブロック76bに固定されている。連結壁73bは、一対の支持壁73aの上端部に固定されている。一対の支持壁73aが2つのブロック76bに固定されているので、第3移動体73は、第2方向Zへのブロック76bの移動に伴ってブロック76bと一体的に第2方向Zへ移動する。
【0061】
ここで、第2移動体72の連結壁72bは、図3に示すように、第1方向Xにおいて、一対の支持壁72aに対してオフセットした位置に配置されている。そのため、ブロック76bに固定され、第2方向Zへ延びる支持壁73aは、連結壁72bに干渉しない。
【0062】
第3移動体73の一対の支持壁73aには、図2図3及び図5に示すように、取付プレート73cが連結されている。取付プレート73cの厚さ方向は、第1方向Xを向いている。取付プレート73cに第2保持器6が取り付けられる。具体的には、第2保持器6のバックプレート62は、その厚み方向を第1方向Xに向けた状態で、取付プレート73cに取り付けられている。
【0063】
第2駆動装置8は、図4に示すように、第2保持器6の移動量を調整可能な可変駆動装置81と、一定の移動量で第2保持器6を移動させる第1固定駆動装置82と、一定の移動量で第2保持器6を移動させる第2固定駆動装置83とを有している。可変駆動装置81は、第1移動体71を駆動する。第1固定駆動装置82は、第2移動体72を駆動する。第2固定駆動装置83は、第3移動体73を駆動する。
【0064】
可変駆動装置81は、電動シリンダである。具体的には、可変駆動装置81は、モータ81aと、ロッド81bとを有する。ロッド81bは、第2方向Zへ延びている。ロッド81bは、モータ81aによって回転駆動されるボールねじ機構を有している。モータ81aが作動することによって、ロッド81bが第2方向Zへ移動する。可変駆動装置81のモータ81aは、キャリッジ56に固定されている。ロッド81bは、第1移動体71の連結壁71bに固定されている。可変駆動装置81は、モータ81aを作動させることによって、第1移動体71を第2方向Zへ移動させる。
【0065】
可変駆動装置81は、モータ81aの回転量を調整することによって、第2方向Zにおけるロッド81bの位置、即ち、進出量を所定の調整可能範囲内で連続的に調整する。つまり、可変駆動装置81は、モータ81aの回転量を調整することによって、第2方向Zへの第1移動体71の移動量を調整可能範囲内で調整する。
【0066】
第1固定駆動装置82は、エアシリンダである。第1固定駆動装置82は、ピストンロッド82aを有している。ピストンロッド82aは、第2方向Zへ延びている。第1固定駆動装置82は、ピストンロッド82aを第2方向Zに移動させる。第1固定駆動装置82は、第1移動体71の連結壁71bに固定されている。ピストンロッド82aは、第2移動体72の連結壁72bに固定されている。
【0067】
第1固定駆動装置82には、エアチューブを介してエア供給装置18が接続されている。エアチューブには、第1固定駆動装置82へのエアの供給状態を切り替える電磁弁が設けられている。第1固定駆動装置82は、エアの供給状態が切り替えられることによって、ピストンロッド82aを後退させた第1位置と、ピストンロッド82aを進出させた第2位置とでピストンロッド82aを択一的に移動させる。第1固定駆動装置82は、ピストンロッド82aを第1位置と第2位置との間で進出又は後退させることによって第1移動体71に対して第2移動体72を第2方向Zへ移動させる。ピストンロッド82aの移動量、即ち、第2移動体72の移動量は、第1位置と第2位置との間の第1距離で一定である。例えば、第1距離は、可変駆動装置81による第1移動体71の最大移動量以下である。
【0068】
第2固定駆動装置83は、第1固定駆動装置82と同様の構成を有する。第2固定駆動装置83は、ピストンロッド83aを有するエアシリンダである。第2固定駆動装置83は、第2移動体72の連結壁72bに固定されている。ピストンロッド83aは、第3移動体73の連結壁73bに固定されている。
【0069】
第2固定駆動装置83には、エアチューブを介してエア供給装置18が接続され、第1固定駆動装置82とは独立してエアが供給される。第2固定駆動装置83は、エアの供給状態が切り替えられることによって、ピストンロッド83aを後退させた第1位置と、ピストンロッド83aを進出させた第2位置とでピストンロッド83aを択一的に第2方向Zへ移動させる。第2固定駆動装置83は、ピストンロッド83aを第1位置と第2位置との間で進出又は後退させることによって第2移動体72に対して第3移動体73を第2方向Zへ移動させる。ピストンロッド83aの移動量、即ち、第3移動体73の移動量は、第1位置と第2位置との間の第2距離で一定である。例えば、第2距離は、可変駆動装置81による第1移動体71の最大移動量以下である。
【0070】
第2駆動装置8は、可変駆動装置81、第1固定駆動装置82及び第2固定駆動装置83を使い分けることによって、第2保持器6を第2方向Zへ移動させる。第2駆動装置8は、可変駆動装置81、第1固定駆動装置82及び第2固定駆動装置83のそれぞれを独立して作動させる。
