(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129100
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システム、及び二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20230907BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20230907BHJP
【FI】
B01D53/04 230
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033888
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東海 英顯
【テーマコード(参考)】
4D012
4G146
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012CA03
4D012CB16
4D012CD02
4D012CE01
4D012CF03
4D012CG01
4D012CG03
4D012CJ03
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC19
4G146JC28
4G146JD06
(57)【要約】
【課題】吸着剤を用いて二酸化炭素を吸着/脱着し、二酸化炭素を回収するシステムにおいて、二酸化炭素の回収効率を向上させる。
【解決手段】二酸化炭素を吸着及び脱着する吸着剤22が収納された複数の吸着部20と、吸着部20からのオフガスを洗浄オフガスとして貯留する洗浄オフガス貯留部14と、1の吸着部20から脱着された二酸化炭素リッチガスを洗浄オフガス貯留部へ貯留する、洗浄オフガス貯留実行部と、吸着部20と接続され、洗浄オフガス貯留部14に貯留された洗浄オフガスを吸着部へ供給する洗浄オフガス供給路38と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を吸着及び脱着する吸着剤が収納され、二酸化炭素を含む原料ガスを、二酸化炭素リッチガスと二酸化炭素以外の不純物を含むオフガスとに分離し、前記吸着剤を挟んで一方側に前記オフガスを送出するオフガス送出路が接続され、他方側に前記二酸化炭素リッチガスを送出する二酸化炭素ガス送出路が接続された複数の吸着部と、
前記オフガス送出路と接続され、前記吸着部からのオフガスを洗浄オフガスとして貯留する洗浄オフガス貯留部と、
1の前記吸着部から脱着された前記二酸化炭素リッチガスを他の前記吸着部へ供給して洗浄する洗浄時において、前記他の吸着部からの前記オフガスを前記洗浄オフガス貯留部へ貯留する、洗浄オフガス貯留実行部と、
前記吸着部と接続され、前記洗浄オフガス貯留部に貯留された前記洗浄オフガスを前記吸着部へ供給する洗浄オフガス供給路と、
を備えた二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記洗浄オフガス供給路は、前記吸着部の前記他方側と接続されて前記吸着部へ前記洗浄オフガスを供給する、
請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記吸着部の前記一方側から水蒸気を供給する水蒸気供給部、を備えた、
請求項1または請求項2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
二酸化炭素を吸着及び脱着する吸着剤が収納された複数の吸着部を備えた二酸化炭素回収システムを用いた二酸化炭素回収方法であって、
前記吸着部へ二酸化炭素を含む原料ガスを供給して前記吸着剤に二酸化炭素を吸着させる吸着工程と、
前記吸着剤に二酸化炭素を吸着させた状態で、前記吸着部へ二酸化炭素ガスを供給して洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程中に、前記吸着部から送出されるオフガスを洗浄オフガスとして貯留する洗浄オフガス貯留工程と、
前記洗浄工程後に、前記吸着剤から二酸化炭素を脱着させる脱着工程と、
前記吸着工程後且つ前記洗浄工程前に、前記洗浄オフガスを前記吸着部へ供給して粗洗浄する粗洗浄工程と、
を行う二酸化炭素回収方法。
【請求項5】
前記脱着工程において、前記吸着部へ水蒸気を供給する、
