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特開2023-129357血液凝固系の状態を決定するための包括的検査
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129357
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】血液凝固系の状態を決定するための包括的検査
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230907BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20230907BHJP
   C12Q 1/56 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
G01N33/53 L
G01N33/48 K
C12Q1/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023031529
(22)【出願日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】22159912
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510259921
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス プロダクツ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・パツケ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA10
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA36
2G045FA14
2G045FB03
2G045GC11
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ79
4B063QQ96
4B063QR16
4B063QR24
4B063QR48
4B063QR66
4B063QR84
4B063QS33
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】血液凝固系の状態を決定するための包括的検査を提供すること。
【解決手段】本発明は、血液凝固診断の分野であり、in vitroで生成したF1+2ペプチドの量に基づいて個体の血液凝固系の状態を確立するための新規の検査、およびそのような方法での使用のための検査キットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の血液凝固系の状態を確立するための方法であって、
a.個体由来の試料に凝固活性剤を添加することによって反応混合物を提供する工程、および
b.反応混合物をインキュベートする工程
を含み、
c.反応混合物中のF1+2の量の定量的な決定を行う工程、および
d.反応混合物中で測定されたF1+2の量を、健常個体の正常な血液凝固系の状態を示す参照値または参照値範囲と比較することによって血液凝固系の状態を確立する工程
をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
個体の血液凝固系の凝固促進状態は、工程c)で測定されたF1+2の量が、健常個体の正常な血液凝固系の状態を示す参照値または参照値範囲を超える場合に確立される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
個体の血液凝固系の抗凝固状態は、工程c)で測定されたF1+2の量が、健常個体の正常な血液凝固系の状態を示す参照値または参照値範囲より低い場合に確立される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
反応混合物は、工程b)のインキュベーション後に希釈され、このようにして希釈された反応混合物中で、工程c)でのF1+2の量の定量的な決定が実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程c)の反応混合物中または希釈反応混合物中のF1+2の量の定量的な決定は、F1+2特異的免疫アッセイを使用して実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
F1+2特異的免疫アッセイは、F1+2に特異性を有する第1の抗体の使用ならびに第2の、F1+2結合抗体の、またはF1+2および第1の抗体からなる免疫複合体に特異性を有する第2の抗体の使用を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第1および第2の抗体は、それぞれ粒子状の固相と会合し、F1+2の量の定量的な決定を行う工程は、
i)反応混合物を、第1および第2の抗体と会合した粒子状の固相と混合する工程、および
ii)反応混合物中の粒子状の固相の凝集を測定する工程
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
反応混合物中の粒子状の固相の凝集は、測光法で測定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1の抗体は第1の粒子状の固相と会合し、第2の抗体は第2の粒子状の固相と会合し、第1の粒子状の固相は、シグナル形成系の第1の成分と会合し、第2の粒子状の固相は、シグナル形成系の第2の成分と会合し、シグナル形成系の第1および第2の成分は、互いに相互作用し、シグナル形成系の第1および第2の成分が空間的に近接された場合に検出可能なシグナルを産生し、反応混合物中の粒子状の固相の凝集は産生されたシグナルに基づいて測定される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
シグナル形成系の第1の成分は化学発光剤であり、シグナル形成系の第2の成分は光増感剤であり、逆もまた同様であり、反応混合物中の化学発光が測定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程b)の反応混合物は、5秒~60分、好ましくは5~20分の期間インキュベートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
凝固活性剤は、血漿の凝固系の活性剤であり、好ましくは、トロンボプラスチン、IIa因子、VIIa因子、IXa因子、Xa因子、XIa因子、XIIa因子、ヘビ毒、負電荷を有するリン脂質、カルシウムイオン、組織因子、シリカ、カオリン、エラグ酸、セライト、およびポリホスフェートを含む群由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
凝固活性剤は、好ましくは、ADP、エピネフリン、コラーゲン、トロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP)、トロンボキサンA2模倣U46619、アラキドン酸、リストセチン、トロンビン、フォン・ヴィルブランド因子、コラーゲン関連ペプチド(GPVI刺激)、コンブルキシン、カルシウムイオノフォアA23187、およびフォルボール12-ミリステート13-アセテートを含む群由来の血小板活性剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
凝固活性剤は、赤血球の凝固促進効果を高める化学的または物理的因子である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
凝固活性剤は、白血球を活性化する因子である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
個体の血液凝固系の状態を確立するための検査キットであって、
A.凝固活性剤を含む試薬、および
