(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129124
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】回転装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/131 20060101AFI20230907BHJP
F16F 15/134 20060101ALI20230907BHJP
F16F 15/16 20060101ALI20230907BHJP
F16F 15/30 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
F16F15/131
F16F15/134 D
F16F15/16 M
F16F15/30 U
F16F15/30 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033926
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】古志 和啓
(72)【発明者】
【氏名】吉本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】相川 将隆
(57)【要約】
【課題】高いヒステリシストルクを効率的に発生させる回転装置を提供する。
【解決手段】回転装置は、第1回転体と、第2回転体と、粘性流体と、を備える。第1回転体は、第1入力部及び第2入力部を有する。第2入力部は、第1入力部に対して軸方向に間隔を空けて配置される。第2回転体は、軸方向において第1入力部と第2入力部との間に配置される。第2回転体は、第1回転体に対して相対回転可能に配置される。粘性流体は、第1入力部と第2回転体と第1隙間、及び、第2入力部と第2回転体との第2隙間に配置される。第2隙間の軸方向の寸法は、第1隙間の軸方向の寸法よりも小さくなるように構成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力部、及び、前記第1入力部に対して軸方向に間隔を空けて配置される第2入力部を有する第1回転体と、
軸方向において前記第1入力部と前記第2入力部との間に、前記第1回転体に対して相対回転可能に配置される第2回転体と、
前記第1入力部と前記第2回転体との第1隙間、及び、前記第2入力部と前記第2回転体との第2隙間に配置される粘性流体と、
を備え、
前記第2隙間の軸方向の寸法は、前記第1隙間の軸方向の寸法よりも小さくなるように構成される、
回転装置。
【請求項2】
前記第1入力部と前記第2入力部との軸方向間に配置され、前記第1入力部及び前記第2入力部に対して相対回転可能な第3回転体をさらに備え、
前記第1入力部と前記第3回転体との第4隙間の軸方向の寸法は、前記第2入力部と前記第3回転体との第5隙間の軸方向の寸法と異なる、
請求項1に記載の回転装置。
【請求項3】
前記第2回転体の周方向の移動を軸方向の移動に変換するように構成されたカム機構をさらに備え、
前記第2回転体は、軸方向に移動可能に配置されている、
請求項2に記載の回転装置。
【請求項4】
前記カム機構は、
前記第2回転体に形成され、軸方向且つ周方向を向く第1カム面と、
前記第3回転体に形成され、前記第1カム面と対向する第2カム面と、
によって構成される、
請求項3に記載の回転装置。
【請求項5】
前記第2回転体は、周方向において前記第3回転体に向かって開口する凹部を有し、
前記第1カム面は、前記凹部を画定する内壁面によって構成される、
請求項4に記載の回転装置。
【請求項6】
前記第1入力部は、
第1本体部と、
前記第1本体部の外周端部から軸方向に延びる筒状部と、
を有し、
前記第2回転体は軸方向に移動可能であり、
前記第1本体部と前記筒状部とを連結する第1角部の曲率半径は、前記第1角部と対向する前記第2回転体の第2角部の曲率半径よりも大きい、
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の回転装置。
【請求項7】
前記第2回転体の側面は、前記第1回転体の側面に対して円周方向に傾斜している、
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の回転装置。
【請求項8】
前記第2回転体は、第1位置と第2位置との間で周方向に移動可能に配置されており、
前記第1位置における前記第1隙間は、前記第2位置における前記第1隙間と、軸方向の寸法が異なる、
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の回転装置。
【請求項9】
前記第1回転体は、プライマリフライホイールであり、
前記第2回転体は、スプリングシートであり、
前記第3回転体は、セカンダリフライホイールである、
