(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129209
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】皮革製品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
D06N 3/00 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
D06N3/00
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126136
(22)【出願日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】111107661
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】515274066
【氏名又は名称】捷欣企業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHAEI HSIN ENTERPRISE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.550, Sec. 3, Zhongqing Rd., Xitun Dist., Taichung City, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】王 水木
【テーマコード(参考)】
4F055
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055BA01
4F055BA10
4F055DA02
4F055FA01
4F055FA02
4F055FA04
4F055GA20
4F055GA24
(57)【要約】
【課題】 皮革製品を製造する方法を提供すること。
【解決手段】 可撓性の皮革を含む皮革製品を製造する方法は、以下のステップを含む。ポリマー材料を含む皮革前駆体が提供される。放出部材、皮革前駆体、及び押圧部材が順番に積み重ねられて、積み重ねられたセットを形成し、放出部材及び押圧部材のうち少なくとも1つは、複数の通気孔を有して形成されている。皮革前駆体が皮革製品を形成するように、積み重ねられたセットは加熱及び真空処理されて、ポリマー材料が可撓性の皮革を形成するのを可能にする。皮革製品は、放出部材及び押圧部材から分離される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の皮革を含む皮革製品を製造する方法であって、
ポリマー材料を含む皮革前駆体を提供するステップと、
放出部材、前記皮革前駆体、及び押圧部材を順番に積み重ねて、積み重ねられたセットを形成するステップであり、前記放出部材及び前記押圧部材の少なくとも1つは複数の通気孔を有して形成されている、ステップと、
前記皮革前駆体が前記皮革製品を形成するように、前記積み重ねられたセットを加熱及び真空処理して、前記ポリマー材料が前記可撓性の皮革を形成するのを可能にするステップと、
前記放出部材及び前記押圧部材から前記皮革製品を分離するステップと、
を含む、皮革製品を製造する方法。
【請求項2】
前記押圧部材が、前記複数の通気孔を有して形成されている、請求項1に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項3】
前記押圧部材は、
前記皮革前駆体に隣接して配置され、前記複数の通気孔を有して形成されている通気性層と、
前記皮革前駆体から離して配置された気密層と、
を含む、請求項1に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項4】
前記押圧部材は、
前記皮革前駆体に隣接して配置される気密層であって、前記皮革前駆体に向かって面する前記気密層の表面がへこんで複数の溝を形成し、前記複数の通気孔が前記溝の端部に形成されている、気密層を含む、請求項1に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項5】
前記放出部材が、前記複数の通気孔を有して形成されている、請求項1に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項6】
前記皮革前駆体に向かって面する前記放出部材の表面がへこんで複数の溝を形成し、前記複数の通気孔が前記溝の端部に形成されている、請求項1に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項7】
前記ポリマー材料は複数のポリマー粒子であり、前記ポリマー粒子の各々の粒径は0μmよりも大きく、500μm以下である、請求項1に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項8】
前記複数のポリマー粒子は、複数の第1のポリマー粒子及び複数の第2のポリマー粒子を含む、請求項7に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項9】
