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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129281
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】電気自動車用の吸音ボード
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20230907BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20230907BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20230907BHJP
   B32B 3/12 20060101ALI20230907BHJP
   B32B 3/24 20060101ALI20230907BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G10K11/168
B60R13/08
G10K11/16 130
B32B3/12 Z
B32B3/24 Z
B32B27/40
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015448
(22)【出願日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】10-2022-0027827
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521011651
【氏名又は名称】デソル オーシス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ナムグン,ジェ クン
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ジョン ヒョン
【テーマコード(参考)】
3D023
4F100
5D061
【Fターム(参考)】
3D023BA03
3D023BB21
3D023BE04
3D023BE06
3D023BE20
4F100AB10B
4F100AB10C
4F100AG00D
4F100AG00E
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK51D
4F100AK51E
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100DC01B
4F100DC01C
4F100DC11A
4F100DG06D
4F100DG06E
4F100DG10B
4F100DG10C
4F100EH46
4F100GB32
4F100JH01
4F100YY00A
5D061AA06
5D061AA12
5D061AA16
5D061AA23
5D061AA26
5D061BB02
5D061BB03
5D061BB13
5D061BB21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気自動車で主に発生する低周波帯域である1,000Hzと5,000Hz以上の高周波帯域で吸音性能を向上させる電気自動車用の吸音ボードを提供する。
【解決手段】吸音ボードにおいて、吸音孔110を有する穿孔板100を基準として両側にそれぞれハニカム構造物200、ガラス繊維マット300、ポリウレタン400で構成し、ハニカム構造物の両側に配置されたガラス繊維マットとポリウレタンのうち、少なくとも一方に吸音孔410を、各セルに1つずつ対応して貫通するように形成することで、各ハニカム構造物を通過しながら吸音できる周波数帯域を変えるマルチレイヤー吸音特性を用いて、低周波帯域とともに高周波帯域の騒音について吸音性能を向上させる。特に、穿孔板を基準として両側に配置されたハニカム構造物に通じるように形成する吸音孔の直径を異なるように製作することによって、望む周波数の吸音帯域を容易に調節できるようにする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に複数の吸音孔(110)が形成される穿孔板(100)と、前記穿孔板(100)を基準として両側面にそれぞれ密着して配置するが、セルにおける対向する面との間の距離が5~15mmである2つのハニカム構造物(200)と、各前記ハニカム構造物(200)で外部に露出した面に設けられる面密度が150~1,000g/mであるガラス繊維マット(300)と、各前記ガラス繊維マット(300)で外部に露出した面に150~1,000g/mの面密度で塗布されるポリウレタン(400)と、を含むが、
