(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129123
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】回転装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/131 20060101AFI20230907BHJP
F16F 15/134 20060101ALI20230907BHJP
F16F 15/16 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
F16F15/131
F16F15/134 D
F16F15/16 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033925
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】古志 和啓
(72)【発明者】
【氏名】吉本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】相川 将隆
(57)【要約】
【課題】回転変動を減衰できる回転装置を提供する。
【解決手段】回転装置は、第1回転体と、第2回転体と、ヒス発生機構と、を備える。第1回転体は、収容部を有する。第2回転体は、収容部の内壁面に対して間隔を空けて配置される。第2回転体は、第1回転体に対して相対回転可能に配置される。第2回転体は、収容部内に配置される。ヒステリシストルク発生機構は、粘性流体によって構成される。粘性流体は、収容部内に充填される。ヒステリシストルク発生機構は、ヒステリシストルクTを発生させる。ヒステリシストルクTは、粘性流体の代表半径R、第2回転体に接している粘性流体の面積A、粘性流体の見かけ粘度η、及び、第1回転体と第2回転体との相対角速度ωに比例する。ヒステリシストルクTは、第1回転体と第2回転体との軸方向の隙間Hに反比例する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部を有する第1回転体と、
前記収容部の内壁面に対して間隔を空けて、前記第1回転体に対して相対回転可能に前記収容部内に配置される第2回転体と、
前記収容部内に充填される粘性流体によって構成されるヒステリシストルク発生機構と、
を備え、
前記ヒステリシストルク発生機構は、前記粘性流体の代表半径、前記第2回転体に接している前記粘性流体の面積、前記粘性流体の見かけ粘度、及び、前記第1回転体と前記第2回転体との相対角速度に比例し、前記第1回転体と前記第2回転体との軸方向の隙間に反比例する、ヒステリシストルクを発生させる、
回転装置。
【請求項2】
前記粘性流体の粘性指数nは、0.43以上である、
請求項1に記載の回転装置。
【請求項3】
前記第1回転体は、
第1入力部と、
前記第1入力部に対して軸方向に間隔を空けて配置される第2入力部と、
を有し、
前記第2回転体は、軸方向において前記第1入力部と前記第2入力部との間に配置され、
前記粘性流体は、前記第1入力部と前記第2回転体との第1隙間、及び、前記第2入力部と前記第2回転体との第2隙間に配置され、
前記第2隙間の軸方向の寸法は、前記第1隙間の軸方向の寸法よりも小さくなるように構成される、
請求項1または請求項2に記載の回転装置。
【請求項4】
前記第1入力部と前記第2入力部との軸方向間に配置され、前記第1入力部及び前記第2入力部に対して相対回転可能な第3回転体をさらに備え、
前記第1入力部と前記第3回転体との第4隙間の軸方向の寸法は、前記第2入力部と前記第3回転体との第5隙間の軸方向の寸法と異なる、
請求項3に記載の回転装置。
【請求項5】
前記第2回転体は、前記第1回転体に対向する第1面、及び、前記第1回転体に対向しない第2面、を有し、
前記第2回転体は、前記第2面に肉抜き部を有する、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の回転装置。
【請求項6】
円周方向に前記第2回転体に隣接して配置される弾性部材をさらに備え、
前記第2回転体は、円周方向を向く面に前記弾性部材を収容する弾性部材収容部を有し、
前記肉抜き部の開口面積は、前記弾性部材収容部の開口面積よりも小さい、
請求項5に記載の回転装置。
【請求項7】
前記第2回転体は、円周方向を向く円周方向面を有し、
前記肉抜き部は、前記第2回転体の前記円周方向面に配置される、
請求項5または請求項6に記載の回転装置。
【請求項8】
前記肉抜き部は、円周方向に開口する凹部である、
請求項7に記載の回転装置。
【請求項9】
前記肉抜き部は、前記弾性部材収容部に対して径方向外側、又は、径方向内側に配置される、
請求項6に記載の回転装置。
【請求項10】
前記肉抜き部は、
前記弾性部材収容部に対して径方向外側に配置される第1肉抜き部と、
前記弾性部材収容部に対して径方向内側に配置される第2肉抜き部と、
を有し、
前記第1肉抜き部は、前記第2肉抜き部よりも大きい、
請求項9に記載の回転装置。
【請求項11】
前記粘性流体は、前記第1肉抜き部に配置され、前記第2肉抜き部には配置されない、
請求項10に記載の回転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両において、エンジンに取り付けられ、エンジンの回転変動を効果的に減衰するような回転装置として、例えば、デュアルマスフライホイール(DMF)が知られている。DMFは、エンジン始動時に共振が発生することを防止するためにヒステリシストルク発生機構を有する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のDMFでは、走行時において回転変動を十分に減衰できない場合がある。そこで、本発明の課題は、回転変動を減衰できる回転装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に係る回転装置は、第1回転体と、第2回転体と、ヒステリシストルク発生機構と、を備える。第1回転体は、収容部を有する。第2回転体は、収容部の内壁面に対して間隔を空けて配置される。第2回転体は、第1回転体に対して相対回転可能に配置される。第2回転体は、収容部内に配置される。ヒステリシストルク発生機構は、粘性流体によって構成される。粘性流体は、収容部内に充填される。ヒステリシストルク発生機構は、ヒステリシストルクTを発生させる。ヒステリシストルクTは、粘性流体の代表半径、第2回転体に接しているグリースの面積、粘性流体の見かけ粘度、及び、第1回転体と第2回転体との相対角速度に比例する。ヒステリシストルクTは、第1回転体と第2回転体との軸方向の隙間に反比例する。