B.F1+2の定量的な決定のための1つまたはそれ以上の試薬
を含む、検査キット。
【請求項17】
C.健常個体の正常な血液凝固系の状態を示す第1のキャリブレーター物質、および場合により、
D.個体の凝固促進性または抗凝固性の血液凝固系の状態を示す、少なくとも第2のキャリブレーター物質
も含む、請求項16に記載の検査キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固診断の分野であり、in vitroで生成したF1+2ペプチドの量に基づいて個々の血液凝固系の状態を確立するための新規の包括的検査、およびそのような方法での使用のための検査キットに関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固(止血)は、様々な活性剤、阻害剤、ならびにポジティブおよびネガティブフィードバックメカニズムの相互作用によって制御される。このフレームワークの欠陥は、血液凝固系の不均衡をもたらし、出血または血栓症のいずれかをもたらし得る。
【0003】
セリンプロテアーゼであるトロンビンは、血漿の血液凝固の中心酵素であり、その主な機能は、フィブリン重合の誘導であり、したがって血餅形成である。必要が生じると、酵素的に不活性な前駆体分子であるプロトロンビンの活性化により、トロンビンの形成が開始される。凝固プロセスを局所的に限定し、その期間を傷害が生じたときに制限するため、凝固は、特に、抗トロンビンまたはα-マクログロブリン(αM)などの阻害因子により、遊離のトロンビンを複合し、したがって不活性化することによって即座に抑制される。トロンビン形成または阻害を制御するプロセスでの障害は、凝固亢進または凝固低下状態をもたらし、したがって、凝固中の病理学的な障害をもたらし得る。トロンビンの形成および阻害の検出は、したがって、特定の個体の凝固状態についての情報の提供において大いに価値がある。
【0004】
酵素的に活性な、遊離のトロンビンの形成および阻害のための、試料において生得性(内因性)である能力(産生能)-血漿試料の場合、血漿において生得性である能力-は、内因性トロンビン産生能(ETP)とも呼ばれる。試料の個々のトロンビン産生能は、調査下にある材料に存在する全ての生体成分によって決定され、トロンビンの形成および阻害に影響することができるため、ETP決定は、止血系の複数の成分を決定するため、および処置の測定をモニタリングするために使用される包括的検査としての使用の両方に好適である。
【0005】
その決定が内因性トロンビン産生能を定量する好ましい手段である、1パラメーターは、時間/濃度積分またはトロンビン形成曲線下面積である[例えば、特許文献1、特許文献2および非特許文献1を参照]。このパラメーターは、凝固する血漿の試料中に、時間t=0から存在する内因性トロンビンの量および活性の測定である。
【0006】
ETPを決定するため、トロンビン基質の反応キネティクスは、測定可能な指標の放出により、凝固可能な血漿の試料中で測定される。トロンビン基質濃度は、基質が反応の過程で完全に使い尽くされないように設定され、放出される指標の量は、理想的には、凝固反応の過程で形成されるトロンビンの酵素活性に比例する。
【0007】
ETP決定の自動化性能を可能にする様々な市販の検査系は、トロンビン活性化および阻害の複雑なプロセス、ならびに経時的なトロンビン活性の決定が、多くの高度に特異的なカスタマイズ、例えば好適なトロンビン基質の選択、特定のキャリブレーターの準備、フィブリン阻害剤の添加、および測定した値を評価するための検査特異的アルゴリズムの使用を必要とするため、極めて複雑である(例えば、非特許文献2を参照)。ETPを決定するための公知の検査系のさらに不利な点は、実際問題、全血液中でのETPの自動的な決定を実施することが現在のところできていないことである。公知の商用の検査系は、乏血小板血漿(PPP)または多血小板血漿(PRP)でのETPの決定のためのみに好適であり、蛍光発生的な測定方法の使用が、PRPを使用する場合、前もって必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第420332-B1号
【特許文献2】欧州特許第802986-B1号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hemkerら(1993年)Thromb.Haemostasis 70:617~624頁
【非特許文献2】Kintighら(2018年)A review of commercially available thrombin generation assays. Res Pract Thromb Haemost. 2:42~48頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の根底にある目的は、したがって、個体の血液凝固カスケードの機能性または血液凝固系の状態に提供する情報がETP検査法と等しいが、検査設定の単純化、単純化した検査の評価、および特に、試料マトリックスとしてPRPおよび全血液での検査の実行も可能にする検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
個体の全血液または血漿の試料中での、in vitroで形成されるF1+2の量の定量的な決定は、個体の血液凝固系の状態の確立を確実にし、有利には、検査設定の単純化、単純化した検査の評価、および特に、試料マトリックスとしてPRPおよび全血液での検査の実行も可能にすることが見出された。
【0012】
本発明は、したがって、個体の血液凝固系の状態を確立するための方法であって、ETPを決定するための先行技術の方法のように、in vitroでの血液凝固系の活性化を生じる以下の工程:
a.個体由来の試料に凝固活性剤を添加することによって反応混合物を提供する工程、および
b.反応混合物をインキュベートする工程
を含む方法を提供する。
【0013】
本発明に記載の方法は、先行技術と比較して特徴的な構成を有し、
c.反応混合物中のF1+2の量の定量的な決定を行う工程、および
d.反応混合物中で測定されたF1+2の量を、健常個体の正常な血液凝固系の状態を示す参照値または参照値範囲と比較することによって血液凝固系の状態を確立する工程
をさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に記載の方法により、血液凝固系の様々な状態を検出することが可能である。
【0015】
個体の血液凝固系の凝固促進状態、すなわち、血栓症の傾向は、次いで、工程c)で測定されたF1+2の量が、健常個体の正常な血液凝固系の状態を示す参照値または参照値範囲を超える場合に確立される。そのような血栓症の傾向は、例えば、事前に活性化された血小板を循環することによってもたらされるか、または不十分な抗凝固治療によって引き起こされる。
【0016】
個体の血液凝固系の抗凝固状態、すなわち出血の傾向は、次いで、工程c)で測定されたF1+2の量が、健常個体の正常な血液凝固系の状態を示す参照値または参照値範囲より低い場合に確立される。そのような出血の傾向は、例えば、凝固因子または血小板の欠損よってもたらされるか、または過剰な抗凝固治療によって引き起こされる。
【0017】
ここでの例外は、ループス抗凝固因子(LA)検査である。公知のように、この検査は、LA陽性試料によって実行した検査において限定リン脂質濃度で、ループス抗凝固因子がin vivoでの血栓症の傾向を増加させるにもかかわらず、凝固の傾向の減少(すなわち、出血または抗凝固状態の傾向)のin vitroでの逆説的な検出を達成する。同様に、ループス抗凝固因子が存在する場合、本発明に記載の方法は、健常個体の正常な血液凝固系の状態と比較して、F1+2の測定された量の減少も記録した。
【0018】
工程a)の反応混合物は、個体からの試料に凝固活性剤を添加し、凝固系を活性化することによって提供される。
【0019】
語句「個体からの試料」は、特に、ヒトまたは動物個体から採取した体液、主に、乏血小板血漿または多血小板血漿または全血液を包含する。
【0020】