前記穿孔板(100)を基準として両側に構成されたガラス繊維マット(300)とポリウレタン(400)のうち、少なくとも一方に構成されたガラス繊維マット(300)とポリウレタン(400)には、複数の吸音孔(410)が貫通形成されるが、前記吸音孔(410)は、前記ハニカム構造物(200)を構成する各セルに1つずつ連通して形成されることを特徴とする電気自動車用の吸音ボード。
【請求項2】
前記ハニカム構造物(200)は、
紙、アルミニウム、または合成樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車用の吸音ボード。
【請求項3】
前記穿孔板(100)に形成された吸音孔(110)と前記ポリウレタン(400)に形成された吸音孔(410)は、それぞれ直径0.2~4mmで形成されるが、
各前記吸音孔(110、410)は、その直径が同じかまたは異なって形成されることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車用の吸音ボード。
【請求項4】
前記電気自動車用の吸音ボードは、
周波数が低周波帯域である1,000Hzと高周波帯域である5,000Hzで吸音性能が得られるように形成されることを特徴とする請求項1ないし~請求項3のいずれか一項に記載の電気自動車用の吸音ボード。
【請求項5】
前記電気自動車用の吸音ボードは、
ダッシュパネル用の吸音ボード、リアシートバックパネル用の吸音ボード、ラゲージボード用の吸音ボード、またはラゲージカバー用の吸音ボードであることを特徴とする請求項4に記載の電気自動車用の吸音ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車用の吸音ボードに関するものであって、より詳細には、穿孔板を中心に両側にそれぞれハニカム構造物を配置した後、その外側にそれぞれガラス繊維マットとポリウレタンを塗布して一体に構成した後、ハニカム構造物を成すセル(Cell)と通じるように穿孔板を基準に両側に配置されたガラス繊維マットとポリウレタンのうち、少なくともいずれか一方に吸音孔を形成することによって、各ハニカム構造物を通じて互いに異なる周波数帯域を吸音できるようにして電気自動車で主に発生する低周波帯域(1,000Hz)と高周波帯域(5,000Hz以上)の周波数帯域の吸音性能を向上するようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車には、走行中にエンジンや変速機などの自動車の構成要素から発生する騒音や、自動車の下部から発生する騒音を減らして快適な走行環境を維持できるように、随所に一緒に吸音パネルが使用される。このとき、吸音パネルは、図1のようにダッシュボードDやフードHの吸音パネルのようにボード状に構成されたものをそのまま利用でき、ラゲージボードBや、ラゲージカバーリングCのように他の層とともに多層構造で製作して使用することもできる。このような吸音ボードは、特許文献1~特許文献3のように様々な方法で製造される。
【0003】
車両用の高吸音性天井パネルに関するものであって、より具体的には、ポリウレタンフォーム層と、前記ポリウレタンフォーム層の両側面に形成される補強層と、前記補強層が形成された前記ポリウレタンフォーム層の上部面に形成されるフェルト層と、前記補強層が形成されたポリウレタンフォーム層の下部面に形成されるフィルム層と、前記フィルム層の下部面に形成される不織布層と、を含む。また、ポリウレタンフォーム層と、前記ポリウレタンフォーム層の両側面に形成される補強層と、前記補強層が形成された前記ポリウレタンフォーム層の両側面に形成されるフェルト層と、を含むこともある。
【0004】
ポリウレタン発泡体を製造する方法において、数平均分子量6,500以上の高分子量ポリオール90~97重量%に数平均分子量1,000以下の低分子量ポリオール3~10重量%を混合して構成されるポリオールとジエタノールアミン、整泡剤、ウレタン触媒および気泡開環剤で構成されるレジンプレミックスとポリメリックMDI50~82重量%にモノメリックMDI15~30重量%、変性MDI2.5~10重量%およびTDI0.5~10重量%を混合反応させて得られるイソシアネート基が25~40重量%含有された変性ポリイソシアネートをイソシアネートインデックス0.5~2.0にしてウレタン反応させて自動車フロアマット吸音材用ポリウレタンフォームを製造する方法に関する。このような方法で製造されるポリウレタン発泡体は、密度を50~60kg/m低くして軽量でありながら優れた吸音性および耐久性を維持できる効果がある。
【0005】
車両用ダッシュパネルの吸音構造に関するものであって、特に、エンジンルームと車両室内を区分するダッシュパネルにワイヤが固定される車両用ダッシュパネルの吸音構造において、ワイヤには、ダッシュパネルに向かい合う方向に固定突起が突出形成され、ダッシュパネルには、固定突起が結合する固定溝が形成される構成であり、ワイヤをダッシュパネルに固定するためにプロテクターなどの別の固定装置が不要であるため、NVH性能が補強され、製品のコストが削減される特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1302220号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10-1007923号公報
