(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129142
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】リレーボックス
(51)【国際特許分類】
H01H 9/02 20060101AFI20230907BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20230907BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230907BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20230907BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20230907BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H01H9/02 F
H02G3/16
H05K5/02 J
C08L23/10
C08L71/12
C08L53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033952
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】新井 義之
(72)【発明者】
【氏名】坂田 範夫
【テーマコード(参考)】
4E360
4J002
5G052
5G361
【Fターム(参考)】
4E360EA03
4E360GA12
4E360GA60
4E360GB93
4E360GC08
4J002BB121
4J002BP013
4J002CH072
4J002GN00
4J002GQ00
5G052AA01
5G052BB06
5G052HA01
5G361BC01
(57)【要約】
【課題】リレーブロックをリレーボックス筐体に組み込む際の組込不良や、動作の繰り返しによるリレーブロックやリレーボックス筐体の破損を抑制ことができるリレーボックスを提案する。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂とポリフェニレン系エーテル樹脂とを含有するリレーブロックと、ポリプロピレン系樹脂を含有するリレーボックス筐体と、を備え、リレーブロックの線膨張率とリレーボックス筐体の線膨張率との差が1.5×10-5/℃以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂とポリフェニレン系エーテル樹脂とを含有するリレーブロックと、
ポリプロピレン系樹脂を含有するリレーボックス筐体と、
を備え、
前記リレーブロックの線膨張率と前記リレーボックス筐体の線膨張率との差が1.5×10-5/℃以下であることを特徴とするリレーボックス。
【請求項2】
前記リレーブロックが水素添加ブロック共重合体をさらに含有する、請求項1に記載のリレーボックス。
【請求項3】
前記リレーブロックに含まれるポリプロピレン系樹脂が連続相を形成する、請求項1または2に記載のリレーボックス。
【請求項4】
前記リレーブロックの吸水量が0.1重量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のリレーボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレーボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のアンダーフードや室内に設置されるリレーブロック、およびリレーブロックを収納するリレーボックス筐体には、耐熱性の観点から、ポリアミド系樹脂が使用されてきた。しかし、ポリアミド系樹脂は空気中の水分により吸水し、寸法変化や物性が低下するという問題があった。そのため、近年では、ポリフェニレン系エーテル樹脂を添加し、吸水性のポリマーの比率を減少させたポリアミド系樹脂/ポリフェニレン系エーテル樹脂アロイが一般的に使用されるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1、特許文献2には、ポリアミド6,6、ポリアミド6、変性ポリフェニレンエーテル、モンタン酸金属塩、(及びポリプロピレン)から構成される成形性、機械的強度、耐熱性、耐候性、及びリサイクル性に優れた組成物からなる自動車用リレーボックス(リレーブロック)が開示されている。
【0004】
また、成形加工性、耐油性、耐酸性、耐アルカリ性などにおいて優れており、ポリアミド系樹脂に比べて吸水率も低いポリプロピレン系樹脂を用いたリレーボックス筐体も提案されている。例えば、特許文献3には、ポリプロピレン製のケースおよびカバーを有するリレーボックス筐体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-136256号公報
【特許文献2】特開平6-141443号公報