前記押圧部材によって0バールよりも大きく5バール以下の圧力が前記皮革前駆体に印加されるように、前記積み重ねられたセットを加熱及び真空処理するステップは、前記積み重ねられたセットを真空処理しながら80℃から250℃の温度で行われる、請求項1に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項10】
前記通気性層は、耐熱性繊維布で作られている、請求項3に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項11】
前記気密層は、プラスチック、シリコーン、ゴム、接着剤、又はそれらの組み合わせで作られている、請求項4に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項12】
前記皮革前駆体は基材をさらに含み、前記皮革製品は、前記可撓性の皮革及び前記基材を含む複合構造である、請求項1に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項13】
前記積み重ねられたセットにおいて、前記ポリマー材料は、前記放出部材に隣接して配置され、前記基材は、前記押圧部材に隣接して配置される、請求項12に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項14】
皮革製品を製造する方法であって、
ポリマー材料及び基材を含む皮革前駆体を提供するステップと、
前記皮革前駆体及び押圧部材を順番に積み重ねて、積み重ねられたセットを形成するステップであり、前記押圧部材は複数の通気孔を有して形成されている、ステップと、
前記皮革前駆体が前記皮革製品を形成するように、前記積み重ねられたセットを加熱及び真空処理して、前記ポリマー材料が前記基材と組み合わされるのを可能にするステップと、
前記押圧部材から前記皮革製品を分離するステップと、
を含む、皮革製品を製造する方法。
【請求項15】
前記押圧部材は、
前記皮革前駆体に隣接して配置され、前記複数の通気孔を有して形成されている通気性層と、
前記皮革前駆体から離して配置された気密層と、
を含む、請求項14に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項16】
前記押圧部材は、
前記皮革前駆体に隣接して配置される気密層であって、前記皮革前駆体に向かって面する前記気密層の表面がへこんで複数の溝を形成し、前記複数の通気孔が前記溝の端部に形成されている、気密層を含む、請求項14に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項17】
前記ポリマー材料は複数のポリマー粒子であり、前記ポリマー粒子の各々の粒径は0μmよりも大きく、500μm以下である、請求項14に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項18】
前記皮革前駆体が前記皮革製品を形成するように、前記積み重ねられたセットを加熱及び真空処理するステップは、前記複数のポリマー粒子が可撓性の皮革を形成し、前記基材と組み合わされるのを可能にすることである、請求項17に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項19】
前記ポリマー材料は可撓性の皮革であり、前記可撓性の皮革は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は合成ゴムで作られている、請求項14に記載の皮革製品を製造する方法。
【請求項20】
前記押圧部材によって0バールよりも大きく5バール以下の圧力が前記皮革前駆体に印加されるように、前記積み重ねられたセットを加熱及び真空処理するステップは、前記積み重ねられたセットを真空処理しながら80℃から250℃の温度で行われる、請求項14に記載の皮革製品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、皮革製品を製造する方法に関し、特に、気泡(air cells)の形成を回避することができる皮革製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工皮革は、柔らかさ、軽さ、防水性、加工容易性、低価格等の利点から日常生活において広く使用されている。一般に、従来の人工皮革は以下のように製造される。固体状態のポリマー材料が、有機溶媒及び/又は分散剤と混ぜ合わされて、液体又はペーストの混合物を形成する。液体又はペーストの混合物は、布又は剥離紙等の基材上に均一に被覆される。次に、液体又はペーストの混合物を有する基材は加熱されて、その中の有機溶媒及び/又は分散剤を除去し、ポリマー材料が熱融解又は架橋を介して接続されて、フィルム状又はシート状の人工皮革を形成するのを可能にする。
【0003】