【特許文献3】韓国登録特許第10-0774758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、最近は、電気自動車の普及に伴い、従来の自動車で使用されている吸音ボードを電気自動車に適用することにより、図2および図3を参照して説明すると、次のような問題が発生する。図2は、電気自動車の後席騒音を測定したグラフを示し、縦軸は、rpmであり、横軸は、周波数(Hz)をそれぞれ示す。また、図3において、横軸は、rpmであり、縦軸は、騒音(dB[A])をそれぞれ示す。
【0008】
このように電気自動車の後席で測定した騒音結果を比較してみると、図2および図3のように、24次3,000rpmと48次7,800rpmで騒音レベルが高いことがわかる。このときの騒音レベルを周波数(Hz)に換算してみると、約1,200Hzと6,200Hzの状態である。特に、6,200Hzの騒音レベルはより低いが、電気自動車では、エンジン騒音がなく、電気自動車で高周波騒音がより大きな問題となっている。さらに、ほとんどの電気自動車には、従来の自動車の吸音ボードを用いることにより、低い帯域(約1,200Hz)については、ある程度吸音効果が得られるが、高い帯域(6,200Hz以上)では、吸音効果が期待できない。
【0009】
本発明は、このような点を考慮したものであって、穿孔板を基準に両側にハニカム構造物を配置し、その両側にそれぞれガラス繊維マットとポリウレタンを塗布する。そして、穿孔板を基準として両側に配置されたガラス繊維マットとポリウレタンのうち、少なくとも一方に配置されたガラス繊維マットとポリウレタンに吸音孔を形成するが、各セルに1つずつ対応して貫通するように構成する。したがって、各ハニカム構造物を通過しながら吸音できる周波数帯域を変えるマルチレイヤー吸音特性を用いて低周波帯域とともに高周波帯域の騒音についても吸音性能を向上させ得る電気自動車用の吸音ボードを提供することにその目的がある。
【0010】
特に、本発明は、穿孔板を基準として両側に配置されたハニカム構造物に通じるように形成する吸音孔の直径を異なるように製作することによって、望む周波数の吸音帯域を容易に調節できるようにして電気自動車で主に発生する低周波帯域である1,000Hzと5,000Hz以上の高周波帯域で吸音性能を向上させ得る電気自動車用の吸音ボードを提供することに他の目的がある。
【0011】
また、本発明は、このような電気自動車用の吸音ボードをダッシュパネル用の吸音ボード、リアシートバックパネル用の吸音ボード、ラゲージボード用の吸音ボード、およびラゲージカバー用の吸音ボードなどとして使用させることによって、電気自動車で主に発生する周波数帯域の吸音性能を向上して快適な室内環境を造成できるようにした電気自動車用の吸音ボードを提供することにまた他の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するための本発明に係る電気自動車用の吸音ボードは、片面に複数の吸音孔110が形成される穿孔板100と、前記穿孔板100を基準として両側面にそれぞれ密着して配置されるが、セルにおける対向する面との間の距離が5~15mmである2つのハニカム構造物200と、前記各ハニカム構造物200で外部に露出した面に設けられる面密度が150~1,000g/mであるガラス繊維マット300と、前記各ガラス繊維マット300で外部に露出した面に150~1,000g/mの面密度で塗布されるポリウレタン400、を含み、前記穿孔板100を基準として両側に構成されたガラス繊維マット300とポリウレタン400のうち、少なくとも一方に構成されたガラス繊維マット300とポリウレタン400には、複数の吸音孔410が貫通形成され、前記吸音孔410は、前記ハニカム構造物200を構成する各セルに1つずつ連通して形成されることを特徴とする。
【0013】
特に、前記ハニカム構造物200は、紙、アルミニウム、または合成樹脂からなることを特徴とする。
【0014】
また、前記穿孔板100に形成された吸音孔110と前記ポリウレタン400に形成された吸音孔410は、それぞれ直径0.2~4mmで形成されるが、前記各吸音孔110、410は、その直径が同じかまたは異なって形成されることを特徴とする。
【0015】
そして、前記電気自動車用の吸音ボードは、周波数が低周波帯域である1,000Hzと高周波帯域である5,000Hzで吸音性能が得られるように形成されることを特徴とする。
【0016】
最後に、前記電気自動車用の吸音ボードは、ダッシュパネル用の吸音ボード、リアシートバックパネル用の吸音ボード、ラゲージボード用の吸音ボード、またはラゲージカバー用の吸音ボードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電気自動車用の吸音ボードは、次のような効果がある。
