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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129226
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】容器詰めコーヒー飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/24 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
A23F5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159926
(22)【出願日】2022-10-04
(62)【分割の表示】P 2022032134の分割
【原出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】丸山 達也
(72)【発明者】
【氏名】谷 鷹明
(72)【発明者】
【氏名】三橋 守男
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB24
4B027FC02
4B027FC10
4B027FK02
4B027FQ17
4B027FQ19
(57)【要約】
【課題】本発明は、明るい液色(具体的には、明度であるL値が40以上の液色)を有し、かつコーヒーの旨味が感じられるコーヒー飲料を提供することを目的とする。
【解決手段】L値が40以上の容器詰めコーヒー飲料において、グアイアコールの含有量を30~600ppbに調整し、ピリジンの含有量を150~10000ppbに調整し、グアイアコールの含有量に対するピリジンの含有量の重量比([ピリジンの含有量]/[グアイアコールの含有量])を3~40に調整する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
L値が40以上の容器詰めコーヒー飲料であって、
グアイアコールの含有量が30~600ppbであり、
ピリジンの含有量が150~10000ppbであり、
グアイアコールの含有量に対するピリジンの含有量の重量比([ピリジンの含有量]/[グアイアコールの含有量])が3~40である、
上記コーヒー飲料。
【請求項2】
容器が透明容器である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
L値が40以上の容器詰めコーヒー飲料の製造方法であって、
グアイアコールの含有量を30~600ppbに調整する工程、
ピリジンの含有量を150~10000ppbに調整する工程、
グアイアコールの含有量に対するピリジンの含有量の重量比([ピリジンの含有量]/[グアイアコールの含有量])を3~40に調整する工程、及び
飲料を容器詰めする工程、
を含む、上記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器詰めコーヒー飲料に関し、より具体的には、明度であるL値が40以上であって、コーヒーの旨味が感じられる容器詰めコーヒー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー飲料は嗜好品として広く愛好されており、その需要もますます増大すると共にニーズの多様化が進んでいる。特に近年においては、軽量で運搬性に優れていることからペットボトル入りのコーヒー飲料の需要が伸びている。ペットボトル等の透明容器入りのコーヒー飲料は、従来の缶コーヒーとは異なって直接的に内容物が視認されるため、コーヒー飲料の液色がドリンカビリティに影響を及ぼし得る。例えば、いわゆるフレーバードウォーターと称される飲料においては、透明に近い液色の飲料ほど清涼感があって人気を博している。同様に、コーヒー飲料においても、明るい液色と暗い液色(すなわち、明度の高い液色と明度の低い液色)を比較すると、明るい液色のコーヒー飲料の方が暗い液色よりも清涼感があり、ドリンカビリティが高い傾向にあるといえる。
【0003】
