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特開2023-129237水晶ウェハ及び水晶振動子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129237
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】水晶ウェハ及び水晶振動子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/02 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
H03H3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183303
(22)【出願日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2022033481
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波夛野 真
(72)【発明者】
【氏名】菊池 賢一
(72)【発明者】
【氏名】岩井 悠
(72)【発明者】
【氏名】島尾 憲治
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 徹也
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108KK01
5J108MM08
5J108MM11
(57)【要約】
【課題】ハンドリング及び搬送時に生じる割れを軽減することができ、生産性を向上させることができる水晶ウェハ及び水晶振動子の製造方法を提供する。
【解決手段】
水晶ウェハ10は、外周部20の一部又は全部に双晶化領域21を具える。双晶化領域は水晶ウェハの外周から中心に向かって少なくとも2mmの領域であり、この領域の80%以上が双晶化されている。双晶化領域を具えた水晶ウェハにマトリクス状に多数の水晶振動子の外形形成用の耐エッチングマスク13を形成し、この水晶ウェハを、フッ酸を主とするエッチング液中に浸漬して当該外形を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の水晶振動子をマトリクス状に形成するための水晶ウェハにおいて、
水晶ウェハの外周部の一部又は全部に双晶化領域を具えることを特徴とする水晶ウェハ。
【請求項2】
前記水晶ウェハの外周部の一部が、当該水晶ウェハをウェットエッチングする際の耐エッチング膜の成膜時に用いる固定治具によって前記耐エッチング膜を成膜できない領域であることを特徴とする請求項1に記載の水晶ウェハ。
【請求項3】
前記双晶化領域は水晶ウェハの外周から中心に向かって少なくとも2mmの幅を有した領域であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水晶ウェハ。
【請求項4】
前記双晶化領域は水晶ウェハの外周から中心に向かって直径の2%~12%の幅を有した領域であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水晶ウェハ。
【請求項5】
前記双晶化領域内の双晶化率が80%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水晶ウェハ。
【請求項6】
前記多数の水晶振動子を連結するための桟を具え、前記桟の一部又は全部が双晶化領域であることを特徴とする請求項1に記載の水晶ウェハ。
【請求項7】
前記多数の水晶振動子及び前記桟を連結している連結部を具え、前記連結部が双晶化領域であることを特徴とする請求項6に記載の水晶ウェハ。
【請求項8】
水晶ウェハにマトリクス状に多数の水晶振動子の外形を、フォトリソグラフィ技術及びフッ酸を主とするエッチング液を用いて形成する水晶振動子の製造方法において、
前記水晶ウェハの少なくとも外周部の一部又は全部に双晶化領域を形成する工程と、
前記双晶化領域を形成した水晶ウェハを、前記エッチング液に浸漬して前記外形を形成する工程と、
を含むことを特徴とする水晶振動子の製造方法。
【請求項9】
