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  • 特開-ロボット、及び、その制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129112
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ロボット、及び、その制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20230907BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/42 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033903
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
(72)【発明者】
【氏名】野田 善之
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
【Fターム(参考)】
3C269AB33
3C269BB09
3C269SA02
3C707BS10
3C707KS33
3C707KX06
3C707LS02
3C707LS15
3C707LU09
3C707LV19
(57)【要約】
【課題】より小さな力でより精密な動作を直接教示可能なロボットを実現する。
【解決手段】ロボット(1)は、ロボットハンド(11)、ロボットアーム(12)、力覚センサ(13)、制御装置(15)を備えている。制御装置(15)は、力覚センサ(13)により検出された力に応じて、ロボットハンド(11)の位置をアドミタンス制御により決定し、決定した位置にロボットハンド(11)を移動するようロボットアーム(12)に命令する。また、制御装置(15)は、ロボットアーム(12)への命令を教示データとして記録する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと、
前記ロボットアームに取り付けられたロボットハンドと、
前記ロボットハンドに作用する力を検出する力覚センサと、
前記力覚センサにより検出された力に応じて、前記ロボットハンドの位置をアドミタンス制御により決定し、決定した位置に前記ロボットハンドを移動するよう前記ロボットアームに命令すると共に、前記ロボットアームへの命令を教示データとして記録する制御装置と、を備えている、
ことを特徴とするロボット。
【請求項2】
操作装置を更に備え、
前記制御装置は、
第1の動作モードにおいて、前記力覚センサにより検出された3方向の力に応じて、前記ロボットハンドの3方向の位置をアドミタンス制御により決定し、
第2の動作モードにおいて、前記力覚センサにより検出された2方向の力に応じて、前記ロボットハンドの2方向の位置をアドミタンス制御により決定すると共に、前記操作装置に入力された操作量に応じて、前記ロボットハンドの残り1方向の位置を速度制御により決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1の動作モードにおいて、前記力覚センサにより検出された力F,F,Fと力感度α,α,αとを含む運動方程式を解くことによって、前記ロボットハンドの位置x,y,zを決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記運動方程式は、下記式(1)である、
ことを特徴とする請求項3に記載のロボット。
【数1】
ここで、m,m,mは、仮想質量を示す定数であり、c,c,cは、仮想粘性係数を表す定数である。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第2の動作モードにおいて、前記力覚センサにより検出された力F,Fと力感度α,α,αとを含む第1の運動方程式を解くことによって、前記ロボットハンドの位置x,yを決定し、前記操作装置に入力された操作量θを含む第2の運動方程式を解くことによって、前記ロボットハンドの位置zを決定する、
ことを特徴とする請求項2~4の何れか一項に記載のロボット。
【請求項6】
前記第1の運動方程式は、下記式(2a)であり、前記第2の運動方程式は、下記式(2b)である、
ことを特徴とする請求項5に記載のロボット。
【数2】
【数3】
