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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129364
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】持続可能に製造された多層チューブ
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/08 20060101AFI20230907BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
F16L11/08 B
B32B1/08
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031615
(22)【出願日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】22159654
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518073158
【氏名又は名称】テーイー オートモーティブ(フルダブリュック) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハッケル アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ファーレンホルツ フランク
(72)【発明者】
【氏名】シュラモウスキ マルティン
(72)【発明者】
【氏名】アルノルト ジークフリート
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111AA04
3H111BA15
3H111CB06
3H111CB07
3H111CB14
3H111CB24
3H111CB29
3H111CC01
3H111DA26
3H111DB08
3H111DB09
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK46A
4F100AK46B
4F100AL09A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100DA11
4F100GB31
4F100JB16A
4F100JL16A
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】持続可能に製造された多層チューブを提供する。
【解決手段】
第1のプラスチックリサイクル材は、陸上車両、特に道路車両のチューブ(1)に使用される。チューブ(1)は、第1の層(2)及び第2の層(3)を備える。第1の層(2)及び第2の層(3)は、互いに当接している。第1の層(2)は、第1のプラスチックリサイクル材を有する。第2の層(3)は、第1のバージンプラスチックを備える。第1のプラスチックリサイクル材及び第1のバージンプラスチックは、同じプラスチック類、例えば、ポリアミド又はポリオレフィンのプラスチック類に属する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上車両、特に道路車両のチューブ(1)のための第1のプラスチックリサイクル材の使用であって、
前記チューブ(1)は、第1の層(2)及び第2の層(3)を有し、
前記第1の層(2)及び前記第2の層(3)は、互いに当接し、
前記第1の層(2)は、第1のプラスチックリサイクル材を含み、
前記第2の層(3)は、第1のバージンプラスチックからなり、
前記第1のプラスチックリサイクル材及び前記第1のバージンプラスチックは、同じプラスチック類、例えば、ポリアミド又はポリオレフィンのプラスチック類に属する、ことを特徴とする使用。
【請求項2】
前記第1のプラスチックリサイクル材及び前記第1のバージンプラスチックは、同じプラスチックグレードに属する、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記第1の層(2)及び前記第2の層(3)を合わせた全層厚に対する前記第1の層(2)の層厚の割合は、最大で90%、80%又は75%である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記第2の層(3)は、最大で0.5mm、0.4mm又は0.35mmの層厚を有する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記第1の層(2)の層厚は、前記チューブ(1)の全壁厚に対して少なくとも10%、15%又は20%である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記第1のプラスチックリサイクル材又は前記第1の層(2)のモル質量分布は、前記第1のバージンプラスチック及び/又は前記第2の層(3)のモル質量分布よりも広い、ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記第1の層(2)における前記第1のプラスチックリサイクル材の重量パーセントは、少なくとも70%、90%又は95%である、ことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記第2の層(3)における前記第1のバージンプラスチックの重量パーセントは、少なくとも70%、90%又は95%である、ことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記第1の層(2)は、前記第2の層(3)より暗い色を有し、
