(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129390
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】レム睡眠判定装置、レム睡眠判定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20230907BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61B5/11 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032971
(22)【出願日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】63/316,421
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼玉 圭樹
(72)【発明者】
【氏名】嘉村 魁人
(72)【発明者】
【氏名】中理 怡恒
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PS07
4C038VA04
4C038VA15
4C038VB31
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】非拘束型のレム睡眠の判定方法においてレム睡眠の判定精度を高めること。
【解決手段】レム睡眠判定装置は、睡眠の期間における体動の大きさを時刻毎に示す体動データを取得する体動データ取得部と、体動データのなかから所定の睡眠段階の体動に相当するデータである第1体動データを除去する体動除去部と、体動除去部によって第1体動データが除去された体動データから、所定の長さの第1時間の間に出現した体動の回数を示す体動密度と、所定の長さの第2時間あたりの移動平均とを算出する体動密度移動平均算出部と、睡眠の期間のうち、体動密度移動平均算出部によって算出された体動密度が移動平均を上回る期間をレム睡眠の期間として判定するレム睡眠判定部と、を備える。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠の期間における体動の大きさを時刻毎に示す体動データを取得する体動データ取得部と、
前記体動データのなかから所定の睡眠段階の体動に相当するデータである第1体動データを除去する体動除去部と、
前記体動除去部によって前記第1体動データが除去された前記体動データから、所定の長さの第1時間の間に出現した体動の回数を示す体動密度と、所定の長さの第2時間あたりの移動平均とを算出する体動密度移動平均算出部と、
前記睡眠の期間のうち、前記体動密度移動平均算出部によって算出された前記体動密度が前記移動平均を上回る期間をレム睡眠の期間として判定するレム睡眠判定部と、
を備えるレム睡眠判定装置。
【請求項2】
前記第1体動データには、覚醒時の体動に相当するデータである覚醒時体動データが含まれる
請求項1に記載のレム睡眠判定装置。
【請求項3】
前記体動除去部は、前記体動データのなかから前記体動データが示す前記体動の大きさに基づいて前記覚醒時体動データを除去する
請求項2に記載のレム睡眠判定装置。
【請求項4】
前記体動除去部は、前記体動データのなかから前記体動データが示す前記体動の大きさが、上位所定の割合であるデータに基づいて前記覚醒時体動データを除去し、
前記割合は、睡眠全体に対する覚醒の割合から定められた割合である
請求項2に記載のレム睡眠判定装置。
【請求項5】
前記体動除去部は、前記体動データのなかから機械学習の結果に基づいて前記覚醒時体動データを除去する
請求項2に記載のレム睡眠判定装置。
【請求項6】
前記第1体動データには、前記覚醒時体動データとともにノンレム睡眠段階2の体動に相当するデータであるノンレム睡眠段階2体動データが含まれ、
前記体動除去部は、前記覚醒時体動データが除去された前記体動データのなかから前記ノンレム睡眠段階2体動データを除去する
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載のレム睡眠判定装置。
【請求項7】
前記第1体動データには、ノンレム睡眠段階2の体動に相当するデータであるノンレム睡眠段階2体動データが含まれる
請求項1に記載のレム睡眠判定装置。
【請求項8】
前記体動除去部は、前記体動データのなかから前記体動データが示す前記体動の大きさに基づいて前記ノンレム睡眠段階2体動データを除去する
請求項7に記載のレム睡眠判定装置。
【請求項9】
前記体動除去部は、前記体動データのなかから前記体動データが示す前記体動の大きさが、上位所定の割合であるデータに基づいて前記ノンレム睡眠段階2体動データを除去し、
前記割合は、睡眠全体に対するノンレム睡眠段階2の割合から定められた割合である
請求項7に記載のレム睡眠判定装置。
【請求項10】
前記体動除去部は、前記体動データのなかから機械学習の結果に基づいて前記ノンレム睡眠段階2体動データを除去する
請求項7に記載のレム睡眠判定装置。
【請求項11】
前記第1体動データには、前記ノンレム睡眠段階2体動データとともに覚醒時の体動に相当するデータである覚醒時体動データが含まれ、
前記体動除去部は、前記ノンレム睡眠段階2体動データが除去された前記体動データのなかから前記覚醒時体動データを除去する
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載のレム睡眠判定装置。
【請求項12】
前記体動密度移動平均算出部は、睡眠周期に基づいて定められた所定の時間長さの時間窓を用いて前記移動平均を算出する
請求項1に記載のレム睡眠判定装置。
【請求項13】
睡眠の期間における体動の大きさを時刻毎に示す体動データを取得する体動データ取得ステップと、
前記体動データのなかから所定の睡眠段階の体動に相当するデータである第1体動データを除去する体動除去ステップと、
前記体動除去ステップによって前記第1体動データが除去された前記体動データから、所定の長さの第1時間の間に出現した体動の回数を示す体動密度と、所定の長さの第2時間あたりの移動平均とを算出する体動密度移動平均算出ステップと、
前記睡眠の期間のうち、前記体動密度移動平均算出ステップによって算出された前記体動密度が前記移動平均を上回る期間をレム睡眠の期間として判定するレム睡眠判定ステップと、
を有するレム睡眠判定方法。
【請求項14】
睡眠の期間における体動の大きさを時刻毎に示す体動データを取得する体動データ取得ステップと、
前記体動データのなかから所定の睡眠段階の体動に相当するデータである第1体動データを除去する体動除去ステップと、
前記体動除去ステップによって前記第1体動データが除去された前記体動データから、所定の長さの第1時間の間に出現した体動の回数を示す体動密度と、所定の長さの第2時間あたりの移動平均とを算出する体動密度移動平均算出ステップと、
前記睡眠の期間のうち、前記体動密度移動平均算出ステップによって算出された前記体動密度が前記移動平均を上回る期間をレム睡眠の期間として判定するレム睡眠判定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レム睡眠判定装置、レム睡眠判定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
厚生労働省によると、現在の日本において、一般成人の20%以上が何らかの睡眠障害を患っている。睡眠と健康には密接な関係があり、睡眠の質の低下は免疫システムの弱化や認知機能障害の発症率の増大、心疾患のリスクの増大など様々な健康被害に繋がる。そのため、日々の睡眠状態を把握することは、病気の発見、および早期発見による治療に重要である。
【0003】
