(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129106
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230907BHJP
【FI】
H02M7/48 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033896
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】降幡 賢
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 実
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770CA02
5H770CA06
5H770CA10
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770EA21
5H770EA27
5H770GA13
5H770GA17
5H770KA01W
5H770KA01Y
(57)【要約】
【課題】二相変調の相を切り替える間の、三相変調を行う時間幅を最適化した電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置1は、三相交流電源91と交流負荷92に接続され、コンバータ回路Cと、平滑回路Sと、直流回路Dと、インバータ回路Iと、コンバータ制御部12と、インバータ制御部13と、を備える。前記コンバータ回路Cと前記インバータ回路Iの制御期間の180°周期は、二相変調方式によりPWM制御する二相変調制御期間と、三相変調方式によりPWM制御する三相変調制御期間からなり、第一共振周期を、前記入力フィルタと前記直流フィルタと前記出力フィルタの共振周期と定義し、第二共振周期を、前記直流フィルタと前記出力フィルタの共振周期と定義した時、前記三相変調制御期間は、第一共振周期の3/8以上、5/8以下、または、第二共振周期の3/8以上、5/8以下に設定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源に接続され、前記三相交流電源からの交流を直流に変換するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の直流出力端子に接続され、コンデンサからなる平滑回路と、
前記コンバータ回路の前記直流出力端子に接続され、かつ、前記平滑回路と並列に接続され、直流電源からなる直流回路と、
前記平滑回路の直流出力端子、および、前記直流回路の直流出力端子に接続され、前記平滑回路からの直流、または、前記直流回路からの直流を交流に変換して交流負荷に出力するインバータ回路と、
前記コンバータ回路を二相変調方式または三相変調方式によりPWM制御するコンバータ制御部と
前記インバータ回路を二相変調方式または三相変調方式によりPWM制御するインバータ制御部と、
を備え、
前記コンバータ回路及び前記インバータ回路は、スイッチング素子からなる三相のフルブリッジ回路で構成され、
前記コンバータ回路は入力フィルタを有し、
前記直流回路は直流フィルタを有し、
前記インバータ回路は出力フィルタを有し、
前記コンバータ回路及び前記インバータ回路の制御期間の180°周期は、二相変調方式によりPWM制御する二相変調制御期間と、三相変調方式によりPWM制御する三相変調制御期間からなり、
第一共振周期を、前記入力フィルタと前記直流フィルタと前記出力フィルタの共振周期と定義し、
第二共振周期を、前記直流フィルタと前記出力フィルタの共振周期と定義した時、
前記三相変調制御期間は、第一共振周期の3/8以上、5/8以下、または、第二共振周期の3/8以上、5/8以下に設定される、
電力変換装置。
【請求項2】
