(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129121
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】摺動用樹脂組成物及び摺動部材
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230907BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20230907BHJP
F16C 33/12 20060101ALI20230907BHJP
F16C 33/16 20060101ALI20230907BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K7/06
F16C33/12 A
F16C33/16
F16C33/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033923
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】武智 龍斗
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 葵
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕平
【テーマコード(参考)】
3J011
4J002
【Fターム(参考)】
3J011AA06
3J011DA01
3J011KA02
3J011KA03
3J011QA05
3J011SA05
3J011SC02
3J011SC14
3J011SC20
3J011SE02
3J011SE05
4J002AA001
4J002BD122
4J002BD142
4J002BD151
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4J002CC031
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4J002CD001
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4J002CH091
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4J002CM041
4J002CN011
4J002CN031
4J002CP032
4J002DA016
4J002FA046
4J002FD016
4J002GM05
(57)【要約】
【課題】ドライ条件下において、アルミニウム合金等の軟質な金属を相手材とした場合であっても、摺動性等に優れた摺動部材が得られる摺動用樹脂組成物等を提供する。
【解決手段】配合成分(a)の樹脂成分100重量部に対して、配合成分(b)としての、熱重量測定による5重量%減少温度が400~550℃の範囲内の値である未炭化炭素繊維を10~400重量部、配合成分(c)の潤滑用添加剤を10~80重量部配合してある摺動用樹脂組成物等である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記配合成分(a)~(c)を含有することを特徴とする摺動用樹脂組成物。
(a)樹脂成分:100重量部
(b)5重量%減少温度が400~550℃の未炭化炭素繊維:10~400重量部
(c)潤滑用添加剤:10~80重量部
【請求項2】
前記配合成分(b)の、JIS R 7606:2000に準拠して測定される引張弾性率を10~35GPaの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の摺動用樹脂組成物。
【請求項3】
前記配合成分(b)の、JIS R 7606:2000に準拠して測定される引張伸びを2~5%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の摺動用樹脂組成物。
【請求項4】
前記配合成分(b)の表面におけるXPS元素分析による炭素量を、全体量に対して、85~96重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の摺動用樹脂組成物。
【請求項5】
前記配合成分(b)/前記配合成分(c)の重量比率を0.5/1~30/1の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の摺動用樹脂組成物。
【請求項6】
前記配合成分(a)が、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリケトン樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、及び、不飽和ポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の摺動用樹脂組成物。
【請求項7】
下記配合成分(a)~(c)を含む摺動用樹脂組成物に由来することを特徴とする摺動部材。
(a)樹脂成分:100重量部
(b)5重量%減少温度が400~550℃の未炭化炭素繊維:10~400重量部
(c)潤滑用添加剤:10~80重量部
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動用樹脂組成物及び摺動部材に関する。
より具体的には、ドライ条件下において、アルミニウム合金等の軟質な金属を相手材とした場合であっても、良好な摺動性を有する摺動部材が得られる摺動用樹脂組成物、及びそのような摺動用樹脂組成物に由来してなる摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品、電気・電子製品、事務機器、更には水中ポンプ等の各種産業機器における摺動部には、所定の樹脂をベース樹脂とした摺動部材が多く使用されている。
例えば、従来の水中ポンプは、川や海からの揚水装置を初めとして、給湯機、床暖房機器、自動車のエンジン、インバータ、バッテリ、あるいは燃料電池等の水循環等の各種用途に用いられてきた。
かかる水中ポンプ(ウォータポンプ)の一例であるが、下記構成1)~5)を備えており、所定摺動部材(滑り軸受や、スラスト受部材)を含んで構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
1)羽根車
2)羽根車を固定するための軸
3)軸に対し、羽根車を回転自在に支承するための羽根車に固定された滑り軸受
4)滑り軸受のそれぞれの端面と摺動するスラスト受部材
5)羽根車を収納しポンプ室を形成するケーシング及びカバー
【0003】
そして、摺動部材である滑り軸受は、内径及び端面で荷重を受け、端面と同じ厚みを有する円筒状の軸受であり、直鎖型のポリフェニレンサルファイド樹脂をベース樹脂としてなる樹脂組成物に由来した射出成形品であった。
すなわち、所定ベース樹脂に対して、少なくとも炭素繊維と、ポリテトラフルオロエチレン樹脂又は黒鉛の少なくとも一つとを含む樹脂組成物に由来した射出成形品であり、しかも、炭素繊維については、1000~1500℃で焼成された炭化品であるという特徴があった。
又、羽根車の回転時における、滑り軸受と摺動するスラスト受部材との相対回転によって、循環水を滑り軸受の一方の端面側から軸受内径面側に吸引する吸引手段(溝)、及び、循環水を滑り軸受の軸受内径面側から他方の端面側に排出する排出手段(溝)を設け、摺動面に多くの水を循環供給するようにしていた。
【0004】
又、補強材として、本発明の未炭化炭素繊維とは異なる、所定の未炭化炭素質繊維を用いてなる摺動部材も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、所定形状を有し、下記配合成分1)~3)からなる複合体を、焼結することによって得られる焼結体からなる摺動部材である。
【0005】
例えば、原料ピッチを紡糸器に供給し、300~400℃に加熱した状態で不活性ガスによる加圧下にて、ノズルから押し出して原材料繊維を得て、次いで、得られた原材料繊維を、酸化性雰囲気中、150~500℃程度で0.5~5時間程度保持して不溶化してなる炭素繊維とし、当該炭素繊維を未炭化炭素質繊維として、所定量含有してなる摺動部材である。
1)550℃以下の温度で熱処理してなる未炭化炭素質繊維
2)ホウ素化合物等の無機粉末又は無機繊維
3)未炭化炭素質繊維、及びホウ素化合物等の無機粉末又は該無機繊維を埋設した自己焼結性を有する炭素質粉末
なお、未炭化炭素質繊維とは、通常の炭化処理の施されていない状態の炭素質繊維であって、例えば、550℃を越えない温度で熱処理(焼成)し、更に炭化する余地がある炭素質繊維を意味すると定義されている。
そして、特許文献2の実施例によれば、上記1)~3)からなる複合体を、いずれも常圧で非酸化性雰囲気中又は窒素ガス雰囲気中で1000℃まで昇温し一次焼結し、更に、同雰囲気中で1300℃、1700℃、又は2000℃まで昇温し二次焼結している。よって、特許文献2の未炭化炭素質繊維は、最終的には、実質的に1000℃以上の温度で熱処理されていることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許6639592号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開平3-237062号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された水中ポンプ(ウォータポンプ)の場合、ポンプ稼働初期においては、滑り軸受と軸、滑り軸受とスラスト受部材間には、摺動面を循環する水は存在せず、ドライ条件での摩擦となる。従って、滑り軸受には、ドライ条件下でも良好な摺動性を有することが要求される。