睡眠状態把握において、睡眠段階の周期(睡眠周期)は重要な指標の1つである。睡眠段階は、睡眠段階判定の国際基準であるRechtschaffen & Kales(以下、「R&K法」と略称する)法に基づき浅い睡眠から深い睡眠をWake(arousal)、レム(REM:Rapid Eye Movement)睡眠、ノンレム(Non-REM)睡眠段階1~4の全6段階で表される。睡眠周期は、約90分のサイクルで深い睡眠(ノンレム睡眠段階3~4)と、浅い睡眠(ノンレム睡眠段階1~2、レム睡眠)とを繰り返す周期性のことであり、入眠からレム睡眠、またはレム睡眠間のことを指す。そのため、睡眠周期はレム睡眠を推定することで測定が可能となる。
【0004】
現在の医療現場における国際基準の睡眠段階推定法は、R&K法に基づき終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査により得られた脳波、筋電図、眼球運動図など生体データを評価し推定される。しかし、PSG検査は被験者の頭部や体に複数の電極やセンサの装着を要し、拘束状態による被験者の身体的負担が大きい。そのため、マットセンサのような簡易センサ等を用いた非拘束睡眠段階推定法に対する需要が高い。非拘束の睡眠段階推定法が確立されれば、日常的に睡眠状態の計測が可能になり、病気の予防および早期発見に繋がる。
【0005】
現在、非拘束型睡眠段階推定方法は多数研究されている。特にレム睡眠に着目した手法として、生理的特徴に着目した方法であるRSSE(Realtime Sleep Stage Estimation)(非特許文献1)、及び、機械学習に基づくレム睡眠判定法(Multi-Timescale REM Estimation:MTRE)(非特許文献2)が知られている。
【0006】
非特許文献1に記載のRSSEは、レム睡眠時に心拍数が不規則に増減するという生理的特徴に着目する。RSSEでは、式(1)のように、直前5分間の心拍の中央値HRrecent
medと5~10分前の心拍中央値HRprev
medの変化率が0.04以上増加している時間から、心拍の変化率が一度負になりその後0以上となった時間までをレム睡眠と判定する。
【0007】
【0008】
一方、非特許文献2に記載のMTREは、機械学習に基づいてレム睡眠を判定する。MTREでは、マットセンサから得られた生体振動データ(心拍、呼吸、体動の複合振動値)を入力としたランダムフォレスト(Random Forest:RF)に基づいてレム睡眠を判定する。具体的には、レム睡眠の特徴出現が瞬間的、継続的と複数パターンがあることに着目し、各窓長(32秒、64秒、128秒、256秒)の生体振動データの対数スペクトルを入力データとする。当該入力データを用いて異なるRFで学習、およびレム睡眠の判定を行う。その後、各RFのレム睡眠の判定数を、窓を取って合計し、レム睡眠の割合が一夜の睡眠時間の約20%になるように、レム睡眠となるエポックを判定する。なお、同様にしてノンレム睡眠を含む他の睡眠段階を判定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Tomohiro Harada、 Fumito Uwano、 Takahiro Komine、 Yusuke Tajima、 Takahiro Kawashima、 Morito Morishima、 Keiki Takadama、”Real-Time Sleep Stage Estimation from Biological Data with Trigonometric Function Regression Model”、「AAAI Spring Symposium - Technical Report」、2016年、SS-16-01 -07巻、348-353頁
【非特許文献2】Iko Nakari、 Naoya Matsuda、 Keiki Takadama、”REM Estimation Based on Combination of Multi-Timescale Estimations and Automatic Adjustment of Personal Bio-vibration Data of Mattress Sensor”、「Proceedings of the AAAI 2022 Spring Symposium “How Fair is Fair? Achieving Wellbeing AI”」、2022年、3276巻、74-80頁
【非特許文献3】神林優太、萩原啓、「体動の出現頻度を用いた睡眠周期推定の試み」、「生体医工学」、2012年、50巻、1号、99-104頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記の非特許文献1に記載のRSSE、非特許文献2に記載のMTREに記載の方法ではいずれも、睡眠の周期性を考慮していない。そのため、判定条件さえ満たせば睡眠周期性のないデータに対してもレム睡眠と判定してしまう問題がある。これに対し、周期性を重視の上で睡眠周期を推定する方法として、レム睡眠前後の浅い睡眠時に周期的に発生する体動に着目し、体動の回数を30分窓で数えることにより算出する体動密度に基づく睡眠周期推定法が研究されている(非特許文献3)。
【0011】
非特許文献3に記載の睡眠周期推定法では、レム睡眠前後の浅い睡眠時に周期的に発生する体動に着目し、赤外線モーションセンサを用いて取得した睡眠時の体動情報から睡眠周期を推定する。当該睡眠周期推定法では、発生する体動の周期性を捉えるために、体動の出現頻度を表す指標として体動密度を導入した。体動密度は、前後15分、計30分間に起こった体動の回数である。
【0012】
当該睡眠周期推定法では、まず、赤外線モーションセンサから取得した睡眠時の体動データを用いて、体動密度を導出する。
図23に、体動と当該体動から算出された体動密度の一例を示す。縦軸は体動の回数を示し、横軸は経過時間を示す。
非特許文献3では、体動密度の値が平均値を連続して上回る時間である「体動密度が上に凸の時間」と、体動密度の値が平均値を連続して下回る時間である「体動密度が下に凸の時間」との組を体動密度周期として、睡眠周期との類似性を述べている。
【0013】
上記の非特許文献3に記載の体動密度に基づく睡眠周期推定法を応用し、レム睡眠を推定することが考えられる。しかし、この睡眠周期推定法のレム睡眠推定への応用には、次の2つの問題点が存在する。1つ目の問題点は、体動密度によって求めた浅い睡眠には、レム睡眠の体動の他に、覚醒による体動も含まれることである。2つ目の問題点は、レム睡眠とノンレム睡眠段階2とで体動の大きさが酷似しており境界が不明瞭であることである。これらの問題点のため、睡眠周期推定法をレム睡眠推定へ単純に応用しただけでは、十分な判定精度は得られないと考えられる。
【0014】
このように、従来の非拘束型のレム睡眠の判定方法では、判定精度が十分ではなかった。非拘束型のレム睡眠の判定方法においてレム睡眠の判定精度を高めることが求められている。
【0015】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、非拘束型のレム睡眠の判定方法においてレム睡眠の判定精度を高めることができるレム睡眠判定装置、レム睡眠判定方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、睡眠の期間における体動の大きさを時刻毎に示す体動データを取得する体動データ取得部と、前記体動データのなかから所定の睡眠段階の体動に相当するデータである第1体動データを除去する体動除去部と、前記体動除去部によって前記第1体動データが除去された前記体動データから、所定の長さの第1時間の間に出現した体動の回数を示す体動密度と、所定の長さの第2時間あたりの移動平均とを算出する体動密度移動平均算出部と、前記睡眠の期間のうち、前記体動密度移動平均算出部によって算出された前記体動密度が前記移動平均を上回る期間をレム睡眠の期間として判定するレム睡眠判定部と、を備えるレム睡眠判定装置である。