前記入力フィルタと前記直流フィルタと前記出力フィルタは、それぞれフィルタコンデンサおよびフィルタリアクトルからなる、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記三相変調制御期間は、前記コンバータ回路に前記三相交流電源が入力される場合は、前記第一共振周期の3/8以上、5/8以下であり、前記コンバータ回路に前記三相交流電源が入力されない場合は、前記第二共振周期の3/8以上、5/8以下である、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、非絶縁型の無停電電源装置であり、二相変調方式と三相変調方式とを切り替えてPWM制御を行う電力変換装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インバータ回路のスイッチング素子をオフする二相変調方式でのPWM制御を行い、二相変調の相を切り替える間に、三相変調方式でのPWM制御を行う電力変換装置が開示されている。これにより、二相変調の相の切り替え時における出力交流波形の歪を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力変換装置に、停電や瞬断が発生した際に電力供給を継続するための直流電源(蓄電池)が組み込まれている構成では、入力フィルタ、出力フィルタ、直流回路の直流フィルタが振動し、直流フィルタに多大なリップル電流が流れる恐れがある。特許文献1の構成のように、二相変調の相を切り替える間に、三相変調方式でのPWM制御を行うと、直流フィルタに流れる電流を抑制できる。しかしながら、三相変調を行う時間幅(以下、三相変調制御期間ともいう)によって、直流フィルタに流れるリップル電流の値が変動するため、三相変調を行う時間幅を最適化する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、二相変調の相を切り替える間の、三相変調制御期間を最適化した電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る一側面に係る電力変換装置は、
三相交流電源に接続され、前記三相交流電源からの交流を直流に変換するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の直流出力端子に接続され、コンデンサからなる平滑回路と、
前記コンバータ回路の前記直流出力端子に接続され、かつ、前記平滑回路と並列に接続され、直流電源からなる直流回路と、
前記平滑回路の直流出力端子、および、前記直流回路の直流出力端子に接続され、前記平滑回路からの直流、または、前記直流回路からの直流を交流に変換して交流負荷に出力するインバータ回路と、
前記コンバータ回路を二相変調方式または三相変調方式によりPWM制御するコンバータ制御部と、
前記インバータ回路を二相変調方式または三相変調方式によりPWM制御するインバータ制御部と、
を備え、
前記コンバータ回路及び前記インバータ回路は、スイッチング素子からなる三相のフルブリッジ回路で構成され、
前記コンバータ回路は入力フィルタを有し、
前記直流回路は直流フィルタを有し、
前記インバータ回路は出力フィルタを有し、
前記コンバータ回路及び前記インバータ回路の制御期間の180°周期は、二相変調方式によりPWM制御する二相変調制御期間と、三相変調方式によりPWM制御する三相変調制御期間からなり、
第一共振周期を、前記入力フィルタと前記直流フィルタと前記出力フィルタの共振周期と定義し、
第二共振周期を、前記直流フィルタと前記出力フィルタの共振周期と定義した時、
前記三相変調制御期間は、第一共振周期の3/8以上、5/8以下、または、第二共振周期の3/8以上、5/8以下に設定される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、二相変調の相を切り替える間の、三相変調制御期間を最適化し、直流フィルタに流れるリップル電流の値の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る電力変換装置の回路構成を示す回路図である。
【
図2】本実施形態に係るコンバータ制御部の回路構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係るインバータ制御部の回路構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係るインバータ制御部の内部信号波形を示す図である。
【
図5】本実施形態に係るインバータ回路の各相の出力電圧を合算した波形を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る通常動作時の高調波周波数に対する等価回路である。
【