請求項4に記載の二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収システム、及び二酸化炭素回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸着剤を用いて二酸化炭素を吸着/脱着し、二酸化炭素を回収するシステムが提案されている。特許文献1には、3基の吸着塔を用い、均圧、昇圧、吸着、洗浄、脱着の工程により、二酸化炭素を回収する技術が開示されている。特許文献1では、洗浄工程において、製品として回収する高濃度の二酸化炭素が洗浄用のガスとして用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製品として回収する高濃度の二酸化炭素だけを洗浄用のガスとして用いるのでは、二酸化炭素の回収濃度を上げるための洗浄に多くの製品二酸化炭素を使用することになり、回収効率が低下する。二酸化炭素の回収効率を向上させることが求められる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、吸着剤を用いて二酸化炭素を吸着及び脱着し、二酸化炭素を回収するシステムにおいて、二酸化炭素の回収効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る二酸化炭素回収システムは、二酸化炭素を吸着及び脱着する吸着剤が収納され、二酸化炭素を含む原料ガスを、二酸化炭素リッチガスと二酸化炭素以外の不純物を含むオフガスとに分離し、前記吸着剤を挟んで一方側に前記オフガスを送出するオフガス送出路が接続され、他方側に前記二酸化炭素リッチガスを送出する二酸化炭素ガス送出路が接続された複数の吸着部と、前記オフガス送出路と接続され、前記吸着部からのオフガスを洗浄オフガスとして貯留する洗浄オフガス貯留部と、1の前記吸着部から脱着された前記二酸化炭素リッチガスを他の前記吸着部へ供給して洗浄する洗浄時において、前記他の吸着部からの前記オフガスを前記洗浄オフガス貯留部へ貯留する、洗浄オフガス貯留実行部と、前記吸着部と接続され、前記洗浄オフガス貯留部に貯留された前記洗浄オフガスを前記吸着部へ供給する洗浄オフガス供給路と、を備えている。
【0007】
請求項1に係る二酸化炭素回収システムは、複数の吸着部を備えている。複数の吸着部には、二酸化炭素を吸着及び脱着する吸着剤が収納されており、二酸化炭素を含む原料ガスを、二酸化炭素リッチガスと二酸化炭素以外の不純物を含むオフガスとに分離する。吸着部には、吸着剤を挟んで一方側にオフガスを送出するオフガス送出路が接続され、他方側に二酸化炭素リッチガスを送出する二酸化炭素ガス送出路が接続されている。
【0008】
オフガス送出路には、吸着部からのオフガスを洗浄オフガスとして貯留する洗浄オフガス貯留部が接続されている。洗浄オフガス貯留実行部は、1の吸着部から脱着された二酸化炭素リッチガスを他の吸着部へ供給して洗浄する洗浄時において、他の吸着部からのオフガスを洗浄オフガス貯留部へ貯留する。洗浄オフガス貯留部に貯留された洗浄オフガスは、洗浄オフガス供給路を介して吸着部へ供給される。
【0009】
請求項1の二酸化炭素回収システムによれば、洗浄時に吸着部から送出されるオフガスを洗浄オフガス貯留部に貯留して、吸着部へ供給することにより利用することができる。当該洗浄オフガスは、原料ガスを吸着部へ供給している時に送出されるオフガスよりも、二酸化炭素濃度が高いため、洗浄前に吸着部へ供給して、吸着部内の不純物(二酸化炭素以外の物質)を排出することができる。これにより、洗浄時に使用する二酸化炭素リッチガスの量を少なくすることができ、二酸化炭素の回収効率を向上させることができる。
【0010】
請求項2に係る二酸化炭素回収システムは、前記洗浄オフガス供給路は、前記吸着部の前記他方側と接続されて前記吸着部へ前記洗浄オフガスを供給する。
【0011】
請求項2の二酸化炭素回収システムによれば、オフガスが送出される側と反対側から洗浄オフガスを供給して、吸着部内の不純物をオフガス送出路から送出させることができる。
【0012】
請求項3に係る二酸化炭素回収システムは、前記吸着部の前記一方側から水蒸気を供給する水蒸気供給部、を備えている。
【0013】
請求項3の二酸化炭素回収システムによれば、吸着部の吸着剤に吸着された二酸化炭素を脱着する時に、水蒸気を供給することにより、脱着を促進することができる。
【0014】