【特許文献3】特開2004-187367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、これまでリレーブロックおよびリレーボックス筐体の個々の材質については様々な検討がなされてきたが、リレーブロックの材質とリレーボックス筐体の材質との組み合わせについてはあまり検討されていない。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、リレーブロックおよびリレーボックス筐体が特定の材質の組み合わせで構成された場合に、リレーブロックをリレーボックス筐体に組み込む際に組込不良が発生する場合があることが分かった。また、リレーボックスを車に搭載して動作を繰り返すうちに、リレーブロックやリレーボックス筐体が破損する場合があることも分かった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リレーブロックをリレーボックス筐体に組み込む際の組込不良や、動作の繰り返しによるリレーブロックやリレーボックス筐体の破損を抑制ことができるリレーボックスを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、以下の通りである。
[1]ポリプロピレン系樹脂とポリフェニレン系エーテル樹脂とを含有するリレーブロックと、
ポリプロピレン系樹脂を含有するリレーボックス筐体と、
を備え、
前記リレーブロックの線膨張率と前記リレーボックス筐体の線膨張率との差が1.5×10-5/℃以下であることを特徴とするリレーボックス。
【0009】
[2]前記リレーブロックが水素添加ブロック共重合体をさらに含有する、請求項1に記載のリレーボックス。
【0010】
[3]前記リレーブロックに含まれるポリプロピレン系樹脂が連続相を形成する、請求項1または2に記載のリレーボックス。
【0011】
[4]前記リレーブロックの吸水量が0.1質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のリレーボックス。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リレーブロックをリレーボックス筐体に組み込む際の組込不良や、動作の繰り返しによるリレーブロックやリレーボックス筐体の破損を抑制ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例について、昇温による箱の寸法変化を示す図である。
【
図2】実施例について、昇温による蓋の寸法変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明によるリレーボックスは、ポリプロピレン系樹脂とポリフェニレン系エーテル樹脂とを含有するリレーブロックと、ポリプロピレン系樹脂を含有するリレーボックス筐体とを備え、リレーブロックの線膨張率とリレーボックス筐体の線膨張率との差が1.5×10-5/℃以下であることを特徴とする。
【0015】
上述のように、これまでリレーブロックおよびリレーボックス筐体の個々の材質については様々な検討がなされてきたが、リレーブロックの材質とリレーボックス筐体の材質との組み合わせについてはあまり検討されてこなかった。本発明者らの検討によれば、リレーブロックおよびリレーボックス筐体が特定の材質の組み合わせで構成された場合、例えばリレーブロックをポリアミド系樹脂/ポリフェニレン系エーテル樹脂アロイで構成し、リレーボックス筐体をポリプロピレン系樹脂で構成した場合に、リレーブロックをリレーボックス筐体に組み込む際に組込不良が発生する場合があることが分かった。また、リレーボックスを車に搭載して動作を繰り返すうちに、リレーブロックやリレーボックス筐体が変形し、機能に不具合が発生する場合があることも分かった。
【0016】
本発明者らは、上述のような組込不良や破損を抑制すべく、様々な材質のリレーブロックおよびリレーボックス筐体を作製し、リレーブロックの組込不良や、動作の繰り返しによるリレーブロックやリレーボックス筐体の破損を抑制できる材質の組み合わせについて鋭意検討した。その結果、リレーボックスがポリプロピレン系樹脂とポリフェニレン系エーテル樹脂とを含有し、リレーボックス筐体がポリプロピレン系樹脂を含有する場合に、リレーブロックの吸水による寸法変化を抑制して、リレーブロックのリレーボックス筐体への組込不良を抑制できることが分かった。また、リレーボックスおよびリレーボックス筐体を上述のように構成することによって、両者の熱膨張差、具体的にはリレーブロックの線膨張率とリレーボックス筐体の線膨張率との差を1.5×10-5/℃以下に低減することができ、動作を繰り返してもリレーブロックやリレーボックスの破損を抑制できることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0017】
なお、本明細書において、「リレーボックス」は、リレーボックス筐体と、当該リレー
ボックス筐体に組み込まれる(収納される)リレーブロックとを備える。また、「リレーボックス筐体」は、リレーブロックを支持し、また覆うための筐体であり、リレーボックスが蓋を有する場合には、リレーボックス筐体は蓋も含む。通常、リレーブロック内にリレーやヒューズなどが取り付けられている。本発明によるリレーボックスの用途は、特に限定されることなく、例えば、自動車用が挙げられ、中でも、ガソリンエンジン車用、ハイブリッド車用、電気自動車用、燃料電池車用に好適に用いることができる。
【0018】