外周部の前記一部は、前記水晶振動子の外形形成のために水晶ウェハの表裏に前記エッチング液に対する保護膜を製膜するに当たり、水晶ウェハの一部分が前記成膜用の治具やレジスト被着用の治具で保持されてしまって、金属膜やレジストが形成されない領域であること、を特徴とする請求項8に記載の水晶振動子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドリング及び搬送時の割れが生じにくい水晶ウェハ及び水晶振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び通信周波数の高周波化に伴い、水晶振動子もより小型で薄いものが要求されており、機械加工式の製造方法では水晶振動子の製造が困難になっている。そのため、フォトリソグラフィ技術及びウェットエッチング技術により、水晶ウェハに多数の水晶振動子をマトリクス状に形成し、各水晶振動子を水晶ウェハから折り取って個片化する方法が用いられている。従って、フォトリソグラフィ工程や個片化する工程では、水晶ウェハのハンドリングや搬送が度々行われる。
【0003】
ウェットエッチング工程では、典型的には、フッ酸を主とするエッチング液が使用されている。また、特許文献1に、ATカット(振動領域)に対して双晶となるBTカット(非振動領域)は、エッチング速度が2/7程度であることが開示されている(特許文献1の課題を解決するための手段など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-69374
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水晶ウェハをウェットエッチングする際、エッチング加工を行いたくない箇所、具体的には水晶ウェハの外周部すなわち外枠部や、水晶ウェハ内の各水晶振動子を支持する桟等の箇所に、Auなどのメタル膜やレジスト膜を成膜し、外枠部や桟をエッチング液から保護することが行われる。しかし、メタル膜やレジスト膜の成膜を行う際、水晶ウェハの例えば外周部の一部を治具で保持する必要があるため、この部分はメタル膜やレジスト膜を付着できないので、メタル膜やレジスト膜で保護できない。そのため、水晶ウェハの外周部の一部に意図しないエッチングが生じてしまう。従って、例えば、以下に図16を参照して説明する問題が生じる。
図16の(A)は、従来の水晶ウェハ170の平面図である。また、図16の(B)は、従来の水晶ウェハ170に割れ190が生じた一例の平面図である。
従来の水晶ウェハ170では、図16の(A)のように、ウェットエッチング工程の際に、水晶ウェハ170の外周部が意図しない状態にエッチングされ、凹凸180が発生してしまうことがある。この凹凸180は、水晶ウェハのハンドリング及び搬送時に水晶ウェハに加わる力によって、図16の(B)図のような、割れ190を生じさせる原因となる。
【0006】
この発明は上記の点に鑑みなされたものであり、従って、この出願の目的は、多数の水晶振動子をマトリクス状に形成するための水晶ウェハにおいて、外周部に凹凸が発生することを防止し、これにより、ハンドリング及び搬送時に生じる割れを軽減することができる、新規な構造を有した水晶ウェハ及び水晶振動子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的の達成を図るため、この出願の水晶ウェハの発明によれば、多数の水晶振動子をマトリクス状に形成するための水晶ウェハにおいて、水晶ウェハの外周部の一部又は全部に双晶化領域を具えたことを特徴とする。
【0008】
また、この出願の他の発明である水晶振動子の製造方法によれば、水晶ウェハにマトリクス状に多数の水晶振動子の外形を、フォトリソグラフィ技術及びフッ酸を主とするエッチング液を用いて形成する水晶振動子の製造方法において、前記水晶ウェハの少なくとも外周部の一部又は全部に双晶化領域を形成する工程と、前記双晶化領域を形成した水晶ウェハを、前記エッチング液に浸漬して前記外形を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
ここで、上記した各発明において、双晶化領域とは、第1の結晶中に他の結晶が入り込んだ領域、いわゆる貫入双晶の領域である。すなわち、水晶ウェハが右水晶を用いたものである場合は、双晶化領域は左水晶の領域であり、その逆に、水晶ウェハが左水晶を用いたものである場合は、双晶化領域は右水晶の領域である。さらに具体例で言えば、水晶ウェハがATカットの水晶ウェハの場合は、BTカット相当に近いカット領域となっている領域である。
【発明の効果】
【0009】