しかしながら、この滑り軸受は、摺動面に供給される水が存在すれば、水の吸引手段(溝)、排出手段(溝)によって、効果的に摺動面に水が供給され、良好な摺動性を示すものの、ドライ条件下では、摩擦特性、摩耗特性いずれも満足いくものではなかった。
更に、特許文献1に記載された水中ポンプ(ウォータポンプ)に用いられる摺動部材(滑り軸受等)は、所定樹脂に対して、強化繊維として、1000~1500℃で焼成された炭化品を用いることを特徴としていた。
従って、かかる摺動部材を、自動車部品、電気・電子製品、事務機器等の軸受等の摺動部材として、常にドライ条件下で使用するには、配合している炭素繊維(炭化品)により、相手材を損傷させてしまい、特にアルミニウム合金等の軟質金属を相手材とした場合には、その損傷がより顕著になるという問題があった。この問題は、炭素繊維として2000℃以上で焼成された黒鉛化品を用いても同様であった。
対策として、炭素繊維を使用しないことも考えられるが、その場合、使用条件によっては、摺動部材(滑り軸受)の強度が不足して、充分な耐摩耗性が得られないという問題があった。
【0008】
又、特許文献2に記載された摺動部材においては、極めて低温焼成してなる未炭化炭素質繊維を用いる必要があり、良好な摺動性を得ることが未だ困難であるという問題が見られた。
すなわち、例えば、不活性ガスによる加圧下に、原料ピッチを300~400℃でノズルから押し出して原材料繊維を得て、次いで、酸化性雰囲気中、150~500℃程度で0.5~5時間程度保持してなる未炭化炭素質繊維を用いる必要があった。
これは、自己焼結性を有する炭素質粉末との界面密着性を高めるためであり、最終的には、前述のように常圧で非酸化性雰囲気中又は窒素ガス雰囲気中で1000℃まで昇温し一次焼結し、更に、同雰囲気中で1300℃、1700℃、又は2000℃まで昇温し二次焼結しなければ所望の強度を得ることができない。
更には、特許文献2に記載された摺動部材は、炭素繊維による強化炭素複合材料、所謂C/Cコンポジットに関する発明であり、特許文献2に記載された未炭化炭素質繊維を樹脂組成物に配合することについては一切記載がなく、何ら考慮されていなかった。
【0009】
そこで、発明者らは鋭意検討し、摺動用樹脂組成物において、所定の未炭化炭素繊維を所定量配合することによって、かかる摺動用樹脂組成物から得られる摺動部材が、ドライ条件下において、相手材にアルミニウム合金等の軟質金属を用いた場合であっても、良好な摺動性を有することを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、配合成分(a)としての樹脂成分に対して、配合成分(b)としての未炭化炭素繊維、及び配合成分(c)としての潤滑用添加剤を、それぞれ所定割合となるように配合してなる、摩擦係数が低く、かつ、長期間にわたって摩耗量を少なくできる摺動部材が得られる摺動用樹脂組成物、及びそれに由来した摺動部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、下記配合成分(a)~(c)を有することを特徴とする摺動用樹脂組成物が提供され、上述した問題を解決することができる。
(a)樹脂成分:100重量部
(b)5重量%減少温度が400~550℃である未炭化炭素繊維:10~400重量部
(c)潤滑用添加剤:10~80重量部
このように、配合成分(a)である樹脂成分に対して、配合成分(b)の、所定条件下、熱重量測定によって得られる5重量%減少温度(以下、TG5と称する場合がある。)が所定の未炭化炭素繊維、及び配合成分(c)の潤滑用添加剤をそれぞれ所定割合で配合してなる摺動用樹脂組成物であれば、摺動部材に加工した場合に、摩擦係数が低く、かつ、長期間にわたって摩耗量を少なくできる摺動部材を得ることができる。
すなわち、本発明の摺動用樹脂組成物であれば、事務機器等の軸受等に加工して、用いた場合、ドライ条件下において、アルミニウム合金等の軟質な金属を相手材とした場合であっても、長期間にわたって、良好な摺動性を発揮することができる。
【0011】
又、本発明の摺動用樹脂組成物を構成するにあたり、配合成分(b)の、JIS R 7606:2000に準拠して測定される引張弾性率を10~35GPaの範囲内の値とすることが好ましい。
このように、配合成分(b)の引張弾性率を規定することによって、所定摺動部材に加工した場合に、摩擦係数及び摩耗量が所定値以下となる摺動用樹脂組成物を更に容易かつ安定的に提供することができる。
【0012】
又、本発明の摺動用樹脂組成物を構成するにあたり、配合成分(b)の、JIS R 7606:2000に準拠して測定される引張伸びを2~5%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように、配合成分(b)の引張伸びを規定することによって、所定摺動部材に加工した場合に、摩擦係数及び摩耗量を所定値以下としやすい摺動用樹脂組成物を更に容易かつ安定的に提供することができる。
【0013】
又、本発明の摺動用樹脂組成物を構成するにあたり、配合成分(b)の表面におけるXPS元素分析による炭素量を、全体量に対して、85~96重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように、配合成分(b)の表面におけるXPS元素分析による炭素量を所定範囲内の値に規定することによって、所定摺動部材に加工した場合に、より定量性をもって、優れた摺動性等を長期間に渡って発揮することができる。
【0014】
又、本発明の摺動用樹脂組成物を構成するにあたり、配合成分(b)/配合成分(c)の重量比率を0.5/1~30/1の範囲内の値とすることが好ましい。
このように配合成分(b)/配合成分(c)の重量比率を規定することによって、所定摺動部材に加工した場合に、更に優れた摺動性等を長期間に渡って発揮することができる。
【0015】
又、本発明の摺動用樹脂組成物を構成するにあたり、配合成分(a)が、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリケトン樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、及び、不飽和ポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
このように、配合成分(a)の種類を規定することによって、所定摺動部材に加工した場合に、良好な加工性及び機械的強度を有するとともに、摩擦係数及び摩耗量が所定値以下となりやすい摺動用樹脂組成物を更に容易かつ安定的に提供することができる。
なお、配合成分(a)として、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を使用した場合には、配合成分(c)である潤滑用添加剤は、本発明の摺動用樹脂組成物を構成するにあたり必須の配合成分ではなく、省略することができる。
【0016】
又、本発明の別の態様は、下記配合成分(a)~(c)を含む摺動用樹脂組成物に由来することを特徴とする摺動部材である。
(a)樹脂成分:100重量部
(b)5重量%減少温度が400~550℃である未炭化炭素繊維:10~400重量部
(c)潤滑用添加剤:10~80重量部
このように、配合成分(b)として、所定の未炭化炭素繊維等を所定量配合してなる摺動用樹脂組成物に由来し、所定加工された摺動部材であれば、摩擦係数が低く、かつ、長期間にわたって摩耗量を少なくできる。
すなわち、このような摺動部材であれば、水中ポンプ等の軸受等として、ドライ条件下において、アルミニウム合金等の軟質な金属を相手材とした場合であっても、長期間にわたって、良好な摺動性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)~(b)は、それぞれ炭素繊維の焼成温度と、摺動部材における摩擦係数及び摩耗量との関係を説明するために供する図である。
【
図2】
図2は、炭素繊維の焼成温度と、炭素繊維の5重量%減少温度(TG5)との関係を説明するために供する図である。
【
図3】
図3(a)~(b)は、それぞれ炭素繊維の焼成温度と、炭素繊維の引張弾性率及び引張伸びとの関係を説明するために供する図である。
【
図4】
図4は、炭素繊維の焼成温度と、炭素繊維の体積抵抗率(対数表記)との関係を説明するために供する図である。
【
図5】
図5(a)~(b)は、それぞれ未炭化炭素繊維の配合量と、摺動部材における摩擦係数及び摩耗量との関係を説明するために供する図である。
【
図6】
図6(a)~(b)は、それぞれ配合成分(b)である未炭化炭素繊維/配合成分(c)である潤滑用添加剤の重量比率と、摺動部材における摩擦係数及び摩耗量との関係を説明するために供する図である。
【
図7】
図7は、摺動部材を用いた複写機の構成を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、下記配合成分(a)~(c)を含有することを特徴とする摺動用樹脂組成物である。
(a)樹脂成分:100重量部
(b)5重量%減少温度が400~550℃である未炭化炭素繊維:10~400重量部
(c)潤滑用添加剤:10~80重量部
すなわち、
図1に示すように、摺動用樹脂組成物に由来した摺動部材における摩擦係数を制御すべく、
図2に示すように、所定条件下、熱重量測定装置(TGA)によって測定される、所定の5重量%減少温度(TG5)を有する未炭化炭素繊維を得て、それを配合成分(b)として、配合成分(a)である樹脂成分や、配合成分(c)である潤滑用添加剤に対して、所定量配合することによって得られる摺動用樹脂組成物である。
