(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129103
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】電池用非水電解液、リチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20230907BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230907BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033891
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄介
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ04
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高温保存後の電池抵抗を低減させることができる電池用非水電解液を提供する。
【解決手段】化合物(I)と、モノ又はジフルオロリン酸リチウムである化合物(II)、化合物(III)、化合物(IV)からなる群より選択される添加剤とを含む電解液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物(I)と、
モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの少なくとも一方である化合物(II)、下記式(III)で表される化合物(III)、並びに、下記式(IV)で表される化合物(IV)からなる群より選択される少なくとも1種である添加剤Aと、
を含有する、電池用非水電解液。
【化1】
〔式(I)中、Rは、単結合又は炭素数1~4のアルキレン基を表す。
式(III)中、
Mは、アルカリ金属であり、
Yは、遷移元素、周期律表の13族元素、14族元素、又は15族元素であり、
bは、1~3の整数であり、
mは、1~4の整数であり、
nは、0~8の整数であり、
qは、0又は1であり、
R
31は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、qが1でmが2~4の場合にはm個のR
31はそれぞれが結合していてもよい。)であり、
R
32は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、nが2~8の場合はn個のR
32はそれぞれが結合して環を形成していてもよい。)であり、
Q
1及びQ
2は、それぞれ独立に、酸素原子又は炭素原子である。
式(IV)中、
R
42は、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数2~6のアルケニレン基、式(iv-1)で表される基、又は式(iv-2)で表される基であり、
*は、結合位置を示し、
式(iv-1)中、R
43は、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数2~6のアルケニレン基、又はオキシメチレン基であり、
式(iv-2)中、R
44は、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数2~6のアルケニル基である。〕
【請求項2】
前記式(I)中の前記Rが、単結合である、請求項1に記載の電池用非水電解液。
【請求項3】
前記化合物(I)の含有量が、電池用非水電解液の全量に対し、0.01質量%以上5.0質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の電池用非水電解液。
【請求項4】
前記添加剤Aの含有量が、電池用非水電解液の全量に対し、0.01質量%以上5.0質量%以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【請求項5】
正極と、
リチウムイオンの吸蔵及び放出が可能な負極活物質を含む負極と、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電池用非水電解液と、
を含む、リチウム二次電池前駆体。
【請求項6】
請求項5に記載のリチウム二次電池前駆体に対し、充電及び放電を施して得られたリチウム二次電池。
【請求項7】
請求項5に記載のリチウム二次電池前駆体を準備する工程と、
前記リチウム二次電池前駆体に対して、充電及び放電を施す工程と、
を含む、リチウム二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池用非水電解液、リチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池に関し、様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には、特定のホウ酸リチウム化合物と、フッ素を含むリチウム塩である電解質と、非水溶媒と、を含有するリチウム二次電池用非水電解液が開示されている。この特許文献1には、リチウム二次電池用非水電解液に、更に、ビニレンカーボネートが含有され得ることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高温保存後の電池の抵抗をより低減させることが求められる場合がある。
本開示の一態様の課題は、高温保存後の電池の抵抗を低減させることができる、電池用非水電解液、リチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 下記式(I)で表される化合物(I)と、
モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの少なくとも一方である化合物(II)、下記式(III)で表される化合物(III)、並びに、下記式(IV)で表される化合物(IV)からなる群より選択される少なくとも1種である添加剤Aと、
を含有する、電池用非水電解液。
【0006】
【0007】
式(I)中、Rは、単結合又は炭素数1~4のアルキレン基を表す。
式(III)中、
Mは、アルカリ金属であり、
Yは、遷移元素、周期律表の13族元素、14族元素、又は15族元素であり、
bは、1~3の整数であり、
mは、1~4の整数であり、
nは、0~8の整数であり、
qは、0又は1であり、
R31は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、qが1でmが2~4の場合にはm個のR31はそれぞれが結合していてもよい。)であり、
R32は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、nが2~8の場合はn個のR32はそれぞれが結合して環を形成していてもよい。)であり、
Q1及びQ2は、それぞれ独立に、酸素原子又は炭素原子である。
式(IV)中、
R42は、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数2~6のアルケニレン基、式(iv-1)で表される基、又は式(iv-2)で表される基であり、
