(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129301
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】投薬器
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023163
(22)【出願日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2022031482
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石関 一則
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂巳
(72)【発明者】
【氏名】堀越 清良
(57)【要約】
【課題】 カプセルに充填された薬粉をカプセル収容室に残すことなく、規定量の薬粉を肺等に投与できるようにする。
【解決手段】 本体2の胴部3には、カプセル収容室5に収容されたカプセル9の長さ方向の他端側となる上側に位置してカプセル収容室5に外部の空気を流入させる流入孔6が設けられている。また、流入孔6は、カプセル収容室5の長さ方向に延びる中心線Oに対して偏心した位置に配置されている。さらに、マウスピース7内の吸込通路7Aは、カプセル9の長さ方向で流入孔6と反対側となるカプセル収容室5の一端側、即ち、カプセル収容室5の下端側に連通している。これにより、薬粉9Aがカプセル9の表面に付着するのを防止することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に設けられ、薬粉が充填されたカプセルを収容するカプセル収容室と、
前記本体に設けられた薬粉流出部と、
前記本体に設けられ、前記カプセル収容室に収容された前記カプセルの長さ方向の一端側に孔を開ける孔開け部材と、
を備えてなる投薬器において、
前記本体には、前記カプセル収容室に収容された前記カプセルの長さ方向の他端側に位置して前記カプセル収容室に外部の空気を流入させる流入孔が設けられ、
前記流入孔は、前記カプセル収容室の長さ方向に延びる中心線に対して偏心した位置に配置され、
前記薬粉流出部内の吸込通路は、前記カプセルの長さ方向で前記流入孔と反対側となる前記カプセル収容室の一端側に連通していることを特徴とする投薬器。
【請求項2】
請求項1に記載の投薬器であって、
前記カプセル収容室は、長さ方向の他端側から一端側に向けて縮径するテーパ形状をなしていることを特徴とする投薬器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の投薬器であって、
前記カプセル収容室には、前記カプセルに当接する位置に突起が設けられていることを特徴とする投薬器。
【請求項4】
請求項1または2に記載の投薬器であって、
前記流入孔は、前記カプセルの長さ方向に並んだ複数の貫通孔によって形成されていることを特徴とする投薬器。
【請求項5】
請求項1または2に記載の投薬器であって、
前記本体の一端側には、前記孔開け部材の針が挿通される挿通孔が前記中心線に沿って設けられ、
前記カプセル収容室の一端側には、前記挿通孔から径方向に離れた位置に前記挿通孔を取り囲んで前記カプセルに向けて突出した周壁部が設けられ、
前記挿通孔と前記周壁部との間には、薬粉滞留ポケットが設けられていることを特徴とする投薬器。
【請求項6】
請求項5に記載の投薬器であって、
前記周壁部には、前記カプセルとの間に隙間を形成する逃げ部が設けられていることを特徴とする投薬器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、粉体状の薬剤からなる薬粉を肺や気管支に投与するのに用いて好適な投薬器に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体状の薬粉を肺や気管支に投与する治療方法には、薬粉が充填されたカプセルを投薬器にセットし、このカプセル内の薬粉を空気と一緒に吸入して肺等に投与する治療方法が用いられている。
【0003】
薬粉を空気と一緒に吸入する治療方法に用いられる投薬器は、本体と、本体に設けられ、薬粉が充填されたカプセルを収容するカプセル収容室と、本体に設けられたマウスピース(薬粉流出部)と、本体に設けられ、カプセル収容室に収容されたカプセルの長さ方向の一端側に孔を開ける孔開け部材と、を備えている。
【0004】
ここで、カプセルに充填された薬粉を肺等に投与する治療方法では、孔開け部材で開けた孔からカプセル内の薬粉を効率よく流出させること、薬粉を微粒化して吸込む空気中に均一に混在させることが望まれる。
【0005】
そこで、投薬器には、カプセル収容室に収容されたカプセルの長さ方向の他端側にマウスピース(薬粉流出部)を配置し、カプセルの孔から空気と一緒に流出した薬粉を含んだ薬粉流を、カプセルの周囲で流通させることにより、カプセルを振動させる構成としたものが知られている(特許文献1)。カプセルを振動させることにより、カプセル内では、薬粉が分散され、分散された薬粉は、孔から効率よく流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0022813号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の投薬器は、カプセルの長さ方向の他端側に開けた孔からカプセルの長さ方向の一端側のマウスピース(薬粉流出部)に向け、カプセルの周囲を通じて薬粉が混在した空気(薬粉流)を流通させている。この場合、カプセルには、静電気が生じるから、この静電気によって薬粉がカプセルの表面に付着してしまう。これにより、カプセル収容室内には、投薬器への付着と合わせ、カプセルに付着した分の薬粉が残存することになるから、規定量の薬粉を肺等に投与できないという問題がある。