ここで、m,m,mは、仮想質量を示す定数であり、c,c,cは、仮想粘性係数を表す定数であり、Kは、操作量θを速度z’に変換する変換係数である。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第2の動作モードにおいて、前記力覚センサが検出した力の符号の反転回数に応じて、前記力感度α,αを減衰させる、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のロボット。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第2の動作モードにおいて、前記力覚センサが検出した力及び前記ロボットハンドの位置に応じて、前記ロボットハンドの前記1方向の速度が0になるように、前記ロボットハンドの前記1方向の位置を決定する、
ことを特徴とする請求項2~7の何れか一項に記載のロボット。
【請求項9】
前記操作装置は、前記ロボットアームに取り付けられたジョイスティックであり、前記操作量は、前記ジョイスティックの傾きである、
ことを特徴とする請求項2~8の何れか一項に記載のロボット。
【請求項10】
教示の対象となる動作は、第1部材の開口又は凹部に第2部材を圧入する動作である、
ことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載のロボット。
【請求項11】
ロボットアームと、前記ロボットアームに取り付けられたロボットハンドと、前記ロボットハンドに作用する力を検出する力覚センサと、を備えたロボットの制御方法であって、
前記力覚センサにより検出された力に応じて、前記ロボットハンドの位置をアドミタンス制御により決定し、決定した位置に前記ロボットハンドを移動するよう前記ロボットアームに命令すると共に、前記ロボットアームへの命令を教示データとして記録する制御工程を含んでいる、
ことを特徴とするロボットの制御方法。
【請求項12】
第1の動作モードにおいて、前記力覚センサにより検出された3方向の力に応じて、前記ロボットハンドの3方向の位置をアドミタンス制御により決定し、
第2の動作モードにおいて、前記力覚センサにより検出された2方向の力に応じて、前記ロボットハンドの2方向の位置をアドミタンス制御により決定すると共に、操作装置に入力された操作量に応じて、前記ロボットハンドの残り1方向の位置を速度制御により決定する、
ことを特徴とする請求項11に記載のロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームとロボットハンドとを備えたロボットに関する。また、そのようなロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロボットに動作を教示する教示方法のひとつとして、直接教示(ダイレクトティーチング)が用いられている。直接教示は、教示者がロボットハンド又はロボットアームを直接動かすことによって、ロボットに動作を教示する方法である。直接教示について開示した文献としては、例えば、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-018340号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の作業用ロボットにおいては、直接教示の際にロボットアームをインピーダンス制御(運動入力・力出力型制御)している。このため、教示者がロボットアーム又はロボットハンドを直接動かす際に、比較的大きな力が必要になる。また、各リンクの慣性の影響により、教示者の思い通りにロボットアームを動かすことが難しい。その結果、精密な動作をロボットに直接教示することが困難になる。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、より小さな力でより精密な動作を直接教示することが可能なロボットを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るロボットは、ロボットアームと、前記ロボットアームに取り付けられたロボットハンドと、前記ロボットハンドに作用する力を検出する力覚センサと、制御装置と、を備えたロボットである。制御装置は、前記力覚センサにより検出された力に応じて、前記ロボットハンドの位置をアドミタンス制御(力入力・運動出力型制御)により決定し、決定した位置に前記ロボットハンドを移動するよう前記ロボットアームに命令すると共に、前記ロボットアームへの命令を教示データとして記録する装置である。
【0007】
また、本発明に係るロボットの制御方法は、ロボットアームと、前記ロボットアームに取り付けられたロボットハンドと、前記ロボットハンドに作用する力を検出する力覚センサと、を備えたロボットの制御方法であり、制御工程を含んでいる。制御工程は、前記力覚センサにより検出された力に応じて、前記ロボットハンドの位置をアドミタンス制御(力入力・運動出力型制御)により決定し、決定した位置に前記ロボットハンドを移動するよう前記ロボットアームに命令すると共に、前記ロボットアームへの命令を教示データとして記録する工程である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、より小さい力でより精密な動作を直接教示可能なロボットを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットの構成を示す模式図である。