【0006】
このヒステリシストルク発生機構では、相対角速度ωに基づいて粘性流体のせん断トルクを決めることができる。上記の通り、せん断トルクは、ヒステリシストルクとして用いることができる。そのため、本発明の回転装置は、相対角速度ωに基づいてヒステリシストルクを変化させることができる。これにより、本発明の回転装置は、エンジン始動時の共振発生時にはヒステリシストルクを発生させることができる。一方で、本発明の回転装置は、走行時にはヒステリシストルクを小さくすることができる。その結果、本発明の回転装置は、共振を抑制しながら回転変動を減衰できる。
【0007】
(2)好ましくは、粘性流体の粘性指数nは、0.43以上である。
【0008】
(3)好ましくは、第1回転体は、第1入力部と、第2入力部と、を有する。第2入力部は、第1入力部に対して軸方向に間隔を空けて配置される。第2回転体は、軸方向において第1入力部と第2入力部との間に配置される。粘性流体は、第1入力部と第2回転体との第1隙間、及び、第2入力部と第2回転体との第2隙間に配置される。第2隙間の軸方向の寸法は、第1隙間の軸方向の寸法よりも小さくなるように構成される。
【0009】
(4)好ましくは、回転装置は、第3回転体をさらに備える。第3回転体は、第1入力部と第2入力部との軸方向間に配置される。第3回転体は、第1入力部及び第2入力部に対して相対回転可能である。第1入力部と第3回転体との第4隙間の軸方向の寸法は、第2入力部と第3回転体との第5隙間の軸方向の寸法と異なる。
【0010】
(5)好ましくは、第2回転体は、第1面、及び、第2面、を有する。第1面は、第1回転体に対向する。第2面は、第1回転体に対向しない。第2回転体は、第2面に肉抜き部を有する。
【0011】
(6)好ましくは、回転装置は、弾性部材をさらに備える。弾性部材は、円周方向に第2回転体に隣接して配置される。第2回転体は、円周方向を向く面に弾性部材を収容する弾性部材収容部を有する。肉抜き部の開口面積は、弾性部材収容部の開口面積よりも小さい。
【0012】
(7)好ましくは、第2回転体は、円周方向を向く円周方向面を有する。肉抜き部は、第2回転体の円周方向面に配置される。
【0013】
(8)好ましくは、肉抜き部は、円周方向に開口する凹部である。
【0014】
(9)好ましくは、肉抜き部は、弾性部材収容部に対して径方向外側、又は、径方向内側に配置される。
【0015】
(10)好ましくは、肉抜き部は、第1肉抜き部と、第2肉抜き部と、を有する。第1肉抜き部は、弾性部材収容部に対して径方向外側に配置される。第2肉抜き部は、弾性部材収容部に対して径方向内側に配置される。第1肉抜き部は、第2肉抜き部よりも大きい。
【0016】
(11)好ましくは、粘性流体は、第1肉抜き部に配置され、第2肉抜き部には配置されない。
【発明の効果】
【0017】
以上のような本発明では、回転変動を減衰できる回転装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態による回転装置の断面図。
【
図4】回転装置の径方向外側からの部分断面斜視図。
【
図9A】変形例による端部用スプリングシートの側面図。
【
図9B】変形例による端部用スプリングシートの正面図。
【
図10A】
図9Aとは別の変形例による端部用スプリングシートの側面図。
【
図10B】
図9Aとは別の変形例による端部用スプリングシートの正面図。
【
図12】変形例における回転装置の外周側からの部分断面図。
【
図13】
図12とは別の変形例における回転装置の外周側からの部分断面図。
【
図14】スプリングシートと動力伝達部との関係を示す図。
【
図15】粘性指数とヒステリシストルク増加割合との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態によるデュアルマスフライホイール100(回転装置の一例であり、以下、単に「DMF100」と記載する)の断面図である。また、
図2はDMF100の正面図であり、部材の一部(例えばセカンダリフライホイール5の左半分等)を削除して示している。
図1において、O-O線は回転軸Oである。
図1において、DMF100の左側にエンジンが配置され、右側に電動機や変速装置等を含む駆動ユニットが配置される。
【0020】
なお、以下の説明において、軸方向とは、DMF100の回転軸Oが延びる方向である。
図1の左側を「軸方向第1側」、
図1の右側を「軸方向第2側」とする。また、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向である。径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。
【0021】
このDMF100は、図示しないエンジンのクランクシャフト(駆動源側の部材の一例)と駆動ユニットの入力軸との間に設けられ、回転変動を減衰するための装置である。DMF100は、プライマリフライホイール2(第1回転体の一例)と、複数のスプリングシート3(第2回転体の一例)と、ヒステリシストルク発生機構4を含む複数のダンパ部40と、を有している。DMF100はさらに、セカンダリフライホイール5を有している。
【0022】
[プライマリフライホイール2]
図1に示すように、プライマリフライホイール2は、エンジンからの動力が入力される。プライマリフライホイール2は、エンジン側の部材、例えばクランクシャフト(図示せず)に、固定される。
【0023】
プライマリフライホイール2は、回転軸Oまわりに回転可能に配置される。プライマリフライホイール2は、入力プレート21(第1入力部の一例)と、シールプレート22(第2入力部の一例)と、支持部材23と、収容部Sと、を有している。