しかし、皮革製品を製造するプロセスにおいて、ポリマー材料によって気体が捕捉されることがあり、結果として、皮革製品から突き出た気泡又は気泡から残ったピットを形成し、これは、人工皮革の品質及び歩留まりに影響を与える。従って、関連する製造業者は、人工皮革を製造する方法の改善に取り組んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】CN102933651 B
【特許文献2】TWI357854 B
【発明の概要】
【0005】
本開示の一実施形態によると、皮革製品を製造する方法が開示される。皮革製品は、可撓性の皮革を含む。皮革製品を製造する方法は、以下のステップを含む。ポリマー材料を含む皮革前駆体が提供される。放出部材、皮革前駆体、及び押圧部材が順番に積み重ねられて、積み重ねられたセットを形成し、放出部材及び押圧部材のうち少なくとも1つは、複数の通気孔を有して形成されている。皮革前駆体が皮革製品を形成するように、積み重ねられたセットは加熱及び真空処理されて、ポリマー材料が可撓性の皮革を形成するのを可能にする。皮革製品は、放出部材及び押圧部材から分離される。
【0006】
本開示の別の実施形態によると、皮革製品を製造する方法は、以下のステップを含む。ポリマー材料及び基材を含む皮革前駆体が提供される。皮革前駆体及び押圧部材は順番に積み重ねられて、積み重ねられたセットを形成し、押圧部材は複数の通気孔を有して形成されている。皮革前駆体が皮革製品を形成するように、積み重ねられたセットは加熱及び真空処理されて、ポリマー材料が基材と組み合わされるのを可能にする。皮革製品は、押圧部材から分離される。
【0007】
本発明のこれら及び他の目的は、疑うことなく、様々な図及び図面に例示されている以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読んだ後に、当業者には明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態による皮革製品を製造する方法を示した流れ図である。
【
図2】
図1における皮革製品を製造する方法のステップを示した概略図である。
【
図4】本開示の別の実施形態による、押圧部材及び積み重ねられたセットの概略断面図である。
【
図5】本開示のさらなる別の実施形態による、押圧部材及び積み重ねられたセットの概略断面図である。
【
図6】本開示のさらに別の実施形態による、押圧部材及び積み重ねられたセットの概略断面図である。
【
図7】本開示の別の実施形態による、皮革前駆体及び皮革製品の概略断面図である。
【
図8】本開示のさらに別の実施形態による、皮革前駆体の概略上面図及び皮革製品の断面図である。
【
図9】本開示の別の実施形態による、皮革製品を製造する方法を示した流れ図である。
【
図10】
図9における皮革製品を製造する方法のステップを示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
当業者が本開示をより良く理解するのを可能にするために、以下において、図面を用いた好ましい実施形態が、本開示及び達成されることになる効果を例示するために提供される。図面は、簡略化された概略図であるということに留意するべきである。従って、本開示に関する要素及びその組み合わせの関係のみが、本開示の基本的な枠組み又は実施方法のより明確な説明を提供するために示されている。実際の要素及び構成は、より複雑であり得る。加えて、便宜上、図面における構成要素の数は、その実際の数と等しくなくてもよく、構成要素の形状及びサイズは、実際の形状及びサイズに比例して描かれないことがあり、その割合は、設計上の要件に従って調整することができる。
【0010】
上、下、左、右、前、又は後ろ等の以下の実施形態における方向を示す用語は、記載されている1つ又は複数の図の向きを参照して使用される。そのようなものとして、方向を示す用語は、例示目的のために使用され、決して限定的なものではない。さらに、本開示の一部の図面は、説明を容易にするために、XYZ直交座標系に基づき例示される。
【0011】
本開示によると、通気孔が、積み重ねられたセットから気体を排気するために提供される。例えば、通気孔は、皮革前駆体と押圧部材との間の空気及び/又は皮革前駆体と放出部材との間の空気を排気するために提供される。通気孔は、放出部材及び/又は押圧部材の側面に形成されてもよい。
【0012】
本開示によると、積み重ねられたセットを加熱及び真空処理することによって、ポリマー材料は、可撓性の皮革を形成するのを可能にされる。ポリマー材料の材料に応じて、ポリマー材料は、物理的な融解接続又は化学的な架橋を介して可撓性の皮革を形成することができる。
【0013】
本開示によると、皮革製品を製造する方法は、連続的なプロセス又は不連続なプロセスであってもよい。連続的なプロセスは、コンベアを有する機器を用いて実行されてもよく、これは、完成した皮革製品を束にするのに有益である。不連続なプロセスは、1つの皮革製品を製造するために使用することができ、これは、完成した皮革製品を層毎に積み重ねるのに有益である。連続的なプロセス及び不連続なプロセスは、当技術分野においてよく知られており、本明細書において繰り返されない。