*は、結合位置を示し、
式(iv-1)中、R43は、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数2~6のアルケニレン基、又はオキシメチレン基であり、
式(iv-2)中、R44は、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数2~6のアルケニル基である。
【0008】
<2> 前記式(I)中の前記Rが、単結合である、<1>に記載の電池用非水電解液。
<3> 前記化合物(I)の含有量が、電池用非水電解液の全量に対し、0.01質量%以上5.0質量%以下である、<1>又は<2>に記載の電池用非水電解液。
<4> 前記添加剤Aの含有量が、電池用非水電解液の全量に対し、0.01質量%以上5.0質量%以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
<5> 正極と、
リチウムイオンの吸蔵及び放出が可能な負極活物質を含む負極と、
<1>~<4>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液と、
を含む、リチウム二次電池前駆体。
<6> <5>に記載のリチウム二次電池前駆体に対し、充電及び放電を施して得られたリチウム二次電池。
<7> <5>に記載のリチウム二次電池前駆体を準備する工程と、
前記リチウム二次電池前駆体に対して、充電及び放電を施す工程と、
を含む、リチウム二次電池の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、高温保存後の電池の抵抗を低減させることができる、電池用非水電解液、リチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示のリチウム二次電池前駆体の一例であるラミネート型電池を示す概略断面図である。
【
図2】本開示のリチウム二次電池前駆体の別の一例であるコイン型電池を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0012】
〔電池用非水電解液〕
本開示の電池用非水電解液(以下、単に「非水電解液」ともいう)は、
下記式(I)で表される化合物(I)と、
モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの少なくとも一方である化合物(II)、下記式(III)で表される化合物(III)、並びに、下記式(IV)で表される化合物(IV)からなる群より選択される少なくとも1種である添加剤Aと、
を含有する。
【0013】
【0014】
〔式(I)中、Rは、単結合又は炭素数1~4のアルキレン基を表す。
式(III)中、
Mは、アルカリ金属であり、
Yは、遷移元素、周期律表の13族元素、14族元素、又は15族元素であり、
bは、1~3の整数であり、
mは、1~4の整数であり、
nは、0~8の整数であり、
qは、0又は1であり、
R31は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、qが1でmが2~4の場合にはm個のR31はそれぞれが結合していてもよい。)であり、
R32は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、nが2~8の場合はn個のR32はそれぞれが結合して環を形成していてもよい。)であり、
Q1及びQ2は、それぞれ独立に、酸素原子又は炭素原子である。
式(IV)中、
R42は、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数2~6のアルケニレン基、式(iv-1)で表される基、又は式(iv-2)で表される基であり、
*は、結合位置を示し、
式(iv-1)中、R43は、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数2~6のアルケニレン基、又はオキシメチレン基であり、
式(iv-2)中、R44は、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数2~6のアルケニル基である。
【0015】
本開示の非水電解液によれば、高温保存後の電池の抵抗を低減させることができる。
即ち、本開示の非水電解液を含む電池では、高温保存後の電池抵抗が低減される。
かかる効果は、化合物(I)と添加剤Aとの組み合わせによってもたらされる効果であると考えられる。
上記効果が奏される理由は、化合物(I)と添加剤Aとの組み合わせにより、リチウム二次電池における電極(即ち、正極及び/又は負極)上の被膜が効率良く形成され、この被膜により、充放電時において、非水電解液における電解質又は非水溶媒の分解といった副反応が抑制されるためと考えられる。
【0016】
<化合物(I)>
本開示の非水電解液は、下記式(I)で表される化合物(I)を含有する。
本開示の非水電解液は、化合物(I)を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0017】
【0018】
式(I)中、Rは、単結合又は炭素数1~4のアルキレン基を表す。
【0019】
式(I)中、Rで表される炭素数1~4のアルキレン基としては、炭素数1~4の無置換のアルキレン基、及び炭素数1~4のフッ素原子で置換されたアルキレン基が挙げられる。
【0020】
また、式(I)中、Rで表される炭素数1~4のアルキレン基としては、直鎖状のアルキレン基であってもよいし、分岐状のアルキレン基であってもよい。
【0021】
式(I)中、Rで表される炭素数1~4のアルキレン基の具体例としては、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基などの直鎖状又は分岐状であって無置換のアルキレン基;
ジフルオロメチレン基、テトラフルオロエチレン基、ヘキサフルオロプロピレン基などのフッ素原子で置換されたアルキレン基;
などが挙げられる。
【0022】
式(I)中のRは、好ましくは単結合又は炭素数1~2のアルキレン基であり、より好ましくは単結合又は炭素数1のアルキレン基(即ちメチレン基)であり、更に好ましくは単結合である。
【0023】
式(I)中のRが単結合で表される化合物は、下記式(I-1)で表される化合物(I-1)である。
【0024】
【0025】
化合物(I)は、国際公開第2020/022142号を参照して製造できる。
【0026】
本開示の非水電解液の全量に対する化合物(I)の含有量は、本開示の非水電解液による効果がより効果的に奏される観点から、0.01質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上2.0質量%以下が更に好ましい。
【0027】
なお、実際に電池を解体して採取した電池用非水電解液を分析した際、化合物(I)の量が、非水電解液への添加量と比較して減少している場合がある。この場合であっても、電池から採取された非水電解液中に少量でも化合物(I)が検出されれば、その電池の非水電解液は、本開示の非水電解液の範囲に含まれる。
以下で説明する添加剤Aについても同様である。
【0028】