前記第1の層(2)は、好ましくは、付随するカラーテーブルのより暗い側の半分、特により暗い側の3分の1において所定の色調、特に灰色の色調を有する、ことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記第1のプラスチックリサイクル材は工業用プラスチックの残渣を含む、ことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記第1のプラスチックリサイクル材及び前記第1のバージンプラスチックは、熱可塑性エラストマー系、ポリアミド系、ポリオレフィン系に属する、ことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記チューブ(1)は、付加的な層(4)を有し、
前記付加的な層(4)は、第2のバージンプラスチックを含み、
前記第2のバージンプラスチックは、前記第1のプラスチックリサイクル材と同じプラスチック類に属する、ことを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
前記チューブ(1)は、さらなる層(5)を有し、
前記さらなる層(5)は、第2のプラスチックリサイクル材を含む、ことを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
前記チューブ(1)は、第2のバージン層(6)を含み、
第2のバージン層(6)は、付加的なバージンプラスチックを含む、ことを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
前記道路車両は、好ましくは、電気自動車であり、
好ましくは、前記チューブ(1)は、冷却チューブ手段、特に前記電気自動車の電池用の冷却チューブ手段である、ことを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上車両、特に道路車両用の持続可能に製造された多層チューブの使用に関し、チューブが第1の層及び第2の層を有し、第1の層及び第2の層が互いに当接していることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
プラスチックリサイクル材が使用される燃料タンクは、独国特許出願公開第102016226064号明細書により既に公知である。燃料タンクの壁部は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及びエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などの様々な熱可塑性プラスチックの複数の層を有する。タンクの壁部の内側から外側に続く層の順序は、例えば、HDPE、LDPE、EVOH、LDPE、リサイクル材、HDPEである。プラスチック廃棄物は、多層燃料タンク製造のために押出ブロー成形を使用する際に蓄積され、以下、その全体をスラグと称する。したがって、スラグは、HDPE、LDPE、EVOHのプラスチックの対応する割合の混合物である。ここでは、HDPEが重量比の約2/3、LDPEが約1/3を占め、EVOHは、タンクの壁部の層厚が小さいため、1桁台又はこれ以下の重量比を占めている。
【0003】
独国特許出願公開第102016226064号明細書によれば、スラグは粒状に粉砕され、タンクの壁部における別個の層としてプラスチックリサイクル材を使用することにより、プラスチックリサイクル材として工程に戻される。生産に伴うプラスチック廃棄物が相対的に多いため、リサイクル材の層は燃料タンクの重量比の半分以上を占める。リサイクル材を使用することで、製造工程の持続可能性が大幅に向上する。
【0004】
リサイクル材を伴う公知のプラスチックタンクの欠点は、タンクの層の条件をチューブに使用することができないことである。特に、自動車の空間条件を考えると、多くの場所でチューブをより強く曲げなければならないため、一般的にチューブの壁部はタンクの壁部よりもかなり薄い。そのため、チューブの各層は最小の厚さで最大の効果を発揮しなければならないため、より精密にチューブの層を同調させる必要がある。また、条件の互換性に欠ける他の理由としては、タンクの製造方法がチューブとは全く異なることである。チューブは、1つ1つではなく形成されるタンクとは異なり、押出ブロー成形によって連続的に押し出される。
【0005】