【0071】
詳しくは、第2駆動装置8は、可変駆動装置81のロッド81bの進出量を調整することによって、第1移動体71を第2方向Zへ移動させる。第1移動体71に第2移動体72が支持され、第2移動体72に第3移動体73が支持され、第3移動体73に第2保持器6が取り付けられている。そのため、第1移動体71が第2方向Zへ移動すると、第1移動体71と共に第2移動体72、第3移動体73及び第2保持器6が第2方向Zへ移動する。第2駆動装置8は、ロッド81bの進出量の調整可能範囲内で第2方向Zにおける第1移動体71の移動量、ひいては、第2保持器6の移動量を任意に調整することができる。
【0072】
第2駆動装置8は、第1固定駆動装置82のピストンロッド82bの進出量を変更することによって、第2移動体72を第2方向Zへ移動させる。第2駆動装置8は、第1固定駆動装置82のピストンロッド82bの位置を第1位置と第2位置とで択一的に切り替える。ピストンロッド82bが第1位置に位置するときには、第2移動体72が第2方向Zにおいて第1移動体71に最も接近する。一方、ピストンロッド82bが第2位置に位置するときには、第2移動体72が第2方向Zにおいて第1移動体71から最も離間する。第2移動体72が第2方向Zへ移動すると、第2移動体72と共に第3移動体73及び第2保持器6が第2方向Zへ移動する。第2駆動装置8は、ピストンロッド82bの位置を第1位置と第2位置とで切り替えることによって、第2移動体72、ひいては、第2保持器6を第2方向Zへ一定の第1距離だけ移動させる。
【0073】
第2駆動装置8は、第2固定駆動装置83のピストンロッド83bの進出量を変更することによって、第3移動体73を第2方向Zへ移動させる。第2駆動装置8は、第2固定駆動装置83のピストンロッド83bの位置を第1位置と第2位置とで択一的に切り替える。ピストンロッド83bが第1位置に位置するときには、第3移動体73が第2方向Zにおいて第2移動体72に最も接近する。一方、ピストンロッド83bが第2位置に位置するときには、第3移動体73が第2方向Zにおいて第2移動体72から最も離間する。第3移動体73が第2方向Zへ移動すると、第3移動体73と共に第2保持器6が第2方向Zへ移動する。第2駆動装置8は、ピストンロッド83bの位置を第1位置と第2位置とで切り替えることによって、第3移動体73、ひいては、第2保持器6を第2方向Zへ一定の第2距離だけ移動させる。
【0074】
可変駆動装置81のロッド81bの進出量が最小で、第1固定駆動装置82のピストンロッド82bが第1位置で、第2固定駆動装置83のピストンロッド83bが第1位置の場合に、第2方向Zにおける第1保持器4から第2保持器6までの距離が最小距離となる。ここでは、第2方向Zにおける第1保持器4から第2保持器6までの距離を、第1保持器4の正面形状における重心と第2保持器6の正面形状における重心との第2方向Zにおける距離とする。可変駆動装置81のロッド81bの進出量が最大で、第1固定駆動装置82のピストンロッド82bが第2位置で、第2固定駆動装置83のピストンロッド83bが第2位置の場合に、第2方向Zにおける第1保持器4から第2保持器6までの距離が最大距離となる。第2駆動装置8は、可変駆動装置81よる可変距離、第1固定駆動装置82による第1距離、及び、第2固定駆動装置83による第2距離を適宜組み合わせることによって、第2方向XZにおける第1保持器4から第2保持器6までの距離を最小距離と最大距離との間で任意に調整する。
【0075】
ここで、第1距離及び第2距離はいずれも可変駆動装置81による第1移動体71の最大移動量以下であるので、第2方向XZにおける第1保持器4から第2保持器6までの距離を最小距離と最大距離との間の全範囲で調整することができる。
【0076】
ハンド10は、撮像装置19をさらに備えている。撮像装置19は、取付プレート43cの上部に設けられている。撮像装置19は、第2方向Zにおいて、第1保持器4と第2保持器6との間に配置されている。撮像装置19は、例えばステレオカメラである。撮像装置19の向きは、概ね、第1方向Xの前方を向いている。尚、撮像装置19は、単眼カメラ又はTOF(Time-of-Flight)カメラ等であってもよい。
【0077】
第1保持器4への配管、第2保持器6への配管、可変駆動装置81への配線、第1固定駆動装置82への配管、第2固定駆動装置82への配管、及び、撮像装置19への配線は、図5に示すように、少なくともハンド10においては、収容ダクト35に収容されている。収容ダクト35は、自在に湾曲することが可能であり、配管及びケーブルを収容する。収容ダクト35は、前述の配管及び配線以外の配管又は配線を収容してもよい。例えば、前述の配管及び配線は、ロボットアーム11に沿って敷設され、制御装置2、負圧発生装置17又はエア供給装置18等の対応する装置に接続される。ハンド10においては、第1保持器4への配管、第2保持器6への配管及び駆動装置81への配線等の配管及び配線は、底面31bから突出しない状態でベース3に配置されている。すなわち、収容ダクト35は、底面31bから突出しない状態でベース3に配置されている。尚、収容ダクト35は、図5以外では図示が省略されている。