<添加剤A>
本開示の非水電解液は、モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの少なくとも一方である化合物(II)、後述の式(III)で表される化合物(III)、並びに、後述の式(IV)で表される化合物(IV)からなる群より選択される少なくとも1種である添加剤Aを含有する。
【0029】
本開示の非水電解液の全量に対する添加剤Aの含有量は、本開示の非水電解液による効果がより効果的に奏される観点から、0.01質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上2.0質量%以下が更に好ましい。
【0030】
本開示の非水電解液による効果がより効果的に奏される観点から、本開示の非水電解液において、化合物(I)の含有量に対する添加剤Aの含有量の質量比(以下、「含有質量比〔添加剤A/化合物(I)〕」ともいう)は、0.1~10が好ましく、0.2~5.0がより好ましい。
【0031】
(化合物(II))
化合物(II)は、モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの少なくとも一方である。
ジフルオロリン酸リチウムは、下記化合物(II-1)であり、モノフルオロリン酸リチウムは、下記化合物(II-2)である。
【0032】
【0033】
化合物(II)は、モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの一方のみであってもよいし、モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの両方であってもよい。
【0034】
本開示の非水電解液が化合物(II)を含有する場合、化合物(II)の含有量は、非水電解液の全量に対し、0.001質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
上記化合物(II)の含有量の上限は、更に好ましくは3.0質量%、更に好ましくは2.0質量%である。
上記化合物(II)の含有量の下限は、更に好ましくは0.01質量%、更に好ましくは0.1質量%である。
【0035】
(化合物(III))
化合物(III)は、下記式(III)で表される化合物である。
【0036】
【0037】
式(III)中、
Mは、アルカリ金属であり、
Yは、遷移元素、周期律表の13族元素、14族元素、又は15族元素であり、
bは、1~3の整数であり、
mは、1~4の整数であり、
nは、0~8の整数であり、
qは、0又は1であり、
R31は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、qが1でmが2~4の場合にはm個のR31はそれぞれが結合していてもよい。)であり、
R32は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、nが2~8の場合はn個のR32はそれぞれが結合して環を形成していてもよい。)であり、
Q1、及びQ2は、それぞれ独立に、酸素原子、又は炭素原子である。
【0038】
Mは、アルカリ金属である。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。中でも、Mは、リチウムであることが好ましい。
Yは、遷移元素、周期律表の13族元素、14族元素、又は15族元素である。Yとしては、Al、B、V、Ti、Si、Zr、Ge、Sn、Cu、Y、Zn、Ga、Nb、Ta、Bi、P、As、Sc、Hf又はSbであることが好ましく、Al、B又はPであることがより好ましい。YがAl、B又はPの場合、アニオン化合物の合成が比較的容易になり、製造コストを抑えることができる。
bは、アニオンの価数及びカチオンの個数を表す。bは、1~3の整数であり、1であることが好ましい。bが3以下であれば、アニオン化合物の塩が混合有機溶媒に溶解しやすい。
m及びnの各々は、配位子の数に関係する値である。m及びnの各々は、Mの種類によって決まる。mは、1~4の整数である。nは、0~8の整数である。
qは、0又は1である。qが0の場合、キレートリングが五員環となり、qが1の場合、キレートリングが六員環となる。
R31は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基を表す。これらのアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基又はハロゲン化アリーレン基は、その構造中に置換基、ヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、R31は、これらの基の水素原子の代わりに、置換基を含んでもよい。置換基としては、ハロゲン原子、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、又は水酸基が挙げられる。これらの基の炭素元素の代わりに、窒素原子、硫黄原子、又は酸素原子が導入された構造であってもよい。qが1でmが2~4である場合、m個のR31はそれぞれが結合していてもよい。そのような例としては、エチレンジアミン四酢酸のような配位子を挙げることができる。
R32は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン化アリール基を表す。これらのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又はハロゲン化アリール基は、R31と同様に、その構造中に置換基、ヘテロ原子を含んでいてもよく、nが2~8のときにはn個のR32は、それぞれ結合して環を形成してもよい。R32としては、電子吸引性の基が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
Q1及びQ2は、それぞれ独立に、O又はCを表す。つまり、配位子はこれらヘテロ原子を介してYに結合することになる。
【0039】
化合物(III)の具体例としては、下記化合物(III-1)及び下記化合物(III-2)が挙げられる。
【0040】
【0041】
本開示の非水電解液が化合物(III)を含有する場合、化合物(III)の含有量は、非水電解液の全量に対し、0.001質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
上記化合物(II)の含有量の上限は、更に好ましくは3.0質量%、更に好ましくは2.0質量%である。
上記化合物(II)の含有量の下限は、更に好ましくは0.01質量%、更に好ましくは0.1質量%である。
【0042】
(化合物(IV))
化合物(IV)は、下記式(IV)で表される化合物である。
【0043】
【0044】
式(IV)中、
R41は、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基、又は炭素数2~6のアルケニレン基であり、
R42は、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数2~6のアルケニレン基、式(iv-1)で表される基、又は式(iv-2)で表される基であり、