【0014】
本開示の一実施形態による、皮革製品を製造する方法100を示した流れ図である
図1を参照されたい。皮革製品を製造する方法100は、ステップ110から140を含む。ステップ110において、ポリマー材料を含む皮革前駆体が提供される。ステップ120では、放出部材、皮革前駆体、及び押圧部材が順番に積み重ねられて、積み重ねられたセットを形成し、放出部材及び押圧部材のうち少なくとも1つが、複数の通気孔を有して形成されている。ステップ130では、皮革前駆体が皮革製品を形成するように、積み重ねられたセットは加熱及び真空処理されて、ポリマー材料が可撓性の皮革を形成するのを可能にする。ステップ140において、皮革製品は、放出部材及び押圧部材から分離される。
【0015】
図1における皮革製品を製造する方法100のステップを示した概略図である
図2をさらに参照されたい。明確に例示するために、各ステップの視野角は異なる場合がある。各ステップの視野角については、XYZ直交座標系によって定められた空間的方向を参照することができる。第一に、皮革前駆体200が提供される。ここで、皮革前駆体200は、ポリマー材料のみを含む。言い換えると、皮革前駆体200はポリマー材料である。ポリマー材料は、複数のポリマー粒子221である。一実施形態によると、ポリマー粒子221の各々の粒径は、0μmより大きく、500μm以下であってもよい。一部の実施形態によると、完成した可撓性の皮革の厚さは、ポリマー粒子221の粒径によって調整され得る。別の実施形態によると、ポリマー粒子221の各々の粒径は、0μmより大きく、300μm以下であってもよい。この実施形態において、ポリマー材料は、単一種類のポリマー粒子221のみを含む。すなわち、ポリマー粒子221は、同一の色及び材料を有し、類似の粒径を有する。しかし、本開示はそれに限定されない。他の実施形態において、ポリマー材料は、少なくとも2種類のポリマー粒子を含んでもよく、その詳細は、
図7の関連する説明を参照することができる。ここで、ポリマー材料の形状は粒状であり、これは例証的である。他の実施形態において、ポリマー材料は、他の形状で形成されてもよい。例えば、ポリマー材料の粒径がより小さい場合、ポリマー材料は粉末の形態であってもよい。別の例として、ポリマー材料は、シートの形態であってもよく、シートは、より小さいサイズを有するフレーク、又はより大きなサイズを有するシート材料であってもよい(
図8において示されているポリマーシート221b~224bを参照)。ポリマー材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は合成ゴムで作ることができる。例えば、ポリマー材料は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)で作ることができる。そのようなものとして、皮革製品600を、優れた耐摩耗性及び可塑性を有するように特徴付けることができる。
【0016】
次に、放出部材300、皮革前駆体200、及び押圧部材400は下から上へ順番に積み重ねられて、積み重ねられたセット500を形成する。放出部材300及び押圧部材400は、独立して、柔らかいピース又は硬いピースであってもよい。例えば、柔らかいピースは、可撓性で曲げられるシートであってもよく、硬いピースは、剛性で曲げられないプレートであってもよい。この実施形態では、放出部材300は、
図3において示されている通気孔V等の複数の通気孔Vを有して形成されている。例えば、皮革前駆体200に向かって面する放出部材300の表面が凹んで複数の溝310を形成し、複数の通気孔Vが溝310の端部311に形成されている。一部の実施形態において、複数の溝310は、特定のパターン又はテクスチャを示すことができる。押圧部材400は、気密材料を含んでもよい。例えば、押圧部材400は、気密層を形成するように、完全に気密材料で作ることができる。或いは、押圧部材400は、
図4において示されている気密層420a、
図5において示されている気密層420b、及び
図6において示されている気密層420b´等、皮革前駆体200に隣接して配置されるか又は皮革前駆体200から離して配置される気密層を含んでもよい。
【0017】
その後、積み重ねられたセット500は、装置700内に置かれる。装置700は、熱プレスモジュール710及び真空モジュール720を含む。熱プレスモジュール710は、複数の加熱ユニット711を含む。熱プレスモジュール710は、積み重ねられたセット500を加熱するために使用される。真空モジュール720は、複数の気体流路721を含む。真空モジュール720は、積み重ねられたセット500から気体を真空処理又は真空排気するために使用される。気体の流れの方向を例示するために、装置700は、加熱ユニット711及びその中に配置された気体流路721を示すように断面で示され;積み重ねられたセット500は、押圧部材400の側面430及び放出部材300の側面330を示すように、端面で示されている。加えて、真空モジュール720の上面722の面積は、放出部材300の下面320の面積よりも大きいため、気体流路721のうち少なくとも1つは、放出部材300によって覆われない。