【0078】
制御装置2は、ロボット1に物品Wの移送を実行させる。制御装置2は、ロボット1を制御して、搬送車15、ロボットアーム11及びハンド10を移動させ、ハンド10に物品Wを保持させる。制御装置2は、物品Wを保持した状態のハンド10を搬送車15及びロボットアーム11によって移動させ、物品Wを目的位置に移送させる。
【0079】
図7は、制御装置2の概略的なハードウェア構成を示す図である。制御装置2は、ロボットアーム11のサーボモータ14、ハンド10の第1駆動装置5、第2駆動装置8及び昇降装置9、搬送車15、負圧発生装置17、エア供給装置18、並びに、撮像装置19を制御する。制御装置2は、制御部21と、記憶部22と、メモリ23と、サーボアンプ24とを有している。
【0080】
制御部21は、制御装置2の全体を制御する。制御部21は、各種の演算処理を行う。例えば、制御部21は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで形成されている。制御部21は、MCU(Micro Controller Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)等で形成されていてもよい。
【0081】
記憶部22は、制御部21で実行されるプログラム及び各種データを格納している。記憶部22は、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disc Drive)又はSSD(Solid State Drive)等で形成される。メモリ23は、データ等を一時的に格納する。例えば、メモリ23は、揮発性メモリで形成される。
【0082】
サーボアンプ24は、制御部21からの指令を受けて、サーボモータ14へ電流を供給する。サーボアンプ24には、サーボモータ14に設けられたエンコーダ14aの検出結果が入力されている。サーボアンプ24は、エンコーダ14aの検出結果に基づいてサーボモータ14への印加電流をフィードバック制御する。
【0083】
図8は、制御部21の機能ブロック図である。制御部21は、記憶部22から制御プログラムをメモリに読み出して展開することによって、各種機能を実現する。具体的には、制御部21は、走行制御部25と、アーム制御部26と、撮像制御部27と、画像処理部28と、昇降制御部29と、ベルト制御部210と、吸引制御部211とを有している。
【0084】
走行制御部25は、搬送車15を制御する。走行制御部25は、搬送車15のモータの回転を制御することによって、搬送車15、ひいては、ロボット1を所望の位置まで移動させる。
【0085】
アーム制御部26は、物品Wの撮像、物品Wの保持、又は物品Wの運搬等の目的に応じた位置にハンド10を移動させるようにロボットアーム11の動作を制御する。また、アーム制御部26は、複数の物品Wの中から保持する物品Wの選択等も実行する。アーム制御部26は、ロボットアーム11の目標とする動作に応じた各関節13の角度を指令角度として生成し、生成された指令角度をサーボアンプ24に出力する。
【0086】
撮像制御部27は、撮像装置19を制御して、撮像装置19に撮像を実行させる。
【0087】
画像処理部28は、撮像装置19によって撮像された画像を処理して、物品Wの外形、位置又は姿勢等を判別する。具体的には、画像処理部28は、撮像画像と記憶部22に保存された物品Wのテンプレートとを照らし合わせて、パターンマッチング等の手法によって撮像画像中の物品Wを抽出する。画像処理部28は、抽出された物品Wの外形、位置又は姿勢等をアーム制御部26及び昇降制御部29へ出力する。アーム制御部26及び昇降制御部29は、抽出された物品Wの位置又は姿勢等をそれぞれの制御において利用する。
【0088】
昇降制御部29は、ハンド10の第2駆動装置8及び昇降装置9を制御する。具体的には、第2方向Zにおける第1保持器4から第2保持器6までの距離を調整する際には、昇降制御部29は、第2駆動装置8を制御する。一方、第1保持器4又は第2保持器6を全体的に第2方向Zへ移動させる際には、昇降制御部29は、昇降装置9を制御する。
【0089】
ベルト制御部210は、ハンド10の第1駆動装置5を制御する。具体的には、ベルト制御部210は、第1駆動装置5のモータ51の回転方向及び回転量を制御することによって、第1方向Xにおける第1保持器4及び第2保持器6の位置を調整する。
【0090】
吸引制御部211は、第1保持器4及び第2保持器6の動作を制御する。具体的には、吸引制御部211は、負圧発生装置17の作動及び停止を切り替えると共に、負圧発生装置17と第1保持器4又は第2保持器6との導通及び遮断を切り替える。これにより、吸引制御部211は、第1保持器4及び第2保持器6の吸引及びその解除を切り替える。
【0091】
続いて、ロボットシステム100による物品Wの移送について具体的に説明する。図9は、物品Wの移送のフローチャートである。ここでは、所定の開始位置に積み上げられた複数の物品Wを所定の目的位置まで移送する場合を例に説明する。