以下、第1の実施形態の摺動用樹脂組成物を構成する配合成分(a)~(c)等につき、適宜、図面を参照しながら、より具体的に説明する。
【0019】
1.配合成分(a)
(1)種類
配合成分(a)である樹脂成分の種類は特に制限されるものでなく、摺動部材に使用される公知の樹脂成分であれば好適に使用することができる。
より具体的には、公知の樹脂成分中、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルサルフォン樹脂(PES)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリケトン樹脂(PK)、熱硬化性フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)、及び、不飽和ポリエステル樹脂(UP)からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。
この理由は、これらの樹脂であれば、良好な加工性を有していることから、所定摺動部材に加工しやすく、更には摺動部材として必要とされる機械的強度を有しているためである。
従って、摩擦係数及び摩耗量が所定値以下に、調整しやすい摺動用樹脂組成物を更に容易かつ安定的に提供することができる。
又、特に上記の樹脂成分の中でも、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂がより好ましい。
【0020】
なお、配合成分(a)である樹脂成分は、主成分として用いられれば良く、その目安としては、例えば、樹脂成分の全体量を100重量%としたときに、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることが更に好ましい。
【0021】
又、配合成分(a)として、これらの樹脂中、ポリフェニレンサルファイド樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂の変性物も含む。以下、単に、PPS樹脂と称する場合がある。)が、最も好適である。
この理由は、PPS樹脂であれば、通常、結晶性の半透明な熱可塑性樹脂であって、融点が約280℃、ガラス転移点が93℃と高く、極めて高い剛性と、優れた耐熱性、寸法安定性、耐摩耗性、低吸水性等を有するためである。
しかも、PPS樹脂であれば、溶融粘度が低く、未炭化炭素繊維や潤滑用添加剤を多量に添加できる点で生産性に優れているためである。
その上、PPS樹脂は、その分子構造により、架橋型、リニア型、セミリニア型があるが、それぞれ一種単独又は二種以上の組み合わせとして、好適に使用できるためである。
そして、PPS樹脂の中でも、特に、異物が噛み込んだ状態のようなアブレシブ摩耗形態を考慮した滑り軸受とするためには、靭性のあるリニア型が好ましい。
【0022】
又、配合成分(a)として、ポリアミド樹脂を使用する場合、PA6(ポリアミド6、以下、同様に、略称で示す。)、PA11、PA12、PA66、PA610、PA4T、PA6T、PA6I、PA9T、PA10T、及び、PAM5Tからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。
【0023】
(2)配合量
又、配合成分(a)である樹脂成分の配合量は、得られる摺動部材の耐熱性、成形性、機械的強度等を考慮して定めることができるが、通常、摺動用樹脂組成物の全体量(100重量%)とした場合に、配合成分(a)の配合量を10~90重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる配合成分(a)の配合量が10重量%未満になると、配合成分(b)である未炭化炭素繊維(例えば、600~800℃の焼成品)の配合量が相対的に多くなり、そのため、摺動用樹脂組成物の溶融粘度が過度に高くなり、成形加工性を悪化させ、ひいては、優れた摺動性等を発揮する摺動部材を得ることが困難となる場合があるためである。
一方、かかる配合成分(a)の配合量が90重量%を超えると、配合成分(b)である未炭化炭素繊維や、配合成分(c)である潤滑用添加剤の配合量が相対的に減少して、得られる摺動部材の機械的強度等が著しく低下し、優れた摺動性を発揮できない場合があるためである。
従って、配合成分(a)の配合量を、摺動用樹脂組成物の全体量に対して、15~45重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、20~40重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0024】
2.配合成分(b)
(1)熱重量測定による5重量%減少温度
配合成分(b)である未炭化炭素繊維において、TGAを用いて、空気流量100ml/min、昇温速度5℃/minの条件にて測定される5重量%減少する温度(以下、TG5と称する場合がある。)が400~550℃の範囲内の値であることを特徴とする。
この理由は、かかるTG5が400℃未満になると、耐熱性や機械的強度等が過度に低下し、所定摺動部材に加工した場合に、耐久性等が著しく低下するためである。
一方、TG5が550℃を超えると、耐熱性や機械的強度等は向上するものの、所定摺動部材に加工した場合に、摩擦係数が増大するためである。
従って、かかるTG5を430~500℃の範囲内の値とすることがより好ましく、450~490℃の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、かかるTG5は、TGAを用い、得られる減量チャートにおいて、初期重量を100重量%として、それから5重量%減少する温度を目安として、測定することができる。
【0025】
又、かかる未炭化炭素繊維のTG5は、基本的に、焼成温度を調整することによって、所定範囲内の値に制限することができる。
すなわち、従来技術の特許文献1に記載された炭化品は、少なくとも1000℃以上、好ましくは1300~1500℃で、焼成してなる炭素繊維の場合、TG5が700℃を超えてしまうことが判明している。
又、従来技術の特許文献2に記載された未炭化炭素質繊維は、500℃以下の温度で焼成しているが、炭化度が相当低く、TG5が400℃未満になることが判明している。
従って、配合成分(b)である所定の未炭化炭素繊維を製造するに際して、通常、焼成温度を600~800℃の範囲内とすることが好ましいと言える。
【0026】
よって、配合成分(b)である所定の未炭化炭素繊維のTG5は、炭化程度につき、500℃以下の温度で焼成している未炭化炭素質繊維よりは高い一方、1000℃以上の温度で焼成している炭化品よりは低く、従来の炭素繊維と明確に区別される低温炭化物である。
すなわち、配合成分(b)の未炭化炭素繊維は、未炭化炭素質繊維(低温炭化物)や炭化品とは、後述するように、引張弾性率、引張伸び、XPSの表面元素分析(炭素量)、体積抵抗率、飽和水分率等において、大きな特性差が見られ、明確に区別することができる。
【0027】
ここで、
図2に言及し、炭素繊維(未炭化炭素繊維及びそれ以外の炭素繊維を含む。以下、同様である。)の焼成温度と、その熱分解温度の一つである、TGAによる5重量%減少温度(TG5)との関係を説明する。
すなわち、
図2の横軸には、炭素繊維の焼成温度(℃)が採ってあり、縦軸に、かかる炭素繊維のTG5の値(℃)が採って示してある。
そして、
図2中の特性曲線は、後述するように、焼成温度のみが異なる実施例1~3、及び比較例1~2に用いた炭素繊維のTG5に関する結果に基づくものである。
又、図中において、実施例1を実1とし、比較例1を比1と記載しているが、以下同様である。
かかる
図2中の特性曲線から理解されるように、炭素繊維の焼成温度が低いほど、TG5の値が正確に対応して低くなる傾向、すなわち、比例する傾向がある。
より具体的には、炭素繊維の焼成温度が1200℃を超えた場合、TG5は550℃を超えるが、炭素繊維の焼成温度が600~800℃の場合、TG5は400~550℃の範囲内の値であり、炭素繊維の焼成温度が600℃未満の場合、TG5は400℃未満となる場合がある。
よって、
図2に示す特性曲線の結果から判断して、炭素繊維の焼成温度を所定範囲に調整することにより、炭素繊維のTG5を、所定温度に、正確に制御できると言える。
【0028】
(2)形態
又、配合成分(b)である未炭化炭素繊維の平均繊維径(直径)としては、通常、30μm以下、好ましくは3~25μmの範囲内の値、より好ましくは5~20μmの範囲内の値であって、用途や使い勝手等に応じて、適宜定めることができる。
同様に、配合成分(b)の未炭化炭素繊維の平均長さは、通常、500μm以下の値、好ましくは50~450μmの範囲内の値、より好ましくは100~400μmの範囲内の値であるが、これについても、用途や使い勝手等に応じて、適宜定めることができる。
【0029】
(3)引張弾性率
又、配合成分(b)である未炭化炭素繊維の引張弾性率を、通常、10~35GPaの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる未炭化炭素繊維の引張弾性率が10GPa未満の値になると、所定摺動部材に加工した場合に、機械的強度や耐摩耗性が著しく低下したりする場合があるためである。
一方、かかる未炭化炭素繊維の引張弾性率が35GPaを超えると、得られる摺動部材の摩擦係数が増大する場合があるためである。