しかしながら、明るい液色のコーヒー飲料は、コーヒーの香りや苦味に寄与する褐色色素成分の量が少ない分、コーヒーとしての味わいが全体的に弱くなり、美味しいと感じられるコーヒー飲料を製造することは容易ではない。そのため、従来の透明容器入りのコーヒー飲料において、明るい液色のコーヒー飲料は市場ではほとんど見られなかったのが現実である。コーヒーの味わいの中で、苦味、酸味及び甘味に関しては、それらの味に寄与する香気成分が知られていることから、そのような香気成分を添加することで味付けを行うことは可能である。しかし、コーヒーの旨味に寄与する成分はほとんど解明されておらず、美味しいと感じられるコーヒー飲料の製造は実際には困難である。
【0004】
コーヒー飲料の液色を調整する技術として、コーヒー抽出液の透明度を向上させる方法が知られている(特許文献1)。当該方法は、水溶性のカルシウム塩をコーヒー抽出液に添加することを特徴としており、それによって、コーヒー抽出液の製造過程で発生する濁りの原因となる高分子物質を凝集させて除去することが可能となる。しかし、当該方法においてコーヒー飲料の味わいが向上するということは特に言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3-91442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、明るい液色(明度の高い液色)のコーヒー飲料について、従来技術では美味しいと感じられるコーヒー飲料の製造は容易ではなかった。そこで、本発明は、明るい液色(具体的には、明度であるL値が40以上の液色)を有し、かつコーヒーの旨味が感じられるコーヒー飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、L値が40以上の液色を有するコーヒー飲料において、所定量のグアイアコールとピリジンとを含有させ、さらに、グアイアコールとピリジンの含有量を所定の重量比に調整することで、明るい液色を有しつつ、コーヒーの旨味が感じられるコーヒー飲料が得られることを見出した。かかる知見に基づき、本発明者らは本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、これらに限定されないが、以下のものに関する。
(1)L値が40以上の容器詰めコーヒー飲料であって、
グアイアコールの含有量が30~600ppbであり、
ピリジンの含有量が150~10000ppbであり、
グアイアコールの含有量に対するピリジンの含有量の重量比([ピリジンの含有量]/[グアイアコールの含有量])が3~40である、
上記コーヒー飲料。
(2)容器が透明容器である、(1)に記載の飲料。
(3)L値が40以上の容器詰めコーヒー飲料の製造方法であって、
グアイアコールの含有量を30~600ppbに調整する工程、
ピリジンの含有量を150~10000ppbに調整する工程、
グアイアコールの含有量に対するピリジンの含有量の重量比([ピリジンの含有量]/[グアイアコールの含有量])を3~40に調整する工程、及び
飲料を容器詰めする工程、
を含む、上記製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、明度であるL値が40以上の液色を有し、かつコーヒーの旨味が感じられるコーヒー飲料を提供することができる。本発明の飲料は、明るい液色を有しつつ、美味しいと感じられるコーヒー飲料であることから、本発明の技術を利用することにより、ドリンカビリティの高い容器詰めコーヒー飲料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の容器詰めコーヒー飲料について、以下に説明する。なお、特に断りがない限り、本明細書において用いられる「ppb」、及び「重量%」は、重量/容量(w/v)のppb、及び重量%をそれぞれ意味する。
【0011】
本発明の一態様は、L値が40以上の容器詰めコーヒー飲料であって、
グアイアコールの含有量が30~600ppbであり、
ピリジンの含有量が150~10000ppbであり、
グアイアコールの含有量に対するピリジンの含有量の重量比([ピリジンの含有量]/[グアイアコールの含有量])が3~40である、
上記コーヒー飲料である。かかる構成を採用することにより、明るい液色(具体的には、明度であるL値が40以上の液色)のコーヒー飲料でありながらも、コーヒーの旨味を感じさせることができる。ここで、本明細書においてコーヒーの「旨味」とは、コーヒーの味の厚みを意味し、コーヒー飲料を口に入れてからコーヒーの味わいが持続する長さで評価することができる。
【0012】
(コーヒー飲料の液色)
