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特開2023-129165深海底の堆積資源物の採掘・引上げ・湿式製錬・残泥処理工法と資源採取バケット,圧力増減タンク,湿式製錬圧密槽及び資源採掘船
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129165
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】深海底の堆積資源物の採掘・引上げ・湿式製錬・残泥処理工法と資源採取バケット,圧力増減タンク,湿式製錬圧密槽及び資源採掘船
(51)【国際特許分類】
   B63B 27/10 20060101AFI20230907BHJP
   B63B 25/04 20060101ALI20230907BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20230907BHJP
【FI】
B63B27/10 Z
B63B25/04 102F
B63B35/00 N
B63B35/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022044620
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】506101805
【氏名又は名称】近藤 正佳
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正佳
(57)【要約】
【課題】太平洋の深海底には、レアアース泥が膨大に分布している。最大の課題はレアアース泥の採掘・揚泥技術にある。究極の海底資源開発は、残泥を自然環境に対処して元の深海底に戻し、持ち帰るのは資源物のみとする。
【解決手段】本発明の資源採掘船は、船央空間に資源採掘バケットと湿式製錬バケット,浮体式受泥槽が上下の分離構造となっている湿式製錬圧密槽が並列に配置され、2種類のバケットは底面開口で、真空圧・加圧装置である圧力増減タンクを装備する。真空圧はレアアース泥のバケット内への吸引及び真空圧密、加圧はバケット外への押出す機能である。浮体式受泥槽は船央空間内の海面を水平移動することで、資源採掘バケットと湿式製錬圧密槽間のレアアース泥のやり取りをする。この圧力増減タンク及び湿式製錬圧密槽の機能が、究極の資源泥の採掘・製錬・残泥処理を可能とした。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
深海底の資源泥の採掘・引上げ・製錬・残泥処理工法に使用する資源採掘船において、当該採掘船はこれの船央空間を囲む船上に船央立体骨組が組まれ、ここに、減圧・加圧装置である圧力増減タンクを装備した資源採掘バケットと資源泥の製錬装置である湿式製錬圧密槽が並列に配置され、資源採掘バケットは船央立体骨組から深海底まで昇降し、湿式製錬圧密槽は上部構造の湿式製錬バケットと下部構造の浮体式受泥槽から構成され、これらが組合さると湿式製錬圧密槽となり、前記圧力増減タンクを装備した湿式製錬バケットは船央立体骨組から浮体式受泥槽まで昇降し、浮体式受泥槽は船央空間の船体側面に設けたガイドレールで鉛直のみが拘束されていて船央空間内の海面を水平移動し、資源採掘バケットを引上げたときは浮体式受泥槽がこれの真下に移動可能な空間が確保されるもので、圧力増減タンクの機能に加えて船央空間の鉛直・水平の交差動線の活用で、深海底から圧密した資源泥の採掘,引上げ、そして、船上での資源泥あるいは残泥の移し替えが容易であることから、資源泥の製錬と残泥を元の深海底に戻す残泥処理を可能とし、さらには、浮体式受泥槽はこれ自体が浮体なので資源採掘船の必要以上の超巨大化を抑制して建造費の縮減化を図っていることを特徴とする資源採掘船。
【請求項2】
請求項1の圧力増減タンクを備えた資源採掘バケット又は湿式製錬バケットにおいて、前記バケットはこれの外部上面に複数の圧力増減タンクを取り付けたもので、このタンクの構造は、前記バケットの頂板に固定される外筒と外筒内を上下動するピストンの傾き防止のガイドとなる内筒の中間に仕切板を付けて筒型ピストンとし、これの上下動装置、及び筒型ピストンの仕切板に設けた外部との自動通水仕切弁と前記バケットの頂板に設けた内部との自動通水仕切弁から成るもので、当該圧力増減タンクはタンク容積の増減で減圧(真空圧),加圧を作り出す仕組みで、堅牢な二重筒型構造の仕組みから、超深海にも対応し、且つ、装置の大規模化を容易とすることを特徴とする圧力増減タンクを備えた資源採掘バケット又は湿式製錬バケット。
【請求項3】
請求項2の資源採掘バケット又は湿式製錬バケットの圧力増減タンクにおいて、これらのタンクの密封方式は筒型ピストンの外周面に被せる柔軟で弾力のある筒状弾性シールを筒型ピストンの上部,下部と仕切板の3か所で帯状に接着固定し、接着固定面を除いた2か所の自由帯状面の筒型ピストン本体部分には多数の通水口を設けることで、水圧を筒状弾性シールの自由帯状面に面的に作用させることで外筒に密着させ、相対移動する外筒と筒型ピストンの隙間を水圧による自封性の筒状弾性シールで超高水圧の深海においても密封を確保することを特徴とする資源採掘バケット又は湿式製錬バケットの圧力増減タンク。
【請求項4】
請求項1の資源採掘バケット又は湿式製錬バケットにおいて、このバケットの外部上面には容積の増減で減圧(真空圧),加圧を操作する複数の圧力増減タンクを取り付けたものであり、これらの圧力増減タンクは2基を1組とするツインの圧力増減タンクとし、一方の圧力増減タンクは、これの容積が縮小限界で通水をバケット内部のみとして容積拡張で減圧するとき、もう一方の圧力増減タンクは、容積が拡張限界で通水をバケット外部のみのとして容積縮小で滞留水を外部に吐き出すようにし、二つの異なるサイクルを組合せることで、資源採掘バケットの減圧(真空圧)が常に持続されることを特徴とする圧力増減タンクをツインタンクとした資源採掘バケット又は湿式製錬バケット。
【請求項5】
請求項1のせん断強度の大きい堆積資源泥の採掘工法に使用する資源採掘バケットおいて、このバケットの底部に補強した刃先を付け、且つ資源採掘バケットに複数の振動装置あるいは油圧ハンマーを取り付け、これにより当該資源採掘バケットを海底に必要な深さまで打設することを特徴とする資源採掘バケット。
【請求項6】
請求項1の資源採掘バケットの構造において、このバケットは底面開口で、内部空間は濾過及びドレーン機能が付加された隔壁で分割して隔室が形成され、下部の隔室はさらに隔壁で細分割されているように、バケット内部空間を隔壁で二段階分割していることを特徴とする資源採掘バケット。
【請求項7】