この発明の水晶ウェハによれば、水晶ウェハの外周部に双晶化領域を備えるため、ウェットエッチング工程の際に外周部が、水晶ウェハの主面に垂直の方向から意図しない状態にエッチングされることを防止(低減)できるので、水晶ウェハの外周部に凹凸が発生することを軽減できる。従って、水晶ウェハのハンドリング及び搬送時に生じる割れを軽減することができるため、水晶振動子製造時の破損不良の低減等、生産性を向上させることができる。また、エッチングを行いたくない箇所にメタル膜やレジスト膜を成膜する時に、固定治具の影響で前記外周部に保護できない領域が発生しても、当該外周部に前記双晶化領域を設けておけば、意図しない状態にエッチングされることを防止又は軽減することができる。そのため、水晶振動子製造時の破損不良の低減等、生産性を向上させることができると共に、固定治具による影響を考慮する必要が無く、従って、固定治具の形状の自由度を向上させることができる。
また、この発明の水晶振動子の製造方法によれば、フッ酸を主とするエッチング液を用いる工程の前に、水晶ウェハの所定部分に双晶化領域を形成し、その後、当該エッチング液による加工をするので、ウェットエッチング工程の際に外周部が意図しない状態にエッチングされることを防止できる。従って、水晶ウェハのハンドリング及び搬送時に生じる割れを軽減できるので、水晶振動子を、生産性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の水晶ウェハの平面図である。
図2】第1実施形態の水晶ウェハの一例の平面図である。
図3】第1実施形態の水晶ウェハの一例の平面図である。
図4】第1実施形態の水晶ウェハの一例の平面図である。
図5】第1実施形態の水晶ウェハの一例の平面図である。
図6】第2実施形態の水晶ウェハの平面図である。
図7】第3実施形態の水晶ウェハの平面図である。
図8】本発明の水晶振動子の製造方法の実施形態を説明する説明図である。
図9図8に続く製法例の説明図である。
図10図9に続く製法例の説明図である。
図11図10に続く製法例の説明図である。
図12図11に続く製法例の説明図である。
図13図12に続く製法例の説明図である。
図14図13に続く製法例の説明図である。
図15図14に続く製法例の説明図である。
図16図16の(A)図は、従来の水晶ウェハの平面図である。図16の(B)図は、従来のウェハに割れが生じた一例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照してこの発明の水晶ウェハおよび水晶振動子の製造方法の実施形態についてそれぞれ説明する。なお、説明に用いる各図はこれらの発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の説明で述べる形状、材質等はこの発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
1.水晶ウェハの構成
図1は、第1実施形態の水晶ウェハ10の平面図である。この実施形態の場合、水晶ウェハ10は平面形状が円形で、水晶原石からの切断(カット)の種類がATカットのものである。ただし平面形状は、円形に限られず、角型でもよく、また切断カットはATカットに限られず、Zカット又はSCカット等の2回転カット等、他のカットのものでもよい。
第1実施形態の水晶ウェハ10は、水晶振動子の形成予定領域ではない、フレーム形成予定領域20を具えている。フレーム形成予定領域20は、典型的には、外枠20aと、各水晶振動子が連結している桟20bと、で構成される領域である。この実施形態では、外枠20aを外周部と呼ぶ。
図1に示した例は、外周部20aの全域を、双晶化領域21とした例である。外周部20aを双晶化することにより、フッ酸を主とするウェットエッチングを行っても、水晶ウェハ10の外周部20aが意図しない状態にエッチングされることを防止することができ、水晶ウェハ10の外周部20aに凹凸が生じる程度を軽減できる。そのため、水晶ウェハ10のハンドリング及び搬送時に生じる割れを軽減することができる。
【0013】
水晶ウェハ10の外周部20aを双晶化する際、理想的には、図1に示すように、水晶ウェハ10の外周部全部が双晶化されていることが望ましいが、図2及び図3に示すように、外周部20aの全領域の一部が双晶化されない、非双晶化領域30が生じる場合も本発明の形態である。この場合でも、水晶ウェハのハンドリング及び搬送時に生じる割れを軽減する効果が得られる。また、外周部20aにおいて、ウェハ厚み方向の一部に非双晶化領域30が生じた場合でも、同様に前記効果を得ることができる。また、図4に示すように、水晶ウェハ10の最外周部から中心の方向に非双晶化領域30が生じてしまい、外周部の双晶化領域が途切れてしまった場合は、途切れていない場合に比べて、水晶ウェハの破損不良の可能性が高くなる可能性があるが、その場合もそれ以外の箇所に存在する双晶化領域の効果により、水晶ウェハの破損のおそれを低減できる。