本発明において、リレーボックス筐体(リレーボックス)の形状は、特に限定されないが、例えば、0.5~5mmの厚みを有する板状の壁面および底面を有することができる。また、リレーボックス筐体(リレーボックス)は、底面から筐体の開口部までの高さが3~50mm、筐体の平面視で一辺が10~200mmの寸法を有することができる。
【0019】
<リレーブロック>
本発明において、リレーブロックは、ポリプロピレン系樹脂とポリフェニレン系エーテル樹脂とを含有する。リレーブロックがポリプロピレン系樹脂を含むことによって、リレーブロックが吸水してその寸法が変化するのを低減することができる。また、引張強度などの物性が低下するのを抑制することができる。さらに、プロピレン系樹脂はポリアミド系樹脂よりも比重が小さいため、軽量なリレーブロックを構成することができる。
【0020】
-ポリプロピレン系樹脂-
リレーブロックを構成するポリプロピレン系樹脂は、結晶性プロピレンホモポリマーおよび、重合の第一工程で得られる結晶性プロピレンホモポリマー部分と重合の第二工程以降でプロピレン、エチレンおよび/もしくは少なくとも1つの他のα-オレフィン(例えば、ブテン-1、ヘキセン-1等)を共重合して得られるプロピレン-エチレンランダム共重合体部分を有する結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体であり、さらにこれら結晶性プロピレンホモポリマーと結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体の混合物であっても構わない。
【0021】
このようなポリプロピレン系樹脂は、通常、三塩化チタン触媒または塩化マグネシウムなどの担体に担持したハロゲン化チタン触媒等とアルキルアルミニウム化合物の存在下に、重合温度0~100℃の範囲で、重合圧力3~100気圧の範囲で重合して得られる。この際、重合体の分子量を調製するために水素等の連鎖移動剤を添加することも可能であり、また重合方法としてバッチ式、連続式いずれの方法でも可能で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の溶媒下での溶液重合、スラリー重合等の方法も選択でき、さらには無溶媒下モノマー中での塊状重合、ガス状モノマー中での気相重合方法などが適用できる。
【0022】
また、さらには、上記した重合触媒の他に得られるポリプロピレンのアイソタクティシティおよび重合活性を高めるため、第三成分として電子供与性化合物を内部ドナー成分または外部ドナー成分として用いることができる。
【0023】
これらの電子供与性化合物としては公知のものが使用でき、例えば、ε-カプロラクトン、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチルなどのエステル化合物、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリブチルなどの亜リン酸エステル、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのリン酸誘導体などや、アルコキシエステル化合物、芳香族モノカルボン酸エステルおよび/または芳香族アルキルアルコキシシラン、脂肪族炭化水素アルコキシシラン、各種エーテル化合物、各種アルコール類および/または各種フェノール類などが挙げられる。
【0024】
なお、本発明におけるポリプロピレン系樹脂は、上記したポリプロピレン系樹脂のほか
に、該ポリプロピレン系樹脂とα,β-不飽和カルボン酸またはその誘導体とをラジカル発生剤の存在下、非存在下で溶融状態、溶液状態で30~350℃の温度下で反応させることによって得られる公知の変性(該α,β-不飽和カルボン酸またはその誘導体が0.01~10質量%グラフトまたは付加)ポリプロピレン樹脂であってもよく、さらに上記したポリプロピレン系樹脂と該変性ポリプロピレン系樹脂の任意の割合の混合物であっても構わない。
【0025】
-ポリフェニレン系エーテル樹脂-
本実施形態におけるポリフェニレン系エーテル樹脂は、特に限定されず、例えば、下記式(1)で示される繰返し単位構造からなるホモ重合体及び/または共重合体である。そしてその還元粘度は、0.15~2.5の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.30~2.00、さらに好ましくは0.35~2.00の範囲である。なお、還元粘度は、ηsp/c:0.5g/dLのクロロホルム溶液を用いて、温度30℃の条件下測定することができる。
【0026】
【化1】
(ここで、式中のR
31,R
32,R
33,およびR
34は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~7までの第1級のアルキル基、炭素原子数1~7の第2級低級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、および少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択されるものであり、互いに同一でも異なっていてもよい)
【0027】