請求項4に係る二酸化炭素回収方法は、二酸化炭素を吸着及び脱着する吸着剤が収納された複数の吸着部を備えた二酸化炭素回収システムを用いた二酸化炭素回収方法であって、前記吸着部へ二酸化炭素を含む原料ガスを供給して前記吸着剤に二酸化炭素を吸着させる吸着工程と、前記吸着剤に二酸化炭素を吸着させた状態で、前記吸着部へ二酸化炭素ガスを供給して洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程中に、前記吸着部から送出されるオフガスを洗浄オフガスとして貯留する洗浄オフガス貯留工程と、前記洗浄工程後に、前記吸着剤から二酸化炭素を脱着させる脱着工程と、前記吸着工程後且つ前記洗浄工程前に、前記洗浄オフガスを前記吸着部へ供給して粗洗浄する粗洗浄工程と、を行う。
【0015】
請求項4の二酸化炭素回収方法では、前記洗浄工程中に、吸着部から送出されるオフガスを洗浄オフガスとして貯留し、吸着工程後且つ洗浄工程前に、洗浄オフガスを吸着部へ供給して当該吸着部を粗洗浄する。当該洗浄オフガスは、原料ガスを吸着部へ供給している時に送出されるオフガスよりも二酸化炭素濃度が高い。したがって、当該洗浄ガスを用いて吸着部を粗洗浄することにより、洗浄前に吸着部内の不純物(二酸化炭素以外の物質)を排出することができる。これにより、洗浄時に使用する二酸化炭素リッチガスの量を少なくすることができ、二酸化炭素の回収効率を向上させることができる。
【0016】
請求項5に係る二酸化炭素回収方法は、前記脱着工程において、前記吸着部へ水蒸気を供給する。
【0017】
請求項5の二酸化炭素回収方法によれば、脱着工程において水蒸気により二酸化炭素の脱着を促進することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、吸着剤を用いて二酸化炭素を吸着/脱着し、二酸化炭素を回収するシステムにおいて、二酸化炭素の回収効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る二酸化炭素回収システムの概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る二酸化炭素回収システムの制御部とその接続部材とのブロック図である。
【
図3】本実施形態の二酸化炭素回収処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態の第1工程処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】第1工程処理におけるガスの流れを示す説明ステップ(A)、(B)、(C)である。
【
図6】本実施形態の第2工程処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】第2工程処理におけるガスの流れを示す説明ステップ(A)、(B)、(C)である。
【
図8】本実施形態の第3工程処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】第3工程処理におけるガスの流れを示す説明ステップ(A)、(B)、(C)である。
【
図10】各吸着部における、第1工程、第2工程、第3工程のタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る二酸化炭素回収システムの一例を図面に従って説明する。
【0021】
二酸化炭素回収システム10は、ガスエンジンやガスボイラなどの機器や、工場から排出される二酸化炭素を含む排ガスを原料ガスとし、原料ガスから高濃度の二酸化炭素リッチガスを回収するものである。なお、
図1では、二酸化炭素回収システム10の構成を概略的に示しており、二酸化炭素回収システム10は、他の構成を含んでいてもよい。
【0022】
本実施形態に係る二酸化炭素回収システム10は、
図1に示されるように、3つの吸着部20A、20B、20C、CO2回収側ポンプ12、洗浄オフガス貯留部14、オフガスブロワ16、水蒸気供給部18を備えている。
【0023】
吸着部20A、20B、20Cは同一構成とされており、これらを区別なく説明する場合には、総称として「吸着部20」とする。吸着部20は、内部に二酸化炭素を吸着すると共に、吸着部20内の条件を変更することにより、吸着した二酸化炭素を脱着可能な吸着剤22が充填されている。吸着剤22としては、例えば、アミン担持多孔質体、アミノシラン修飾多孔質体を用いることができる。本実施形態では、吸着した二酸化炭素の脱着が、水蒸気を供給することによりを促進されるアミン担持多孔質体を用いる。
