(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129366
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】屈折率増幅レンズおよびこれを備えた透過式死角確認装置
(51)【国際特許分類】
G02B 3/08 20060101AFI20230907BHJP
E01F 9/619 20160101ALI20230907BHJP
【FI】
G02B3/08
E01F9/619
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031715
(22)【出願日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2022033314
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503194336
【氏名又は名称】小林 泰滋
(74)【代理人】
【識別番号】100166132
【弁理士】
【氏名又は名称】木船 英雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 泰滋
【テーマコード(参考)】
2D064
【Fターム(参考)】
2D064AA11
2D064AA22
2D064BA17
2D064DA08
2D064DA12
2D064DA14
2D064DB11
2D064EA01
2D064JA01
(57)【要約】
【課題】従来のシート状凹レンズでは見えない位置からも対象を確実に視認できる新規な屈折率増幅レンズおよびこれを備えた透過式死角確認装置の提供。
【解決手段】一方向に屈折率が徐々に変化する凹レンズ11と、この凹レンズ11の高屈折率領域HRに重ね合わされる補助レンズ12とを有し、この補助レンズは、その屈折率が前記一方向に徐々に高くなっている。これによって凹レンズ11と補助レンズ12との重なり合った部分の光屈折率が増幅されるため、レンズに映る対象の領域が広くなり、従来では見えなかった位置からも対象を確実に視認できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に屈折率が徐々に高くなっているシート状の凹レンズと、
前記凹レンズの凹凸面側の高屈折率領域上に重ね合わされる補助レンズとを有し、
前記補助レンズは、前記凹レンズの屈折率を増幅すべくその屈折率が前記一方向に徐々に高くなっていることを特徴とする屈折率増幅レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の屈折率増幅レンズにおいて、
前記補助レンズは、一方の面が曲面状、他方の面が平面状になっていることを特徴とする屈折率増幅レンズ。
【請求項3】
請求項1に記載の屈折率増幅レンズにおいて、
前記補助レンズは、両面が曲面状になっていることを特徴とする屈折率増幅レンズ。
【請求項4】
請求項1に記載の屈折率増幅レンズにおいて、
前記補助レンズは、片面にレンズ構造を有するシート状の凹レンズからなるなることを特徴とする屈折率増幅レンズ。
【請求項5】
請求項1に記載の屈折率増幅レンズにおいて、
前記補助レンズは、両面にレンズ構造を有するシート状の凹レンズからなるなることを特徴とする屈折率増幅レンズ。
【請求項6】
請求項1に記載の屈折率増幅レンズにおいて、
前記凹レンズと補助レンズとの間に透明板を備えたことを特徴とする屈折率増幅レンズ。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれかに記載の屈折率増幅レンズと、当該屈折率増幅レンズを保持するレンズホルダーと、当該レンズホルダーを固定物に取り付ける取付部材とを備えたことを特徴とする透過式死角確認装置。
【請求項8】
請求項7に記載の透過式死角確認装置において、
前記屈折率増幅レンズの補助レンズ上に拡大レンズを備えたことを特徴とする透過式死角確認装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の透過式死角確認装置において、
前記レンズホルダーに遮光部材を備えたことを特徴とする透過式死角確認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば見通しの悪い交差点や駐車場の出入口、工場、駅、病院、商業施設などの通路に生ずる死角を視認するための屈折率増幅レンズおよびこれを備えた透過式死角確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