図8】本実施形態に係る蓄電池動作時の高調波周波数に対する等価回路である。
【
図10】三相変調制御期間を0に設定した場合、通常動作で直流フィルタに流れるリップル電流波形である。
【
図11】三相変調制御期間をフィルタ回路の第一共振周期の1/2に設定した場合、通常動作で直流フィルタに流れるリップル電流波形である。
【
図12】三相変調制御期間に対する通常動作時のリップル電流の大きさを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0011】
図1は、本実施形態に係る電力変換装置1の回路構成を示す図である。
図1に示すように、電力変換装置1の装置入力端子31a~31cには、三相交流電源91が接続され、電力変換装置1の装置出力端子71a~71cには、インバータ回路Iから出力される三相交流が供給される交流負荷92が接続される。電力変換装置1は、入力フィルタF1と、コンバータ回路Cと、平滑回路Sと、インバータ回路Iと、出力フィルタF2と、直流フィルタF3と、直流回路Dと、コンバータ制御部12と、インバータ制御部13と、を備える。
【0012】
入力フィルタF1は、入力フィルタコンデンサ2a~2cと、入力フィルタリアクトル3a~3cと、を有する。入力フィルタリアクトル3a~3cの一方の端子は、電力変換装置1の装置入力端子31a~31cにそれぞれ接続される。入力フィルタリアクトル3a~3cの他方の端子は、コンバータ回路Cの三相(r相,s相,t相)の交流入力端子41a~41cにそれぞれ接続される。
【0013】
入力フィルタコンデンサ2a~2cの一方の端子は、入力フィルタリアクトル3a~3cにおける装置入力端子31a~31c側の端子にそれぞれ接続される。入力フィルタコンデンサ2a~2cの他方の端子は、中性線n1にそれぞれ接続される。入力フィルタF1は、三相交流電源91からの三相交流をコンバータ回路Cに通過させるとともに、コンバータ回路Cで発生するキャリア周波数(PWM制御方式におけるパルス幅変調周期を決定する周波数)の信号が三相交流電源91に流れ込むのを防止する。
【0014】
コンバータ回路Cは、三相ブリッジ接続された6個の半導体スイッチング素子4a~4fを有する。半導体スイッチング素子4a~4fは、例えば、IGBT(絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)と、逆並列された還流ダイオードとから構成される。コンバータ回路Cは、三相(r相,s相,t相)のフルブリッジ回路で構成される。コンバータ回路Cは、三相交流電源91から入力される三相交流を直流に変換する。
【0015】
平滑回路Sは、コンバータ回路Cの平滑コンデンサ5を有する。平滑コンデンサ5は、例えば、電解コンデンサであり、コンバータ回路Cの直流出力端子42a、42bに接続される。平滑コンデンサ5は、コンバータ回路Cの出力を平滑化する。
【0016】
インバータ回路Iは、三相ブリッジ接続された6個の半導体スイッチング素子6a~6fを有する。半導体スイッチング素子6a~6fは、例えば、IGBTと、逆並列された還流ダイオードとから構成される。インバータ回路Iは、三相(u相,v相,w相)のフルブリッジ回路で構成される。インバータ回路Iは、直流入力端子61a、61bが平滑コンデンサ5の両極端子、および、直流フィルタリアクトル9a、9bの一方の端子にそれぞれ接続される。インバータ回路Iは、半導体スイッチング素子6a~6fのスイッチング動作により、平滑回路Sからの直流(コンバータ回路Cが出力する直流)を交流に変換する、または、直流回路Dからの直流を交流に変換する。
【0017】
出力フィルタF2は、出力フィルタリアクトル7a~7cと、出力フィルタコンデンサ8a~8cと、を有する。出力フィルタリアクトル7a~7cの一方の端子は、三相(u相,v相,w相)のインバータ回路Iの交流出力端子62a~62cにそれぞれ接続される。出力フィルタリアクトル7a~7cの他方の端子は、電力変換装置1の装置出力端子71a~71cにそれぞれ接続される。
【0018】
出力フィルタコンデンサ8a~8cの一方の端子は、出力フィルタリアクトル7a~7cにおける装置出力端子71a~71c側の端子にそれぞれ接続される。出力フィルタコンデンサ8a~8cの他方の端子は、中性線n1にそれぞれ接続される。出力フィルタF2は、インバータ回路Iから出力される交流を交流負荷92に通過させるとともに、インバータ回路Iで発生するキャリア周波数の信号が交流負荷92に流れ込むのを防止する。