従って、配合成分(b)である未炭化炭素繊維の引張弾性率を、13~30GPaの範囲内の値とすることがより好ましく、16~25GPaの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、かかる未炭化炭素繊維の引張弾性率は、JIS R 7606:2000に準拠して測定することができる。
【0030】
ここで、
図3(a)に言及し、炭素繊維(未炭化炭素繊維及びそれ以外の炭素繊維を含む。)の焼成温度(℃)と、引張弾性率との関係を説明する。
すなわち、
図3(a)の横軸に、炭素繊維の焼成温度(℃)が採ってあり、縦軸に、かかる炭素繊維の引張弾性率の値が採って示してある。
そして、
図3(a)中の特性曲線は、後述するように、炭素繊維の焼成温度のみが異なる実施例1~3、及び比較例1~2に配合した炭素繊維の引張弾性率に基づくものである。
かかる
図3(a)中の特性曲線から理解されるように、炭素繊維の焼成温度が高いほど、炭素繊維の引張弾性率の値が著しく高くなる傾向がある。
【0031】
より具体的には、炭素繊維の焼成温度が600℃未満になると、引張弾性率は10GPa未満となり、炭素繊維の焼成温度が450℃の場合には、引張弾性率は1GPa未満の相当低い値となる。
又、炭素繊維の焼成温度が600~800℃であれば、引張弾性率は、少なくとも10GPa以上の値が得られ、他の製造条件(延伸条件や焼成時間)等を変えれば、最大35GPa程度の値が得られることが判明している。
更に、炭素繊維の焼成温度が1200℃を超えると、引張弾性率は35GPaを超えた値となる。
よって、炭素繊維の焼成温度を所定範囲に調整することにより、その炭素繊維の引張弾性率を、所望の範囲内の値に、確実に制御できると言える。
【0032】
(4)引張伸び
又、配合成分(b)である未炭化炭素繊維の引張伸びを、通常、2~5%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる未炭化炭素繊維の引張伸びが2%未満の値になると、得られる摺動部材の摩擦係数が増大する場合があるためである。
一方、かかる未炭化炭素繊維自体の引張伸びが5%を超えると、摺動部材に加工した場合に、機械的強度や耐摩耗性が著しく低下する場合があるためである。
従って、かかる引張伸びを、2.1~4%の範囲内の値とすることがより好ましく、2.2~3%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、かかる未炭化炭素繊維の引張伸びは、JIS R 7606:2000に準拠して測定することができる。
【0033】
ここで、
図3(b)に言及し、炭素繊維(未炭化炭素繊維及びそれ以外の炭素繊維を含む。)の焼成温度(℃)と、引張伸びとの関係を説明する。
すなわち、
図3(b)の横軸に、炭素繊維の焼成温度(℃)が採ってあり、縦軸に、かかる炭素繊維の引張伸びの値が採って示してある。
そして、
図3(b)中の特性曲線は、後述するように、焼成温度のみが異なる実施例1~3、及び比較例1~2に用いた炭素繊維の引張伸びに関する結果に基づくものである。
かかる
図3(b)に記載された特性曲線から理解されるように、炭素繊維の焼成温度(℃)が、少なくとも600℃未満の場合には、焼成温度が低いほど、炭素繊維の引張伸びの値が著しく小さくなる傾向がある。
より具体的には、炭素繊維の焼成温度が600℃未満になると、引張伸びは2%を大きく下回る値になる。
又、炭素繊維の焼成温度が600~800℃であれば、引張伸びは、少なくとも2%以上の値が得られ、他の製造条件(延伸条件や焼成時間)等を変えれば、最大5%の値が得られることが判明している。
更に、炭素繊維の焼成温度が800℃を超えると、引張伸びは2%未満の小さな値となる。
よって、炭素繊維の焼成温度を所定範囲に調整することにより、炭素繊維の引張伸びの値を、所望範囲内の値に、正確に制御できると言える。
【0034】
(5)XPS元素分析(炭素量)
又、配合成分(b)である未炭化炭素繊維の表面におけるXPS元素分析による炭素量を、全体量100重量%に対して、85~96重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる炭素量を所定範囲内の値に規定することによって、従来の炭化品や、未炭化炭素質繊維と異なり、所定摺動部材に加工した場合に、摩擦係数及び摩耗量が所定値以下となる摺動用樹脂組成物を更に容易かつ安定的に提供することができるためである。
【0035】
より具体的には、かかる炭素量が、85重量%未満の値になると、得られる摺動部材の機械的強度や耐摩耗性等が著しく低下したりする場合があるためである。
一方、かかる炭素量が、96重量%を超えた値になると、摩擦係数が増大する場合があるためである。
従って、かかる炭素量を、全体量に対して、86~95重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、88~94重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、かかる炭素量は、XPS元素分析に準拠して、炭素元素の検量線に基づき測定することができる。
【0036】
(6)体積抵抗率
又、配合成分(b)である未炭化炭素繊維の体積抵抗率を、通常、1×100~1×104Ω・cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる体積抵抗率を所定範囲内の値に規定することによって、所定摺動部材に加工した場合に、従来の炭化品や、未炭化炭素質繊維と異なり、電気絶縁性や帯電防止性等に優れた摺動部材を更に容易、かつ、定量性をもって安定的に提供することができるためである。
【0037】
より具体的には、かかる体積抵抗率が、1×100Ω・cm未満の値になると、帯電防止性が良好となるが、摺動部材における電気絶縁性が不十分となって、外部にスパークする等の問題が生じる場合があるためである。
一方、かかる体積抵抗率が、1×104Ω・cmを超えた値になると、電気絶縁性が良好となるが、逆に、摺動部材に静電気がたまってしまい、帯電防止性が不十分となる場合があるためである。
従って、かかる体積抵抗率を、5×100~5×103Ω・cmの範囲内の値とすることがより好ましく、1×101~1×103Ω・cmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、かかる体積抵抗率は、四端子法に準拠して、市販のデジタルボルトメーター等を用いて測定することができる。
【0038】
ここで、
図4に言及し、炭素繊維(未炭化炭素繊維及びそれ以外の炭素繊維を含む。)の焼成温度と、体積抵抗率との関係を説明する。
すなわち、
図4の横軸に、炭素繊維の焼成温度(℃)が採ってあり、縦軸に、かかる炭素繊維の体積抵抗率の値(Ω・cm)が対数表記で採って示してある。
そして、
図4中の特性曲線は、後述するように、配合成分(a)~(c)の種類が同一であって、焼成温度のみが異なる実施例1~3、及び比較例1~2に用いた炭素繊維の体積抵抗率に基づくものである。
かかる
図4中の特性曲線から理解されるように、炭素繊維の焼成温度(℃)が高いほど、体積抵抗率が急激に低くなる傾向がある。
【0039】
より具体的には、炭素繊維の焼成温度が600℃未満になると、体積抵抗率は1×104Ω・cmを大きく超える値になる。
又、炭素繊維の焼成温度が600~800℃であれば、体積抵抗率として、1×100~1×104Ω・cmの範囲内の値が得られる。
更に、炭素繊維の焼成温度が1200℃を超えると、体積抵抗率は1×10-1Ω・cm未満の小さな値となる。
よって、炭素繊維の焼成温度を所定範囲に調整することにより、体積抵抗率の値を所定範囲内の値に正確に制御でき、ひいては、取り扱いが容易になり、更には、所定の摺動部材において、所望の帯電防止性等が得られると言える。
【0040】
(7)飽和水分率
又、配合成分(b)である未炭化炭素繊維の飽和水分率は、プラスチックにおける吸水率の求め方を規定しているJIS K 7209:2000に準拠して測定することができるが、通常、かかる未炭化炭素繊維の飽和水分率を、1~8重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる未炭化炭素繊維の飽和水分率を所定範囲内の値に規定することによって、所定摺動部材に加工し、事務機器用軸受等に用いた場合に、長期間にわたって、優れた摺動性等を更に容易かつ、定量性をもって得ることができるためである。
【0041】
より具体的には、かかる飽和水分率が、1重量%未満の値になると、使用可能な未炭化炭素繊維の種類や配合量等が制限され、所定の摺動部材の製造上、生産効率が過度に低下する場合がある。
一方、かかる飽和水分率が、8重量%を超えた値になると、吸水による寸法変化が大きくなり、寸法精度の維持が困難になる場合があるためである。
従って、かかる飽和水分率を1.5~7重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、2~6重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、かかる未炭化炭素繊維の飽和水分率は、上述したように、JIS K 7209:2000に準拠して測定されるが、初期重量に対する、吸収した水分による増加重量の割合として測定することができる。
【0042】
(8)配合量
又、配合成分(b)である未炭化炭素繊維の配合量を、通常、配合成分(a)である樹脂成分100重量部に対して、10~400重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、配合成分(b)である未炭化炭素繊維の配合量を所定範囲内の値に規定することによって、所定摺動部材に加工した場合に、摩擦係数及び摩耗量が所定値以下となる摺動用樹脂組成物を更に容易かつ安定的に提供することができるためである。