【0024】
入力プレート21は、クランクシャフト及び支持部材23によって挟持され、ボルトによってクランクシャフトに固定される。
【0025】
図1及び
図2に示すように、入力プレート21は、第1本体部21aと、筒状部21bとを、有している。第1本体部21aは、回転軸Oまわりに回転可能に構成される。第1本体部21aは、実質的に円板状に形成されている。
【0026】
図3に示すように、第1本体部21aは、内周部21hと外周部21eとを有する。外周部21eは、第1本体部21aの内周部21hに対して、軸方向第1側に配置される(
図1参照)。
【0027】
また、第1本体部21aは、複数(例えば2個)の第1当接部21fを有している。各第1当接部21fは、円周方向においてダンパ部40に当接する部分である。各第1当接部21fは、第1本体部21aの外周部21eに設けられている。各第1当接部21fは、外周部21e上を径方向に延びている。各第1当接部21fは、軸方向の第2側に突出している(
図1参照)。
【0028】
図1及び
図2に示すように、筒状部21bは、軸方向に延びる円筒状である。筒状部21bは、第1本体部21aの外周端部から軸方向の第2側に延びている。筒状部21bは、第1本体部21aと一体に形成される。
【0029】
シールプレート22は、入力プレート21と一体回転可能に構成される。例えば、シールプレート22は、固定手段、例えば溶接によって、筒状部21bに固定される。
【0030】
シールプレート22は、回転軸Oまわりに回転可能に配置される。シールプレート22は、実質的に環状に形成されている。
【0031】
シールプレート22は、軸方向において、第1本体部21aに対して間隔を空けて配置されている。シールプレート22と第1本体部21aとの軸方向間には、スプリングシート3が配置される。詳細には、収容部Sに、スプリングシート3が配置される。
【0032】
収容部Sは、第1本体部21aの軸方向第2側の面と、筒状部21bの内周面と、シールプレート22の軸方向第1側の面と、によって画定される。
【0033】
シールプレート22は、複数(例えば2個)の第2当接部22dを有している。各第2当接部22dは、回転方向においてダンパ部40に当接する部分である。各第2当接部22dは、軸方向において、各第1当接部21fと間隔を空けて対向して配置される。
【0034】
図4に示すとおり、シールプレート22は、絞り部22jを有する。絞り部22jは、第2当接部22dの軸方向第2側の面に形成される。絞り部22jは、軸方向第2側に開口する凹部である。絞り部22jの底部は、第2当接部22dにおいて軸方向第1側に突出していてもよい。絞り部22jは、第1当接部21fの軸方向第1側の面に形成されてもよい。この場合絞り部22jは、軸方向第1側に開口する凹部である。
【0035】
支持部材23は、入力プレート21及びシールプレート22を支持する部材である。支持部材23は、入力プレート21と一体回転可能に、入力プレート21を支持する。また、支持部材23は、シールプレート22と一体回転可能に、シールプレート22を支持する。
【0036】
支持部材23は、回転軸Oまわりに回転可能に構成される。支持部材23は、実質的に筒状に形成されている。
【0037】
[セカンダリフライホイール5]
セカンダリフライホイール5は、プライマリフライホイール2からダンパ部40に伝達された動力を出力側の部材に伝達する。
【0038】
セカンダリフライホイール5は、プライマリフライホイール2の回転軸Oまわりに回転可能に配置されている。セカンダリフライホイール5は、プライマリフライホイール2に対して、相対回転可能である。詳細には、セカンダリフライホイール5は、ベアリング39を介して、プライマリフライホイール2の支持部材23に回転可能に支持されている。
【0039】
セカンダリフライホイール5は、第1出力部材51と、第2出力部材52と、を有している。第1出力部材51は、第2出力部材52と一体回転可能に構成されている。第1出力部材51は、上述した収容部Sに部分的に配置されている。第1出力部材51は、第2出力部材52に固定されている。
【0040】
第1出力部材51は、第2本体部51aと、複数(例えば2個)の動力伝達部51bとを、有している。
【0041】
第2本体部51aは、実質的に環状に形成されている。第2本体部51aは、リベットによって、第2出力部材52の内周部に固定されている。
【0042】
複数の動力伝達部51bには、エンジンからプライマリフライホイール2に伝達された動力が、ダンパ部40を介して伝達される。各動力伝達部51bは、第2本体部51aから径方向外側に向けて延びている。各動力伝達部51bは、円周方向において互いに間隔を隔てて設けられている。
【0043】
各動力伝達部51bは、プライマリフライホイール2の第1本体部21a及びシールプレート22の軸方向間に、配置されている。詳細には、
図4に示すように、各動力伝達部51bは、軸方向において、プライマリフライホイール2の第1当接部21fと第4隙間84を空けて配置される。
【0044】
各動力伝達部51bは、各第1当接部21f及び各第2当接部22dの軸方向間において、各第1当接部21f及び各第2当接部22dに対して回転可能である。
【0045】
第2出力部材52は、軸方向において、トランスミッション及びダンパ部40の間に、配置される。詳細には、第2出力部材52は、軸方向において、トランスミッションとシールプレート22との間に配置される。
【0046】
[ダンパ部40]
図1及び
図2に示すように、ダンパ部40は、プライマリフライホイール2とセカンダリフライホイール5とを、弾性的に連結する。詳細には、ダンパ部40は、プライマリフライホイール2とセカンダリフライホイール5とを、円周方向に弾性的に連結する。
【0047】
本実施形態においては、ダンパ部40は一対存在する。
図2では、一対のダンパ部40のうち一方のダンパ部40だけが示されている。
【0048】
各ダンパ部40は、筒状部21bの径方向内側に、配置される。各ダンパ部40は、入力プレート21の第1本体部21a及びセカンダリフライホイール5の軸方向間に配置される。すなわち、各ダンパ部40は、収容部Sに、配置される。
【0049】
