(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129396
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】放熱板、その製造方法およびそれを含む画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20230907BHJP
G03F 7/032 20060101ALI20230907BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20230907BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230907BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230907BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20230907BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230907BHJP
H10K 50/87 20230101ALI20230907BHJP
【FI】
G03F7/11 501
G03F7/032 501
H05B33/02
H05B33/14 A
H10K50/00
H10K50/10
H10K59/00
H10K59/10
H10K50/87
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033485
(22)【出願日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】10-2022-0028252
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514217912
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132,Yakchon-ro,Iksan-si Jeollabuk-do 570-977,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボムチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドクキョム
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジョンミン
【テーマコード(参考)】
2H225
3K107
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AD06
2H225AD24
2H225AE12P
2H225AE13P
2H225AN11P
2H225AN23P
2H225AN36P
2H225AN39P
2H225AN72P
2H225BA02P
2H225BA09P
2H225BA13P
2H225CA21
2H225CA24
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC13
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC31
3K107CC41
3K107EE49
3K107EE62
3K107FF06
3K107FF15
3K107FF17
3K107GG06
3K107GG11
3K107GG26
3K107GG28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属箔、および前記金属箔の少なくとも一方の面に形成された耐腐食パッシベーション膜を含み、前記耐腐食パッシベーション膜は、感光性樹脂組成物から形成される放熱板、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】感光性樹脂組成物から形成された耐腐食パッシベーション膜を有することで放熱効果を発揮しながらも耐腐食性に優れるだけでなく、金属特有の美麗な外観特性を維持することができる放熱板。さらに、金属箔と耐腐食パッシベーション膜との密着性を確保することができ、且つ必要に応じて耐腐食パッシベーション膜のパターニングが可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔、および
前記金属箔の少なくとも一方の面に形成された耐腐食パッシベーション膜を含み、
前記耐腐食パッシベーション膜は感光性樹脂組成物から形成される、放熱板。
【請求項2】
前記金属箔は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、およびインジウム(In)からなる群より選択される金属又はそれらの合金を含む、請求項1に記載の放熱板。
【請求項3】
前記金属箔の厚さは70~150μmである、請求項1に記載の放熱板。
【請求項4】
前記感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、および溶媒を含み、前記アルカリ可溶性樹脂は、エポキシ基を有する繰り返し単位を含むアルカリ可溶性樹脂を含む、請求項1に記載の放熱板。
【請求項5】
前記アルカリ可溶性樹脂は、エポキシ基含有架橋環基を有する繰り返し単位を含む第1のアルカリ可溶性樹脂、および芳香族環基を有する繰り返し単位を含む第2のアルカリ可溶性樹脂を含む、請求項4に記載の放熱板。
【請求項6】
前記耐腐食パッシベーション膜は可視光透過率が89%以上である、請求項1に記載の放熱板。
【請求項7】
前記耐腐食パッシベーション膜の厚さは1~5μmである、請求項1に記載の放熱板。
【請求項8】
前記耐腐食パッシベーション膜がパターニングされている、請求項1に記載の放熱板。
【請求項9】