「凝固活性剤」は、血液凝固系の活性化をもたらす物質または物質混合物を意味すると理解される。そのような物質または物質混合物は、当業者に周知であり、例えば、リン脂質、例えば負電荷を有するリン脂質;リポタンパク質、例えばトロンボプラスチン;カルシウムイオン;タンパク質、例えば組織因子;活性化されたセリンプロテアーゼ、例えばIIa因子(トロンビン)、VIIa因子、IXa因子、Xa因子、XIa因子またはXIIa因子、ヘビ毒、例えばProtac(登録商標)酵素、エカリン、テキスタリン、ノスカリン、バトロキソビン、トロンボシチンまたはラッセルヘビ毒(RVV);接触活性剤、例えばシリカ、カオリン、エラグ酸、セライト、DNA、RNAまたはポリホスフェートを含む。
【0021】
凝固活性剤は、好ましくは、トロンボプラスチン、IIa因子、VIIa因子、IXa因子、Xa因子、XIa因子、XIIa因子、ヘビ毒、負電荷を有するリン脂質、カルシウムイオン、組織因子(同意語:因子III)、シリカ、カオリン、エラグ酸、セライト、およびポリホスフェートを含む群から選択される、血漿の凝固系の活性剤であり得る。
【0022】
凝固活性剤は、好ましくは、ADP、エピネフリン、コラーゲン、トロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP)、トロンボキサンA2模倣U46619、アラキドン酸、リストセチン、トロンビン、フォン・ヴィルブランド因子、コラーゲン関連ペプチド(GPVI刺激)、コンブルキシン、カルシウムイオノフォアA23187、およびフォルボール12-ミリステート13-アセテートを含む群から選択される、血小板活性剤でもあり得る。
【0023】
凝固活性剤は、さらに、赤血球の凝固促進性、例えばそこからのADPおよびトロンボキサンA2の放出を高め、次いで血小板活性化を生じるか(Alamin,A.A.(2021年)The role of red blood cells in hemostasis. Semin Thromb Hemost 2021;47:26~31頁)、または凝固促進効果を有する、ホスファチジルセリン表面の提示をもたらす(Litvinov,R.I.およびWeisel,J.W.(2017年)Role of red blood cells in hemostasis and thrombosis. ISBT Sci Ser. 2017年2月;12(1):176~183頁)、化学的または物理的因子であり得る。
【0024】
さらに、凝固活性剤は、好中球の細胞死(「NETosis」)を誘導し、好中球細胞外トラップの形成をもたらし、強い血栓形成促進効果(Kapoor,S.ら(2018年)The role of neutrophils in thrombosis. Thromb Res. 2018年10月;170:87~96頁)を有する、白血球、例えば炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-8)を活性化する物質であり得る。
【0025】
凝固活性剤は、血漿および細胞系で抗体を活性化する工程も含む。
【0026】
反応混合物中で混濁の発生を引き起こし、結果として光学測定と干渉し得る、血液凝固カスケードの活性化によって開始される反応混合物におけるフィブリンの形成を抑制するため、好ましい実施形態では、フィブリン重合阻害剤が反応混合物に添加される。好適なフィブリン重合阻害剤は、例えば、トロンビンの効果下で発生するフィブリンモノマーのスタッキング(重合)を阻害し、それにより血餅形成を防止するオリゴペプチドである。特に好適なオリゴペプチドは、一般的なペプチド配列GPRP-X-NHを有するものであり、Gはアミノ酸のグリシンであり、Pはアミノ酸のL-プロリンであり、Rはアミノ酸のL-アルギニンであり、Xはアラニンまたはグリシンである(例えば、欧州特許第B1-456152号を参照)。
【0027】
凝固活性剤の試料への添加によって得られる反応混合物がインキュベートされる。好ましくは、工程b)の反応混合物は、5秒~60分、好ましくは5~20分の期間インキュベートされる。インキュベーション期間は、凝固活性剤の試料への添加から、反応混合物中の凝固反応が、例えば、反応混合物中で起こる凝固反応を中断するのに十分な程度まで反応混合物の希釈をもたらす希釈剤、例えば大容積の緩衝溶液またはF1+2の決定のための液体試薬(以下を参照)の添加により基本的に中止される時点までの時間間隔を含む。あるいは、反応混合物中の凝固反応は、凝固阻害剤、好ましくは、Xa因子阻害剤(例えば、リバーロキサバン、エドキサバン、アピキサバン、ベトリキサバン、ヘパリン-抗トロンビン複合体)、Va因子阻害剤(例えば、活性化プロテインC)、およびカルシウムキレート剤(例えば、EDTA)を含む群からの凝固阻害剤の添加により停止される。
【0028】
好ましくは、反応混合物は、工程b)のインキュベーション後に希釈され、このようにして希釈された反応混合物中で、工程c)でのF1+2の量の定量的な決定が実行される。
【0029】
反応混合物は、好ましくは1:10~1:400に希釈され、非常に好ましくは希釈比が1:40~1:200である。
【0030】
反応混合物の実質的な希釈または凝固阻害剤の添加は、さらなるF1+2ペプチドの形成を大きく停止させる。F1+2形成のわずかな継続は、次いで、反応混合物の希釈からか、または凝固阻害剤の添加から、F1+2決定の開始までの時間が、全体的に長すぎるかまたは1つの反応(試料、対照、キャリブレーター)から次までの長さが変わる場合、誤差が生じ得る。好ましくは、反応混合物の希釈またはF1+2形成の中断とF1+2の量の決定の間の時間は、測定ごとに等しい長さであり、2分より短い(個々の決定間の相対的差異は最大10%)。
【0031】
反応混合物の実質的な希釈中でのF1+2の決定によって生じるさらなる利点は、任意の光干渉因子、例えば、全血液中の血液細胞によって引き起こされる混濁が除去されることである。
【0032】
好ましくは、工程c)の反応混合物中または希釈反応混合物中のF1+2の量の定量的な決定は、F1+2特異的免疫アッセイを使用して実行される。
【0033】
反応混合物中または希釈反応混合物中のF1+2の量の定量的な決定は、様々な方法で達成される。先行技術は、プロトロンビン断片F1+2の定量的な決定のための多くの免疫アッセイを記載する。プロトロンビン断片F1+2は、プロトロンビンの切断産物であり、トロンビンの酵素前駆体でもある。プロトロンビンタンパク質は、構造のモジュラーであり、N末端F1+2成分およびC末端トロンビン成分からなる。Xa因子のタンパク質分解活性は、プロトロンビンの切断をもたらし、プロトロンビン(70kD)の各分子が、プロトロンビン断片F1+2(35~37kD)の放出を伴い、トロンビン(30kD)の分子を生じる。トロンビンによるプロトロンビンの自己触媒切断は、さらに、断片F1(23kD)およびF2(14kD)の切断をもたらし得る。トロンビンは、血液中に遊離形態で、in vivoに存在しないが、阻害剤およびその形成直後のフィブリンに結合されるため、in vivoでのトロンビン形成の程度は、例えば、活性化マーカーF1+2を決定することにより、間接的に検出される。in vivoでのトロンビン形成の上昇を検出するためかまたは除外するための1つのオプションは、したがって、血漿中でのF1+2濃度の決定である。in vivoで生成されたプロトロンビン断片F1+2の定量的な決定のための、先行技術に記載された免疫アッセイは、同様に、凝固活性剤の添加によって産生された反応混合物の、すなわち、in vitroで形成されたF1+2の量の本発明に記載の決定に好適である。
【0034】
本発明に記載の方法の一実施形態では、F1+2特異的免疫アッセイは、F1+2に特異性を有する第1の抗体の使用および第2の、F1+2結合抗体の使用を含む。
【0035】