各ダンパ部40は、複数(例えば5個)のスプリングシート3と、複数(例えば4個)のコイルスプリング41と、を有している。
【0050】
[スプリングシート3]
スプリングシート3は、収容部S内に配置される。スプリングシート3は、収容部Sの内壁面に対して間隔を空けて配置される。スプリングシート3は、プライマリフライホイール2に対して相対回転可能に配置される。スプリングシート3は、プライマリフライホイール2に対して隙間を空けて配置される。詳細には、スプリングシート3は、軸方向において入力プレート21とシールプレート22との間に配置される。スプリングシート3は、第1本体部21aの軸方向第2側の面と、筒状部21bの内周面と、シールプレート22の軸方向第1側の面と、に対して間隔を空けて配置される。
【0051】
図5及び
図6に示すように、入力プレート21とスプリングシート3との間には第1隙間81が空いている。シールプレート22とスプリングシート3との間には第2隙間82が空いている。詳細には、スプリングシート3の軸方向第1側の面と第1本体部21aの第2側の面とは軸方向において第1隙間81が空いている。スプリングシート3の軸方向第2側の面とシールプレート22の軸方向第1側の面とは軸方向において第2隙間82が空いている。スプリングシート3の外周面と筒状部21bの内周面とは径方向において第3隙間83が空いている。
【0052】
スプリングシート3は、プライマリフライホイール2に対して相対回転可能に配置される。
【0053】
図2に示すように、スプリングシート3には、第1及び第2端部用スプリングシート3a、3eと、第1~第3中間用スプリングシート3b、3c、3dと、がある。第1端部用スプリングシート3aが本発明の第2回転体に相当する。なお、第2端部用スプリングシート3eは、第1端部用スプリングシート3aと同形状であるため、また、第2中間用スプリングシート3c及び第3中間用スプリングシート3dは、第1中間用スプリングシート3bと同形状であるため、これらの詳細な説明を省略する。
【0054】
図7A及び
図7Bに示すように、第1端部用スプリングシート3aは、内周部34a、外周部34c、2つの側面部34d、底部34e、及び、肉抜き部35を有する。内周部34a、外周部34c、及び、側面部34dは、底部34eから円周方向の一方側に延びる。内周部34a、外周部34c、2つの側面部34d、及び、底部34eは、弾性部材収容部36を画定する。弾性部材収容部36は、第1端部用スプリングシート3aの円周方向を向く円周方向面34Wに配置される。弾性部材収容部36は、円周方向に延びており、円周方向の一方に開口する。
【0055】
第1端部用スプリングシート3aは、第1面F1と第2面F2とを有する。第1面F1は、プライマリフライホイール2に対向する面である。すなわち、第1面F1は、第1端部用スプリングシート3aの外側面34X、及び、2つの側面34Yを含む。第2面F2は、プライマリフライホイール2に対向しない面である。すなわち、第2面F2は、円周方向面34W、及び、内側面34Zを含む。
【0056】
肉抜き部35は、第2面F2に配置される。詳細には、肉抜き部35は、円周方向面34Wに配置される。肉抜き部35は、円周方向に開口する凹部である。肉抜き部35は、円形に開口する。肉抜き部35の深さは、軽量化に必要な分量が得られる深さとする。例えば、肉抜き部35の深さは、弾性部材収容部36の深さと同じとすることができる。肉抜き部35は、弾性部材収容部36と平行に周方向に延びる。肉抜き部35は、円周方向に貫通する貫通孔であってもよい。肉抜き部35は、弾性部材収容部36に対して径方向外側に配置される。肉抜き部35は、2個配置される。
【0057】
肉抜き部35の開口面積は、弾性部材収容部36の開口面積よりも小さい。ここで、開口面積とは、肉抜き部35または弾性部材収容部36の開口部の面積を意味する。
【0058】
図8に示すように、第1中間用スプリングシート3bは、2つの第1端部用スプリングシート3aの底部34eを突き合わせて円周方向に並べた形状である。したがって、第1中間用スプリングシート3bについての詳細な説明は省略する。
【0059】
各ダンパ部40に含まれる複数のコイルスプリング41(例えば4個)は、それぞれが円周方向にスプリングシート3に隣接するように配置される。複数のコイルスプリング41それぞれは、プライマリフライホイール2とセカンダリフライホイール5との間で互いに直列に作用するように配置されている。複数のコイルスプリング41それぞれは、上述した第1本体部21aの軸方向第2側の面と、筒状部21bの内周面と、シールプレート22の軸方向第1側の面と、で画定される領域に配置されている。各ダンパ部40に含まれる複数のコイルスプリング41(例えば4個)のそれぞれは、プライマリフライホイール2とセカンダリフライホイール5との間で互いに直列に作用するように、上述した収容部Sに配置されている。
【0060】
各ダンパ部40に含まれる複数のコイルスプリング41は、スプリングシート3を介して、動力伝達部51bと、円周方向において第1当接部21f及び第2当接部22dと、に押圧される。このようにして、複数のコイルスプリング41は、動力伝達部51bと第1当接部21fと第2当接部22dとの間で伸縮する。
【0061】
各ダンパ部40に含まれる複数(例えば5個)のスプリングシート3それぞれは、各コイルスプリング41の端部に配置され、各コイルスプリング41の端部を支持する。詳細には、各コイルスプリング41の端部は、弾性部材収容部36に収容される。弾性部材収容部36の開口面積は、肉抜き部35の開口面積よりも大きい。そのため、肉抜き部35はコイルスプリング41の端部を収容することはできないが、弾性部材収容部36は、コイルスプリング41の端部を収容できる。
【0062】
ここでは、各ダンパ部40に含まれる第1~第3中間用スプリングシート3b,3c,3dそれぞれが、円周方向に隣接するコイルスプリング41の間に配置され、各コイルスプリング41の端部を支持する。また、第1、第2端部用スプリングシート3a,3eそれぞれは、円周方向において動力伝達部51bに隣接するコイルスプリング41の端部を支持する。
【0063】