請求項2に記載の回転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両において、エンジンに取り付けられ、エンジンの回転変動を効果的に減衰するような回転装置として、例えば、デュアルマスフライホイール(DMF)が知られている。DMFでは、エンジン始動時において、共振が発生する場合がある。その結果、DMFに過大な共振トルクが入力され、異音の発生や各種部品の耐久性低下等を招くおそれがある。したがって、DMFが共振して過大なトルクが発生する条件では、DMFの破損を防ぐためにヒステリシストルクを発生させる必要がある。そこで、特許文献1のダンパ装置では、部材間の捩り角度に依存してヒステリシストルクを発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のDMFよりも効率的にヒステリシストルクを発生させることが求められる。そこで、本発明の課題は、高いヒステリシストルクを効率的に発生させる回転装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に係る回転装置は、第1回転体と、第2回転体と、粘性流体と、を備える。第1回転体は、第1入力部及び第2入力部を有する。第2入力部は、第1入力部に対して軸方向に間隔を空けて配置される。第2回転体は、軸方向において第1入力部と第2入力部との間に配置される。第2回転体は、第1回転体に対して相対回転可能に配置される。粘性流体は、第1入力部と第2回転体との第1隙間、及び、第2入力部と第2回転体との第2隙間に配置される。第2隙間の軸方向の寸法は、第1隙間の軸方向の寸法よりも小さくなるように構成される。
【0006】
本発明者らは、第1隙間及び第2隙間では、回転装置の作動時に発生するグリースのせん断トルクがヒステリシストルクとして利用することができることを見出した。また、本発明者らは、ヒステリシストルクの大きさが、第1回転体と第2回転体との粘性流体が配置される隙間の軸方向の寸法に反比例することも見出した。そこで、本発明に係る回転装置では、第2隙間の軸方向の寸法を、第1隙間の軸方向の寸法よりも小さくなるように構成している。この第2隙間を小さくすることによるヒステリシストルクの増加率は、第1隙間が大きくなることによるヒステリシストルクの減少率よりも大きい。このため、第1隙間の軸方向の寸法と第2隙間の軸方向の寸法とが同じ場合よりも高いヒステリシストルクを効果的に得ることができる。
【0007】
(2)好ましくは、回転装置は、第3回転体をさらに備える。第3回転体は、第1入力部と第2入力部との軸方向間に配置される。第3回転体は、第1入力部及び第2入力部に対して相対回転可能である。第1入力部と第3回転体との第4隙間の軸方向の寸法は、第2入力部と第3回転体との第5隙間の軸方向の寸法と異なる。
【0008】
(3)好ましくは、回転装置は、第2回転体の周方向の移動を軸方向の移動に変換するように構成されたカム機構をさらに備える。第2回転体は、軸方向に移動可能に配置されている。
【0009】
(4)好ましくは、カム機構は、第1カム面と、第2カム面と、によって構成される。第1カム面は、第2回転体に形成される。第1カム面は、軸方向且つ周方向を向く。第2カム面は、第3回転体に形成される。第2カム面は、第1カム面と対向する。
【0010】
(5)好ましくは、第2回転体は、周方向において第3回転体に向かって開口する凹部を有する。第1カム面は、凹部を画定する内壁面に形成される。
【0011】
(6)好ましくは、第1入力部は、第1本体部と、筒状部と、を有する。筒状部は、第1本体部の外周端部から軸方向に延びる。第2回転体は、軸方向に移動可能である。第1本体部と筒状部とを連結する第1角部の曲率半径は、第1角部と対向する第2角部の曲率半径よりも大きい。
【0012】
(7)好ましくは、第2回転体の側面は、第1回転体の側面に対して円周方向に傾斜している。
【0013】
(8)好ましくは、第2回転体は、第1位置と第2位置との間で周方向に移動可能に配置されている。第1位置における第1隙間は、第2位置における第1隙間と、軸方向の寸法が異なる。
【0014】
(9)好ましくは、第1回転体は、プライマリフライホイールである。第2回転体は、スプリングシートである。第3回転体は、セカンダリフライホイールである。
【発明の効果】
【0015】
以上のような本発明では、高いヒステリシストルクを効率的に発生させる回転装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による回転装置の断面図。
【
図9】変形例における回転装置の外周側からの部分断面図。
【
図10】
図9とは別の変形例における回転装置の外周側からの部分断面図。
【
図11】スプリングシートと動力伝達部との関係を示す図。
【
図12】粘性指数とヒステリシストルク増加割合との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態によるデュアルマスフライホイール100(回転装置の一例であり、以下、単に「DMF100」と記載する)の断面図である。また、
図2はDMF100の正面図であり、部材の一部(例えばセカンダリフライホイール5の左半分)を削除して示している。
図1において、O-O線は回転軸Oである。
図1において、DMF100の左側にエンジンが配置され、右側に電動機や変速装置等を含む駆動ユニットが配置される。
【0018】
なお、以下の説明において、軸方向とは、DMF100の回転軸Oが延びる方向である。
図1の左側を「軸方向第1側」、
図1の右側を「軸方向第2側」とする。また、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向である。径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。
【0019】
