IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社 サンエイ・モールドの特許一覧

<>
  • 特開-大型成形品金型のガス抜き装置 図1
  • 特開-大型成形品金型のガス抜き装置 図2
  • 特開-大型成形品金型のガス抜き装置 図3
  • 特開-大型成形品金型のガス抜き装置 図4
  • 特開-大型成形品金型のガス抜き装置 図5
  • 特開-大型成形品金型のガス抜き装置 図6
  • 特開-大型成形品金型のガス抜き装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129174
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】大型成形品金型のガス抜き装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/34 20060101AFI20230907BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20230907BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20230907BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B29C45/34
B29C45/00
B22D17/22 G
B22D17/22 T
B22C9/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022047551
(22)【出願日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】500283169
【氏名又は名称】有限会社 サンエイ・モールド
(72)【発明者】
【氏名】桜井 久次郎
【テーマコード(参考)】
4E093
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4E093NA01
4E093NB10
4F202AM32
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK02
4F202CP01
4F202CP05
4F202CP10
4F206AM32
4F206JA07
4F206JL02
4F206JN26
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】金型成型において、成形品の大型化、成形温度の高温化、難組成樹脂の使用等々、これまでの成型の範疇から踏み出した製品が多く求められるようになり、従来の如く金型設計の合理性のみを追っていると金型内部の排気が良好に行えなくなり、特に排気が金型と成型機械装置の空隙を利用して行われる場合に排気不良による成形不良が多発する事を発見し、その状況の解決が模索された。
【解決手段】発明者がこれまで20年以上にわたって研究してきたV字型の切り欠き溝とそれに連続する排気溝による手法を利用した排気函を作成し、金型の外気に接する面に該排気函を埋設し、金型のキャビティーとコアにより形成される空隙をランナーを介して排気函に接続し、ランナーから送られてくる気体を排気函を介して直接大気空間へ減圧排出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティーとコアの間に形成される金型の空隙にゲートから溶融材料を注入して製品を得る射出成型もしくは鋳造において、
キャビティー側もしくはコア側に前記空隙と連続するランナーを設置し、
必要距離延長した該ランナーの端部に金型の最外縁に開口する排気函を設置してなる大型成形品金型のガス抜き装置。
【請求項2】
排気函がランナーに接続される導通孔に連続する凹陥を備え、該凹陥の立ち上がり壁上端に切り欠き溝とそれに連続する排気溝を設置し、それによりランナー及びそれに連続する空隙内の排気を行う事を特徴とする請求項1記載の大型成形品金型のガス抜き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂、金属等の大型射出成形金型に適用することによって、成形時に金型内のガスを迅速に排出する事が出来る射出成形における大型成形品金型のガス抜き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本件発明者は今世紀初頭より20有余年にわたって射出成形特に合成樹脂等の射出成形における射出成形品の歩止まりの悪さを改良すべく研究を行ってきた。それらは特許或いは特許出願として公にされ、これまで曖昧な計算や技術者の勘にたよっていた設計を、実験を繰り返すことによって確認し、その結果発明者が到達したガス抜きの基本思想は業界に広く知られるようになり、今日に至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4085182号
【特許文献2】特許第4096327号
【特許文献3】特許第5413780号
【特許文献4】特願2020-206336
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形により加工される合成樹脂は溶融温度や組成の有する性質により向き不向きがあるとされてきたが、近年では可能ならば樹脂の種類を選ばずにできる限り広範囲に材質を選択したいと言う要求が大きく、これまで何らかの理由でガス抜きが困難だった樹脂にも本件発明者の技術思想を適用すべしと言う要求が多発しており、例えば加工温度が高いもの、製品の体積が大きいもの、完成品の高い透明性が要求されるもの等々、樹脂材料毎また加工現場毎に多様な要求が生まれ続けている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これまでの研究開発により、樹脂類或いは金属類の射出成型でより完成度の高い製品を得る為には、金型内部にできる限り真空に近い状態を発生させ、金型に充填される流体の進行の妨げになる気体圧力を排除して、瞬時に流体が金型内部に行き渡る状態を作り出す事が重要である事が確認できた。
【0006】