【0008】
本発明の一実施形態の目的は、カプセルに充填された薬粉をカプセル収容室に残すことなく、規定量の薬粉を肺等に投与できるようにした投薬器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、本体と、前記本体に設けられ、薬粉が充填されたカプセルを収容するカプセル収容室と、前記本体に設けられた薬粉流出部と、前記本体に設けられ、前記カプセル収容室に収容された前記カプセルの長さ方向の一端側に孔を開ける孔開け部材と、を備えてなる投薬器において、前記本体には、前記カプセル収容室に収容された前記カプセルの長さ方向の他端側に位置して前記カプセル収容室に外部の空気を流入させる流入孔が設けられ、前記流入孔は、前記カプセル収容室の長さ方向に延びる中心線に対して偏心した位置に配置され、前記薬粉流出部内の吸込通路は、前記カプセルの長さ方向で前記流入孔と反対側となる前記カプセル収容室の一端側に連通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、カプセルに充填された薬粉をカプセル収容室に残すことなく、規定量の薬粉を肺等に投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態による投薬器を示す斜視図である。
【
図3】カプセル収容室と流入孔との関係を
図2中の矢示III-III方向から示す投薬器の横断面図である。
【
図4】投薬時の空気等の流れとカプセルの動きの一例を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態による投薬器を示す斜視図である。
【
図6】投薬器の内部を
図5中の矢示VI-VI方向から示す縦断面図である。
【
図7】カプセル収容室と流入孔との関係を
図6中の矢示VII-VII方向から示す投薬器の横断面図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態による投薬器の横断面図である。
【
図9】本発明の第4の実施形態による投薬器を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第5の実施形態による投薬器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る投薬器を、添付図面に従って詳細に説明する。なお、本実施形態では、投薬器の構成を説明するにあたり、患者がマウスピース(薬粉流出部)をくわえた状態で、患者に近い側を前側、患者から離れた側を後側、患者に向かって左側、患者に向かって右側、上側および下側として説明する。
【0013】
図1ないし
図4は、第1の実施形態を示している。
図1、
図2において、本実施形態による投薬器1は、例えば、粉体状の薬剤からなる薬粉を肺や気管支に投与するものであり、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ウイルス性疾患等の治療に用いられる。投薬器1は、息を吸い込むことでカプセル9に充填された薬粉9Aを空気と一緒に吸入する吸入式の投薬器として構成されている。
【0014】
そして、投薬器1は、後述の本体2、カプセル収容室5、流入孔6、マウスピース7(薬粉流出部)、孔開け部材8を備えている。ここで、本実施形態では、本体2の長さ方向を上下方向(縦方向)とした上で、後述の蓋部4が上側に配置された状態が基本的な吸入姿勢となることから、蓋部4側が上側、これと反対側が下側として説明する。なお、本実施形態の投薬器1は、本体2の長さ方向を横方向(横倒し)として使用することもできる。
【0015】
本体2は、例えば、上下方向に長尺な直方体状の外観を有している。本体2は、有底筒状の胴部3と胴部3の上部を塞ぐ蓋部4とからなる。
【0016】
胴部3は、前面3A、後面3B、左面3C、右面3D、上面3Eおよび下面3Fを有する上下方向に長尺な直方体状の外観を有している。また、胴部3は、上面3Eに開口して上下方向に延びた有底穴3Gを備えている。有底穴3Gの底部中央には、上側に向けて突出して円筒状のカプセル台3Hが設けられている。カプセル台3Hの内部は、後述する孔開け部材8の針8Cが挿通される挿通孔3Jとなっている。カプセル台3Hの上面は、カプセル9を点接触にて、支持できるように平坦面となっている。
【0017】
ここで、胴部3の有底穴3Gは、横断面が円形状の丸穴として形成されている。また、有底穴3Gは、開口側となる上側の径寸法よりも底部側となる下側の径寸法が小さくなるテーパ状の内周面3Kを有している。これにより、有底穴3Gの上側寄りでは、内周面3Kとカプセル9との隙間を大きくしてカプセル9が大きく振れる(振動する)のを許すことができる。一方、有底穴3Gの下側寄りでは、内周面3Kとカプセル9との隙間を小さくしてカプセル9の振れを小さく抑えることで、カプセル9に孔開け部材8の針8Cが刺さる領域を規制できるようにしている。また、テーパ状の内周面3Kは、上側から下側に向けて有底穴3Gの空気流路の面積を小さくすることで、空気の流速(勢い)を増すことができる。全体として、有底穴3Gは、カプセル9よりも大きく形成されており、大きな他のカプセルもカプセル9より小さなカプセルも許容できる構成となっている。