【0018】
(1)穿孔板を基準として両側面にそれぞれハニカム構造物を配置して一体に構成し、各ハニカム構造物の外側にガラス繊維マットとポリウレタンを塗布した後、ハニカム構造物の両側にあるポリウレタンとガラス繊維マットのうち、いずれか一方にあるポリウレタンとガラス繊維マットに各セルと通じるように吸音孔を貫通形成することによって、各ハニカム構造物で吸音性能を得ることができるようにして吸音ボードの吸音性能を向上し得る。
【0019】
(2)このとき、各ハニカム構造物から得られる吸音性能は、吸音孔の直径によって変わるため、2つのハニカム構造物に形成される吸音孔の直径を異なるように製作して他の周波数帯域で吸音性能を得られる。
【0020】
(3)これに、電気自動車で主に発生する1,000Hz帯域と5,000Hz以上の高周波帯域の周波数について吸音性能が得られるように製作することによって、電気自動車における吸音性能をさらに向上させ得る。
【0021】
(4)一方、このような吸音ボードは、吸音材を置き換えることができるため、電気自動車で必要なダッシュパネル用の吸音ボード、リアシートバックパネル用の吸音ボード、ラゲージボード用の吸音ボード、またはラゲージカバー用の吸音ボードとして使用でき、多様に使用しながらも吸音性能を向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】自動車において吸音ボードが使用される位置を示す自動車の側面図である。
図2】従来の吸音ボードを電気自動車に取り付けた後、電気自動車の後席でrpm変化による周波数変化を測定した結果を示すグラフである。
図3図2で騒音が強く現れた帯域についてrpm変化による騒音の水位に変換した結果を示すグラフであって、左図は、24次3,000rpmの騒音水位を、右図は、48次7,800rpmにおける騒音水位をそれぞれ示す。
図4】本発明に係る電気自動車用の吸音ボードの層構造を示す図であって、(a)は、吸音ボードの両側にそれぞれ吸音孔が形成された吸音ボードの断面図であり、(b)は、吸音ボードの両側にそれぞれ吸音孔が形成された吸音ボードの平面図であり、(c)は、吸音ボードの片側にのみ吸音孔が形成された吸音ボードの構成を示す拡大図である。
図5】本発明に係るハニカム構造物を示す平面図である。
図6】本発明の他の吸音ボードを構成する多層構造(Multi-Layer)の吸音原理を説明するための概念図である。
図7】単層構造に穿孔したとき(上)と本発明のように多層構造に穿孔したとき(下)に周波数帯域で得られる吸音性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例をより詳細に説明する。先に、本明細書および特許請求の範囲で使用される用語または単語は、通常または辞書の意味に限定して解釈されるべきではなく、発明者は、その発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に従って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念として解釈されるべきである。
【0024】
したがって、本明細書に記載された実施例および図面に示される構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点でこれらを置き換えることができる様々な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0025】
[電気自動車用の吸音ボードの構成]
本発明に係る電気自動車用の吸音ボードには、図4図7のように、穿孔板100、2つのハニカム構造物200、各ハニカム構造物200の外側に構成されるガラス繊維マット300とポリウレタン400が含まれる。
【0026】
特に、前記穿孔板100を基準として両側にそれぞれ構成されたガラス繊維マット300とポリウレタン400のうち、少なくともいずれか一方に構成されたガラス繊維マット300とポリウレタン400にハニカム構造物200を構成するセルごとに1つの吸音孔410が貫通形成されるように構成することによって、2つのハニカム構造物200でそれぞれ共鳴作用をさせ、吸音性能をさらに高めることができるようにしたものである。
【0027】
このとき、前記吸音孔410は、2つのハニカム構造物200で互いに異なる周波数帯域を吸音できるように直径が異なるように形成することによって、通常電気自動車で発生する低周波領域である1,000Hzと5,000Hz以上の高周波領域で吸音性能を向上して快適な走行環境を造成できるようにしたものである。
【0028】
また、本発明に係る電気自動車用の吸音ボードは、ダッシュパネル用の吸音ボード、リアシートバックパネル用の吸音ボード、ラゲージボード用の吸音ボード、およびラゲージカバー用の吸音ボードなどの吸音材に代わることができ、電気自動車の全体にわたって吸音性能を高めることができる。