*は、結合位置を示し、
式(iv-1)中、R43は、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数2~6のアルケニレン基、又はオキシメチレン基であり、
式(iv-2)中、R44は、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数2~6のアルケニル基である。
【0045】
式(IV)中、R42は、式(iv-1)で表される基又は式(iv-2)で表される基であることが好ましい。
式(iv-1)中、R43は、炭素数1~3のアルキレン基、炭素数1~3のアルケニレン基、又はオキシメチレン基であることが好ましく、オキシメチレン基であることがより好ましい。
式(iv-2)中、R44は、炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数2~3のアルケニル基であることが好ましく、プロピル基であることがより好ましい。
【0046】
化合物(IV)の具体例としては、下記化合物(IV-1)及び下記化合物(IV-2)が挙げられる。
【0047】
【0048】
本開示の非水電解液が化合物(IV)を含有する場合、化合物(IV)の含有量は、非水電解液の全量に対し、0.001質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
上記化合物(IV)の含有量の上限は、更に好ましくは3.0質量%、更に好ましくは2.0質量%である。
上記化合物(IV)の含有量の下限は、更に好ましくは0.01質量%、更に好ましくは0.1質量%である。
【0049】
<その他の添加剤>
本開示の非水電解液は、その他の添加剤を含んでもよい。
その他の添加剤としては、特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
その他の添加剤としては、例えば、特開2019-153443号公報の段落0042~0055に記載の添加剤を用いることができる。
【0050】
<非水溶媒>
非水電解液は、一般的に、非水溶媒を含有する。非水溶媒としては種々公知のものを適宜選択することができる。非水溶媒は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0051】
非水溶媒としては、例えば、環状カーボネート類、含フッ素環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、含フッ素鎖状カーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、含フッ素脂肪族カルボン酸エステル類、γ-ラクトン類、含フッ素γ-ラクトン類、環状エーテル類、含フッ素環状エーテル類、鎖状エーテル類、含フッ素鎖状エーテル類、ニトリル類、アミド類、ラクタム類、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド燐酸、などが挙げられる。
環状カーボネート類としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、などが挙げられる。
含フッ素環状カーボネート類としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、などが挙げられる。
鎖状カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酪酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、トリメチル酪酸エチル、などが挙げられる。
γ-ラクトン類としては、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、などが挙げられる。
環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、などが挙げられる。
鎖状エーテル類としては、例えば、1,2-エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、などが挙げられる。
ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、などが挙げられる。
アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、などが挙げられる。
ラクタム類としては、例えば、N-メチルピロリジノン、N-メチルオキサゾリジノン、N,N'-ジメチルイミダゾリジノン、などが挙げられる。
【0052】
非水溶媒は、環状カーボネート類、含フッ素環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、及び含フッ素鎖状カーボネート類からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
この場合、環状カーボネート類、含フッ素環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、及び含フッ素鎖状カーボネート類の合計の割合は、非水溶媒の全量に対して、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上100質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0053】
非水溶媒は、環状カーボネート類及び鎖状カーボネート類からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
この場合、非水溶媒中に占める、環状カーボネート類及び鎖状カーボネート類の合計の割合は、非水溶媒の全量に対して、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上100質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0054】
非水溶媒の含有量の上限は、非水電解液の総量に対して、好ましくは99質量%であり、好ましくは97質量%であり、更に好ましくは90質量%である。非水溶媒の含有量の下限は、非水電解液の総量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
【0055】
非水溶媒の固有粘度は、電解質の解離性及びイオンの移動度をより向上させる観点から、25℃において10.0mPa・s以下であることが好ましい。
【0056】
<電解質>
非水電解液は、一般的に、電解質を含有する。
【0057】
電解質は、フッ素を含むリチウム塩(以下、「含フッ素リチウム塩」という場合がある。)、及びフッ素を含まないリチウム塩の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0058】
含フッ素リチウム塩としては、例えば、無機酸陰イオン塩、有機酸陰イオン塩などが挙げられる。
無機酸陰イオン塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、六フッ化タンタル酸リチウム(LiTaF6)、などが挙げられる。