【0018】
さらに、有底穴3Gの底部、即ち、内周面3Kの下部とカプセル台3Hとの間は、半円状の窪みを円環状に連ねた円環状溝底3Lとなっている。この円環状溝底3Lは、内周面3Kに沿って下向きに流れる空気を、半円形状で上向きに変換してカプセル9に衝突させることができる。
【0019】
胴部3の下側には、有底穴3Gの底部(円環状溝底3L)から前面3Aに開口して流出孔3Mが設けられている。この流出孔3Mは、カプセル9から流出した薬粉9Aを含んだ空気を後述するマウスピース7の吸込通路7Aへと流通させる。従って、流出孔3Mは、マウスピース7の吸込通路7Aの一部を構成している。
【0020】
蓋部4は、胴部3の上面3E上に設けられ、有底穴3Gの開口側を閉塞している。蓋部4は、例えば、平面視で胴部3と同等な形状をもった長方形状の板体として形成されている。蓋部4は、有底穴3Gにカプセル9を出し入れできるように、開閉可能に設けられている。開閉構造の一例としては、蓋部4は、長方形状の一辺が胴部3の上部に回動可能に取付けられ、長方形状の他辺が凹凸嵌合、掛止め構造等によって胴部3に係合されている。
【0021】
蓋部4の下面中央には、下向きに突出してカプセル押え4Aが設けられている。カプセル押え4Aは、孔開け部材8の針8Cをカプセル9に下側から刺すときに、カプセル9の上側への移動量を規制することで、カプセル9に針8Cが刺さるようにしている。
【0022】
カプセル収容室5は、本体2に設けられ、薬粉9Aが充填されたカプセル9を収容する。カプセル収容室5は、胴部3の有底穴3Gと蓋部4とからなる円柱状の空間として形成されている。カプセル収容室5は、有底穴3Gによって、長さ方向の他端側となる上側から一端側となる下側に向けて縮径するテーパ形状をなしている。換言すると、カプセル収容室5は、逆円錐台形状の空間として形成されている。カプセル収容室5は、カプセル9を収容すると共に、前述した有底穴3Gの機能(効果)を有している。
【0023】
流入孔6は、本体2の胴部3に設けられている。流入孔6は、カプセル収容室5に収容されたカプセル9の長さ方向の他端側となる胴部3の上側に配置されている。流入孔6は、カプセル収容室5に外部の空気を流入させる通路を形成している。流入孔6は、カプセル収容室5を取囲むように、1個または複数個、例えば、4個設けられている。4個の流入孔6は、上下方向に長尺な長円状の通路として形成されている。なお、流入孔は、長円状以外にも、円形状、矩形状等の他の形状の通路としてもよい。また、複数個の流入孔は、上下方向に位置をずらして配置してもよい。
【0024】
図3に示すように、4個の流入孔6は、中心線Oを中心とする周方向に90度間隔で配置されている。この上で、4個の流入孔6は、カプセル収容室5の長さ方向に延びる中心線Oに対して寸法L1だけ偏心した位置に配置されている。1個の流入孔6は、胴部3の前面3Aに開口し、1個の流入孔6は、胴部3の後面3Bに開口し、1個の流入孔6は、胴部3の左面3Cに開口し、1個の流入孔6は、胴部3の右面3Dに開口している。4個の流入孔6のうち、患者に対面する前面3Aに開口した流入孔6は、当該流入孔6を通じてカプセル9の状態、即ち、大きく振動しているか否かを目視させることができる。
【0025】
従って、後述のマウスピース7をくわえて息を吸い込んだときには、
図4中に矢示で示すように、4個の流入孔6からカプセル収容室5に流入する空気が、カプセル収容室5で旋回流ないし乱流を形成する。これにより、カプセル収容室5内のカプセル9は、
図4中に二点鎖線で示すように、旋回流等によって揺れ(振動)を生じるから、内部の薬粉9Aが振動で分散し、微粒化する。この結果、薬粉9Aは、微粒化した状態で空気に満遍なく混在するから、効率よく吸引することができる。
【0026】
マウスピース7は、本体2に設けられている。マウスピース7は、胴部3の前面3Aの下側から前方に向けて延びた円筒体として形成されている。マウスピース7は、大きく口を開くなどの行為は必要とせず、意識することなく容易にくわえることができ、かつ、通路面積を大きく形成できるように、例えば、左右方向に長尺な楕円筒状に形成されている。マウスピース7内は、吸込通路7Aとなり、この吸込通路7Aの上流側は、流出孔3Mを通じてカプセル収容室5の下部に連通している。
図4に示すように、流出孔3Mは、マウスピース7内の吸込通路7Aのうち、下側部分に連通している。これにより、重力に影響を受ける下側の隅部には、掃出し効果により吹き溜まりが形成され難くなり、薬粉9Aが吹き溜まりに滞留しないようにすることで、多くの薬粉9Aを患者に供給できる。
【0027】
ここで、マウスピース7内の吸込通路7Aは、カプセル9の長さ方向で流入孔6と反対側、即ち、カプセル収容室5の一端側となる下側に位置する流出孔3Mに連通している。従って、カプセル収容室5では、上側の流入孔6から下側の流出孔3M(吸込通路7A)に向けて空気が流れるから、カプセル9の下部に孔9Bを開けた場合、この孔9Bから流出した薬粉9Aは、カプセル9の周囲に流れることなく、流出孔3Mからマウスピース7の吸込通路7Aへと流れる。換言すると、カプセル9が静電気を帯びていたとしても、このカプセル9の外壁面に薬粉9Aが付着するのを抑制することができる。
【0028】
