(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129173
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】可撓性構造用モノコック構造体
(51)【国際特許分類】
B62D 29/04 20060101AFI20230907BHJP
B32B 3/12 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B62D29/04 A
B32B3/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022047550
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】502428113
【氏名又は名称】川村 達三
(71)【出願人】
【識別番号】515057067
【氏名又は名称】株式会社三喜
(71)【出願人】
【識別番号】522052853
【氏名又は名称】株式会社エスコン
(71)【出願人】
【識別番号】522052864
【氏名又は名称】佐藤 友彦
(72)【発明者】
【氏名】川村 達三
【テーマコード(参考)】
3D203
4F100
【Fターム(参考)】
3D203CA04
3D203CA09
3D203CA52
3D203CA63
4F100AA19A
4F100AB10A
4F100AB31A
4F100AG00A
4F100AK25A
4F100AK41A
4F100AK45A
4F100AK46A
4F100AK51A
4F100AK52A
4F100AK53A
4F100AK74A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DC02A
4F100DC07A
4F100DE04A
4F100EC182
4F100GB07
4F100GB31
4F100JB13A
4F100JG06A
4F100JK07A
4F100JK13A
(57)【要約】 (修正有)
【課題】建築物の壁面や、艦船、車両、航空機その他建造物等の外板構造体、あるいは道路、通路、側溝等の表皮構造体に対する地震や衝撃等の外圧や内圧に起因する非線形的な負荷に対する応力を共有し、該壁面や外板構造体、あるいは表皮構造体の僅かな変形や変位に対しても柔軟に追随し、軽量で且つ剛性が高く、製法及び工法も簡便な構造用モノコック構造体の構成及びその起用方法と加工方法を提供する。
【解決手段】可撓性のハニカム構造体のコアを形成するセルの各々の一辺の幾何学上または機構学上の厳正なる中点あるいは中点に内接するように配置された非可撓性の球体によって構成され、樹脂等で充填又は被覆された応力伝播機構を具備した構造体を、建築物の壁面や艦船、車両、航空機その他建造物等の外板、あるいは道路、通路、側溝等の表皮の全部または一部に施工する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面弾性波と実体波が、等量性の線形等方性の応力波として伝播が可能な可撓性構造用モノコック構造体。
【請求項2】
請求項1記載の可撓性構造用モノコック構造体が可撓性のセルの連続体によって成るハニカム構造体であること。
【請求項3】
請求項2記載のハニカム構造体のコアを形成するセルの各々一辺の幾何学上あるいは機構学上の厳正なる中点又は中点に内接して配備された非可撓性の球体によって構成された可撓性のハニカム構造複合体であることを特徴とする請求項1記載の可撓性のモノコック構造体。
【請求項4】
請求項3記載の可撓性のハニカム構造複合体が樹脂等の弾性体によって充填あるいは被覆されていることを特徴とする請求項1記載の可撓牲構造用モノコック構造体。
【請求項5】
請求項2乃至4記載の構成によって成る可撓性のハニカム構造体の材質が非鉄金属であり、好ましくはアルミニウム合金JIS15052であることを特徴とする請求項1記載の可撓性構造用モノコック構造体。
【請求項6】
請求項5記載のアルミニウム合金JIS15052によって形成された可撓性のハニカム構造体のセルの対辺距離が1m/m乃至10m/m、好ましくは1/8インチ乃至3/8インチであり、セルの箔圧が0.001インチ(25.4ミクロン)乃至0.002インチ(0.508ミクロン)、セルの高さが1m/m乃至10m/m好ましくは1/8インチ乃至3/8インチであることを特徴とする請求項1記載の可撓性構造用モノコック構造体。