見通しの悪い交差点や駐車場(車庫)の出入口などには、ドライバーや歩行者または自転車などからの死角をなくすためにカーブミラーなどの凸面鏡が設けられているが、この凸面鏡は視認性が低いため、うっかり対象(車や自転車、歩行者など)を見落としてしまうことがある。例えば、ドライバーや歩行者の視点から凸面鏡への視線方向と、凸面鏡から対象方向との角度αが、内角で100°以下であれば凸面鏡でも視認可能であるが、100°を超えると対象が鏡の縁部にしか映らなくなってしまい、対象の視認性が著しく悪化する。
【0003】
また、凸面鏡は対象が反転して映ることから、対象の方角や位置、距離感を誤って認識してしまうこともある。そのため、本発明者は従来の凸面鏡に代わる新たな死角確認手段として以下の特許文献1および2に示すようにシート状の凹レンズであるフレネルレンズを利用した透過式の死角確認装置を提案している。このフレネルレンズを利用した透過式の死角確認装置によれば、対象の死角を透過してそのレンズ上に表示できることから視認角度が大きくなっても確実に死角を視認できると共に、対象の方角や位置、距離感を正確に把握しやすいといった優れた効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-57412号公報
【特許文献2】実用新案登録第3182546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このフレネルレンズを利用した従来の透過式死角確認装置は、
図10に示すように、ドライバーや歩行者の視点Aからレンズへの視線方向L1と、レンズから対象方向L2との角度が、内角で約120°以下になると対象が映らなくなるため、その角度が約120°を超える位置(視認可能領域)まで移動しなければ確認できないといった不都合がある。そのため、レンズの屈折率をより高くすることも考えられるが、そうなるとフレネルレンズ特有の白濁現象が目立ってしまい、クリアに見通せる領域が著しく狭くなってしまうという問題が起こる。
【0006】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は従来のシート状凹レンズでは見えない位置からも対象を確実に視認できる新規な屈折率増幅レンズおよびこれを備えた透過式死角確認装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために第1の発明は、一方向に屈折率が徐々に高くなっているシート状の凹レンズと、前記凹レンズの凹凸面側の高屈折率領域上に重ね合わされる補助レンズとを有し、前記補助レンズは、前記凹レンズの屈折率を増幅すべくその屈折率が前記一方向に徐々に高くなっていることを特徴とする屈折率増幅レンズである。
【0008】
このような構成によれば、凹レンズ上に補助レンズが重った高屈折率領域の光屈折率が増幅されるため、レンズに映る対象の領域が広くなる。これによって、従来では見えなかった位置からも対象を確実に視認できるため、αが約100°まで狭められ確認可能な範囲が広がる。また、シート状の凹レンズの光屈折率は従来と変わらないため、白濁現象を最小限に抑制しつつ両方面からクリアに見通せる領域を広く確保することができる。
【0009】
第2から第5の発明は、第1の発明において、前記補助レンズは、一方の面が曲面状、他方の面が平面状になっていることを特徴とする屈折率増幅レンズである。このようなレンズを用いることで第1の発明の作用効果を達成できる。ここで、補助レンズはその一方の面だけが曲面状のものの他に他の面も曲面状のものを用いればさらに高い屈折率を発揮することができる。
【0010】
第6の発明は、第1の発明において、前記凹レンズと補助レンズとの間に透明板を備えたことを特徴とする屈折率増幅レンズである。このような構成によれば、レンズの光屈折率に悪影響を及ぼすことなく、その凹凸面上の所定の位置に補助レンズを正確に重ね合わせて維持することができる。
【0011】
第7の発明は、第1から第6までの発明のいずれかの屈折率増幅レンズと、当該屈折率増幅レンズを保持するレンズホルダーと、当該レンズホルダーを固定物に取り付ける取付部材とを備えたことを特徴とする透過式死角確認装置である。このような構成によれば、視認範囲が極めて広い屈折率増幅レンズを左右のみでなく上下方向の死角にも任意の位置にしっかりと備え付けることができる。
【0012】
第8の発明は、第7の発明において、前記屈折率増幅レンズ上に拡大レンズを重ねて備えたことを特徴とする透過式死角確認装置である。このような構成によれば、屈折率増幅レンズに映った対象を拡大して表示することができるため、取付位置が遠い場合や本装置を小型化する場合でも対象の視認性をより向上することができる。
【0013】