このようなポリフェニレン系エーテル樹脂としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。ポリフェニレン系エーテル樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)等が挙げられる。さらに2,6-ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6-トリメチルフェノールや2-メチル-6-ブチルフェノール)との共重合体のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。これらの中でも、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体が好まく、さらにはポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)が好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
このようなポリフェニレン系エーテル樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、米国特許第3306874号記載のHayによる第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば2,6-キシレノールを酸化重合することにより容易に製造できる。その他にも、米国特許第3306875号、同第3257357号および同第3257358号、特公昭52-17880号および特開昭50-51197号および同63-152628号等に記載された方法で容易に製造することができる。
【0029】
また、ポリフェニレン系エーテル樹脂の安定化のために、公知の各種安定剤も好適に使用することができる。安定剤の例としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の金属系安定剤、ヒン
ダードフェノール系安定剤、リン酸エステル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤が挙げられる。これら各種安定剤の好ましい配合量は、全ての樹脂成分の混合物100質量部に対して5質量部未満であることが好ましい。これら安定剤の中で特に好ましいのは、分子内にイオウ元素と水酸基を同時に有する酸化防止剤である。
【0030】
さらに、上述した安定剤以外に、ポリフェニレン系エーテル樹脂に添加することが可能なその他の公知の添加剤等も配合することができる。その場合、その他の配合剤の含有量は、合計で、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して10質量部未満であることが好ましい。
【0031】
本発明において、リレーブロックが、水素添加ブロック共重合体をさらに含有することが好ましい。これにより、ポリフェニレン系エーテル樹脂とポリプロピレン系樹脂との混和性を高めることができ、リレーブロックの耐衝撃性を向上させることができる。
【0032】
すなわち、ポリフェニレン系エーテル樹脂とポリプロピレン系樹脂とは、本質的に非混和性であるため、相溶化剤を用いることが好ましい。両者の混和性改善のために、ポリフェニレンエーテルとの混和性の高いセグメント鎖と、ポリプロピレンとの混和性の高いセグメント鎖と、を有する共重合体を、混和剤として利用できる。この混和性を有する共重合体としては、例えば、ポリスチレン鎖-ポリオレフィン鎖を有する共重合体、ポリフェニレンエーテル鎖-ポリオレフィン鎖を有する共重合体、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなる水素添加ブロック共重合体が挙げられる。これらの中でも熱安定性の観点から、水素添加ブロック共重合体が好ましい。
【0033】
ここでいう、ポリフェニレンエーテルとポリプロピレンの相溶化剤としての水素添加ブロック共重合体としては、例えば、A-B-A、A-B-A-B、(A-B-)4-Si、A-B-A-B-A等の構造を有するブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体が挙げられる。ここで、Aはビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックを意味し、Bは共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックを意味する。重合体ブロックAにおけるビニル芳香族化合物の含有量、及び重合体ブロックBにおける共役ジエン化合物の含有量は、それぞれ少なくとも70質量%以上である。さらに、水素添加ブロック共重合体とは、芳香族ビニル化合物-共役ジエン化合物からなるブロック共重合体中の共役ジエン化合物に由来するオレフィン性不飽和結合を、好ましくは50%以下まで、より好ましくは30%以下まで、さらに好ましくは10%以下まで、水素添加反応により低減化したブロック共重合体である。
【0034】
また、本発明において、リレーブロックに含まれるポリプロピレン系樹脂が連続相を形成することが好ましい。ポリプロピレン系樹脂とポリフェニレン系エーテル樹脂のポリマーアロイは、ポリプロピレン系樹脂の連続相を形成し、この連続相中にポリフェニレン系エーテル樹脂が分散した構造とすることにより、リレーブロックの成形性を高めることができる。
【0035】