【0029】
以下、このような構成について添付図面を参照してより詳細に説明すると、次のようである。
【0030】
1.穿孔板
穿孔板100は、図4のように、片面に吸音孔110が貫通して形成される。このとき、前記吸音孔110は、穿孔板100の両側面にそれぞれ1つずつ密着して設けられる後述するハニカム構造物200を構成する六角柱状のセル(Cell)ごとに1つずつ位置するように形成する。
【0031】
本発明の好ましい実施例において、前記吸音孔110は、このように穿孔板100とハニカム構造物200を対向させて一体に構成する場合、セルの中央に位置するように形成することが好ましい。これは、この吸音孔110を介してその両側に位置するセル内に騒音が出入りしながらセル内で吸音作用が行われることによって、吸音性能を2倍に高めることができるためである。このような前記吸音孔110は、その直径dを0.2~4mmに形成することになるが、後述する他の吸音孔410の直径と同じかまたは異なって製作することもできる。
【0032】
一方、本発明の好ましい実施例において、前記穿孔板100は、2つのハニカム構造物200の間で遮音作用とともに吸音孔110を介して吸音作用が行われ得る材料であれば、どのような材料からなるものでも使用できる。このような材料としては、例示的に紙、アルミニウム、または合成樹脂を例に挙げられる。
【0033】
このように形成された穿孔板100には、図4のように、その両側面にハニカム構造物200が一体に構成される。このとき、穿孔板100は、表面に接着剤などをラミネート処理して一体にコーティングした状態で後述する2つのハニカム構造物200の間に挿入して熱と圧力を加えて一体に成形することもある。
【0034】
2.ハニカム構造物
ハニカム構造物200は、図4および図5のように、正六角柱状に形成された中空のセル(Cell)を隙間なく繋げた形になるように通常の技術で製作されたものを使用する。このとき、前記ハニカム構造物200は、軽くて吸音ボードの重量を減らしながらも十分な構造的剛性を有するように製作することが好ましい。したがって、前記ハニカム構造物200は、互いに対向する面の間の距離Lが5~15mmであるものを使用することが最も好ましい。
【0035】
また、本発明の好ましい実施例において、前記ハニカム構造物200は、このように軽量でありながら構造的剛性を補強できる材料からなるものであれば、どのようなものでも使用でき、その材料としては、例示的に紙、アルミニウム、および合成樹脂を例に挙げられる。
【0036】
このようなハニカム構造物200は、図4のように、前述した穿孔板100を基準として両側にそれぞれ1つずつ付着し、ラミネート(Laminate)技法を用いて一体に付着して形成することが好ましい。
【0037】
3.ガラス繊維マット
ガラス繊維マット300は、図4のように、前述した各ハニカム構造物200で外部に露出した面に密着して設けられる。これらのガラス繊維マット300は、本発明に係る吸音ボードの剛性を補強するだけでなく、ガラス繊維自体の吸音性能を用いて吸音ボードの吸音性能を向上させる。
【0038】
これらのガラス繊維マット300は、それ自体の重量が重くなり過ぎず、剛性補強と吸音性能が得られるように、面密度が150~1,000g/mのものを使用することが好ましい。
【0039】
このように構成されたガラス繊維マット300は、その上に塗布する後述するポリウレタン400が染み込んでハニカム構造物200に一体に付着するようになる。そして、前記ガラス繊維マット300には、後述するポリウレタン400と重畳した状態で吸音孔410が形成されるが、この吸音孔410は、前述したハニカム構造物200を構成するセルごとに1つずつ通じるように形成される。
【0040】
4.ポリウレタン
ポリウレタン400は、図4のように、前述した各ガラス繊維マット300で外部に露出した面に塗布して形成される。このとき、前記ポリウレタン400は、ガラス繊維マット300に染み込みながらハニカム構造物200のセル縁に付着して接着機能をしながらも、このハニカム構造物200をなすセルの入口部分を仕上げて各セルが独立した空気層を形成させる。
【0041】
本発明の好ましい実施例において、前記ポリウレタン400は、150~1,000g/mの面密度で塗布することによって、ハニカム構造物200のセル入口部分を仕上げながらも、ガラス繊維マット300を堅固に付着させることができるように構成することが好ましい。
【0042】
一方、本発明の好ましい実施例において、前記ポリウレタン400には、図4および図5のように、吸音孔410が貫通形成されるように構成することが好ましい。この吸音孔410は、本発明に係る吸音ボードの外部から騒音がハニカム構造物200を構成するセル内に入り、吸音作用が行われるようにするためである。
【0043】