より具体的には、かかる未炭化炭素繊維の配合量が、10重量部未満の値になると、所定摺動部材に加工した場合に、摩擦係数が増大するとともに、耐摩耗性が低下し、摩耗量が増大したりする場合があるためである。
一方、かかる未炭化炭素繊維の配合量が、400重量部を超えた値になると、摺動用樹脂組成物を所定摺動部材に加工した場合に、摩擦係数の値を所定範囲内に調整することが困難になって、摩耗量が増大したり、摺動部材に加工する際の成形加工性が著しく低下したりする場合があるためである。
従って、かかる未炭化炭素繊維の配合量を30~300重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、50~200重量部の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0043】
ここで、
図5(a)に言及し、未炭化炭素繊維の配合量と、摺動部材に加工した場合の摩擦係数との関係を説明する。
すなわち、
図5(a)の横軸には、配合成分(a)である樹脂成分100重量部に対する、未炭化炭素繊維の配合量(重量部)が採ってあり、縦軸に、後述する実施例1等に準拠し、摺動部材に加工した場合の摩擦係数(-)が採って示してある。
そして、
図5(a)中の特性曲線は、後述するように、配合成分(a)~(c)の種類が同一である、実施例1、4~7、及び比較例3~4の摩擦係数に関する結果に基づくものである。
かかる
図5(a)に記載された特性曲線から理解されるように、未炭化炭素繊維の配合量が多くなるにつれて、摩擦係数は一旦減少し、その後、増大する傾向がある。
より具体的には、配合成分(a)である樹脂成分100重量部に対して、未炭化炭素繊維の配合量が、10重量部未満になると、摩擦係数は0.4を超えた値となるが、10~400重量部程度であれば、諸条件に起因して多少のばらつきが見られるが、摩擦係数は、0.4以下程度の値が得られている。
一方、未炭化炭素繊維の配合量が400重量部を超えると、摩擦係数は再び0.4を超える値となり、450重量部では0.6程度となる。
【0044】
次いで、
図5(b)に言及し、未炭化炭素繊維の配合量と、摺動部材に加工した場合の摩耗量との関係を説明する。
すなわち、
図5(b)の横軸には、未炭化炭素繊維の配合量(重量部)が採ってあり、縦軸に、後述する実施例1等に準拠し、摺動部材に加工した場合の摩耗量(μm)が採って示してある。
そして、
図5(b)中の特性曲線は、
図5(a)と同様に、実施例1、4~7、及び比較例3~4の摩擦係数に関する結果に基づくものである。
かかる
図5(b)に記載された特性曲線から理解されるように、未炭化炭素繊維の配合量が多くなるにつれて、摩耗量は一旦減少し、その後、増大する傾向がある。
より具体的には、配合成分(a)である樹脂成分100重量部に対して、未炭化炭素繊維の配合量が10重量部未満になると、摩耗量は100μmを超えた値となるが、10~400重量部程度であれば、諸条件に起因して多少のばらつきが見られるが、摩耗量は100μm以下程度の値が得られている。
一方、未炭化炭素繊維の配合量が400重量部を超えると、摩耗量は再び100μmを超える値となり、450重量部では230μm程度となる。
従って、未炭化炭素繊維の配合量を10~400重量部の範囲内の値に調整することによって、加工して得られた摺動部材において、優れた摺動性、すなわち、低い摩擦係数や少ない摩耗量を得ることができる。
【0045】
3.配合成分(c)
(1)種類
又、配合成分(c)として、配合成分(a)の樹脂成分には含まれない化合物であって、潤滑効果等を発揮する潤滑用添加剤を配合することを特徴とする。
この理由は、このような潤滑用添加剤を配合することによって、摺動用樹脂組成物を構成する配合成分(a)~配合成分(b)と相まって、加工して得られる摺動部材における摺動性等を著しく向上させることができるためである。
そして、かかる潤滑用添加剤の種類としては、所定の潤滑効果を発揮する化合物であれば特に制限されるものではないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、パーフルオロエチレン-プロペンコポリマー(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、シリコーングリース、シリコーンオイル、シリコーンコンパウンド等の少なくとも一つであることが好ましい。
【0046】
特に、PTFEであれば、摩擦係数が低く、良好な耐摩耗性も発揮できるためである。又、配合成分(a)の樹脂成分として、例えば、PPS樹脂に対して、比較的広範囲の配合量であっても、均一に混合分散できるためである。
すなわち、PTFEを用いる場合、平均粒径(レーザー回折法によるD50)を1~50μmの範囲内の値とすることが好ましく、3~20μmの範囲内の値とすることがより好ましく、5~10μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0047】
(2)配合量1
又、配合成分(c)である潤滑用添加剤の配合量を、通常、配合成分(a)である樹脂成分100重量部に対して、10~80重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる潤滑用添加剤の配合量が、10重量部未満の値になると、摺動用樹脂組成物に添加しても、潤滑性付与という添加効果が発現しない場合があるためである。
一方、かかる潤滑用添加剤の配合量が、80重量部を超えた値になると、加工して得られる摺動部材の機械的強度や耐摩耗性が著しく低下する場合があるためである。
従って、かかる潤滑用添加剤の配合量を、配合成分(a)である樹脂成分100重量部に対して、15~60重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、20~40重量部の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0048】
(2)配合量2
又、配合成分(c)である潤滑用添加剤の配合量を、配合成分(b)である未炭化炭素繊維の配合量との関係で、定めることも好ましい。
より具体的には、配合成分(b)/配合成分(c)の重量比率(以下、単に、配合量の比率b/cと称する場合がある。)を0.5/1~30/1の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、配合量の比率b/cを規定することによって、所定摺動部材に加工した場合に、更に容易に、優れた摺動性等を長期間に渡って発揮することができるためである。
より具体的には、配合量の比率b/cが、0.5/1未満の値になると、摺動部材に加工した場合に、摩擦係数及び摩耗量等を所定数値範囲に調整するのが困難となる場合があるためである。
一方、配合量の比率b/cが、30/1超の値になると、摺動部材に加工した場合に、少なくとも摩耗量を所定数値範囲に調整するのが困難となる場合があるためである。
従って、配合量の比率b/cを、1/1~20/1の範囲内の値とすることがより好ましく、1.5/1~10/1の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0049】
ここで、
図6(a)を参照して、潤滑用添加剤の配合量に関し、配合量の比率b/cと、摩擦係数と、の関係を説明する。
すなわち、
図6(a)の横軸には、配合量の比率である配合成分(b)/配合成分(c)(-)が採ってあり、縦軸に、後述する実施例1等に準拠し、摺動部材に加工した場合に得られる摩擦係数(-)が採って示してある。
そして、
図6(a)の特性曲線の各データは、後述するように、配合成分(a)~(c)の種類が同一であって、配合量の比率b/cが異なる実施例1、4~7及び比較例3~4の摺動部材の摩擦係数に基づくものである。
かかる
図6(a)中の特性曲線から理解されるように、全体的に見れば、配合量の比率b/cの値が大きいほど、摩擦係数が増大する傾向がある。
但し、配合量の比率b/cの値が過度に小さくなっても、摩擦係数が逆に、若干増大する傾向がある。
より具体的には、かかる配合量の比率b/cが0/1付近では、摩擦係数は0.4を超える値となるが、0.5/1以上であれば、摩擦係数は0.4以下の値である。
そして、かかる配合量の比率b/cが更に40/1を超えると、摩擦係数は、0.4を超える値が得られている。
【0050】
次いで、
図6(b)を参照して、潤滑用添加剤の配合量に関し、配合量の比率b/cと、摩耗量と、の関係を説明する。
すなわち、
図6(b)の横軸には、配合量の比率である配合成分(b)/配合成分(c)(-)が採ってあり、縦軸に、後述する実施例1等に準拠し、摺動部材に加工した場合に、所定条件下での摩耗量(μm)が採って示してある。
そして、
図6(b)の特性曲線の各データは、
図6(a)と同様に、実施例1、4~7及び比較例3~4の摺動部材における、摩耗量に基づくものである。
かかる
図6(b)中の特性曲線から理解されるように、全体的に見れば、配合量の比率b/cの値が大きいほど、摩耗量が増大する傾向がある。
但し、かかる配合量の比率b/cの値が過度に小さくなっても、摩耗量が逆に、若干増大する傾向がある。
より具体的には、かかる配合量の比率b/cが0/1付近では、摩耗量は100μmを超える値となるが、0.5/1以上であれば、摩耗量は100μm以下の値である。
そして、かかる配合量の比率b/cが更に30/1を超えると、摩耗量は100μmを超える値が得られている。
従って、
図6(a)及び
図6(b)から、配合量の比率b/cが0.5/1~30/1の範囲内になるように、配合成分(c)である潤滑用添加剤の配合量を定めれば、加工して得られる摺動部材における摩擦係数及び摩耗量を、より精度よく、所望範囲に調整できることが理解される。