有機酸陰イオン塩としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li(CF3SO2)2N)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li(C2F5SO2)2N)などが挙げられる。
中でも、含フッ素リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が更に好ましい。
【0059】
フッ素を含まないリチウム塩としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)、四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl4)、リチウムデカクロロデカホウ素酸(Li2B10Cl10)などが挙げられる。
【0060】
電解質が含フッ素リチウム塩を含む場合、含フッ素リチウム塩の含有割合は、電解質の全量に対して、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは60質量%以上100質量%以下、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
含フッ素リチウム塩が六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を含む場合、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)の含有割合は、電解質の全量に対して、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは60質量%以上100質量%以下、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0061】
非水電解液が電解質を含む場合、非水電解液における電解質の濃度は、好ましくは0.1mol/L以上3mol/L以下、より好ましくは0.5mol/L以上2mol/L以下である。
【0062】
非水電解液が六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を含む場合、非水電解液における六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)の濃度は、好ましくは0.1mol/L以上3mol/L以下、より好ましくは0.5mol/L以上2mol/L以下である。
【0063】
<その他の成分>
非水電解液は、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、酸無水物などが挙げられる。
【0064】
〔リチウム二次電池前駆体〕
本開示のリチウム二次電池前駆体は、
ケースと、
ケースに流用された、正極、負極、セパレータ、及び電解液と、
を備える。
ここで、
正極は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極であり、
負極は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極であり、
電解液は、本開示の非水電解液である。
【0065】
本開示において、リチウム二次電池前駆体は、充電及び放電が施される前のリチウム二次電池を示す。
【0066】
本開示のリチウム二次電池前駆体によれば、リチウム二次電池の高温保存後の電池抵抗を低減させることができる。
【0067】
<ケース>
ケースの形状などは、特に限定はなく、本開示のリチウム二次電池前駆体の用途などに応じて、適宜選択される。
ケースとしては、ラミネートフィルムを含むケース、電池缶と電池缶蓋とからなるケース、などが挙げられる。
【0068】
<正極>
正極は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極である。
正極は、好ましくは、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極活物質を少なくとも1種含む。
【0069】
正極は、好ましくは、正極集電体と、正極集電体の表面の少なくとも一部に設けられた正極合材層と、を備える。
【0070】
正極集電体の材質としては、例えば、金属又は合金が挙げられる。
詳しくは、正極集電体の材質として、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼材(SUS)、銅などが挙げられる。中でも、導電性の高さとコストとのバランスの観点から、アルミニウムが好ましい。ここで、「アルミニウム」は、純アルミニウム又はアルミニウム合金を意味する。正極集電体として、アルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔の材質は、特に限定されず、A1085材、A3003材、などが挙げられる。
【0071】
正極合材層は、正極活物質及びバインダーを含有する。
【0072】
正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出が可能な物質であれば特に限定されず、リチウム二次電池前駆体の用途などに応じて、適宜調整され得る。
【0073】
正極活物質としては、例えば、第1酸化物、第2酸化物などが挙げられる。第1酸化物は、リチウム(Li)とニッケル(Ni)とを構成金属元素とする。第2酸化物は、Liと、Niと、Li及びNi以外の金属元素の少なくとも1種と、を構成金属元素として含む。Li及びNi以外の金属元素としては、例えば、遷移金属元素、典型金属元素などが挙げられる。第2酸化物は、Li及びNi以外の金属元素として、好ましくは、原子数換算で、Niと同程度、又は、Niよりも少ない割合で含むことが好ましい。Li及びNi以外の金属元素は、例えば、Co、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ca、Na、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La及びCeからなる群からなる群から選択される少なくとも1種であり得る。これらの正極活物質は、単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
【0074】
正極活物質は、下記式(P1)で表されるリチウム含有複合酸化物(以下、「NCM」という場合がある。)を含むことが好ましい。リチウム含有複合酸化物(P1)は、単位体積当たりのエネルギー密度が高く、熱安定性にも優れるという利点を有する。
LiNiaCobMncO2 … 式(P1)
式(P1)中、a、b及びcは、それぞれ独立に、0超1未満であり、a、b及びcの合計は、0.99以上1.00以下である。
NCMの具体例としては、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNi0.5Co0.3Mn0.2O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2などが挙げられる。