さらに、本発明によるリレーボックスは、ポリプロピレン系樹脂を含有するため、リレーブロックの吸水量を0.1質量%以下に抑制することができる。この点、従来のポリアミド系のリレーボックスにおいては、リレーブロックは徐々に吸水し、吸水量は1質量%を超える場合もある。このように、本発明によるリレーボックスでは、リレーブロックの吸水量を従来品に比べて大きく低減することができる。
【0036】
<リレーボックス筐体>
本発明において、リレーボックス筐体は、ポリプロピレン系樹脂を含有する。リレーボックス筐体がポリプロピレン系樹脂を含むことによって、リレーボックス筐体が吸水してその寸法が変化するのを低減することができる。また、プロピレン系樹脂はポリアミド系樹脂よりも比重が小さいため、軽量なリレーボックス筐体を構成することができる。
【0037】
-ポリプロピレン系樹脂-
リレーボックス筐体を構成するポリプロピレン系樹脂としては、上述のリレーブロックが含有するポリプロピレン系樹脂で構成することができる。
【0038】
-フィラー-
リレーボックス筐体は、さらにフィラーを含有することが好ましい。これにより、リレーボックス筐体の剛性、耐熱性、寸法安定性などを向上させることができる。上記フィラーとしては、ガラスフレーク、マイカ、タルク、グラファイト等が挙げられ、中でもタルクを用いることが好ましい。また、フィラーは板状のものが好ましい。
【実施例0039】
以下、実施例を挙げて本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例1に用いた原材料を以下に示す。
-(a)ポリプロピレン系樹脂-
(a-i):MFR=10g/10分、結晶核剤としてADEKA(株)製「アデカスタブNA11」を0.2質量%含有するポリプロピレン単独重合体
(a-ii):MFR=0.5g/10分、結晶核剤としてADEKA(株)製「アデカスタブNA11」を0.2質量%含有するポリプロピレン単独重合体
なお、MFRは、ISO1133に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。
【0041】
-(b)ポリフェニレンエーテル系樹脂-
(b-i)2,6-キシレノールを酸化重合して得た、還元粘度(ηsp/c:0.5g/dLのクロロホルム溶液)0.42のポリフェニレンエーテル
なお、還元粘度は、ηsp/c:0.5g/dLのクロロホルム溶液を用いて、温度30℃の条件下測定した。
【0042】
-(c)フィラー-
(c-i)タルク:アスペクト比1.6、平均粒子径3μmのタルク(竹原化学工業株式会社製:ハイトロンA)
【0043】
-(e)水素添加ブロック共重合体-
(e-i)ポリスチレン-水素添加されたポリブタジエン-ポリスチレンの構造を有する水素添加ブロック共重合体。水素添加前のブロック共重合体中に含まれるスチレン単位量は43%、ポリブタジエン部分の1,2-ビニル結合量は75%、ポリスチレン鎖の数平均分子量は20,000、ポリブタジエン部分の水素添加率は98%以上
【0044】
従来例に用いた原料を以下に示す。
-(d)ポリアミド系樹脂-
(d-ii)PA66:レオナ(登録商標)1300(旭化成株式会社製)
【0045】
-(e)水素添加ブロック共重合体-
(e-ii)ポリスチレン-水素添加されたポリブタジエン-ポリスチレンの構造を有す
る水素添加ブロック共重合体。水素添加前のブロック共重合体中に含まれるスチレン単位量は35%、ポリブタジエン部分の1,2-ビニル結合量は38%、ポリスチレン鎖の数平均分子量は29,800、ポリブタジエン部分の水素添加率は98%以上、パラフィン系オイルを35質量%含有
【0046】
-(f)添加剤-
(f-i)無水マレイン酸、三菱化学株式会社製
【0047】
吸水前後の箱および蓋の寸法変化と吸水率、箱および蓋の線膨張率、吸水前後の引張強度の変化を以下のように測定した。
【0048】
(1)吸水前後の寸法変化と吸水率
以下の寸法測定法により、吸水前後の箱および蓋の寸法変化を測定した。具体的には、射出成型によって得た箱において、成型後23℃環境下に1時間放置して冷却された状態にて内寸法をデジタルノギスにより測定し、吸水前の寸法とした。同時に質量測定を行い、吸水前の質量とした。この箱を温度60℃、湿度95%の恒温恒湿槽内に24時間放置して吸水させた後に取り出し、23℃×50RH%の雰囲気で1時間状態調節した後に、内寸法をデジタルノギスにより測定し、吸水後の寸法とした。同時に質量測定を行い、吸水後の質量とした。一方、射出成型によって得られた150mm×150mm×厚さ2mm平板の中央部から100mm×100mmの平板を切り出し、蓋とした。成型及び切り出し後の平板の中央部の寸法をデジタルノギスで測定し、吸水前の寸法とした。同時に質量測定を行い、吸水前の質量とした。この蓋を温度60℃、湿度95%の恒温恒湿槽内に24時間放置して吸水させた後に取り出し、23℃×50RH%の雰囲気で1時間状態調節した後に、中央部の寸法をデジタルノギスにより測定し、吸水後の寸法とした。同時に質量測定を行い、吸水後の質量とした。吸水前の質量と吸水後の質量とから、吸水率を算出した。
【0049】
(2)線膨張率