図2図1に示すロボットが備える制御装置の機能を示すブロック図である。
図3】アドミタンス制御部が力感度減衰機能を有さない場合に得られる、力覚センサが検出した、操作装置に入力された操作量、ロボットハンドの位置、及び、力感度の時間変化を示すグラフである。
図4】アドミタンス制御部が力感度減衰機能を有する場合に得られる、力覚センサが検出した、操作装置に入力された操作量、ロボットハンドの位置、及び、力感度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(ロボットの構成)
本発明の一実施形態に係るロボット1について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るロボット1の構成を示す模式図である。
【0011】
ロボット1は、任意の動作を直接教示することが可能なロボットである。本実施形態においては、ロボット1に直接教示する動作として、第1部材W1(例えば、金属カラー)の開口又は凹部に第2部材W2(例えば、金属ピン)を圧入する圧入動作を想定する。ただし、ロボット1に直接教示する動作は、任意であり、これに限定されない。
【0012】
ロボット1は、図1に示すように、ロボットハンド11と、ロボットアーム12と、力覚センサ13と、操作装置14と、制御装置15と、を備えている。
【0013】
ロボットハンド11は、ワーク(本実施形態においては第2部材W2)を把持するための機構である。本実施形態においては、ロボットハンド11として、チャックを用いている。ロボットアーム12は、ロボットハンド11を移動するための機構である。本実施形態においては、ロボットアーム12として、垂直多関節アームを用いている。
【0014】
ロボットハンド11は、力覚センサ13を介してロボットアーム12の先端に取り付けられている。力覚センサ13は、ロボットハンド11に作用する3方向(x、y、z軸方向)の力、特に、直接教示においてユーザがロボットハンド11を動かそうとする3方向の力を検出するためのセンサである。本実施形態においては、力覚センサ13として、6軸力覚センサを用いている。ただし、3方向の力を検出することが可能なセンサであれば、どのようなセンサであっても、力覚センサ13として利用することができる。
【0015】
また、ロボットアーム12の先端近傍には、操作装置14が取り付けられている。操作装置14は、ロボットハンド11の1方向(z軸方向)の速度、直接教示においてユーザがロボットハンド11を動かそうとする1方向の速度を指定する操作を受け付けるための装置である。本実施形態においては、操作装置14として、ジョイスティックを用いている。ただし、操作装置14は、1方向の速度を指定する操作を受け付ける可能な装置であれば、どのような装置であっても、操作装置14として利用することができる。
【0016】
制御装置15は、力覚センサ13が検出した力、及び、操作装置14に入力された操作量(本実施形態においてはジョイスティックの傾き)に応じてロボットハンド11の位置を決定し、決定した位置にロボットハンド11が移動するようロボットアーム12に命令する。そして、制御装置15は、ロボットアームへの命令を教示データとして記録する。これにより、教示(ティーチング)が実現される。本実施形態においては、制御装置15として、PC(Personal Computer)を用いている。ただし、後述する制御装置15の機能を実現できる装置であれば、どのような装置であっても、制御装置15として利用することができる。
【0017】
制御装置15は、第1の動作モード及び第2の動作モードの何れかにおいて動作する。ここで、第1の動作モードは、力覚センサ13が検出した3方向の力F,F,Fに応じて、ロボットハンド11の3方向の位置x,y,zをアドミタンス制御(力入力・運動出力型制御)により決定する動作モードである。第2の動作モードは、力覚センサ13が検出した2方向の力F,Fに応じて、ロボットハンド11の2方向の位置x,yをアドミタンス制御すると共に、操作装置14に入力された操作量θに応じて、ロボットハンド11の1方向の位置zを速度制御により決定するモードである。以下、制御装置15の機能について、詳細に説明する。
【0018】
(制御部の機能)
ロボット1が備える制御装置15の機能について、図2を参照して説明する。図2は、制御装置15の機能を示す機能ブロック図である。