プロトロンビン断片F1+2の定量的な決定のための免疫アッセイは、典型的には、非切断プロトロンビンには結合しない、少なくとも1つのF1+2特異的抗体を含む。プロトロンビンに結合しないそのような特異的抗F1+2抗体の産生および使用は、例えば、欧州特許出願公開第303983-A2号(Pelzerら)、米国特許第5830681号(Hurstingら)または米国特許出願公開第2003/0219845 A1号(Ruizら)に記載される。抗F1+2抗体の特異性のため、抗体が、F2/F1+2断片の少なくとも4つのカルボキシ末端アミノ酸(Ile-Glu-Gly-Arg-OH)を含むエピトープに結合することが重要である。通常、それはF2/F1+2濃度の決定のために使用されるサンドイッチ免疫アッセイであるため、2つの抗F2/F1+2抗体が必要である。欧州特許出願公開第1541676-A1号(Teigelkampら)は、F2断片のN末端側半分上のエピトープ、したがって無傷のプロトロンビンに結合するが、サンドイッチ免疫アッセイでの、F2/F1+2-ネオエピトープ-特異的一次抗体と組み合わせた、二次抗体としての使用に特に好適である抗体を記載する。
【0036】
公知の抗体は、異種免疫アッセイでの、好ましくはサンドイッチELISA法の形態でのF1+2濃度の決定に好適である。このため、F1+2-ネオエピトープ-特異的抗体(「一次抗体」)は、固体相に連結され、試料と、または本発明に記載の、反応混合物とインキュベートされ、結果、F1+2ペプチドは、固定化した抗体に結合することができる。洗浄工程は、抗体溶液の添加による、第2の、F1+2-およびプロトロンビン結合抗体(「二次抗体」)の適用の前に、未結合のタンパク質、特にプロトロンビンを除去する。この二次抗体は、通常、F1+2の量の定量を可能にする、シグナル形成成分と会合する。
【0037】
本発明に記載の方法の別の実施形態では、F1+2特異的免疫アッセイは、F1+2に特異性を有する第1の抗体の使用およびF1+2と第1の抗体からなる免疫複合体に特異性を有する第2の抗体の使用を含む。
【0038】
この種のF1+2特異的免疫アッセイは、欧州特許出願公開第2168985-A1(Althausら)に記載される。これは、抗体に結合されるプロトロンビン断片F1+2またはプロトロンビン断片F1+2のカルボキシ末端ネオエピトープに特異性を有する抗体断片を含む免疫複合体に特異的に結合する抗体を記載するが、ここで抗体は、プロトロンビン断片F1+2またはF2単独には結合せず、プロトロンビン断片F2/F1+2単独のカルボキシ末端ネオエピトープに特異性を有する抗体または抗体断片に結合しない。このアッセイフォーマットは、洗浄または分離工程なしで、直接、同種サンドイッチ免疫アッセイの性能を可能にするのに十分に高い特異性を確実にする。
【0039】
本発明に記載の方法の好ましい実施形態では、F1+2特異的免疫アッセイは、F1+2に特異性を有する第1の抗体の使用および第2のF1+2結合抗体の使用を含み、第1および第2の抗体は、それぞれ粒子状の固相と会合し、F1+2の量の定量的な決定は、
i)反応混合物を、第1および第2の抗体と会合する粒子状の固相と混合する工程、および
ii)反応混合物中の粒子状の固相の凝集を測定する工程
を含む。
【0040】
用語「粒子状の固相」は、本発明の目的のため、少なくとも20nm、および20μm以下、通常200nmと350nmの間、好ましくは250と320nmの間、特に好ましくは270と290nmの間、非常に特に好ましくは280nmのおよその直径を有する非細胞性の粒子を意味すると理解される。微粒子は、形が規則正しいかまたは不規則であり得る。それらは、球体、スフェロイド、または様々なサイズの腔または孔を有する球体であり得る。微粒子は、有機材料、無機材料、または両方の混合物または組合せからなり得る。それらは、多孔性または非多孔性、膨潤性または非膨潤性材料からなり得る。原則的に、微粒子は任意の密度を有するが、水に近い密度、例えば約0.7~約1.5g/mLを有する粒子が好まれる。好ましい微粒子は、水溶液中に懸濁され、可能な限りの間、懸濁液中で安定である。それらは、半透明、部分的に半透明、または不透明であり得る。微粒子は、複数の層、例えば、1つまたはそれ以上の外層によって包まれたコアを有する、いわゆるコアシェル粒子などからなり得る。用語、微粒子は、例えば、色素結晶、金属ゾル、シリカ粒子、ガラス粒子、および磁気粒子を包含する。好ましい微粒子は、水溶液に懸濁可能であり、水不溶性ポリマー材料、特に置換されたポリエチレンから構成される粒子である。非常に特に好ましいのは、ラテックス粒子であり、例えば、ポリスチレン、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、アクリロニトリルポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリビニルアセテート-アクリレート、ポリビニルピロリドンまたは塩化ビニルアクリレートから構成される。特に着目されるのは、それらの表面上に、F1+2結合抗体のラテックス粒子への共有結合を可能にする反応基、例えばカルボキシル、アミノまたはアルデヒド基を有するラテックス粒子である。
【0041】
F1+2ペプチドが反応混合物中に存在する場合、これらはF1+2結合抗体に結合し、それにより粒子状の固相の凝集をもたらす。
【0042】
反応混合物中の粒子状の固相の凝集は、測光法で、例えば、濁度測定または比濁分析によって測定される。粒子増強光散乱の原理に基づく結合検査は、約1920年から公知である(検討のため、Newman,D.J.ら、Particle enhanced light scattering immunoassay. Ann Clin Biochem 1992年;29:22~42頁を参照)。この文脈では、0.1~0.5μmの直径を有するポリスチレン粒子が好ましく、より好ましくは0.15~0.35μmの直径を有する。アミン、カルボキシルまたはアルデヒド機能を有するポリスチレン粒子を使用することが好ましい。コアシェル粒子を使用することも好ましい。粒子の合成およびリガンドの共有結合は、例えば、Peula,J.M.ら、Covalent coupling of antibodies to aldehyde groups on polymer carriers. Journal of Materials Science:Materials in Medicine 1995年;6:779~785頁に記載される。
【0043】
あるいは、反応混合物中の粒子状の固相の凝集は、シグナル形成系の第1および第2の成分が空間的に近接される場合、シグナル形成系によって生成されたシグナルを測定することによって測定される。この文脈では、第1の抗体は第1の粒子状の固相と会合し、第2の抗体は第2の粒子状の固相と会合し、第1の粒子状の固相は、シグナル形成系の第1の成分と会合し、第2の粒子状の固相は、シグナル形成系の第2の成分と会合し、シグナル形成系の第1および第2の成分は、互いに相互作用し、シグナル形成系の第1および第2の成分が空間的に近接された場合に検出可能なシグナルを産生し、反応混合物中の粒子状の固相の凝集は産生されたシグナルに基づいて測定される。
【0044】
本発明に記載の方法のこの実施形態では、シグナル形成系は、少なくとも第1および第2の成分を含み、それらが空間的に近接され、それにより互いに相互作用できる場合、検出可能なシグナルが産生されるように、相互作用する。成分間の相互作用は、特に、エネルギー移行、すなわち、例えば、光もしくは電子の照射によるかまたは短寿命の一重項酸素などの反応性化学分子による、成分間のエネルギーの直接移行を意味すると理解される。エネルギー移行は、1つの成分からその他へであり得るが、それを介してエネルギー移行が進行する、異なる物質のカスケードも可能である。例えば、成分は、エネルギードナーとエネルギーアクセプターを含む対、例えば光増感剤と化学発光剤(欧州特許出願公開第A2-0515194号、LOCI(登録商標)技術)または光増感剤とフルオロフォア(国際公開第95/06877号)または放射性ヨード-125とフルオロフォア(Udenfriendら(1985年)Proc.Natl.Acad.Sci. 82: 8672~8676頁)またはフルオロフォアとフルオレセンスクエンチャー(米国特許第3996345)であり得る。特に好ましくは、シグナル形成系の第1の成分は化学発光剤であり、シグナル形成系の第2の成分は光増感剤であり、逆もまた同様であり、測定されるのは反応混合物中の化学発光である。