従って、積み重ねられたセット500内の気体が、放出部材300の側面330を通って、放出部材300によって覆われていない気体流路721まで流れるため、積み重ねられたセット500を真空処理することができるということが有益である。積み重ねられたセット500を真空処理することによって、押圧部材400が皮革前駆体200に圧力を印加するのを可能にし、これは、プロセス温度を下げるように、皮革前駆体200の融点を下げることに有益である。次に、皮革前駆体200が皮革製品600を形成するように、積み重ねられたセット500は加熱及び真空処理されて、ポリマー材料が可撓性の皮革を形成するのを可能にする。本開示の一実施形態によると、積み重ねられたセット500の加熱及び真空処理は、以下の条件下で行うことができる:加熱温度は80℃から250℃の範囲内であり、加熱時間は180秒以下であり、押圧部材400によって皮革前駆体200に印加される圧力は0バールより大きく、5バール以下である。本開示の別の実施形態によると、積み重ねられたセット500の加熱及び真空処理は、以下の条件下で行うことができる:加熱温度は140℃から200℃の範囲内であり、加熱時間は90秒から180秒であり、押圧部材400によって皮革前駆体200に印加される圧力は1バールから2バールの範囲内である。この実施形態において、皮革前駆体200はポリマー材料のみを含むため、ポリマー材料によって形成される可撓性の皮革が、皮革製品600である。最後に、皮革製品600は、皮革製品600の製造を完了するように、放出部材300及び押圧部材400から分離される。
【0018】
図2及び
図3を参照されたい。
図3は、
図2の一部aの拡大図であり、X軸は用紙表面に対して垂直であり、溝310の延在方向D1はX軸に対して平行であり、真空モジュール720の気体流路721の延在方向D2はZ軸に対して平行である。積み重ねられたセット500が装置700によって加熱及び真空処理されると、積み重ねられたセット500内の空気等の気体は、第一に、溝310の延在方向D1に沿って流れ、通気孔Vを通って溝310を離れる。次に、気体は、矢印A11及びA12の方向に沿って流れる等、放出部材300の側面330を下って流れ、最後に、気体流路721に流れ込み、矢印A2の方向に沿って真空排気されている。積み重ねられたセット500内の気体を真空排気することによって、融解したポリマー材料内に気体が捕捉され、気泡を形成するのを防ぐことができる。従って、完成した可撓性の皮革の表面のむらを防ぐ。可撓性の皮革の表面はむらがあるけれども、可撓性の皮革が他の製品に接着することは好ましくなく、これは、その後のプロセスに到達するのを困難にする。さらに、気泡を有する可撓性の皮革は、破損する傾向があり、不十分な引張強度及び減少した歩留まりをもたらす。本開示の方法によると、皮革前駆体は、固体材料であり得る。すなわち、有機溶媒又は分散剤を使用することによって液体又はペーストの混合物を形成する必要がなく、これは、中間生成物(有毒ガス等)を効果的に減らすことができ、環境保護に有益である。さらに、本開示の方法を利用することによって、皮革製品のプロセスを簡略化することができ、原材料及び環境安全のコストを大幅に減らすことができる。
【0019】
他の実施形態において、押圧部材400は、加熱ユニット711(図示せず)と一体化されてもよい。そのようなものとして、押圧部材400は、積み重ねられたセット500を直接加熱するために、熱プレスモジュール710に取って代わることができる。この場合、装置700は、熱プレスモジュール710を必要としない。
【0020】
他の実施形態において、放出部材300の位置は、押圧部材400の位置と交換されてもよい。例えば、
図2における押圧部材400は、
図10において示されているように、押圧部材400cとして配置することができる。この場合、皮革前駆体200に向かって面する押圧部材400の表面は、(
図2における放出部材300と類似の)複数の溝を有して形成されている。すなわち、押圧部材400は、放出部材300の代わりに複数の通気孔Vを有して形成されている。
【0021】
他の実施形態において、押圧部材400は、放出部材300と同じ構造を有するように構成されてもよい。例えば、押圧部材400は、
図10における押圧部材400cと類似の構造を有するように構成されてもよく、放出部材300は、
図2における放出部材300と類似の構造を有するように構成されてもよい。この場合、皮革前駆体200に向かって面する押圧部材400及び放出部材300の表面は、いずれも複数の溝を有して形成されている。すなわち、押圧部材400及び放出部材300の両方が複数の通気孔Vを有して形成されている。その結果、積み重ねられたセット500内の気体を真空排気する効率をさらに改善することができる。
【0022】
本開示の別の実施形態による、押圧部材400a及び積み重ねられたセット500a、500bの概略断面図である