本発明のコーヒー飲料は、その液色に特徴を有する。ここで、コーヒー飲料の液色とは、コーヒー飲料それ自体の液体の色を意味する。本発明者らの検討によると、明るい液色としてコーヒー飲料の液色の明度(L値)が40以上である場合に、視覚的に清涼感を感じやすく、ドリンカビリティが向上する傾向があることがわかった。その一方で、L値が40以上であるコーヒー飲料は、コーヒー飲料中の褐色成分が少なく、コーヒーの旨味に欠け、コーヒーの美味しさが損なわれる傾向にあった。
【0013】
本発明におけるL値(明度)とは、色の明るさの度合いを表す数値であり、0~100の範囲(0:黒色、100:白色)で表わされる値である。コーヒー飲料のL値は、色差計を用いて測定することができる。色差計としては、例えば、分光色彩計SE7700(
日本電色工業)等を使用することができる。また、コーヒー飲料の透過光を利用してL値を測定することができる。本発明のコーヒー飲料において、液色のL値は40以上であり、好ましくは45以上、より好ましくは50以上である。また、本発明のコーヒー飲料の液色のL値は、例えば99以下であり、好ましくは95以下、より好ましくは90以下である。L値が99を超える場合、その飲料は透明飲料となってコーヒー飲料とは認知されにくくなり、かえってコーヒー飲料としてのドリンカビリティが低下するおそれがある。なお、市販のペットボトル入りコーヒー飲料について調査したところ、「コカコーラ ジョージアジャパンクラフトマンブラック」のL値は19であり、「サントリークラフトボス ブラック」のL値は28であった。
【0014】
(グアイアコール)
本発明のコーヒー飲料は、グアイアコールを含有する。グアイアコールは、フェノール類の一種であり、化学式Cで表される有機化合物である。グアイアコールは、別名として2-メトキシフェノールやo-メトキシフェノールとも称され、そのCAS登録番号は90-05-1である。グアイアコールは、コーヒー特有の苦味に寄与する成分であることが知られているが、本発明においてはコーヒーの旨味にも寄与する。本発明のコーヒー飲料に用いられるグアイアコールの由来は特に限定されず、合成品であってもよいし、植物などの天然原料に由来するものであってもよい。
【0015】
本発明のコーヒー飲料におけるグアイアコールの含有量は30~600ppbである。グアイアコールの含有量が上記の範囲から逸脱すると、コーヒーの旨味が弱くなる傾向にある。本発明のコーヒー飲料におけるグアイアコールの含有量は、好ましくは60ppb以上、より好ましくは80ppb以上、さらに好ましくは100ppb以上である。また、本発明のコーヒー飲料におけるグアイアコールの含有量は、好ましくは300ppb以下、より好ましくは200ppb以下、さらに好ましくは150ppb以下である。なお、本発明のコーヒー飲料の苦味は、グアイアコール以外の当業者に公知の苦味成分を用いて調整することができる。
【0016】
本発明において、コーヒー飲料中のグアイアコールの含有量は以下の方法により測定することができる。試料5gを水で希釈して20mlに定容し、これにヘキサン10mlと塩化ナトリウム8gを添加し、10分間振とうする。次いで、遠心分離を行い、ヘキサン層を分取し、以下の条件にてGC-MSを用いて分析を行う。
機種:7890B/5977B [Agilent Techno1ogies,1nc.]
カラム:DB-WAX UI [Agilent Techno1ogies,1nc.] φ 0.25mm×30m、膜厚 0.25μm
注入方法:スプリットレス
温度:試料注入口 220℃、カラム→80℃(1 min保持)→10℃/min昇温→220℃(7 min保
持)
ガス流量:ヘリウム(キャリヤーガス) 1 mL/min
イオン源温度:230℃
イオン化法:EI
設定質量数:m/Z 124
【0017】
(ピリジン)
本発明のコーヒー飲料は、ピリジンを含有する。ピリジンは、複素環式芳香族化合物の一種であり、化学式CNで表される有機化合物である。ピリジンのCAS登録番号は110-86-1である。ピリジンは、一般的には腐った魚のような異臭を有することが知られている。本発明のコーヒー飲料に用いられるピリジンの由来は特に限定されず、合成品であってもよいし、植物などの天然原料に由来するものであってもよい。
【0018】
本発明のコーヒー飲料におけるピリジンの含有量は150~10000ppbである。