金属箔の少なくとも一方の面に感光性樹脂組成物を塗布して塗膜を得る段階;
前記塗膜を乾燥する段階;
前記乾燥された塗膜を光硬化する段階;および
前記光硬化された塗膜をポストベークして耐腐食パッシベーション膜を形成する段階を含む、放熱板の製造方法。
【請求項10】
前記光硬化する段階でマスクを用いて光照射を行い、前記光硬化する段階の後に光硬化された塗膜を現像する段階を含む、請求項9に記載の放熱板の製造方法。
【請求項11】
前記感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、および溶媒を含み、前記アルカリ可溶性樹脂は、エポキシ基含有架橋環基を有する繰り返し単位を含む第1のアルカリ可溶性樹脂、および芳香族環基を有する繰り返し単位を含む第2のアルカリ可溶性樹脂を含む、請求項9に記載の放熱板の製造方法。
【請求項12】
前記ポストベークは90~150℃で行われる、請求項9に記載の放熱板の製造方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の放熱板を含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱板、その製造方法およびそれを含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の大型化や高解像度化に伴い部品の単位面積当たりの発熱量が急増しており、そのため関連部品の放熱問題が関心事として台頭している。特に、OLED、ディスプレイなどに使用されるデバイスから発生する熱を効果的に放出できないと、製品の寿命が低下する問題が生じる。
【0003】
そこで、画像表示装置の放熱性を確保するために金属素材の放熱板を使用する方案が提示されている。
【0004】
しかし、金属素材の場合、高い熱伝導度による熱エネルギーの分散には優れるものの、腐食に脆弱であるという問題点がある。
【0005】
そこで、金属素材の耐腐食性を確保するための様々な方案が提案されている。
【0006】
例えば、大韓民国登録特許第10-1532201号は、湿気硬化型ポリウレタン樹脂35~55重量部、ポリマーがコートされたアルミニウムペースト15~25重量部、添加剤1~10重量部、および炭化水素溶媒とアセテート系溶媒25~35重量部を含む金属用耐腐食性塗料組成物を開示している。
【0007】
しかし、耐腐食性塗料組成物は、放熱板が最外郭に位置するときに金属特有の美麗な外観特性を維持し難いという問題点を有する。
したがって、耐腐食性に優れるだけでなく、金属特有の美麗な外観特性を維持することができる金属素材の放熱板の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一目的は、耐腐食性に優れるだけでなく、金属特有の美麗な外観特性を維持することができる放熱板を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記放熱板の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明のまた他の目的は、前記放熱板を含む画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一方で、本発明は、金属箔、および
前記金属箔の少なくとも一方の面に形成された耐腐食パッシベーション(Passivation)膜を含み、
前記耐腐食パッシベーション膜は、感光性樹脂組成物から形成される放熱板を提供する。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記金属箔は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、およびインジウム(In)からなる群より選択される金属又はこれらの合金を含んでよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記金属箔の厚さは70~150μmであってよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、および溶媒を含み、前記アルカリ可溶性樹脂は、エポキシ基を有する繰り返し単位を含むアルカリ可溶性樹脂を含んでよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記アルカリ可溶性樹脂は、エポキシ基含有架橋環基を有する繰り返し単位を含む第1のアルカリ可溶性樹脂、および芳香族環基を有する繰り返し単位を含む第2のアルカリ可溶性樹脂を含んでよい。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記耐腐食パッシベーション膜は可視光透過率が89%以上であってよい。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記耐腐食パッシベーション膜の厚さは1~5μmであってよい。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記耐腐食パッシベーション膜はパターニングされていてよい。
【0019】
他の一方で、本発明は、
金属箔の少なくとも一方の面に感光性樹脂組成物を塗布して塗膜を得る段階;
前記塗膜を乾燥する段階;
前記乾燥された塗膜を光硬化する段階;および
前記光硬化された塗膜をポストベークして耐腐食パッシベーション膜を形成する段階を含む放熱板の製造方法を提供する。
【0020】
本発明の一実施形態に係る製造方法は、前記光硬化する段階でマスクを用いて光照射を行い、前記光硬化する段階の後に光硬化された塗膜を現像する段階を含んでよい。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、および溶媒を含み、前記アルカリ可溶性樹脂は、エポキシ基含有架橋環基を有する繰り返し単位を含む第1のアルカリ可溶性樹脂、および芳香族環基を有する繰り返し単位を含む第2のアルカリ可溶性樹脂を含んでよい。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記ポストベークは90~150℃で行われてよい。