これら2個の第1、第2端部用スプリングシート3a,3eそれぞれは、動力伝達部51b、第1当接部21f、及び、第2当接部22dそれぞれに、周方向に当接している。DMF100が作動すると、第1、第2端部用スプリングシート3a,3eの一方は、プライマリフライホイール2によって、押圧される。第1、第2端部用スプリングシート3a,3eの他方は、円周方向において第1出力部材51によって、押圧される。このように、複数のコイルスプリング41は、スプリングシート3を介して、第1出力部材51とプライマリフライホイール2との間で伸縮する。
【0064】
[ヒステリシストルク発生機構4]
図5及び
図6に示すように、ヒステリシストルク発生機構4は、グリース(粘性流体の一例)によって構成される。グリースは、プライマリフライホイール2とスプリングシート3との隙間に配置される。詳細には、グリースは、入力プレート21とスプリングシート3との第1隙間81、及び、シールプレート22とスプリングシート3との第2隙間82、に配置される。グリースは、筒状部21bの内周面とスプリングシート3の外周面との第3隙間83にも配置される。
【0065】
詳細には、グリースは、第1本体部21aの軸方向第2側の面と、筒状部21bの内周面と、シールプレート22の軸方向第1側の面と、で画定される領域内に充填される。グリースは、収容部S内に充填される。グリースは、DMF100の作動時、筒状部21bの内周面で受けられ、遠心力によって筒状部21bの全周に広がる。グリースは、DMF100の作動時、スプリングシート3とシールプレート22との軸方向の第1隙間81、第1本体部21aとスプリングシート3との軸方向の第2隙間82、及び、スプリングシート3と筒状部21bとの径方向における第3隙間83を埋めるように充填される。DMF100の作動時、第1隙間81の内周部及び第2隙間82の内周部は、グリースにより埋められていなくてもよい。DMF100の作動時、第3隙間83は、グリースにより全体が埋められている。
【0066】
グリースはさらに、スプリングシート3の第1面F1に接触する。詳細には、グリースは、スプリングシート3の外側面34X全体を覆うように充填されている。グリースはさらに、スプリングシート3の2つの側面34Y全体を覆ってもよいし、部分的に覆ってもよいように充填されている。
【0067】
グリースは、スプリングシート3の第2面F2に接触しない。詳細には、スプリングシート3の内側面34Zに接触しないように充填される。
【0068】
グリースは、スプリングシート3のコイルスプリング41と接触する面全体を覆ってもよいし、部分的に覆ってもよいように充填されている。
【0069】
グリースはさらに、第1当接部21fと動力伝達部51bとの軸方向間の第4隙間84、及び、動力伝達部51bと第2当接部22dとの軸方向間の第5隙間85にも充填されている。
【0070】
ヒステリシストルク発生機構4は、ヒステリシストルクTを発生させる。具体的には、DMF100の作動時、スプリングシート3は、プライマリフライホイール2に対して相対回転する。この相対回転により、グリースがせん断され、グリースのせん断トルクが発生する。このグリースのせん断トルクをヒステリシストルクTとして用いる。
【0071】
ヒステリシストルクTは、第1隙間81、第2隙間82、及び、第3隙間83で発生する。以下、第1隙間81で発生するヒステリシストルクTについて説明する。なお、第1端部用スプリングシート3aで得られる合計ヒステリシストルクは、第1隙間81、第2隙間82、及び、第3隙間83のそれぞれで算出したヒステリシストルクTの合計値である。
【0072】
ヒステリシストルクTは、グリースの代表半径R、スプリングシート3に接しているグリースの面積A、グリースの見かけ粘度η、及び、プライマリフライホイール2とスプリングシート3との相対角速度ωに比例する。また、ヒステリシストルクTは、プライマリフライホイール2とスプリングシート3との隙間の軸方向の寸法Hに反比例する。つまり、ヒステリシストルクTは、次の式(1)で定義される。式(1)では、1つのスプリングシート3と接触するグリースにより発生するヒステリシストルクTを定義することができる。
【0073】
【0074】
代表半径RはDMF100の作動時のグリースの代表半径である。具体的には、DMF100の作動時の、グリースは遠心力を受け、第1本体部21aの軸方向第2側の面と、筒状部21bの内周面と、シールプレート22の軸方向第1側の面と、で画定される収容部S内で径方向外側に向かって広がる。つまり、DMF100の作動時、グリースは、第1本体部21aの軸方向第2側の面、筒状部21bの内周面、シールプレート22の軸方向第1側の面、スプリングシート3の軸方向第1側の面、スプリングシート3の外周面、及び、スプリングシート3の軸方向第2側の面に接している。このときのグリースの代表半径がRである。代表半径Rは、作動時の最小グリース半径R1と最大グリース半径R2とを用いて次の式(2)で定義される。なお、最大グリース半径R2とは、回転軸Oから外側面34Xまでの距離である。
【0075】
【0076】
面積Aは、第1隙間81において、DMF100の作動時にスプリングシート3のそれぞれの面に接しているグリースの面積である。
【0077】
相対角速度ωは、DMF100の作動時のプライマリフライホイール2とスプリングシート3との相対角速度である。
【0078】
寸法Hは、DMF100の作動時のプライマリフライホイール2とスプリングシート3との隙間の軸方向の寸法である。つまり、第1隙間81では、寸法Hは、第1隙間81の軸方向の寸法H1である。
【0079】
第2隙間82、及び、第3隙間83のそれぞれで発生するヒステリシストルクTも、第1隙間81で発生するヒステリシストルクTと同様に算出できる。第3隙間83で得られるヒステリシストルクTにおいて、第1隙間81で得られるヒステリシストルクTと異なる点を以下に説明する。
【0080】
第3隙間83では、代表半径Rは、回転軸Oから外側面34Xまでの距離、つまり最大グリース半径R2である。また、第3隙間83では、面積Aは、スプリングシート3の外側面34Xにおいて、DMF100の作動時に外側面34Xに接しているグリースの面積である。第3隙間83では、寸法Hは、第3隙間83の径方向の寸法H3である。
【0081】