【0017】
また、本発明の一態様は、上記のレム睡眠判定装置において、前記第1体動データには、覚醒時の体動に相当するデータである覚醒時体動データが含まれる。
【0018】
また、本発明の一態様は、上記のレム睡眠判定装置において、前記体動除去部は、前記体動データのなかから前記体動データが示す前記体動の大きさに基づいて前記覚醒時体動データを除去する。
【0019】
また、本発明の一態様は、上記のレム睡眠判定装置において、前記体動除去部は、前記体動データのなかから前記体動データが示す前記体動の大きさが、上位所定の割合であるデータに基づいて前記覚醒時体動データを除去し、前記割合は、睡眠全体に対する覚醒の割合から定められた割合である。
【0020】
また、本発明の一態様は、上記のレム睡眠判定装置において、前記体動除去部は、前記体動データのなかから機械学習の結果に基づいて前記覚醒時体動データを除去する。
【0021】
また、本発明の一態様は、上記のレム睡眠判定装置において、前記覚醒時体動データとともにノンレム睡眠段階2の体動に相当するデータであるノンレム睡眠段階2体動データが含まれ、前記体動除去部は、前記覚醒時体動データが除去された前記体動データのなかから前記ノンレム睡眠段階2体動データを除去する。
【0022】
また、本発明の一態様は、上記のレム睡眠判定装置において、前記第1体動データには、ノンレム睡眠段階2の体動に相当するデータであるノンレム睡眠段階2体動データが含まれる。
【0023】
また、本発明の一態様は、上記のレム睡眠判定装置において、前記体動除去部は、前記体動データのなかから前記体動データが示す前記体動の大きさに基づいて前記ノンレム睡眠段階2体動データを除去する。
【0024】
また、本発明の一態様は、上記のレム睡眠判定装置において、前記体動除去部は、前記体動データのなかから前記体動データが示す前記体動の大きさが、上位所定の割合であるデータに基づいて前記ノンレム睡眠段階2体動データを除去し、前記割合は、睡眠全体に対するノンレム睡眠段階2の割合から定められた割合である。
【0025】
また、本発明の一態様は、上記のレム睡眠判定装置において、前記体動除去部は、前記体動データのなかから機械学習の結果に基づいて前記ノンレム睡眠段階2体動データを除去する。
【0026】
また、本発明の一態様は、上記のレム睡眠判定装置において、前記第1体動データには、前記ノンレム睡眠段階2体動データとともに覚醒時の体動に相当するデータである覚醒時体動データが含まれ、前記体動除去部は、前記ノンレム睡眠段階2体動データが除去された前記体動データのなかから前記覚醒時体動データを除去する。
【0027】
また、本発明の一態様は、上記のレム睡眠判定装置において、前記体動密度移動平均算出部は、睡眠周期に基づいて定められた所定の時間長さの時間窓を用いて前記移動平均を算出する。
【0028】
また、本発明の一態様は、睡眠の期間における体動の大きさを時刻毎に示す体動データを取得する体動データ取得ステップと、前記体動データのなかから所定の睡眠段階の体動に相当するデータである第1体動データを除去する体動除去ステップと、前記体動除去ステップによって前記第1体動データが除去された前記体動データから、所定の長さの第1時間の間に出現した体動の回数を示す体動密度と、所定の長さの第2時間あたりの移動平均とを算出する体動密度移動平均算出ステップと、前記睡眠の期間のうち、前記体動密度移動平均算出ステップによって算出された前記体動密度が前記移動平均を上回る期間をレム睡眠の期間として判定するレム睡眠判定ステップと、を有するレム睡眠判定方法である。
【0029】
また、本発明の一態様は、睡眠の期間における体動の大きさを時刻毎に示す体動データを取得する体動データ取得ステップと、前記体動データのなかから所定の睡眠段階の体動に相当するデータである第1体動データを除去する体動除去ステップと、前記体動除去ステップによって前記第1体動データが除去された前記体動データから、所定の長さの第1時間の間に出現した体動の回数を示す体動密度と、所定の長さの第2時間あたりの移動平均とを算出する体動密度移動平均算出ステップと、前記睡眠の期間のうち、前記体動密度移動平均算出ステップによって算出された前記体動密度が前記移動平均を上回る期間をレム睡眠の期間として判定するレム睡眠判定ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、非拘束型のレム睡眠の判定方法においてレム睡眠の判定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態に係るレム睡眠判定方法の概要の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る睡眠段階と体動の大きさとの関係の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るノンレム睡眠時の体動除去の処理によって抽出された体動の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る覚醒による体動とレム睡眠時の体動との大きさの違い示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る覚醒時の体動除去の処理によって抽出された体動の一例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る30分窓の一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る移動平均の一例を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るレム睡眠判定方法によるレム睡眠の判定の一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る経過時間に対する体動の回数を示す概念図の一例を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るノンレム睡眠段階2の体動、及び覚醒の体動が除去された後の経過時間に対する体動の回数を示す概念図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る体動密度を示す概念図である。
【
図12】本発明の実施形態に係るレム睡眠ごとの体動密度の差を示す概念図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る固定値の閾値を用いてレム睡眠を判定した場合を示す概念図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る移動平均を閾値として用いてレム睡眠を判定した場合を示す概念図である。
【
図15】本発明の実施形態に係るレム睡眠判定装置1の構成の一例を示す図である。
【
図16】本発明の実施形態に係るレム睡眠判定処理の流れ一例を示す図である。
【
図17】本発明の実施例に係るレム睡眠判定方法によるレム睡眠判定の結果を示す図である。
【
図18】本発明の実施例に係る第1評価指標の各被験者の結果を示す図である。
【
図19】本発明の実施例に係る第2評価指標の各被験者の結果を示す図である。
【
図20】本発明の実施例に係る第1評価指標の結果の平均値と標準偏差を示す棒グラフである。
【
図21】本発明の実施例に係る第2評価指標の結果の平均値と標準偏差を示す棒グラフである。
【
図22】本発明の実施例に係るレム睡眠判定方法、従来手法(RSSE、MTRE)によるレム睡眠判定結果の一例を示す図である。
【