【0019】
制御装置15は、アドミタンス制御部151と、乗算部152と、積分部153と、モードスイッチ154と、を備えている。制御装置15には、力覚センサ13が検出した3方向の力F,F,Fと、操作装置14に入力された操作量θ(例えば、ジョイスティックの傾き)と、が入力される。なお、力F,F,Fは、力覚センサ13が検出した力そのものであってもよいし、力覚センサ13が検出した力を不感帯で整形したものであってもよい。
【0020】
アドミタンス制御部151は、第1の動作モードにおいて、力覚センサ13が検出した3方向の力F,F,Fに応じて、ロボットハンド11の3方向の位置x,y,zをアドミタンス制御によって決定する。具体的には、下記の運動方程式(1)を解く(積分する)ことによって、ロボットハンド11の3方向の位置x,y,zを決定する。
【0021】
【数1】
【0022】
ここで、x’は、位置xの1階微分dx/dt(速度)を表し、x”は、位置xの2階微分dx/dt(加速度)を表す。また、y’は、位置yの1階微分dy/dt(速度)を表し、y”は、位置yの2階微分dy/dt(加速度)を表す。また、z’は、位置zの1階微分dz/dt(速度)を表し、z”は、位置zの2階微分dz/dt(加速度)を表す。また、m,m,mは、仮想質量を表す定数(例えば、10kg)である。また、c,c,cは、仮想粘性係数を表す定数(例えば、100kg/s)である。また、α,α,αは、力感度を示す定数(例えば、1)である。なお、位置xは、上記以外の運動方程式、例えば、x’=αを解くことによって算出してもよい。位置y及び位置zについても、同様である。
【0023】
また、アドミタンス制御部151は、第2の動作モードにおいて、力覚センサ13が検出した2方向の力F,Fに応じて、ロボットハンド11の2方向の位置x,yをアドミタンス制御によって決定する。具体的には、下記の運動方程式(2a)を解く(積分する)ことによって、ロボットハンド11の2方向の位置x,yを決定する。
【0024】
【数2】
【0025】
ここで、x’は、位置xの1階微分dx/dt(速度)を表し、x”は、位置xの2階微分dx/dt(加速度)を表す。また、y’は、位置yの1階微分dy/dt(速度)を表し、y”は、位置yの2階微分dy/dt(加速度)を表す。また、z’は、位置zの1階微分dz/dt(速度)を表す。また、m,mは、仮想質量を表す定数(例えば、10kg)である。また、c,cは、仮想粘性係数を表す定数(例えば、200kg/s)である。また、α,αは、力感度を示す定数(例えば、1)である。なお、位置xは、上記以外の運動方程式、例えば、x’=αを解くことによって算出してもよい。位置yについても、同様である。
【0026】
乗算部152及び積分部153は、第2の動作モードにおいて、操作装置14に入力された操作量θに応じて、ロボットハンド11の残り1方向の位置zを速度制御により決定する。具体的には、下記の運動方程式(2b)を解く(積分する)ことによって、ロボットハンド11の残り1方向の位置zを決定する。
【0027】
【数3】
【0028】
ここで、Kは、操作量θを速度z’に変換する変換係数(例えば、0.0005)である。なお、位置zは、上記以外の運動方程式、例えば、z”=-(c/m)z’+(α/m)θを解くことによって算出してもよい。
【0029】
モードスイッチ154は、操作装置14に入力された操作量θに応じて、動作モードを切り替えるためのスイッチである。具体的には、θ=0である場合、すなわち、z’=0である場合、動作モードを第1の動作モードに切り替え、θ≠0である場合、すなわち、z’≠0である場合、動作モードを第2の動作モードに切り替える。
【0030】
以上の構成によれば、第1の動作モードにおいて、力覚センサ13が検出した3方向の力F,F,Fに応じて、ロボットハンド11の3方向の位置x,y,zをアドミタンス制御により決定することができる。すなわち、第1の動作モードにおいては、ロボットハンド11を動かそうとするユーザの力を、制御装置15によるロボットアーム12の制御によってアシストすることができる。これにより、ユーザは、より小さい力でより精密な直接教示を行うことができる。
【0031】
ただし、ロボットハンド11を動かそうとするユーザの力に加えて、z軸方向の反力がワークからロボットハンド11に作用する場合がある。例えば、圧入作業においては、ロボットハンド11を動かそうとするユーザの力に加えて、z軸方向の反力が第2部材W2からのロボットハンド11に作用する。このような場合、3方向のアドミタンス制御を行う第1の動作モードにおいては、ユーザの望む位置にロボットハンド11を移動することが困難になる。
【0032】