見かけ粘度ηは、走行中のグリースの見かけ粘度である。見かけ粘度ηは、次の式(3)で定義される。
【0082】
【0083】
式(3)において、μは、グリースの周知の粘性係数である。
【0084】
nはグリースの粘性指数である。粘性指数nは、グリースのせん断速度と、グリースの見かけ粘度と、の関係から算出する。詳細には、粘性指数nは、24℃においてグリースのせん断速度条件を変化させ、キャピラリーレオメーターを使用して、グリースの見かけ粘度ηを測定する。グリースのせん断速度の対数値を横軸にとり、グリースの見かけ粘度の対数値を縦軸にとり、得られた結果をグラフにプロットする。複数のプロットの回帰直線を求める。回帰直線は周知の方法で求めれば足りる。回帰直線はたとえば、最小二乗法で求めてもよいし、他の方法で求めてもよい。得られた直線の傾きに1を加えた数値をグリースの粘性指数nとする。
【0085】
粘性指数nは、0.4以上である。この理由は以下のとおりである。式(1)及び式(3)から、ヒステリシストルクTは次の式(4)で定義できる。
【数4】
【0086】
一般的に、エンジン始動時に共振が発生した時のプライマリフライホイール2とセカンダリフライホイール5との相対角速度(以下、単に相対角速度という)は、通常作動時の相対角速度の約40倍であると考えられる。なお、通常作動時とは、すなわちエンジンからのトルク入力によってDMF100が回転している時を意味する。一方、エンジン始動時に共振が発生した時のダンパ入力トルクの変動幅は、通常作動時のダンパ入力トルクの変動幅の約5倍である。このエンジン始動時と通常作動時とで変化する相対角速度及びダンパ入力トルクの変動幅の増加割合は、DMF100のサイズが変わっても同程度となる。したがって、相対角速度が40倍に変化したときに、通常作動時に必要なヒステリシストルクTの5倍以上のヒステリシストルクTが発生すれば、エンジン始動時に発生する共振を十分に抑制することができる。
【0087】
式(4)によれば、ヒステリシストルクTの相対角速度に対する増加割合は、粘性指数nに大きく影響される。そこで、後述の実施例のとおり、粘性指数nとヒステリシストルク変動割合との関係を調べた。その結果、粘性指数nは0.4以上であれば、ヒステリシストルク増加割合を5倍以上とすることができることが分かった。したがって、粘性指数nは、0.4以上である。従来のDMFでは、粘性指数nが0.2程度のものが一般的に用いられていた。本実施形態においては、粘性指数nが例えば0.4以上と従来のグリースの粘性指数nよりも有意に高くなっているため、エンジン始動時に発生する共振を十分に抑制することができる。
【0088】
スプリングシート3とコイルスプリング41とは相対回転するものの、両部材の相対速度及びグリースに接する面積は他の第1隙間81、第2隙間82及び第3隙間83に比べて有意に小さい。そのため、スプリングシート3のコイルスプリング41と接触する面は、ヒステリシストルクTの発生に寄与しない。
【0089】
DMF全体で得られる全体ヒステリシストルクは、第1、第2端部用スプリングシート3a、3e、及び第1~第3中間用スプリングシートb~dのそれぞれで算出したヒステリシストルクTの合計値である。
【0090】
また、グリースのせん断トルクは、プライマリフライホイール2とセカンダリフライホイール5との相対回転によっても生じさせることができる。この場合、第1当接部21fと動力伝達部51bとの第4隙間84、及び、動力伝達部51bと第2当接部22dとの第5隙間85、で生じるグリースせん断トルクもヒステリシストルクTとして使用することができる。この場合、好ましくは、第1当接部21fと動力伝達部51bとの第4隙間84は、動力伝達部51bと第2当接部22dとの第5隙間85よりも小さい。
【0091】
[動作・効果]
エンジンからプライマリフライホイール2に伝達されたトルクは、ヒステリシストルク発生機構4を介してダンパ部40に入力される。ダンパ部40では、入力プレート21にトルクが入力され、このトルクは、コイルスプリング41を介して、出力側の電動機、発電機、変速機等に伝達される。
【0092】
また、例えば、エンジン始動時においては、出力側の慣性量が大きいために、共振が発生し、ダンパ部40に過大なトルクが入力される場合がある。このような場合は、ヒステリシストルクTを発生させる必要がある。一方で、走行時にはヒステリシストルクを小さくする必要がある。
【0093】
ヒステリシストルク発生機構4では、相対角速度ωに応じてヒステリシストルクTを変化させることができる。その結果、共振を抑制しながら、エンジンからの回転変動を減衰することができる。
【0094】
本実施形態においては、肉抜き部35が、スプリングシート3のプライマリフライホイール2に対向する第1面F1、及び、プライマリフライホイール2に対向しない第2面F2のうち、第2面F2に配置されている。式(1)に示すとおり、ヒステリシストルクTの大きさは、スプリングシート3のプライマリフライホイール2に対向する面において、グリースに接触する面積に比例する。ヒステリシストルクTが発生する第1面F1には肉抜き部35を配置しないため、ヒステリシストルクTが低下しない。このため、第1面F1においてヒステリシストルクTを低下させずに、第2回転体を軽量化することができる。一方、第2面F2に肉抜き部35を配置することにより、スプリングシート3を軽量化することができる。
【0095】
また、第1端部用スプリングシート3aにおいて、第2隙間82の軸方向の寸法H2は、第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さい。このため、第1~第3中間用スプリングシート3b、3c、3d及び第2端部用スプリングシート3eのように第1隙間81の軸方向の寸法H1と第2隙間82の軸方向の寸法H2とが同じ場合よりも、より大きなヒステリシストルクTを発生させることができる。
【0096】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0097】
(a)前記実施例では、回転装置の一例としてDMF100を説明したが、回転装置はDMFに限定されない。例えば、回転装置は、例えば、回転装置は、セカンダリフライホイール5を備えていなくてもよい。また、回転装置は、クラッチ装置、又はダンパ装置などであってもよい。