図23】従来技術に係る体動密度の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
本実施形態では、Rechtschaffen & Kales(以下、「R&K法」と略称する)法に基づき、睡眠段階を、浅い睡眠から深い睡眠を全6段階に分類する。6段階とは、覚醒(arousal)、レム(REM:Rapid Eye Movement)睡眠、及びノンレム(Non-REM)睡眠段階1~4である。
なお、以下の説明では、ノンレム睡眠段階1~4のうち、ノンレム睡眠段階2、ノンレム睡眠段階3、及びノンレム睡眠段階4を区別せず扱い、ノンレム睡眠段階2と称する場合がある。
【0033】
図1は、本実施形態に係るレム睡眠判定方法の概要の一例を示す図である。レム睡眠判定方法には、ノンレム睡眠除去(ステップS30)と、覚醒除去(ステップS40)と、体動の回数カウント(w分窓、wは所定の自然数)及び移動平均計算(z分窓、zは所定の自然数)(ステップS50)との3つのステップが含まれる。
【0034】
レム睡眠判定方法では、一例として、2種類のデータを入力データとして用いる。1つ目のデータは、一夜の体動データである。2つ目のデータは、ノンレム睡眠段階2判定結果である。
体動データは、生体センサからある一夜の睡眠時に取得される体動の振動値から高周波成分が抽出されることによって取得される。
ノンレム睡眠段階2判定結果は、睡眠時の生体振動データを入力とする機械学習(一例として、ランダムフォレスト(Random Forest:RF))によるノンレム睡眠段階2判定が行われることによって得られる結果である。ここで生体振動データは、生体センサから上記のある一夜の睡眠時に取得される。生体振動データには、心拍の振動値、呼吸の振動値、及び体動の振動値の複合振動値が含まれる。
レム睡眠判定方法では、上記の体動データ、及びノンレム睡眠段階2判定結果を入力として、レム睡眠判定結果を出力する。
【0035】
判定の流れとしては、一夜の体動データとノンレム睡眠段階2判定結果とを入力として受け取る。その後、機械学習(RF)によりノンレム睡眠段階2と判定された時間の体動を除去する(ステップS10)。その後、大きさが上位x%の体動の前後y秒の体動を除去する(ステップS20)。ステップS10、ステップS20の順でレム睡眠に関連する体動を抽出する。
【0036】
その後、加工した体動データに対して、30分窓で体動密度を算出する。ここで体動密度は、所定の時間の間に起こった体動の回数であり、時刻毎に算出される。30分窓で算出される場合、ある時刻における体動密度は、当該時刻の前後15分、計30分間に起こった体動の回数である。
【0037】
算出した体動密度に対してz分窓で移動平均を導出し、体動密度が移動平均を上回った時間帯をレム睡眠と判定する(ステップS30)。ここで、30分窓で体動密度を求めることで機械学習によるノンレム睡眠判定の誤判定の影響を抑えることができるため、機械学習によるノンレム睡眠判定の誤判定もある程度は許容可能である。
【0038】
本実施形態に係るレム睡眠判定方法の流れは、レム睡眠時の体動のみを残せば、その体動の出現頻度でレム睡眠を推定できるという自然な発想に基づいている。レム睡眠判定方法では、レム睡眠時の体動を分離して残すためにステップS10、及びステップS20の処理を行っている。体動の出現頻度導出とその出現頻度の高低からレム睡眠を特定するためにステップS30の処理を行っている。
以下に、各処理の詳細について説明する。
【0039】
[ノンレム睡眠時の体動除去]
本実施形態に係るレム睡眠判定方法ではレム睡眠をはじめとする浅い睡眠時に体動が頻発するという生理的特徴に着目している。ここで
図2に、睡眠段階と体動の大きさとの関係を示す。
図2に示すように、ノンレム睡眠段階2の体動はレム睡眠付近で起きる体動と大きさの特徴が酷似している。そのため、体動の大きさの特徴に基づいてノンレム睡眠段階2の体動を除去することは困難である。そこで、ノンレム睡眠段階2の時間帯を機械学習を用いて判定する。ノンレム睡眠段階2と判定された時間帯の体動をすべて除去することでレム睡眠に関する体動のみを抽出する。
【0040】
図3に、上記のノンレム睡眠時の体動除去の処理によって抽出された体動の例を示す。
図3では、体動データ、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)に基づく睡眠段階、及び機械学習によってノンレム睡眠段階2と判定された範囲を示す。左軸の縦軸は、体動の大きさを示す。右軸の縦軸は、睡眠段階を示す。横軸は、経過時間を示す。時期T1から時期T5をみると、PSGとの結果とは異なる箇所はあるものの、ノンレム睡眠段階2と判定された範囲の体動が除去されていることがわかる。
【0041】
[覚醒時の体動除去]
上述したように、レム睡眠判定方法ではレム睡眠をはじめとする浅い睡眠時に体動が頻発するという生理的特徴に着目しているが、この浅い睡眠時の体動にはレム睡眠による体動だけでなく、覚醒による体動も含まれている。
図4に示すように、覚醒による体動はレム睡眠時の体動と大きさに明確な違いがある。この特徴に着目し、体動の大きさの特徴から覚醒による体動の影響を除去する。
【0042】
まず、一夜の体動データの中で大きさが上位x%の体動は、覚醒による体動の可能性が高いため除去する。さらに大きな体動の影響は一定時間続くことから、除去した体動の前後y秒の体動も同様に除去する。
図5に、上記の覚醒時の体動除去の処理によって抽出された体動の例を示す。
図5では、体動データ、PSGに基づく睡眠段階を示す。左軸の縦軸は、体動の大きさを示す。右軸の縦軸は、睡眠段階を示す。横軸は、経過時間を示す。
【0043】
体動BM1、及び体動BM2は、一夜の体動データの中で大きさが上位x%の体動である。範囲T61及び範囲T62は、体動の大きさ上位x(=1)%である体動BM1の前後y(=60)秒の範囲である。範囲T71及び範囲T72は、体動の大きさ上位x(=1)%である体動BM2の前後y(=60)秒の範囲である。これらの範囲T61及び範囲T62、並びに範囲T71及び範囲T72に含まれる体動をすべて除去する。
【0044】
[体動密度導出とレム睡眠判定]
加工された体動データに対し、体動密度をw分窓(前後15分、スライド幅1秒)で算出する。算出され体動密度に対し、z分窓(前後z/2分、スライド幅1秒)の移動平均を計算し、体動密度が移動平均を上回った時間をレム睡眠と判定する。w分窓は、一例として、30分窓である。z分窓は、一例として、90分窓である。
【0045】
ここで
図6に、30分窓の一例を示す。
図7に、移動平均の一例を示す。
図6では、体動の回数(体動密度)、PSGに基づく睡眠段階を示す。
図7では、体動の回数(体動密度)、移動平均、PSGに基づく睡眠段階を示す。左軸の縦軸は、体動の回数(体動密度)を示す。右軸の縦軸は、睡眠段階を示す。横軸は、経過時間を示す。なお、
図6及び
図7では、経過時間を示すスケールが上述した
図3及び
図5とは異なる。
【0046】
図6に示す30分窓W1は、時刻P1における30分窓である。つまり、時刻P1における体動密度として、時刻P1の前後15分、計30分間に起こった体動の回数が計数される。
図7に示す90分窓W2は、時刻P2における90分窓である。時刻P2における移動平均は、時刻P2の前後45分、計90分間についての移動平均である。
【0047】
図8に、レム睡眠判定方法によるレム睡眠の判定の一例を示す。
図8では、体動密度、移動平均、PSGに基づく睡眠段階を示す。左軸の縦軸は、体動の回数(体動密度)を示す。右軸の縦軸は、睡眠段階を示す。横軸は、経過時間を示す。
【0048】
範囲T81から範囲T86はそれぞれ、体動密度がz分窓の移動平均(破線)を上回った範囲を示す。これら範囲T81から範囲T86が、レム睡眠判定方法で判定されたレム睡眠である。範囲T91から範囲T95は、実際のレム睡眠を示す。レム睡眠判定方法で判定されたレム睡眠と、実際のレム睡眠との類似性が見て取れる。