請求項1の資源採掘バケットにおいて、このバケットの外部上面には複数のスパッド形式の海底移動装置を取り付けたものであり、海底移動装置の構造は、四方向に取り付けた8本の倍数の水平伸縮ビームの各々の先端部にスパッドとなる鉛直伸縮柱を固定し、2本の倍数を1組としたスパッドの先端部には共有の水平支持用のブレードを固定またはヒンジ結合で取り付け、さらにはブレードの片側あるいは両側には共有の鉛直支持となるフランジを固定したもので、スパッドに鉛直支持のフランジを加えたことにより、四方向の海底移動装置を操作することで、海底水平移動をすることに加えて、資源採掘バケットの底部とスパッドのフランジの位置を操作することにより堆積資源泥の採掘厚さを調整する機能があることを特徴とする資源採掘バケット。
【請求項8】
請求項1の資源採掘船の湿式製錬圧密槽において、この製錬圧密槽の上部構造である湿式製錬バケットの外部上面には内部ドレーンと連結していて容積の増減で減圧(真空圧),加圧を操作する複数の圧力増減タンク及び振動装置が取り付けられ、このバケットの内部は、濾過及びドレーン機能が付加された部材で形成され、底部には圧力増減タンクに連結した水平及び斜め下方に向けた無数のノズル孔を設けたリーチング液用の噴射管が張り巡らされており、下部構造の浮体式受泥槽の内面は濾過及びドレーン機能が付加されていて、湿式製錬バケットが浮体式受泥槽に挿入して組込まれると互いのドレーンが接触して一体化した湿式製錬圧密槽となり、リーチング液に浸された資源泥を真空圧密で資源溶液と残泥に急速分離することを特徴とする湿式製錬圧密槽。
【請求項9】
請求項1の資源採掘船を用いた深海底の堆積資源泥の採掘・引上げ工法において、当該資源採掘船に搭載された資源採掘バケットは容積の増減で減圧(真空圧),加圧を操作する複数の圧力増減タンクを備えたものであり、当該工法の工程は資源採掘バケットを降下させて海底での据付け工、次に、圧力増減タンクの容積拡張における上向きの容積拡張力の反力で資源採掘バケットを必要な深さの海底地盤までの圧入工、これと併行して減圧で資源採掘バケット内部の残留海水を真空圧で圧力増減タンクに吸引、続いて海底の堆積資源泥を資源採掘バケット内部全体に真空圧により極限まで吸引する採掘工、次に、減圧による圧力差が資源採掘バケットの外部上面に圧密荷重として作用することで堆積資源泥の圧密を進行させて軟弱な堆積資源泥の密度増加,強度増加を図る圧密工、次に、資源採掘バケットに取り込んだ堆積資源泥の落下防止力としての真空圧による吸引力に加えて資源採掘バケットの内部構造との周面摩擦力で堆積資源泥を保持しながら船上への引上げ工、以上の工程が示すように、資源採掘バケットの圧力増減タンクの減圧(真空圧)機能の活用により堆積資源泥を圧密して採掘,引上げをすることを特徴とする資源採掘船を用いた深海底の堆積資源物の採掘・引上げ工法。
【請求項10】
請求項1の資源採掘船の湿式製錬圧密槽を用いた資源泥の湿式製錬工法において、湿式製錬バケットは容積の増減で減圧(真空圧),加圧を操作する複数の圧力増減タンクと振動装置及びリーチング液の噴射管を備えたものであり、当該工法の工程は湿式製錬バケットの圧力増減タンクにリーチング液を満たし、湿式製錬バケットを資源泥が入っている浮体式受泥槽に挿入して組合せることで湿式製錬圧密槽を形成する過程で、挿入と同時に圧力増減タンクの容積縮小の加圧でリーチング液を噴射させ、さらに振動を加えることでリーチング液と資源泥の混合工程、次に、リーチング液に浸された資源泥は圧力増減タンクの容積拡張の減圧(真空圧)で真空圧密を進行させて圧力増減タンクに資源溶液を急速に集積させる資源溶液と残泥との分離工程、以上の工程が示すように湿式製錬バケットの圧力増減タンクの容積拡張・縮小による減圧(真空圧)・加圧機能の活用、湿式製錬圧密槽における真空圧密で迅速に資源泥をリーチングすることを特徴とする湿式製錬工法。
【請求項11】
請求項1の資源採掘船を用いた深海底の表層下にある堆積資源泥の採掘工法において、当該資源採掘船に搭載された資源採掘バケットは容積の増減で減圧(真空圧),加圧を操作する複数の圧力増減タンクと複数のスパッド形式の海底移動装置を備えたものであり、当該工法の工程は、まず、表層の除去方法は表層を資源採掘バケット内部に取り込んだならば、資源採掘バケットを資源採掘区域外にスパッド形式の海底移動装置で移動し、次に資源採掘バケットの圧力増減タンクの通水はバケット外部のみとし、これの容積を拡張して圧力増減タンクを満水状態とし、次に通水はバケット内部のみとして圧力増減タンクの容積を縮小することでこのタンクに貯留した海水に圧力を加え、水圧で堆積資源泥を資源採掘バケットの外に押し出し、次に資源採掘区域内に戻って表層下にある堆積資源泥を採掘するもので、以上の工程が示すように圧力増減タンクの容積拡張・縮小による減圧・加圧機能と海底移動装置の機能を活用することを特徴とする深海底の表層下にある堆積資源泥の採掘工法。
【請求項12】
請求項1の資源採掘船を用いた堆積資源泥の残泥処理工法において、湿式製錬バケット及び資源採掘バケットは容積の増減で減圧(真空圧),加圧を操作する複数の圧力増減タンクを備えたものであり、当該工法の工程は、まず、湿式製錬バケットの圧力増減タンクに中和液を満たし、次に、湿式製錬バケットは浮体式受泥槽に存置された残泥に対して、圧力増減タンクの容積縮小の加圧で中和液を噴射しながら振動を加えて残泥と混合して無害化させ、次に、湿式製錬バケットは浮体式受泥槽に完全に挿入して一体化して製錬圧密槽を形成し、圧力増減タンクの容積拡張の減圧(真空圧)による真空圧密で、中和反応液を圧力増減タンクに急速集積すると共に残泥の密度,強度増加を図り、次に、浮体式受泥槽は資源採掘バケットの真下に移動させて、残泥を資源採掘バケット内部に真空圧で吸引して移し替え、次に、資源採掘バケットは真空圧を持続させながら深海底まで降下させて据付け、次に、資源採掘バケットの圧力増減タンクは通水をバケット外部のみにして容積を拡張することで満水状態とし、次に、減圧タンクは通水をバケット内部のみにして容積を縮小することで圧力増減タンクに貯留した海水に圧力を加え、水圧で残泥を資源採掘バケットの外に押し出し、無害化した残泥を元の海底に戻すことを特徴とする堆積資源物の残泥処理工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6千mの深海底の堆積資源物であるレアアース泥やマンガン団塊を底面開口のバケットによる採掘・引上げ・湿式製錬・残泥処理工法と当該工法に使用する資源採取バケット,湿式製錬バケット,圧力増減タンク,湿式製錬圧密槽,資源採取バケットを吊るして昇降させる資源採掘船に関する。
【背景技術】
【0002】
レアアース元素は産業のビタミンとも呼ばれ、再生可能エネルギーや電気自動車等の電池材料、PET等の医療装置をはじめとした最先端産業に必須の素材である。また、その安定供給はクリーンエネルギーへのシフトにつながることで間接的に気候変動緩和に貢献する。そのため、レアアースの開発は日本のみならず世界のSDGs達成に向けて意義あるものになると考えられている。