【0075】
正極活物質は、下記式(P2)で表されるリチウム含有複合酸化物(以下、「NCA」という場合がある。)を含んでもよい。
LitNi1-x-yCoxAlyO2 … 式(P2)
式(P2)中、tは、0.95以上1.15以下であり、xは、0以上0.3以下であり、yは、0.1以上0.2以下であり、x及びyの合計は、0.5未満である。)
NCAの具体例としては、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2などが挙げられる。
【0076】
本開示のリチウム二次電池前駆体における正極が、正極集電体と、正極活物質及びバインダーを含む正極合材層と、を備える場合、正極合材層中の正極活物質の含有量は、正極合材層の全量に対し、好ましくは10質量%以上99.9質量%以下、より好ましくは30質量%以上99.9質量%以下、更に好ましくは50質量%以上99質量%以下、特に好ましくは70質量%以上99質量%以下である。
【0077】
バインダーとしては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、フッ素樹脂、ゴム粒子などが挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体などが挙げられる。ゴム粒子としては、スチレン-ブタジエンゴム粒子、アクリロニトリルゴム粒子などが挙げられる。これらの中でも、正極合材層の耐酸化性を向上させる観点から、フッ素樹脂が好ましい。バインダーは1種を単独で使用でき、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
正極合材層中におけるバインダーの含有量は、正極合材層の物性(例えば、電解液浸透性、剥離強度、など)と電池性能との両立の観点から、正極合材層の全量に対し、好ましくは0.1質量%以上4質量%以下である。バインダーの含有量が0.1質量%以上であると、正極集電体に対する正極合材層の接着性、及び、正極活物質同士の結着性がより向上する。バインダーの含有量が4質量%以下であると、正極合材層中における正極活物質の量をより多くすることができるので、放電容量がより向上する。
【0078】
正極合材層は、導電助剤を含むことが好ましい。
導電助剤の材質としては、公知の導電助剤を用いることができる。公知の導電助剤としては、導電性を有する炭素材料が好ましい。導電性を有する炭素材料としては、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維、フラーレンなどが挙げられる。これらは、単独で、もしくは2種類以上を併せて使用することができる。導電性炭素繊維としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバーなどが挙げられる。グラファイトとしては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛などが挙げられる。天然黒鉛としては、例えば、燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などが挙げられる。
導電助剤の材質は、市販品であってもよい。カーボンブラックの市販品としては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500など(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスLなど(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRAなど、Conductex SC ULTRA、Conductex 975ULTRAなど、PUER BLACK100、115、205など(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400Bなど(三菱ケミカル社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC-72R、BlackPearls2000、LITX-50、LITX-200など(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、Super-P(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC-300J、EC-600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS-100、FX-35(デンカ社製、アセチレンブラック)などが挙げられる。
【0079】
正極合材層は、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、増粘剤、界面活性剤、分散剤、濡れ剤、消泡剤などが挙げられる。
【0080】
<負極>
負極は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極である。
負極は、好ましくは、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質を少なくとも1種含む。
【0081】
負極は、好ましくは、負極集電体と、負極集電体の表面の少なくとも一部に設けられた負極合材層と、を備える。
【0082】
負極集電体の材質としては、特に制限はなく公知の物を任意に用いることができ、例えば、金属又は合金が挙げられる。詳しくは、負極集電体の材質として、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼材(SUS)、ニッケルメッキ鋼材、銅などが挙げられる。中でも、負極集電体の材質として、加工性の観点から、銅が好ましい。負極集電体として、銅箔が好ましい。
【0083】
負極合材層は、負極活物質及びバインダーを含む。
【0084】
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な物質であれば特に制限はない。負極活物質は、例えば、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ及び脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ及び脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ及び脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、負極活物質は、リチウムイオンをドープ及び脱ドープすることが可能な炭素材料(以下、単に「炭素材料」ともいう。)が好ましい。
【0085】
炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料、非晶質炭素材料、などが挙げられる。これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。炭素材料の形態は、特に限定されず、例えば、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状などが挙げられる。炭素材料の粒径は、特に限定されず、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは20μm以上30μm以下である。