このDMF100は、図示しないエンジンのクランクシャフト(駆動源側の部材の一例)と駆動ユニットの入力軸との間に設けられ、回転変動を減衰するための装置である。DMF100は、プライマリフライホイール2(第1回転体の一例)と、複数のスプリングシート3と、グリース4(粘性流体の一例)とを有している。DMF100はさらに、複数のダンパ部40と、セカンダリフライホイール5と、を有している。
【0020】
[プライマリフライホイール2]
図1に示すように、プライマリフライホイール2は、エンジンからの動力が入力される。プライマリフライホイール2は、エンジン側の部材、例えばクランクシャフト(図示せず)に、固定される。
【0021】
プライマリフライホイール2は、回転軸Oまわりに回転可能に配置される。プライマリフライホイール2は、入力プレート21(第1入力部の一例)と、シールプレート22(第2入力部の一例)と、支持部材23と、を有している。
【0022】
入力プレート21は、クランクシャフト及び支持部材23によって挟持され、ボルトによってクランクシャフトに固定される。
【0023】
図1及び
図2に示すように、入力プレート21は、第1本体部21aと、筒状部21bとを、有している。第1本体部21aは、回転軸Oまわりに回転可能に構成される。第1本体部21aは、実質的に円板状に形成されている。
【0024】
図3に示すように、第1本体部21aは、内周部21hと外周部21eとを有する。外周部21eは、第1本体部21aの内周部21hに対して、軸方向第1側に配置される(
図1参照)。
【0025】
また、第1本体部21aは、複数(例えば2個)の第1当接部21f有している。各第1当接部21fは、円周方向においてダンパ部40に当接する部分である。各第1当接部21fは、第1本体部21aの外周部21eに設けられている。各第1当接部21fは、外周部21e上を径方向に延びている。各第1当接部21fは、軸方向の第2側に突出している(
図1参照)。
【0026】
図1及び
図2に示すように、筒状部21bは、軸方向に延びる円筒状である。筒状部21bは、第1本体部21aの外周端部から軸方向の第2側に延びている。筒状部21bは、第1本体部21aと一体に形成される。
【0027】
シールプレート22は、入力プレート21と一体回転可能に構成される。例えば、シールプレート22は、固定手段、例えば溶接によって、筒状部21bに固定される。
【0028】
シールプレート22は、回転軸Oまわりに回転可能に配置される。シールプレート22は、実質的に環状に形成されている。
【0029】
シールプレート22は、軸方向において、第1本体部21aに対して間隔を空けて配置されている。シールプレート22と第1本体部21aとの軸方向間には、スプリングシート3が配置される。
【0030】
シールプレート22は、複数(例えば2個)の第2当接部22dを有している。各第2当接部22dは、円周方向においてダンパ部40に当接する部分である。各第2当接部22dは、軸方向において、各第1当接部21fと間隔を空けて対向して配置される。
【0031】
図4に示すとおり、シールプレート22は、絞り部22jを有する。絞り部22jは、第2当接部22dの軸方向第2側の面に形成される。絞り部22jは、軸方向第2側に開口する凹部である。絞り部22jの底部は、第2当接部22dにおいて軸方向第1側に突出していてもよい。絞り部22jは、第1当接部21fの軸方向第1側の面に形成されてもよい。この場合絞り部22jは、軸方向第1側に開口する凹部である。
【0032】
支持部材23は、入力プレート21及びシールプレート22を支持する部材である。支持部材23は、入力プレート21と一体回転可能に、入力プレート21を支持する。また、支持部材23は、シールプレート22と一体回転可能に、シールプレート22を支持する。
【0033】
支持部材23は、回転軸Oまわりに回転可能に構成される。支持部材23は、実質的に筒状に形成されている。
【0034】
[セカンダリフライホイール5]
セカンダリフライホイール5は、プライマリフライホイール2からダンパ部40に伝達された動力を、クラッチに伝達する。
【0035】
セカンダリフライホイール5は、プライマリフライホイール2の回転軸Oまわりに回転可能に配置されている。セカンダリフライホイール5は、プライマリフライホイール2に対して、相対回転可能である。詳細には、セカンダリフライホイール5は、ベアリング39を介して、プライマリフライホイール2の支持部材23に回転可能に支持されている。
【0036】
セカンダリフライホイール5は、第1出力部材51(第3回転体の一例)と、第2出力部材52と、を有している。第1出力部材51は、第2出力部材52と一体回転可能に構成されている。第1出力部材51は、第2出力部材52に固定されている。
【0037】
第1出力部材51は、第2本体部51aと、複数(例えば2個)の動力伝達部51bとを、有している。
【0038】
第2本体部51aは、実質的に環状に形成されている。第2本体部51aは、リベットによって、第2出力部材52の内周部に固定されている。
【0039】
複数の動力伝達部51bには、エンジンからプライマリフライホイール2に伝達された動力が、ダンパ部40を介して伝達される。各動力伝達部51bは、第2本体部51aから径方向外側に向けて延びている。各動力伝達部51bは、円周方向において互いに間隔を隔てて設けられている。
【0040】
各動力伝達部51bは、プライマリフライホイール2の第1本体部21a及びシールプレート22の軸方向間に、配置されている。詳細には、