孔開け部材8は、本体2の胴部3に設けられている。孔開け部材8は、カプセル収容室5に収容されたカプセル9の長さ方向の一端側となる下端側に孔9Bを開ける。孔開け部材8は、胴部3の下面3Fに設けられている。孔開け部材8は、胴部3の下面3Fから下向きに延びた筒部8Aと、筒部8A内に上下方向に移動可能に設けられた押動部8Bと、基端側が押動部8Bに取付けられ、鋭利な先端側が胴部3の挿通孔3Jに挿入された針8Cと、下面3Fと押動部8Bとの間に設けられ、押動部8Bと一緒に針8Cを初期位置に戻す戻しばね8Dと、を備えている。
【0029】
そして、孔開け部材8による孔開け動作は、カプセル収容室5にカプセル9を収容した状態で、押動部8Bを上側に押動し、筒部8A内に押し込む。これにより、孔開け部材8は、針8Cをカプセル9の下部に上向きに差し込み、カプセル9の底部に孔9B(
図4参照)を開けることができる。
【0030】
カプセル9は、円筒状の胴部の両端を半球面部で閉塞することにより形成されている。このカプセル9内には、粉体状の薬剤からなる薬粉9Aが充填されている。また、
図4に示すように、カプセル9の下部には、孔開け部材8によって薬粉9Aを流出させるための孔9Bを開けることができる。
【0031】
本実施形態による投薬器1は、上述の如き構成を有するもので、次に、カプセル9に充填された薬粉9Aを吸入するときの動作について述べる。
【0032】
胴部3の有底穴3Gにカプセル9を投入し、蓋部4を閉じたら、孔開け部材8の押動部8Bを押し込んで、針8Cをカプセル収容室5内のカプセル9の下部に突き刺すことにより、カプセル9の下部に孔9Bを開ける。
【0033】
次に、カプセル収容室5のカプセル9に充填された薬粉9Aを吸入するときの動作では、マウスピース7をくわえて息を吸込むことにより、外部の空気が4個の流入孔6を通ってカプセル収容室5に流入する。このときに、4個の流入孔6は、カプセル収容室5の中心線Oに対して寸法L1だけ偏心しているから、外部から流入する空気流を内周面3Kに沿って流通させ、カプセル収容室5で旋回流ないし乱流を形成する。また、カプセル収容室5を上側から下側に向けて流れる空気流は、円環状溝底3Lによってカプセル9に下側から衝突する。これにより、カプセル収容室5内のカプセル9は、旋回流等の空気流によって浮上しつつ、激しく振動することで、内部の薬粉9Aの微粒化が促進される。そして、微粒化された薬粉9Aは、空気と一緒に孔9Bから流出し、マウスピース7の吸込通路7Aを通じて肺等に投与される。
【0034】
かくして、本実施形態によれば、本体2の胴部3には、カプセル収容室5に収容されたカプセル9の長さ方向の他端側となる上側に位置してカプセル収容室5に外部の空気を流入させる流入孔6が設けられている。また、流入孔6は、カプセル収容室5の長さ方向に延びる中心線Oに対して偏心した位置に配置されている。さらに、マウスピース7内の吸込通路7Aは、カプセル9の長さ方向で流入孔6と反対側となるカプセル収容室5の一端側、即ち、カプセル収容室5の下端側に連通している。
【0035】
従って、流入孔6からカプセル収容室5内に流入した空気は、カプセル9を振動させて薬粉9Aを微粒化させる。このときに、カプセル収容室5とカプセル9との間を下向きに流れる空気は、薬粉9Aを含んでいないから、薬粉9Aがカプセル9の表面に付着することはない。この結果、カプセル9に充填された薬粉9Aをカプセル収容室5(カプセル9の表面)に残すことなく、規定量の薬粉9Aを肺や気管支に投与でき、投薬器1に対する信頼性を向上することができる。
【0036】
また、カプセル収容室5は、長さ方向の他端側から一端側、即ち、上側から下側に向けて縮径するテーパ形状をなしている。これにより、カプセル収容室5の上側寄りでは、カプセル9との隙間を大きくしてカプセル9が大きく振れる(振動する)のを許すことができる。一方、カプセル収容室5の下側寄りでは、カプセル9との隙間を小さくしてカプセル9の振れを小さく抑えることで、カプセル9に孔開け部材8の針8Cを刺せるようにすることができる。また、テーパ状のカプセル収容室5は、上側から下側に向けて空気流路の面積を小さくすることで、空気の流速(勢い)を増すことができ、薬粉9Aを積極的に拡散、微粒化することができる。
【0037】
次に、
図5ないし
図7は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、本体の側面に孔開け部材を設け、カプセルの周面に孔を開ける構成としたことにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0038】
図5において、第2の実施形態による投薬器11は、本体2を構成する胴部3の側面、例えば、右面3Dに孔開け部材12を備えている。第2の実施形態による孔開け部材12は、胴部3に対する取付位置が異なるだけで、第1の実施形態による孔開け部材8と同様に構成されている。
【0039】
図6に示すように、孔開け部材12は、カプセル9の長さ方向の一端側となる下端側に位置してカプセル9の周面に孔9Cを開ける。
図6、
図7に示すように、孔開け部材12は、胴部3の右面3Dに設けられている。孔開け部材12は、第1の実施形態による孔開け部材8と同様に、胴部3の右面3Dから右向きに延びた筒部12Aと、筒部12A内に左右方向(横方向)に移動可能に設けられた押動部12Bと、基端側が押動部12Bに取付けられ、鋭利な先端側が胴部3の挿通孔3J′に挿入された針12Cと、右面3Dと押動部12Bとの間に設けられ、押動部12Bと一緒に針12Cを初期位置に戻す戻しばね12Dと、を備えている。