非晶質炭素材料として、例えば、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが挙げられる。
黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが挙げられる。黒鉛材料は、ホウ素を含んでもよい。黒鉛材料は、金属又は非晶質炭素で被覆されていてもよい。黒鉛材料を被覆する金属の材質としては、金、白金、銀、銅、スズなどが挙げられる。黒鉛材料は、非晶質炭素と黒鉛との混合物であってもよい。
【0086】
負極合材層は、導電助剤を含むことが好ましい。導電助剤としては、正極合材層に含まれ得る導電助剤として例示した導電助剤と同様の導電助剤が挙げられる。
【0087】
負極合材層は、上記各成分に加えて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、増粘剤、界面活性剤、分散剤、濡れ剤、消泡剤などが挙げられる。
【0088】
<セパレータ>
セパレータとしては、例えば、多孔質の樹脂平板が挙げられる。多孔質の樹脂平板の材質としては、樹脂、この樹脂を含む不織布などが挙げられる。樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミドなどが挙げられる。
なかでも、セパレータは、単層又は多層構造の多孔性樹脂シートであることが好ましい。多孔性樹脂シートの材質は、一種又は二種以上のポリオレフィン樹脂を主体とする。セパレータの厚みは、好ましくは5μm以上30μm以下である。セパレータは、好ましくは、正極と負極との間に配置される。
【0089】
<リチウム二次電池前駆体の具体例>
図1は、本開示のリチウム二次電池前駆体の一例である積層型のリチウム二次電池前駆体を示す概略断面図である。
【0090】
図1に示すように、リチウム二次電池前駆体1は、積層型の電池前駆体である。
詳細には、リチウム二次電池前駆体1では、電池素子10は、外装体30の内部に封入されている。外装体30は、ラミネートフィルムで形成されている。電池素子10には、正極リード21及び負極リード22の各々が取り付けられている。正極リード21及び負極リード22の各々は、外装体30の内部から外部に向かって、反対方向に導出されている。
【0091】
電池素子10は、
図1に示すように、正極11と、セパレータ13と、負極12と、が積層されてなる。正極11は、正極集電体11Aの両方の主面上に正極合材層11Bが形成されてなる。負極12は、負極集電体12Aの両方の主面上に負極合材層12Bが形成されてなる。正極11の正極集電体11Aの片方の主面上に形成された正極合材層11Bと、正極11に隣接する負極12の負極集電体12Aの片方の主面上に形成された負極合材層12Bとは、セパレータ13を介して向き合っている。
【0092】
リチウム二次電池前駆体1の外装体30の内部には、本開示の非水電解液が注入されている。本開示の非水電解液は、正極合材層11B、セパレータ13、及び負極合材層12Bに浸透している。リチウム二次電池前駆体1では、隣接する正極合材層11B、セパレータ13及び負極合材層12Bによって、1つの単電池層14が形成されている。なお、正極及び負極は、各集電体の片面上に各活物質層が形成されているものであってもよい。
【0093】
なお、リチウム二次電池前駆体1は、積層型のリチウム二次電池前駆体であるが、本開示のリチウム二次電池前駆体はこれに限定されず、例えば、捲回型のリチウム二次電池前駆体であってもよい。捲回型のリチウム二次電池前駆体は、正極、セパレータ、負極、及びセパレータをこの順の配置で重ねて層状に巻いてなる。捲回型のリチウム二次電池前駆体には、円筒型のリチウム二次電池前駆体及び角形リチウム二次電池前駆体が包含される。
【0094】
図1に示すように、リチウム二次電池前駆体1において、正極リード及び負極リードの各々が外装体30の内部から外部に向けて突出する方向は、外装体30に対して反対方向であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、正極リード及び負極リードの各々が外装体30の内部から外部に向けて突出する方法は、外装体30に対して同一方向であってもよい。
【0095】
後述の本開示のリチウム二次電池の一例としては、リチウム二次電池前駆体1に対し、充電及び放電を施して得られたリチウム二次電池が挙げられる。
【0096】
図2は、本開示のリチウム二次電池前駆体の別の一例であるコイン型のリチウム二次電池前駆体を示す概略断面図である。
【0097】
図2に示すコイン型のリチウム二次電池前駆体では、円盤状負極42、非水電解液を注入したセパレータ45、円盤状正極41、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板47、48が、この順序に積層された状態で、正極缶43(以下、「電池缶」ともいう)と封口板44(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶43と封口板44とはガスケット46を介してかしめ密封する。
この一例では、セパレータ45に注入される非水電解液として、本開示の非水電解液を用いる。
【0098】
後述の本開示のリチウム二次電池の一例としては、
図2に示すコイン型のリチウム二次電池前駆体に対し、充電及び放電を施して得られたリチウム二次電池も挙げられる。
【0099】
〔リチウム二次電池及びその製造方法〕
本開示のリチウム二次電池の製造方法は、
前述した本開示のリチウム二次電池前駆体を準備する工程(以下、「準備工程」ともいう)と、
上記リチウム二次電池前駆体に対して、充電及び放電を施す工程と、
を含む。
本開示のリチウム二次電池は、上述した本開示のリチウム二次電池前駆体に対し、充電及び放電を施して得られたリチウム二次電池である。
【0100】
本開示のリチウム二次電池及びその製造方法によれば、リチウム二次電池の高温保存後の電池抵抗を低減させることができる。
【0101】
準備工程は、予め製造された本開示のリチウム二次電池前駆体を充電及び放電を施す工程に供するために単に準備するだけの工程であってもよいし、本開示のリチウム二次電池前駆体を製造する工程であってもよい。
リチウム二次電池前駆体については前述のとおりである。
【0102】
充電及び放電を施す工程において、リチウム二次電池前駆体に対する充電及び放電は、公知の方法に従って行うことができる。
本工程では、リチウム二次電池前駆体に対し、充電及び放電のサイクルを、複数回繰り返してもよい。
前述のとおり、この充電及び放電により、リチウム二次電池前駆体における正極(特に正極活物質)及び/又は負極(特に負極活物質)の表面に、好ましくはSEI(Solid Electrolyte Interface)膜が形成される。
【0103】
充電及び放電を施す工程は、リチウム二次電池前駆体に対し、25℃~70℃の環境下で、充電及び放電の組み合わせを1回以上施すことが好ましい。