【0024】
吸着部20の吸着剤22を挟んで一方側には、一方側接続部24が形成され、他方側には他方側接続部26が形成されている。一方側接続部24には、二酸化炭素ガス送出路としての第1ガス路40が接続され、他方側接続部26には、オフガス送出路としての第2ガス路30が接続されている。
【0025】
第1ガス路40には、原料ガス供給路42、CO2供給路44、CO2回収路46が接続されている。原料ガス供給路42には原料供給バルブV1が設けられ、CO2供給路44にはCO2供給バルブV2が設けられ、CO2回収路46にはCO2回収バルブV3が設けられている。第1ガス路40、原料ガス供給路42、CO2供給路44、CO2回収路46、原料供給バルブV1、CO2供給バルブV2、CO2回収バルブV3は、吸着部20A、20B、20Cの各々に対応して設けられている。以下、吸着部20Aに対応する各部の符号の末尾に「A」を付し、吸着部20Bに対応する各部の符号の末尾に「B」を付し、吸着部20Cに対応する各部の符号の末尾に「C」を付して図示すると共に、説明において区別する場合には、各部の符号末尾に当該符号を付して説明する。
【0026】
原料ガス供給路42は、上流側が不図示の原料ガス供給源(ガスエンジン、工場排ガス路等)に接続されており、原料供給バルブV1よりも上流側で原料ガス供給路42A、42B、42Cに分岐されている。原料ガス供給路42A、42B、42Cの下流端が、各々、第1ガス路40A、40B、40Bと接続されている。原料供給バルブV1は、原料ガス供給路42A、42B、42Cの各々に設けられている。
【0027】
CO2回収路46には、CO2回収側ポンプ12が設けられている。CO2回収側ポンプ12は、一例として真空ポンプを用いることができる。CO2回収路46はCO2回収側ポンプ12よりも吸着部20側で、CO2回収路46A、46B、46Cに分岐されている。CO2回収路46A、46B、46Cの一端は、各々、第1ガス路40A、40B、40Bと接続されている。CO2回収路46には、CO2回収側ポンプ12を挟んでCO2回収路46A、46B、46Cの分岐部分と反対側には、三方弁V9を介してCO2供給路44の一端が接続されている。CO2回収バルブV3は、CO2回収路46A、46B、46Cの各々に設けられている。
【0028】
CO2供給路44は、CO2供給バルブV2を挟んで吸着部20と反対側でCO2供給路44A、44B、44Cに分岐されている。CO2供給路44A、44B、44Cは、各々、第1ガス路40A、40B、40Bと接続されている。CO2供給バルブV2は、CO2供給路44A、44B、44Cの各々に設けられている。
【0029】
第2ガス路30には、オフガス送出路32、洗浄オフガス送出路34、水蒸気供給路36が接続されている。オフガス送出路32にはオフガス排出バルブV4が設けられ、洗浄オフガス送出路34には洗浄オフガスバルブV5が設けられ、水蒸気供給路36には水蒸気供給バルブV6が設けられている。第2ガス路30、オフガス送出路32、洗浄オフガス送出路34、水蒸気供給路36、オフガス排出バルブV4、洗浄オフガスバルブV5、水蒸気供給バルブV6は、吸着部20A、20B、20Cの各々に対応して設けられている。以下、吸着部20Aに対応する各部の符号の末尾に「A」を付し、吸着部20Bに対応する各部の符号の末尾に「B」を付し、吸着部20Cに対応する各部の符号の末尾に「C」を付して図示すると共に、説明において区別する場合には、当該符号を付して説明する。
【0030】
オフガス送出路32は、オフガス送出路32A、32B、32Cに分岐されて、各々第2ガス路30A、30B、30Cと接続されている。オフガス排出バルブV4A、V4B、V4Cは、オフガス送出路32A、32B、32Cに各々設けられている。
【0031】
洗浄オフガス送出路34には洗浄オフガス貯留部14が接続されている。洗浄オフガス貯留部14は、洗浄オフガスを貯留するタンクであり、入口部14INに洗浄オフガス送出路34が接続されている。オフガスブロワ16は、洗浄オフガス貯留部14よりも第2ガス路30側に設けられている。
【0032】