ピリジンの含有量が上記の範囲から逸脱すると、コーヒーの旨味が弱くなる傾向にある。本発明のコーヒー飲料におけるピリジンの含有量は、好ましくは300ppb以上、より好ましくは400ppb以上、さらに好ましくは500ppb以上、さらにより好ましくは600ppb以上である。また、本発明のコーヒー飲料におけるピリジンの含有量は、好ましくは6000ppb以下、より好ましくは4000ppb以下、さらに好ましくは2000ppb以下、さらにより好ましくは1500ppb以下である。本発明において、コーヒー飲料中のピリジンの含有量はヘッドスペース-GC-MS法によって測定することができる。
【0019】
本発明のコーヒー飲料において、グアイアコールの含有量に対するピリジンの含有量の重量比([ピリジンの含有量]/[グアイアコールの含有量])は3~40である。本発明のコーヒー飲料における当該重量比([ピリジンの含有量]/[グアイアコールの含有量])は好ましくは5以上、より好ましくは8以上である。また、本発明の飲料における当該重量比([ピリジンの含有量]/[グアイアコールの含有量])は、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。
【0020】
(コーヒー飲料)
本発明の飲料は、コーヒー飲料である。本明細書においてコーヒー飲料とは、特に断りがない限り、コーヒー分を原料として製造される飲料を意味する。コーヒー飲料の製品の種類や規格は、特に限定されないが、1977年に認定された「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」の定義である「コーヒー」、「コーヒー飲料」、及び「コーヒー入り清涼飲料」等が含まれる。また、カフェインを90%以上除去したコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分のみを使用した「コーヒー入り清涼飲料(カフェインレス)」に関しても、本発明のコーヒー飲料に含まれる。なお、本発明のコーヒー飲料においては、乳成分は含まれないことが好ましい。
【0021】
本発明のコーヒー飲料におけるコーヒー分の含有量、すなわちコーヒー固形分は、特に限定されないが、例えば0.5~2重量%であり、好ましくは0.8~1.5重量%であり、より好ましくは0.9~1.3重量%である。本発明において「コーヒー固形分」とは、コーヒー分を一般的な乾燥法(凍結乾燥、蒸発乾固など)を用いて乾燥させて水分を除いた後の、乾固物の重量のことをいう。すなわち、コーヒー飲料におけるコーヒー固形分は、コーヒー飲料に含まれ得る可溶性固形分のうち、甘味成分、pH調整剤、香料等のコーヒー豆に由来しない成分を除いた固形分をいう。本発明では、コーヒー抽出液中のコーヒー固形分の含有量は、コーヒー抽出液のBrix(%)に相当し、当該Brixは、糖度計(糖用屈折計)を用いて測定することができる。
【0022】
本発明のコーヒー飲料に用いるコーヒー豆の栽培樹種は、特に限定されず、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などが挙げられるが、アラビカ種を用いることが好ましい。また、コーヒー豆の産地及び銘柄も特に限定されず、モカ、ブラジル、コロンビア、グアテマラ、ブルーマウンテン、コナ、マンデリン、キリマンジャロなどが挙げられる。コーヒー豆は1種のみを用いてもよいし、複数種をブレンドして用いてもよい。コーヒー豆の焙煎の度合い(浅煎り、中煎り、深煎りの順に基本的に3段階で表現される)についても特に限定されないが、L値が40以上の液色のコーヒー飲料であることから、浅煎り又は中煎りのコーヒー豆が好適に用いられる。また、コーヒーの生豆も用いることができる。コーヒー豆の焙煎方法に関して、焙煎温度や焙煎環境に特に制限はなく、通常の方法を採用できる。さらに、その焙煎コーヒー豆からの抽出方法についても何ら制限はなく、例えば焙煎コーヒー豆を粗挽き、中挽き、細挽き等に粉砕した粉砕物から水や温水(0~200℃)を用いて抽出する方法が挙げられる。抽出方法は、ドリップ式、サイフォン式、ボイリング式、ジェット式、連続式などがある。
【0023】
(容器詰め飲料)