【0003】
レアアースの陸上鉱床は世界中に多数確認されている。しかし、レアアース資源の多くは低品位の鉱石であって、しかも放射性物質と混合していることが多い。レアメタルを抽出した後の残渣は採掘量の99%以上になる。今日のレアアースの問題は,採掘に伴う環境破壊、そしてレアアースの製錬に伴って発生する有害物・廃棄物の適正な処理が問題となっている。本来、適切な環境対策なしに金属資源として製造すべきものではない。しかし、実際の環境対策は国によって大きな隔たりがあるのも事実である。
【0004】
中国は優良なレアアースの陸上鉱床に恵まれている。しかも環境制限が比較的緩いこともあってレアアースの世界生産は中国の寡占状態にある。時には不安定となる供給構造が世界的に問題となっている。そこで各国はレアアースの安定的確保と持続可能な利用に向けた対策が進められている。レアアースの調達先の多角化の他、リサイクル促進に向けた技術開発、代替材の開発などである。
【0005】
しかし、IEA(国際エネルギー機関)は脱炭素に向けて、レアメタルの需要が急増すると予測している。2021年5月5日、IEAは、世界が脱炭素に向けて再生可能エネルギーや蓄電池、燃料電池などを拡大させるにしたがって、レアメタルなどの鉱物資源の需要予測が急増することから、各国政府が何等かの対応をしていく必要があると発表した。レアメタルの不足を脱炭素のボトルネックにしないための警鐘であろう。
【0006】
2011年7月、東京大学大学院工学系研究科の加藤泰浩教授を中心とする研究グループはレアアースを多く含む深海泥が太平洋の広範囲に分布し、資源的に高い価値を持っているという論文を発表した。さらに、陸上資源に比べて超高品位のレアアース泥が日本の排他的経済水域である南鳥島周辺の海底に分布していることも突き止めた。
このレアアース泥は、資源として次の特長を有する。(1)高い総レアアース品位を示し、特に産業上重要な重レアアースに富む。(2)太平洋の広範囲に分布するため膨大な資源量が見込まれる。(3)遠洋性の深海堆積物として層状に分布するため資源探査が容易である。(4)陸上鉱床の製錬,精錬,残渣処分において、コスト高の原因となる環境汚染源のトリウムやウランなどの放射性元素をほとんど含まない。(5)泥状なので常温の希酸で容易にレアアースの抽出ができる。
【0007】
当面の最大の課題は6千mの深海という水中,600気圧の超高圧という特殊な環境下でのレアアース泥の採掘、及び海上に引上げの技術開発となっている。そして、究極の課題はレアアース泥の経済性である。経済比較は資源から最終製品、廃棄物の処理、さらには環境までも考慮したトータルコストである。
【0008】
陸上資源は海底資源に比べて低コストで採掘できる。しかし、残渣等の廃棄物の処理や環境破壊等の問題が顕在化しているため、採掘・製錬を行う条件が年々厳しくなってくるであろう。また、鉱石中のレアメタル品位も低下傾向にあるため、廃棄物の発生量の増大と生産コストの増加は避けられない。これに対して、レアアース泥の強みは陸上資源に比べて、レアメタル品位が非常に高く、その量は膨大である。環境汚染源としての放射性元素をほとんど含まない。また、レアアースの抽出は常温の希酸で容易にできることなどである。
【0009】
レアアース泥の採取はエアリフト方式の技術開発が進められている。この工法の作業工程は、海底泥を採泥・揚泥しやすい状態とする解泥、揚泥管内に泥水として取り込む採泥、揚泥管内の泥水に細かな気泡を送り込んでその浮力で船上まで海水と共に浮上させる揚泥である。そして、揚泥管で船上に吸い上げたレアアース泥を巨大な脱水槽で水分を除き、運搬船に移す。運搬船は脱水したレアアース泥を精錬工場へ運ぶというものである。
【0010】
海底土砂の浚渫に、真空圧密と浚渫を一連とした真空圧密浚渫工法という新しい工法の開発が進められている。真空圧密工法は軟弱地盤の表面を何らかの方法で密閉する。例えば、陸上の真空圧密工法は気密シートで覆う。海底地盤の真空圧密浚渫工法は気密載荷函体と称する鋼製箱型装置が使用される。この気密載荷函体は地盤の圧密載荷及び浚渫のバケットの役割をする。この函体の構造は底面開口の箱型構造で、函体の外部上面の中央部分には気水分離タンクと函体タワーが取付けられている。また、内部天井面には、水と空気を分離する気水分離タンクと連通する薄型の真空タンクを設け、これの直下にドレーン機能のある函体隔壁で分割して複数の隔室を形成し、隔室上面には透水性蓋を設けられている。但し、この工法は最大水深50m程度を想定したものである。(例えば、特許文献1~4参照)
【0011】
真空圧密浚渫工法は、気密載荷函体を海底地盤に据え付けて密閉する。載荷函体内に取り込まれた海底土は真空圧密工法により密度増加,強度増加が図られる。浚渫は載荷函体内の海底土を真空圧で吸付けた状態で載荷函体ごと引上げて浚渫する。この工法の特徴は浚渫土が圧密した改良土であること。また、海水汚濁を一切発生させない工法である。さらには、浚渫土を載荷函体ごと別の海域に運搬し、載荷函体を海底面まで降ろして海底盛土が可能である。このときも海水汚濁を発生させることはない。
【0012】
真空圧密浚渫工法において、巨大な気密載荷函体は、専用作業船を使わずに自潜航式の気密載荷函体とすることで建造費の大幅な縮減化を図るものも開発が進められている。この真空圧密浚渫工法で注目されるのは気密載荷函体の海底移動装置である。この装置はトラッククレーン等に見られる油圧で伸縮するブームと同様の水平伸縮ビームにスパッドに取り付け、気密載荷函体の水平移動装置としたものである。なお、スパッドとは船体の移動を止めるため、船体から海底へ突き立てた柱状体をいう。ただし、この海底移動装置は単に気密載荷函体を海底で水平移動する機能のみである。(例えば、特許文献5参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第6582361号 (PCT/JP2017/010246)
【特許文献2】PCT/JP2018/014036
【特許文献3】PCT/JP2018/019707
【特許文献4】PCT/JP2020/036153
【特許文献5】PCT/JP2021/049038
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