【0051】
4.配合成分(d)
(1)種類
又、配合成分(d)として、発明の目的達成の範囲において、無機材料を配合することも好ましい。
この理由は、配合成分(d)として、無機材料を配合することによって、所定加工して得られる摺動部材において、機械的強度や熱的特性を調整できるためである。
ここで、配合成分(d)である無機材料の種類は特に制限されるものではないが、モース硬度が6以下となる無機材料を配合することが好ましい。
より具体的には、マイカ、タルク、黒鉛、石膏、カオリナイト、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の少なくとも一つを配合することが好ましい。
この理由は、これらの無機材料であれば、モース硬度が6以下と硬度が低いため、摺動部材とした際に、相手材との摺動抵抗を減らすことができ、摩擦係数を低く抑えることができるためである。
又、これら無機材料のうち、モース硬度が4未満であるタルクやマイカ、あるいはその混合物(例えば、タルク/マイカの混合重量比:90/10~10/90)であれば、比較的少量の配合量であっても、良好な摺動性等を発揮できることから、より好適であると言える。
更に言えば、配合成分(d)が、タルク(含水珪酸マグネシウム:Mg3Si4O10(OH)2を主成分とした鉱物)であれば、比較的安価であって、配合成分(a)である樹脂成分に対して、均一に混合できることから好適である。
しかも、配合成分(d)として、タルク、或いは、上述したタルク/マイカの混合物であれば、見掛け密度が比較的均一で、かつ、その値が比較的低いという特徴がある。
より具体的には、タルク等の場合、JIS K 5101-12:2004に準拠して測定される見掛け密度を0.1~0.8g/mlの範囲内の値とすることが好ましく、0.2~0.7g/mlの範囲内の値とすることがより好ましく、0.3~0.6g/mlの範囲内の値とすることが更に好ましい。
その上、これらの無機材料であれば、射出成形や圧縮成形等によって、摺動部材を製造する際にも、所定の流動性を妨げることなく、平滑な表面が得られることから、更に好適であると言える。
【0052】
又、配合成分(d)として無機材料を配合する場合、JIS Z 8825:2013に準拠して測定される、その無機材料の平均粒径(例えば、レーザー回折法によるD50、以下、同様である。)を1~180μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる平均粒径が1μm未満になると、凝集しやすくなって、取り扱いが困難になるばかりか、PPS樹脂等の樹脂成分に対して、均一に混合することが困難となる場合があるためである。
一方、かかる平均粒径が180μmを超えると、射出成形や圧縮成形等によって、摺動部材を製造する際に、平滑な表面が得られにくくなる場合があるためである。
従って、配合成分(d)として、タルク等の無機材料を用いた場合、その平均粒径を10~110μmの範囲内の値とすることがより好ましく、15~40μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0053】
(2)配合量
又、配合成分(d)として、無機材料を配合する場合、通常、配合成分(a)である樹脂成分100重量部に対して、配合成分(d)の配合量を100重量部以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる配合成分(d)の配合量が、100重量部を超えた値になると、耐摩耗性が低下する場合があるためである。
但し、配合成分(d)の配合量が過度に少ないと、機械的強度や熱的特性を微妙に調整することが困難となる場合がある。
従って、かかる配合成分(d)として、無機材料を配合する場合、その配合量を、配合成分(a)の樹脂成分100重量部に対して、0.01~80重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.1~50重量部未満の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0054】
5.その他の配合成分(e)
(1)種類
配合成分(e)として、上述した配合成分(a)~(d)以外の化合物であって、各種目的を達成するための各種添加物を配合することも好ましい。
例えば、摩擦特性を更に向上させるために、変性ポリオレフィン樹脂、鉱油、エステル油、シリコーン油等の潤滑油、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、エステルワックス、部分けん化ワックス等のワックス、黒鉛、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二硫化タングステン等の固体潤滑剤の少なくとも一つを配合することが好ましい。
特に、酸化ポリエチレンワックスの中でも、融点が120℃以上の酸化ポリエチレンワックスであれば、摺動部材の機械的強度や耐熱性等を維持しつつ、比較的少量配合であっても、各種配合成分の均一混合性に寄与し、更には、潤滑性、成形性等の調整が容易となることから好ましい。
一方、黒鉛であれば、その配合量や形態(平均粒径や鱗片状)を適宜変更することによって、潤滑性、成形性、導電性、隠ぺい性等の調整が比較的容易であるから、好適である。
【0055】
(2)配合量
又、配合成分(e)として、黒鉛等を配合する場合、その配合量を、通常、配合成分(a)である樹脂成分100重量部に対して、1~50重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる配合成分(e)の種類にもよるが、かかる配合量が、1重量部未満の値になると、配合効果、特に、潤滑性等の効果を発現しない場合があるためである。
一方、かかる配合成分(e)の配合量が、50重量部を超えた値になると、配合成分(a)である樹脂成分に対して、均一に混合することが困難となったり、潤滑性、成形性、導電性、隠ぺい性等の調整が逆に困難となったりする場合があるためである。
従って、かかる配合成分(e)の配合量を、配合成分(a)である樹脂成分100重量部に対して、1.5~30重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、2~10重量部の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0056】
6.製造方法
本発明の摺動用樹脂組成物は、当該組成物中の各種配合成分の配合量が所定範囲となるように秤量しつつ、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ポールミル又はタンブラーミキサー等の混合機で混合物として作成することが好ましい。
次いで、摺動用樹脂組成物の配合成分(a)である樹脂成分が熱可塑性樹脂の場合には、当該混合物を、ベント付一軸若しくは二軸スクリュー型押出機又は無ベント一軸若しくは二軸スクリュー型押出機に投入し、溶融混錬して紐状の成形物を成形したのち、該成形物を裁断して粒子状の成形材料ペレットとして作成することが好ましい。
このような成形材料ペレットとすることで、後述の摺動部材の製造方法において、射出成形装置等による成形手段によって円筒ブッシュや板状体等の所望の形状に成形することができる。
なお、摺動用樹脂組成物の配合成分(a)である樹脂成分が熱硬化性樹脂の場合には、上記混合機で混合物として作成した後、圧縮成形するために、当該混合物の状態で金型に投入することが好ましい。
こうすることで、金型に投入された摺動用樹脂組成物は、所定時間中、加熱プレス機で熱と圧力を加えて硬化させることができ、更に圧縮成形後に、乾燥炉にて所定時間乾燥させ、硬化反応を十分に進行させることで、所望の摺動部材を得ることができる。
【0057】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、下記配合成分(a)~(c)を含む摺動用樹脂組成物に由来することを特徴とする摺動部材である。
(a)樹脂成分:100重量部
(b)5重量%減少温度が400~550℃である未炭化炭素繊維:10~400重量部
(c)潤滑用添加剤:10~80重量部
【0058】
1.基本構成
第2の実施形態の摺動部材を用いる機械装置等として、事務機器や水中ポンプが例として挙げられる。
より具体的には、事務機器としての複写機の場合には、滑り軸受等の摺動部材を用いた各種ローラ部であれば、基本的に、いずれの構成も好適である。
例えば、典型的には、
図7示すような複写機130であって、1)画像形成ユニット131、2)排紙ユニット132、3)画像読取ユニット133、及び、4)原稿給送ユニット134を備えた複写機である。
そして、画像形成ユニット131では、回転体としての電子写真感光体141や転写ローラ145において、排紙ユニット132では、排紙用ローラ151において、原稿給送ユニット134では、給送用ローラ153において、摺動部材を好適に適用可能である。
又、水中ポンプの場合には、滑り軸受等の摺動部材を用いる水中ポンプであれば、基本的に、いずれの構成の水中ポンプも好適である。
従って、例えば、典型的には、1)羽根車、2)羽根車を固定するための軸、3)軸に対し、羽根車を回転自在に支承するための羽根車に固定された滑り軸受、4)滑り軸受のそれぞれの端面と摺動するスラスト受部材、5)羽根車を収納しポンプ室を形成するケーシング及びカバーを有する水中ポンプであれば、好適に適用可能である。
【0059】
2.摺動部材
(1)摺動用樹脂組成物