【0040】
そして、孔開け部材12による孔開け動作は、カプセル収容室5にカプセル9を収容した状態で、押動部12Bを左側に押動し、筒部12A内に押し込む。これにより、孔開け部材12は、針12Cをカプセル9の下部に横向きに差し込み、カプセル9の底部の周面に孔9Cを開けることができる。
【0041】
かくして、このように構成された第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施形態によれば、カプセル9の底部の周面に孔9Cを開けることができる。
【0042】
次に、
図8は本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、カプセル収容室には、カプセルに当接する位置に突起が設けられていることにある。なお、第3の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0043】
図8において、第3の実施形態による投薬器21は、カプセル収容室5に突起22を備えている。突起22は、カプセル収容室5で振られるカプセル9に当接することができる。突起22は、例えば、カプセル収容室5の上下方向の中間部よりも上側に配置され、内周面3Kから内向きに突出して設けられている。突起22は、半球状、円錐状、角柱状等を含む様々な形状とすることができる。また、突起22は、例えば、内周面3Kからの突出寸法がカプセル9の半径寸法以下に設定されている。
【0044】
流入孔6からカプセル収容室5に流入した空気は、円形状の有底穴3Gの内周面3Kに沿ってカプセル9を旋回させることが考えられる。カプセル9に内包される薬粉9Aの状態によっては、円滑なカプセル9の旋回だけでは、薬粉9Aを効率よく微粒化できない虞がある。
【0045】
しかし、第3の実施形態では、カプセル収容室5で旋回するカプセル9に衝突する突起22を設けている。これにより、カプセル9を振動させて薬粉9Aを拡散することができる。
【0046】
かくして、このように構成された第3の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施形態によれば、カプセル収容室5には、カプセル9に当接する位置に突起22が設けられている。これにより、カプセル9を積極的に振動させることができ、薬粉9Aを微粒化することができる。
【0047】
次に、
図9は本発明の第4の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、流入孔は、カプセルの長さ方向に並んだ複数の貫通孔によって形成されていることにある。なお、第4の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0048】
図9において、第4の実施形態による投薬器31は、流入孔32を備えている。流入孔32は、第1の実施形態による流入孔6と同様に、本体2の胴部3の上側位置に、中心線Oを中心とする周方向に90度間隔で、かつ、中心線Oに対して偏心した位置に配置されている。この上で、流入孔32は、カプセル9の長さ方向に並んだ複数の貫通孔32Aによって形成されている。さらに、胴部3の各面(前面3A、後面3B、左面3C、右面3D)にそれぞれ設けられた流入孔32を構成する複数の貫通孔32Aは、本体2の上側から下側に向けて縮径するテーパ形状をなしたカプセル収容室5に合わせ、本体2の上側から下側に向けて中心線Oに近接する位置に設けられている。特に、本実施形態においては、胴部3の各面には、それぞれ4つ以上の貫通孔32Aが設けられており、胴部3の各面に設けられた貫通孔32Aは、本体2の上側から下側に向けていくにつれて徐々に中心線Oに近接する位置に設けられている。
【0049】
かくして、このように構成された第4の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第4の実施形態によれば、複数の貫通孔32Aからカプセル収容室5内に外部の空気を効率よく流入させることができる。
【0050】
なお、
図9においては、上述の通り、胴部3の各面に上側から下側に向けていくにつれて徐々に中心線Oに近接する位置に設けているが、貫通孔32Aを設ける位置は、これに限るものではない。例えば、胴部3の各面に多数の貫通孔32Aをランダムに設けてもよく、また、個々の貫通孔32Aの径の大きさを変えてもよい。また、胴部3の各面に形成された複数の貫通孔32Aの径の大きさを胴部3の上側から下側に向けていくにつれて徐々に小さくなるようにしてもよい。また、胴部3の各面の貫通孔32Aを胴部3の各面において上側から下側に向けて螺旋状となる位置に設けるようにしてもよい。より具体的には、胴部3の前面3Aに形成された貫通孔32Aの高さ位置を、右面3Dに形成された貫通孔32Aよりも下側(或いは上側)に設け、左面3Cに形成された貫通孔32Aの高さ位置を、前面3Aに形成された貫通孔32Aよりも下側(或いは上側)に設けることにより、全体として、胴部3の各面において上側から下側に向けて螺旋状となる位置に貫通孔32Aを設けるようにしてもよい。
【0051】
このような貫通孔32Aの設けられる位置や大きさは、薬粉の性状(粒径・重量・形状・流動性など)や、投薬器1の使用者によりマウスピース7(薬粉流出部)から吸引される気体中に含まれる薬粉の量(密度)が所望の密度になるようにするために、適宜設定される。
【0052】