洗浄オフガス貯留部14の出口部14OUTには、洗浄オフガス供給路38の一端が接続されている。洗浄オフガス供給路38の他端は、三方弁V8を介して、原料ガス供給路42の分岐部分よりも上流側に接続されている。洗浄オフガス供給路38には、洗浄オフガス供給バルブV7が設けられている。
【0033】
洗浄オフガス送出路34は、三方弁V10を介して排出路35と接続されている。三方弁V10は、オフガスブロワ16よりも第2ガス路30側に設けられている。洗浄オフガス送出路34は、三方弁V10よりも第2ガス路30側で洗浄オフガス送出路34A、34B、34Cに分岐されている。洗浄オフガス送出路34A、34B、34Cの一端は、各々、第2ガス路30A、30B、30Bと接続されている。洗浄オフガスバルブV5は、洗浄オフガス送出路34A、34B、34Cの各々に設けられている。
【0034】
水蒸気供給路36の一端は、水蒸気供給部18と接続されている。水蒸気供給部18は、一例として気化器等を用いることができる。水蒸気供給路36は、水蒸気供給バルブV6を挟んで吸着部20と反対側で水蒸気供給路36A、36B、36Cに分岐されている。水蒸気供給路36A、36B、36Cは、各々、第2ガス路30A、30B、30Bと接続されている。水蒸気供給バルブV6は、水蒸気供給路36A、36B、36Cの各々に設けられている。
【0035】
図2に示されるように、二酸化炭素回収システム10は、制御部50を備えている。制御部50は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)50A、ROM(Read Only Memory)50B、RAM(Random Access Memory)50C、ストレージ50D、入出力インターフェース(I/F)50E、を有する。各構成は、バス52を介して相互に通信可能に接続されている。
【0036】
CPU50Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU50Aは、ROM50Bまたはストレージ50Dからプログラムを読み出し、RAM50Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU50Aは、ROM50Bまたはストレージ50Dに記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0037】
ROM50Bは、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM50Cは、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ50Dは、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。本実施形態では、ROM50Bまたはストレージ50Dには、後述する二酸化炭素回収システム10の、吸着工程、粗洗浄工程、洗浄工程、洗浄オフガス貯留工程等を実行するためのプログラム(二酸化炭素回収処理)や、各種のデータ等が格納されている。
【0038】
入出力I/F50Eは、信号線を介して、原料供給バルブV1、CO2供給バルブV2、CO2回収バルブV3、オフガス排出バルブV4、洗浄オフガスバルブV5、水蒸気供給バルブV6、洗浄オフガス供給バルブV7、三方弁V8、V9、V10と接続されている。制御部50により、これらのバルブの開閉、三方弁の流路の切り換えが制御されている。また、入出力I/F50Eは、CO2回収側ポンプ12、オフガスブロワ16と接続されている。制御部50により、CO2回収側ポンプ12、オフガスブロワ16の駆動が制御される。
【0039】
次に、本実施形態の二酸化炭素回収システム10の作用について説明する。
【0040】
吸着工程では、原料供給バルブV1及びオフガス排出バルブV4が開放され、原料ガス供給路42から第1ガス路40を経て、吸着部20へ原料ガスが供給される。原料ガスに含まれる二酸化炭素は、吸着剤22に吸着される。原料ガスは、吸着部20を一方側接続部24側から他方側接続部26側へ流れ、吸着剤22に吸着されなかったガスは、オフガスとして第2ガス路30へ送出され、オフガス送出路32を経て大気へ放出される。このとき、吸着部20内の圧力は、所定の吸着圧に設定されている。
【0041】