第2の実施形態の摺動部材に用いる摺動用樹脂組成物は、第1の実施形態で説明した内容と同様とすることができる。
従って、ここでの摺動用樹脂組成物の再度の説明は省略するものとする。
【0060】
(2)摺動用樹脂組成物に由来した摺動部材
未炭化炭素繊維を含み、摺動用樹脂組成物を経て得られる摺動部材の基本構成は、特に制限されるものでなく、各種変更が可能である。
すなわち、複写機や水中ポンプに備えられた摺動部材である滑り軸受は、少なくとも一つ、或いは複数個設けられている場合もあるが、基本構成として、いずれも内径及び端面で荷重を受け、端面と同じ厚みを有する円筒状の軸受又はフランジ付き軸受であることが好ましい。
そして、これらの摺動部材は、摺動部材とした場合の靭性を発揮できることから、リニア型のポリフェニレンサルファイド樹脂をベース樹脂としてなる摺動用樹脂組成物に由来した射出成形品であることが好ましい。
【0061】
3.製造方法
摺動用樹脂組成物に由来してなる摺動部材の製造方法は特に制限されるものではないが、典型的には、射出成形法や圧縮成形法を用いることが好ましい。
【0062】
(1)射出成形法
すなわち、射出成形法によれば、一例ではあるが、下記工程1)~5)によって、所定の摺動部材を製造することができる。
1)射出成形装置を準備する。
2)成形材料ペレットである摺動用樹脂組成物を秤量しつつ、射出成形装置のホッパー等に投入する。
3)射出成形装置の加熱装置によって、摺動用樹脂組成物を溶融状態とする。
4)射出成形装置を用いて、溶融状態の摺動用樹脂組成物を所定金型内に射出する。
5)冷却した後、所定の摺動部材を取出す。
【0063】
(2)圧縮成形法
金型成形法によれば、これも又一例であるが、下記工程1´)~4´)によって、所定の摺動部材を製造することができる。
1´)所定成形金型を準備する。
2´)混合機で混合された混合物としての摺動用樹脂組成物を、成形金型の所定場所に、投入する。
3´)一定時間、加熱プレス機で熱と圧力を加えて硬化させる。
4´)圧縮成形後に、乾燥炉にて所定時間乾燥後、所定の摺動部材を取出す。
【0064】
4.特性1(摩擦係数)
又、摺動部材としての摩擦係数は、JIS K 7218:1986に準じて、スラスト一方向回転法を用い、下記条件にて測定することができる。
すべり速度 :10m/min
荷重(面圧):10kg/cm2
試験時間 :8時間
試験片 :30mm(横幅)×30mm(縦幅)×3mm(厚さ)の角プレート
相手材 :中空円筒状(アルミニウム合金(A5052)製、内径20mm、
外径25.6mm、長さ30mm、表面粗さRa0.4)
潤滑 :無潤滑
そして、通常、摩擦係数が0.4以下であることが好適である。
この理由は、かかる摩擦係数が0.4を超えると、摺動部材における摺動性や耐久性が著しく低下する場合があるためである。
摺動部材の目的や形態等によるが、かかる摩擦係数として、0.1~0.35以下であることがより好ましく、0.15~0.3の範囲内の値であることが更に好ましい。
【0065】
ここで、再び、
図1(a)に言及し、炭素繊維(未炭化炭素繊維及びそれ以外の炭素繊維を含む。)の焼成温度と、それを含む摺動部材の摩擦係数との関係を説明する。
すなわち、
図1(a)の横軸には、炭素繊維の焼成温度(℃)が採ってあり、縦軸に、所定温度で焼成した炭素繊維を配合してなる摺動用樹脂組成物を、摺動部材に加工した場合の摩擦係数(-)との関係を示している。
そして、
図1(a)の特性曲線の各データは、後述するように、配合成分(a)~(c)の種類や配合量が、それぞれ同一であって、炭素繊維の焼成温度のみが異なる実施例1~3及び比較例1~2の摩擦係数に基づくものである。
かかる
図1(a)の特性曲線から理解されるように、炭素繊維の焼成温度(℃)が低いほど、摺動部材における摩擦係数が小さくなる傾向がある。
より具体的には、炭素繊維の焼成温度(℃)が1200℃程度であれば、摺動部材における摩擦係数を0.4以下の値に調整でき、炭素繊維の焼成温度(℃)が800℃程度であれば、摩擦係数を0.2程度の値に調整できることが理解される。
【0066】
5.特性2(耐久時間)
又、摺動部材としての摺動性の目安としての耐久時間は、上述したスラスト一方向回転法を用いて測定することができる。
そして、通常、良好な摺動性の目安として、かかる摺動部材としての耐久時間が、6時間以上であることが好適である。
但し、摺動部材の目的や形態等によるが、かかる耐久時間として、7時間以上であることがより好ましく、8時間以上であることが更に好ましい。
【0067】
6.特性3(摩耗量)
又、摺動部材としての摺動性の別な目安としての摩耗量は、上述したスラスト一方向回転法を用いて、同様条件で測定することができる。
すなわち、スラスト一方向回転法を、所定時間(8時間)行い、初期値から8時間経過した後の、摺動部材からなる試験片の厚さ変化を算出し、それを摩耗量とすることができる。
そして、通常、良好な摺動性の目安として、かかる試験片の摩耗量が、100μm以下であることが好適である。
但し、摺動部材の目的や形態等によるが、かかる試験片の摩耗量が80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。
なお、8時間経過する前に、試験片に溶融現象が確認された場合には、その時点でスラスト一方向回転法による試験を終了し、摺動部材からなる試験片の初期値からの厚さ変化を算出し、それを摩耗量とする。
【0068】
又、
図1(b)に言及し、炭素繊維(未炭化炭素繊維及びそれ以外の炭素繊維を含む。)の焼成温度と、それを含む摺動部材における、上述の摩耗量との関係を説明する。
すなわち、
図1(b)の横軸には、炭素繊維の焼成温度(℃)が採ってあり、縦軸に、所定温度で焼成した炭素繊維を配合してなる摺動用樹脂組成物を、摺動部材に加工した場合に、上述の測定条件下での摩耗量(μm)との関係を示している。
そして、
図1(b)の特性曲線の各データは、後述するように、配合成分(a)~(c)の種類や配合量が、それぞれ同一であって、炭素繊維の焼成温度のみが異なる実施例1~3及び比較例1~2の摩耗量に基づくものである。
かかる
図1(b)の特性曲線から理解されるように、炭素繊維の焼成温度(℃)が高くなるにつれて、摩耗量は一旦減少し、その後、増大する傾向がある。
より具体的には、炭素繊維の焼成温度(℃)が600℃未満になると、摩耗量は100μmを超えた値となり、600℃以上であると、100μm以下の値となる。
そして、炭素繊維の焼成温度(℃)が800℃を超えると、100μmを超えた値となり、1200℃では、600μmを超えた値となる。
従って、
図1(a)及び
図1(b)の特性曲線から、炭素繊維の焼成温度(℃)を所定範囲(600~800℃)に調整することによって、摺動部材に加工した場合に、低い摩擦係数及び摩耗量が得られ、ひいては、優れた摺動性が得られると言える。
【実施例0069】
以下、本発明を実施例に基づき、詳細に説明する。但し、特に理由なく、本発明の権利範囲が、実施例の記載によって狭められることはない。
又、実施例において用いた配合成分(a)である樹脂、配合成分(b)である未炭化炭素繊維、及び配合成分(c)である潤滑用添加剤等は、以下の通りである。
(A)配合成分(a)
(A-1)ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)(ポリプラスチックス社製、商品名「ジュラファイド」、PPS樹脂の種類:リニア型)
(A-2)ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、商品名「キータスパイア」)
(A-3)ポリエーテルサルフォン樹脂(PES樹脂)(住友化学社製、商品名「スミカエクセル」)
(A-4)ポリアミド樹脂(PA樹脂)(ユニチカ社製、商品名「ゼコット」)
(A-5)ポリアセタール樹脂(POM樹脂)(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名「ユピタール」)
(B)配合成分(b)
(B-1)等方性ピッチ系未炭化炭素繊維1(焼成温度:700℃、焼成時間:30分、平均直径:15μm、平均長さ:200μm、飽和水分率:5.8重量%)
(B-2)等方性ピッチ系未炭化炭素繊維2(焼成温度:650℃、焼成時間:30分、平均直径:15μm、平均長さ:200μm、飽和水分率:5.5重量%)
(B-3)等方性ピッチ系未炭化炭素繊維3(焼成温度:750℃、焼成時間:30分、平均直径:15μm、平均長さ:200μm、飽和水分率:6.5重量%)
(B´)配合成分(b)に相当する炭素繊維
(B´-1)等方性ピッチ系炭素繊維1(焼成温度:450℃、焼成時間:30分、平均直径:15μm、平均長さ:200μm、飽和水分率:8.5重量%)
(B´-2)等方性ピッチ系炭素繊維2(焼成温度:1300℃、焼成時間:30分、平均直径:15μm、平均長さ:200μm、飽和水分率:0.5重量%)
(C)配合成分(c)
(C-1)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(AGC社製、商品名「フルオン(登録商標)PTFE」、平均粒径:5μm)
(C-2)パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)(ダイキン工業社製、商品名「ネオフロン」、平均粒径:5μm)
(C-3)エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)(AGC社製、商品名「フルオン(登録商標)ETFE」、平均粒径:5μm)
【0070】
[実施例1]
1.摺動用樹脂組成物及び評価用部材の作成
(1)摺動用樹脂組成物の作成