【0092】
まず、ステップS101において、走行制御部25が搬送車15を制御して、ロボット1を開始位置まで移動させる。
【0093】
続いて、ステップS102において、アーム制御部26がロボットアーム11を動作させて、撮像装置19を所定の撮像位置へ移動させると共に、撮像制御部27が撮像装置19に撮像を実行させる。これにより、撮像装置19は、積み上げられた複数の物品Wの画像を取得する。
【0094】
次に、ステップS103において、画像処理部28は、撮像画像の中から物品Wの外形、位置及び姿勢を抽出する。
【0095】
その後、ステップS104において、アーム制御部26は、画像処理部28の抽出結果に基づいて、複数の物品Wの中からハンド10によって保持する物品Wを選択する。ここで、ハンド10は、上下に積まれた2個の物品Wを一括で保持する。例えば、アーム制御部26は、複数の物品Wの中から、最上部の物品Wとその1つ下の物品Wとを、保持すべき2個の物品Wとして選択する。
【0096】
ステップS105において、昇降制御部29は、第2方向Zにおける第1保持器4から第2保持器6までの距離(以下、「目標距離」という)を決定する。昇降制御部29は、選択された2個の物品Wの大きさ及び位置等に基づいて、目標距離を決定する。例えば、昇降制御部29は、2個の物品Wの正面形状における重心の第2方向Zにおける距離を求め、求められた距離を目標距離とする。
【0097】
昇降制御部29は、目標距離を実現するための第2駆動装置8の組み合わせを決定する。詳しくは、第1保持器4から第2保持器6までの最小距離に可変駆動装置81の調整可能距離を加えた範囲内に目標距離が含まれる場合には、昇降制御部29は、第1固定駆動装置82のピストンロッド82bを第1位置に、第2固定駆動装置83のピストンロッド83bを第1位置に位置させる。昇降制御部29は、この状態で可変駆動装置81のロッド81bの進出量を調整することによって、第1保持器4から第2保持器6までの距離を目標距離に一致させる。尚、図3のハンド10では、ピストンロッド82b及びピストンロッド83bが第1位置に位置している。第1保持器4から第2保持器6までの最小距離に第1固定駆動装置82の第1距離及び可変駆動装置81の調整可能距離を加えた範囲内に目標距離が含まれる場合には、昇降制御部29は、第1固定駆動装置82のピストンロッド82bを第2位置に、第2固定駆動装置83のピストンロッド83bを第1位置に位置させる。昇降制御部29は、この状態で可変駆動装置81のロッド81bの進出量を調整することによって、第1保持器4から第2保持器6までの距離を目標距離に一致させる。尚、図5のハンド10では、ピストンロッド82bが第2位置に位置し且つピストンロッド83bが第1位置に位置している。第1保持器4から第2保持器6までの最小距離に第1固定駆動装置82の第1距離、第2固定駆動装置83の第2距離及び可変駆動装置81の調整可能距離を加えた範囲内に目標距離が含まれる場合には、昇降制御部29は、第1固定駆動装置82のピストンロッド82bを第2位置に、第2固定駆動装置83のピストンロッド83bを第2位置に位置させる。昇降制御部29は、この状態で可変駆動装置81のロッド81bの進出量を調整することによって、第1保持器4から第2保持器6までの距離を目標距離に一致させる。尚、図2及び図4のハンド10では、ピストンロッド82b及びピストンロッド83bが第2位置に位置している。
【0098】
続いて、ステップS106において、ベルト制御部210は、第1駆動装置5のモータ51を作動させて、第1保持器4及び第2保持器6を第1位置へ前進させる。これにより、第1保持器4の吸引パッド41及び第2保持器6の吸引パッド61がベースプレート31の前端よりも前方へ突出する。それに加えて、アーム制御部26は、第1保持器4及び第2保持器6のそれぞれを選択された2個の物品Wに側方から接触させる。具体的には、アーム制御部26は、ベースプレート31が2個の物品Wのうち下方の物品Wの底と略同じ高さかそれ以下の高さになるようにロボットアーム11を動作させる。アーム制御部26は、その高さ位置において吸引パッド41及び吸引パッド61をそれぞれ対応する物品Wに側方から接触させる。このとき、吸引制御部211は、負圧発生装置17を作動させると共に、負圧発生装置17と第1保持器4及び第2保持器6とを導通させる。これにより、第1保持器4及び第2保持器6が吸引を開始する。こうして、第1保持器4及び第2保持器6は、2個の物品Wに吸着する。
【0099】