また、本発明の好ましい実施例において、前記吸音孔410は、前述したハニカム構造物200を構成するセルごとに1つずつ貫通形成することが好ましいが、最も好ましくは、前記吸音孔410は、セル中央に位置するように形成することが最も好ましく、このときの吸音孔410は、ポリウレタン400とともにガラス繊維マット300を一緒に貫通させて形成することが好ましい。
【0044】
そして、前記吸音孔410は、その直径dを0.2~4mmに形成することになるが、前述した吸音孔110の直径と同じかまたは異なって製作することもできる。また、各ハニカム構造物200に形成された吸音孔410は、同じ直径で形成して同じ帯域の周波数を吸収できるように構成し得るが、直径を異にして他の帯域の周波数を吸収できるように構成することによって、低周波と高周波帯域の周波数を同時に吸収できるように構成することが最も好ましい。
【0045】
最後に、前記吸音孔410は、図4(a)のように、穿孔板100を基準として両側にそれぞれ構成されたガラス繊維マット300とポリウレタン400の両方に形成されていることを例として示している。しかし、前記吸音孔410は、図4(c)のように、前記穿孔板100を基準としていずれか一方にあるガラス繊維マット300とポリウレタン400にのみ貫通して形成し得、このように形成するときは、この吸音孔410が騒音源側に位置するように吸音ボードを設けることによって、騒音がセル内で効果的に吸音作用が行われるように構成することが好ましい。
【0046】
(吸音ボードの吸音特性)
本発明に係る吸音特性について、図6および図7を参照して説明すると、次のようである。本発明に係る吸音ボードは、図4(a)のように、吸音孔110が形成された穿孔板100を基準に他の吸音孔410が形成されて空間を構成するハニカム構造物200が一体になることにより、多層(Multi Layer)構造で吸音が行われる。図6は、図4の多層構造の吸音特性を説明するための多層構造の断面図である。これを用いて多層構造の吸音特性を計算すると、次の式1~式3で表すことができる。
【0047】
ここで、パネル形に配置された多層構造で、パネルレイヤーは、下記の式1で表されるP行列で表現することができる。ここで、符号「ζ」は、固有音響インピーダンスを示す。
【0048】
【数1】
【0049】
そして、多層構造でパネル間の空洞、すなわち、ハニカムセルは、下記の式2で表現されるS行列で表示される。このとき、符号「k」は、波数(rad/m)を、「l」は、ハニカムの厚みを、「j」は、インピーダンスの虚数部を、「ρ」は、空気密度(kg/m)を、「c」は、音速をそれぞれ示す。
【0050】
【数2】
【0051】
一方、このようなP行列とS行列を用いて多層構造の総吸音率を表すT行列は、次の式3のように表現することができる。
【0052】
【数3】
【0053】
このように表現される吸音率について周波数(Hz)変化に対して穿孔された単一層からなる比較例(図7(上))と穿孔された多層からなる実施例(図7(下))の吸音率を求めたグラフは、以下の図7の通りである。図7において、横軸は周波数を、縦軸は吸音率を示す。
【0054】
その結果、比較例は、図7(上)のように単一層の構造においては、1つのピーク(低周波帯域)でのみ吸音効果があるだけでなく、吸音孔の位置を調節しても低周波帯域で若干の吸音調節が行われるだけで、高周波帯域では吸音性能が得られない。しかし、実施例は、図7(下)のように低周波帯域と高周波帯域でピークが発生したことが分かるが、吸音孔の調節によって低周波帯域と高周波帯域での吸音性能を向上し得ることがわかる。
【0055】
特に、吸音孔の位置と数、吸音孔の間の間隔などを調節することによって、図7において黒線から赤線に吸音率が変化するように、吸音性能を調節できるようになる。
【0056】
図7(下)のように、多層構造で構成されたとき、吸音孔の直径などを用いて低周波帯域と高周波帯域でそれぞれ吸音性能が得られるようになるが、本発明の好ましい実施例に係る吸音ボードは、図2および図3のように、電気自動車が走行するときに発生する周波数帯域のうち、運転者と搭乗者が主に騒音として感じることができる低周波帯域である1,000Hzと5,000Hz以上の高周波領域で吸音性能が得られるように製作して使用することが最も好ましい。
【0057】
最後に、本発明に係る電気自動車用の吸音ボードは、ダッシュパネル用の吸音ボード、リアシートバックパネル用の吸音ボード、ラゲージボード用の吸音ボード、およびラゲージカバー用の吸音ボードに適用して本発明に係る吸音ボード自体のみで使用したり、多層構造で吸音材として使用できるようにすることによって、電気自動車の全体にわたって吸音性能をさらに向上させ得る。
【符号の説明】
【0058】
100:穿孔板
110:吸音孔
200:ハニカム構造物
300:ガラス繊維マット
400:ポリウレタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7