【0019】
直流フィルタF3は、直流フィルタリアクトル9a、9bと、直流フィルタコンデンサ10a、10bと、を有する。直流回路Dは、直流電源(蓄電池)11を有する。直流フィルタリアクトル9a、9bの一方の端子は、インバータ回路Iの直流入力端子61a、61bにそれぞれ接続される。直流フィルタリアクトル9a、9bの他方の端子は、直流フィルタコンデンサ10a、10b、および、直流電源11にそれぞれ接続される。
【0020】
直流回路Dは、平滑回路Sと並列に接続され、停電や瞬断が発生した際に交流負荷92への電力供給を継続するように構成される。具体的には、電力変換装置1の通常動作時は、平滑回路Sからの直流(コンバータ回路Cが出力する直流)がインバータ回路Iに入力される。電力変換装置1の蓄電池動作時は、直流回路Dからの直流がインバータ回路Iに入力される。
【0021】
図2は、本実施形態に係るコンバータ制御部12の回路構成を示す図である。コンバータ制御部12は、コンバータ変調指令生成部121と、第1二相変調制御部122と、第1PWM信号生成部123と、二相変調用信号生成部124と、を有し、コンバータ回路Cの半導体スイッチング素子4a~4fを所望の状態にスイッチング制御する。
【0022】
コンバータ変調指令生成部121は、三相交流電源91から三相交流が入力され、三相交流正弦波からなるコンバータ変調指令信号Vr、Vs、Vtを生成し、第1二相変調制御部122へ出力する。二相変調用信号生成部124は、三相交流電源91から三相交流が入力され、コンバータ二相変調用信号AC1~AC6を生成し、第1二相変調制御部122へ出力する。第1二相変調制御部122には、コンバータ変調指令生成部121からコンバータ変調指令信号Vr、Vs、Vtが入力され、二相変調用信号生成部124からコンバータ二相変調用信号AC1~AC6が入力される。さらに第1二相変調制御部122は、コンバータ二相変調指令信号Vr’、Vs’、Vt’を生成して第1PWM信号生成部123へ出力する。
【0023】
第1PWM信号生成部123は、コンパレータ123aとキャリア信号生成部123bと、を有する。コンパレータ123aには、コンバータ二相変調指令信号Vr’、Vs’、Vt’と、キャリア信号生成部123bで生成される三角波等のキャリア信号Vcが入力され、両者を比較して、PWM駆動信号Vgr、Vgs、Vgtを出力する。PWM駆動信号Vgrとその反転信号/Vgr、PWM駆動信号Vgsとその反転信号/Vgs、PWM駆動信号Vgtとその反転信号/Vgtは、それぞれコンバータ回路Cの半導体スイッチング素子4a~4fのゲートに入力される。つまり、PWM駆動信号Vgr、Vgs、Vgtは、コンバータ二相変調指令信号Vr’、Vs’、Vt’がキャリア信号Vcよりも大きい場合に上側の半導体スイッチング素子4a,4c,4eをオン、下側の半導体スイッチング素子4b,4d,4fをオフする波形である。また、コンバータ二相変調指令信号Vr’、Vs’、Vt’がキャリア信号Vcよりも小さい場合に下側の半導体スイッチング素子4b,4d,4fをオン、上側の半導体スイッチング素子4a,4c,4eをオフする波形である。
【0024】
図3は、本実施形態に係るインバータ制御部13の回路構成を示す図である。インバータ制御部13は、インバータ変調指令生成部131と、第2二相変調制御部132と、第2PWM信号生成部133と、二相変調用信号生成部134と、インバータ正弦波リファレンス生成部135を有し、インバータ回路Iの半導体スイッチング素子6a~6fを所望の状態にスイッチング制御する。
【0025】
インバータ変調指令生成部131は、インバータ正弦波リファレンス生成部135で生成される理想正弦波が入力され、三相交流正弦波からなるインバータ変調指令信号Vu,Vv,Vwを生成し、第2二相変調制御部132へ出力する。二相変調用信号生成部134は、インバータ正弦波リファレンス生成部135から理想正弦波が入力され、インバータ二相変調用信号AI1~AI6を生成し、第2二相変調制御部132へ出力する。第2二相変調制御部132には、インバータ変調指令生成部131からインバータ変調指令信号Vu,Vv,Vwが入力、二相変調用信号生成部134からインバータ二相変調用信号AI1~AI6が入力される。第2二相変調制御部132は、二相変調指令信号Vu’、Vv’、Vw’を生成して、第2PWM信号生成部133へ出力する。