図4を参照されたい。押圧部材400aは、通気性層410a及び気密層420aを含む。具体的には、通気性層410aは、耐熱性繊維布であってもよく、耐熱性繊維布は、合成繊維布、織物、編物、不織物等であってもよいが、それらに限定されない。上述の「耐熱性繊維布」は、皮革前駆体/皮革製品と反応しない、又はステップ130(
図1を参照)の温度で融解しない繊維布を指し、従って、皮革前駆体/皮革製品を汚染しない。この実施形態では、耐熱性繊維布は、横糸411a及び縦糸412aを含み、耐熱性繊維布は、横糸411aと縦糸412aとの隙間(ラベルなし)によって通気性を有する。通気性層410a及び気密層420aは、互いに接続されている。例えば、気密層420aは、接着剤で作られてもよく、気密層420aは、被覆又は浸透によって通気性層410aに接着される接着剤フィルムであってもよい。接着剤フィルムは柔軟であり、通気性層410aの表面の起伏を反映することができるため、気密層420aは、むらのある表面421aを有し、表面421a上の互いに連通する凹状の空間が、気体が流れるための溝として役立ち得る。言い換えると、気密層420aの表面421aは、通気性層410aの起伏によってへこんで複数の溝を形成し、複数の通気孔Vが複数の溝の端部に形成される。この実施形態において、積み重ねられたセット500aを形成するために、通気性層410aが、皮革前駆体200に隣接して配置されてもよく、気密層420aが、皮革前駆体200から離れて配置されてもよい。この場合、
図4の左下部分において示されているように、耐熱性繊維布の端部に位置する隙間のため、通気性層410aは、複数の通気孔Vを有して形成されている。或いは、積み重ねられたセット500bを形成するために、気密層420aが、皮革前駆体200に隣接して配置されてもよく、通気性層410aが、皮革前駆体200から離れて配置されてもよい。この場合、気密層420aは、表面421aの端部に位置する凹状の空間のため、複数の通気孔Vを有して形成されている。従って、通気孔Vは、
図4の右下部分において示されているように、複数の溝の端部において同様に位置している。
【0023】
本開示のさらなる別の実施形態による、押圧部材400b及び積み重ねられたセット500cの概略断面図である
図5を参照されたい。押圧部材400bは、通気性層410b及び気密層420bを含む。通気性層410bは、耐熱性繊維布であってもよい。この実施形態において、耐熱性繊維布は、横糸411b及び縦糸412bを含む。この実施形態において、気密層420bは、シリコーンで作られてもよい。押圧部材400bと押圧部材400aとの相違点は、通気性層410b及び気密層420bが2つの独立した構成要素であるということである。すなわち、通気性層410b及び気密層420bは取り外し可能であり、接着剤又は他の手段を介して互いに固定されなくてもよい。この実施形態では、積み重ねられたセット500cを形成するために、通気性層410bが、皮革前駆体200に隣接して配置されてもよく、気密層420bが、皮革前駆体200から離れて配置されてもよい。この場合、通気性層410bのみが、複数の通気孔Vを有して形成されている。本開示のさらに別の実施形態による、押圧部材400b´及び積み重ねられたセット500dの概略断面図である
図6を参照されたい。
図5と
図6との相違点は、気密層420b´のうち、通気性層410bから見て外方を向く表面421b´がへこんで複数の溝422b´を形成し、複数の通気孔Vが複数の溝422b´の端部に形成されることである。この実施形態では、積み重ねられたセット500dを形成するために、気密層420b´が、皮革前駆体200に隣接して配置されてもよく、表面421b´が、皮革前駆体200に向かって面した複数の溝422b´を有して形成されてもよく、通気性層410bが、皮革前駆体200から離れて配置されてもよい。一部の実施形態において、気密層420b´は、気密層420b´の表面421b´上に溝422b´を形成するのに便利なプラスチックで作られてもよい。他の実施形態において、気密層は、いくつかの材料で構成されてもよい。例えば、気密層は、以下の材料:プラスチック、シリコーン、ゴム、接着剤等のうち2つの材料によって形成される複合構造であってもよい。
【0024】
図4、5、及び6では、放出部材300aのうち、皮革前駆体200に向かって面する表面340aは、完全に平らである。すなわち、押圧部材400a、400b、400b´のみが、複数の通気孔Vを有して形成される。しかし、他の実施形態では、押圧部材400a、400b、400b´、及び放出部材300が、同時に複数の通気孔Vを有して形成されるように、放出部材300aを放出部材300(
図2を参照)と交換することができる。或いは、放出部材300aの表面340aは、特別なテクスチャ又は設計されたパターンを有して形成されてもよいため、特別なテクスチャ又は設計されたパターンを皮革製品にインプリントすることができ、皮革製品が所望の視覚効果を示すのを可能にする。
【0025】
本開示の別の実施形態による、皮革前駆体200a及び皮革製品600aの概略断面図である