次に、
図10ないし
図13は本発明の第5の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、本体の一端側には、孔開け部材の針が挿通される挿通孔が中心線Oに沿って設けられ、カプセル収容室の一端側には、挿通孔から径方向に離れた位置に挿通孔を取り囲んでカプセルに向けて突出した周壁部が設けられ、挿通孔と周壁部との間には、薬粉滞留ポケットが設けられていることにある。また、本実施形態の特徴は、周壁部には、カプセルとの間に隙間を形成する逃げ部が設けられていることにある。なお、第5の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0053】
図10において、第5の実施形態による投薬器41は、手動式のポンプ50を押し潰すことによってカプセル収容室45に外部の空気を供給しつつ、カプセル9に充填された薬粉9Aを空気と一緒に噴霧するポンプ式の投薬器として構成されている。
【0054】
そして、投薬器41は、後述の本体42、カプセル収容室45、流入孔47、マウスピース/ノーズピース48(以下「薬粉流出部48」という。)、孔開け部材49、ポンプ50、周壁部51、薬粉滞留ポケット52、逃げ部53を備えている。ここで、本実施形態では、本体42の長さ方向を上下方向(縦方向)とした上で、後述の蓋部44が上側に配置された状態が基本的な投薬姿勢となることから、蓋部44側が上側、これと反対側が下側として説明する。なお、本実施形態の投薬器1は、本体42の長さ方向を横方向(横倒し)として使用することもできる。なお、符号48の部材(薬粉流出部)をマウスピース/ノーズピースと記載している理由は、薬粉9Aを口腔内に噴霧する場合は薬粉流出部がマウスピースとして機能し、薬粉9Aを鼻腔内に噴霧する場合は薬粉流出部がノーズピースとして機能するためである。
【0055】
本体42は、例えば、上下方向に長尺な直方体状の外観を有している。本体42は、有底筒状の胴部43と胴部43の上部を塞ぐ蓋部44とからなる。
【0056】
胴部43は、筒部43Aと底部43Bとからなる有底筒体として形成されている。また、胴部43の内側は、上側が開口して上下方向に延びた有底穴43Cとなっている。有底穴43Cの底部中央には、後述する孔開け部材49の針49Cが挿通される挿通孔43Dが中心線Oに沿って貫通している。また、底部43B上には、後述の周壁部51が上側に向けて突出して設けられている。
【0057】
ここで、胴部43の有底穴43Cは、横断面が円形状の丸穴として形成されている。また、有底穴43Cは、開口側となる上側の径寸法よりも底部側となる下側の径寸法が小さくなるテーパ状の内周面43Eを有している。これにより、有底穴43Cの上側寄りでは、内周面43Eとカプセル9との隙間を大きくしてカプセル9が大きく振れる(振動する)のを許すことができる。一方、有底穴43Cの下側寄りでは、内周面43Eとカプセル9との隙間を小さくしてカプセル9の振れを小さく抑えることで、カプセル9に孔開け部材49の針49Cが刺さる領域を規制できるようにしている。また、テーパ状の内周面43Eは、上側から下側に向けて有底穴43Cの空気流路の面積を小さくすることで、空気の流速(勢い)を増すことができる。全体として、有底穴43Cは、カプセル9よりも大きく形成されており、大きな他のカプセルもカプセル9より小さなカプセルも許容できる構成となっている。
【0058】
さらに、有底穴43Cの底部、即ち、内周面43Eの下部と後述の周壁部51との間は、半円状の窪みを円環状に連ねた円環状溝底43Fとなっている。この円環状溝底43Fは、内周面43Eに沿って下向きに流れる空気を、半円形状で上向きに変換してカプセル9に衝突させることができる。
【0059】
胴部43の下側には、有底穴43Cの底部側、例えば、周壁部51の上端部と同等の位置に開口して流出孔43Gが設けられている。この流出孔43Gは、カプセル9から流出した薬粉9Aを含んだ空気を後述する薬粉流出部48の吸込通路48Aへと流通させる。従って、流出孔43Gは、薬粉流出部48の吸込通路48Aの一部を構成している。
【0060】
蓋部44は、胴部43の上部に設けられ、有底穴43Cの開口側を閉塞している。蓋部44は、有底穴43Cにカプセル9を出し入れできるように、例えば、胴部43の上部に脱着可能に螺着されている。蓋部44の下面中央には、下向きに突出してカプセル押え44Aが設けられている。カプセル押え44Aは、孔開け部材49の針49Cをカプセル9に下側から刺すときに、カプセル9の上側への移動量を規制することで、カプセル9に針49Cが刺さるようにしている。
【0061】
カプセル収容室45は、本体42に設けられ、薬粉9Aが充填されたカプセル9を収容する。カプセル収容室45は、胴部43の有底穴43Cと蓋部44とからなる円柱状の空間として形成されている。カプセル収容室45は、有底穴43Cによって、長さ方向の他端側となる上側から一端側となる下側に向けて縮径するテーパ形状をなしている。換言すると、カプセル収容室45は、逆円錐台形状の空間として形成されている。カプセル収容室45は、カプセル9を収容すると共に、前述した有底穴43Cの機能(効果)を有している。
【0062】
ポンプ取付部46は、本体42の胴部43の上側に設けられている。ポンプ取付部46は、胴部43から横方向に延びる段付き円筒体として形成されている。ポンプ取付部46は、胴部43と反対側が後述のポンプ50を取付けるための取付筒部46Aとなっている。また、ポンプ取付部46内には、長さ方向に貫通して後述の流入孔47が設けられている。