【0045】
さらなる実施形態では、その原理は、略語HISCLで公知であり、F1+2に特異性を有する第1の抗体がまず試料と接触し、F1+2への急速な結合が起こるのを可能にする。第1の抗体への結合は、磁気粒子の表面上に存在する結合パートナー(例えば、ストレプトアビジン)に結合する因子(例えば、ビオチン)である。これらの磁気粒子は、第2の工程で添加される。抗体F1+2複合体の粒子への結合が起こった後、粒子は磁力によってキュベットの表面に結合され、残りの反応混合物は洗浄工程によって除去される。この後、第2の、F1+2結合(および、場合によりプロトロンビン結合)抗体は、磁気粒子に接触される。あるいは、この時点で、抗F1+2抗体およびF1+2から得られた免疫複合体に対する、欧州特許出願公開第2168985-A1号(Althausら)からの抗体を使用することも可能である。当業者に公知のさらなる洗浄プロセスおよび化学発光法の後、検査実行のF1+2の量が決定される。
【0046】
超高感受性のHISCL法のさらなる実施形態は、免疫複合体移行法である。この方法の第1の工程は、F1+2抗原-抗体複合体に結合した磁気粒子および検出酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、ALP)を含有するそれに結合した抗体からの複合体の形成である。洗浄プロセス後、化学発光検出は直接実施されず;代わりに、磁気粒子と抗F1+2抗体の間の結合が分解される。分解された複合体は、別のキュベットに移され、第1のキュベットに磁気ビーズが残る。第2のキュベットに存在するのは、複合体に結合するさらなる磁気粒子である。当業者に公知のさらなる洗浄プロセスおよび化学発光法の後、検査実行でのF1+2の量が決定される。
【0047】
本発明に記載の方法の工程c)におけるF1+2の量の定量的な決定の結果は、例えば、それぞれの決定方法(例えば、キロカウント[kcnt])の測定したシグナルの生の値の形態で表される。あるいは、結果は、濃度として表すこともでき、この場合、測定したシグナルの生の値は、公知のF1+2濃度を有するF1+2キャリブレーターを用いて、F1+2濃度(例えば、pmol/L)へと変換される。正常または凝固促進性または抗凝固性の特性を有するキャリブレーターの使用は、測定したシグナルの生の値または生成された濃度のいずれかを標準の%へと変換すること可能にする。
【0048】
血液凝固系の状態は、反応混合物中で測定されたF1+2の量を、健常個体の正常な血液凝固系の状態を表す参照値または参照値範囲と比較することにより(工程d)、最終的に本発明に従って確立される。
【0049】
好適な参照値は、正常な血液凝固系の状態を有することが公知の個体からの試料または複数の個体からプールした試料の試料を含む、反応混合物中で同じ方法によって測定された(または事前に測定された)F1+2の量である。正常な血液凝固系の状態を有することが公知の健常ドナーからの多くの試料における参照値または参照値範囲の決定のため、反応混合物中のF1+2の量が通常測定され、次いで、公知の凝固促進性の血液凝固系の状態を有するドナーからおよび/または公知の抗凝固性の血液凝固系の状態を有するドナーからの多くの試料中のF1+2の量と比較した。参照値は、したがって、例えば、凝固促進性の血液凝固系の状態を有する個体から正常な血液凝固系の状態を有する個体の区別、または抗凝固性の血液凝固系の状態を有する個体から正常な血液凝固系の状態を有する個体の区別を可能にする限界値であり得る。反応混合物中のF1+2の測定量が、所定の参照値を超える場合、これは、個体の血液凝固系の凝固促進性状態を検出することを可能にし;反応混合物中のF1+2の測定量が、所定の参照値よりも低い場合、これは個体の血液凝固系の抗凝固性状態を検出することを可能にする。記載した参照値は、個体の正常な血液凝固系の状態に相当する、反応混合物中のF1+2の測定量の範囲を示す参照値範囲の上限または下限であり得る。
【0050】
本発明に記載の方法の特定の実施形態では、第2の検査実行の試料は、試料を凝固活性剤と接触することなく、すなわち試料中でのトロンビン形成、したがってF1+2の形成の誘導なく、試料中のF1+2の量をさらに決定される。このため、試料は、凝固活性剤の代わりに緩衝液と混合され、次いでインキュベートされ、本発明に記載の検査実行と同じ方法で希釈される。決定されたF1+2の量は、凝固を活性化しない試料中にすでに存在するF1+2の量に相当する。第1の検査実行からの検査結果(凝固活性剤あり)と第2の検査実行からの検査結果(凝固活性剤なし)の間の違いを算出することは、凝固活性剤の添加なしで試料中に高レベルのF1+2がすでに存在する可能性が、in vitroでのF1+2生成能の上昇として誤認されることを防ぐ。
【0051】
本発明は、個体の血液凝固系の状態を確立するための検査キットであって、少なくとも以下の成分:
A.凝固活性剤を含む試薬、および
B.F1+2の定量的な決定のための1つまたはそれ以上の試薬
を含む検査キットも提供する。
【0052】
凝固活性剤を含む試薬は、血液凝固系の活性化をもたらす上記の他の物質の1つ、または物質の混合物を含む。凝固活性剤を含む試薬は、個体の体液試料を含有する反応混合物を提供する目的のために提供される。
【0053】
F1+2の定量的な決定のための1つまたはそれ以上の試薬は、F1+2結合抗体(上記のように)およびシグナル形成系の成分(上記と同様に)を含む。F1+2の定量的な決定のための1つまたはそれ以上の試薬は、個体の体液試料および凝固活性剤を含む試薬から得られた反応混合物中のin vitroで生成されたF1+2の量の定量的な決定のために提供される。
【0054】
本発明に記載の検査キットの試薬は、液体または凍結乾燥形態で提供される。検査キットの一部または全ての試薬は、凍結乾燥物の形態で存在し、検査キットは、凍結乾燥物の再構成のために必要な溶媒、例えば蒸留水または適切な緩衝液をさらに含み得る。
【0055】
本発明に記載の方法のための好適な対照またはキャリブレーターは、規定したプロトロンビン濃度を有する血漿または全血液の試料である。この種の対照/キャリブレーター物質の産生は、例えば欧州特許出願公開第1544621-A1号に記載される。
【0056】
一実施形態では、本発明に記載の検査キットは、
C.健常個体の正常な血液凝固系の状態を示す第1のキャリブレーター物質、および場合により、
D.個体の凝固促進性または抗凝固性の血液凝固系の状態を示す、少なくとも第2のキャリブレーター物質
をさらに含む。
【0057】
健常個体の正常な血液凝固系の状態を示すキャリブレーター物質は、例えば、複数の健常ドナー(「正常血漿」)からの血漿プールからなり得る。
【0058】
個体の凝固促進性の血液凝固系の状態を示すキャリブレーター物質は、例えば、規定した量の1つまたはそれ以上の凝固因子(例えば、プロトロンビン、V因子、X因子)が添加された複数の健常ドナーまたはプロトロンビン変異G20210Aを有する複数のドナーからの血漿プールからなり得る。
【0059】
個体の抗凝固性の血液凝固系の状態を示すキャリブレーター物質は、例えば、緩衝液によって希釈された複数の健常ドナーからの血漿プール、またはプロトロンビン欠損血漿、または様々な欠損血漿の混合物からなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、F1+2[kcnt]の測定量と様々な試料タイプ(全血液、多血小板血漿(PRP)、乏血小板血漿(PPP))の希釈(未希釈、1:2および1:4)の間の直線関係が明らかにされる図表である。
図2図2は、in vitroで生成されたF1+2の量を決定するための本発明の検査のための較正曲線を示す図表である。
図3図3は、本発明によって決定されたF1+2生成(標準の%)が、様々な試料中でETP(パラメーター=Cmax;標準の%)と比較される図表である。
図4図4は、本発明によって決定されたF1+2生成(標準の%)が、様々な試料中でETP(パラメーター=AUC;標準の%)と比較される図表である。