【0049】
ここで
図9から
図14を参照し、REM睡眠判定の閾値に移動平均を用いる理由について説明する。
体動密度は、被験者ごと、またはレム睡眠ごとに大きく差がある場合がある。そのため、レム睡眠判定の閾値は固定値ではなくz分の移動平均を用いる。移動平均を上回る程度に体動密度が高い時間は、レム睡眠の可能性が高いと考えられる。この根拠に基づいて、体動密度が移動平均を上回る時間帯をレム睡眠と判定している。
【0050】
図9から
図14は、経過時間に対する体動の回数を示す概念図である。
図9では、覚醒の体動、レム睡眠の体動、及びノンレム睡眠段階2の体動が示されている。また、範囲T101、範囲T102、及び範囲T103はそれぞれ実際のレム睡眠を示す。
【0051】
図10では、上述したノンレム睡眠段階2の体動除去、及び覚醒時の体動除去によってそれぞれ、ノンレム睡眠段階2の体動、及び覚醒の体動が除去されている。一方、ノンレム睡眠段階2の体動、及び覚醒の体動だけでなく、レム睡眠の体動のうち、誤って除去されている体動がある。レム睡眠体動B101、及びレム睡眠体動B102は、誤って除去されたレム睡眠の体動を示す。
【0052】
図11に時間窓を用いて算出された体動密度C1を示す。上述したように、体動密度にはレム睡眠ごとに大きく差がある場合がある。
図12では、範囲T102の体動密度は、範囲T101及び範囲T103それぞれの体動密度に比べて低い。そのため、
図13に示すように、レム睡眠判定の閾値として、固定値の閾値TH1を用いた場合、範囲T102はレム睡眠として判定されなくなってしまう。
【0053】
図14に、移動平均MA1を閾値として用いてレム睡眠を判定した場合を示す。移動平均MA1を閾値として用いた場合、範囲T102はレム睡眠として判定されている。つまり、体動密度C1が移動平均MA1を上回る範囲をレム睡眠として判定すれば、体動密度にはレム睡眠ごとに大きく差がある場合であっても、判定し損ねてしまうレム睡眠を減らすことができる。
【0054】
また、
図10に示したように、レム睡眠の体動が誤って除去されてしまう場合がある。その場合であっても、移動平均を用いて判定すれば、一度は誤って除去されたレム睡眠の体動の範囲を、レム睡眠として正しく判定できる可能性がある。
【0055】
[レム睡眠判定装置1の構成]
上述したレム睡眠判定方法は、例えば、レム睡眠判定装置1によって実行される。
図15は、本実施形態に係るレム睡眠判定装置1の構成の一例を示す図である。レム睡眠判定装置1は、パーソナルコンピュータ(Personal Computer:PC)である。レム睡眠判定装置1は、制御部2と、記憶部3とを備える。
【0056】
制御部2は、体動データ取得部20と、ノンレム睡眠体動判定部21と、体動除去部22と、体動密度移動平均算出部23と、レム睡眠判定部24と、出力部25とを備える。これらの機能部はそれぞれ、例えばCPUがROM(Read Only Memory)から読み込んだプログラムをRAM(Random Access Memory)に展開して、当該プログラムに従って処理を実行することにより実現される。当該ROM、当該RAMは、記憶部3に含まれる。
【0057】
体動データ取得部20は、体動データA1を取得する。体動データA1は、睡眠の期間における体動の大きさを時刻毎に示すデータである。本実施形態では、一例として、体動データ取得部20は、まず生体振動データ計測センサ4から生体振動データA2を取得する。生体振動データA2は、睡眠の期間における体動の大きさ、心拍の大きさ、及び呼吸の大きさが合わさった振動値を時刻毎に示すデータである。体動データ取得部20は、取得した生体振動データA2に含まれる体動の大きさの振動値から高周波成分を抽出することによって体動データA1を取得する。
【0058】
ノンレム睡眠体動判定部21は、体動データ取得部20が取得した生体振動データA2から機械学習に基づいて、睡眠の期間のうちノンレム睡眠段階2の期間を判定する。
ノンレム睡眠体動判定部21がノンレム睡眠段階2の判定に用いる機械学習は、教師あり機械学習である。学習済みモデルM1は、予め学習が行われた当該教師あり機械学習のモデルである。学習済みモデルM1は、生体振動データA2が入力されると、睡眠の期間のうちノンレム睡眠段階2の期間を出力する。
【0059】
なお、学習済みモデルM1として、体動データA1が入力されると、睡眠の期間のうちノンレム睡眠段階2の期間を出力する学習済みモデルが用いられてもよい。その場合、体動データ取得部20は、生体振動データA2から体動データのみを取得すればよい。
【0060】
本実施形態では、ノンレム睡眠体動判定部21がノンレム睡眠段階2の判定に用いる機械学習は、一例として、非特許文献2に記載のレム睡眠判定法(Multi-Timescale REM Estimation:MTRE)である。なお、当該機械学習は、MTRE以外のRFであってもよいし、RF以外の教師あり機械学習であってもよい。
【0061】
体動除去部22は、体動データ取得部20によって取得された体動データA1のなかから第1体動データを除去する。第1体動データは、所定の睡眠段階の体動に相当するデータである。
【0062】
本実施形態では、体動除去部22が除去する第1体動データには、ノンレム睡眠段階2体動データが含まれる。ノンレム睡眠段階2体動データは、一例として、ノンレム睡眠段階2の体動に相当するデータである。なお、ノンレム睡眠段階2体動データは、ノンレム睡眠段階3と4の割合が少なく、類似していることから、ノンレム睡眠段階2からノンレム睡眠段階4の体動に相当するデータであってもよい。また、ノンレム睡眠段階2体動データは、ノンレム睡眠段階2、及びノンレム睡眠段階3の体動に相当するデータであってもよい。
【0063】
また、本実施形態では、体動除去部22が除去する第1体動データには、覚醒時体動データが含まれる。覚醒時体動データは、覚醒時の体動に相当するデータである。
【0064】
体動除去部22は、体動データA1のなかからノンレム睡眠段階2体動データと覚醒時体動データとのうち少なくとも一方を除去する。体動除去部22は、体動データA1のなかからノンレム睡眠段階2体動データと覚醒時体動データとの両方を除去する場合、一方を除去してから他方を除去する。体動除去部22は、ノンレム睡眠段階2体動データが除去された体動データA1のなかから覚醒時体動データを除去してもよいし、覚醒時体動データが除去された体動データA1のなかからノンレム睡眠段階2体動データを除去してもよい。
【0065】
体動除去部22が体動データA1のなかから第1体動データを除去する手法は、体動データA1が示す体動の大きさに基づいて除去する手法、または機械学習に基づいて除去する手法のいずれであってもよい。体動の大きさに基づいて除去する手法には、体動の大きさの閾値に基づいて除去する手法と、体動データA1のなかから体動の大きさが上位所定の割合であるデータに基づいて除去する手法とがある。これらの手法の具体例については後述する。
【0066】
例えば、体動除去部22は、ノンレム睡眠体動判定部21によるノンレム睡眠段階2の判定結果に基づいて、体動データ取得部20によって取得された体動データA1のなかからノンレム睡眠段階2体動データを除去する。したがって、体動除去部22は、体動データ取得部20によって取得された体動データA1のなかからノンレム睡眠段階2体動データを機械学習の結果に基づいて除去する。
【0067】
例えば、体動除去部22は、体動データA1のなかから体動データA1が示す体動の大きさに基づいて覚醒時体動データを除去する。本実施形態では、一例として、体動除去部22は、ノンレム睡眠段階2体動データが除去された体動データA1のなかから覚醒時体動データを除去する。また、体動除去部22は、一例として、体動データA1のなかから体動データA1が示す体動の大きさに基づいて覚醒時体動データを除去する。