国際公開第2017/220657号パンフレットにより公知となったチューブは、内側のバージンHDPE層と、外側のバージンHDPE層と、HDPEリサイクル材の中間層と、を備える。この場合、HDPEリサイクル材は産業廃棄物からではなく、より清浄度が低い消費者廃棄物から採取される。チューブは、5mmの壁厚及び110mmの直径を有し、従って、陸上車両のものよりも何倍も大きい。例えば、国際公開第2017/220657号パンフレットにより公知であるチューブは、廃水の輸送に適しており、それため適度な要件が課される。
【0006】
しかし、陸上車両のチューブは、下水道チューブに比べ、多くの点で厳しい条件が課されている。陸上車両のチューブは非常にコンパクトに設計されており、陸上車両の狭い空間を何度も屈曲して通る必要がある。また、陸上車両のチューブは、非常に高い圧力及び/又は温度の影響や悪環境に同時に耐えなければならないものが多い。陸上車両のチューブの多くは、活動的な流体に応じて特別に調整されたバリア層の補助により非常に低い透過性をもたらす。
【0007】
自動車供給産業における既知のコストのプレッシャーを伴うこれらの技術的な要件により、極めてよく差別化され細部まで考え抜かれたチューブ構造がもたらされ、チューブ壁部の5層、6層又は7層といった多数の層に反映されている。国際公開第2017/220657号パンフレットにより公知となったチューブは、寸法の点だけでなく、特に使用材料(専ら標準プラスチックHDPE)の点でも不適切であるため、陸上車両に使用され得ない。前述の要件を満たすことができるようにするためには、チューブ層の少なくともいくつかが、技術的なプラスチック又は高性能のプラスチックを有している必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、陸上車両に使用するためのチューブであって、より持続可能な製造工程によって製造され、多数の技術的要件を同時に満たすチューブを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的は、陸上車両、特に道路車両のチューブに第1のプラスチックリサイクル材を使用することによって達成される。チューブは第1の層及び第2の層を備え、第1の層と第2の層は互いに当接する。第1の層は第1のプラスチックリサイクル材を含み、第2の層は第1のバージンプラスチックを含む。第1のプラスチックリサイクル材及び第1のバージンプラスチックは、同じプラスチックの種類、例えば、ポリアミドのプラスチック類又はポリオレフィンのプラスチック類に属する。
【0010】
本発明は、第1のプラスチックリサイクル材が、汚染又は再利用にもかかわらず、同じプラスチック類の第1のバージンプラスチックと極めて類似した接着挙動を示すという知見に基づいている。このため、リサイクル材を使用しないチューブの基本的な層の配列をリサイクル材の層によって強化することができ、これにより、調整の必要性が減少する。この結果、部分的に置換されるバージン層(virgin layer)はより薄く設計され、リサイクル層により強化される。リサイクル材の層又はプラスチックリサイクル材を伴う第1の層は、第2の層の第1のバージンプラスチックに非常によく接着し、第3の層が反対側に設けられている場合には、第3の層にもよく接着する。
【0011】
さらに、対応するバージンプラスチックと比較して、リサイクル材は、機械的特性及び/又はバリア特性に関する仕様を部分的に満たすか、あるいは全く満たさないことがあり、バージンプラスチックを完全に置き換えることはできないことが分かった。このため、本発明は、特に、層の意図した各々の機能が完全に実現し、かつ壁厚を過度に増加させないため、第1のバージンプラスチックが引き続き必要であるという知見に基づいている。それにもかかわらず、バージンプラスチックのかなりの部分が経済的なものとなる。このため、本発明によるチューブは、より持続可能に製造され、同時に品質におけるいかなる損失を被ることがない。その結果、本発明による目的が達成される。
【0012】
「リサイクル材」という用語は、好ましくは、プラスチック材料が(エンド)ユーザに提供される形態となる製造工程を既に経たプラスチックを指す。この場合、例えば、押出成形品、射出成形品又は半製品、もしくは製造工程中に不良品となった材料が含まれる。冒頭で述べた先行技術である独国特許出願公開第102016226064号明細書では、バージンプラスチックから製品が製造され、プラスチック廃棄物が蓄積されるように生産が設計されている。バージンプラスチックから製造された製品は、市場や消費者に供給され、消費サイクルを回すが、プラスチック廃棄物はこれと異なる。プラスチック廃棄物は、蓄積された後、実質的にすぐに上記の製造工程や他の製造工程に供給される。一般的に、製造工程を経たプラスチック廃棄物は、完全な消費者サイクルを経たプラスチック材料よりもはるかに純度が高い。「リサイクル材」という用語は、好ましくは、工業製造からのプラスチック廃棄物又は工業リサイクル材(産業リサイクル材)のみを指す。しかし、「リサイクル材」という用語は、エンドユーザからのリサイクル材(消費者リサイクル材)、例えば、「イエローバッグ」リサイクルシステムの純物質から得られるものも含む。