【0014】
また、図5(A)に示すように、水晶ウェハ10の外周部20aの互いに離れた一部領域20aaに双晶化領域21をそれぞれ設ける場合も本発明の形態である。この形態の具体的例としては、例えば、水晶ウェハに保護膜としての金属膜を成膜する場合や、レジストを被着する場合に、水晶ウェハの一部分が金属膜成膜用の治具やレジスト被着用の治具で保持されてしまって、金属膜やレジストが形成されない領域である。この図5(A)の例の場合、水晶ウェハの保護膜で覆われないために意図しないエッチングが起きる確率が極めて高い領域のみを双晶領域とするため、外周部20a全域を双晶化する場合に比べ、双晶化処理の時間が短縮できる。然も、本発明の効果を得ることが出来る。なお、図5(A)の例では、一部領域20aaは水晶ウェハのオリエーテンションフラット付近に2つ設けた例であるが、一部領域20aaの位置や個数は、図5(a)の例に限られず、目的に応じた適正なものに変更できる。一部領域20aaの個数が1つの場合があっても勿論良い。
【0015】
なお、外周部20aの一部領域20aaを双晶化領域21とする場合においても、例えば図5(B)に示すように、水晶ウェハの縁部が非双晶化領域30となってしまう場合がある。そして、このような水晶ウェハをフッ酸系のウェットエッチング液に所定時間浸漬したものでは、縁部は非双晶化領域30であるため、双晶化領域に比べてエッチングされる。図5(C)はその様子を示した観察結果である。すなわち、図5(C)は、エッチング後の水晶ウェハの、図5(B)のA-B線に沿った断面の観察結果である。図5(C)において、横軸はA―B線に沿う走査距離(単位:mm)であり、縦軸は該当領域でのエッチングによって生じた高さの変化(単位:μm)である。図5(C)において、双晶化領域20aa(21)は、エッチング後においても高さの変化はないのに対し、水晶ウェハの縁部の非双晶化領域30はエッチングがされたことによって高さが減じていることが分かる。しかし、水晶ウェハの縁部がエッチングされても、その近接領域に双晶領域があるため、水晶ウェハの直径方向の中心側にエッチング起因の凹凸が生じる程度は、低減できる。
【0016】
すなわち、図5に示した形態では、エッチングを行いたくない箇所には、メタル膜やレジスト膜が存在し、一方、意図しない状態にエッチングされる恐れが高い箇所、例えばメタル膜やレジスト膜等の保護膜を成膜する際の治具等が原因でメタル膜やレジスト膜等の保護膜を形成できない箇所に、双晶化領域が存在するので、双晶化領域の効果により、水晶ウェハの縁から凹凸が生じることを低減できる。
【0017】
なお、図5(B)のように、水晶ウェハの縁に非双晶化領域30が生じてしまう場合であっても、それが大きすぎては本発明の効果は低下するので、水晶ウェハの縁に非双晶化領域30が生じてしまう場合は、非双晶化領域30の水晶ウェハの縁からの中心に向かう幅(奥行寸法)h1は2mm以内、好ましくは1mm以内、より好ましくは0.5mm以内が良い。そして、双晶化領域21自体の水晶ウェハの縁からの中心に向かう幅(奥行寸法)h2やそれと直交する方向の寸法W1,W2は、メタル膜やレジスト膜等の保護膜を成膜する際の治具の大きさを考慮して決めればよい。ただし、W1とW2は、互いに同じでも異なっても良い。これに限られないが、上記寸法h2、W1,W2各々は、例えば少なくとも2mmであるのが良い。水晶ウェハが、例えば、直径4インチの円形の水晶ウェハの場合、外周から中心に向かっての双晶化領域のh2は、例えば2mm以上、12.5mm以下であることが好ましい。より好ましくは、h2は、例えば3mm以上、12.5mm以下であることが良い。これは、4インチウェハの直径に対する比率で表すと、2/101.6≒0.02以上、12.5/101.6≒0.213以下であるので、2%以上、12%以下である。また、W1,W2は3mm以上、16mm以下が良く、より好ましくは4mm以上16mm以下良い。これは、上記した通り双晶化領域が狭すぎる場合、意図しない状態にエッチングされることを防止する効果が十分に得られなくなるので、水晶ウェハのハンドリング及び搬送時に生じる割れを軽減することができなくなるからである。一方、双晶化領域が広すぎる場合、水晶振動子の形成予定領域が狭くなってしまい、水晶振動子の生産性が損なわれてしまうからである。