【請求項7】
請求項3記載の非可撓性の球体の材質が、水晶、ガラス、ABS樹脂、PLA樹脂、ナイロンポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネートあるいはアルミナまたは磁石及びその他の機能性材料であり、好ましくはABS樹脂、PLA樹脂、アルミナであることを特徴とする請求項1記載の可撓性構造体モノコック
構造体。
【請求項8】
請求項7記載の非可撓性の球体の直径が1m/m乃至10m/mであり、好ましくは1/8インチ乃至3/8インチであることを特徴とする請求項1記載の可撓性構造用モノコック構造体。
【請求項9】
請求項4記載の弾性体が常温硬化型熱可塑性シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂あるいはポリウレア樹脂であり、好ましくはシリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、ポリウレア樹脂であることを特徴とする請求項1記載の可撓性構造用モノコック構造体。
【請求項10】
請求項9記載の常温硬化型熱可塑性樹脂の硬化後硬度がデューロメータA硬度15乃至30であり、好ましくは20乃至25であることを特徴とする請求項1記載の可撓性構造用モノコック構造体。
【請求項11】
請求項1乃至10記載の可撓性構造用モノコック構造体が、接着剤等によって、RC、SRCあるいは木造建築物、鑑船、車輌、航空機その他の構造物の外板あるいは道路、通路、側溝等の表皮の全部または一部に施工されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は令和3年7月26日に出願された日本国特許出願2021-140521号の優先権を主張するものであり、同文献の開示内容は本参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、可撓性構造用モノコック構造体の構成及びその起用方法と加工方法に関する。より具体的には、建築物の壁面や鑑船、車両、航空機その他構造物等の外板あるいは道路、通路、側溝等の表皮の全部または一部に施工する可撓性構造用モノコック構造体の構成及びその起用方法と加工方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は全く新しい知見に基づくものであり、先行技術文献は存在しないが、構成する要素技術に関する参考技術文献について本明細書に記述する。
【0004】
さて、モノコック構造とは、車輌、航空機、建築物等の外板構造で、従来のフレーム(骨組)の代わりに外板あるいは外殻に必要最小限度の加工のみで一体構造として強度や剛性を持たせ、内部空間の確保や構造の簡素化による軽量化を主たる目的とした構造で、応力外皮構造または張殻構造とも称され、例えば特許文献1・特開平06-040330では、新幹線やリニアモーターカー等の高速走行体の機体構造の構成に関し、垂直荷重、曲げ荷重、車端圧縮荷重による内圧変動に耐えうる軽量且つ高剛性のモノコック構造体が、また特許文献2・特開平11-078874では、本発明の主たる構成部材でもある比強度と応力の等方性伝播機能に優れたハニカム構造体を主たる部材としたモノコック構造体の構成について、高速走行車両の外壁構造、特に前後先端部の構造に関し、トンネル出入口通過時に発生する圧縮波や膨張波の複雑な圧力変化による低サイクルの繰り返し荷重に対し、ポリメタクリル系硬質発泡樹脂あるいはハニカムコアとプリプレグで挟持し、引張り強度が等方性となるように一体化されたモノコック構造体が、特許文献3・特開2016-147613では、高高度飛行中の航空機の外板構造体に対する侵入水分の氷結と融解による損傷破壊あるいは機体強度低下防止を目的としたインナースキンを具備したハニカムサンドイッチパネルや、特許文献4・特開2019-039646では、装甲車輌の防弾用外板構造の構成に関し、一層目にポリウレア樹脂がコーティングされたセラミックを配し、二層目に繊維強化ポリウレア樹脂、三層目にポリウレア樹脂がコーティングされたハニカムサンドイッチパネルによってなるモノコック防弾構造体が、さらに特許文献5・特開2019-078431では、ダイラタンシー性(ずり粘弾性・shear-thickening)を有する非ニュートン物体をハニカム構造体のコアを形成するセルの内部に配備し、靭性が高く損傷修復特性を持つポリウレア樹脂によって被覆されたモノコック装甲板などが提案されている。