図5図5は、本発明によって決定されたF1+2生成と異なる凝固因子(II、VII、IX、およびX因子)が欠損した血漿試料の内因性トロンビン産生能(ETP)が比較される4つの図表である。
図6図6は、様々なインキュベーション時間で本発明によって決定されたF1+2生成能と抗FXa検査によって決定されたリバーロキサバンの量が、異なるリバーロキサバン濃度を有する血漿試料において比較される図表である。
図7図7は、本発明によって決定されたF1+2生成能と抗IIa検査によって決定されたダビガトランの量が、異なるダビガトラン濃度を有する血漿試料において比較される図表である。
図8図8は、異なるインキュベーション時間で、120ng/mLのダビガトランを含有する血漿試料において本発明よって決定されたF1+2生成能を示す図表である。
図9図9は、全ての凝固因子の添加後にちょうど5分間のインキュベーション時間を用いる本発明によって決定されたF1+2生成(標準の%)が、様々な試料においてETP(パラメーター=Cmax;標準の%、左の図表;パラメーター=AUC;標準の%、右の図表)と比較される2つの図表である。
図10図10は、3人の血液ドナーからの全血液(WB)、PRP、およびPPPのコラーゲンによって予備活性化された試料において、本発明によって決定されたF1+2生成(kcnt)を示す図表である。
図11図11は、異なる血小板数を有する、コラーゲンによって予備活性化された血漿試料において、本発明によって決定されたF1+2生成(kcnt)を示す図表である。
図12図12は、ループス抗凝固因子凝固検査が本発明のループス抗凝固因子F1+2生成検査と比較される図表である。「オリジナル」検査実行では、試料は、そのまま使用され、「混合物」検査実行では、試料は、正常な血漿により1:1に希釈される。
図13図13は、プロスタグランジンE1(PGE1)による血小板の阻害あり/なし、およびコラーゲンによる血小板のその後の活性化あり/なしで、全血液(WB)、PRP、およびPPPにおいて本発明によって決定されたF1+2生成を示す図表である。
【実施例0061】
血漿試料および全血液試料においてin vitroで生成されたF1+2ペプチドの量の決定
全血液または血漿(PRPもしくはPPP)の試料を、以下のようにInnovance ETPアッセイ(Siemens Healthcare Diagnostics Products GmbH,Germany)の成分と混合した:
87μL ETP緩衝液
+40μL ETP試薬
265秒インキュベーション
+108μL 試料
440秒インキュベーション
+15μL Innovin試薬(脂質付加した組織因子;Siemens Healthcare Diagnostics Products GmbH,Germany)
+10μL ETP CaCl溶液
37℃で20分間インキュベーション
オーレンベロナール緩衝液(OVB緩衝液)の添加による反応混合物の1:100希釈。
【0062】
5μLの希釈反応混合物を
・F1+2のネオエピトープに特異性を有する、第1の、ビオチン化モノクローナル抗体を含む第1の試薬(「試薬BA」);および、次いで
・化学発光化合物(Chemibeads)と会合したラテックス粒子に結合される、第1の抗体およびそれに結合したF1+2ペプチドからなる免疫複合体に特異性を有する第2のモノクローナル抗体を含む第2の試薬(「Chemibeads試薬」);および
・光増感剤(Sensibeads)と会合したストレプトアビジンコートラテックス粒子を含む第3の試薬(「Sensibeads」試薬)
と混合した。
【0063】
6分間の反応実行のさらなるインキュベーション後、任意単位のキロカウント(kcnt)の化学発光シグナルを測定した。
【0064】
本明細書で使用されるLOCI(登録商標)技術は、解析物(ここでは:F1+2ペプチド)に結合することにより空間的に近接する結果、光増感剤によって生成された一重項酸素が化学発光化合物を励起することができる、ラテックス粒子(Chemibeads,CB)に連結した化学発光化合物およびラテックス粒子(Sensibeads,SB)に連結した光増感剤に基づく。生成された化学発光の量は、解析物の量と相関した。
【0065】
これは、3人の明らかに健康な正常ドナーからの試料を調べるために使用した。各試料は、二重反復測定し、全ての結果は平均された(表1)。結果は、Innovance ETP試薬からの組織因子、脂質、およびCaClの存在下、ならびに血小板活性剤の添加なしで、PRPおよびPPPにおけるF1+2生成能はほぼ等しく高いことを示した。36~53%のヘマトクリット値(男性および女性の正常範囲)は、F1+2の測定のために利用可能な全血液中の実際の血漿の容積が、47~64%のみであることを意味するため、全血液中で決定された1242kcntの値が、血漿中で決定された2111kcntの値と並んで設定された場合に非常に真実味がある。同時に、これは、高希釈が、PRPにおける高血小板数によって、および全血液中の高い全細胞数によって引き起こされる混濁が、F1+2決定に実質的に干渉しないことを確実にすることを実証した。
【0066】
【表1】
【0067】
利用可能な凝固因子によるin vitroで生成されたF1+2の量の依存性を調べるため、試料は、OVB緩衝液によって1:2および1:4に前希釈した(表2)。
【0068】
【表2】
【0069】
3つ全ての試料タイプでは、試料中の含量(すなわち、凝固因子の含量)とin vitroで生成したF1+2の量の間に直線関係が見出された。これは、検査結果の希釈直線性を確認し、試料として全血液およびPRPの場合では、したがって、単に細胞の存在による(例えば、「内部フィルター効果」)、および試料の混濁による、干渉能の不在も確認した(図1)。
【実施例0070】
トロンビン生成アッセイ(内因性トロンビン産生能)との本発明のF1+2生成アッセイの比較
in vitroで生成されたF1+2の量を決定するための本発明の方法の実施のため、血漿試料を、以下のようにInnovance ETPアッセイ(Siemens Healthcare Diagnostics Products GmbH,Germany)の成分と混合した:
108μL 試料
+82μL ETP緩衝液
+35μL ETP試薬
37℃で150秒インキュベーション
+15μL Innovin試薬(脂質付加した組織因子)
+10μL ETP CaCl溶液
37℃で20分間インキュベーション
OVB緩衝液の添加による反応混合物の1:100希釈。
【0071】
実施例1のように、反応混合物中で形成されたF1+2の量を決定するために5μLの希釈反応混合物を使用した。
【0072】
規定したプロトロンビン含量(標準の%)を有する血漿キャリブレーター物質を使用する本発明のF1+2生成アッセイのキャリブレーション(Innovance ETP standard、Siemens Healthcare Diagnostics Products GmbH,Germany)をさらに実行した。キャリブレーション曲線の決定のため(図2)、標準をOVB緩衝液によって希釈した。196%での最高キャリブレーション点は測定しなかったが、外挿した。
【0073】
内因性トロンビン産生能(ETP)との比較のため、血漿試料を、Innovance ETPアッセイ(Siemens Healthcare Diagnostics Products GmbH,Germany)によってさらに測定した。ETPを決定するためのこの公知の方法では、凝固活性剤(Innovinおよびカルシウムイオン)、発色性のトロンビン基質、およびフィブリン阻害剤を試料に添加し、トロンビン基質の反応キネティクスは、約20分間にわたり測光法で決定した。ETPは、測定した反応キネティクスのCmax(反応の最大速度)およびAUC(曲線下面積)に基づいて決定した。キャリブレーション曲線は、標準の%の所与の単位の結果により、Innovance ETP標準(Siemens Healthcare Diagnostics Products GmbH,Germany)を使用して作成した。ETP検査は、BCS XP解析系で自動処理される(Siemens Healthcare Diagnostics Products GmbH,Germany)。