太平洋の広範囲の深海には、レアアース泥やマンガン団塊泥が分布して資源的に大きな価値を持っている。レアアース泥の価値はレアメタル品位が非常に高く、その量は膨大で、環境汚染源としての放射性元素をほとんど含まないなどである。海底レアアースの開発は6千mの深海からレアアース泥を海上まで如何にして引き上げるかが最大の課題となっている。現在進められているレアアース泥の採取方法にはエアリフト方式がある。この方法は、レアアース泥を大量の海水と混合して気泡で海水ごと浮上させる。これに対して本発明の方法は、底面開口の資源採掘バケットを用いてレアアース泥を海底で圧密により脱水した状態で海上に引き上げる。本発明の課題はこの深海底の資源泥の採掘・引上げ・製錬・残泥処理工法に使用する資源採掘船と搭載する装置の開発である。資源物を抽出した後に発生する残泥は、採掘量のほぼ同量となる。この残泥は海洋投棄ではなく、自然環境に対処して元の深海底に戻す。このような計画は未だないようである。そして、精錬工場に持ち帰るのはレアアース溶液等の資源物のみとする。この方法はコスト面,環境面から見て、深海底資源開発の究極の方法である。
【0015】
真空圧密浚渫工法は真空圧を利用して底面開口のバケット(気密載荷函体)で海水汚濁を発生させることなく海底土砂の密度増加,強度増加を行った後、改良された海底土砂を浚渫する。また、逆の工程でバケット内に保持した土砂を海底面まで降下させ、海水汚濁を発生させることなく海底盛土をすることができる。もしも、この真空圧密浚渫工法が6千mの深海でも実現可能であるならば、巨大な底面開口の資源採掘バケットで深海の資源泥を圧密で余分な間隙水を脱水して大量に採掘することができる。そして、残泥は元の海底に海水汚濁を発生させることなく戻すことができる。これは環境に配慮した方法であり、且つ、残泥処理のコスト削減が極めて大きな方法である。そのためには、従来の真空圧密システム工法が深海においても成立するかどうかを検討する。
【0016】
従来の真空圧密浚渫工法の減圧は真空ポンプで行っている。海上に真空ポンプを設置した場合、資源採掘バケットは真空ホースで連結される。6千mの深海底に対応する圧気ホースは可能であっても真空ホースは不可能である。真空ホースは超高水圧で潰されてしまって機能できない。堅牢な金属のパイプとなる。金属パイプはホースのように巻取り機で巻取ることができない。金属のパイプでは工法が限定される。真空装置は資源採掘バケットに直接取り付ける必要がある。しかし、数千メートルの深海に対応する真空ポンプの開発は技術的に極めて困難であり、コスト的にも無理がある。技術的には、例えば600気圧の超高水圧における真空ポンプの排水,排気の問題である。本発明の資源採掘船の開発が解決する課題1は、資源泥の採掘・引上げにおいて、真空ポンプを使わない減圧(真空圧)装置を備えた深海用の資源採掘バケットの開発である。
【0017】
深海底の堆積資源物の採取工法は資源採掘船に吊るした資源採掘バケットの昇降でレアアース泥,マンガン団塊泥を採掘する。レアアース泥の高品位層は表層下の浅い層に多い。従って、表層を除去して採掘する必要がある。つまり、表層を除去するために、資源採掘バケットは海底移動装置が備わっている必要がある。また、マンガン団塊は海底泥の表面に露出した状態で存在する。表層数十cmの採掘のために、6千mの深海を資源採掘バケットが昇降を繰り返すのは効率が悪い。本発明が解決する課題2は、数十cmの表層を海底移動しながら次々と採掘する海底移動装置の開発である。単なる海底移動装置は既に開発が進められている。課題2には、堆積資源泥の採掘厚さを調整する機能がある海底移動装置の開発である。
【0018】
レアアース泥は遠い太平洋の広範囲に分布している。精錬工場に持ち帰るのはレアアース溶液等の資源物のみとするのが最良である。そうすると、資源採掘船の船上には効率の良い資源泥製錬設備が必要となる。次の課題は資源採掘バケットと資源泥製錬設備間の資源泥の移し替えが容易な方法である。例えば、その方法として、移し替えバケットを台車に乗せて船上を移動させる方法がある。移し替えバケットと資源採掘バケットは同規模の巨大な重量のバケットとなり、これが船上を移動すると大きな偏心荷重となる。資源採掘船は超巨大化して建造費を押し上げて資源採掘コストを押し上げることになる。深海底の堆積資源泥の採掘・引上げ・製錬・残泥処理工法に使用する資源採掘船において、本発明が解決する課題3は、船上で湿式製錬を可能とするために効率的な資源泥の移し替え方法、課題4は資源採掘船の必要以上の超巨大化を抑制する方法、課題5は効率の良い資源泥の製錬設備の開発である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
課題1は、資源採掘バケットに装備する真空ポンプに代わる減圧(真空)装置の開発である。ただし、加圧装置も必要になるので減圧・加圧兼用装置の開発とする。この装置の解決手段はボイル・シャルルの法則に基づく装置である。理想気体において、一定量の気体の体積Vは,圧力Pに反比例し,絶対温度Tに比例する。しかし、6千m深海(600気圧)の超高圧条件下では、気体分子の体積を無視できない。このため実在気体の法則適用結果は理想気体から大きく乖離する。乖離は50%程度見込まれる。しかし、この乖離の問題と減圧・加圧装置の開発とは別問題で、開発には何ら支障はない。課題1の根本的課題は、超高水圧の深海における減圧・加圧装置である圧力増減タンクは、タンクの容積を拡張,縮小する動きを伴うが、このときのタンクの密封の確保にある。
【0020】
ここで、深海底資源泥の開発で減圧・加圧装置の働きから必要性を確認する。本発明の資源採掘バケットは真空圧密浚渫工法の気密載荷函体と同様に底面開口の水平断面の広い構造である。資源採掘バケットと気密載荷函体の本体の構造は規模の違いはあっても基本的に同じである。根本的な違いは、対象の海底が浅海底か超深海底かであり、その結果、装備する減圧装置が真空ポンプか否かである。真空圧密浚渫工法と本発明の深海底資源泥の開発における減圧(真空圧),加圧装置の働きについて整理する。
【0021】
まず、減圧の働きは、資源採掘バケット又は気密載荷函体の開口された底面を境界に内部が減圧された場合、外部の水,空気,泥,例えば、レアアース泥が真空圧で吸引される。次に、バケット又は函体が不透水地盤,例えば粘土地盤に据え付けられて密閉状態の場合、内部が減圧されると外圧と内圧の差(減圧分)がバケット又は函体の上面に載荷される。すなわち圧密荷重となり、内部のレアアース泥は圧密が進行する。次にレアアース泥を保持したままバケット又は函体を海上まで吊り上げる場合、底面開口なので、落下防止力がなければ自重で落下する。落下防止力は真空圧の吸引力及びバケット又は函体内部とレアアース泥との周面摩擦力である。次にバケット又は函体の内部に保持したレアアース泥を外部に押し出す場合は、真空圧を解除しても周面摩擦力が大きいければ落下しないこともある。このとき、加圧の働きが必要になる。
【0022】