箱および蓋の線膨張率を以下のように測定した。具体的には、射出成型によって得た箱において、成型後23℃環境下に1時間放置して冷却された状態にて内寸法をデジタルノギスにより測定し、23℃の寸法とした。この箱を100℃の熱風オーブン中に2時間放置し、取り出した直後の内寸法をデジタルノギスにより測定し、100℃の寸法とした。一方、射出成型によって得られた150mm×150mm×厚さ2mm平板の中央部から100mm×100mmの平板を切り出し、蓋とした。成型及び切り出し後の平板の中央部の寸法をデジタルノギスで測定し、23℃の寸法とした。この蓋を100℃の熱風オーブン中に2時間放置し、取り出した直後の中央部の寸法をデジタルノギスにより測定し、100℃の寸法とした。
【0050】
(3)吸水前後の引張強度の変化
吸水前後の引張強度の変化は、以下の様にして測定した。すなわち、射出成型によって4mm厚みのISO試験片を得た。得られたISO試験片を温度23度湿度50%の環境下に48時間静置して状態調節したのち、ISO527-1に準じ、引張強度の測定を行い、得られた結果を吸水前の引張強度とした。また、得られたISO試験片を温度60℃、湿度95%の恒温恒湿槽内に24時間放置して吸水させた後に取り出して防湿アルミ袋に入れ、温度23度湿度50%の環境下に48時間静置して状態調節した後ISO527-1に準じ引張強度の測定を行い、得られた結果を吸水後の引張強度とした。
【0051】
(実施例1)
図1(a)に示した立方体の箱(内寸102mm×102mm×高さ50mm、肉厚2mm)および
図1(b)に示した蓋(100mm×100mm)を用意した。その際、箱は、上記(a)ポリプロピレン系樹脂および(c)フィラーを用いて形成した。具体的には以下の通りとした。製造に用いる溶融混練機として、二軸押出機(コペリオン社製、Z
SK-25、L/D35)を用い、原料の流れ方向に対し上流側に第1原料供給口、これより下流に第2原料供給口を設け、更にその下流に真空ベントを設けた。また、第2供給口への原材料供給方法は、押出機サイド開放口からサイドフィーダーを用いて供給した。上記のように設定した押出機を用い、第1原料供給口から(a-i)を、第2原料供給口から(c-i)を、その比率が(a-i):(c-i)=80:20となる様に押出機内に供給し、押出温度200℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量20kg/時間の条件にて溶融混練し、ペレットとして得た。また、上記で得た樹脂ペレットを用いて220℃に設定した小型射出成形機(EC100SXII、芝浦機械社製)に供給し、金型温度60℃の条件で箱を成型した。
また、蓋は、上記(a)ポリプロピレン系樹脂および(b)ポリフェニレン系エーテル樹脂その他を用いて形成した。具体的には、以下の通りとした。製造に用いる溶融混練機として、二軸押出機(コペリオン社製、ZSK-25、L/D35)を用い、原料の流れ方向に対し上流側に第1原料供給口、これより下流に第2原料供給口を設け、更にその下流に真空ベントを設けた。また、第2供給口への原材料供給方法は、押出機サイド開放口からサイドフィーダーを用いて供給した。上記のように設定した押出機を用い、表1に従って各原材料を押出機内に供給し、押出温度280~320℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量20kg/時間の条件にて溶融混練し、ペレットとして得た。また、上記で得た樹脂ペレットを用いて240~280℃に設定した小型射出成形機(EC100SXII、芝浦機械社製)に供給し、金型温度60℃の条件で蓋を成型した。
【0052】
【0053】
上述のように用意した箱および蓋のそれぞれについて、吸水後の寸法、吸水率、線膨張率および吸水前後の引張強度の変化を測定した。得られた吸水後の寸法と吸水率を表1に、線膨張率を表2に、吸水前後の引張強度の変化を表3にそれぞれ示す。なお、
図1(b)は、線膨張率の測定の際に昇温により箱が膨張した様子を示している。また、
図2(b)は、線膨張率の測定の際に昇温により蓋が膨張した様子を示している。
【0054】
(従来例)
実施例1と同様に、箱および蓋を用意し、用意した箱および蓋のそれぞれについて、吸水後の寸法、線膨張率および吸水前後の引張強度の変化を測定した。ただし、蓋は、(d)ポリアミド系樹脂および(b)ポリフェニレン系エーテル樹脂を用いて形成した。具体的には、以下の通りとした。製造に用いる溶融混練機として、二軸押出機(コペリオン社製、ZSK-25、L/D35)を用い、原料の流れ方向に対し上流側に第1原料供給口、これより下流に第2原料供給口を設け、更にその下流に真空ベントを設けた。また、第2供給口への原材料供給方法は、押出機サイド開放口からサイドフィーダーを用いて供給した。上記のように設定した押出機を用い、表1に従って押出機内に供給し、押出温度280~320℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量20kg/時間の条件にて溶融混練し、ペレットとして得た。また、上記で得た樹脂ペレットを用いて240~280℃
に設定した小型射出成形機(EC100SXII、芝浦機械社製)に供給し、金型温度60℃の条件で蓋を成型した。その他の条件は、実施例1と全て同じである。得られた結果を表1に示す。なお、
図2(c)は、線膨張率の測定の際に昇温により蓋が膨張した様子を示している。
【0055】
【0056】
【0057】
本発明によれば、リレーブロックをリレーボックス筐体に組み込む際の組込不良や、動作の繰り返しによるリレーブロックやリレーボックス筐体の破損を抑制ことができる。