【0074】
F1+2生成と内因性トロンビン産生能を比較する目的のため、血漿試料は、多くの希釈工程で、正常な血漿プール(複数の健常ドナーからの血漿の混合物)を欠損血漿プール(複数の凝固因子の重度の欠損がAlOH吸収によって産生される、複数の健常ドナーからの血漿の混合物)によって希釈することによって産生した。図3および4は、ETP検査およびF1+2生成検査において、凝固因子の枯渇が、正常値の%の減少の類似の方法で証明されたことを示した。
【0075】
これは、F1+2生成検査、その測定原理および評価は、内因性トロンビン産生能の測定原理および評価よりもかなり単純であり、類似の方法で凝固因子の喪失に応答し、したがって類似の方法でトロンビン生成検査に抗凝固刺激を検出したことを示した。
【実施例0076】
F1+2生成能の測定および内因性トロンビン産生能(ETP)の測定による単一因子欠損の比較決定
個々の凝固因子によるF1+2生成能の依存性を決定するため、単一因子欠損試料を産生した。これは、様々な希釈工程で、正常な血漿プールを様々な因子欠損血漿(II、VII、IX、およびX因子が欠損した血漿)によって希釈することにより行った。これらの試料は、Innovance ETPトロンビン生成検査により、および本発明のF1+2生成検査により、実施例2のように測定した。
【0077】
測定値は、一般に、トロンビン生成検査およびF1+2生成検査の両方で、類似の方法で因子濃度の関数として減少を示した(図5)。II因子活性の依存性は、両場合において、非常に強く、ほぼ直線であった。VII因子の欠損は、弱い効果のみを示し、標準の20%以下のみ注目に値する。IX因子の欠損は、いずれの効果も全く示さなかった。X因子の欠損は、標準の1%以下のみの効果を示し、トロンビン生成およびF1+2生成の両方ともが純粋な欠損血漿では完全に妨げられる。
【0078】
したがって、F1+2生成検査は、トロンビン生成検査でそうであった通りに因子欠損の効果を記録した。
【実施例0079】
Xa因子阻害剤の抗凝固性の強さを決定することによる、抗凝固性の血液凝固系の状態の確立
凝固活性剤として作用するTF/脂質試薬は、以下のように調製した:Innovin試薬(実施例1参照)を、オーレンベロナール緩衝液によって1:98.6に希釈した。1493.3μLのこの希釈液に、6.7μLのリン脂質懸濁液(68% 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、32% 1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン、合わせて11.4g/L)を添加した。
【0080】
この改変した凝固活性剤を使用して、実施例2に記載したように、F1+2生成検査を実施した。
【0081】
抗凝固処置した試料は、Innovance抗Xaリバーロキサバンアッセイ(Siemens Healthcare Diagnostics Products GmbH,Germany)のキャリブレーション曲線の作成と同じ手順によって産生した。標準0(=リバーロキサバンなしの正常血漿プール)および標準1(410ng/mLのリバーロキサバンを含有する正常血漿プール)を、様々な比で混合した。
【0082】
試料は、Innovance抗Xaリバーロキサバンアッセイ、リバーロキサバンの濃度を決定するための発色性抗FXa検査、および本発明のF1+2生成検査を使用して測定した。
【0083】
CaClの添加後、15分間のインキュベーション時間によるF1+2生成検査では、シグナル(kcnt)のリバーロキサバン濃度への依存性は、特定の抗Xaリバーロキサバン検査(mAシグナル)で観察されたものと非常に類似していた(図6)。したがって、F1+2生成検査は、同様に抗凝固剤の定量のために使用された。有利には、検査は、インキュベーション時間を短くすることによって高い感受性、またはインキュベーション時間を延長することによって広範な測定範囲を非常に容易に達成することができた。(CaClの添加後)3分間のインキュベーション時間により、検査は、0~10ng/mLのリバーロキサバン濃度の増加に非常に感度良く応答した。(CaClの添加後)30分間のインキュベーション時間により、測定範囲は400ng/mLを超えて広げられた。インキュベーション時間へのそのような変更は、最初の測定結果が測定範囲より低いかまたは高い場合に、繰り返しの測定の形態で、解析系により自動的に行われた。
【実施例0084】
IIa因子阻害剤の抗凝固性の強さを決定することによる、抗凝固性の血液凝固系の状態の確立
凝固活性剤として作用するTF/脂質試薬は、実施例4に記載のように調製し、F1+2生成検査は、実施例2に記載のようにそれとともに実施した。
【0085】
抗凝固処置した試料は、InnovanceDTIアッセイ(Siemens Healthcare Diagnostics Products GmbH,Germany)のキャリブレーション曲線の作成と同じ手順によって産生した。標準0(=ダビガトランなしの正常血漿プール)および標準1(548ng/mLのダビガトランを含有する正常血漿プール)を、様々な比で混合した。
【0086】
試料は、InnovanceDTIアッセイ、ダビガトランの濃度を決定するための発色性抗FIIa検査を使用して測定した。
【0087】
CaClの添加後、5分間のインキュベーション時間によるF1+2生成検査では、シグナル(kcnt)のダビガトラン濃度への依存性は、特定の抗IIaダビガトラン検査(mA/分シグナル)で観察されたものと非常に類似していた(図7)。したがって、F1+2生成検査は、同様に抗凝固剤の定量のために使用された。有利には、検査は、インキュベーション時間を短くすることによって高い感受性、または(CaClの添加後)インキュベーション時間を延長することによって広範な測定範囲を非常に容易に達成することができた。図8は、インキュベーション時間の増加から生じる120ng/mLのダビガトラン濃度で、F1+2生成検査におけるシグナルの高さの増加を示した。インキュベーション時間へのそのような変更は、最初の測定結果が測定範囲より低いかまたは高い場合に、繰り返しの測定の形態で、解析系により自動的に行われた。
【実施例0088】
F1+2生成検査でのインキュベーション時間の短縮
in vitroで生成したF1+2の量およびETPの比較決定は、実施例2に記載のように実行し、ただし、F1+2生成検査では、CaClの添加後のインキュベーションは、20分のインキュベーションの代わりに5分のみであった。試料のキャリブレーションおよび産生および測定(標準の%、凝固因子欠損が増加した試料)は、実施例2に記載のように実行した。
【0089】
5分間のインキュベーションによるF1+2生成検査の結果の古典的なETP検査との相関は、直線のままである(図9を参照)。直線の傾き(1より著しく大きい)は、特定の標準化の必要性を指摘する。測定値の減少は、凝固因子の減少と同じ直線関係を示すため、インキュベーション時間の減少が可能である。これは、F1+2生成検査にかかる全体的な時間を15分から7.5分に短くし、先行技術のETP検査と比較してかなりの利点を示した。
【実施例0090】
F1+2生成能の測定による血小板活性化の増加を決定することによる、凝固促進性の血液凝固系の状態の確立
血液細胞における、機能不全トロンビン機能性またはF1+2生成機能性から生じる凝固亢進または凝固低下状態の検出は、そのような血液細胞が試料中に存在する場合にのみ可能である。血小板機能性の機能不全を検出するため、試料としてPRPまたは全血液を使用することが必要である。他の血液細胞の機能不全を検出するため、試料として全血液を使用することが必要である。
【0091】
試料(全血液、PRPまたは血漿)の凝固亢進状態は、コラーゲンにより血小板を予備活性化することによって達成した。これは、900μLの試料を、100μLのコラーゲン溶液(20μg/mL)と、または対照のため100μLのOVB緩衝液と混合し、混合物を水浴中、37℃で20分間インキュベートすることによって達成した。