【0023】
また他の一方で、本発明は、前記放熱板を含む画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の放熱板は、感光性樹脂組成物から形成された耐腐食パッシベーション膜を有することで放熱効果を発揮しながらも耐腐食性に優れるだけでなく、金属特有の美麗な外観特性を維持することができる。さらに、本発明の放熱板は、金属箔と耐腐食パッシベーション膜との密着性を確保することができ、且つ必要に応じて耐腐食パッシベーション膜のパターニングが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る放熱板を示したものである。
【
図3】塩水放置後の、耐腐食パッシベーション膜が形成されていない銅箔基材の表面写真である。
【
図4】塩水放置後の、本発明に係る放熱板の銅箔基材の表面写真である。
【
図5】耐腐食パッシベーション膜の360~740nm波長領域の可視光透過率の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0027】
本発明の一実施形態は、金属箔、および
前記金属箔の少なくとも一方の面に形成された耐腐食パッシベーション膜を含み、
前記耐腐食パッシベーション膜は、感光性樹脂組成物から形成される放熱板に関する。
【0028】
本発明の一実施形態に係る放熱板は、感光性樹脂組成物から形成された耐腐食パッシベーション膜を有することで耐腐食性に優れるだけでなく、金属特有の美麗な外観特性を維持することができる。さらに、本発明の一実施形態に係る放熱板は、金属箔と耐腐食パッシベーション膜との密着性を確保することができ、且つ必要に応じて耐腐食パッシベーション膜のパターニングが可能である。
【0029】
熱抵抗は、熱伝達を阻害する性質を数値化したものであって、厚さ/熱伝導率で表される。本発明の放熱板は、熱伝導率の良い金属素材を用いて放熱板の熱抵抗を下げることができ、且つ耐腐食パッシベーション膜を薄膜にて形成して熱抵抗の上昇を最小化することができ、結果として優れた放熱性能を確保することができる。
【0030】
本発明の一実施形態に係る放熱板は、金属箔の少なくとも一方の面に耐腐食パッシベーション膜が積層されてよいが、好ましくは、
図1のように金属箔100の両面に第1の耐腐食パッシベーション膜201と第2の耐腐食パッシベーション膜202とが積層された構造を有する。
【0031】
本発明の一実施形態において、前記金属箔100は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、およびインジウム(In)からなる群より選択される金属又はこれらの合金を含んでよく、好ましくは、電気伝導度に優れ且つ安価な銅薄膜、すなわち銅箔であってよいが、これに限定されるものではない。前記金属箔は、電解によって形成された層であるか圧延によって形成された層であってよい。
【0032】
例えば、前記金属箔は、Cuを90±9重量%、例えば97重量%の量で含み、残量は、前述した他の金属を含む銅合金(Cu alloy)箔であってよい。
前記金属箔の厚さは、本発明において特に限定することではないが、好ましくは、70~150μmであってよい。前記金属箔の厚さが前述した範囲未満であると、十分な放熱特性を確保し難いことがあり、また前記範囲を超えると、放熱板が適用される装置の厚さと重量が増加したり、厚くなった厚さによって却って熱排出が阻害されることがある。
本発明の一実施形態において、前記第1の耐腐食パッシベーション膜201と第2の耐腐食パッシベーション膜202は、それぞれ独立して感光性樹脂組成物から形成される。
【0033】
前記感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、および溶媒を含んでよい。
【0034】
前記アルカリ可溶性樹脂は、通常、光や熱の作用による反応性を有し、パターンを形成する際の現像処理工程で用いられるアルカリ現像液に対して可溶性を付与する成分である。
【0035】
前記アルカリ可溶性樹脂としては、耐腐食性、透過率、および密着性の面からエポキシ基を有する繰り返し単位を含むアルカリ可溶性樹脂を含んでよく、好ましくは、エポキシ基含有架橋環基を有する繰り返し単位を含む第1のアルカリ可溶性樹脂、および芳香族環基を有する繰り返し単位を含む第2のアルカリ可溶性樹脂を含んでよい。
【0036】
前記第1のアルカリ可溶性樹脂は、エポキシ基含有架橋環基を有する繰り返し単位を含む。
【0037】
前記エポキシ基含有架橋環基を有する繰り返し単位は、エポキシ基含有架橋環基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、エポキシ基含有架橋環基を有する(メタ)アクリレート単量体によって導入されてよい。
【0038】
前記第1のアルカリ可溶性樹脂は、エポキシ基含有架橋環基を有する繰り返し単位に加えて、他のエポキシ基含有官能基を有する繰り返し単位をさらに含んでよい。
【0039】
前記他のエポキシ基含有官能基を有する繰り返し単位は、脂肪族又は脂環族エポキシ基含有官能基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、脂肪族又は脂環族エポキシ基含有官能基を有する(メタ)アクリレート単量体によって導入されてよい。
【0040】
また、前記第1のアルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像液への可溶性を確保するためにカルボキシル基含有繰り返し単位を含む。
【0041】