【実施例0104】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
以下、「%」は、特に断りが無い限り「質量%」である。
【0105】
〔実施例1〕
<非水電解液の製造>
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを、EC:DMC:EMC=30:35:35(体積比)で混合した。これにより、非水溶媒としての混合溶媒(非水溶媒)を得た。
LiPF6(電解質)を、得られた混合溶媒に対し、最終的に得られる非水電解液中の濃度が1モル/リットルとなるように溶解させ、電解液を得た。
得られた電解液を、以下、「基本電解液」という。
【0106】
基本電解液に対し、化合物(I)としての下記化合物(I-1)と、添加剤Aとしての下記化合物(II-1)とを、最終的に得られる非水電解液の全量に対する含有量が、表1に記載の含有量(質量%)となるように添加することにより、非水電解液を得た。
化合物(II-1)は、化合物(II)の具体例である。
【0107】
【0108】
<リチウム二次電池前駆体の作製>
リチウム二次電池前駆体として、ラミネート型電池前駆体を得た。詳細を以下に示す。
【0109】
(正極の準備)
正極活物質としてLi(Ni0.5Co0.2Mn0.3O2)(94質量%)、導電助剤としてカーボンブラック(3質量%)、及び結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(3質量%)を添加した混合物を得た。得られた混合物を、N-メチルピロリドン溶媒中に分散させ、正極合材スラリーを得た。
正極集電体として厚さ20μmのアルミニウム箔を準備した。
得られた正極合材スラリーをアルミニウム箔(正極集電体)上に塗布し、乾燥後、プレス機で圧延し、正極原反を得た。この正極原反は、正極の活物質合材層(以下、「正極合材層」という。)が形成された領域と、正極合材層が形成されていない領域(以下、「タブ接着用未塗工部」という。)と、を含む。タブ接着用未塗工部は、余白となる未塗工部である。
得られた正極原反をスリットし、正極を得た。正極は、正極合材層が形成された領域と、タブ接着用未塗工部と、を含む。
得られた正極において、正極合材層が形成された領域のサイズは、幅29mm、長さ40mmであった。タブ接着用未塗工部のサイズは、幅5mm、長さ11mmであった。
【0110】
(負極の準備)
負極活物質としてグラファイト(96質量%)、導電助剤としてカーボンブラック(1質量%)、増粘剤として純水中で分散したカルボキシメチルセルロースナトリウムを固形分で1質量%、及び結着材として純水中で分散したスチレン-ブタジエンゴムの(SBR)を固形分で2質量%を混合し、負極合材スラリーを得た。
負極集電体として厚さ10μmの銅箔を準備した。
得られた負極合材スラリーを銅箔(負極集電体)上に塗布し、乾燥後、プレス機で圧延し、負極原反を得た。この負極原反は、負極の活物質合材層(以下、「負極合材層」という。)が形成された領域と、負極合材層が形成されていない領域(以下、「タブ接着用未塗工部」という。)を含む。タブ接着用未塗工部は、余白となる未塗工部である。
得られた負極原反をスリットし、負極を得た。
負極は、負極合材層が形成された領域と、タブ接着用未塗工部と、を含む。
得られた負極において、負極合材層のサイズは、幅30mm、長さ41mmであった。タブ接着用未塗工部のサイズは、幅5mm、長さ11mmであった。
【0111】
(非水電解液の準備)
上述した非水電解液の製造で得られた非水電解液を準備した。
【0112】
(ラミネート型電池前駆体の作製)
セパレータとして、多孔性ポリプロピレンフィルムを準備した。
正極、負極、及びセパレ-タを、負極の塗工面がセパレータに接し、かつ正極の塗工面がセパレータに接する向きで重ねて積層体を得た。
得られた積層体の正極のタブ接着用未塗工部にアルミニウム製の正極タブ(正極リード)を超音波接合機で接合した。この積層体の負極のタブ接着用未塗工部にニッケル製の負極タブ(負極リード)を超音波接合機で接合した。
正極タブ及び負極タブが接合された積層体を、アルミニウムの両面を樹脂層で被覆した一対のラミネートフィルム(ケース)で挟み込み、次いで三辺を加熱シールし、ラミネート体(組立体)を得た。この際、ラミネート体におけるシールされた三辺のうち、シールされていない開口部に接する一辺から正極タブ及び負極タブがはみ出すようにした。
【0113】
ラミネート体の開口部から、上記非水電解液を0.25mL注入し、ラミネートの開口部を封止した。
以上により、リチウム二次電池前駆体としてのラミネート型電池前駆体を得た。
【0114】
<リチウム二次電池の作製>
上記ラミネート型電池前駆体(電気化学デバイス電池前駆体)に対し、25℃~70℃の温度範囲下、1.5V~4.2Vの充電、5時間~50時間の保持、4.2Vまでの充電、及び2.5Vまでの放電を、この順に施し、リチウム二次電池を得た。
【0115】
<初期充放電処理>
上記で得られたリチウム二次電池に対し、25℃の温度環境にて4.2Vまでの充電、2.5Vまでの放電、4.2Vまでの充電をこの順に施した。
【0116】
<高温保存後抵抗の評価>
次に、初期充放電処理後のリチウム二次電池を60℃の温度環境で28日間保存した。(以下、「高温保存」とする)。
高温保存後のリチウム二次電池に対し、25℃の温度環境にて2.5Vまでの放電、3.7Vまでの充電をこの順に施した。次いで-10℃まで冷却し、-10℃の温度環境にて、放電レート0.1C~0.6C各々における「CC10s放電」による各電圧低下量(=放電開始前の電圧-放電開始後10秒目の電圧)と、各電流値(即ち、放電レート0.1C~0.6Cに相当する各電流値)と、に基づき、保存後抵抗値としての直流抵抗[Ω]を測定した。
後述の比較例1についても、同様にして、リチウム二次電池の保存後抵抗を測定した。
以上の結果から、比較例1の保存後抵抗を100とした場合の、実施例1の保存後抵抗の抵抗値(相対値)を求め、「保存後抵抗(相対値)」とした。
得られた「保存後抵抗(相対値)」を表1に示す。
【0117】
〔実施例2~実施例4〕
添加剤Aの種類及び量を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
実施例2~実施例4における添加剤Aは以下のとおりである。
【0118】
【0119】
〔比較例1〕
非水電解液に添加剤Aを含有させなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0120】
〔比較例2〕
添加剤Aを同質量のビニレンカーボネート(以下、「VC」)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0121】
【0122】
表1に示すように、化合物(I)と、化合物(II)、化合物(III)、及び化合物(IV)からなる群より選択される少なくとも1種である添加剤Aと、を含有する非水電解液を用いた実施例1~4では、高温保存後抵抗が低減されていた。
これら実施例1~4に対し、非水電解液が添加剤Aを含有しない比較例1、及び、非水電解液が添加剤Aではなくビニレンカーボネート(VC)を含有する比較例2では、高温保存後抵抗が高かった。