【0068】
体動密度移動平均算出部23は、体動除去部22によって第1体動データが除去された体動データA1から、体動密度と、移動平均とを算出する。体動密度は、所定の長さの第1時間(一例として、30分)の間に出現した体動の回数を示す。当該移動平均は、所定の長さの第2時間(一例として、90分)あたりの移動平均である。
【0069】
レム睡眠判定部24は、睡眠の期間のうち、体動密度移動平均算出部23によって算出された体動密度が移動平均を上回る期間をレム睡眠の期間として判定する。
【0070】
出力部25は、レム睡眠判定部24による判定結果を出力する。
【0071】
生体振動データ計測センサ4は、生体振動データA2を計測する。生体振動データ計測センサ4は、上述した生体センサである。
生体振動データ計測センサ4は、被験者がベッドマットの下に敷かれて設置されるマット型のセンサである。生体振動データ計測センサ4は、非拘束型のセンサである。
【0072】
[レム睡眠判定処理]
次に
図16を参照し、レム睡眠判定装置1によるレム睡眠判定方法に基づく処理(レム睡眠判定処理)の流れについて説明する。
図16は、本実施形態に係るレム睡眠判定処理の流れ一例を示す図である。レム睡眠判定処理は、制御部2によって実行される。
【0073】
ステップS110:体動データ取得部20は、体動データA1を取得する。一例として、体動データ取得部20は、まず生体振動データ計測センサ4から生体振動データA2を取得する。体動データ取得部20は、取得した生体振動データA2に含まれる体動の大きさの振動値から高周波成分を抽出することによって体動データA1を取得する。
【0074】
ステップS120:体動除去部22は、体動データ取得部20によって取得された体動データA1のなかからノンレム睡眠段階2体動データを機械学習の結果に基づいて除去する。機械学習の結果は、ノンレム睡眠体動判定部21によるノンレム睡眠段階2の判定結果である。
【0075】
なお、当該ノンレム睡眠段階2の判定結果は、レム睡眠判定処理の開始前にノンレム睡眠体動判定部21によって判定が行われて予め記憶部3に記憶されていればよい。なお、ステップS120において、体動データ取得部20による生体振動データA2の取得と、ノンレム睡眠体動判定部21による機械学習に基づくノンレム睡眠段階2の判定とが行われてもよい。
なお、ステップS120の処理は、上述したステップS10の処理に相当する。
【0076】
なお、ノンレム睡眠体動判定部21は、機械学習を用いる代わりに、体動データA1が示す体動の大きさに基づいて、ノンレム睡眠段階2の期間を判定してもよい。例えば、ノンレム睡眠体動判定部21は、体動の大きさが所定の閾値より小さい期間をノンレム睡眠段階2の期間として判定してもよい。
【0077】
ステップS130:体動除去部22は、体動データA1のなかから体動データA1が示す体動の大きさに基づいて覚醒時体動データを除去する。
図16に示す例では、体動除去部22は、ステップS120において体動除去部22によってノンレム睡眠段階2体動データが除去された体動データA1のなかから覚醒時体動データを除去する。
【0078】
また、体動除去部22は、体動データA1のなかから体動データA1が示す体動の大きさに基づいて覚醒時体動データを除去する。ここで体動除去部22は、体動データA1のなかから体動データA1が示す体動の大きさが、上位所定の割合であるデータに基づいて覚醒時体動データとして除去する。体動除去部22は、当該所定の割合であるデータが測定された時刻の前後の所定の範囲を、覚醒時体動データとして除去する。
【0079】
当該所定の割合は、睡眠全体に対する覚醒の割合に基づいて定められることが好ましい。覚醒は睡眠全体の5~15%出現することが知られている。そのため、当該所定の割合は、例えば、体動の大きさ上位1パーセントである体動の前後60秒の範囲となる。なお、当該所定の値の割合は、被験者毎に設定されてもよい。また、当該所定の値の割合は、睡眠全体に対する覚醒の割合に基づかずに設定されてもよい。
【0080】
なお、体動除去部22は、体動データA1のなかから体動データA1が示す体動の大きさが、所定の大きさ(閾値)以上であるデータを覚醒時体動データとして除去してもよい。
【0081】
ここで体動の大きさは、
図4に示したように、睡眠段階に応じて互いに異なる。体動の大きさは、覚醒、ノンレム睡眠段階1、レム睡眠、ノンレム睡眠段階2、ノンレム睡眠段階3、ノンレム睡眠段階4の順に大きい。当該閾値は、例えば、ノンレム睡眠段階1とレム睡眠との境界に対応する体動の大きさとして設定されてよい。また、当該閾値は、例えば、覚醒とノンレム睡眠段階1との境界に対応する体動の大きさとして設定されてもよい。
なお、ステップS130の処理は、上述したステップS20の処理に相当する。
【0082】
ステップS140:体動密度移動平均算出部23は、体動除去部22によって覚醒時体動データが除去された体動データA1から、体動密度と、移動平均とを算出する。体動密度の算出に用いる時間窓の長さは30分である。移動平均の算出に用いる時間窓の長さは、睡眠周期に基づいて決定されることが好ましい。移動平均の算出に用いる時間窓の長さは90分である。したがって、体動密度移動平均算出部23は、睡眠周期に基づいて定められた所定の時間長さの時間窓を用いて移動平均を算出する。
【0083】
ステップS150:レム睡眠判定部24は、睡眠の期間のうち、体動密度移動平均算出部23によって算出された体動密度が移動平均を上回る期間をレム睡眠の期間として判定する。
なお、ステップS140、及びステップS150の処理は、上述したステップS30の処理に相当する。
【0084】
ステップS160:出力部25は、レム睡眠判定部24による判定結果を出力する。出力部25は、例えば表示装置(不図示)に判定結果を出力し、当該表示装置に判定結果を表示させる。なお、出力部25は、外部の情報処理装置(サーバなど)に判定結果を出力してもよい。また、出力部25は、判定結果を記憶部3に記憶させてもよい。
以上で、レム睡眠判定装置1は、レム睡眠判定処理を終了する。
【0085】
なお、体動除去部22は、ノンレム睡眠段階2の判定結果をレム睡眠判定装置1以外の外部装置から取得してもよい。当該外部装置は、ノンレム睡眠体動判定部21と同様の機能を備える。その場合、レム睡眠判定装置1の構成からノンレム睡眠体動判定部21は省略されてもよい。
【0086】
なお、本実施形態では、ノンレム睡眠段階2体動データが除去された体動データA1のなかから覚醒時体動データが除去される場合の一例について説明したが、これに限られない。ノンレム睡眠段階2体動データと覚醒時体動データとで除去される順番は逆であってもよい。つまり、覚醒時体動データが除去された体動データA1のなかからノンレム睡眠段階2体動データが除去されてもよい。その場合、ステップS130の処理の後に、ステップS120の処理が実行される。
【0087】
また、ノンレム睡眠段階2体動データを除去する処理は省略されてもよい。その場合、体動除去部22は、体動データ取得部20によって取得された体動データA1のなかから覚醒時体動データを除去する。なお、その場合、レム睡眠判定装置1の構成からノンレム睡眠体動判定部21、体動除去部22は省略されてもよい。
【0088】
なお、本実施形態では、体動除去部22が体動の大きさに基づいて覚醒時体動データを除去する場合の一例について説明したが、これに限られない。体動除去部22は、機械学習に基づいて、体動データA1のなかから覚醒時体動データを除去してもよい。当該機械学習では、体動データA1が入力されると覚醒の範囲が出力される学習済みモデルが用いられる。
【0089】