図4に示すように、各動力伝達部51bは、軸方向において、プライマリフライホイール2の第1当接部21fと第4隙間84を空けて配置される。
【0041】
各動力伝達部51bは、各第1当接部21f及び各第2当接部22dの軸方向間において、各第1当接部21f及び各第2当接部22dに対して相対回転可能である。
【0042】
第2出力部材52は、軸方向において、トランスミッション及びダンパ部40の間に、配置される。詳細には、第2出力部材52は、軸方向において、トランスミッションとシールプレート22との間に配置される。
【0043】
[ダンパ部40]
図1及び
図2に示すように、ダンパ部40は、プライマリフライホイール2とセカンダリフライホイール5とを、弾性的に連結する。詳細には、ダンパ部40は、プライマリフライホイール2とセカンダリフライホイール5とを、円周方向に弾性的に連結する。
【0044】
本実施形態においては、ダンパ部40は一対存在する。
図2では、一対のダンパ部40のうち一方のダンパ部40だけが示されている。
【0045】
各ダンパ部40は、筒状部21bの径方向内側に、配置される。各ダンパ部40は、入力プレート21の第1本体部21a及びセカンダリフライホイール5の軸方向間に配置される。
【0046】
各ダンパ部40は、複数(例えば5個)のスプリングシート3と、複数(例えば4個)のコイルスプリング41と、を有している。
【0047】
[スプリングシート3]
スプリングシート3は、プライマリフライホイール2に対して相対回転可能に配置される。スプリングシート3は、軸方向において入力プレート21とシールプレート22との間に配置される。詳細には、スプリングシート3は、第1本体部21aの軸方向第2側の面と、筒状部21bの内周面と、シールプレート22の軸方向第1側の面と、に対して間隔を空けて配置される。
【0048】
図5及び
図6に示すように、入力プレート21とスプリングシート3との間には第1隙間81が空いている。シールプレート22とスプリングシート3との間には第2隙間82が空いている。詳細には、スプリングシート3の軸方向第1側の面と第1本体部21aの第2側の面とは軸方向において第1隙間81が空いている。スプリングシート3の軸方向第2側の面とシールプレート22の軸方向第1側の面とは軸方向において第2隙間82が空いている。スプリングシート3の外周面と筒状部21bの内周面とは径方向において第3隙間83が空いている。
【0049】
スプリングシート3は、プライマリフライホイール2に対して相対回転可能に配置される。
【0050】
図2に示すように、スプリングシート3には、第1及び第2端部用スプリングシート3a、3eと、第1~第3中間用スプリングシート3b、3c、3dと、がある。第1端部用スプリングシート3aが本発明の第2回転体に相当する。なお、第2端部用スプリングシート3eは、第1端部用スプリングシート3aと同形状であるため、また、第2中間用スプリングシート3c及び第3中間用スプリングシート3dは、第1中間用スプリングシート3bと同形状であるため、これらの詳細な説明を省略する。
【0051】
図7A及び
図7Bに示すように、第1端部用スプリングシート3aは、内周部34a、外周部34c、2つの側面部34d、及び、底部34eを有する。内周部34a、外周部34c、及び、側面部34dは、底部34eから円周方向の一方側に延びる。内周部34a、外周部34c、2つの側面部34d、及び、底部34eは、収容部36を画定する。収容部36は、第1端部用スプリングシート3aの円周方向を向く円周方向面34Wに配置される。収容部36は、円周方向に延びており、円周方向の一方に開口する。
【0052】
図8に示すように、第1中間用スプリングシート3bは、2つの第1端部用スプリングシート3aの底部34eを突き合わせて円周方向に並べた形状である。したがって、第1中間用スプリングシート3bについての詳細な説明は省略する。
【0053】
各ダンパ部40に含まれる複数のコイルスプリング41(例えば4個)は、それぞれが円周方向にスプリングシート3に隣接するように配置される。複数のコイルスプリング41それぞれは、プライマリフライホイール2とセカンダリフライホイール5との間で互いに直列に作用するように配置されている。複数のコイルスプリング41それぞれは、上述した第1本体部21aの軸方向第2側の面と、筒状部21bの内周面と、シールプレート22の軸方向第1側の面と、で画定される領域に配置されている。
【0054】
各ダンパ部40に含まれる複数のコイルスプリング41は、スプリングシート3を介して、動力伝達部51bと、円周方向においてプライマリフライホイール2と、に押圧される。このようにして、複数のコイルスプリング41は、動力伝達部51bと第1当接部21fと第2当接部22dとの間で伸縮する。
【0055】
各ダンパ部40に含まれる複数(例えば5個)のスプリングシート3それぞれは、各コイルスプリング41の端部に配置され、各コイルスプリング41の端部を支持する。詳細には、各コイルスプリング41の端部は、収容部36に収容される。
【0056】
ここでは、各ダンパ部40に含まれる第1~第3中間用スプリングシート3b,3c,3dそれぞれが、円周方向に隣接するコイルスプリング41の間に配置され、各コイルスプリング41の端部を支持する。また、第1、第2端部用スプリングシート3a,3eそれぞれは、円周方向において動力伝達部51bに隣接するコイルスプリング41の端部を支持する。
【0057】