【0013】
物理的な観点から、プラスチックは、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック、エラストマーに分けられる。さらに、両者の特性を併せ持つプラスチックグループを定義することも可能である。その一例として熱可塑性エラストマーのプラスチックグループがある。さらに、プラスチックグループは、非結晶性又は(少なくとも)部分結晶性プラスチックを含むサブグループに分けられる。特に、熱可塑性プラスチックのグループは、ポリアミド(PA)、ポリオレフィン(PO)又はビニルアルコール(VA)を含むポリマーのプラスチック類を含む。ポリアミドのプラスチック類は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド(アラミド)及び部分芳香族ポリアミドのプラスチック類を含む。例えば、ポリオレフィンのプラスチック類は、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)のプラスチックグレードを含む。例えば、ビニルアルコールを含むポリマーのプラスチック類は、ポリビニルアルコール(PVOH)のプラスチックグレード及びエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)のプラスチックグレードを含む。
【0014】
例えば、脂肪族ポリアミドのプラスチックグレードは、プラスチックタイプのPA6又はPA11を含む。例えば、プラスチックグレードの部分芳香族ポリアミド(ポリフタルアミド)は、プラスチックタイプのPA9Tを含む。例えば、プラスチックグレードのポリプロピレンは、プラスチックタイプのアイソタクチックポリプロピレンを含む。例えば、プラスチックタイプのHDPEは、プラスチックグレードのポリエチレンに属する。加水分解度の違いにより区別される各種のプラスチックタイプは、プラスチックグレードのPVOHに属する。プラスチックグレードのEVOHは、モル%単位のエチレン割合に応じて様々なプラスチックタイプを含む。
【0015】
特に、熱可塑性エラストマーのグループは、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)のプラスチック類を含む。動的架橋型熱可塑性エラストマーのプラスチックグレードは、EPDM/PPマトリックスであり、サントプレーン(Santoprene)という商品名で知られている。PPマトリックス/EPDMのプラスチックグレードは、複数のプラスチックタイプを含み、これらのプラスチックタイプは、EPDM及びPPの特定の重量組成によってそれぞれ特徴づけられる。中でも、エラストマーのプラスチックグループは、エチレン―プロピレン共重合体(E/P)のプラスチック類を含む。例えば、E/Pゴムのプラスチック類は、エチレン―プロピレン―ジエンゴム(EPDM)のプラスチック類を含む。EPDMのプラスチック類は、エチレン及びジエンの各々の特定の重量比により特徴づけられる一連のプラスチックタイプを含む。
【0016】
前述した例は、「プラスチックタイプ」、「プラスチックグレード」、「プラスチック類」という用語の分類を示す。プラスチックタイプは明確に定義された特性を有するプラスチックであり、プラスチックグレードはプラスチックタイプの最も近い総称である。また、プラスチック類はプラスチックグレードの各々最も近い総称である。
【0017】
第1のプラスチックリサイクル材及び第1のバージンプラスチックのプラスチック類は、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン、ビニルアルコールを含むポリマー、フルオロポリマー、動的架橋型熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマーからなるプラスチック類から選択することが好ましい。
【0018】
特に好ましい実施例によれば、第1のプラスチックリサイクル材及び第1のバージンプラスチックは、同じプラスチックグレードに属し、好ましくは同じプラスチックタイプに属する。これにより、冒頭で述べた目的が、特に満足のいくように達成される。実際には、同じプラスチック類のプラスチック、特に、例えば2つの異なる脂肪族ポリアミドと同じプラスチックグレードのプラスチックは、第1の層及び第2の層に問題なく使用できるという先入観がある。PA12のリサイクル材を含む第1の層を有するチューブがその一例となり得る。この例示的なチューブの第2の層は、バージン(未使用)のPA612プラスチック(バージンPA612プラスチック)を含み得る。第1の層及び第2の層に可能な限り同一の材料を使用するという考えは、これまでの実務では全く異質なものであった。代わりに、あらゆる種類のポリアミドを互いに組み合わせて、層状複合物とすることを目的としていた。