図7を参照されたい。皮革前駆体200aは、ポリマー材料220a及び基材210aを含む。この実施形態では、積み重ねられたセットを形成するために、基材210aが、放出部材(図示せず)に隣接して配置されてもよく、ポリマー材料220aが、押圧部材(図示せず)に隣接して配置されてもよい。ステップ130(
図1を参照)の後、皮革前駆体200aは、皮革製品600aを形成することができる。この場合、皮革製品600aは、可撓性の皮革610a及び基材210aを含む複合構造である。皮革製品600(
図2を参照)を皮革製品600aと比較すると、皮革製品600は、その後の用途のために、皮革製品600を他の基材に接着するためのさらなるステップをさらに必要とする。対照的に、皮革製品600aは、必要とされる基材210aを既に有しており、これは、その後の用途にとって都合がよい。具体的には、ポリマー材料220aは、複数のポリマー粒子を含んでもよい。ポリマー粒子は、少なくとも1種類のポリマー粒子を含んでもよい。ここで、ポリマー粒子は、2種類のポリマー粒子、すなわち、複数の第1のポリマー粒子221a及び複数の第2のポリマー粒子222aを含む。ポリマー材料220aは、少なくとも2種類のポリマー粒子を含むため、少なくとも2種類のポリマー粒子のうち各種類は、好ましくは、類似の特徴を有する。例えば、少なくとも2種類のポリマー粒子は、全て熱可塑性ポリマー粒子又は全て熱硬化性ポリマー粒子である。一方で、少なくとも2種類のポリマー粒子は、異なる色、異なる材料、及び/又は異なる粒径を有してもよい。繊細な構成では、皮革製品600aは、驚くべき視覚効果を示すことができる。
図7において示されている例では、第1のポリマー粒子221a及び第2のポリマー粒子222aは、異なる色、類似の材料特徴、及び類似の粒径を有する。ステップ130(
図1を参照)の後、第1のポリマー粒子221a及び第2のポリマー粒子222aは、いずれも融解され、次に、物理的に接続されるため、
図7において示されている皮革製品600aの左側部分の色は、皮革製品600aの右側部分の色とは異なる。別の例として、第1のポリマー粒子221aの色及び材料は、第2のポリマー粒子222aとは異なるが、第1のポリマー粒子221aの粒径は、第2のポリマー粒子222aと類似している。この場合、第1のポリマー粒子221aの融解温度は、例証的に、第2のポリマー粒子222aよりも高く、第1のポリマー粒子221aは、透明又は半透明であるように構成された第2のポリマー粒子222a上で散乱される。ステップ130(
図1を参照)の後、より低い融解温度を有する第2のポリマー粒子222aは完全に融解され、第1のポリマー粒子221aを包む。そのようなものとして、皮革製品600aとは異なる別の視覚効果を提供することができる。さらなる別の例として、第1のポリマー粒子221aの色及び粒径は、第2のポリマー粒子222aとは異なるが、第1のポリマー粒子221aの材料は、第2のポリマー粒子222aと同じである。この場合、第1のポリマー粒子221aの粒径は、例証的に、第2のポリマー粒子222aよりも大きく、第1のポリマー粒子221aは、第2のポリマー粒子222a上に散乱される。ステップ130(
図1を参照)の後、ステップ130の加熱温度及び持続時間を調整することによって、第1のポリマー粒子221aの各々は、その外側部分のみが融解されるが、内側部分は融解されず、第2のポリマー粒子222aの各々は完全に融解されることを達成するように制御される。第1のポリマー粒子221aの各々の融解比率(例えば、50%)は、第2のポリマー粒子222aの各々の融解比率(例えば、100%)とは異なるため、皮革製品は、皮革製品600aとは異なるさらなる別の視覚効果を提供することができる。
【0026】
本開示のさらに別の実施形態による、皮革前駆体200bの概略上面図及び皮革製品600bの断面図である
図8を参照されたい。皮革前駆体200bは、ポリマー材料220b及び基材210bを含む。ステップ130(
図1を参照)の後、皮革前駆体200bは皮革製品600bを形成する。この場合、皮革製品600bは、可撓性の皮革610b及び基材210bを含む複合構造である。この実施形態において、ポリマー材料220bは、複数のポリマーシート221b~224bである。ここで、ポリマーシート221b~224bは長方形シートであり、これは例証的である。複数のポリマーシート221b~224bのいくつかのエッジ部分は互いに重なり合い、重なり合う領域Mを形成している。ステップ130の後、ポリマーシート221b~224bは、重なり合う領域Mを介して互いに組み合わされて、一体の可撓性の皮革610bを形成することができる。この実施形態において、完成した製品の必要性に応じて、基材210bが、放出部材(図示せず)に隣接して配置されてもよく、ポリマー材料220bが、押圧部材(図示せず)に隣接して配置されてもよく、又は、ポリマー材料220bが、放出部材に隣接して配置されてもよく、基材210bが、押圧部材に隣接して配置されてもよい。一部の実施形態において、ポリマーシート221b~224bの各々は、可撓性の皮革であってもよく、可撓性の皮革は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は合成ゴムで作られてもよい。本開示の一実施形態によると、ポリマーシート221b~224bは、