これら第1,第2端部用スプリングシート3a,3eそれぞれは、動力伝達部51b、第1当接部21f、及び、第2当接部22dそれぞれに、周方向に当接している。DMF100が作動すると、第1、第2端部用スプリングシート3a,3eの一方は、プライマリフライホイール2によって、押圧される。第1、第2端部用スプリングシート3a,3eの他方は、円周方向において第1出力部材51によって、押圧される。このように、複数のコイルスプリング41は、スプリングシート3を介して、第1出力部材51とプライマリフライホイール2との間で伸縮する。
【0058】
[グリース4]
図5及び
図6に示すように、グリース4は、グリース4は、プライマリフライホイール2とスプリングシート3との隙間に配置される。詳細には、グリース4は、入力プレート21とスプリングシート3との第1隙間81、及び、シールプレート22とスプリングシート3との第2隙間82、に配置される。筒状部21bの内周面とスプリングシート3の外周面との第3隙間83にも配置される。
【0059】
詳細には、グリース4は、第1本体部21aの軸方向第2側の面と、筒状部21bの内周面と、シールプレート22の軸方向第1側の面と、で画定される領域内に充填される。グリース4は、DMF100の作動時、筒状部21bの内周面で受けられ、遠心力によって筒状部21bの全周に広がる。グリース4は、DMF100の作動時、スプリングシート3とシールプレート22との軸方向の第1隙間81、第1本体部21aとスプリングシート3との軸方向の第2隙間82、及び、スプリングシート3と筒状部21bとの径方向における第3隙間83を埋めるように充填される。DMF100の作動時、第1隙間81の内周部及び第2隙間82の内周部は、グリース4により埋められていなくてもよい。DMF100の作動時、第3隙間83は、グリース4により全体が埋められている。
【0060】
詳細には、グリース4は、スプリングシート3の外側面34X全体を覆うように充填されている。グリース4はさらに、スプリングシート3の2つの側面34Y全体を覆ってもよいし、部分的に覆ってもよいように充填されている。グリース4はさらに、スプリングシート3の内側面34Zに接触しないように充填される。
【0061】
グリース4は、スプリングシート3のコイルスプリング41と接触する面全体を覆ってもよいし、部分的に覆ってもよいように充填されている。
【0062】
グリース4は、第1当接部21fと動力伝達部51bとの軸方向間の第4隙間84、及び、動力伝達部51bと第2当接部22dとの軸方向間の第5隙間85にも充填されている。
【0063】
グリース4は、ヒステリシストルクTを発生させる。具体的には、DMF100の作動時、スプリングシート3は、プライマリフライホイール2に対して相対回転する。この相対回転により、グリース4がせん断され、グリース4のせん断トルクが発生する。このグリース4のせん断トルクをヒステリシストルクTとして用いる。
【0064】
第1端部用スプリングシート3aにおいて、ヒステリシストルクTは、第1隙間81、第2隙間82、及び、第3隙間83で発生する。以下、第1隙間81で発生するヒステリシストルクTについて説明する。第1端部用スプリングシート3aで得られる合計ヒステリシストルクは、第1隙間81、第2隙間82、及び、第3隙間83のそれぞれで算出したヒステリシストルクTの合計値である。
【0065】
ヒステリシストルクTは、グリース4の代表半径R、スプリングシート3に接しているグリース4の面積A、グリース4の見かけ粘度η、及び、プライマリフライホイール2とスプリングシート3との相対角速度ωに比例する。また、ヒステリシストルクTは、プライマリフライホイール2とスプリングシート3との隙間の軸方向の寸法Hに反比例する。つまり、ヒステリシストルクTは、次の式(1)で定義される。式(1)では、1つのスプリングシート3と接触するグリース4により発生するヒステリシストルクTを定義することができる。
【0066】
【0067】
代表半径RはDMF100の作動時のグリース4の代表半径である。具体的には、DMF100の作動時、グリース4は遠心力を受け、第1本体部21aの軸方向第2側の面と、筒状部21bの内周面と、シールプレート22の軸方向第1側の面と、で画定される領域内で径方向外側に向かって広がる。つまり、DMF100の作動時、グリース4は、第1本体部21aの軸方向第2側の面、筒状部21bの内周面、シールプレート22の軸方向第1側の面、スプリングシート3の軸方向第1側の面、スプリングシート3の外周面、及び、スプリングシート3の軸方向第2側の面に接している。このときのグリース4の代表半径がRである。代表半径Rは、作動時の最小グリース半径R1と最大グリース半径R2とを用いて次の式(2)で定義される。なお、最大グリース半径R2とは、回転軸Oから外側面34Xまでの距離である。
【0068】
【0069】
面積Aは、第1隙間81において、DMF100の作動時にスプリングシート3のそれぞれの面に接しているグリース4の面積である。
【0070】
相対角速度ωは、DMF100の作動時のプライマリフライホイール2とスプリングシート3との相対角速度である。
【0071】
寸法Hは、DMF100の作動時のプライマリフライホイール2とスプリングシート3との隙間の軸方向の寸法である。つまり、第1隙間81では、寸法Hは、第1隙間81の軸方向の寸法H1である。
【0072】
第2隙間82、及び、第3隙間83のそれぞれで発生するヒステリシストルクTも、第1隙間81で発生するヒステリシストルクTと同様に算出できる。第3隙間83で得られるヒステリシストルクTにおいて、第1隙間81で得られるヒステリシストルクTと異なる点を以下に説明する。