その後、ステップS107において、ベルト制御部210は、第1駆動装置5のモータ51を作動させて、第1保持器4及び第2保持器6を第2位置へ後退させる。これにより、第1保持器4及び第2保持器6に保持された物品Wは、第1方向Xにおいてベースプレート31の方へ引き込まれる。第1方向Xへ引き込まれる物品W、具体的には、上下に積まれた2個の物品Wのうち下方の物品Wは、伝達ベルト52の搬送面52a上に載置される。物品Wは、搬送面52aに載置されることによって、搬送面52aの摩擦力を介して伝達ベルト52によっても搬送される。つまり、物品Wは、第1保持器4、第2保持器6及び伝達ベルト52によって第1方向Xへ引き込まれる。さらに、物品Wは搬送面52a上に載置されるときに、ベースプレート31の載置面31d上にも載置される。載置面31dは、摩擦係数が小さく、摺動面として機能する。つまり、物品Wは、ベースプレート31に荷重を支えられつつ、第1保持器4、第2保持器6及び伝達ベルト52によって第1方向Xへ引き込まれる。物品Wは、第1保持器4及び第2保持器6が第2位置に達するまでベースプレート31の方へ引き込まれる。こうして、物品Wがベースプレート31上に載置される。
【0100】
尚、第1保持器4及び第2保持器6による物品Wの吸着は、ベースプレート31への物品Wの引き込みが完了した後は、任意のタイミングで解除されてもよい。
【0101】
続いて、ステップS108において、物品Wの搬出が行われる。アーム制御部26は、ロボットアーム11を動作させて、ハンド10を物品Wの目的位置まで移動させる。このとき、走行制御部25は、必要に応じて、搬送車15を走行させてもよい。ハンド10が目的位置まで到達すると、ベルト制御部210は、第1駆動装置5のモータ51を作動させて、第1保持器4及び第2保持器6を前方へ移動させる。物品Wは、第1保持器4及び第2保持器6によって前方へ押圧されると共に、伝達ベルト52の搬送面52aによって前方へ引き出される。最終的に、物品Wが目的位置に配置される。これにより、2個の物品Wの移送が完了する。
【0102】
2個の物品Wの移送が完了すると、ステップS101以降の処理が繰り返される。開始位置の全ての物品Wが無くなるまで、ステップS101以降の処理が繰り返される。尚、物品Wの大きさ、配置状況等によっては、ハンド10は、一度の移送において、物品Wを1個だけ保持して搬送することもあり得る。例えば、物品Wが大きい場合、又は、上下方向において最後の1個の物品Wを保持する場合などには、ハンド10は、第1保持器4及び第2保持器6の両方によって、又は、第1保持器4のみによって1個の物品Wを保持する場合もある。
【0103】
また、床に直置きされた1個又は2個の物品Wを保持する場合には、ステップS106において、アーム制御部26は、ベースプレート31を床にできる限り接近させるようにロボットアーム11を動作させる。物品Wが床に直置きされている場合には、ベースプレート31を物品Wの底と略同じ高さかそれ以下に配置することができない。しかし、ハンド10においては、モータ51がベースプレート31の底面31bから突出しないように配置されているので、ベースプレート31をできる限り床に接近させることができる。これにより、第1保持器4によって保持された物品Wをベースプレート31上に引き込み易くなる。
【0104】
さらに、床に直置きされた1個又は2個の物品Wを保持する場合には、ステップS107において物品Wをベースプレート31へ引き込む前に、昇降制御部29は、昇降装置9を作動させて、第1保持器4及び第2保持器6を第2方向Zにおいて上方へ移動させる。これにより、第1保持器4によって保持された物品Wが上方へ引き上げられる。この状態で、ベルト制御部210は、第1駆動装置5のモータ51を作動させて、第1保持器4及び第2保持器6を第2位置へ後退させる。物品Wの一部がベースプレート31の上方に達した適宜のタイミングで、昇降制御部29は、昇降装置9を作動させて、第1保持器4を第2方向Zにおいて下方へ移動させる。これにより、第1保持器4によって保持された物品Wがベースプレート31の載置面31d及び伝達ベルト52の搬送面52a上に載置される。その後は、第1保持器4及び第2保持器6が第2位置に達するまで、物品Wはベースプレート31の方へ引き込まれる。こうして、物品Wがベースプレート31上に載置される。尚、ステップS108以降は、前述の処理と同様である。
【0105】
このような物品Wの移送においてハンド10を用いることによって、物品Wの搬送効率を向上させることができる。詳しくは、ハンド10は、第1保持器4及び第2保持器6を備え、第2方向Zにおける第1保持器4から第2保持器6までの距離、即ち、第2方向Zにおける第1保持器4と第2保持器6との間隔を調整できる。ハンド10は、第1保持器4から第2保持器6までの距離を適切に調整することによって、2個の物品Wを一括で適切に保持することができる。これにより、ハンド10によって物品Wを1個ずつ搬送する場合と比較して、物品Wの搬送効率が向上する。
【0106】
さらに、一括で保持できる2個の物品Wの大きさは、第1保持器4から第2保持器6までの距離に依存する。第1保持器4から第2保持器6までの距離が調整されることによって、一括で保持できる2個の物品Wの大きさの範囲を拡大することができる。ハンド10によって1個の物品Wを保持する場合であっても、第1保持器4から第2保持器6までの距離を調整することによって、保持できる物品Wの適用範囲を拡大することができる。つまり、ハンド10によって保持できる物品Wの大きさの限界は、第1保持器4から第2保持器6までの距離に依存する。第1保持器4から第2保持器6までの距離を大きくすることによって、より大きな物品Wを保持可能となる。また、物品Wを適切に保持するためには、物品Wの重心との関係でどの位置を保持するのかも重要となる。第1保持器4から第2保持器6までの距離を調整することによって、物品Wの重心との関係で適切な位置を把持することができる。つまり、物品Wの重心との関係でも、適切に保持できる物品Wの適用範囲を拡げることができる。このように、物品Wの個数にかかわらず、保持できる物品Wの適用範囲が拡大されることによって、ハンド10の搬送能力が向上する。