これは、最も頻繁に使用される技術用プラスチックと共に、同時にポリアミドが多層チューブでも非常によく使用されていることが背景となっている。これにより、特に安価にPAのリサイクル材を多層チューブに使用することができる。しかし、これは、特に最小限の層の数、チューブの壁厚、及び機能性に関する様々な技術的な考察にコスト面が逆行するという事実を不明瞭にする。対照的に、本発明は、特に、第1の層にPAの12リサイクル材を使用し、第2の層にバージン(未使用)のPA612のプラスチック(バージンPA612プラスチック)を使用すると、冒頭に述べた目的を達成できる一方で、依然として多くの欠点が残るということであるという知見に基づいている。例えば、これまでのPA612の単層を置き換える上記の組み合わせは、しばしば、PA612の層の反対側に位置するPA12のリサイクル材の層に当接する層をPA12のリサイクル材の層に対して調整しなければならないことが必要となる。
【0019】
特に、第1のプラスチックリサイクル材と第1のバージンプラスチックが同じプラスチックグレード、好ましくは同じプラスチックタイプに属する場合、対向する層の調整を省略又は全く行わないことが可能であることが分かった。特に、第1の層と第2の層に対向する層との間に配置される接着促進層を実質的に必要としない。同時に、第1の層は、これまでのバージン層の一部を可能な限り置き換え、これにより、第1の層と第2の層とを合わせた全体の厚さ、ひいてはチューブの壁厚が可能な限り小さくなる。
【0020】
特に好ましい実施例によれば、第1の層と第2の層とを合わせた全体の厚さに対する第1の層の層厚の割合は、最大で95%、90%、85%、80%、75%又は70%である。第1の層と第2の層とを合わせた全体の厚さに対する第2の層の層厚の割合は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%又は30%であることが好適である。第1の層と第2の層とを合わせた全体の厚さに対する第1の層の層厚の割合は、有利には、少なくとも30%、40%、50%、60%又は70%である。第1の層と第2の層とを合わせた全体の厚さに対する第2の層の層厚の割合は、最大で70%、60%、50%、40%、30%であることが好ましい。第1のプラスチックリサイクル材を含む第1の層を使用する場合、第2の層を完全になくすことはできないことが分かった。したがって、冒頭で述べた目的は、特に好ましくは、記載された層厚の割合(層厚比)によって実現される。例えば、バージン層をやや厚いリサイクル材の層で置き換えることは容易に考えられてきたことであるから、これは驚くべき認識である。しかし、この場合はそうではなく、特に記載された好ましい層厚の割合(層厚比)は、特に有利な技術的解決策を表している。
【0021】
第2の層の層厚は、有利には、最大で0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm又は0.35mmである。第2の層は、少なくとも0.05mm、0.07mm又は0.09mmの層厚を有することが好ましい。第1の層の層厚は、好ましくは、少なくとも0.2mm、0.3mm又は0.4mmである。第1の層の層厚は、最大で1.5mm、1.2mm、1.0mm、0.8mm又は0.6mmである。
【0022】
好ましい実施例によれば、第1の層の層厚は、チューブの壁厚全体に対して、少なくとも10%、15%又は20%である。第1の層の層厚は、好適には、最大で、チューブの壁厚全体の70%、60%、50%又は40%である。
【0023】
第1のプラスチックリサイクル材又は第1の層のモル質量分布は、好適には、第1のバージンプラスチック及び/又は第2の層のモル質量分布よりも広い。換言すれば、第1のプラスチックリサイクル材又は第1の層のモル質量分布の多分散度は、第1のバージンプラスチック及び/又は第2の層のモル質量分布の多分散度よりも大きいことが好ましい。第1のプラスチックリサイクル材のモル質量分布は、二峰性又は多峰性であってもよい。したがって、第1のプラスチックリサイクル材のモル質量分布は複数の最大値を有してもよい。この場合、多分散性という用語は、個々の最大値の多分散度が重複しないことを条件に、個々の最大値の個々の多分散度を加算することを意味すると理解することが好ましい。これに対し、個々の最大値の多分散度が重複する場合、重複する多分散度の下限値及び上限値を互いに減算して、重複する多分散度を判断する。第1のプラスチックリサイクル材のモル質量分布の多分散度は、第1のバージンプラスチックのモル質量分布の多分散度の少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍又は1.6倍であることが特に好ましい。
【0024】
第1の層における第1のプラスチックリサイクル材の重量パーセントは、有利には、少なくとも70%、80%、90%、95%、97%又は99%である。第2の層における第1のバージンプラスチックの重量パーセントは、少なくとも70%、80%、90%、95%、97%又は99%である。第1の層又は第2の層の残りの重量比は、少なくとも50%、70%又は90%の添加剤を含むことが好ましい。第1の層及び/又は第2の層は、付加的なプラスチックを含まないことが非常に好ましい。