【0073】
第3隙間83では、代表半径Rは、回転軸Oから外側面34Xまでの距離、つまり最大グリース半径R2である。また、第3領域S3では、面積Aは、スプリングシート3の外側面34Xにおいて、DMF100の作動時に外側面34Xに接しているグリース4の面積である。第3隙間83では、寸法Hは、第3隙間83の径方向の寸法H3である。
【0074】
見かけ粘度ηは、回転装置の作動時のグリース4の見かけ粘度である。見かけ粘度ηは、次の式(3)で定義される。
【0075】
【0076】
式(3)において、μは、グリース4の周知の粘性係数である。
【0077】
nはグリース4の粘性指数である。粘性指数nは、グリース4のせん断速度と、グリース4の見かけ粘度と、の関係から算出する。詳細には、粘性指数nは、24℃においてグリース4のせん断速度条件を変化させ、キャピラリーレオメーターを使用して、グリース4の見かけ粘度ηを測定する。グリース4のせん断速度の対数値を横軸にとり、グリース4の見かけ粘度の対数値を縦軸にとり、得られた結果をグラフにプロットする。複数のプロットの回帰直線を求める。回帰直線は周知の方法で求めれば足りる。回帰直線はたとえば、最小二乗法で求めてもよいし、他の方法で求めてもよい。得られた直線の傾きに1を加えた数値をグリース4の粘性指数nとする。
【0078】
粘性指数nは、0.4以上である。この理由は以下のとおりである。式(1)及び式(3)から、ヒステリシストルクTは次の式(4)で定義できる。
【数4】
【0079】
一般的に、エンジン始動時に共振が発生した時のプライマリフライホイール2とセカンダリフライホイール5との相対角速度(以下、単に相対角速度という)は、通常作動時の相対角速度の約40倍であると考えられる。なお、通常作動時とは、すなわちエンジンからのトルク入力によってDMF100が回転している時を意味する。一方、エンジン始動時に共振が発生した時のダンパ入力トルクの変動幅は、通常作動時のダンパ入力トルクの変動幅の約5倍である。このエンジン始動時と通常作動時とで変化する相対角速度及びダンパ入力トルクの変動幅の増加割合は、DMF100のサイズが変わっても同程度となる。したがって、相対角速度が40倍に変化したときに、通常走行時のヒステリシストルクTの5倍以上のヒステリシストルクTが発生すれば、エンジン始動時に発生する共振を十分に抑制することができる。
【0080】
式(4)によれば、ヒステリシストルクTの相対角速度に対する増加割合は、粘性指数nに大きく影響される。そこで、後述の実施例のとおり、粘性指数nとヒステリシストルク変動割合との関係を調べた。その結果、粘性指数nは0.4以上であれば、ヒステリシストルク増加割合を5倍以上とすることができることが分かった。したがって、粘性指数nは、0.4以上である。従来のDMFでは、粘性指数nが0.2程度のものが一般的に用いられていた。本実施形態においては、粘性指数nが例えば0.4以上と従来のグリース4の粘性指数nよりも有意に高くなっているため、エンジン始動時に発生する共振を十分に抑制することができる。
【0081】
スプリングシート3とコイルスプリング41とは相対回転するものの、両部材の相対速度及びグリース4に接する面積は他の第1隙間81、第2隙間82及び第3隙間83に比べて有意に小さい。そのため、そのため、スプリングシート3のコイルスプリング41と接触する面は、ヒステリシストルクTの発生に寄与しない。
【0082】
DMF100全体で得られる全体ヒステリシストルクは、第1、第2端部用スプリングシート3a、3e、及び第1~第3中間用スプリングシートb~dのそれぞれ算出したヒステリシストルクTの合計値である。
【0083】
また、グリース4のせん断トルクは、プライマリフライホイール2とセカンダリフライホイール5との相対回転によっても生じさせることができる。この場合、第1当接部21fと動力伝達部51bとの第4隙間84、及び、動力伝達部51bと第2当接部22dとの第5隙間85、で生じるグリース4せん断トルクもヒステリシストルクとして使用することができる。
【0084】
[動作・効果]
エンジンからプライマリフライホイール2に伝達されたトルクは、ダンパ部40に入力される。ダンパ部40では、入力プレート21にトルクが入力され、このトルクは、コイルスプリング41を介して、出力側の電動機、発電機、変速機等に伝達される。
【0085】
また、例えば、出力側の慣性量が大きいために、共振が発生し、ダンパ部40に過大なトルクが入力される場合がある。このような場合は、ヒステリシストルクTを発生させる必要がある。
【0086】
また、第1端部用スプリングシート3aにおいて、第2隙間82の軸方向の寸法H2は、第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さい。このため、第1~第3中間用スプリングシート3b、3c、3d及び第2端部用スプリングシート3eのように第1隙間81の軸方向の寸法H1と第2隙間82の軸方向の寸法H2とが同じ場合よりも、より大きなヒステリシストルクTを発生させることができる。
【0087】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0088】