【0098】
(b)上記実施形態では、第1端部用スプリングシート3aと第2端部用スプリングシート3eとが、同形状であり、第1中間用スプリングシート3bと第2中間用スプリングシート3cと第3中間用スプリングシート3dとが同形状であったが、特にこれに限定されない。例えば、第1端部用スプリングシート3aと第2端部用スプリングシート3eとは、違う形状であってもよいし、第1中間用スプリングシート3bと第2中間用スプリングシート3cと第3中間用スプリングシート3dとが違う形状であってもよい。
【0099】
(c)上記実施形態では、肉抜き部35は、弾性部材収容部36に対して径方向外側に配置されたが、特にこれに限定されない。
図9A及び
図9Bに示すように、肉抜き部35は、弾性部材収容部36に対して径方向内側に配置されてもよい。
【0100】
(d)上記実施形態では、肉抜き部35は、弾性部材収容部36に対して径方向外側に配置されたが、特にこれに限定されない。
図10A及び
図10Bに示すように、肉抜き部35は、弾性部材収容部36に対して径方向外側に配置される第1肉抜き部35aと、弾性部材収容部36に対して径方向内側に配置される第2肉抜き部35bと、の両方を有していてもよい。
【0101】
本変形例においては、第1肉抜き部35aは、第2肉抜き部35bよりも大きい。つまり、第1肉抜き部35aの開口面積は、第2肉抜き部35bの開口面積よりも大きい。また、本変形例においては、グリースは、第1肉抜き部35aに配置されるが、第2肉抜き部35bには配置されない。
【0102】
(e)上記実施形態では、肉抜き部35は、円形に開口していたが、特にこれに限定されない。
図11A及び
図11Bに示すように、肉抜き部35は、軸方向に延びるように開口していてもよい。
【0103】
(f)上記実施形態では、肉抜き部35は、弾性部材収容部36に対して径方向内側又は/径方向外側に2個ずつ配置されたが、特にこれに限定されない。
図11A及び
図11Bに示すように、肉抜き部35は、弾性部材収容部36の径方向内側に1つ、及び、径方向外側に1つ配置されてもよい。
【0104】
(g)上記実施形態では、入力プレート21を第1入力部として入力プレート21を、第2入力部としてシールプレート22を例示したが、プライマリフライホイール2の構成はこれに限定されない。例えば、シールプレート22を第1入力部とし、入力プレート21を第2入力部としてもよい。すなわち、入力プレート21の第1本体部21aとスプリングシート3との隙間を第2隙間、シールプレート22とスプリングシート3との隙間を第1隙間として、第2隙間の軸方向の寸法を第1隙間の軸方向の寸法よりも小さくしてもよい。
【0105】
(h)上記実施形態では、静止状態において、第2隙間82の軸方向の寸法H2は、第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さかったが、静止状態においての第1隙間81及び第2隙間82の関係は特にこれに限定されない。例えば、DMF100の作動時において、第2隙間82の軸方向の寸法H2が第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さくなっていれば、静止状態においては、第1隙間81の軸方向の寸法H1と第2隙間82の軸方向の寸法H2とは同じでもよい。
【0106】
また、
図5に示すように、第1本体部21aと筒状部21bとを連結する第1角部C1の曲率半径は、第1角部C1と対向するスプリングシート3の第2角部C2の曲率半径よりも大きい。そのため、DMF100の作動時において、コイルスプリング41による径方向外側に向かう応力を受けてスプリングシート3が径方向外側に移動したときに、第1角部C1がスプリングシート3を軸方向に移動させることができる。これにより、第2隙間82の軸方向の寸法H2を、第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さくすることができる。
【0107】
(i)上記実施形態では、第1端部用スプリングシート3aのみにおいて、第2隙間82の軸方向の寸法H2が第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さかったが、特にこれに限定されない。第1端部用スプリングシート3aとは別のスプリングシート3、例えば第1~第3中間用スプリングシート3b、3c、3d、及び第2端部用スプリングシート3eのいずれか1つ以上において、第2隙間82の軸方向の寸法H2が第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さくてもよい。また、第1端部用スプリングシート3aとは別のスプリングシート3、例えば第1~第3中間用スプリングシート3b、3c、3d、及び第2端部用スプリングシート3eのいずれか1つ以上において、第1隙間81の軸方向の寸法H1が第2隙間82の軸方向の寸法H2よりも小さくてもよい。
【0108】
(j)上記実施形態では、第1端部用スプリングシート3aを第2回転体の一例として説明したが、第2回転体は、その他のスプリングシート3であってもよい。すなわち、複数あるスプリングシート3のうちの少なくとも一つにおいて、第2隙間82の軸方向の寸法H2が第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さければよい。それ以外のスプリングシート3においては、第1隙間81の軸方向の寸法H1と、第2隙間82の軸方向の寸法H2と、は同じであってもよい。
【0109】
(k)上記実施形態では、第4隙間84の軸方向の寸法H4と第5隙間85の軸方向の寸法H5とは同じであったが、特にこれに限定されない。例えば、動力伝達部51bはさらに、軸方向において、シールプレート22の第2当接部22dと第5隙間85を空けて配置される。第4隙間84の軸方向の寸法H4は、第5隙間85の軸方向の寸法H5よりも小さくてもよい。または、第5隙間85の軸方向の寸法H5が第4隙間84の軸方向の寸法H4よりも小さくてもよい。これにより、第4隙間84の軸方向の寸法H4と第5隙間85の軸方向の寸法H5とが同じ場合よりも、より大きなヒステリシストルクを得ることができる。