まず、資源採掘バケットの構造である。このバケットの構造は真空圧密浚渫工法の気密載荷函体と同様に底面開口の水平断面の広い構造である。例えば、バケット本体部分は水平断面積が50m×50m~100m×100m,高さ1.5m~2.0m程度の巨大な薄い箱型構造である。バケットの内部の天井面,側面は濾過及びドレーン機能が付加された部材で箱型を形成し、さらに内部空間は濾過,ドレーン機能が付加された隔壁で分割して隔室を形成する。なお、天井面のドレーンは隔壁頂部の通水口で連絡されていてドレーン全体が一体である。バケット外部上面には内部ドレーンと連結する複数の圧力増減タンク,4方向のスパッド形式の海底移動装置,資源採掘バケットの複数の吊り固定具、そして、必要に応じて振動装置等を取り付けたものである。なお、資源採掘バケットの内圧と外圧が大きく差が生じるのは圧力増減タンクである。また、ここでは4方向の内、逆方向も一つの方向として数えている。なお、資源採掘バケットと湿式製錬バケットの構造は基本的に同じである。
【0023】
本発明の真空ポンプに代わる課題1の減圧・加圧装置の解決手段は圧力増減タンクの構造にある。その構造は、資源採掘バケットの頂板に固定される外筒と外筒内のピストンの上下動の傾き防止のガイドとなる内筒の中間に仕切板を付けて筒型ピストンとし、これの上下動装置、(例えば復動式油圧シリンダー)及び筒型ピストンの仕切板に設けた外部との自動通水仕切弁と資源採掘バケット本体の頂板に設けた内部との自動通水仕切弁から成る。当該圧力増減タンクの基本構造は外筒と内筒を組み合わせた堅牢な二重構造なので、超深海にも対応し、且つ装置の大規模化を容易とすることが特徴である。なお、筒の断面は円形でも多角形でも良い。
【0024】
減圧・加圧装置の絶対条件は圧力増減タンクの密封性の確保にある。本発明の圧力増減タンクの密封方式は、筒型ピストンの外周面に被せる柔軟で弾力のある筒状弾性シールを筒型ピストンの上部,下部と仕切板の位置の3か所で帯状に接着固定し、接着固定面を除いた2か所の自由帯状面の筒型ピストン本体部分には数多くの通水口、例えば、スリットを設ける。こうすることで、水圧を自由帯状面に面的に作用させて外筒に密着させ、相対移動する外筒と筒型ピストンの隙間を密封する。本発明の水圧による自封性の筒状弾性シールは超高水圧の深海においても密封を確実に保つことを可能とした。
【0025】
本発明の圧力増減タンクはタンクの容積の増減で減圧(真空圧),加圧を操作する。圧力増減タンクの内部と外部は筒型ピストンの仕切板が境界となる。タンクが拡張すると圧力差は外部が高くなる。従って、筒状弾性シールは外部の自由帯状面が水圧で外筒に密着して隙間を密封する。タンクが縮小すると圧力差は内部が高くなる。従って、筒状弾性シールは内部の自由帯状面が水圧で外筒に密着して隙間を密封する。このように本発明の圧力増減タンクは、筒状弾性シールで密封が確保され、タンクの容積を拡張,縮小することで深海の外圧に対して数気圧(atm)の減圧(真空圧),加圧を容易に実現することを可能とする。ただし、海上においての減圧は理論的に1気圧までである。
【0026】
なお、機械に使われる流体のシールとして、断面が0の形をしたゴム製品に0リングがある。0リングの原理は機械の接続部に小さめの溝を設けて0リングを装着し、機械を組み立てると0リングが圧縮される。0リングに圧力が加わるとゴム弾性により接触圧力が発生し、この圧力によりシールされる。この接触圧力はシールすべき流体圧力よりも常に大きくなってシールできる仕組みになっている。このように0リングはゴム弾性の反発力を最大限に活用している。これに対して本発明の自封性シールは、接触面を十分に取って水圧を面的に広く作用させることで、接触圧力が流体圧力よりも大きくなるように設計する。このため本発明のシールは摩擦抵抗が比較的小さく、大型装置の動きを伴うシールとして最適である。
【0027】
本発明の資源採掘バケットに取り付けられた複数の圧力増減タンクは、所定の減圧(真空圧),加圧をこれの容積を調節しながら拡張,縮小する。しかし、タンクの容積には限界があるので長時間の所定の圧力の維持にも限界がある。そこで、複数の圧力増減タンクは2基を1組とするツインの圧力増減タンクとして分ける。ツインの圧力増減タンクにおいて、一方の圧力増減タンクは縮小限界状態で通水を内部のみとする。仕切弁操作は外部通水のピストン仕切板の自動仕切弁を閉,内部通水のバケット本体の頂板の自動仕切弁を開とする。そして、圧力増減タンクの容積の拡張開始で減圧するとき、もう一方の圧力増減タンクは拡張限界状態で通水を外部のみとする。仕切弁操作はピストン仕切板の自動仕切弁を開,バケット本体の頂板の自動仕切弁を閉とする。そして、圧力増減タンクの容積の縮小開始で滞留水を外部に吐き出すように計画にする。二つの異なるサイクルを組合せることで資源採掘バケットの減圧が常に持続されることになる。すなわち、圧力増減タンクをツインとした資源採掘バケットは、必要な圧密時間の確保、さらには資源採掘バケットの引き揚げ時の堆積資源泥の落下防止力となる吸引力を持続的に保持するものである。
【0028】
本発明の採掘を対象とする堆積資源泥は、通常は硬質泥ではないが、硬質泥も想定される。そこで、本発明の資源採掘バケットは、資源採掘バケットの底部に補強した刃先を付け、且つ資源採掘バケットに複数の振動装置あるいは油圧ハンマーを取り付け、これにより当該資源採掘バケットを海底に必要な深さまで打設して据付けられる資源採掘バケットを用意する。
【0029】
本発明の底面開口の資源採掘バケットによる資源泥の引上げは、資源泥の落下力である資源泥の自重に対して、落下防止力である真空圧による吸引力とバケット内部構造との周面摩擦力を大にすることである。しかし、資源泥が超軟弱で流動体では引上げは無理である。そのために軟弱泥は真空圧密で含水比を液性限界以下とし、引き揚げ時に資源泥が分離しない強度に上げている。ところで、深海から海面まで資源採掘バケットが浮上する過程で、資源泥の間隙水圧は外圧に対して極端に大きくなる。間隙水は外圧に等しくなるべく膨張する。この膨張の影響は、強度では低下傾向、周面摩擦力では増加傾向が推察される。総合力としての評価は不明である。そこで、本発明の資源採掘バケットの内部空間は、濾過及びドレーン機能が付加された隔壁で分割して隔室が形成され、下部の隔室はさらに隔壁で細分割されているように、バケット内部空間を隔壁で二段階分割している資源採掘バケットを用意する。このバケットは保持した資源泥の落下口がさらに隔壁で細分割されている。ここを資源泥が通過するときには隔壁に対するせん断抵抗が発生する。また、周面摩擦における摩擦面が2倍となる。これにより、強度低下した場合の対策とする。
【0030】
課題2には、資源採掘バケットに装備する堆積資源泥の採掘厚さを調整する機能がある海底移動装置の開発である。深海底における資源採掘バケットの採掘は、バケット自体の海底の水平移動,海底離脱の鉛直移動の機能が必要である。海底移動装置の解決手段は油圧で伸縮するクレーンのブームと同様の水平伸縮ビームの活用である。ただし、水平伸縮ビームにスパッドに取り付けた海底移動装置は既に開発されている。しかし、この海底移動装置には海底の一定厚さの表層を次々と移動しながら採掘する機能はない。海底の表層資源、例えば、マンガン塊の採掘に必要な機能である。