【0092】
血液細胞の影響を感度良く検出することができるように、組織因子および脂質を含むInnovin試薬は、OVB緩衝液によって1:780に希釈した。
【0093】
予備活性化した試料は、以下のように、Innovance ETPアッセイ(Siemens Healthcare Diagnostics Products GmbH,Germany)の成分と混合した:
108μL 試料
+40μL ETP緩衝液
+35μL ETP試薬
150秒インキュベーション
+10μL Innovin試薬(OVBによって1:780に前希釈した)
+14μL ETP CaCl
37℃で30分間インキュベーション
OVB緩衝液による反応混合物の1:100希釈。
【0094】
実施例1のように、反応混合物中で形成されたF1+2の量を決定するために5μLの希釈反応混合物を使用した。
【0095】
3人の見たところ健康な血液ドナーを調べた。試料としてPRPまたは全血液を使用する場合、血小板の予備活性化は、予備活性化していない血小板(コラーゲンの代わりにOVB緩衝液を添加)と比較してF1+2生成の実質的な増加により、全血液およびPRPで実証できた(図10参照)。全血液またはPRPのF1+2生成能の測定は、したがって、細胞起源の凝固亢進、したがって、凝固促進系の血液凝固系の状態を実証するために使用できた。
【0096】
血液ドナー2は、特に高いF1+2生成能を有し異常であり、血小板のコラーゲン活性化をせず、試料として血漿中でさえもすでに明らかである。これは、このドナーにおける凝固促進性の血液凝固系の状態のin vivoでの存在を示す。
【実施例0097】
血小板数の減少の抗凝固作用を決定することによる、抗凝固性の血液凝固系の状態の確立
3人の明らかに健康な血液ドナーからのPRPおよびPPP試料を調製し、血小板数を決定した。
【0098】
F1+2生成能は、試料としてPRPで、実施例7に記載のようにコラーゲンの添加による予備活性化ありおよびなしで測定し、ここでコラーゲン溶液は、80μg/mLの濃度を有した。3人の血液ドナーからの試料の結果は平均された。血小板数が<100000μLより少ないと、血小板が予備活性化されない場合に、F1+2生成能は減少した。血小板が予備活性化される場合、血小板数が<50000/μLより少ないと、F1+2生成能は減少した(図11参照)。
【0099】
したがって、F1+2生成能の測定は、血小板減少によって引き起こされる抗凝固性の血液凝固系の状態を示す。F1+2生成の結果は、in vivoの状況を反映し、血小板減少は、血小板が特定の活性を示す場合、効果が低下した。
【実施例0100】
ループス抗凝固因子の凝固促進効果を決定することによる、凝固促進性の血液凝固系の状態の確立
ループス抗凝固因子(LA)の決定のために最も一般的に使用される検査は、DRVVT検査(希釈ラッセルヘビ毒検査)である。この検査では、凝固は、凝固活性剤としてRVVを使用して誘発される。まず第1に、凝固活性剤試薬が非常に低いリン脂質含量のみを有する検査を実行した(LA1検査)。ループス抗凝固因子が存在する場合、LA1検査での凝固時間が延長された。次いで、高いリン脂質濃度を有する凝固活性剤試薬を使用する第2の検査(LA2)を実施した。LA2検査は、次いで、ループス抗凝固剤が存在する場合、ほぼ正常な凝固時間も示した。2つの検査のLA2/LA1比は、正常試料が測定される場合、1に近く、ループル抗凝固因子が存在する場合、1より低くなった。
【0101】
ループス抗凝固因子検査は、標準的な方法であるが、凝固時間の測定の代わりに、反応混合物中で形成されるF1+2の量が決定される違いにより実行された(実施例1を参照)。
【0102】
LA1検査の実行:
100μL 試料
37℃で240秒インキュベーション
+100μL LA1試薬
37℃で80秒インキュベーション
OVB緩衝液による反応混合物の1:50希釈。
【0103】
LA2検査の実行:
100μL 試料
37℃で240秒インキュベーション
+100μL LA2試薬
37℃で80秒インキュベーション
OVB緩衝液による反応混合物の1:50希釈。
【0104】
各場合では、形成されたF1+2の量を決定するために5μLの希釈反応混合物を使用した(実施例1を参照)。
【0105】
ループス抗凝固因子なしの正常血漿試料(CPN)、高LA濃度の試料(高LA対照)、および低LA濃度の試料(低LA対照)を検査し、正常血漿による高および低LA対照の1:1希釈も同様に検査した。
【0106】
図12は、凝固検査におけるLA2/LA1比を、F1+2生成検査におけるLA1/LA2比と比較した。正常血漿の全ての比は、1に近かった。低ループス抗凝固因子含量を有する試料(低LA対照)は、F1+2生成検査においてLA1/LA2比(0.21)を有し、凝固検査でのLA2/LA1比(0.80)よりもかなり低かった。したがって、F1+2生成検査は、凝固検査よりも、弱い病理上のループス抗凝固因子含量にかなり感度良く応答した。
【0107】
ループス抗凝固因子検査では、因子の欠損が病理上の値の原因として除外される場合、試料は、正常血漿によって希釈された。正常血漿(CPN)との1:1混合物では、比は、低LA対照の場合の凝固検査では0.86まで落ちるが、F1+2生成検査では、比は0.50までさらに落ちる。正常血漿との1:1混合物でさえも、これは弱く存在するループス抗凝固因子は、F1+2生成での測定によって、かなり容易に検出されることを意味する。
【実施例0108】
血小板阻害剤の抗凝固性の強さを決定することによる、抗凝固性の血液凝固系の状態の確立
血栓症のリスクが増加した患者では、血小板の阻害が、予防療法として示される。そのような阻害は、血小板凝集を阻害することが公知の物質であるプラスタグランジンE1によって、本実施例において達成される。
【0109】
3人の正常および健常な血液ドナーからの全血液を、5%(v/v)のプラスタグランジンE1溶液(試料中の終濃度20μmol/L)によって処置し、20分間室温でインキュベートした。次いで、コラーゲンによる活性化、および実施例7に記載のように試料をさらに処置および検査した。
【0110】
図13は、PGE1予備処置ありおよびなし、ならびにその後のコラーゲン活性化ありおよびなしでの試料のF1+2生成能を示す。血小板阻害剤PGE1の抗凝固作用は、コラーゲンによる血小板の活性化なしおよびありの両方で、F1+2生成の減少の形態で見られた。本発明の検査は、血小板阻害剤による処置のモニタリングのために使用される。
【実施例0111】
VIII因子活性の高感度決定
公知のVIII因子活性を有する3つの試料は、公知のVIII因子活性(対照血漿N)を有する正常血漿プールを、オーレンベロナール緩衝液と混合することによって調製した。これらの試料は、以下のように試薬と混合した。全ての試薬は、Siemens Healthcare Diagnostics Products GmbH,Germanyから購入した。
2μL試料
+18μL緩衝液
10秒インキュベーション
+15μL VIII因子欠損血漿(VIII因子 <1%)
120秒インキュベーション
+30μL アクチンFS試薬(凝固活性剤)
180秒インキュベーション
+40μL CaCl溶液
120秒 インキュベーション
+15μL H
【0112】
実施例1のように、反応混合物中で形成されたF1+2の量を決定するために5μLの希釈反応混合物を使用した。
【0113】
6分間の反応実行のさらなるインキュベーション後、任意単位のキロカウント(kcnt)の化学発光シグナルを測定した。
【0114】
結果:
試料1 0% VIII因子=1876kcnt
試料2 0.5% VIII因子=2469kcnt
試料3 1.0% VIII因子=2779kcnt
試料4 1.5% VIII因子=2901kcnt
【0115】
F1+2生成検査は、0%と1.5%のVIII因子活性の間の範囲のシグナルに大きな変化を示す高感度のVIII因子活性検査を可能にした。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【外国語明細書】