また、特許文献6・特開6419367及び、非特許文献1・公益社団法人土木学会2015年3月vol.61A.P851~858.竹内一雄では、樹脂の塗膜形成によって本体の剛性や靱性を高める工法として、耐震補強構造及びその施行方法の構成に関し、ラーメン構造を有する建物のための耐震補強構造として、外壁のほぼ全域にポリウレア樹脂を主体とする塗膜によりなる応力外皮層を形成して、水平耐力を高めるモノコック型耐震補強構造体なども提案されている。
【発明の概要】
【発明の解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の高速走行車体用構造は、該車体の内部側に円框を配し、車体の長さ方向に配した縦通材とを継手グリップで接合して車体の断面を増やすことによって強度と剛性を上げることを目的とした半張殻構造の応力外皮構造であるが、外板全体で荷重に対する応力を等方的に伝播する応力外皮構造と、外板の一部のみに配備された補強部材の応力伝播の速度と方向とは明らかに相違し、全体の応力伝播は非線形となり、応力外皮構造体としての力学的優位性を阻害し、強度や剛性の低下を招き、損傷や破壊の原因ともなりかねない。また、補強部材に隣接する外板部分に生じる加工上のシャープエッジや補強部材の円框と縦通材との継手部分に対する応力集中は疲労破壊の原因ともなる。
【0006】
特許文献6及び非特許文献1では、1981年以前に建造され現行の耐震基準を満たしていないラーメン構造の建築物の耐震性向上のために、RC外付けフレーム工法やプレキャストコンクリート工法あるいは鉄骨ブレース工法よりも強度や剛性あるいは靭性に勝り、フェイルセーフ機能も期待できる工法として、耐候性、耐食性、防錆性、耐摩耗性、防水性、防音性あるいは断熱性等にも優れたポリウレア樹脂を外皮層として対象建築物の外壁の ほぼ全域に塗布して、建物全体を包み込む応力外皮構造体を形成し、加えて外壁の所要箇所に板厚10mm以上の普通鋼のL型鋼あるいは高張力鋼のL型鋼を垂直補強部材及び水平補強部材として接合することによって、対象建物の地上部分の地震に対する水平及び垂直耐力の更なる向上が期待されるとしている。
しかし、上記(0005)にも記述の通り、応力外皮構造体の一部のみに接合された補強材による断面の増量は、建物全体で耐震機能を発揮する応力外皮構造体の機能に馴染まずむしろ構造破壊の原因ともなりかねない。
また、接合部あるいは該隣接部位への応力集中は避けられず疲労破壊の原因ともなる。
【0007】
特許文献2乃至5記載の応力外皮構造体を構成するハニカム構造体は、比強度と応力分散能に優れた構造体であり、その力学的優位性は、該文献記載の如く、ハニカム構造体を挟持する面板(サンドイッチパネル材)の物理的強度によって担保され、応力外皮構造体としての優位性等を発現することかができる。しかし、ハニカムコアを形成するセルの連続性に起因する拘束によって、等角写像を維持して曲面に対応することは加工上困難を伴う。また、上記記載のごとく、該構造体の力学的優位性は挟持する面板がなければ、ライン方向(水平方向)の強度は無く、応力伝播もできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明は下記の手段を提供する。
【0009】
周知の通り、第二次大戦中にイギリス空軍で航空機材料の不足を補うために開発された該構造体は、六角形のセルの集合体と該集合体をサンドイッチ状に挟持する面板との構成で、重量当り強度(比強度)と剛性が既存の構造体では最も高いとされ、例えばアルミハニカム構造体の比強度は普通鋼の約12倍、つまり普通鋼の約12分に1の重量で要求される強度を得ることができる。更にセル空隙を有するハニカム構造体が軽量で、しかも高い衝撃吸収性など力学的優位性を持つことから、その挙動に関しても多くの研究が行われている(非特許文献2・「ハニカム構造体の面内衝撃挙動に及ぼすライン充填セルの影響」東工大・中本浩章,足立忠晴.埼玉大・荒木稚子,非特許文献3・「数値解析ソフトMATLAB(マトラブ)シュミレーションによるアルミ合金ハニカム材の弾性範囲内の変形挙動」「セル構造体の変形機構に基づくセル単体の変形挙動」帝京大学・日野裕,荒木拓也,非特許文献4・「セル構造体のマルチスケール解析のための座屈を考慮した微視スケール問題に関する一考」宇都宮大学・青木攻,東北大学・幸田賢二郎,池田清宏,非特許文献5・「三次元セル構造体の材料設計概念と、その変形挙動特性」大阪府立大学院・染川英俊,東健司,非特許文献6・「金属セル構造体の圧縮変形特性」鋳