【0031】
本発明のスパッド形式の海底移動装置を備えた資源採掘バケットは、当該バケット上面の四方向に取り付けた8本の倍数の水平伸縮ビームの各々の先端部にスパッドとなる鉛直伸縮柱を固定し、2本の倍数を1組としたスパッドの先端部には共有の水平支持板となるブレードを固定またはヒンジ結合で取り付け、さらにはブレードの片側あるいは両側には共有の鉛直支持板となるフランジを固定したものである。従来の海底移動装置にはフランジがない。本発明の海底移動装置のスパッドには鉛直支持板のフランジを加えた。これは露出、あるいは海底表層に堆積しているマンガン塊の採掘を意図したものである。本発明の資源採掘バケットは四方向のスパッド形式の海底移動装置を操作することで、海底水平移動に留まらず、鉛直支持フランジにより、資源採掘バケット底部とスパッドのフランジの位置を操作し、堆積資源泥の採掘厚さを調整する機能を備えたものである。なお、2本の倍数を1組としたスパッドの先端部に共有の水平支持板のブレードを取り付けた理由は、スパッドの一本一本の鉛直支持力にバラツキが出てきた場合に不都合が生じることによる。
【0032】
本発明が解決する課題3は、資源採掘船上で製錬を可能とするために効率的な資源泥の移し替え方法、課題4は資源採掘船の必要以上の超巨大化を抑制する方法、課題5は効率の良い資源泥の製錬設備の開発である。これらの課題の解決方法は本発明の資源採掘船の構造形態と圧力増減タンクの真空圧,加圧の二つの機能を活用する。
【0033】
当該資源採掘船は深海底の堆積資源泥の採掘・引上げ・製錬・残泥処理工法に使用する。資源採掘船はこれの船央空間を囲む船上に船央立体骨組が組まれ、ここに、資源採掘バケットと資源泥の製錬装置である湿式製錬圧密槽が並列に配置される。これは、資源採掘船の偏心荷重を極力抑えるためである。また、船央空間の形成は、例えば、複数の台船で船央空間を形成して船体を一体化する。資源採掘バケットは減圧・加圧装置である圧力増減タンクを備えた底面開口のバケットで、船央立体骨組から深海底までを昇降する。これに対して、湿式製錬圧密槽は上部構造の湿式製錬バケットと下部構造の浮体式受泥槽から構成され、これらが組合さると湿式製錬圧密槽となる。湿式製錬バケットは資源採掘バケットと同様に圧力増減タンクを備えた底面開口のバケットで、船央立体骨組から浮体式受泥槽まで昇降する。浮体式受泥槽は船央空間の船体側面に設けたガイドレールで鉛直のみが拘束されていて船央空間内の海面を水平移動し、資源採掘バケットを引上げたときは浮体式受泥槽がこれの真下に移動可能な空間が確保される。
【0034】
本発明の資源採掘船の特徴は、圧力増減タンクの機能に加えて、船央空間の鉛直・水平の交差動線の活用で、深海底から圧密した資源泥の採掘,引上げ、そして、船上での資源泥あるいは残泥の移し替えが容易であることから、資源泥の製錬を船上で行うこと、及び残泥を安全に元の深海底に戻す残泥処理を可能とした。さらには、浮体式受泥槽はこれ自体が浮体なので、資源採掘船の大きな偏心荷重の発生とはならず、資源採掘船の必要以上の超巨大化を抑制して建造費の縮減化を図っていることにある。
【0035】
資源採掘船を用いた深海底の堆積資源泥の採掘・引上げ工法において、前述のように、当該資源採掘船に搭載された資源採掘バケットは容積の増減で減圧(真空圧),加圧を操作する複数の圧力増減タンクを備えたものである。当該工法の工程は、まず、底面開口の資源採掘バケットを海底に降ろして据付け工程となる。次に、圧力増減タンクの容積拡張における上向きの容積拡張力の反力で資源採掘バケットを必要な深さの海底地盤までの圧入、これと併行して真空圧で資源採掘バケット内部の残留海水を圧力増減タンクへの吸引、続いて海底の堆積資源泥を資源採掘バケット内部に吸引する採掘工程となる。次に、減圧(真空圧)による圧力差が資源採掘バケットの外部上面に圧密荷重として作用することで堆積資源泥の圧密が進行して軟弱な堆積資源泥の密度,強度増加を図る圧密工程となる。次に、資源採掘バケット内部に取り込まれた堆積資源泥の落下防止力は、真空圧による吸引力に加えて資源採掘バケットの内部構造との周面摩擦力である。これらの力を利用して資源採掘バケット内に資源泥を保持して船上への引上げ工程をもって当該工法は終了となる。以上の工程が示すように、本発明の深海底の堆積資源泥の採掘・引上げ工法の特徴は、底面開口の資源採掘バケットの圧力増減タンクの減圧(真空圧)機能の活用により、堆積資源泥を高密度にして大量に採掘,引上げを行うことにある。
【0036】
資源泥製錬は資源採掘船上であっても作業効率の良い資源泥製錬設備が必要である。その手段は湿式製錬圧密槽の上部構造の湿式製錬バケットと下部構造の浮体式受泥槽の機能である。湿式製錬バケットはこれの外部上面には内部ドレーンと連結していて容積の増減で減圧(真空圧),加圧を操作する複数の圧力増減タンク及び振動装置が取り付けられ、このバケットの内部は、濾過及びドレーン機能が付加された部材で形成され、底部には圧力増減タンクに連結した水平及び斜め下方に向けた無数のノズル孔を設けたリーチング液用の噴射管が張り巡らされている。下部構造の浮体式受泥槽はこれの内面は濾過及びドレーン機能が付加されていて、湿式製錬バケットが浮体式受泥槽に挿入して組込まれると互いのドレーンが接触して一体化して湿式製錬圧密槽となる。この湿式製錬圧密槽の特徴はリーチング液に浸された資源泥を真空圧密で資源溶液と残泥に急速分離することである。
【0037】
資源採掘船に搭載の湿式製錬圧密槽を用いた資源泥の湿式製錬工法において、前述のように湿式製錬バケットは複数の圧力増減タンク,振動装置及びリーチング液の噴射管を備えたものである。当該工法の工程であるが、湿式製錬バケットはこれの圧力増減タンクにリーチング液を満たし、資源泥が入っている浮体式受泥槽に挿入する。挿入と同時に圧力増減タンクの容積縮小の加圧でリーチング液を噴射させ、さらに振動を加えることでリーチング液と資源泥を混合する。湿式製錬バケットと浮体式受泥槽は組み合わされて湿式製錬圧密槽が形成される。次に、湿式製錬圧密槽内でリーチング液に浸された資源泥は圧力増減タンクの容積拡張の減圧(真空圧)で真空圧密が進行し、圧力増減タンクには資源溶液を急速に集積され、資源溶液と残泥との分離となる。以上の工程が示すように、本発明の湿式製錬工法は湿式製錬バケットの圧力増減タンクの容積拡張・縮小による減圧(真空圧)・加圧機能及び湿式製錬圧密槽の圧密機能によって迅速に資源泥をリーチングする。
【0038】