その具体的な手段として、金型のランナー部分や成形品を形成する金型の適当箇所から、図6図7のごとき一辺s3ミリメートル程度の三角形tを二個を組み合わせた形状の切り欠き溝cとそれに連続する幅2/100ミリメートル程度の排気溝gにより、金型内部の気体を外部に排出し、金型内部の気圧を可能な限り理想状態まで引き下げる手段が有効である。
【0007】
このようなガス抜きのための構造は、金型一個一個の構造に従い適宜設置箇所を定めて金型の一部を切削したり、切削したピンやコマを埋め込んだりして獲得していたが、寸法の大きな成形品の金型や樹脂の充填に極端な高圧が適用されるような場合、どのように切り欠き溝cの配置を工夫しても望ましい結果が得られない。
【0008】
流体を取り扱う場合の常として、演算結果等により予測を立て得ない問題が多いため、単純に試行錯誤を繰り返して到達したのは、金型キャビティー内部の排気は金型と成形機本体などの外気に接する隙間から放出すれば済む問題では無く、十分な減圧効果による排気の為に、金型外周縁部から大気圧中に直接排気が行われる必要があると言う発見を得ることが出来た。
【0009】
それに伴い、金型に直接切り欠き溝cを搾接する困難を避けるため、あらかじめ適宜切り欠き溝cと排気溝gを穿設した排気函1を金型周縁部に埋設して、金型のキャビティーCaとコアCoにより形成される空隙Vに連通するランナーRの端部を延長して排気函1に接続することにより、排気に障害の無い大気中に直接排気を行う装置を得ることが出来る。
【0010】
これにより、専門の知識を有する者であれば誰もが簡単に設置でき、最大のガス抜き結果が得られる排気函1を提供することによって、射出成形におけるガス抜きのより効率的で容易な実現が可能な大型成形品金型のガス抜き装置を得る事が出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、金型の定められた箇所に排気函1を埋設する簡単な設計で、金型内部のガス抜きを迅速確実に行えるため、金型内部に充填される溶融材料が金型内部で早期に安定しまた材料から発生するガスが材料を押し上げつつ材料の周囲を巡回する時間も短くなり、結果的に成形品表面に容認できない瑕疵や高温溶融材料の焼け等を生じさせない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明実施例の概念的平面図である。
図2】本発明実施例に使用する排気函の斜面図である。
図3図2に示すものの中央縦断面図を含む斜面図である。
図4】金型のコア側に設置された排気函の断面図である。
図5】金型のキャビティー側に設置された排気箱の断面図である。
図6】排気函に穿設される切り欠き溝の断面図を含む斜面図である。
図7】切り欠き溝及び排気溝の斜面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
金型縁部のキャビティーCa側もしくはコアCo側のいずれかに凹設した受け座内に、キャビティーCaとコアCoによって形成される空隙Vに連通するランナーRに接続される導通孔2と、該導通孔2が開口する凹陥3、および該凹陥3を金型装置外部と導通させるための切り欠き溝c及び排気溝gを備えた排気函1を固定することにより、大型成形品金型のガス抜き装置を得る。
【0014】
排気函1の切り欠き溝cと排気溝gは、前述の如く一辺sが3ミリメートル程度の三角形tを二個を組み合わせた形状の切り欠き溝cとそれに連続する幅2/100ミリメートル程度の排気溝gにより図6及び図7の如く形成され、排気函1の凹陥3の立ち上がり壁面上部に搾設される。以上の説明は図2を参照することによりより明確になるが、更に図2には排気函1を受け座に固定するためのボルト孔4が示されている。
【0015】
以上の如くして得られた排気函1を、図1に示す金型Ca,Co平面の外縁部に任意の数だけ設置して、ゲートGから流体材料が充填されると、金型のキャビティーCaとコアCoにより形成された空隙V内部の気体は急激に加圧され、ランナーRから導通孔2を経て排気函1の凹陥3に至り、凹陥3の立ち上がり壁面上部に穿設された切り欠き溝cと排気溝gにより瞬時に金型外部に排気される。
【実施例0016】
図1及び図2によって実施例を説明すると、図1においてCa、Coは大型成形品金型のキャビティーおよびコア、Vは前述キャビティーCa及びコアCoにより金型内部に形成される空隙、Gは例えば溶融合成樹脂などの流体を空隙Vに充填するためのゲート、Rは前記流体もしくは排気されるべき気体の通路となるランナー、1はキャビティーCa及びコアCoの縁部に外気に開口すべく設置された排気函、3は排気函1に穿設された凹陥であり、凹陥3とランナーRは排気函1壁面に搾設された導通孔2により接続されている。
【0017】
図2及び図3に示す如く、排気函1の凹陥3の立ち上がり壁面上部には、図6及び図7により説明した切り欠き溝cと排気溝gが必要に応じて適宜搾設されており、金型の空隙V内部の気体はゲートGからの樹脂等の充填によりランナーR及び導通孔2を通って凹陥3に至り、継続的に充填が続く間凹陥3内から切り欠き溝cと排気溝gにより大きく減圧されて大気中に排出される。
【0018】
因みに、排気函1は図4に示す如く、金型のコアCo側に埋設されても、或いは図5に示す如くキャビティーCa側に埋設されても効果は同等であり、金型設計の必要に応じて任意に埋設位置を選択できる。また、排気函1の大きさ、切り欠き溝cと排気溝gの数も、成型すべき材料の種類、充填圧、充填温度等々によって任意に選択することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は金型内部の排気不足により生じる金型成形品の瑕疵を大幅に抑制することが出来るので、型を使用して成形品を得る全ての業種に広範に利用できるものであり、成型すべき材料を選ぶこと無く合成樹脂から金属までほとんど全ての成型加工に適用でき、表面の良好な仕上がりを得られるので二次加工の手間も必要なくなるため、利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0020】
1 排気函
2 導通孔
3 凹陥
4 ボルト孔
Ca 金型のキャビティー側
Co 金型のコア側
V 空隙
G ゲート
R ランナー
c 切り欠き溝
g 排気溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7