【0025】
第1の層の色は、第2の層より暗くてもよい。これは、全体的にバージン(未使用)の材料よりやや純度の低いリサイクル材料を使用することにより得られる。第1の層は、付随するカラーテーブルにおける、より暗い側の半分、特により暗い側の3分の1において所定の色調、特に灰色の色調を有する。第2の層は、有利には、付随するカラーテーブルにおける、より明るい側の半分又はより明るい側の3分の1において色調を有する。第1の層の色は、少なくとも灰色、好ましくは濃い灰色、特に好ましくは黒色である。第2の層は、有利には、白色の色調を有する。一実施例では、第1の層は顔料を含む。顔料は付随するカラーテーブルにおける、より暗い側の3分の1に位置する。第1の層及び/又は第2の層は白色、特にクリーム色がかった白色又は灰色がかった白色としてもよい。第1の層は第2の層より暗いことが好ましい。
【0026】
工業用プラスチック残渣を第1のプラスチックリサイクル材に使用することが好ましい。
【0027】
好ましい実施例において、第1のプラスチックリサイクル材及び第1のバージンプラスチックは、ポリアミド、ポリオレフィン又は熱可塑性エラストマーのプラスチックグループからの同じプラスチック類に属する。第1のプラスチックリサイクル材及び第1のバージンプラスチックは、好ましくは、脂肪族ポリアミド系に属してもよい。第1のプラスチックリサイクル材及び第1のバージンプラスチックは、ポリプロピレンのプラスチックグレードに属してもよい。第1のプラスチックリサイクル材の第1のバージンプラスチックは、好ましくは、動的架橋型熱可塑性エラストマー系に属する。
【0028】
有利な実施例によれば、チューブは付加的な層を有する。付加的な層は第2のバージンプラスチックを含む。第2のバージンプラスチックは第1のプラスチックリサイクル材と同じプラスチック類、好ましくは同じプラスチックグレード、特に好ましくは同じプラスチックタイプに属する。第1の層は第2の層と付加的な層との間に配置されることが非常に好ましい。第1の層は、特に好ましくは、付加的な層に当接する。付加的な層又は第2のバージンプラスチックは、第2の層又は第1のバージンプラスチックと共通する特徴を少なくとも1つ、好ましくは複数、特に好ましくは前述の全て共有することが有益である。前記配置は、3つの層により最適な機能性が実現し、この三層構造では、同時にかなりの部分がリサイクルプラスチックで構成されるという知見に基づいている。特に、第2のバージンプラスチックを含む3つの層の配置の利点は、第1のプラスチックリサイクル材を用いた第1の層が、バージンプラスチックを含む2つの層によって保護されることである。例えば、第1の層は十分な機械的安定性を確保することができ、第2の層及び付加的な層は第1の層を化学的に保護することができる。
【0029】
チューブは第2のプラスチックリサイクル材を含むさらなる層を有してもよい。チューブは、第2のバージン層を有してもよく、第2のバージン層は、有利には、さらなる層に当接する。第2のバージン層は、好適には、付加的なバージンプラスチックを含む。付加的なプラスチックは、第2のプラスチックリサイクル材と同じプラスチック類、好ましくは同じプラスチックグレード、特に好ましくは同じプラスチックタイプに属することが特に有利である。第1のプラスチックリサイクル材及び第1のバージンプラスチックのプラスチック類は、好ましくは、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン、ビニルアルコールを含むポリマー、フルオロポリマー、動的架橋型熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマーからなる多数のプラスチック類から選択される。第2のプラスチックリサイクル材は、第1のプラスチックリサイクル材における前述した特徴のうち1つの特徴、複数の特徴又は全ての特徴を有してもよい。付加的なバージンプラスチック又は第2のバージンプラスチックは、第1のバージンプラスチック又は第2の層における前述した特徴のうち1つの特徴、複数の特徴又は全ての特徴を有してもよい。チューブは、さらに多くのさらなる層を有してもよい。例えば、これらのさらなる層は、ポリアミド、ポリオレフィン又は前述の他のプラスチック類を含んでいてもよい。
【0030】
一実施例によれば、接着促進層は、第1の層に当接する。特に、接着促進層は、ポリオレフィンを含む。接着促進層は、第1の層と付加的なプラスチックとの混合層であってもよく、付加的なプラスチックは、接着促進層に接する層の構成要素である。接着促進層は、接着性を向上させる添加剤を含んでいてもよい。例えば、接着を向上させる添加剤は、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル又はアクリル酸である。
【0031】