(a)上記実施形態では、入力プレート21を第1入力部として入力プレート21を、第2入力部としてシールプレート22を例示したが、プライマリフライホイール2の構成はこれに限定されない。例えば、シールプレート22を第1入力部とし、入力プレート21を第2入力部としてもよい。すなわち、入力プレート21の第1本体部21aとスプリングシート3との隙間を第2隙間、シールプレート22とスプリングシート3との隙間を第1隙間として、第2隙間の軸方向の寸法を第1隙間の軸方向の寸法よりも小さくしてもよい。
【0089】
(b)上記実施形態では、静止状態において、第2隙間82の軸方向の寸法H2は、第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さかったが、静止状態においての第1隙間81及び第2隙間82の関係は特にこれに限定されない。例えば、DMF100の作動時において、第2隙間82の軸方向の寸法H2が第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さくなっていれば、静止状態においては、第1隙間81の軸方向の寸法H1と第2隙間82の軸方向の寸法H2とは同じでもよい。
【0090】
また、第1本体部21aと筒状部21bとを連結する第1角部C1の曲率半径は、第1角部C1と対向するスプリングシート3の第2角部C2の曲率半径よりも大きい。そのため、DMF100の作動時において、コイルスプリング41による径方向外側に向かう応力を受けてスプリングシート3が径方向外側に移動したときに、第1角部C1がスプリングシート3を軸方向に移動させることができる。これにより、第2隙間82の軸方向の寸法H2を、第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さくすることができる。
【0091】
(c)上記実施形態では、第1端部用スプリングシート3aのみにおいて、第2隙間82の軸方向の寸法H2が第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さかったが、特にこれに限定されない。第1端部用スプリングシート3aとは別のスプリングシート3、例えば第1~第3中間用スプリングシート3b、3c、3d、及び第2端部用スプリングシート3eのいずれか1つ以上において、第2隙間82の軸方向の寸法H2が第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さくてもよい。また、第1端部用スプリングシート3aとは別のスプリングシート3、例えば第1~第3中間用スプリングシート3b、3c、3d、及び第2端部用スプリングシート3eのいずれか1つ以上において、第1隙間81の軸方向の寸法H1が第2隙間82の軸方向の寸法H2よりも小さくてもよい。
【0092】
(d)上記実施形態では、第1端部用スプリングシート3aを第2回転体の一例として説明したが、第2回転体は、その他のスプリングシート3であってもよい。すなわち、複数あるスプリングシート3のうちの少なくとも一つにおいて、第2隙間82の軸方向の寸法H2が第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さければよい。それ以外のスプリングシート3においては、第1隙間81の軸方向の寸法H1と、第2隙間82の軸方向の寸法H2と、は同じであってもよい。
【0093】
(e)上記実施形態では、第4隙間84の軸方向の寸法H4と第5隙間85の軸方向の寸法H5とは同じであったが、特にこれに限定されない。例えば、動力伝達部51bはさらに、軸方向において、シールプレート22の第2当接部22dと第5隙間85を空けて配置される。第4隙間84の軸方向の寸法H4は、第5隙間85の軸方向の寸法H5よりも小さくてもよい。または、第5隙間85の軸方向の寸法H5が第4隙間84の軸方向の寸法H4よりも小さくてもよい。これにより、第4隙間84の軸方向の寸法H4と第5隙間85の軸方向の寸法H5とが同じ場合よりも、より大きなヒステリシストルクを得ることができる。
【0094】
(f)上記実施形態では、入力プレート21とシールプレート22との隙間の軸方向の寸法Gは、第1当接部21fと第2当接部22dとの間以外では同じであったが、特にこれに限定されない。
図9に示すように、スプリングシート3の静止状態での位置を第1位置とし、作動中にスプリングシート3が移動した位置を第2位置とする。第1位置における入力プレート21とシールプレート22との隙間71の軸方向の寸法G1は、第2位置における入力プレート21とシールプレート22との隙間72の軸方向の寸法G2と異なる。寸法G1は、寸法G2よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0095】
具体的には、プライマリフライホイール2とスプリングシート3との捩り角が所定値以上となったときに第1端部用スプリングシート3aが位置する領域における寸法G1を寸法G2よりも小さくできる。そのため、プライマリフライホイール2とスプリングシート3との捩り角が大きい場合により多くのヒステリシストルクを発生させることができる。
【0096】
(g)上記実施形態では、スプリングシート3がプライマリフライホイール2に対して平行に配置されていたが、特にこれに限定されない。スプリングシート3の側面34Yは、プライマリフライホイール2の側面に対して円周方向に傾斜していいてもよい。詳細には、