脱着工程では、CO2回収バルブV3及び水蒸気供給バルブV6が開放され、吸着部20内の圧力は、所定の脱着圧に設定され、水蒸気供給部18から吸着部20へ、水蒸気供給路36を経て水蒸気が供給される。また、CO2回収側ポンプ12が駆動される。これにより、吸着剤22に吸着されていた二酸化炭素は、吸着剤22から脱着し、水蒸気と共に一方側接続部24から第1ガス路40を経て、CO2回収路46へ送出される。CO2回収路46へ送出された二酸化炭素は、不図示の凝縮器で水分離され、製品二酸化炭素として回収される。また、水分離された後の二酸化炭素は、後述する洗浄工程でも用いられる。
【0042】
洗浄工程では、CO2供給バルブV2及び洗浄オフガスバルブV5が開放され、二酸化炭素が吸着剤22に吸着された状態の吸着部20へ、CO2供給路44から二酸化炭素が供給される。二酸化炭素は、前述した脱着工程でCO2回収路46へ送出された二酸化炭素が用いられる。CO2回収路46へ送出された二酸化炭素は、三方弁V9のCO2供給路44との連通部分を開放することにより、一部がCO2供給路44へ送出される。CO2供給路44へ送出された二酸化炭素は、第1ガス路40を経て一方側接続部24側から、二酸化炭素が吸着された状態の吸着部20へ供給される。供給された二酸化炭素は、吸着部20内の不純物と共に一方側接続部24側から他方側接続部26側へ流れ、洗浄オフガスとして、第2ガス路30から洗浄オフガス送出路34を経て洗浄オフガス貯留部14へ貯留される。このとき、吸着部20内の圧力は、所定の吸着圧に設定されている。
【0043】
なお、洗浄工程では、同時に洗浄オフガス回収処理が行われているが、洗浄工程の初期では洗浄オフガス中に不純物が比較的多く含まれている。そこで、洗浄工程の初期では三方弁V10を切り換えて、排出路35へ洗浄オフガスを排出し、洗浄工程の途中から洗浄オフガスを洗浄オフガス貯留部14に貯留するようにしてもよい。
【0044】
粗洗浄工程では、洗浄工程後、二酸化炭素が吸着剤22に吸着された状態の吸着部20へ、洗浄オフガス貯留部14から洗浄オフガスを供給する。洗浄オフガスは、洗浄オフガス供給路38から原料ガス供給路42、第1ガス路40を経て、一方側接続部24側から、二酸化炭素が吸着された状態の吸着部20へ供給される。供給された洗浄オフガスは、吸着部20内の不純物と共に一方側接続部24側から他方側接続部26側へ流れ、粗洗浄オフガスとして、第2ガス路30からオフガス送出路32を経て大気へ放出される。このとき、吸着部20内の圧力は、所定の吸着圧に設定されている。
【0045】
これら、吸着工程、脱着工程、粗洗浄工程、洗浄工程は、制御部50により、二酸化炭素回収処理のプログラムが実行されることにより行われる。二酸化炭素回収処理は、
図3に示される様に、第1工程S1、第2工程S2、第3工程S3が繰り返し実行される。なお、当該プログラムの実行前、バルブV1~V7は、閉鎖されている。
【0046】
第1工程S1では、
図4に示されるように、ステップS10で、吸着部20Aについて、原料供給バルブV1A及びオフガス排出バルブV4Aを開放することにより、吸着工程処理が実行される。これにより、吸着部20Aの吸着剤22Aに二酸化炭素が吸着される。
【0047】
ステップS12で、吸着部20Cについて、CO2回収バルブV3C及び水蒸気供給バルブV6Cを開放すると共にCO2回収側ポンプ12を駆動させることにより、脱着工程処理が実行される。これにより、吸着部20Cの吸着剤22Cから二酸化炭素が脱着され、CO2回収路46に送出された二酸化炭素を製品二酸化炭素として回収することができる。
【0048】
ステップS14で、吸着部20Bについて、CO2供給バルブV2B及び洗浄オフガスバルブV5B、三方弁V9の吸着部20側の接続を開放することにより、洗浄工程処理が実行される。これにより、吸着部20B内に滞留する不純物を、二酸化炭素に置換することができる。
【0049】
ステップS16で、三方弁V10の開放を洗浄オフガス貯留部14へ向かう側へ切り換え、洗浄オフガスを洗浄オフガス貯留部14へ貯留する(洗浄オフガス貯留処理)。
【0050】
図5(A)には、ステップS10~ステップS16が実行された状態のバルブの開閉状態、ガスの流れが示されている。
【0051】
ステップS18で、洗浄工程処理の実行(ステップS14)から所定時間T1経過したか否かを判断する。所定時間T1は、吸着部20Bの洗浄に必要とされる時間が設定される。判断が肯定された場合には、ステップS20で、吸着部20Bについて、CO2供給バルブV2B、洗浄オフガスバルブV5B、三方弁V9の吸着部20側の接続を閉鎖する(閉鎖処理)(
図5(B)参照)。
【0052】