第9の発明は、第7または第8の発明において、前記レンズホルダーに遮光部材を備えたことを特徴とする透過式死角確認装置である。このような構成によれば、太陽や街灯、店内、屋内の照明などからの強い光が屈折率増幅レンズに差し込むのを遮ることができるため、光が屈折率増幅レンズで散乱して視認性を悪化させるといった現象を確実に防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、凹レンズ上に補助レンズが重った高屈折率領域の光屈折率が増幅されるため、レンズに映る対象の領域が広くなる。これによって、従来では見えなかった位置からも対象を確実に視認できるため、安全性がより向上する。また、シート状の凹レンズの光屈折率は従来と変わらないため、白濁現象を最小限に抑制しつつ両方面からクリアに見通せる領域を広く確保することができる。また、拡大レンズによって屈折率増幅レンズに映った対象を拡大表示できるため、取付位置が遠い場合や本装置を小型化する場合でも対象の視認性をより向上することができる等といった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る透過式死角確認装置100の第1の実施形態を示す全体斜視図である。
【
図2】本発明に係る透過式死角確認装置100の第1の実施形態を示す分解斜視図である。
【
図3】本発明に係る屈折率増幅レンズ10の第1の実施形態を示す分解斜視図である。
【
図4】本発明に係る屈折率増幅レンズ10の第1の実施形態を示す側面図である。
【
図5】(A)は従来の凹型フレネルレンズの構造および特性を示す説明図、(B)はその凹型フレネルレンズから得られるシート状の凹レンズ11の例を示す説明図である。
【
図6】シート状の凹レンズ11の光屈折率特性を示す説明図である。
【
図7】補助レンズ12の光屈折率特性を示す説明図である。
【
図8】本発明に係る屈折率増幅レンズ10の光屈折率特性を示す説明図である。
【
図9】本発明に係る透過式死角確認装置100の視認可能領域を示す説明図である。
【
図10】従来の透過式死角確認装置の視認可能領域を示す説明図である。
【
図11】本発明に係る透過式死角確認装置100の変形例を示す斜視図である。
【
図12】本発明に係る透過式死角確認装置100の変形例を示す分解斜視図である。
【
図13】本発明に係る透過式死角確認装置100の変形例を示す分解斜視図である。
【
図14】本発明に係る透過式死角確認装置100の変形例を示す分解斜視図である。
【
図15】本発明に係る屈折率増幅レンズ10の第2の実施形態を示す側面図である。
【
図16】第2の実施形態に係る補助レンズ15の一例を示す斜視図である。
【
図17】第2の実施形態に係る透過式死角確認装置100の視認可能領域を示す説明図である。
【
図18】第2の実施形態の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施の形態:発明1)
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る透過式死角確認装置100の実施の一形態を示した斜視図、
図2はその分解図である。図示するようにこの透過式死角確認装置100は、車や自転車、歩行者などの視認対象を映す屈折率増幅レンズ10と、この屈折率増幅レンズ10を保持するレンズホルダー20と、このレンズホルダー20を固定物に取り付ける取付部材30と、レンズホルダー20に取り付けられる遮光部材40とから構成されている。
【0017】
屈折率増幅レンズ10は、
図3に示すように略四角形状をしたシート状の凹レンズ11と、略三角形状をした補助レンズ12と、その間に位置するアクリル製の透明板13とから構成されており、
図4に示すように凹レンズ11の凹凸面11b側に透明板13を挟んで補助レンズ12が重ね合わさった構造となっている。
【0018】
このシート状をした凹レンズ11は、
図5(A)に示すように表面にレンズ構造を有するシート状の凹型フレネルレンズを利用したものであり、同図(B)に示すようにその凹型フレネルレンズの中心部分から外側の領域に亘って略四角形状(菱形)や丸形、異形に切り取ることで形成されている。そして、この凹型フレネルレンズは、
図5(A)に示すようにその光屈曲率が一方向、図ではX軸方向、すなわち凹型フレネルレンズの中心から外側に向かう方向に向かって徐々に高くなっていることから、同図(B)のように切り取られた凹レンズ11の光屈折率は、
図6に示すように凹型フレネルレンズの中心側に位置する左端部側が最も低く、凹型フレネルレンズの外側に位置する右端部側になるに従って徐々に(連続的に)高くなるようになっている。
【0019】
このように凹レンズ11の光屈折率は、そのX軸方向の外側になるに従って徐々に高くなっているが、本実施の形態では