【0018】
また、双晶化領域の範囲において、双晶化率は、これに限られないが、80%以上が好ましい。これは、図3に示すように、水晶ウェハの外周部の一部が双晶化されない非双晶化領域30が生じる場合があり、双晶化領域が少なくなってしまうと、意図しない状態にエッチングされることを防止する効果が十分に得られなくなり、水晶ウェハのハンドリング及び搬送時に生じる割れを軽減することができなくなってしまうからである。
【0019】
図6は、第2実施形態の水晶ウェハ40の平面図である。第2実施形態の水晶ウェハ40は、外周部に双晶化領域50を具え、かつ、各水晶振動子60が連結している桟の一部又は全部に双晶化領域70を具えている。前記桟の一部又は全部を双晶化することで、各水晶振動子の連結部分が意図しない状態にエッチングされることを防止し、強度を維持することができ、各水晶振動子の連結部分に割れが生じることを軽減することができる。
【0020】
図7は、第3実施形態の水晶ウェハ80の平面図である。第3実施形態の水晶ウェハ80は、外周部に双晶化領域90を具え、かつ、各水晶振動子100が桟と連結している連結部のみに双晶化領域110を具えている。前記連結部のみを双晶化する場合であっても、第2実施形態同様に、各水晶振動子の連結部分の意図しないエッチングを防止し、各水晶振動子の連結部分に割れが生じることを軽減することができる。
【0021】
2.水晶振動子の製造方法
次に、図8図15を参照して、本発明の水晶振動子の製造方法の実施形態について説明する。本発明の製造方法は、フォトリソグラフィ技術およびウェットエッチング技術を用いた製造方法であって、双晶化という特殊工程を含むものである。そのため、図9図15では、水晶ウェハの平面図と、その一部分Qを拡大した平面図を示してある。さらに、図9図15中の一部の図面では、水晶ウェハの一部分QのR-R線に沿う断面図も併用している。
【0022】
この製法方法では、先ず、図8に示すように、水晶ウェハ11を用意し、水晶ウェハ11を、例えばレーザー120で局所的に加熱し、外周部の一部又は全部を双晶化させる。なお、双晶化の手段はレーザーによる局所的加熱に限られず、スポットヒータ等の他の手段であってもよい。また、この製造方法の実施形態の場合、図1に示した水晶ウェハを意識しているため、水晶ウェハの外周部20aと桟20bとを双晶化する例を示している。
その後、耐エッチングマスクを形成するための、メタル膜(図示しない)を水晶ウェハ11に形成する。
【0023】
水晶ウェハ11に形成したメタル膜を、図9に示すように、周知のフォトリソ技術により加工して、この水晶ウェハ11の表裏両面に、水晶片12の外形を形成するための耐エッチング性マスク13を形成する。
この実施形態の場合の耐エッチング性マスク13は、水晶片12の外形に対応する部分、各水晶片を保持する桟部分及び水晶片と桟部分とを連結する部分(図9中の連結部14)で構成したものとしてある。また、耐エッチング性マスク13は、水晶ウェハ11の表裏で対向するように形成してある。
【0024】
次に、耐エッチング性マスク13の形成が済んだ水晶ウェハ11を、フッ酸を主とするエッチング液中に所定の時間浸漬する。この処理により、水晶ウェハ11の耐エッチング性マスク13で覆われていない部分が溶解されて、図10に示すように、水晶片の大まかな外形が得られる。水晶ウェハ11は外周部及び桟を双晶化しているため、水晶片の外形を形成するエッチング工程の際に、外周部及び桟が意図しない状態にエッチングされることを防止することができる。
【0025】
次に、水晶ウェハ11から耐エッチング性マスク13を除去する。この際、本発明の製造方法では、図11に示すように、耐エッチング性マスク13の水晶片12に相当する部分のみを除去し、桟や連結部に相当する部分は残している。これは、桟や連結部の強度を維持するためである。もちろん設計によっては、桟及び連結部に相当する部分の、各々の一部又は全部の耐エッチングマスクを除去しても良い。
【0026】
次に、この水晶ウェハ11を、フッ酸を主とするエッチング液中に、再度、所定の時間浸漬する。ここで、所定の時間とは、水晶片12の形成予定領域の厚みが、要求される発振周波数の仕様を満たすことができる厚さになるまでの時間である。図12(B)では、前記厚さを得た水晶片を示している。水晶ウェハ11は外周部及び桟を双晶化しているため、外周部及び桟が意図しない状態にエッチングされることを防止することができる。