【0026】
第2PWM信号生成部133の構成は、
図2に示すコンバータ制御部12の第1PWM信号生成部123と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0027】
図4は、本実施形態に係るインバータ制御部13の内部信号波形を示す図である。
図4において、上段にインバータ変調指令信号Vu,Vv,Vwを、中段にインバータ二相変調用信号AI1~AI6を、下段にインバータ二相変調指令信号Vu’、Vv’、Vw’を示す。
【0028】
インバータ変調指令信号Vu,Vv,Vwは、互いに位相が120°ずれた三相交流正弦波である。インバータ二相変調用信号AI1~AI6は、インバータ変調指令信号Vu,Vv,Vwを二相変調するための信号である。インバータ二相変調指令信号Vu’、Vv’、Vw’は、インバータ変調指令信号Vu,Vv,Vwがインバータ二相変調用信号AI1~AI6に基づいて部分的に二相変調された信号である。
具体的には、インバータ二相変調指令信号Vu’は、インバータ二相変調用信号AI1がHighとなる二相変調制御期間t1において、インバータ変調指令信号VuがHighに固定された信号である。またインバータ二相変調指令信号Vu’は、インバータ二相変調用信号AI4がHighとなる二相変調制御期間t1において、インバータ変調指令信号VuがLowに固定された信号である。
同様に、インバータ二相変調指令信号Vv’は、インバータ二相変調用信号AI2がHighとなる二相変調制御期間t2において、インバータ変調指令信号VvがHighに固定された信号である。またインバータ二相変調指令信号Vv’は、インバータ二相変調用信号AI5がHighとなる二相変調制御期間t2において、インバータ変調指令信号VvがLowに固定された信号である。
同様に、インバータ二相変調指令信号Vw’は、インバータ二相変調用信号AI3がHighとなる二相変調制御期間t2において、インバータ変調指令信号VwがHighに固定された信号である。またインバータ二相変調指令信号Vw’は、インバータ二相変調用信号AI5がHighとなる二相変調制御期間t2において、インバータ変調指令信号VwがLowに固定された信号である。
【0029】
図4に示すように、インバータ二相変調指令信号Vu’、Vv’、Vw’は、二相変調制御期間t1、t2、t3において三相のうちいずれか一相がHighまたはLowに固定され、残りの二相が変調する二相変調信号である。またインバータ二相変調指令信号Vu’、Vv’、Vw’は、三相変調制御期間tr1、tr2、tr3において、三相が全て変調する三相変調信号である。なお、三相変調制御期間tr1は二相変調制御期間t1と二相変調制御期間t3との間であり、三相変調制御期間tr2は二相変調制御期間t2と二相変調制御期間t1との間であり、三相変調制御期間tr3は二相変調制御期間t3と二相変調制御期間t2との間である。
【0030】
また、二相変調制御期間t1、t2、t3は、それぞれ位相60°-Δθに相当する時間であり、三相変調制御期間tr1、tr2、tr3は、それぞれ位相Δθに相当する時間である。したがって、インバータ制御部13は、位相180°周期の制御期間において、二相変調制御期間t1、t2、t3では二相変調方式によりPWM制御を、三相変調制御期間tr1、tr2、tr3では三相変調方式によりPWM制御を行う。
【0031】
本実施形態において、三相変調制御期間tr1、tr2、tr3は、以下に説明する第一共振周期T1または第二共振周期T2に基づいてそれぞれ設定される。二相変調制御期間t1、t2、t3は、位相60°に相当する時間から上記設定された三相変調制御期間tr1、tr2、tr3を減算した値がそれぞれ設定される。
【0032】
本実施形態に係るインバータ制御部13がインバータ回路Iを二相変調方式または三相変調方式によりPWM制御する構成について、
図4を用いて説明した。本実施形態に係るコンバータ制御部12も、同様にコンバータ回路Cを二相変調方式または三相変調方式によりPWM制御する構成であってもよい。
【0033】
図5は、本実施形態に係るインバータ回路Iの各相の出力電圧を合算した波形を示す図である。