チューブは、好ましくは陸上車両に使用され、特に好ましくは道路車両に使用される。道路車両は、有利には電気自動車である。チューブは、冷却チューブ手段として使用されることが好ましい。冷却チューブ手段として好ましいチューブは、電気自動車内部の冷却目的、特に電気自動車の電池の冷却目的に使用されることが特に有利である。チューブは、燃料及び/又はブレーキ液及び/又は水素及び/又は尿素水溶液及び/又はエアコン用冷媒の輸送のために使用され得る。
【0032】
以下、4つの図面に模式的に図示した4つ例示的な実施例より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、5つの層を有する第1の実施例の断面図である。
図2図2は、6つの層を有する第2の実施例の断面図である。
図3図3は、5つの層を有する第3の実施例の断面図である。
図4図4は、6つの層を有する第4の実施例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明の第1の例示的な実施例に係るチューブ1の断面図である。この例示的な実施例におけるチューブ1は、合計5つの層を備える。第1の層2は、第1のプラスチックリサイクル材を含む。この例示的な実施例における第1のプラスチックリサイクル材は、PA12からなる。第1の層2は、第1のバージンプラスチックを含む第2の層3により包囲されている。この例示的な実施例における第2の層3の第1のバージンプラスチックは、PA12からなる。この例示的な実施例における第1の層2は、層A2に対する最適な接着のための接着促進層7を包囲している。例えば、層A2は、ポリプロピレンを含む。層A2は、部分的に最内層A1を包囲する。例えば、最内層A1は、熱可塑性エラストマーを含む。
【0035】
図2による第2の例示的な実施例におけるチューブ1は、第1のプラスチックリサイクル材を含む第1の層2を有する。この例示的な実施例における第1のプラスチックリサイクル材は、好ましくはポリプロピレン、特に好ましくはアイソタクチックポリプロピレンからなる。第2の例示的な実施例におけるチューブ1は、第1のバージンプラスチックを含む第2の層3を有する。この例示的な実施例における第1のバージンプラスチックは、好ましくはポリプロピレン、特に好ましくはアイソタクチックポリプロピレンで構成される。この例示的な実施例では、第2の層3は、第1の層2の外周に配置され、第1の層2は、部分的に付加的な層4を包囲する。付加的な層4は、第2のバージンプラスチックを含む。この例示的な実施例における第2のバージンプラスチックは、ポリプロピレン、特にアイソタクチックポリプロピレンからなる。付加的な層4は、好ましくは熱可塑性エラストマーを含む最内層B1を包囲する。第2の層3は層B2により包囲されてもよい。この例示的な実施例における層B2は、接着促進剤を有していてもよい。この例示的な実施例では、最外層B3により層B2が包囲される。層B3は、ポリアミド、特にPA11又はPA12を含む。
【0036】
図3に示されたチューブ1の第3の例示的な実施例は、合計5つの層からなる。第1の層2は、好ましくはポリプロピレン、特にアイソタクチックポリプロピレンからなる第1のプラスチックリサイクル材を含む。第1の例では、第2の層3は、第1の層2を包囲し、第1のバージンプラスチックを含む。この例示的な実施例における第1のバージンプラスチックは、ポリプロピレン、特にアイソタクチックポリプロピレンからなる。第2の層3はさらなる層5により包囲される。さらなる層5は、好ましくは、第2のプラスチックリサイクル材を含み、この例示的な実施例では、動的架橋型熱可塑性エラストマー、好ましくはEPDE/PP系TPVからなる。さらなる層5は、第2のバージン層6により包囲されることが好ましい。有利には、第2のバージン層6は、動的架橋型熱可塑性エラストマー、好ましくはEPDM/PP系TPVからなる付加的なバージン層を含む。例示的な第3の実施例では、第2のバージン層6は、チューブ1の最外層を形成する。第1の層2は最内層C1を包囲してもよい。例えば、最内層C1は、動的架橋型熱可塑性エラストマーを含み得る。
【0037】
図4は、本発明の第4の例示的な実施例を示しており、合計6つの層を有するチューブ1の断面を示している。第1の層2は、第1のプラスチックリサイクル材を含み、この例示的な実施例では、熱可塑性エラストマーを含む。例えば、第1の層2の熱可塑性エラストマーは、EPDMである。この例示的な実施例では、第1の層2は、最内層である第2の層3を包囲する。第2の層3は、第1のバージンプラスチックを含む。第1のバージンプラスチックは、好ましくは熱可塑性エラストマーであり、特にEPDMである。この例示的な実施例では、第1の層2は、接着促進層7により包囲され、接着促進層7は、部分的にさらなる層5により包囲される。さらなる層5は、好ましくは、第2のプラスチックリサイクル材を含む。第2のプラスチックリサイクル材は、好ましくは、動的架橋型熱可塑性エラストマーからなる。有利には、さらなる層5は、第2のバージン層6により包囲される。第2のバージン層6は、付加的なバージンプラスチックを含んでいてもよい。付加的なバージンプラスチックは、好ましくは、動的架橋型熱可塑性エラストマーからなる。