【0107】
このように物品Wの適用範囲が拡大される結果、第1保持器4及び第2保持器6によって保持する物品Wの重量もより重くなり得る。ハンド10は2本の伝達ベルト52を有するので、伝達ベルト52によって物品Wを引き込む力を増大させている。これにより、より重い物品Wであっても、第1保持器4、第2保持器6及び伝達ベルト52によってベース3の方へ適切に引き込むことができる。
【0108】
また、第2方向Zへの第2保持器6の移動を可変駆動装置81と第1固定駆動装置82との組み合わせで実現することによって、可変駆動装置81で調整可能な範囲よりも大きな範囲内で第2保持器6の移動量を調整することができる。
【0109】
以上のように、ハンド10は、ベース3と、ベース3に対して所定の第1方向Xへ移動可能に支持され、物品Wを保持する第1保持器4と、第1保持器4を第1方向Xへ移動させる第1駆動装置5と、第1方向Xと交差する第2方向Zにおいて第1保持器4と並んで配置され、ベース3に対して第1方向Xへ移動可能に支持され、物品Wを保持する第2保持器6とを備え、ベース3には、第1保持器4及び第2保持器6によって保持された物品Wが載置され、第2保持器6は、第2方向Zにおける第1保持器4に対する距離を調整可能に構成されている。
【0110】
この構成によれば、第2方向Zにおける第1保持器4に対する第2保持器6の距離を調整することによって、ハンド10によって保持できる物品Wの適用範囲を拡大することができる。例えば、並列する2個の物品Wをそれぞれ第1保持器4及び第2保持器6で保持することができる。その際に、第2方向Zにおける第1保持器4に対する第2保持器6の距離を2個の物品Wのそれぞれの大きさに合わせて調整することによって、様々な大きさの物品Wを適切に保持することができる。第1保持器4及び第2保持器6によって1個の物品Wを保持する場合においても、第2方向Zにおける第1保持器4に対する第2保持器6の距離を調整することによって、様々な大きさの物品Wを適切に保持することができる。結果として、保持できる物品Wの適用範囲を拡大することができ、ハンド10の搬送能力を向上させることができる。
【0111】
具体的には、ハンド10は、第2保持器6を第2方向Zへ移動可能に支持するガイド7と、第2保持器6を第2方向Zへ移動させる第2駆動装置8とをさらに備えている。
【0112】
この構成によれば、第2保持器6は、ガイド7によって第2方向Zへ案内されつつ、第2駆動装置8によって第2方向Zへ駆動される。これにより、第2方向Zにおける第1保持器4に対する第2保持器6の距離が調整される。
【0113】
また、ガイド7は、第1移動体71と、第1移動体71をベース3に対して第2方向Zへ移動可能に支持する第1ガイド74と、第2保持器6が設けられた第2移動体72と、第2移動体72を第1移動体71に対して第2方向Zへ移動可能に支持する第2ガイド75とを有し、第2駆動装置8は、第2保持器6の移動量を調整可能な可変駆動装置81と一定の移動量で第2保持器6を移動させる第1固定駆動装置82とを有し、可変駆動装置81及び第1固定駆動装置82の一方は、第1移動体71を駆動し、可変駆動装置81及び第1固定駆動装置82の他方は、第2移動体72を駆動する。
【0114】
この構成によれば、第2方向Zへの第2保持器6の移動は、第1移動体71の移動と第2移動体72の移動とによる2段階の移動によって実現される。そして、可変駆動装置81及び第1固定駆動装置82の一方が第1移動体71を駆動し、可変駆動装置81及び第1固定駆動装置82の他方が第2移動体72を駆動する。そのため、可変駆動装置81による調整可能範囲だけでなく、第1固定駆動装置82による一定の移動量に可変駆動装置81による調整可能範囲でも、第2方向Zにおける第2保持器6の位置を調整することができる。つまり、第2保持器6の移動の一部を第1固定駆動装置82によって実現することによって第2駆動装置8の構成を簡易にしつつ、可変駆動装置81と第1固定駆動装置82とを組み合わせることによって第2保持器6の位置を任意に調整できる範囲を拡大することができる。
【0115】
さらに、第2方向Zは、上下方向であり、第2移動体72は、第1移動体71よりも上方に配置され、可変駆動装置81は、第1移動体71を駆動し、第1固定駆動装置82は、第2移動体72を駆動する。
【0116】
この構成によれば、可変駆動装置81を比較的下方に配置することができる。可変駆動装置81は、第1固定駆動装置82に比べて複雑な構造を有するので、第1固定駆動装置82に比べて重くなる傾向にある。比較的重い可変駆動装置81を下方に配置することによって、ハンド10の低重心化を図ることができる。