なお、この実施形態では、水晶片12の形成予定領域の厚みを薄くするエッチング工程を設けているが、水晶ウェハ自体が最初から所定の発振周波数を得ることができる厚みのものとなっている場合は、この工程は不要である。
【0027】
次に、上記のエッチングが終了した水晶ウェハ11から、図13に示すように、耐エッチング性マスク13を除去して、水晶面を露出する。その後、この水晶ウェハ11全面に、周知の成膜方法により、水晶振動子の励振電極および引出電極形成用の金属膜(図示しない)を形成する。
【0028】
次に、この金属膜を、図14に示すように、周知のフォトリソグラフィ技術およびメタルエッチング技術により、電極形状にパターニングして、水晶ウェハ11に励振電極15aおよび引出電極15bを形成する。これにより、水晶片12、励振電極15aおよび引出電極15bを具える水晶振動子16を得ることができる。
【0029】
なお、一般には、水晶振動子16を好適な容器に実装した構造物を水晶振動子と称することが多い。その典型的な例を、図15を用いて以下に説明する。なお、図15は、水晶振動子16を容器140に実装する手順を、平面図およびそのS-S線に沿う断面図によって示したものである。
【0030】
図14に示した状態では、水晶振動子16は、水晶ウェハ11に連結部14を介して結合している状態である。そこで、先ず、連結部14に適当な外力を加えて、水晶振動子16を水晶ウェハ11から分離し、図15の(A)図に示すように個片化する。
一方、容器として、例えば、周知のセラミックパッケージ140(以下、パッケージ140とも言う)を用意する。この場合のパッケージ140は、図15の(B)及び(C)図に示すように、水晶振動子17を収納する凹部140aと、その凹部140aの底面に設けた、水晶振動子固定用のバンプ140bと、パッケージ140の裏面に設けた実装端子140cとを具えている。バンプ140bと実装端子140cとはビア配線(図示せず)により電気的に接続してある。
【0031】
このパッケージ140の凹部140a内に、図15の(D)図に示すように、水晶振動子17を実装する。詳細には、図15の(E)図に示すように、バンプ140b上に導電性接着剤150を塗布し、この導電性接着剤150により、バンプ140bに水晶振動子17を引出電極15bの箇所で固定する。
その後、水晶片12の発振周波数調整を周知の方法により所定値に調整し、次に、パッケージ140の凹部140a内を適度な真空又は不活性ガス雰囲気等にした後、蓋160により凹部140aを周知の方法により封止する。
このようにしてパッケージ140に水晶振動子17が収納された構造の、水晶振動子が得られる。
【0032】
なお、上記製造方法の実施形態では、水晶ウェハの外周部20aと桟20bとを双晶化する例を説明したが、図5を用いて説明したように、水晶ウェハ10の外周部20aの互いに離れた一部領域20aaに双晶化領域21をそれぞれ設ける場合も本出願の製造方法の発明の形態である。この形態の具体的例としては、例えば、水晶ウェハに保護膜としての金属膜を成膜する場合や、レジストを被着する場合に、水晶ウェハの一部分が金属膜成膜用の治具やレジスト被着用の治具で保持されてしまって、金属膜やレジストが形成されない領域である。水晶ウェハ10の外周部20aの上記治具等で覆われてしまう一部領域20aaに双晶化領域21をそれぞれ設ける場合、外周部20a全域を双晶化する場合に比べ、双晶化処理の時間が短縮できるので、製造スループットの観点で、好ましい。
【符号の説明】
【0033】
10:第1実施形態の水晶ウェハ 11:水晶ウェハ
12:水晶片 13:耐エッチングマスク
14:連結部 15a:励振電極
15b:引出電極 16:水晶振動子
20:フレーム形成予定領域 20a:外枠
20b:桟 21:双晶化領域
30:非双晶化領域 40:第2実施形態の水晶ウェハ
50:双晶化領域 60:水晶振動子
70:双晶化領域 80:第3実施形態の水晶ウェハ
90:双晶化領域 100:水晶片
110:双晶化領域 120:熱源
130:レーザー 140:セラミックパッケージ
140a:凹部 140b:バンプ
140c:実装端子 150:導電性接着剤
160:蓋 170:従来の水晶ウェハ
180:凹凸 190:割れ
図1
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