資源採掘船を用いた深海底の表層下にある堆積資源泥の採掘工法において、当該資源採掘船に搭載された資源採掘バケットは容積の増減で減圧(真空圧),加圧を操作する複数の圧力増減タンクと複数のスパッド形式の海底移動装置を備えたものである。当該工法の工程であるが、まず、表層の除去方法は表層を資源採掘バケット内部に取り込んだならば、資源採掘バケットを資源採掘区域外にスパッド形式の海底移動装置で移動する。次に、資源採掘バケットの圧力増減タンクの通水はバケット外部のみとし、これの容積を拡張して圧力増減タンクを満水状態とする。次に、通水はバケット内部のみとして圧力増減タンクの容積を縮小することでこのタンクに貯留した海水に圧力を加え、水圧で堆積資源泥を資源採掘バケットの外に押し出す。次に資源採掘区域内に戻って表層下にある堆積資源泥を採掘する。以上の工程が示すように、本発明の深海底の表層下にある堆積資源泥の採掘工法の特徴は、圧力増減タンクの容積拡張・縮小による減圧(真空圧)・加圧機能と海底移動装置の機能を活用することにある。
【0039】
資源採掘船を用いた堆積資源泥の残泥処理工法において、当該資源採掘船に搭載された資源採掘バケット及び湿式製錬バケットは容積の増減で減圧(真空圧),加圧を操作する複数の圧力増減タンクを備えたものである。当該工法の工程であるが、まず、船央立体骨組内を昇降する湿式製錬バケットは、これの圧力増減タンクに中和液を満たしてから浮体式受泥槽に挿入を開始させる。次に、湿式製錬バケットは浮体式受泥槽に存置された残泥に対して、圧力増減タンクの容積縮小で中和液を噴射し、振動を加えながら残泥と混合して中和で無害化させる。次に、湿式製錬バケットは浮体式受泥槽に完全に挿入させて一体化で湿式製錬圧密槽を形成する。そして、圧力増減タンクの容積拡張の減圧による真空圧密で、中和反応液を圧力増減タンクに急速集積すると共に残泥の密度,強度増加を図る中和反応液と残泥を分離する。次に、浮体式受泥槽を資源採掘バケットの真下に移動させて、残泥を資源採掘バケット内部に真空吸引してから浮体式受泥槽を湿式製錬プラント位置に戻す。次に、資源採掘バケットは真空圧で残泥を保持しながら深海底まで降下させて据付ける。次に、資源採掘バケットの減圧タンクは通水をバケット外部のみにして容積を拡張することで満水状態とする。続いて、減圧タンクは通水をバケット内部のみにして容積を縮小することで減圧タンクに貯留した海水に圧力を加え、水圧で残泥を資源採掘バケットの外に押し出し、無害化した残泥を元の海底に戻す。以上の工程が示すように、本発明の堆積資源物の残泥処理工法の特徴は、深海の資源泥を採掘し、資源物を抽出した後に発生する採掘量とほぼ同量の残泥を無害化して元の深海底に戻すもので、環境に配慮し、且つ、極めて大きなコスト削減とするものである。
【発明の効果】
【0040】
太平洋の広範囲の深海には、レアアース泥やマンガン団塊泥が膨大に分布して資源的に高い価値を持っている。本発明の資源採掘船は、これらの資源泥の採掘・引上げ・製錬・残泥処理工法を行う。採掘量とほぼ量となる残泥は、海洋投棄ではなく自然環境に対処して元の深海底に戻す。そして、精錬工場に持ち帰るのはレアアース溶液等の資源物のみとする。この方法はコスト面,環境面から見て、深海底資源開発の究極の方法である。この究極の方法を可能にしたのは、本発明の資源採掘船の構造形態と資源採掘バケット及び湿式製錬バケットが装備している圧力増減タンクの減圧(真空圧),加圧の二つの機能の活用による効果、特に真空圧密の効果によるものである。
【0041】
本発明の圧力増減タンクは容積の増減で真空圧,加圧を操作するもので、従来の真空ポンプでは事実上不可能であった深海の水中・超高圧という特殊な環境下においても、真空圧だけでなく加圧の活用を可能とした。この二つの機能を使い分けることで、前記2種類のバケットで資源泥を真空圧でバケット内に取り込むこと、取り込んだ資源泥を真空圧密で密度増加を図ること、取り込んだ資源泥を加圧でバケット外に押し出すこと、また、湿式製錬においては、リーチング液で満たされたレアアース泥を真空圧密で急速に資源溶液と残泥に分離する。これらの機能は超深海底の資源開発に多大な効果を発揮するものである。
【0042】
減圧・加圧装置の絶対条件は密封性の確保にある。本発明の自封性シールは、接触面を十分に取って水圧を面的に広く作用させることで、接触圧力が流体圧力よりも大きくなるように設計する。このため本発明のシールは摩擦抵抗が比較的小さく、大型装置の動きを伴うシールとして最適である。本発明の圧力増減タンクは自封性シールによって超深海底の資源開発に多大な効果を発揮するものである。
【0043】
本発明の資源採掘船の構造形態の特徴は、船央空間に組まれた船央立体骨組に資源採掘バケットと湿式製錬圧密槽が並列に配置され、底面開口の資源採掘バケットは船央立体骨組から深海底まで昇降する。これに対して湿式製錬圧密槽は上部構造の湿式製錬バケットと下部構造の浮体式受泥槽に分かれ、湿式製錬バケットは底面開口で船央立体骨組から浮体式受泥槽までを昇降し、浮体式受泥槽は船央空間の船体側面に設けたガイドレールで鉛直のみが拘束されて船央空間内の海面を水平移動する。そして、資源採掘バケットを引上げたときは浮体式受泥槽がこれの真下に移動可能な空間が確保される。
前記圧力増減タンクの機能に加えて船央空間の鉛直・水平の交差動線の活用で、深海底から圧密した資源泥の採掘,引上げ、そして、船上での資源泥あるいは残泥の移し替えが容易であることから、資源泥の製錬と残泥を元の深海底に戻す残泥処理を可能とした。さらには、浮体式受泥槽はこれ自体が浮体なので資源採掘船の必要以上の超巨大化を抑制して建造費の縮減化を図った。以上の説明のとおり、深海底資源の究極の開発方法は、本発明の資源採掘船の構造形態と圧力増減タンクの機能、真空圧密の機能がもたらした効果によるものある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】 本発明の実施形態を示す資源採掘バケット中心位置の資源採掘船の鉛直断面図(A-A)
図2】 同湿式製錬圧密槽中心位置の資源採掘船の鉛直断面図(B-B)
図3】 同資源採掘船の平面図
図4】 本発明の実施形態を示す資源採掘バケットの鉛直断面図
図5】 同平面図
図6】 本発明の実施形態を示す圧力増減タンクの鉛直断面図
図7】 本発明の実施形態を示す資源採掘船の採掘状況図
図8】 本発明の実施形態を示す資源採バケットの海底移動の説明図
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態を図1図8に基づいて説明する。
【0046】
図1は本発明の実施形態を示す資源採掘バケットの中心位置の資源採掘船の鉛直断面図(A-A)、同じく図2は湿式製錬圧密槽の中心位置の資源採掘船の鉛直断面図(B-B)、図3は資源採掘船の平面図である。図1図2の断面位置は図3の平面図に示してある。図において、1は資源採掘船、11は台船、12は船央立体骨組である。2は資源採掘バケット、3は湿式製錬圧密槽の上部構造の湿式製錬バケット、32は振動装置、4は湿式製錬圧密槽の下部構造の浮体式受泥槽、41は浮体式受泥槽のガイドレールである。5は資源採掘バケット又は湿式製錬バケットの圧力増減タンク、6は海底移動装置、7は前記バケットを吊るすワイヤーロープや電源ケーブル、信号ケーブルの巻取り装置、9は海面である。図に示すように資源採掘バケット2と湿式製錬圧密槽(湿式製錬バケット3,浮体式受泥槽4)は船央空間に並列に配置されている。