【0038】
列挙した例示的な実施例は、好ましくは、自動車に適用される。前記4つの例示的な実施例におけるチューブ1は、特に好ましくは、自動車における冷却剤の輸送のため、冷却チューブとして好適に使用される。特に好ましくは、冷却チューブは、電気自動車の電池を冷却するために使用される。例えば、冷却チューブにより輸送される冷却媒体は、水―グリコール液体である。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-03-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上車両のための第1のプラスチックリサイクル材の使用であって、
前記チューブ(1)は、第1の層(2)及び第2の層(3)を有し、
前記第1の層(2)及び前記第2の層(3)は、互いに当接し、
前記第1の層(2)は、第1のプラスチックリサイクル材を含み、
前記第2の層(3)は、第1のバージンプラスチックからなり、
前記第1のプラスチックリサイクル材及び前記第1のバージンプラスチックは、同じプラスチック類に属する、ことを特徴とする使用。
【請求項2】
前記第1のプラスチックリサイクル材及び前記第1のバージンプラスチックは、同じプラスチックグレードに属する、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記第1の層(2)及び前記第2の層(3)を合わせた全層厚に対する前記第1の層(2)の層厚の割合は、最大で90%、80%又は75%である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記第2の層(3)は、最大で0.5mm、0.4mm又は0.35mmの層厚を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
前記第1の層(2)の層厚は、前記チューブ(1)の全壁厚に対して少なくとも10%、15%又は20%である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項6】
前記第1のプラスチックリサイクル材又は前記第1の層(2)のモル質量分布は、前記第1のバージンプラスチック及び/又は前記第2の層(3)のモル質量分布よりも広い、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項7】
前記第1の層(2)における前記第1のプラスチックリサイクル材の重量パーセントは、少なくとも70%、90%又は95%である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項8】
前記第2の層(3)における前記第1のバージンプラスチックの重量パーセントは、少なくとも70%、90%又は95%である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項9】
前記第1の層(2)は、前記第2の層(3)より暗い色を有し、
前記第1の層(2)は、好ましくは、付随するカラーテーブルのより暗い側の半分において灰色の色調を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項10】
前記第1のプラスチックリサイクル材は工業用プラスチックの残渣を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項11】
前記第1のプラスチックリサイクル材及び前記第1のバージンプラスチックは、熱可塑性エラストマー系、ポリアミド系、ポリオレフィン系のプラスチック類に属する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項12】
前記チューブ(1)は、付加的な層(4)を有し、
前記付加的な層(4)は、第2のバージンプラスチックを含み、
前記第2のバージンプラスチックは、前記第1のプラスチックリサイクル材と同じプラスチック類に属する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項13】
前記チューブ(1)は、さらなる層(5)を有し、
前記さらなる層(5)は、第2のプラスチックリサイクル材を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項14】
前記チューブ(1)は、第2のバージン層(6)を含み、
第2のバージン層(6)は、付加的なバージンプラスチックを含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項15】
前記道路車両は、好ましくは、電気自動車であり、
好ましくは、前記チューブ(1)は、冷却チューブ手段、特に前記電気自動車の電池用の冷却チューブ手段である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。