これに対して、上記の構成によれば、第2の動作モードにおいて、力覚センサ13が検出した2方向の力F,Fに応じて、ロボットハンド11の2方向の位置x,yをアドミタンス制御により決定すると共に、操作装置14に入力された操作量θに応じて、ロボットハンド11の1方向の位置zを速度制御により決定することができる。したがって、z軸方向の反力がワークからロボットハンド11に作用する場合であっても、動作モードを第1の動作モードから第2の動作モードに切り替えることによって、ユーザの望む位置にロボットハンド11を移動することが容易になる。
【0033】
なお、第1の動作モードから第2の動作モードへの切り替えは、操作装置14の操作量θが0でなくなったことをトリガーとして生じる。例えば、操作装置14がジョイスティックである場合、ユーザがジョイスティックに触れ、ジョイスティックが傾き始めた時点で第1の動作モードから第2の動作モードへの切り替えが生じる。したがって、ユーザは、動作モードの切り替えを特に意識することなく、自然な操作で操作装置14を用いた制御に移行することができる。
【0034】
更に、制御装置15は、安全スイッチ155を備えている。安全スイッチ155は、第2の動作モードにおいて、力覚センサ13が検出した力F,F,F、及び、ロボットハンド11の位置zに応じて、ロボットハンド11の速度z’を0にする(z軸方向の動きを止める)ためのスイッチである。具体的には、z0を予め定められた定数として、z>z0であり、且つ、F≠0、F≠0、又はF≠0である場合、ロボットハンドの速度z’を0に設定する。ここで、z0は、例えば、第2部材W2の下面の高さと第1部材W1の上面の高さとが一致するときのロボットハンド11の位置である。
【0035】
以上の構成によれば、z>z0であるときに、ロボットハンド11に力が作用すると、操作装置14の操作量θに依らず、ロボットハンド11のz軸方向の速度z’が0になる。このため、例えば、第1部材W1と第2部材W2との間にユーザの手が挟まったときに、ユーザに怪我を負わせる可能性を低減することができる。なお、z≦z0であれば、ロボットハンド11に力が作用しても、ロボットハンド11のz軸方向の速度z’がKθになる。したがって、z軸方向の反力が第2部材W2からロボットハンド11に作用しても、第2部材W2の圧入作業を完遂することができる。
【0036】
(アドミタンス制御部の機能に関する補足)
アドミタンス制御部151は、第2の動作モードにおいて、ロボットハンド11に作用する力F,Fの符号の反転回数n,nに応じて、力感度α,αを減衰させる機能を有していることが好ましい。具体的には、下記の式(3)に従って、力感度α,αを減衰させる機能を有していることが好ましい。下記の式(3)において、rは、減衰率を表す1よりも大きい定数である。
【0037】
【数4】
【0038】
第1部材W1と第2部材W2との嵌め合いをする際に、圧入作業中にチャタリングが生じることがある。ここで、チャタリングとは、例えば、(1)第2部材W2の側面が第1部材W1のx軸正方向側の開口内壁に衝突してx軸負方向の力Fxを受け、(2)第2部材W2がx軸負方向に移動し、(3)第2部材W2の側面が第1部材W1のx軸負方向側の開口内壁に衝突してx軸正方向の力Fxを受け、(4)第2部材W2がx軸正方向に移動する、といった動作が繰り返されることを指す。これに対して、上記の構成によれば、力Fの符号が変化する度に力感度αを減衰させることができるので、チャタリングの発生を抑制することができる。
【0039】
図3は、アドミタンス制御部151が本機能を有さない場合に得られる、力覚センサ13が検出した力F,F,F、操作装置14に入力された操作量θ、ロボットハンド11の位置x,y,z、及び、力感度α,αの時間変化を示すグラフである。力感度α,αが一定であるため、力F,F,F及び位置yが小刻みに振動するチャタリングが生じていることが見て取れる。
【0040】
図4は、アドミタンス制御部151が本機能を有する場合に得られる、力覚センサ13が検出した力F,F,F、操作装置14に入力された操作量θ、ロボットハンド11の位置x,y,z、及び、力感度α,αの時間変化を示すグラフである。力感度α,αが急減衰するため、制御装置15が本機能を有さない場合に生じるチャタリングが抑制されていることが見て取れる。
【0041】
(付記事項)
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。上述した実施形態に含まれる各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1 ・・・ロボット
11・・・ロボットハンド
12・・・ロボットアーム
13・・・力覚センサ
14・・・操作装置
15・・・制御装置
図1
図2
図3
図4