次に、ステップS22で、吸着工程処理の実行(ステップS10)から所定時間T2経過したか否かを判断する。所定時間T2は、吸着部20Aの吸着剤22Aに二酸化炭素が充分吸着されるために必要とされる時間が設定される。判断が肯定された場合には、ステップS24で、粗洗浄工程処理が実行される。粗洗浄工程処理は、原料供給バルブV1A及びオフガス排出バルブV4Aの開放が維持された状態で、洗浄オフガス供給バルブV7を開放し、三方弁V8を洗浄オフガス供給路38と原料ガス供給路42の下流側が連通するように切り換え、オフガスブロワ16を駆動することにより実行される(
図5(C)参照)。これにより、吸着部20A内に滞留する不純物を、洗浄オフガスに置換することができる。洗浄オフガスは、比較的二酸化炭素濃度が高いため、吸着部20A内の不純物を、ある程度除去することができる。
【0053】
次に、ステップS26で、脱着工程処理の実行(ステップS12)から所定時間T3経過したか否かを判断する。所定時間T3は、吸着部20Cの吸着剤22Cに吸着された二酸化炭素が充分脱着されるために必要とされる時間が設定される。判断が肯定された場合には、ステップS28で、洗浄オフガス供給バルブV7を閉鎖すると共に三方弁V8を洗浄オフガス供給路38と原料ガス供給路42の下流側が連通するように切り換え、第1工程を終了する。
【0054】
第2工程では、
図6に示されるように、ステップS30で、吸着部20Cについて、原料供給バルブV1C及びオフガス排出バルブV4Cを開放することにより、吸着工程処理が実行される。これにより、吸着部20Cの吸着剤22Cに二酸化炭素が吸着される。
【0055】
ステップS32で、吸着部20Bについて、CO2回収バルブV3B及び水蒸気供給バルブV6Bを開放すると共にCO2回収側ポンプ12を駆動させることにより、脱着工程処理が実行される。これにより、吸着部20Bの吸着剤22Bから二酸化炭素が脱着され、CO2回収路46に送出された二酸化炭素を製品二酸化炭素として回収することができる。
【0056】
ステップS34で、吸着部20Aについて、CO2供給バルブV2A及び洗浄オフガスバルブV5A、三方弁V9の吸着部20側の接続を開放することにより洗浄工程処理が実行される。これにより、吸着部20A内に滞留する不純物を、二酸化炭素に置換することができる。
【0057】
ステップS36で、三方弁V10の開放を洗浄オフガス貯留部14へ向かう側へ切り換え、洗浄オフガスを洗浄オフガス貯留部14へ貯留する(洗浄オフガス貯留処理)。
【0058】
図7(A)には、ステップS30~ステップS36が実行された状態のバルブの開閉状態、ガスの流れが示されている。
【0059】
ステップS38で、洗浄工程処理の実行(ステップS34)から所定時間T1経過したか否かを判断する。所定時間T1は、吸着部20Aの洗浄に必要とされる時間が設定される。判断が肯定された場合には、ステップS20で、吸着部20Aについて、CO2供給バルブV2A、洗浄オフガスバルブV5A、三方弁V9の吸着部20側の接続を閉鎖する(閉鎖処理)(
図7(B)参照)。
【0060】
次に、ステップS42で、吸着工程処理の実行(ステップS30)から所定時間T2経過したか否かを判断する。所定時間T2は、吸着部20Cの吸着剤22Cに二酸化炭素が充分吸着されるために必要とされる時間が設定される。判断が肯定された場合には、ステップS44で、粗洗浄工程処理が実行される。粗洗浄工程処理は、原料供給バルブV1C及びオフガス排出バルブV4Cの開放が維持された状態で、洗浄オフガス供給バルブV7を開放し、三方弁V8を洗浄オフガス供給路38と原料ガス供給路42の下流側が連通するように切り換え、オフガスブロワ16を駆動することにより実行される(
図7(C)参照)。これにより、吸着部20C内に滞留する不純物を、洗浄オフガスに置換することができる。洗浄オフガスは、比較的二酸化炭素濃度が高いため、吸着部20C内の不純物を、ある程度除去することができる。
【0061】
次に、ステップS46で、脱着工程処理の実行(ステップS32)から所定時間T3経過したか否かを判断する。所定時間T3は、吸着部20Bの吸着剤22Bに吸着された二酸化炭素が充分脱着されるために必要とされる時間が設定される。判断が肯定された場合には、ステップS48で、洗浄オフガス供給バルブV7を閉鎖すると共に三方弁V8を洗浄オフガス供給路38と原料ガス供給路42の下流側が連通するように切り換え、第2工程を終了する。