図6に示すように便宜的に凹レンズ11の中心の点線部分を境にしてその左半分を低屈折率領域LRと称し、右半分を高屈折率領域HRと称して説明する。そして、
図4に示すようにこのようにして公知の凹型フレネルレンズから形成された凹レンズ11は、その一方の面が平滑面11aになっているのに対し、他方の面はレンズ機能を発揮する凹凸面11bとなっており、この凹凸面11b側に透明板13を挟んで補助レンズ12が重ね合わされている。
【0020】
一方、補助レンズ12は、
図3および
図4に示すように、平面から見ると凹レンズ11を対角線で二等分したような略二等辺三角形状となっているが、側面から見ると頂点付近がX軸方向外側に向かって曲面状に高くなった断面三角形(クサビ状)になっている。具体的には、
図5(A)に示すような凹型球体レンズを示す図の枠Cで囲った中心付近の低屈折率領域に相当する形状となっている。従って、
図7に示すようにこの補助レンズ12はその光屈折率がその厚さと比例するように左端から右端に向かって(一方向:X軸方向)平らな平面状でなく曲面状に徐々に高くなっている。なお、このX軸方向と直交するY軸方向の光屈折率は変化しない構造となっている。一方、この補助レンズ12の他方の面は平面状になっている。
【0021】
そして、この補助レンズ12は、シート状の凹レンズ11に対してその右半分の高屈折率領域HRに、透明板13を介して重ね合わされている。すなわち、凹レンズ11の凹凸面11b側の高屈折率領域HRに補助レンズ12を直接接着することは困難であることからこの補助レンズ12を透明な接着剤や両面テープなどによって透明板13と一体化してから、この透明板13を凹レンズ11の凹凸面11b側に重なり合わせことで凹レンズ11の高屈折率領域HRに補助レンズ12を精度良く位置させる構造となっている。なお、この補助レンズ12を構成する材質としては優れた光透過性を有するものであれば特に限定されるものでなく、透明ガラスの他にPMMA(アクリル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、エポキシ系樹脂(エポキシレジン)などの透明樹脂で形成することができる。また、製法も同様に限定されるものではないが例えばガラスの場合は切削加工、樹脂の場合は金型などによって成形する方法が効率的である。
【0022】
従って、このような構成をした屈折率増幅レンズ10の光屈折率は、
図8に示すように低屈折率領域LRでは、凹レンズ11の低屈折率領域LRと同じになっているが、補助レンズ12が重なっているその右半分の領域の光屈折率は、凹レンズ11の高屈折率領域HRの光屈折率に補助レンズ12の光屈折率を加えた値となっており、その光屈折率が増幅されている。本実施の形態ではこの補助レンズ12が重なっているその右半分の領域を便宜的に屈折率増幅領域SRと称する。
【0023】
一方、この屈折率増幅レンズ10を保持するレンズホルダー20は、
図2に示すように一対の円板21,21にそれぞれ屈折率増幅レンズ10と相似形でそれよりもやや小さい開口部22が形成されている。そして、その一方の開口部22に縁に沿って形成された溝23に屈折率増幅レンズ10を嵌め込んでからそれら一対の円板21,21で両側から挟み込み、両円板21,21をボルト24で締結することで屈折率増幅レンズ10をしっかりと保持するようになっている。
【0024】
なお、このように屈折率増幅レンズ10は、その周縁部が円板21の溝23に嵌め込まれて両側から保持されるようになっていることから、厚さ方向に突出した補助レンズ12が他方の開口部22と干渉しないように、
図4に示すように周縁部からやや中心寄りに位置するようになっている。また、このレンズホルダー20の材質は特に限定されるものでなく、プラスチックを金型に射出成形してなるものや金属板をプレス成形してなるものの他に意匠性を高めるために木製のものなどであってもよい。
【0025】
取付部材30は、金属製のステイ31と、図示しない取付金具とからなっている。ステイ31は、その一端がボルト32によってレンズホルダー20側に連結されていると共に他端側が図示しない取付金具などによって支柱や柵、門柱、壁面などの場所や方向は任意に取り付けられるようになっている。
【0026】
遮光部材40は、レンズホルダー20の外周に沿って湾曲したバイザー41と、このバイザー41の内面中央部分から径方向内方に突き出た円弧状のフレーム42とから構成されており、このフレーム42をレンズホルダー20を構成する円板21,21間に挟み込むことで日除けのためのバイザー41を太陽光などの強い光が差し込む方向に固定できるようになっている。なお、バイザー41の面積や位置、角度を任意に調節できるような構造とすることもできる。