【0047】
図4は資源採掘バケット2の鉛直断面図、図5は平面図である。図において、21は採掘バケット本体、22は自動仕切弁付き通水パイプである。6は海底移動装置、61は水平伸縮ビーム、62はスパッド、63はブレード、64フランジである。8は資源採掘バケット2又は湿式製錬バケット3のワイヤーロープの吊り固定具である。図に示すこれらのバケットは6点吊りの例である。また、フランジはブレードの両側に取り付けた例である。
【0048】
本発明の圧力増減タンク5はタンクの容積の増減で減圧(真空圧),加圧を操作する。図6は資源採掘バケット2又は湿式製錬バケット3の圧力増減タンク5の鉛直断面図である。図(a)はタンクの容積が縮小限界状態、図(b)はタンクの容積が拡張限界状態を示している。図において、51は圧力増減タンクの外筒、52は圧力増減タンクの筒型ピストン、53はピストンの仕切板、54は上下動装置、例えば復動式油圧シリンダーである。55は仕切板に設けた外部との自動通水仕切弁、56は資源採掘バケット本体21又は湿式製錬バケット本体31に設けた内部との自動通水仕切弁、57は筒状弾性シールである。筒状弾性シール57は筒型ピストン52の上部,下部と仕切板の3か所の位置で帯状に接着固定し、接着固定面を除いた2か所の自由帯状面の筒型ピストン52の本体部分には数多くの通水スリットを設ける。ここで、ピストンの仕切板53を境に外部面,内部面となる。こうすることで、水圧を自由帯状面に面的に作用させて外筒に密着させ、相対移動する外筒と筒型ピストンの隙間を密封する。ここで、資源採掘バケット本体21とは資源採掘バケット2から種々の装置、例えば圧力増減タンク等を外した状態である。なお、図の圧力増減タンク5の上下動装置54は1基の例であるが、これを複数配置しても良い。
【0049】
今、資源採掘バケット2が海底に据付けられていて、このバケットの密閉状態を想定する。圧力増減タンク5の内部と外部は筒型ピストンの仕切板53が境界となる。タンクが拡張すると圧力差は外部が高くなり、タンクが縮小すると内部が高くなる。図6の(a)の圧力増減タンク5の容積は縮小限界状態である。ここで、仕切板の外部との自動通水仕切弁55を閉、資源採掘バケット2の内部との自動通水仕切弁56を開とすると、通水は資源採掘バケット2の内部のみとなる。この状態で圧力増減タンク5の容積を拡張すると、タンクは減圧(真空圧)となる。拡張を続けると、図6の(b)の圧力増減タンク5の容積拡張の限界状態に至る。このとき、圧力増減タンク5の内部の圧力よりも外部の水圧の方が高い。それで、筒状弾性シール57は外部の自由帯状面が水圧で圧力増減タンクの外筒51に密着して圧力増減タンク5を密封する。
【0050】
図7は本発明の資源採掘船1に吊るされた資源採掘バケット2を海底まで降下させ、海底資源泥に据え付けた採掘状況図である。通常、資源採バケット2の降下における圧力増減タンク5の状態は、タンクの容積が縮小限界状態で外部との自動通水仕切弁55及び内部との自動通水仕切弁56は共に開である。図において、10は海底面である。また、湿式製錬圧密槽の湿式製錬バケット3,浮体式受泥槽4は資源採掘バケット2と並列に配置されている。これらも図に表示してある。
【0051】
資源採掘バケット2が据え付けられたならば、外部との自動通水仕切弁55を閉とすることで、資源採掘バケット2は密閉状態となる。ここで、圧力増減タンク5の容積縮小の限界状態から容積拡張を開始すると、上向きの容積拡張力の反力で資源採掘バケットを必要な深さの海底地盤までの圧入、これと併行して真空圧で資源採掘バケット内部の残留海水を圧力増減タンクへの吸引、続いて海底の堆積資源泥を資源採掘バケット内部に吸引する採掘工程となる。次に、減圧(真空圧)による圧力差が資源採掘バケットの外部上面に圧密荷重として作用することで堆積資源泥の圧密が進行して軟弱な堆積資源泥の密度,強度増加を図る圧密工程となる。
【0052】
図8は本発明の実施形態を示す資源採掘バケット2の海底移動の説明図である。図において10は海底面である。レアアース泥は深海底の表層下の浅い層に多く確認される。図8は表層下のレアアース泥を採掘するために、表層除去の説明図である。図(a)は、資源採掘バケット2の内部に表層土を取り込んだ状態である。このとき、圧力増減タンク5は通水が資源採掘バケット2の内部のみとして容積拡張による減圧である。つまり、取り込んだ表層土を吸引して保持した状態である。図(b)は、全ての海底移動装置6のスパッド62を伸ばし、鉛直支持板であるフランジ64を使って資源採掘バケット2を海底面まで押し上げる。この時、図5に示した自動仕切弁付き通水パイプ22を開にして資源採掘バケット2の底面に発生する押し上げ抵抗となる負圧を解消する。図(c)は、資源採掘バケット2の移動開始である。まず、移動方向の前部のスパッド62はブレード63を含めて海底面10から上にする。そして、水平伸縮ビーム61を伸ばし、スパッド62を据え付け、水平支持板であるブレード63の水平支持力を確保する。図(d)は、移動方向と直角方向のスパッド62をブレード63も含めて海底面10から上にする。そして、移動方向の後部のスパッド62はブレード63の水平支持力を保持した状態で水平伸縮ビーム61を伸ばすと同時に、前部のスパッド62は水平伸縮ビーム61を縮めることで表層土を保持した資源採掘バケット2を移動する。そして、採掘区域外の所定の場所で、圧力増減タンク5は資源採掘バケット2の通水を外部のみとして、容積拡張することでタンクを満水状態とし、次に圧力増減タンク5は資源採掘バケット2の通水を内部のみとして、容積縮小することでタンクの貯留水を加圧して水圧で表層土を資源採掘バケット2の外に押し出す。以上が表層の除去である。
【符号の説明】
【0053】
1 資源採掘船
11 台船
12 船央立体骨組
2 資源採掘バケット
21 採掘バケット本体
22 自動仕切弁付き通水パイプ
3 湿式製錬バケット
31 製錬バケット本体
32 振動装置
4 浮体式受泥槽
41 浮体式受泥槽のガイドレール
5 バケットの圧力増減タンク
51 圧力増減タンクの外筒
52 圧力増減タンクの筒型ピストン
53 ピストンの仕切板
54 上下動装置
55 外部との自動通水仕切弁
56 バケットに設けた内部との自動通水仕切弁
57 筒状弾性シール
6 海底移動装置
61 水平伸縮ビーム
62 スパッド
63 ブレード
64 フランジ
7 バケットのワイヤーロープ等の巻取り装置
8 バケットのワイヤーロープの吊り固定具
9 海面
10 海底面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8