【0062】
第3工程では、
図8に示されるように、ステップS50で、吸着部20Bについて、原料供給バルブV1B及びオフガス排出バルブV4Bを開放することにより、吸着工程処理が実行される。これにより、吸着部20Bの吸着剤22Bに二酸化炭素が吸着される。
【0063】
ステップS52で、吸着部20Aについて、CO2回収バルブV3A及び水蒸気供給バルブV6Aを開放すると共にCO2回収側ポンプ12を駆動させることにより、脱着工程処理が実行される。これにより、吸着部20Aの吸着剤22Aから二酸化炭素が脱着され、CO2回収路46に送出された二酸化炭素を製品二酸化炭素として回収することができる。
【0064】
ステップS54で、吸着部20Cについて、CO2供給バルブV2C及び洗浄オフガスバルブV5C、三方弁V9の吸着部20側の接続を開放することにより洗浄工程処理が実行される。これにより、吸着部20C内に滞留する不純物を、二酸化炭素に置換することができる。
【0065】
ステップS56で、三方弁V10の開放を洗浄オフガス貯留部14へ向かう側へ切り換え、洗浄オフガスを洗浄オフガス貯留部14へ貯留する(洗浄オフガス貯留処理)。
【0066】
図9(A)には、ステップS50~ステップS56が実行された状態のバルブの開閉状態、ガスの流れが示されている。
【0067】
ステップS58で、洗浄工程処理の実行(ステップS54)から所定時間T1経過したか否かを判断する。所定時間T1は、吸着部20Cの洗浄に必要とされる時間が設定される。判断が肯定された場合には、ステップS60で、吸着部20Cについて、CO2供給バルブV2C、洗浄オフガスバルブV5C、三方弁V9の吸着部20側の接続を閉鎖する(閉鎖処理)(
図9(B)参照)。
【0068】
次に、ステップS62で、吸着工程処理の実行(ステップS50)から所定時間T2経過したか否かを判断する。所定時間T2は、吸着部20Bの吸着剤22Bに二酸化炭素が充分吸着されるために必要とされる時間が設定される。判断が肯定された場合には、ステップS64で、粗洗浄工程処理が実行される。粗洗浄工程処理は、原料供給バルブV1B及びオフガス排出バルブV4Bの開放が維持された状態で、洗浄オフガス供給バルブV7を開放し、三方弁V8を洗浄オフガス供給路38と原料ガス供給路42の下流側が連通するように切り換え、オフガスブロワ16を駆動することにより実行される(
図9(C)参照)。これにより、吸着部20B内に滞留する不純物を、洗浄オフガスに置換することができる。洗浄オフガスは、比較的二酸化炭素濃度が高いため、吸着部20B内の不純物を、ある程度除去することができる。
【0069】
次に、ステップS66で、脱着工程処理の実行(ステップS52)から所定時間T3経過したか否かを判断する。所定時間T3は、吸着部20Aの吸着剤22Aに吸着された二酸化炭素が充分脱着されるために必要とされる時間が設定される。判断が肯定された場合には、ステップS68で、洗浄オフガス供給バルブV7を閉鎖すると共に三方弁V8を洗浄オフガス供給路38と原料ガス供給路42の下流側が連通するように切り換え、第3工程を終了する。
【0070】
図10には、吸着部20A、20B、20Cの各々における、第1工程、第2工程、第3工程のタイミングが示されている。
【0071】
本実施形態の二酸化炭素回収システム10では、洗浄工程で吸着部20から送出される洗浄オフガスを用いて、吸着部20を粗洗浄する。当該洗浄オフガスは、原料ガスを吸着部20へ供給している時に送出されるオフガスよりも、二酸化炭素濃度が高い。したがって、洗浄処理前に吸着部20へ供給して、吸着部20内の不純物(二酸化炭素以外の物質)を排出することができる。これにより、洗浄工程時に使用する二酸化炭素リッチガスの量を少なくすることができ、二酸化炭素の回収効率を向上させることができる。
【0072】
また、粗洗浄の時に、洗浄オフガスを一方側接続部24側から供給するので、粗洗浄時の不純物をオフガス送出路32から送出させることができる。
【0073】
また、本実施形態では、二酸化炭素の脱着に水蒸気を用いており、脱着後に容易に水蒸気を分離することができる。
【符号の説明】
【0074】
10 二酸化炭素回収システム
20 吸着部
22 吸着剤
24 一方側接続部(一方側)
26 他方側接続部(他方側)
32 オフガス送出路
46 CO2回収路(二酸化炭素ガス送出路)
50 制御部(洗浄オフガス貯留実行部)
18 水蒸気供給部