【0117】
具体的には、可変駆動装置81は、電動シリンダであり、第1固定駆動装置82は、エアシリンダである。
【0118】
通常、エアシリンダに比べて、電動シリンダは重くなる傾向にある。可変駆動装置81を電動シリンダで形成して、可変駆動装置81によって第1移動体71を駆動することによって、比較的重い電動シリンダを比較的下方に配置することができる。これにより、ハンド10の低重心化を図ることができる。
【0119】
また、第1駆動装置5は、モータ51と、モータ51の駆動力を伝達する伝達ベルト52とを有し、第1保持器4は、伝達ベルト52に連結されている。
【0120】
この構成によれば、第1保持器4は、伝達ベルト52を介してモータ51によって第1方向Xへ駆動される。
【0121】
さらに、伝達ベルト52は、第1保持器4によって保持された物品Wが載置される搬送面52aを有し、第1保持器4と共に搬送面52aを移動させる。
【0122】
この構成によれば、伝達ベルト52は、第1保持器4と搬送面52aとを共に第1方向Xへ移動させる。そのため、第1保持器4によって保持された物品Wを伝達ベルト52の搬送面52aに載置することによって、物品Wは、第1保持器4だけでなく、搬送面52aとの間の摩擦力を介して伝達ベルト52によっても第1方向Xへ移動させられる。
【0123】
それに加えて、第1駆動装置5は、少なくとも2本の伝達ベルト52を有する。
【0124】
この構成によれば、第1保持器4によって保持された物品Wは、少なくとも2本の伝達ベルト52の搬送面52aに載置されるので、伝達ベルト52との摩擦力を増加させることができる。つまり、伝達ベルト52による物品Wの搬送能力を向上させることができる。
【0125】
また、ベース3は、第1保持器4によって保持された物品Wが載置される載置面31dと、載置面31dと反対側の底面31bとを有するベースプレート31を含み、伝達ベルト52は、ベースプレート31に沿って延びるようにベースプレート31に配置され、モータ51は、底面31bから突出しない状態でベース3に配置されている。
【0126】
この構成によれば、伝達ベルト52がベースプレート31に沿って配置されるので、モータ51もベースプレート31の近傍に配置される。しかし、モータ51は、ベースプレート31の底面31bから突出しないように配置されている。このため、床等に直置きされた物品Wを保持する際に、ベースプレート31を物品Wが載置された面にできる限り近づけることができる。その結果、第1保持器4によって保持された物品Wをベースプレート31上に引き込み易くなる。
【0127】
さらに、第1保持器4及び第2保持器6への配管又は配線、即ち、収容ダクト35は、底面31bから突出しない状態でベース3に配置されている。
【0128】
この構成によれば、ベースプレート31の底面31bから突出する物体が低減されるので、ベースプレート31を物品Wが載置された面にできる限り近づけることができる。その結果、床等に直置きされた物品Wをベースプレート31上に引き込み易くなる。
【0129】
さらに、ベースプレート31は、他の物体が底面31bから突出していない。
【0130】
この構成によれば、底面31bから他の物体が突出していないので、ベースプレート31を物品Wが載置された面にできる限り近づけることができる。その結果、床等に直置きされた物品Wをベースプレート31上に引き込み易くなる。
【0131】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0132】
ロボット1は、搬送車15及び機器収容部16を有していなくてもよい。例えば、ロボット1は、固定的に配置されていてもよい。ハンド10は、ロボット1への適用に限定されず、決まった動作を行う自動機等に適用されてもよい。
【0133】
ハンド10による物品Wの保持は、吸引に限定されない。例えば、第1保持器4及び第2保持器6は、開閉動作を行う複数の指を有していてもよい。すなわち、第1保持器4及び第2保持器6は、グリッパであってもよい。
【0134】
また、第1保持器4の保持の形式と第2保持器6の保持の形式とは異なっていてもよい。例えば、第1保持器4が吸引パッドで、第2保持器6がグリッパであってもよい。
【0135】
第1保持器4及び第2保持器6は、第1駆動装置5によって、第1方向Xへ一体的に移動するが、これに限定されない。つまり、第1保持器4及び第2保持器6は、それぞれ独立した駆動装置によって、第1方向Xへ移動するように構成されてもよい。
【0136】
第1保持器4及び第2保持器6を第1方向Xへ駆動する装置、即ち、第1駆動装置5は、ベルト駆動によるものに限定されない。例えば、第1駆動装置5を送りネジ機構によって構成してもよい。つまり、キャリッジ56を送りネジによって第1方向Xへ移動させてもよい。
【0137】
第1駆動装置5の伝達ベルト52の本数は、2本に限定されない。伝達ベルト52の本数は、1本でもよく、3本以上であってもよい。
【0138】