【0110】
(l)上記実施形態では、入力プレート21とシールプレート22との隙間の軸方向の寸法Gは、第1当接部21fと第2当接部22dとの間以外では同じであったが、特にこれに限定されない。
図12に示すように、スプリングシート3の静止状態での位置を第1位置とし、作動中にスプリングシート3が移動した位置を第2位置とする。第1位置における入力プレート21とシールプレート22との隙間71の軸方向の寸法G1は、第2位置における入力プレート21とシールプレート22との隙間72の軸方向の寸法G2と異なる。寸法G1は、寸法G2よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0111】
具体的には、プライマリフライホイール2とスプリングシート3との捩り角が所定値以上となったときに第1端部用スプリングシート3aが位置する領域における寸法G1を寸法G2よりも小さくできる。そのため、プライマリフライホイール2とスプリングシート3との捩り角が大きい場合により多くのヒステリシストルクを発生させることができる。
【0112】
(m)上記実施形態では、スプリングシート3がプライマリフライホイール2に対して平行に配置されていたが、特にこれに限定されない。スプリングシート3の側面34Yは、プライマリフライホイール2の側面に対して円周方向に傾斜していいてもよい。詳細には、
図13に示すように、円周方向第1側における第1隙間81の軸方向の寸法H1は、円周方向第2側における第1隙間81の軸方向の寸法H1と異なる。つまり、スプリングシート3は、シールプレート22に対して傾いている。第1隙間81において、円周方向第1側における第1隙間81の軸方向の寸法H1は、円周方向第2側における第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さくなっていてもよいし、大きくなっていてもよい。
【0113】
(n)DMF100はさらに、カム機構9を備えてもよい。
図14に示すように、カム機構9は、スプリングシート3と動力伝達部51bとの間に配置されている。カム機構9は、スプリングシート3とセカンダリフライホイール5とが当接したときに、スプリングシート3の周方向の移動を軸方向の移動に変換するように構成されている。なお、このとき、第3回転体は軸方向に移動しない。
【0114】
カム機構9は、第1カム面91と、第2カム面92と、によって構成される。第1カム面91は、スプリングシート3に形成されている。詳細には、第1カム面91は、スプリングシート3の係合用凹部91aを画定する内壁面に形成されている。第1カム面91は、軸方向且つ周方向を向く。これにより、DMF100の作動中に、スプリングシート3とセカンダリフライホイール5とが当接し、カム機構9は、スプリングシート3の周方向の移動を軸方向の移動に変換することができる。第2カム面92は、セカンダリフライホイール5に形成されている。第2カム面92は、第1カム面91と対向する。
【0115】
(o)上記実施形態では、入力プレート21と、シールプレート22と、が別部材で形成されたが、特にこれに限定されない。例えば、入力プレート21と、シールプレート22と、は、ひとつの部材で構成されてもよい。
【0116】
(p)上記変形例では、DMF100は、第1カム面91及び第2カム面92を有していたが、特にこれに限定されない。DMF100は、第1カム面91のみを有していてもよい。
【実施例0117】
以下において本発明の実施例について説明する。以下の実施例は数値シミュレーション解析により実施して得られた。ただし、本発明は以下に説明する実施例には限定されない。
【0118】
[DMF100の作製]
式(1)のグリースの代表半径R、第1端部用スプリングシート3aに接しているグリースの面積A、プライマリフライホイール2と第1端部用スプリングシート3aとの軸方向の寸法Hが次のとおりとなるように、DMF100を作製した。第1隙間81及び第2隙間82においては、代表半径R:115mm、面積A:(第1隙間81及び第2隙間82の合計で)15.4cm2、寸法H1:0.5mm、寸法H2:0.5mmであった。第3隙間83は無しとした。第1隙間81及び第2隙間82のそれぞれで算出したヒステリシストルクTの合計値である合計ヒステリシストルクを、各試験番号で得られるヒステリシストルクとした。
【0119】
本シミュレーションにおいて、通常作動時の相対角速度ωは、50deg/sであった。エンジン始動時に共振が発生した時の相対角速度ωは、2000deg/sであった。つまり、エンジン始動時に共振が発生した時の相対角度は、通常作動時の相対角速度ωの40倍となった。
【0120】
また、本シミュレーションにおいて、通常作動時のダンパ入力トルクの変動幅は、±20Nmであった。エンジン始動時に共振が発生した時のダンパ入力トルクの変動幅は、±100Nmであった。つまり、エンジン始動時に共振が発生した時のダンパ入力トルクの変動幅は、通常作動時のダンパ入力トルクの変動幅の5倍となった。
【0121】
表1のとおり、粘性指数nが異なるグリースを種々用意した。なお、試験番号1及び試験番号2で用いたグリースは、従来のDMFで一般的に用いられるグリースである。用意したグリースを用いて、DMF100において、プライマリフライホイール2とセカンダリフライホイール5との相対角速度が40倍となった場合の通常作動時のヒステリシストルクに対するエンジン始動時のヒステリシストルクの増加割合(以下、ヒステリシストルク増加割合という)について、式(1)を用いた数値解析により模擬した。結果を表1及び
図15に示す。
【0122】
【0123】
[評価結果]
上記のとおり、エンジン始動時に共振が発生した時のダンパ入力トルクの変動幅は、通常作動時のダンパ入力トルクの変動幅の5倍であった。そのため、ヒステリシストルク増加割合を5倍以上にすれば、エンジン始動時に発生する共振を十分に抑制できる。表1及び
図15に示すとおり、粘性指数nが0.43以上において、ヒステリシストルク増加割合が5倍以上となった。したがって、粘性指数nが0.4以上であれば、エンジン始動時に発生する共振を十分に抑制できることが確認できた。