図10に示すように、円周方向第1側における第1隙間81の軸方向の寸法H1は、円周方向第2側における第1隙間81の軸方向の寸法H1と異なる。つまり、スプリングシート3は、シールプレート22に対して傾いている。第1隙間81において、円周方向第1側における第1隙間81の軸方向の寸法H1は、円周方向第2側における第1隙間81の軸方向の寸法H1よりも小さくなっていてもよいし、大きくなっていてもよい。
【0097】
(h)DMF100はさらに、カム機構9を備えてもよい。
図11に示すように、カム機構9は、スプリングシート3と動力伝達部51bとの間に配置されている。カム機構9は、スプリングシート3とセカンダリフライホイール5とが当接したときに、スプリングシート3の周方向の移動を軸方向の移動に変換するように構成されている。なお、このとき、第3回転体は軸方向に移動しない。
【0098】
カム機構9は、第1カム面91と、第2カム面92と、によって構成される。第1カム面91は、スプリングシート3に形成されている。詳細には、第1カム面91は、スプリングシート3の係合用凹部91aを画定する内壁面に形成されている。第1カム面91は、軸方向且つ周方向を向く。これにより、DMF100の作動中に、スプリングシート3とセカンダリフライホイール5とが当接し、カム機構9は、スプリングシート3の周方向の移動を軸方向の移動に変換することができる。第2カム面92は、セカンダリフライホイール5に形成されている。第2カム面92は、第1カム面91と対向する。
【0099】
(i)上記実施形態では、回転装置の一例としてDMF100を説明したが、回転装置はDMF100に限定されない。例えば、回転装置は、セカンダリフライホイール5を備えていなくてもよい。また、回転装置は、クラッチ装置、又はダンパ装置などであってもよい。
【0100】
(j)上記実施形態では、入力プレート21と、シールプレート22と、が別部材で形成されたが、特にこれに限定されない。例えば、入力プレート21と、シールプレート22と、は、ひとつの部材で構成されてもよい。
【0101】
(k)上記変形例では、DMF100は、第1カム面91及び第2カム面92を有していたが、特にこれに限定されない。DMF100は、第1カム面91のみを有していてもよい。
【0102】
(l)上記実施形態では、第1端部用スプリングシート3aと第2端部用スプリングシート3eとが、同形状であり、第1中間用スプリングシート3bと第2中間用スプリングシート3cと第3中間用スプリングシート3dとが同形状であったが、特にこれに限定されない。例えば、第1端部用スプリングシート3aと第2端部用スプリングシート3eとは、違う形状であってもよいし、第1中間用スプリングシート3bと第2中間用スプリングシート3cと第3中間用スプリングシート3dとが違う形状であってもよい。
【実施例0103】
以下において本発明の実施例について説明する。以下の実施例は数値シミュレーション解析により実施して得られた。ただし、本発明は以下に説明する実施例には限定されない。
【0104】
[DMF100の作製]
式(1)のグリース4の代表半径R、第1端部用スプリングシート3aに接しているグリース4の面積A、プライマリフライホイール2と第1端部用スプリングシート3aとの軸方向の寸法Hが次のとおりとなるように、DMF100を作製した。第1隙間81及び第2隙間82においては、代表半径R:115mm、面積A:(第1隙間81及び第2隙間82の合計で)15.4cm2、寸法H1:0.5mm、寸法H2:0.5mmであった。第3隙間83は無しとした。第1隙間81及び第2隙間82のそれぞれで算出したヒステリシストルクTの合計値である合計ヒステリシストルクを、各試験番号で得られるヒステリシストルクとした。
【0105】
本シミュレーションにおいて、通常作動時(エンジン始動時ではなく、安定して走行している時)の相対角速度ωは、50deg/sであった。エンジン始動時に共振が発生した時の相対角速度ωは、2000deg/sであった。つまり、エンジン始動時に共振が発生した時の相対角度は、通常作動時の相対角速度ωの40倍となった。
【0106】
また、本シミュレーションにおいて、通常作動時のダンパ入力トルクの変動幅は、±20Nmであった。エンジン始動時に共振が発生した時のダンパ入力トルクの変動幅は、±100Nmであった。つまり、エンジン始動時に共振が発生した時のダンパ入力トルクの変動幅は、通常作動時のダンパ入力トルクの変動幅の5倍となった。
【0107】
表1のとおり、粘性指数nが異なるグリースを種々用意した。なお、試験番号1及び試験番号2で用いたグリースは、従来のDMFで一般的に用いられるグリースである。用意したグリースを用いて、DMF100において、プライマリフライホイール2とセカンダリフライホイール5との相対角速度が40倍となった場合の通常作動時のヒステリシストルクに対するエンジン始動時のヒステリシストルクの増加割合(以下、ヒステリシストルク増加割合という)について、式(1)を用いた数値解析により模擬した。結果を表1及び
図12に示す。
【0108】
【0109】
[評価結果]
上記のとおり、エンジン始動時に共振が発生した時のダンパ入力トルクの変動幅は、通常作動時のダンパ入力トルクの変動幅の5倍であった。そのため、ヒステリシストルク増加割合を5倍以上にすれば、エンジン始動時に発生する共振を十分に抑制できる。表1及び
図12に示すとおり、粘性指数nが0.43以上において、ヒステリシストルク増加割合が5倍以上となった。したがって、粘性指数nが0.4以上であれば、エンジン始動時に発生する共振を十分に抑制できることが確認できた。