なお、本実施形態では、機械学習に基づいてノンレム睡眠段階2体動データを除去する場合の一例について説明したが、これに限られない。体動除去部22は、体動データA1のなかから体動データA1が示す体動の大きさに基づいてノンレム睡眠段階2体動データを除去してもよい。また、体動データA1のなかから体動データA1が示す体動の大きさが、上位所定の割合であるデータに基づいてノンレム睡眠段階2体動データを除去してもよい。ここで当該割合は、睡眠全体に対するノンレム睡眠段階2の割合から定められた割合である。
【0090】
なお、本実施形態では、体動密度と移動平均とが算出される処理(ステップS140)の前に、体動データA1からノンレム睡眠段階2体動データと覚醒時体動データとが予め除去される(ステップS120、及びステップS130)場合の一例について説明したが、これに限られない。ノンレム睡眠段階2体動データと覚醒時体動データとのうちいずれか一方が体動データA1から除去されずに、体動密度と移動平均とが算出される処理(ステップS140)が実行されてもよい。つまり、
図16に示したレム睡眠判定処理からステップS120、及びステップS130の処理のうちいずれか一方が省略されてもよい。
【0091】
なお、レム睡眠判定装置1は、仮想サーバとして実現されてもよい。レム睡眠判定装置1が備える各機能部は、複数のサーバに分散されて備えられてもよい。レム睡眠判定装置1は、クラウドサーバとして実現されてもよい。
【0092】
(実施例)
本実施形態に係るレム睡眠判定方法を用いた実施例として、実験の結果について説明する。
本実施例では、年齢、及び性別の互いに異なる8名を被験者とした。被験者に対し、第1生体センサで計測された心拍数データ、及び体動データと、第2生体センサで計測された生体振動データとに基づいて、従来手法(RSSE、MTRE)と、本実施形態に係るレム睡眠判定方法とのレム睡眠推定結果を比較する。
【0093】
被験者それぞれに対し、PSGを装着し、ベッドマットの下に2種類の生体センサ(第1生体センサ、及び第2生体センサ)を敷いて被験者実験を行った。2種類の生体センサはそれぞれ、マット型のセンサである。これら2種類の生体センサは、それぞれ被験者の胸の真下に来るような位置に、当該2種類のセンサを重ねた状態で使用する。2種類の生体センサは主に胸部の振動を取得する。第1生体センサは毎秒1個、第2生体センサは毎秒16個のセンサ値を出力する。この振動には、呼吸、心拍、及び体動、並びにノイズが含まれている。
【0094】
比較手法(RSSE)では、第1生体センサによって取得されたデータを用いる。比較手法(MTRE)では、第2生体センサによって取得されたデータを用いる。本実施例では両方の生体センサのデータを用いる。第1生体センサ、及び第2生体センサは、生体振動データ計測センサ4の一例である。
【0095】
また、取得したPSGデータは専門の技師に睡眠段階の解析を依頼し、得られた睡眠段階を正解データとした。被験者の年齢層は、20代が2名、30代が1名、40代が4名、50代が1名である。性別は男性が5名、女性が3名である。割合に偏りはあるが、各年齢層(20~50代)と性別を網羅できるよう被験者を決定している。
【0096】
また、睡眠ポリグラフ検査(PSG)について、睡眠環境の変化がもたらす被験者への負担が大きく、睡眠構造や睡眠指標の解析を目的とした場合、第一夜ではなく、第二夜、第三夜以降の記録を採用したほうが良いという見解がある。そのため、本実施例では、データはすべて第二夜以降のものを使用している。
【0097】
睡眠段階推定の評価指標として、一般的には推定の正確性を確認するために、1エポック(30秒)ごとのAccuracy、Precision、Recall、F-measureなどが用いられる。しかし、睡眠周期を推定するにはレム睡眠推定の秒単位の正確性ではなく、大まかにでもレム睡眠を推定できていることが重要である。そのため、本実施形態では、評価指標として第1評価指標と、第2評価指標との2つを用いる。第1評価指標は、本実施形態に係るレム睡眠判定方法、及び従来手法(RSSE、MTRE)で推定したレム睡眠が実際のレム睡眠を捉えられた割合である。第2評価指標:偽陽性(False positive:FP)(実際にはレム睡眠でないのにレム睡眠と判定)の回数である。
【0098】
推定したレム睡眠がPSGに基づくレム睡眠と時間的に重なっていれば、そのレム睡眠は捉えられていると定義する。
第1評価指標について、PSGに基づく睡眠段階ではレム睡眠の間に他の睡眠段階が現れる場合があるが、レム睡眠以外の睡眠段階が表れている時間が5分以内であれば1回のレム睡眠とカウントする。
また、第2評価指標について、レム睡眠は一定時間連続する睡眠段階であるため、推定したレム睡眠の中で5分未満のレム睡眠はカウントしない。
【0099】
図17は、本実施例に係るレム睡眠判定方法によるレム睡眠判定の結果を示す図である。
図17を参照しながら、第1評価指標、第2評価指標の導出方法を説明する。
図17では、体動密度、移動平均、PSGに基づく睡眠段階を示す。左軸の縦軸は、体動の回数(体動密度)を示す。右軸の縦軸は、睡眠段階を示す。横軸は、経過時間を示す。範囲T201から範囲T204がそれぞれ実際のレム睡眠を示している。
【0100】
PSGに基づく睡眠段階より、
図17に示すデータでは一夜に4回のレム睡眠が現れている。そのため、実際のレム睡眠の回数は4回となる。この4回の実際のレム睡眠に対し、本実施形態に係るレム睡眠判定方法で推定したレム睡眠が3回時間的に重なっている。そのため、推定に成功したレム睡眠の回数は3回となる。これに応じて、第1評価指標は3/4=75%と導かれる。また、実際はレム睡眠でない時間をレム睡眠と推定しており、かつ、5分以上連続するレム睡眠の範囲は1つ(入眠から2:30あたりまで)ある。そのため、第2評価指標は1回となる。
【0101】
また、本実験で用いたハイパーパラメータの設定はx=1[%]、y=60[秒]、z=90[分]である。xは覚醒時の体動を除去する際の体動の大きさのパーセンテージである。yは上位x%の体動を除去するときに同時に除去する前後の間隔(単位:秒)である。zは移動平均を求める際の時間窓の長さ(単位:分)である。ここで、覚醒は睡眠全体の5~15%出現することが知られている。この睡眠全体に対する覚醒の割合から、当該覚醒に相当する体動を除去するためにx=1[%]、y=60[秒]と設定している。また、睡眠周期は約90分であることから、その周期内で体動密度の高低を比較するためにz=90[分]と設定している。
【0102】
第1評価指標と、第2評価指標との2つの評価指標について結果を示す。
図18は、第1評価指標の各被験者の結果を示す図である。
図19は、第2評価指標の各被験者の結果を示す図である。また、
図20は、第1評価指標の結果の平均値と標準偏差を示す棒グラフである。
図21は、第2評価指標の結果の平均値と標準偏差を示す棒グラフである。
【0103】
実際のレム睡眠を推定できた回数の割合の平均は、本実施形態に係るレム睡眠判定方法が97±8%、RSSEが80±23%、MTREが84±23%、FPの回数の平均は、本実施形態に係るレム睡眠判定方法が1.9±1.5回、RSSEが2.6±1.4回、RFが4.3±2.0回であった。これより、本実施形態に係るレム睡眠判定方法は従来手法(RSSE、MTRE)と比較して、実際のレム睡眠を判定漏れすることが少ないこと、被験者ごとの推定精度のばらつきが小さいこと、及び、実際にはレム睡眠でない時間をレム睡眠と誤判定する回数が少ないことがわかる。
【0104】
図22は、本実施例に係るレム睡眠判定方法、従来手法(RSSE、MTRE)によるレム睡眠判定結果の一例を示す図である。
図22(A)、
図22(B)、及び
図22(c)はそれぞれ、本実施形態に係るレム睡眠判定方法、RSSE、MTREの推定結果を示す。縦軸は睡眠段階、横軸は経過時間を示す。また、