図2において示されているステップによって製造された可撓性の皮革であってもよい。すなわち、皮革前駆体がポリマー材料のみを含む場合、皮革製品は可撓性の皮革である。その結果、より小さな面積を有する複数の可撓性の皮革が組み合わされて、より大きな面積を有する可撓性の皮革610bを形成する。
【0027】
図7及び8において示されているように、基材210a及び210bは、独立して、柔らかいピース又は硬いピースであってもよい。例えば、柔らかいピースは、可撓性で曲げられるシート、フィルム、又は布であってもよく、硬いピースは、剛性で曲げられないプレート又はシェルであってもよい。
【0028】
本開示の別の実施形態による、皮革製品を製造する方法800を示した流れ図である
図9を参照されたい。皮革製品を製造する方法800は、ステップ810から840を含む。ステップ810において、ポリマー材料及び基材を含む皮革前駆体が提供される。ステップ820では、皮革前駆体及び押圧部材は順番に積み重ねられて、積み重ねられたセットを形成し、押圧部材は、複数の通気孔を有して形成されている。ステップ830において、皮革前駆体が皮革製品を形成するように、積み重ねられたセットは加熱及び真空処理されて、ポリマー材料が基材と組み合わされるのを可能にする。ステップ840において、皮革製品は押圧部材から分離される。
【0029】
図9における皮革製品を製造する方法800のステップを示した概略図である
図10を参照されたい。明確に例示するために、各ステップの視野角は異なる場合がある。各ステップの視野角については、XYZ直交座標系によって定められた空間的方向を参照することができる。第一に、皮革前駆体200cが提供される。皮革前駆体200cは、ポリマー材料220c及び基材210cを含む。ここで、ポリマー材料220cは単一種類のポリマー粒子221cのみを含み、これは例証的である。ポリマー材料220c及びポリマー粒子221cの関連する詳細については、
図2において示されているポリマー材料及びポリマー粒子221の関連する説明を参照することができる。さらに、皮革前駆体200cは、実際のニーズに応じて、
図7において示されている皮革前駆体200a又は
図8において示されている皮革前駆体200bと類似の皮革前駆体と交換することができる。
【0030】
次に、皮革前駆体200c及び押圧部材400cは下から上へ順番に積み重ねられて、積み重ねられたセット500eを形成する。押圧部材400cは、柔らかいピース又は硬いピースであってもよい。押圧部材400cは、複数の通気孔Vを有して形成されている。例えば、押圧部材400cは、気密層(ラベルなし)を含んでもよい。気密層は、皮革前駆体200cに隣接して配置される。皮革前駆体200cに向かって面している気密層の表面はへこんで複数の溝440cを形成し、複数の通気孔Vが、複数の溝440cの端部441cにおいて形成される。一部の実施形態において、複数の溝440cは、特定のパターン又はテクスチャを示すことができる。この実施形態において、押圧部材400cは気密層のみを含む。言い換えると、押圧部材400cは気密層によって形成される。加えて、実際のニーズに応じて、押圧部材400cを、
図4において示されている押圧部材400a、
図5において示されている押圧部材400b、又は
図5において示されている押圧部材400b´と類似の押圧部材と交換することができる。
【0031】
その後、積み重ねられたセット500eは装置700内に置かれる。次に、皮革前駆体200cが皮革製品600cを形成するように、積み重ねられたセット500eは加熱及び真空処理されて、ポリマー材料220cが可撓性の皮革610cを形成するのを可能にする。最後に、皮革製品600cは、皮革製品600cの製造を完了するように、押圧部材400cから分離される。
【0032】
図1において示されている皮革製品を製造する方法100と比較して、皮革製品を製造する方法800は、放出部材を必要とせず、これは、皮革製品のプロセス手順及び製造コストを減らすために有益である。加えて、方法800によって製造された皮革製品600cは、基材210cを既に有しているため、皮革製品600cは、その後のプロセスに直接適用することができ、これは、多様な用途の利便性にとって好ましい。
【0033】
従来技術と比較して、複数の通気孔を有して形成されている本開示の押圧部材及び/又は放出部材で、及び、積み重ねられたセットを真空処理することで、融解又は結合プロセスの間にポリマー材料によって気体が捕捉されるのを防ぐことができ、従って、皮革製品から突き出る気泡又は気泡から残ったピットの形成を回避する。従って、皮革製品の品質及び生産収率を改善することが有益である。
【0034】
当業者は、本発明の教示を保持しながら、装置及び方法の多くの修正及び変更を行うことができるということを容易に観察することになる。従って、上記の開示は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されると解釈されるべきである。