しかし乍ら、上記非特許文献2乃至6記載の高い衝撃吸収性はセルの座屈崩壊に起因するものであり、換言すれば、従来のハニカム構造体の力学的優位性は、セルの厚み方向に対しては高位の性能を発揮するがライン方向、つまり長さあるいは幅方向にしてはセルを挟持する表面板があればその物理的強度によって担保されるが、セルのみでは外力に拮抗する強度は無く、セルは座屈崩壊に至る。
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解決する手段として、従来のハニカム構造体の力学的優位性を損なうことなく、セルのライン方向の外力にたいしても座屈崩壊を起こさず、内圧や、自重あるいは外部からの負荷に対抗する内部応力によって生じる(0002)記載の建造物や構造物の僅かな変位や変形に対しても柔軟に追随し、等方性線形弾性変形を維持して、応力伝播が可能であり、上記記載の建造物や構造物と一体となって応力を共有して機械的及び構造的な強化や補強が可能な可撓性構造用モノコック構造体として、可撓性のハニカムコアを形成するセルの各々の一辺の幾何学上あるいは機構学上の厳正なる中点、あるいは中点に内接して配備された非可撓性の球体によって構成され、該構成のセルが樹脂等の弾性体によって充填又は被覆されたハニカム構造体を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を、図面を参照に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】非可撓性の球体が配備された可撓性ハニカムセルの平面図である。
【
図2】球体を内蔵したハニカム構造体の応力のベクトル図である。
【
図3】コンピューターシュミレーションによる応力解析図である。
【
図4】コンピューターシュミレーションによる歪解析図である。
【
図5】コンピューターシュミレーションによる変位解析図である。
【
図6】アルミ板三角加工体の圧縮強度テスト結果図である。
【
図7】アルミハニカムモノコック構造体の圧縮強度テスト結果図である。
【
図9】圧縮テスト後のアルミハニカムモノコック構造体である。
【符号の説明】
【0013】
F:負荷。
A:ハニカムセル。
l:ハニカム構造体のセルの一辺の長さ。
B:球体。
C:球体及びハニカムセルの中心軸。
a:弾性体。
1乃至6:ハニカムセルを形成する各々の一辺の幾何学あるいは機構学上の厳正なる中点又は中点。
VBWA1乃至VBWA6:A1乃至A6におけるライン方向の負荷(F)に対する初期応力の実体波のベクトル。
HBWA1乃至HBWA6:A1乃至A6におけるVBWA1乃至VBWA6に直交する水平方向の実体波のベクトル。
CBW1乃至CBW6:1乃至6における球体及びハニカムセルの中心軸に向かう実体波のベクトル。
B1乃至B6:初期応力の実体波によるスコットラッセル機構のみなし固定点。
【0014】
まず、(0010)記載の可撓性のハニカム構造体(
図1.符号A)の材質が、非鉄金属であり、より具体的には、アルミニウム合金JIS5052であること。また、同記載の球体(
図1,符号B)の材質が、水晶、ガラス、ABS樹脂、PLA樹脂、ナイロンポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネート、あるいはアルミナまたは磁石及びその他の機能性材料であり、好ましくはガラス、ABS樹脂、アルミナ、 磁石及びその他の機能性材料であること。さらに、同記載の弾性体(
図1,符号a)の材質が、常温硬化型熱可塑性変成シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂あるいはポリウレア樹脂であること。
【0015】
上記記載のアルミニウム合金によって成るハニカム構造体のセルの対辺距離、厚さおよび内接する球体の直径は1m/m乃至10m/mであること。
【効果とその機序】
【0016】