図22では、各手法で推定したレム睡眠とともに、PSGに基づく睡眠段階が示されている。
【0105】
本実施形態に係るレム睡眠判定方法によって推定したレム睡眠は周期的に実際のレム睡眠を捉えられている。一方、従来手法(RSSE、MTRE)によって推定したレム睡眠は、範囲T301、範囲T302、範囲T303、T304及び範囲T305に示すように、レム睡眠を捉えられていない場合がある。範囲T303では、連続でREMと判定できていない。
【0106】
また、範囲T401、範囲T402、範囲T403、及び範囲T404に示すように、全ての手法において誤判定が起きている。しかしながら、従来手法(RSSE、MTRE)は短時間のレム睡眠を短い間隔で誤判定しており、約90分間隔で周期的に発生するというレム睡眠の特徴を捉えられていない。これは、従来手法(RSSE、MTRE)が睡眠の周期性を考慮しておらず、判定条件さえ満たせば睡眠周期性のないデータであってもレム睡眠と判定してしまうからであると考えられる。
【0107】
これに対して、本実施形態に係るレム睡眠判定方法によって推定したレム睡眠は、実際のレム睡眠の範囲に沿うような比較的長い範囲で得られ、レム睡眠と判定された範囲がそれぞれおおよそ90分間隔で起伏するような睡眠周期性がみられる。
【0108】
以上に説明したように、本実施形態に係るレム睡眠判定装置1は、体動データ取得部20と、体動除去部22と、体動密度移動平均算出部23と、レム睡眠判定部24と、を備える。
体動データ取得部20は、睡眠の期間における体動の大きさを時刻毎に示す体動データA1を取得する。
体動除去部22は、体動データA1のなかから所定の睡眠段階の体動に相当するデータである第1体動データ(本実施形態において、ノンレム睡眠段階2体動データ、及び覚醒時体動データ)を除去する。
体動密度移動平均算出部23は、体動除去部22によって第1体動データが除去された体動データA1から、所定の長さの第1時間(本実施形態において、30分)の間に出現した体動の回数を示す体動密度と、所定の長さの第2時間(本実施形態において、90分)あたりの移動平均とを算出する。
レム睡眠判定部24は、睡眠の期間のうち、体動密度移動平均算出部23によって算出された体動密度が移動平均を上回る期間をレム睡眠の期間として判定する。
【0109】
この構成により、本実施形態に係るレム睡眠判定装置1は、体動データA1のなかからレム睡眠に関連性の低い体動を除去し、残された体動の特徴からレム睡眠を判定できるため、非拘束型のレム睡眠の判定方法においてレム睡眠の判定精度を高めることができる。
【0110】
レム睡眠判定装置1では、レム睡眠に関連性の低い体動を除去された後の残された体動の特徴からレム睡眠を判定する際には、レム睡眠中とその前後の寝返りによる比較的大きな体動が数十分の時間窓の中で複数回出現するという特徴に基づいてレム睡眠を判定している。
さらに、レム睡眠判定装置1では、体動密度が移動平均を上回る期間をレム睡眠の期間として判定するため、体動密度は、被験者ごと、またはレム睡眠ごとに大きく差がある場合であっても、レム睡眠の判定精度を高めることができる。
【0111】
また、本実施形態に係るレム睡眠判定装置1では、第1体動データには、覚醒時の体動に相当するデータである覚醒時体動データが含まれる。
【0112】
この構成により、本実施形態に係るレム睡眠判定装置1は、体動データA1のなかから覚醒時体動データを除去し、残された体動の特徴からレム睡眠を判定できるため、非拘束型のレム睡眠の判定方法において覚醒時体動データを予め除去しない場合に比べてレム睡眠の判定精度を高めることができる。
【0113】
また、本実施形態に係るレム睡眠判定装置1では、体動除去部22は、体動データA1のなかから体動データA1が示す体動の大きさに基づいて覚醒時体動データを除去する。
【0114】
この構成により、本実施形態に係るレム睡眠判定装置1は、レム睡眠に対して覚醒時の体動が大きいという特徴に基づいて体動データA1のなかから覚醒時体動データを除去できるため、従来技術(例えば、非特許文献2に記載のMTRE)のように機械学習に基づいて覚醒の範囲を判定する場合に比べてレム睡眠の判定精度を高めることができる。従来技術のように機械学習に基づいて、レム睡眠以外の睡眠段階を判定する場合、誤判定が頻発し判定結果にばらつきがあった。
【0115】
また、本実施形態に係るレム睡眠判定装置1では、体動除去部22は、体動データA1のなかから体動データA1が示す体動の大きさが、上位所定の割合(本実施形態において、1パーセント)であるデータに基づいて覚醒時体動データを除去する。当該割合は、睡眠全体に対する覚醒の割合から定められた割合である。
【0116】
この構成により、本実施形態に係るレム睡眠判定装置1は、睡眠全体に対する覚醒の割合から定められた割合に基づいて体動データA1のなかから覚醒時体動データを除去できるため、睡眠全体に対する覚醒の割合から定められた割合に基づかない場合に比べてレム睡眠の判定精度を高めることができる。
【0117】
また、本実施形態に係るレム睡眠判定装置1では、第1体動データには、ノンレム睡眠段階2の体動に相当するデータであるノンレム睡眠段階2体動データ(本実施形態において、ノンレム睡眠段階2からノンレム睡眠段階4の体動に相当するデータ)が含まれる。体動除去部22は、体動データ取得部20によって取得された体動データA1のなかからノンレム睡眠段階2体動データを機械学習の結果に基づいて除去する。
【0118】
この構成により、本実施形態に係るレム睡眠判定装置1は、機械学習の結果に基づいて体動データA1のなかからノンレム睡眠段階2体動データを除去できるため、ノンレム睡眠段階2体動データを除去するために機械学習の結果に基づかない場合に比べてレム睡眠の判定精度を高めることができる。上述したように、レム睡眠とノンレム睡眠段階2とは体動の大きさが似ているため、体動の大きさに基づいてレム睡眠とノンレム睡眠段階2とを区別することは難しい。
【0119】
また、本実施形態に係るレム睡眠判定装置1では、体動密度移動平均算出部23は、睡眠周期(本実施形態において、90分)に基づいて定められた所定の時間長さの時間窓を用いて移動平均を算出する。
【0120】
この構成により、本実施形態に係るレム睡眠判定装置1は、睡眠周期内で体動密度の高低を比較できるため、時間窓が睡眠周期に基づいて定められていない場合に比べてレム睡眠の判定精度を高めることができる。
【0121】
なお、上述した実施形態におけるレム睡眠判定装置1の一部、例えば、体動データ取得部20、ノンレム睡眠体動判定部21、体動除去部22、体動密度移動平均算出部23、レム睡眠判定部24、及び出力部25をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、レム睡眠判定装置1に内蔵されたコンピュータシステムであって、オペレーティングシステム(Operating system:OS)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
また、上述した実施形態におけるレム睡眠判定装置1の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。レム睡眠判定装置1の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0122】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0123】
1…レム睡眠判定装置、20…体動データ取得部、22…体動除去部、23…体動密度移動平均算出部、24…レム睡眠判定部、A1…体動データ
【手続補正書】
【提出日】2023-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】