【0063】
流入孔47は、本体42の胴部43に設けられている。流入孔47は、ポンプ取付部46から胴部43に亘って配置されている。流入孔47は、ポンプ50からカプセル収容室45に外部の空気を流入させる通路を形成している。
図11に示すように、流入孔47は、カプセル収容室45の長さ方向に延びる中心線Oに対して寸法L2だけ偏心した位置に配置されている。
【0064】
従って、流入孔47からカプセル収容室45に流入する空気は、カプセル収容室45で旋回流ないし乱流を形成する。これにより、カプセル収容室45内のカプセル9は、旋回流等によって揺れ(振動)を生じるから、内部の薬粉9Aが振動で分散し、微粒化する。この結果、薬粉9Aは、微粒化した状態で空気に満遍なく混在するから、効率よく吸引することができる。
【0065】
薬粉流出部48は、本体42に設けられている。薬粉流出部48は、ポンプ取付部46と周方向の反対側となるように胴部43の下側から横方向に向けて延びた円筒体として形成されている。薬粉流出部48は、例えば、円筒状に形成されている。薬粉流出部48内は、吸込通路48Aとなり、この吸込通路48Aの上流側は、流出孔43Gを通じてカプセル収容室45の下部に連通している。
【0066】
ここで、薬粉流出部48内の吸込通路48Aは、カプセル9の長さ方向で流入孔47と反対側、即ち、カプセル収容室45の一端側となる下側に位置する流出孔43Gに連通している。従って、カプセル収容室45では、上側の流入孔47から下側の流出孔43G(吸込通路48A)に向けて空気が流れるから、カプセル9の下部に孔9Bを開けた場合、この孔9Bから流出した薬粉9Aは、カプセル9の周囲に流れることなく、流出孔43Gから薬粉流出部48の吸込通路48Aへと流れる。換言すると、カプセル9が静電気を帯びていたとしても、このカプセル9の外壁面に薬粉9Aが付着するのを抑制することができる。
【0067】
孔開け部材49は、本体42の胴部43に設けられている。孔開け部材49は、カプセル収容室45に収容されたカプセル9の長さ方向の一端側となる下端側に孔9Bを開ける。孔開け部材49は、胴部43の底部43Bに設けられている。孔開け部材49は、胴部43の下面3Fから下向きに延びた筒部49Aと、筒部49A内に上下方向に移動可能に設けられた押動部49Bと、基端側が押動部49Bに取付けられ、鋭利な先端側が胴部43の挿通孔43Dに挿入された針49Cと、底部43Bと押動部49Bとの間に設けられ、押動部49Bと一緒に針49Cを初期位置に戻す戻しばね49Dと、を備えている。
【0068】
そして、孔開け部材49による孔開け動作は、カプセル収容室45にカプセル9を収容した状態で、押動部49Bを上側に押動し、筒部49A内に押し込む。これにより、孔開け部材49は、針49Cをカプセル9の下部に上向きに差し込み、カプセル9の底部に孔9Bを開けることができる。
【0069】
ポンプ50は、弾性を有するゴム材料により有底円筒状に形成され、開口部側がポンプ取付部46の取付筒部46Aに気密に取付けられている。また、ポンプ50の底部側(取付筒部46Aと反対側)には、当該ポンプ50内に外気を吸込むときに開弁する吸込弁50Aが設けられている。これにより、ポンプ50は、押し潰されることにより、流入孔47を通じて内部に貯えた空気をカプセル収容室45に供給することができる。
【0070】
図12、
図13に示すように、周壁部51は、カプセル収容室45の一端側となる下端側に設けられている。周壁部51は、胴部43の底部43B上面から上側に突出した円筒体として形成されている。詳しくは、周壁部51は、胴部43の挿通孔43Dから径方向に離れた位置に挿通孔43Dを取り囲んでカプセル9に向けて突出している。これにより、周壁部51は、第1の実施形態のカプセル台3Hと同様に、その上面でカプセル9を点接触にて支持できる。そして、周壁部51は、挿通孔43Dとの間に後述の薬粉滞留ポケット52を形成している。
【0071】
薬粉滞留ポケット52は、胴部43の挿通孔43Dと周壁部51との間に設けられている。薬粉滞留ポケット52は、カプセル9から流出した薬粉9Aを一時的に滞留させることにより、薬粉9Aに対して排出、分散に適した空気の流れを提供することができる。
【0072】
逃げ部53は、周壁部51に設けられている。逃げ部53は、周壁部51とカプセル9との間に隙間を形成する。逃げ部53は、周壁部51の全高に亘り、周壁部51を放射状に切り欠いた溝部として形成されている。逃げ部53は、カプセル収容室45内を下向きに流れる空気を薬粉滞留ポケット52に流入させると共に、薬粉滞留ポケット52に滞留した薬粉9Aを薬粉流出部48の吸込通路48Aに流通させることができる。
【0073】
かくして、このように構成された第5の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第5の実施形態によれば、本体42の胴部43の下端側(底部43B)には、孔開け部材49の針49Cが挿通される挿通孔43Dが中心線Oに沿って設けられている。また、カプセル収容室45の下端側には、挿通孔43Dから径方向に離れた位置に挿通孔43Dを取り囲んでカプセル9に向けて突出した周壁部51が設けられている。この上で、挿通孔43Dと周壁部51との間には、薬粉滞留ポケット52が設けられている。従って、薬粉滞留ポケット52は、カプセル9から流出した薬粉9Aを一時的に滞留させることができ、薬粉9Aに対して排出、分散に適した空気の流れを提供することができる。