【0027】
このような構成をした本発明の屈折率増幅レンズ10にあっては、シート状の凹レンズ11とソリッド状の補助レンズ12とが重なり合った凹レンズ11の高屈折率領域HRの光屈折率が増幅された屈折率増幅領域SRとなっているため、レンズに映る対象の領域が広くなる。これは対象の方向から見た場合(両方面)も同様にその視認領域が広くなる。従って、この屈折率増幅レンズ10を備えた透過式死角確認装置100を
図9に示すように壁や塀の端に取り付ければ、視認不可領域αが狭まって対象の視認可能領域が従来(
図10)よりも大幅に向上することから従来見えなかった位置からも対象を視認可能となり、より安全性が向上する。
【0028】
すなわち、
図10に示すように従来のレンズを用いた透過式死角確認装置の場合は、ドライバーや歩行者の視点Aからレンズへの視線方向L1と、レンズから対象方向L2との角度が、内角で約120°以下になると対象が映らなかったが、
図9に示すように本発明の過式死角確認装置100では、その光屈折率が大幅に向上することにより、視線方向L1と対象方向L2との角度が内角で約100°でも対象の視認が可能となり、その視認可能領域が一気に広くなる。例えば、
図10に示すように従来では、視認不可領域αが約120°と広いため、視点Bの位置からは対象が見えず、視点可能領域に移動するまで気がつかずに直前になって慌ててしまうことがあったが、本発明によれば、視点Bからも対象の存在が視認できるため、接近しながらの早めの対応が可能となる。
【0029】
しかも、光屈折率を上げてもシート状の凹レンズ11の光屈折率は従来と変わらないため、高屈折領域に発生しやすいフレネルレンズ特有の白濁現象を最小限に抑制することが可能となり、クリアに見通せる領域が狭くなってしまうようなこともない。また、レンズホルダー20に遮光部材40を備えたことにより太陽や街灯や店内、屋内の照明などからの強い光が屈折率増幅レンズに差し込むのを遮ることができるため、差し込んだ光が屈折率増幅レンズ10で散乱して視認性を悪化させるといった現象を確実に防止できる。
【0030】
なお、この屈折率増幅レンズ10のサイズとしては、大きければ大きいほど視認性は高まるものの設置場所の確保や通行の邪魔になったり製造コストが高くなる可能性があり、反対に小さいと設置が容易で製造も安価となるかつ通行の邪魔にならないといったメリットがある代わりに視認性が低下することから取り付ける場所やケース、予算などに応じて最適なサイズのものを用いればよい。従って、屈折率増幅レンズ10の大きさは特に限定するものではないが、例えば、縦横それぞれ約15~20cm程度のものが現在のところ取付性やコスト、視認性の点などで最もバランスがよいと思われる。
【0031】
また、屈折率増幅レンズ10のサイズを大きくすることなく視認性を高めるために
図12および
図13に示すように屈折率増幅レンズ10上に拡大レンズ50を取り付けてもよい。これによって、屈折率増幅レンズ10に映った対象を拡大して表示することができるため、対象の視認性をより向上することができる。この場合の拡大レンズ50としては、従来の凸レンズをそのまま用いてもよいが、シート状の凸レンズを用いれば、その厚さを薄くできかつ全体の軽量化も達成できる。
【0032】
このシート状の凸レンズは、例えば
図11に示すように凸型のフレネルレンズの一部をレンズホルダー20とほぼ同じ大きさに切り抜くことで容易に得ることができる。そして、
図12に示すように切り取ったシート状の凸レンズ51を円形枠52に取り付けると共に、この円形枠52をベルトやボルトなどでレンズホルダー20に固定すれば、容易に取り付けることができる。そして、この場合には図に示すようにこのシート状凸レンズ51の屈折率の高い中央側Sを屈折率増幅レンズ10の屈折率増幅領域SR側に、屈折率の低い外周側Cを屈折率増幅レンズ10の低屈折率領域LR側に位置するように配置することで、屈折率増幅領域SR側の対象を拡大表示することができる。
【0033】
また、さらに他の実施の形態として屈折率増幅レンズ10を構成する補助レンズ12として、
図13に示すように表面にレンズ構造を有するシート状の凹レンズ14を用いることも可能である。このシート状の凹レンズ14は、凹レンズ11と同様に凹型フレネルレンズを利用したものであるが、凹レンズ11と同じ屈折率のものを用いると白濁現象が目立って視認性が著しく悪化するため、凹レンズ11の低屈折率領域に重なる部分は光を屈折しない透明板で構成し、凹レンズ11の高屈折率領域HRに重なる部分は、
図5の枠Cで覆った部分に対応する凹型フレネルレンズの低屈折率領域の部分を用いることになる。このような構成にすれば、ソリッド状の補助レンズ12を用いた場合に比べるとレンズの厚さを薄くできるため、小型・軽量化を達成できる。また、この凹型フレネルレンズの光屈折率はX軸方向(一方向)のみが変化し、これと直交するY軸方向はフラットなものを用いることが望ましい。さらに、