図5に示すように、インバータ回路Iの各相の基本波(商用成分の波形)は合算されると0Vとなり、結果として三相変調制御期間tr1、tr2、tr3の電圧は0Vとなり、二相変調制御期間t1、t2、t3の電圧はHighまたはLowの波形が残る。さらに、インバータ回路Iの各相の出力電圧を合算した波形は、二相変調制御期間t1、t2、t3から三相変調制御期間tr1、tr2、tr3へ移る時に、または、三相変調制御期間tr1、tr2、tr3から二相変調制御期間t1、t2、t3へ移る時に、大きく変動する。
【0034】
図6は、三相交流電源91から交流負荷92へ電力を供給する通常動作時の高調波周波数に対する等価回路である。
図6に示すように、等価回路は、入力フィルタF1の入力フィルタコンデンサ2a~2cと入力フィルタリアクトル3a~3c、出力フィルタF2の出力フィルタコンデンサ8a~8cと出力フィルタリアクトル7a~7c、直流フィルタF3の直流フィルタコンデンサ10a、10bと直流フィルタリアクトル9a、9b、から構成される。
図6において、符号C’はコンバータ回路Cの各相の出力電圧を合算した波形を表し、符号I’はインバータ回路Iの各相の出力電圧を合算した波形(
図5に示した波形)を表す。
図5に示す変動する電圧波形が、
図6に示す等価回路に印加されることで高調波電流が流れる。
【0035】
図7は、
図6の等価回路におけるコンバータ回路Cの各相の出力電圧を合算した波形C’とインバータ回路Iの各相の出力電圧を合算した波形I’を一つにまとめて整理した等価回路である。なお、コンバータ回路Cの各相の出力電圧を合算した波形C’と、コンバータ回路Cの各相の出力電圧を合算した波形I’は、ほぼ同等の電圧波形である。入力フィルタF1の入力フィルタリアクトル3a~3cのインダクタンスL3a~L3cと、出力フィルタF2の出力フィルタリアクトル7a~7cのインダクタンスL7a~L7cは、通常同じ値であるため、Lac1=L3a/6と合成できる。同様に、F1の入力フィルタコンデンサ2a~2cのキャパシタンスC2a~C2cと、出力フィルタF2の出力フィルタコンデンサ8a~8cのキャパシタンスC8a~C8cは、同じ値であるため、Cac1=C2a×6と合成できる。直流フィルタF3についても、P側とN側のフィルタの値は同じであるため、直流フィルタリアクトル9a、9bのインダクタンスL9a、L9bはLdc1=L9a/2、直流フィルタF3の直流フィルタコンデンサ10a、10bのキャパシタンスC10a、C10bは、Cdc1=C10a×2と合成できる。
コンバータ回路Cの各相の出力電圧を合算した波形C’、または、インバータ回路Iの各相の出力電圧を合算した波形I’の電圧波形が、
図7に示す等価回路に印加されることで高調波電流が流れる。なお、高調波電流の大きさは、三相変調制御期間tr1、tr2、tr3によって異なる。
【0036】
図7に示す等価回路の第一共振周期T1を、入力フィルタF1と直流フィルタF3と出力フィルタF2の共振周期と定義する。具体的には第一共振周期T1は、以下の式で定義する。
【数1】
【0037】
図8は、直流回路Dから交流負荷92へ電力を供給する蓄電池動作時の高調波周波数に対する等価回路である。
図8に示すように、等価回路は、出力フィルタF2の出力フィルタコンデンサ8a~8cと出力フィルタリアクトル7a~7c、直流フィルタF3の直流フィルタリアクトル9a、9bと直流フィルタコンデンサ10a、10bから構成される。
図5に示したインバータ回路Iの各相の出力電圧を合算した波形が印加されることで、等価回路に高調波電流が流れる。
【0038】
図9は、
図8の等価回路を整理した等価回路である。出力フィルタF2の出力フィルタリアクトル7a~7cのインダクタンスL7a~L7cは、通常同じ値であるため、Lac2=L7a/3と合成できる。同様に、F2の出力フィルタコンデンサ8a~8cのキャパシタンスC8a~C8cは、同じ値であるため、Cac2=C8a×3と合成できる。直流フィルタF3についても、P側とN側のフィルタの値は、同じであるため、直流フィルタリアクトル9a、9bのインダクタンスL9a、L9bはLdc2=L9a/2、直流フィルタF3の直流フィルタコンデンサ10a、10bのキャパシタンスC10a、C10bは、Cdc2=C10a×2と合成できる。
インバータ回路Iの各相の出力電圧を合算した波形I’の電圧波形が、
図9に示す等価回路に印加されることで、高調波電流が流れる。なお、高調波電流の大きさは、三相変調制御期間tr1、tr2、tr3によって異なる。