攪拌機付きの所定容器内に、表1に示すように、配合成分(a)の樹脂成分であるA-1としてのPPS樹脂100重量部に対して、配合成分(b)の未炭化炭素繊維として、B-1を100重量部、配合成分(c)の潤滑用添加剤であるC-1を30重量部の割合となるように秤量して、収容した。
又、表2に示すように、配合成分(b)の未炭化炭素繊維のみにつき、TGAを用いて、TG5が450℃であることを別途確認した。
更に、配合成分(b)の未炭化炭素繊維の表面における炭素量につき、XPS元素分析に準じて、93重量%であることを別途確認した。
【0071】
次いで、配合成分(a)~(c)が均一になるように、攪拌機として容量が20Lのミキサーを用いて、回転速度400rpm、90秒の条件で攪拌し、摺動用樹脂組成物とした。
次いで、得られた摺動用樹脂組成物を、大気中で130℃に加熱してある加熱炉を用いて、乾燥させ、含水率が0.01重量%以下の摺動用樹脂組成物(粉末状)とした。
次いで、得られた摺動用樹脂組成物(粉末状)を、二軸押出機を用いて溶融混錬し、ペレット状の組成物とした。
【0072】
(2)評価用部材の作成
得られた摺動用樹脂組成物(ペレット状)を、射出成形装置を用いて所定金型内に充填した後、所定加圧条件(例えば、10~200MPa)で、30mm(横幅)×30mm(縦幅)×3mm(厚さ)のプレート状に加圧成形し、評価用部材を得た。
かかる評価用部材は、摺動用樹脂組成物から得られる摺動部材の各種特性を評価するための代替部材であり、後述する評価6~8において使用する。
【0073】
2.摺動用樹脂組成物及び摺動部材の評価
(1)評価1(焼成温度)
炭素繊維の焼成温度につき、下記評価基準に沿って、評価した。結果を表2に示す。
◎:650~750℃の温度である。
〇:600~650℃未満の温度、又は、750超~800℃の温度である。
△:500~600℃未満の温度、又は、800超~1000℃の温度である。
×:500℃未満の温度、又は、1000℃超の温度である。
【0074】
(2)評価2(引張弾性率)
炭素繊維の引張弾性率を、JIS R 7606:2000に準拠して測定し、下記評価基準に沿って、評価した。結果を表2に示す。
◎:15~25GPaである。
〇:10~15GPa未満、又は、25超~35GPaである。
△:1~10GPa未満、又は、35超~50GPaである。
×:1GPa未満、又は、50GPa超である。
【0075】
(3)評価3(引張伸び)
炭素繊維の引張伸びを、JIS R 7606:2000に準拠して測定し、下記評価基準に沿って、評価した。結果を表2に示す。
◎:2.3~4%である。
〇:2~2.3%未満、又は、4超~5%である。
△:1.5~2%未満、又は、5超~6%である。
×:1.5%未満、又は、6%超である。
【0076】
(4)評価4(体積抵抗率)
炭素繊維の体積抵抗率を、デジタルボルトメーターを用いて、四端子法により測定し、下記評価基準に沿って、評価した。結果を表2に示す。
◎:5×100~1×103Ω・cmである。
〇:1×100~5×100Ω・cm未満、又は、1×103超~1×104Ω・cmである。
△:1×10-1~1×100Ω・cm未満、又は、1×104超~1×105Ω・cmである。
×:1×10-1Ω・cm未満、又は、1×105Ω・cm超である。
【0077】
(5)評価5(TG5)
炭素繊維のTG5(5重量%減少温度)を、TGA(メトラー・トレド社製、製品名「TGA/SDTA851e」)を用いて、空気流量100ml/min、昇温速度5℃/minの条件にて測定し、下記評価基準に沿って、評価した。結果を表2に示す。
◎:430~500℃である。
〇:400~430℃未満、又は、500超~550℃である。
△:350~400℃未満、又は、550超~600℃である。
×:350℃未満、又は、600℃超である。
【0078】
(6)評価6(摩擦係数)
摺動部材の摺動性の目安の一つとしての摩擦係数を、評価用部材を対象に、JIS K 7218:1986に準じて、上述したスラスト一方向回転法を用い、上述した所定条件で測定した後、下記評価基準に沿って、評価した。結果を表2に示す。
◎:0.2以下である。
〇:0.3以下である。
△:0.4以下である。
×:0.4超である。
【0079】
(7)評価7(耐久時間)
摺動部材の摺動性の目安の一つとしての耐久時間を、評価用部材を対象に、JIS K 7218:1986に準じて、上述したスラスト一方向回転法を用いて、溶融現象が発生するまでの時間を測定し、下記評価基準に沿って、評価した。結果を表2に示す。
◎:溶融現象が、8時間にわたって観察されなかった。
〇:溶融現象が、6時間以上にわたって観察されなかった。
△:溶融現象が、1時間以上にわたって観察されなかった。
×:溶融現象が、1時間未満で観察された。
【0080】
(8)評価8(摩耗量)
摺動部材の摺動性の目安の一つとしての摩耗量を、評価用部材を対象に、JIS K 7218:1986に準じて、上述したスラスト一方向回転法を用い、8時間経過後に測定し、下記評価基準に沿って、摩耗量を評価した。結果を表2に示す。
なお、8時間経過する前に、評価用部材に溶融現象が確認された場合には、その時点でスラスト一方向回転法による試験を終了し、かかる評価用部材の初期値からの厚さ変化を算出し、それを摩耗量とした。
◎:50μm以下である。
〇:80μm以下である。
△:100μm以下である。
×:100μm超である。
【0081】
[実施例2~3]
実施例2~3においては、配合成分(b)である未炭化炭素繊維にB-2、B-3を用いた以外は、実施例1と同様に、摺動用樹脂組成物及び評価用部材を作成し、それぞれの評価を行った。得られた評価結果等を表1及び表2に示す。
なお、表2に示すように、配合成分(b)である未炭化炭素繊維のみにつき、TGAを用いて、TG5が、それぞれ440℃、460℃であることを別途確認した。
更に、配合成分(b)である未炭化炭素繊維の表面における炭素量につき、XPS元素分析に準じて、それぞれ90重量%及び95重量%であることを別途確認した。
【0082】
[実施例4~5]
実施例4~5においては、それぞれ配合成分(b)である未炭化炭素繊維の配合量を、配合成分(a)である樹脂成分100重量部に対して、50重量部及び200重量部に変えた以外は、実施例1と同様に、摺動用樹脂組成物及び評価用部材を作成し、評価を行った。得られた評価結果等を表1及び表2に示す。
【0083】
[実施例6~7]
実施例6~7においては、配合成分(c)である潤滑用添加剤の配合量を、配合成分(a)である樹脂成分100重量部に対して、60重量部及び80重量部にそれぞれ変えた以外は、実施例1と同様に、摺動用樹脂組成物及び評価用部材を作成し、それぞれの評価を行った。得られた評価結果等を表1及び表2に示す。
【0084】
[実施例8~11]
実施例8~11においては、配合成分(a)である樹脂成分の種類を、それぞれA-2、A-3、A-4、A-5に変えた以外は、実施例1と同様に、摺動用樹脂組成物及び評価用部材を作成し、それぞれの評価を行った。得られた評価結果等を表1及び表2に示す。
【0085】
[実施例12~13]
実施例12~13においては、配合成分(c)である潤滑用添加剤の種類を、それぞれC-2及びC-3に変えた以外は、実施例1と同様に、摺動用樹脂組成物及び評価用部材を作成し、それぞれの評価を行った。得られた評価結果等を表1及び表2に示す。
【0086】
[比較例1~2]
比較例1~2においては、配合成分(b)に相当する炭素繊維として、B´-1及びB´-2に、それぞれ変えた以外は、実施例1と同様に、摺動用樹脂組成物及び評価用部材を作成し、それぞれの評価を行った。得られた評価結果等を表1及び表2に示す。
なお、表2に示すように、配合成分(b)に相当する炭素繊維のみにつき、TGAを用いて、TG5が、それぞれ390℃、560℃であることを別途確認した。
更に、配合成分(b)に相当する炭素繊維の表面における炭素量につき、XPS元素分析に準じて、それぞれ84重量%及び97重量%であることを別途確認した。
【0087】
[比較例3~4]
比較例3~4においては、配合成分(a)である樹脂成分100重量部に対して、配合成分(b)である未炭化炭素繊維の配合量を、8重量部及び450重量部にそれぞれ変えるとともに、配合成分(c)である潤滑用添加剤の配合量を、100重量部及び8重量部にそれぞれ変えた以外は、実施例1と同様に、摺動用樹脂組成物及び評価用部材を作成し、それぞれの評価を行った。得られた評価結果等を表1及び表2に示す。
【0088】
【0089】
以上、詳述したように、本発明の摺動用樹脂組成物によれば、配合成分(a)である樹脂成分に対して、配合成分(b)である未炭化炭素繊維、及び配合成分(c)である潤滑用添加剤を、所定割合で含有することによって、摺動部材に加工した場合に、ドライ条件下において、良好な摺動性等を発揮できるようになった。
すなわち、摺動用樹脂組成物を経て、所定摺動部材に加工した場合に、摺動性としての摩擦係数及び摩耗量が所定値以下であって、良好な摺動性等を発揮する摺動部材が提供できるようになった。
より具体的には、相手材が、アルミニウム合金等の軟質な金属であっても、摩擦係数が低く、かつ、長時間にわたって摩耗量を少なくできるようになった。
なお、本発明の摺動用樹脂組成物を経て、加工された所定摺動部材であれば、上述の評価8において、相手材の摩耗量を20μm以下と極めて低い値に抑えられることが判明しており、相手材の損傷を最小限に抑えることができる。
よって、本発明の摺動用樹脂組成物によれば、各種摺動部材として、幅広い分野での使用が可能となり、特に、ドライ条件下での使用が常に想定される自動車部品、電気・電子製品、事務機器等の軸受等の摺動部材に加工して、好適に使用することができる。