本発明のコーヒー飲料は、容器に充填された容器詰めコーヒー飲料である。容器の種類は特に限定されず、プラスチック容器(PETボトル等)、ガラス瓶、アルミ缶、スチール缶、紙容器など、通常用いられる容器のいずれも用いることができる。本発明では、コーヒー飲料の液色を視認できるという点から、用いる容器は透明容器であることが好ましい。ここで、本明細書において「透明容器」とは、容器に充填等された飲料を外部から視認できる容器を意味する。透明容器としては、例えばプラスチック容器やガラス瓶などを用いることができ、軽量であるプラスチック容器(例えば、PETボトル等)を用いることが好ましい。透明容器を用いる場合、その透過率は特に限定されず、いわゆる半透明の容器であってもよい。本発明では、例えば可視光700nmにおける透過率が40%以上、好ましくは50%以上の容器を用いることができる。透明容器の色も特に限定されず、無色であっても有色であってもよいが、内容物の視認のしやすさから無色であることが好ましい。
【0024】
また、透明容器は容器の一部または全部がフィルム等で覆われていてもよい。例えば、内容表示用のラベル・印刷部分は不透明あるいは半透明でそれ以外の部分が透明な容器や、意匠性を有する透明部分・不透明部分が複数箇所で異なるように組み合わされている容器、看視窓程度の大きさの透明部分のみを有する不透明容器など、内容物が視認できる透明部分が存在する限りにおいてその透明領域については限定されない。
【0025】
本発明のコーヒー飲料の容量は、特に限定されないが、容器から直接的に飲用する場面が多いことから、300~700mlが好ましく、より好ましくは400~650ml、特に好ましくは450~600mlである。
【0026】
また、本発明のコーヒー飲料を容器詰めする場合は、ホットパック充填法又は無菌充填法のいずれも用いることができるが、無菌充填法を用いることが好ましい。なお、ホットパック充填法は一般に、60℃以上に加熱された飲料を容器に充填後、直ちに密封する方法をいう。また、無菌充填装置とは一般に、高温短時間殺菌した内容物を滅菌済み容器に無菌環境下で充填、密封する装置をいう。
【0027】
本発明のコーヒー飲料の加熱滅菌処理の方法は特に限定されない。例えば、各地の法規(日本にあっては食品衛生法)に従って加熱滅菌処理を行うことができる。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。UHT殺菌法の場合、通常120~150℃で1~120秒間程度、好ましくは130~145℃で30~120秒間程度の条件であり、レトルト殺菌法の場合、通常110~130℃で1~30分程度、好ましくは120~125℃で3~20分間程度の条件である。
【0028】
(その他の成分)
本発明のコーヒー飲料では、上記成分の他、本発明の効果を損なわない限りで、甘味料(ショ糖、異性化糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、パラチノース、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、還元デンプン糖化物、ステビア、グリチルリチン、タウマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテーム、サッカリン、アセスルファムK、スクラロース、ズルチンなど)、酸化防止剤(ビタミンC、エリソルビン酸ナトリウムなど)、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなど)、カゼインNa、香料(コーヒーフレーバーなど)等を適宜配合することができる。なお、本発明のコーヒー飲料においては、甘味料は含まれないことが好ましい。
【0029】
(pH)
本発明のコーヒー飲料は、所定の範囲内のpHを有することが好ましい。特に限定されないが、本発明のコーヒー飲料のpHは、4.0~7.0の範囲が好ましく、4.5~6.5の範囲がより好ましく、5.5~6.5の範囲がさらに好ましい。pHの調整には一般的なpH調整剤を使用することができ、そのようなpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基や、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、L-アスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸のナトリウム塩又はカリウム塩、及び、その他食品衛生法上使用可能なpH調整剤が挙げられる。また、pHの異なるコーヒー抽出液を混合することにより所定のpHに調整することも可能である。
【0030】
(製造方法)
ある態様では、本発明は容器詰めコーヒー飲料の製造方法である。より具体的には、本発明の一態様は、L値が40以上の容器詰めコーヒー飲料の製造方法であって、