さて、1860年代ジェームズ・クラーク・マクスウェルがトラスの構造システムの解析で「何かしらの量を最大もしくは最小にするような特別な形状」と述べ、既にその存在を認識していたと云われているテンセグリティ構造は、1948年バックミンスター・フラーがケネス・スネルソンの引張り材と圧縮材とからなる有機物で、不定形なオブジェに対して命名した造語〔Tension(引張り)とIntegrity(統合)〕であるが、このテンセグリティ構造は、構造工学における一般的な構造システムのいずれにも分類されない構造であり、「構造が破綻しない範囲で、 部材を極限まで減らした時の最適形状の一種であり、常識的には三角形を基本単位とする幾何学的要素の集合」と定義される。
一方、一般的な既知のハニカム構造も構造学上「与えられた平面を埋める最小の一辺を持つ最良の形状であり、三角形を基本単位とする幾何学的要素の集合」と定義される。
そこで、本発明は定義上近位にあるこの二つの構造システムより成り、本発明の可撓性構造用モノコック構造体を構成するアルミニウム合金とガラス球体とによって構成されたハニカム構造複合体の応力解析を下記荷重と拘束条件でコンピュータ上でシミュレーションした。
荷重と拘束条件:10面垂直荷重荷50kgf/mm
2等分布・10面固定
【0017】
〈シュミレーションによるハニカム構造複合体の面内挙動の説明〉
【0018】
可撓性のハニカムセルの各々の一辺の幾何学上あるいは機構学上の厳正なる中点又は中点(
図1及び
図2符号1乃至6)に内接する非可撓性のガラス球体を内包させたハニカム構造体のセルライン方向に負荷された外力、垂直負荷50kgf/面×10面(
図3乃至
図5)に対する初期応力の実体波のベクトル(
図2)はB1
とし厳正直線運動機構であるスコットラッセル機構を構成し、該実体波のベクトルは等量で反対方向のベクトルとしてA
1乃至A
6に発現する(
図2符号VBWA
1乃至VBWA
6及びHBWA
1乃至HBWA
6)。さらに、セルの各辺の幾何学上の厳正なる中点又は中点に接して配備された球体の外力(F)に対する応力のベクトル(
図2符号CBW
1乃至CBW
6)は、隣接するセルに内包された球体の中心軸に向かう。そして、下記(0019)及び(0020)記載の実体波として、伝播速度約1200m/sec~6000m/sec、表面弾性波として約1000~3500m/secの速さで隣接するセル及び球体に伝播され、線形等方性を有するハニカム構造体のセルの各辺と球体に発現した等量で反対方向の初期応力のベクトルは瞬時に打ち消し合い、セル本体とガラス球体はテンセグリティ(Ten-Segrity)構造体の如く、ガラス球体を圧縮部材とし、セルの各々の一辺を引っ張り部材とする一体化されたモノコック構造体としてセルライン方向の外力に対しても座屈崩壊せず、歪及び変位も殆んど発現せず、球体を介して瞬時に応力を伝播することが可能となる(
図3乃至
図5)。さらに、特許文献7・特開平06-226891にも提案のごとく、外力に対する初期応力によって球体の中心軸に向かって瞬間的に発生する最大剪断エネルギーは熱エネルギーに変換されて外部に放出される。この最大剪断エネルギーの熱エネルギーへの変換は、セル内に樹脂等の粘弾性材料を充填することによって、より顕著となる。
【0019】
〈ハニカム構造複合体の面内挙動の材料力学上の説明〉
【0020】
機械設計上、初期負荷490N/mm
2(50kgf/mm
2)はセルの頂点にかかるものとする。この時、頂角は120°であり各一辺のベクトルは正三角形を形成し、縦方向のベクトルは打ち消され、セルの各一辺にはそれぞれ490N/mm
2の初期負荷がかかる。セルの構成素材であるJIS5052アルミニウムの機械的強度は195N/mm
2であるので、該シミュレーションでのセル(1m/m
t×10m/mH)の一辺の抗張力は1950N/mm
2となり、初期負荷に対して約4倍の強度を有し、設計上の安全係数は満足さすが、地切り時の急速荷重あるいは衝撃荷重などの初期負荷に対して、セルの各一辺は僅かに強度不足となり、クリープ変形し応力伝播を阻害する危険性がある。
ところが、ガラス球体が内接するセルの各一辺の幾何学上あるいは機構学上の厳正なる中点又は中点までの初期負荷の作用点からの距離は、2.8867m/m、約2.9m/mであり、下記(0022)記載のアルミニウム合金の実体波Vsは約3000~3500m/secであるので、0.00000829~0.00000967秒で瞬時に初期負荷に対する応力のベクトルは(0018)記載の機序によって打ち消される。このとき、瞬間的に発生する曲げ応力によって、セルは初期負荷の作用点近辺で、デフォルト最大0.384738m/m変位するが((0016)「応力解析・デフォルト結果」)、強度計算上は無視できる。そして、シュミレーション(