【0074】
また、周壁部51には、カプセル9との間に隙間を形成する逃げ部53が設けられている。これにより、逃げ部53は、周壁部51上にカプセル9を支持した状態でも、空気を薬粉滞留ポケット52に流入させることができる上に、薬粉滞留ポケット52に滞留した薬粉9Aを薬粉流出部48の吸込通路48Aに向けて流通させることができる。ここで、逃げ部53は、大きさ(上下方向の寸法、幅寸法)、個数等を調整することにより、薬粉9Aの排出状態を適宜に調整することができ、カプセル9(薬粉9A)に適した排出状態を得ることができる。
【0075】
なお、第1の実施形態では、カプセル収容室5を形成する有底穴3Gを円形状に形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、
図8中に二点鎖線で示すように、有底穴3G′を多角形、例えば、8角形に形成してもよい。この場合、連続する平面にカプセル9が衝突することになるから、このときの衝撃でカプセル9内の薬粉9Aを微粒化することができる。この変形例は、第2の実施形態にも適用することができる。
【0076】
第1の実施形態では、胴部3に4個の流入孔6を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、流入孔を、1個ないし3個、5個以上設ける構成としてもよい。さらには、流入穴をカプセル収容室の縮径に合わせ、らせん状に上から順次下方向に構成してもよい。この構成は、第2の実施形態にも適用することができる。
【0077】
以上説明した実施形態に基づく投薬器として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
【0078】
投薬器の第1の態様としては、本体と、前記本体に設けられ、薬粉が充填されたカプセルを収容するカプセル収容室と、前記本体に設けられた薬粉流出部と、前記本体に設けられ、前記カプセル収容室に収容された前記カプセルの長さ方向の一端側に孔を開ける孔開け部材と、を備えてなる投薬器において、前記本体には、前記カプセル収容室に収容された前記カプセルの長さ方向の他端側に位置して前記カプセル収容室に外部の空気を流入させる流入孔が設けられ、前記流入孔は、前記カプセル収容室の長さ方向に延びる中心線に対して偏心した位置に配置され、前記薬粉流出部内の吸込通路は、前記カプセルの長さ方向で前記流入孔と反対側となる前記カプセル収容室の一端側に連通していることを特徴としている。これにより、カプセルの表面に薬粉が付着するのを防止でき、規定量の薬粉を肺や気管支に投与することができる。
【0079】
投薬器の第2の態様としては、前記第1の態様において、前記カプセル収容室は、長さ方向の一端側から他端側に向けて縮径するテーパ形状をなしていることを特徴としている。これにより、カプセル収容室の一端側では、カプセルとの隙間を大きくしてカプセルが大きく振れる(振動する)のを許すことができる。一方、カプセル収容室の他端側では、カプセルとの隙間を小さくしてカプセルの振れを小さく抑えることができる。
【0080】
投薬器の第3の態様としては、前記第1または第2の態様において、前記カプセル収容室には、前記カプセルに当接する位置に突起が設けられていることを特徴としている。これにより、カプセルを突起に衝突させることにより、カプセルを振動させて薬粉を微粒化できる。
【0081】
投薬器の第4の態様としては、前記第1または第2の態様において、前記流入孔は、前記カプセルの長さ方向に並んだ複数の貫通孔によって形成されていることを特徴としている。これにより、複数の貫通孔からカプセル収容室内に外部の空気を効率よく流入させることができる。
【0082】
投薬器の第5の態様としては、前記第1または第2の態様において、前記本体の一端側には、前記孔開け部材の針が挿通される挿通孔が前記中心線に沿って設けられ、前記カプセル収容室の一端側には、前記挿通孔から径方向に離れた位置に前記挿通孔を取り囲んで前記カプセルに向けて突出した周壁部が設けられ、前記挿通孔と前記周壁部との間には、薬粉滞留ポケットが設けられていることを特徴としている。これにより、薬粉滞留ポケットは、カプセルから流出した薬粉を一時的に滞留させることができ、薬粉に対して排出、分散に適した空気の流れを提供することができる。
【0083】
投薬器の第6の態様としては、前記第5の態様において、前記周壁部には、前記カプセルとの間に隙間を形成する逃げ部が設けられていることを特徴としている。これにより、逃げ部は、周壁部上にカプセルを支持した状態でも、空気を薬粉滞留ポケットに流入させることができる上に、薬粉滞留ポケットに滞留した薬粉を薬粉流出部に向けて流通させることができる。しかも、逃げ部は、大きさ(上下方向の寸法、幅寸法)、個数等を調整することにより、薬粉の排出状態を適宜に調整することができ、薬粉に適した排出状態を得ることができる。
【符号の説明】
【0084】
1,11,21,31,41 投薬器
2,42 本体
3,43 胴部
3J,43D 挿通孔
5,45 カプセル収容室
6,32 流入孔
7 マウスピース(薬粉流出部)
7A,48A 吸込通路
8,12,49 孔開け部材
8C,12C,49C 針
9 カプセル
9A 薬粉
9B,9C 孔
22 突起
32A 貫通孔
48 マウスピース/ノーズピース(薬粉流出部)
51 周壁部
52 薬粉滞留ポケット
53 逃げ部
O カプセル収容室の中心線
L1,L2 偏心寸法