グアイアコールの含有量を30~600ppbに調整する工程、
ピリジンの含有量を150~10000ppbに調整する工程、
グアイアコールの含有量に対するピリジンの含有量の重量比([ピリジンの含有量]/[グアイアコールの含有量])を3~40に調整する工程、及び
飲料を容器詰めする工程、
を含む、上記製造方法である。
【0031】
本発明の容器詰めコーヒー飲料は、グアイアコール及びピリジン以外の上述した各種成分を適宜配合したり、飲料中のその含有量を調整したりすることによって製造されてもよい。すなわち、本発明の製造方法は、上述した成分を配合する工程や、飲料中の当該成分の含有量を調整する工程を含むことができる。また、本発明の製造方法は、飲料のpHを調整する工程や、Brix値を調整する工程等も含むことができる。本発明の製造方法では、上記の各工程をどの順序で行ってもよく、最終的に得られたコーヒー飲料における含有量などが所要の範囲にあればよい。なお、本発明のコーヒー飲料の製造における飲料中の成分の種類やその含有量等の各種要素については、本発明のコーヒー飲料に関して上記した通りであるか、それらから自明である。
【0032】
また、本発明のコーヒー飲料の製造方法においては、必要に応じて飲料を加熱殺菌する工程が含まれてもよい。加熱殺菌を行う条件は上記に説明した通りであるが、特に限定されるわけではない。
【実施例0033】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0034】
<実験例1>
浅煎りに焙煎したアラビカ種(産地:グアテマラ)のコーヒー豆(L値:28)を粉砕し、粉砕コーヒー豆の4倍の重量の湯を抽出湯として用い、抽出器で50℃にて抽出処理を行った。コーヒー豆量の約2倍の質量になったところで抽出を終了し、抽出液を2.5
倍希釈して、ベース飲料1を作製した。ベース飲料1の明度(L値)は55であった。また、ベース飲料1中のグアイアコールとピリジンの含有量を測定したところ、グアイアコールの含有量は45ppbであり、ピリジンの含有量は100ppbであった。このベース飲料1に、グアイアコール及びピリジンを添加して、飲料中のグアイアコール及びピリ
ジンの最終含有量が下表に示した量となるように各種飲料を調製した。また、得られた飲料は全て500mlのPETボトル透明容器に充填して、容器詰めコーヒー飲料とした。
【0035】
次に、各種飲料の官能評価を実施した。官能評価としては、専門パネラー3名にて、各種飲料の旨味に関する評価を行った。各専門パネラーは、以下の基準に従って5点評価を行い、その平均点を評価点とした。
1点:旨味を全く感じない
2点:旨味をわずかに感じる(2秒以上持続しない)
3点:旨味を2秒以上5秒未満持続して感じる
4点:旨味を5秒以上8秒未満持続して感じる
5点:旨味を8秒以上持続して感じる
【0036】
【表1-1】
【0037】
【表1-2】
【0038】
結果は上記の通りである。L値が55のコーヒー飲料において、グアイアコールの含有量、ピリジンの含有量、及びグアイアコールとピリジンの含有量の重量比([ピリジンの含有量]/[グアイアコールの含有量])を所定の範囲に調整することにより、コーヒーの旨味が増強されることがわかった。
【0039】
<実験例2>
中煎りのアラビカ種(産地:グアテマラ)のコーヒー豆(L値:20)を用いて、実験例1と同様の方法でベース飲料2を調製した。ベース飲料2の明度(L値)は45であった。また、ベース飲料2中のグアイアコールとピリジンの含有量を測定したところ、グアイアコールの含有量は170ppbであり、ピリジンの含有量は400ppbであった。このベース飲料2に、グアイアコール及びピリジンを添加して、飲料中のグアイアコール及びピリジンの最終含有量が下表に示した量となるように各種飲料を調製した。また、得られた飲料は全て500mlのPETボトル透明容器に充填して、容器詰めコーヒー飲料
とした。
【0040】
得られた各種飲料に対して、実験例1と同様の方法及び基準を用いて、飲料の旨味に関する評価を行った。
【0041】
【表2】
【0042】
結果は上記の通りである。L値が45のコーヒー飲料においても、グアイアコールの含有量、ピリジンの含有量、及びグアイアコールとピリジンの含有量の重量比([ピリジンの含有量]/[グアイアコールの含有量])を所定の範囲に調整することにより、コーヒーの旨味が増強されることがわかった。