図3乃至
図5)のとおり、初期負荷が本発明のハニカム構造複合体を構成するセルの各々の一辺の抗張力の許容範囲であれば、該複合体は、瞬時に無負荷の状態となり、応力も歪みも変位も発現せず、一体化したモノコック構造体として、セルを挟持する表面板の機械的強度に依存することなく、セルライン方向の負荷に対しても本来のハニカム構造体の力学的優位性を阻害せずに、瞬間的に固定側に応力を伝播し、約50%の機械的及び構造的な強化や補強が可能であり、特許文献・特開平06-226891によっても疎明されているように、余の50%は熱エネルギーに変換されて外部に放出される。そして、上記機序から、等角写像が可能な形状であれば、セル1面のみに対する非線形的な偏荷重や集中荷重であっても、瞬間的に、つまり1秒間に約3000~3500メートル四方に一体となって位相的に同相として応力を伝播することができる。さらに、等角写像の維持が困難な鋭利な角度の曲面や極端な異形面に対しては、継手機構としてセルまたは非セル面内に該非可撓性の球体を六方格子状に最密充填し、前記記載の樹脂等の弾性体を充填又は被覆することによってユニバーサルジョイントとして応力を伝播することが可能となる。
【0021】
さて、ここで(0018)及び(0020)記載の「瞬時に」あるいは「瞬間的に」という文言の意味は、応力波の伝播速度の速さの抽象的な表現であり、具体的には、弾性体に動的な力が加わると、それによる応力やひずみは波(応力波・実体波と表面弾性波)として伝播する。このうち弾性体中を伝わる実体波(body wave)である弾性波は変形波で弾性応力波、あるいは弾性ひずみ波、又は実体波とも呼ばれ弾性媒質の変位方向が波の進行方向に平行で、体積変化を伴う体積弾性によって生ずる縦波である「体積波(P波)」と弾性媒質の変位方向が波の進行方向に直角で、等体積のまま形状で変化に伴う形状弾性によって生ずる横波である「等体積波(S波)」とに大別され、圧縮波、引張り波は前者(体積波)に対応し、剪断波あるいはねじり波は後者(等体積波)に対応する。弾性波の伝播速度は弾性体の弾性係数、ポアソン比、密度に関係し、三次元等方性弾性体内の縦波(P波)、横波(S波)の伝播速度はそれぞれ下記式で与えられる。
縦波伝播速度(Velocity of Primary wave) V={(K+(4/3G)/P}1/2・・・(式1)
横波伝播速度(Velocity of Secondary wave) Vs=(G/P)1/2・・・(式2)
但し、p:密度、G:剪断弾性率、K:体積弾性率
【0022】
上記(式1)及び(式2)により、本発明のモノコック構造体を構成するアルミニウム合金のVpは約6000~6500m/sec、Vsは約3000~3500m/sec、樹脂のVpは約1900m/sec、Vsは約1200m/secであり、ガラス球体のVpは約5000~5400m/sec、Vsは約2500~3000m/secとなる。
【0023】
一方、上記実体波(body wave)に対して、表面弾性波は弾性体の表面付近にのみ集中して伝わる波の総称であり、伝播速度はS波と同程度で地震波との関係で伝播機構や性格の違いにより、1911年ラブ(August Edward Hough Love)によって理論的に証明された弾性体の表面に水平の剪断力を与えるラブ波(L-wave,Love wave)と1885年レイリー(John William Strutt.3rd Baron Rayleigh)によって存在が理論的に証明された縦方向と縦方向に対する剪断成分を持ち、表面に接する追加の層のようなあらゆる媒体と結合することができるレイリー波とが認知されている。
しかし、このレイリー波の結合は、波の振巾と速度に強く影響するため、この波を圧電体上で励起するとその波長が例えば10MHzの周波数では0.03m/m程度で電磁波の約10-5倍と非常に短かく、且つ圧電体の表面上で容易に質量や機械的特性を直接感知することができるが、従来の弾性表面波素子(Surface Acoustic Device)では表面弾性波は伝播する方向と直向する方向に拡散してしまうが、特許文献8・特開2005-150784でも提案のごとく、本発明のモノコック構造体を形成するハニカム構造体の連続するセル内に配備された球体によって、表面弾性波は拡散せず連続するハニカムセルの領域内のみを移動し、エネルギー波が賦与される限り無限に周回する。