図14に示すように、このシート状の凹レンズ14上に透明板13を重ね合わせるようにしてもよい。
【0034】
なお、前記各実施の形態では、屈折率増幅レンズ10の形状として略正四角形状のものを用いた例で説明したが、その形状はこれに限定されるものでなく他の形状、例えば真円形や楕円形、縦長または横長の長方形などであってもよい。また、補助レンズ12の屈折率はその表面の曲率(高さ)によって変化するが、屈折率が高すぎると視認可能範囲が広くなるものの、対象が小さくなって映ってしまい、反対に屈折率が低すぎると視認可能範囲があまり広くならない。そのため、適用する場所や必要な角度、状況に応じて最適な屈折率のものを選択して交換できるようにしてもよい。
【0035】
また、この屈折率増幅レンズ10を保持するレンズホルダー20と、このレンズホルダー20を固定物に取り付ける取付部材30と、レンズホルダー20に取り付けられる遮光部材40は、別部材で構成するのではなく、専用の金型を用意して樹脂などから一体成形してもよい。また、本実施の形態では屈折率増幅レンズ10を構成する凹レンズ11などを既存の凹型フレネルレンズの一部を切り抜いて製作したが、この凹レンズ11の形状に対応する専用の金型などを用いて製造してもよい。また、本実施の形態では、凹レンズ11に透明板13を挟んで補助レンズ12を重ね合わせた例を示したが、この補助レンズ12を図示しないステイなどを介してレンズホルダー20で保持するようにしてもよい。さらに、この補助レンズ12と透明板13を一体成型してもよい。
【0036】
(第2の実施形態:発明2)
次に、
図15から
図18は前述した屈折率増幅レンズ10の第2の実施形態を示したものである。図示するように本実施の形態では、一方の面(表面)だけでなく、他方の面(裏面)も曲面状にした補助レンズ15を用いたものである。すなわち、第1の実施形態では、補助レンズ12は
図4などに示すように透明板13側に接着される裏面は平面となっており、表面は曲面状になっているのに対し、
図15および
図16に示すように本実施の形態では、透明板13側に位置するレンズ裏面15b側も中心から外方向に向かって曲面状にしたものである。
【0037】
このように両面を曲面状にすると、
図16に示すようにレンズの厚み(高さh)を高くすることなく光屈折率をさらに上げることができる。これにより
図17に示すように視線方向L1と対象方向L2との角度が内角で約90°でも対象の視認が可能となり、視認可能領域をさらに拡大することができる。この結果、図示するように視認者が壁側にいたり壁伝いに歩いていても対象の存在を早期かつ確実に視認することが可能となる。
【0038】
なお、本実施の形態のように透明板13側に位置する裏面15a側も曲面状にすると、その面が平面状の透明板13と密着しなくなるため、接着剤などによる接着が容易でない。このため、例えば
図16に示すように補助レンズ15から三方に突出するように3つの突起片17a、17b、17cを設け、この突起片17a、17b、17c部分をレンズホルダー20で挟み込むようにすることで凹レンズ11に対して所定の位置に固定して取り付けるようにしてもよい。
【0039】
また、本実施の形態の変形例として
図18に示すように両面にレンズ構造を有するシート状の凹レンズ16を用いてもよい。すなわち、レンズ表面16aを平面状の凹型フレネルレンズで構成するのみならず、裏面16bも同様に平面状の凹型フレネルレンズで構成すれば、
図14のケースと同様にソリッド状の補助レンズ15を用いた場合に比べるとレンズの厚さを薄くできるため、小型・軽量化を達成できる。さらに一方の面を曲面状にし、他面を平面状の凹型フレネルレンズで構成するような組み合わせとしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10…屈折率増幅レンズ
11…シート状の凹レンズ
11a…平滑面
11b…凹凸面
12…補助レンズ(ソリッド状)
13…透明板
14…補助レンズ(シート状)
15…補助レンズ(ソリッド状:両面曲面)
16…補助レンズ(シート状:両面凹レンズ)
15a、16a…レンズ表面
15b、16b…レンズ裏面
17a、17b、17c…突起片
20…レンズホルダー
21…円板
22…開口部
23…溝
24、32…ボルト
30…取付部材
31…ステイ
40…遮光部材
41…バイザー
42…フレーム
50…拡大レンズ
51…凸レンズ
52…円形枠
100…透過式死角確認装置
HR…高屈折率領域
LR…低屈折率領域
SR…屈折率増幅領域