第2保持器6を第2方向Zへ移動させる構成は、ガイド7及び第2駆動装置8に限定されない。例えば、ガイド7は、第1移動体71及び第1ガイド74のみを有し、第2保持器6が第1移動体71に取り付けられ、第2駆動装置8は、第1移動体71を第2方向Zへ移動させる可変駆動装置81のみであってもよい。可変駆動装置81は、ボールねじ機構を有する電動シリンダに限定されない。可変駆動装置81は、ラックアンドピニオン、又は、ベルト駆動機構であってもよい。
【0139】
また、第2駆動装置8は、第2方向Zへの第2保持器6の移動量を連続的にではなく、段階的、即ち、離散的に調整してもよい。あるいは、第2駆動装置8は、第2方向Zにおける第2保持器6の位置を第1位置と第2位置との間で択一的に切り替える、即ち、第2保持器6の移動量を調整不能であってもよい。第2駆動装置8は、電動シリンダ又はエアシリンダに限定されない。第2駆動装置8は、送りネジ機構、リンク機構、ベルト駆動機構等であってもよい。
【0140】
第2保持器6の移動方向である第2方向Zは、ベースプレート31に対して略直交する方向、即ち、上下方向に限定されない。第2方向Zは、ベースプレート31に略平行な方向、即ち、水平方向であってもよい。この構成によれば、ハンド10は、横並びにされた2個の物品Wを第1保持器4及び第2保持器6によって一括で保持することができる。その場合であっても、第1保持器4と第2保持器6との水平方向の間隔を調整することによって、様々な大きさ又は重量バランスの物品Wに対応して、物品Wを適切に保持することができる。
【0141】
ハンド10は、第1保持器4及び第2保持器6に加えて、1又は複数の追加の保持器を備えていてもよい。追加の保持器は、第2方向Zにおける第1保持器4からの距離を調整可能であっても、調整不能であってもよい。尚、駆動ベルト52を複数設けた観点又はベースプレート31の底面31bから何も突出していない観点においては、第2保持器6を含まず、第1保持器4だけであってもよい。
【0142】
ハンド10は、撮像装置19を備えていなくてもよい。例えば、保持前の複数の物品Wの配置等が既知である場合には、撮像装置19は不要である。あるいは、ロボット1から分離した撮像装置が設けられていてもよい。
【0143】
物品Wは、段ボール箱に限定されない。物品Wは、箱に限定されず、穀物等を収容する麻袋等であってもよい。その場合、第1保持器4及び第2保持器6は、吸引パッドではなく、グリッパであることが好ましい。
【0144】
図9のフローチャートは、一例に過ぎない。フローチャートにおけるステップを適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行ってもよい。また、フローチャートにおけるステップの順番を変更したり、直列的な処理を並列的に処理したりしてもよい。
【0145】
本明細書中に記載されている構成要素により実現される機能は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、汎用プロセッサ、特定用途プロセッサ、集積回路、ASICs(Application Specific Integrated Circuits)、CPU(a Central Processing Unit)、従来型の回路、及び/又はそれらの組合せを含む、回路(circuitry)又は演算回路(processing circuitry)において実装されてもよい。プロセッサは、トランジスタ及びその他の回路を含み、回路又は演算回路とみなされる。プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行する、プログラマブルプロセッサ(programmed processor)であってもよい。
【0146】
本明細書において、回路(circuitry)、ユニット、手段は、記載された機能を実現するようにプログラムされたハードウェア、又は実行するハードウェアである。当該ハードウェアは、本明細書に開示されているあらゆるハードウェア、又は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、又は、実行するものとして知られているあらゆるハードウェアであってもよい。
【0147】
当該ハードウェアが回路(circuitry)のタイプであるとみなされるプロセッサである場合、当該回路、手段、又はユニットは、ハードウェアと、当該ハードウェア及び又はプロセッサを構成する為に用いられるソフトウェアの組合せである。
【符号の説明】
【0148】
10 ハンド
3 ベース
31 ベースプレート
31b 底面
31d 載置面
35 収容ダクト(配管又は配線)
4 第1保持器
5 第1駆動装置
51 モータ
52 伝達ベルト
52a 搬送面
6 第2保持器
7 ガイド
71 第1移動体
72 第2移動体
74 第1ガイド
75 第2ガイド
8 第2駆動装置
81 可変駆動装置
82 第1固定駆動装置
X 第1方向
Z 第2方向
W 物品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9