そして、表面弾性波が周回し続ける限り、実体波も伝播し続け、該ハニカム構造複合体はモノコック構造体として機械的あるいは構造的な強度や剛性の向上に寄与することが出来る。
【0024】
そこで、該効果に関し、下記仕様で当該モノコック構造体の比較圧縮テストを実施した(
図6及び7)。
〈圧縮テスト実験仕様〉
実施場所:(地独)大阪産業技術研究所
試験機:UH-500KNC油圧式材料試験機(島津製作所製)
試験精度:±1%
加圧速度:100N/min
試験体仕様:
(供試体1)
JIS5052アルミニウム板(0.3m/m
t×500m/m
w×150m/m
HUACJ製)の1枚を機械プレスによって60°折り曲げ加工し、両端を20m/m鼻曲げした1枚とを接着剤(プライマーAQ-1・信越化学製)によって正三角体に加工した。
(供試体2)
アルミニウムハニカム構造体(AL1/8-5052-0001N、箔厚0.0254m/m、セル高2m/m、500m/m
w×150m/m
H×3枚、昭和飛行機工業製)にABS樹脂(直径3m/m)を配備し、樹脂(シーラント45N、硬化後デューロメーター硬度20、信越化学製)を充填し、プライマーAQ-1(信越化学製)によって試験体1の三面に接着加工した。
(参考)JIS5052アルミニウムの一般的物理的性質。
ヤング率70GPa、剛性率26GPa、体積弾性率76GPA、ポアソン比0.35、ビッカース硬度167MPa、抗張力195N/mm
2、伝播速度(音波)約5000m/s。
【0025】
〈テスト結果の考察〉
【0026】
本実験結果から、アルミ板三角加工体の圧縮強度1304.15N(
図6)に対して、本発明の可は可撓性のアルミハニカム構造複合体によってなるモノコック構造三角加工体の圧縮強度は1667.17N(
図7)であり、363.02N、約30%の圧縮強度の向上が確認された。
そして、(0017)乃至(0023)記載の応力伝播の機序から、本発明のハニカム構造複合体の抗張力は0.0254m/m×2m/m×195N/mm
2=9.906N/mm
2であり、供試体2に対する圧縮加圧が等分布に負荷されたものとして、ハニカムセル数45面に対する等分布荷重から363.02N/45面、約8N/面、つまり、本発明のハニカム構造複合体を構成するセルの一辺の抗張力の約80%が圧縮強度約30%を強化したものと考察する。
換言すれば、供試体2のセル一面あたり、等分布の初期負荷8Nに対する圧縮応力は、瞬時に引っ張り応力に変換され、一体として363.02Nが本発明のモノコック構造体の効果として固定側に伝播されたものと考察する。さらに、加工精度からは微視的には供試体に対する負荷は等分布荷重ではなく、セルー面つまりセルを構成する各一辺に対する集中あるいは偏荷重と想定できるので、最も過酷な条件として初期負荷1667.17N、セル一面つまりセルを構成する一辺の抗張力9.906N/mm
2の約168倍の負荷によって最大デフォルトが僅かに発現しても、球体の内接するセルの厳正なる中点又は中点との距離は0.866m/mであり、アルミニウム合金JIS5052の音波伝播速度約5000m/secから、該負荷は0.0001732秒で瞬時に引っ張り応カに変換され、(0018)記載のハニカム構造複合体の面内挙動の機序によって、応力外皮構造体として供試体1と一体となって出力側に応力を伝播し約30%の強度を向上さしたものと考察する。
上記機序は供試体1及び2の(
図8、及び
図9)によって疎明される。
【0027】
上記記載のごとく、本発明の可撓性構造用モノコック構造体は、従来のハニカム構造体の優れた力学的特性を阻害せず、面板の物理的強度に依存することなく、高位の比強度を発現することができ、しかも可撓性であるので、既存のRC、SRCあるいは木造建築物などの所要の壁面や柱部あるいは床面などの形状に左右されず、接着剤等で貼り付けるだけで、躯体強度が向上し、顕著な耐震、制震効果が期待できる。
さらに、比強度の飛躍的な向上は、車輌、航空機、鑑船等の更なる軽量化が可能であり、カーボンニュートラル(Carbon Neutral)にも多大の貢献ができる。
加えて、本発明の可撓性構造用モノコック構造体を構成する球体の中心軸から拡散される熱エネルギーによるエネルギーハーベストも期待できる。