【0039】
図9に示す等価回路の第二共振周期T2を、直流フィルタF3と出力フィルタF2の共振周期と定義する。具体的には第二共振周期T2は、以下の式で定義する。
【数2】
【0040】
図10は、本実施形態の比較対象として、三相変調制御期間tr1、tr2、tr3を0と設定した場合、通常動作時に直流フィルタF3に流れるリップル電流波形である。三相変調制御期間tr1、tr2、tr3を0と設定しているため、電力変換装置1は、三相変調方式でのPWM制御を行わず、二相変調方式でのPWM制御のみを行う。
【0041】
図11は、本実施形態において、三相変調制御期間tr1、tr2、tr3をフィルタ回路の第一共振周期T1の1/2と設定した場合、通常動作で直流フィルタF3に流れるリップル電流波形である。
【0042】
図10、
図11を比較すると、二相変調方式でのPWM制御のみを行う場合よりも、二相変調の相を切り替える間に、三相変調方式でのPWM制御を行う場合の方が、二相変調の相を切り替える間に直流フィルタF3に流れるリップル電流を1/2以下に抑制できることが分かる。
【0043】
図12は、三相変調制御期間tr1、tr2、tr3に対する通常動作時のリップル電流の大きさを示した図である。
図12に示すように、三相変調制御期間tr1、tr2、tr3をそれぞれフィルタ回路の第一共振周期T1の3/8以上、5/8以下に設定することで、二相変調の相を切り替える間に直流フィルタF3に流れるリップル電流を抑制できる。さらに、三相変調制御期間tr1、tr2、tr3をフィルタ回路の第一共振周期T1の1/2に設定することで、二相変調の相を切り替える間に直流フィルタF3に流れるリップル電流を最も抑制できる。
【0044】
図10~
図12では、通常動作において、二相変調の相を切り替える間に直流フィルタF3に流れるリップル電流特性を説明したが、蓄電池動作時でも同様のリップル電流特性となる。つまり、二相変調方式でのPWM制御のみ行う場合よりも、二相変調の相を切り替える間に、三相変調方式でのPWM制御を行う場合の方が、直流フィルタF3に流れるリップル電流を抑制できる。また、三相変調制御期間tr1、tr2、tr3をフィルタ回路の第二共振周期T2の3/8以上、5/8以下に設定することで、二相変調の相を切り替える間に直流フィルタF3に流れるリップル電流を抑制できる。さらに、三相変調制御期間tr1、tr2、tr3をフィルタ回路の第二共振周期T2の1/2に設定することで、二相変調の相を切り替える間に直流フィルタF3に流れるリップル電流を最も抑制できる。
【0045】
以上、本実施形態について説明をしたが、本実施形態に係る技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本実施形態に係る技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0046】
1:電力変換装置
2a~2c:入力フィルタコンデンサ
3a~3c:入力フィルタリアクトル
4a~4f:半導体スイッチング素子
5:平滑コンデンサ
6a~6f:半導体スイッチング素子
7a~7c:出力フィルタリアクトル
8a~8c:出力フィルタコンデンサ
9a、9b:直流フィルタリアクトル
10a、10b:直流フィルタコンデンサ
11:直流電源(蓄電池)
12:コンバータ制御部
13:インバータ制御部
121:コンバータ変調指令生成部
131:インバータ変調指令生成部
122:第1二相変調制御部
132:第2二相変調制御部
123:第1PWM信号生成部
133:第2PWM信号生成部
123a,133a:コンパレータ
123b,133b:キャリア信号生成部
124,134:二相変調用信号生成部
135:インバータ正弦波リファレンス生成部
31a~31c:装置入力端子
41a~41c:交流入力端子
42a~42b:直流出力端子
61a~61b:直流入力端子
62a~62c:交流出力端子
71a~71c:装置出力端子
91:三相交流電源
92:交流負荷
C:コンバータ回路
I:インバータ回路
D:直流回路
F1:入力フィルタ
F2:出力フィルタ
F3:直流フィルタ
Lac1、Ldc1、Lac2、Ldc2:合成インダクタンス
Cac1、Cdc1、Cac2、Cdc2:合成キャパシタンス
n1:中性線
S:平滑回路