前記カルボキシル基含有繰り返し単位は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体によって導入されてよい。前記カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネートなどのモノカルボン酸類;フマル酸、メサコン酸、イタコン酸などのジカルボン酸類;およびこれらのジカルボン酸の無水物;ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなどの両末端にカルボキシル基と水酸基を有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート類などが挙げられ、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0042】
好ましくは、前記第1のアルカリ可溶性樹脂は、下記化学式1で表される繰り返し単位を含んでよい。
【0043】
【0044】
前記式中、
R1、R2、およびR3は、互いに独立して水素又はメチル基であり、
R4は、下記式(1)~(3)からなる群より選択される単量体に由来する構造であり、
【0045】
【0046】
R5は、下記式(4)~(12)からなる群より選択される単量体に由来する構造であり、
【0047】
【0048】
R6は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造であり、
aは20~70mol%、bは20~60mol%、cは5~30mol%を示す。
【0049】
前記化学式1で表される繰り返し単位の好ましい例としては、下記化学式1-1で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0050】
【0051】
前記式中、
R1、R2、およびR3は、それぞれ独立して水素又はメチル基であり、
aは20~70mol%、bは20~60mol%、cは5~30mol%を示す。
【0052】
前記第2のアルカリ可溶性樹脂は、芳香族環基を有する繰り返し単位を含む。
【0053】
前記芳香族環基を有する繰り返し単位は、芳香族環基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、芳香族環基を有するビニル単量体および/又は芳香族環基を有する(メタ)アクリレート単量体によって導入されてよい。
【0054】
前記第2のアルカリ可溶性樹脂は、エポキシ基無含有架橋環基を有する繰り返し単位およびエポキシ基含有架橋環基を有する繰り返し単位以外の他のエポキシ基含有官能基を有する繰り返し単位をさらに含んでよい。
【0055】
前記エポキシ基無含有架橋環基を有する繰り返し単位は、エポキシ基無含有架橋環基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、エポキシ基無含有架橋環基を有する(メタ)アクリレート単量体によって導入されてよい。
【0056】
前記エポキシ基含有架橋環基を有する繰り返し単位以外の他のエポキシ基含有官能基を有する繰り返し単位は、脂肪族又は脂環族エポキシ基含有官能基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、脂肪族又は脂環族エポキシ基含有官能基を有する(メタ)アクリレートによって導入されてよい。
【0057】
また、前記第2のアルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像液への可溶性を確保するためにカルボキシル基含有繰り返し単位を含む。
【0058】
前記カルボキシル基含有繰り返し単位は、前記第1のアルカリ可溶性樹脂で説明したとおりである。
【0059】
好ましくは、前記第2のアルカリ可溶性樹脂は、下記化学式2で表される繰り返し単位を含んでよい。
【0060】
【0061】
前記式中、
R7、R8、R9、およびR10は、互いに独立して水素又はメチル基であり、
R11は、下記式(13)~(18)からなる群より選択される単量体に由来する構造であり、nは1~5の整数であり、
【0062】
【0063】
R12は、下記式(19)~(23)からなる群より選択される単量体に由来する構造であり、
【0064】
【0065】
R13は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造であり、
R14は、下記式(24)~(32)からなる群より選択される単量体に由来する構造であり、
【0066】
【0067】
dは10~20mol%、eは10~30mol%、fは10~30mol%、gは30~60mol%を示す。
【0068】
前記化学式2で表される繰り返し単位の好ましい例としては、下記化学式2-1で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0069】
【0070】
前記式中、
R7、R8、R9、およびR10は、それぞれ独立して水素又はメチル基であり、
dは10~20mol%、eは10~30mol%、fは10~30mol%、gは30~60mol%を示す。
【0071】
本発明において、「(メタ)アクリル-」は、「メタクリル-」、「アクリル-」又はこれらの両方を指す。
【0072】
本発明において、化学式1および化学式2で表される各繰り返し単位は、化学式1および化学式2で表されたそのものに限定して解釈されてはならず、括弧内のサブ繰り返し単位が定められたmol%の範囲内で鎖のどの位置でも自由に位置してよい。すなわち、化学式1および化学式2の各括弧は、mol%を示すために一つのブロックにて表されているが、各サブ繰り返し単位は、該当の樹脂内であれば制限されることなくブロックにて又はそれぞれ分離して位置されてよい。
【0073】
本発明において、前記式(1)~(32)で表される単量体は、該単量体の異性体を含むものであって、各式で表される単量体が異性体のある場合には、該当の式で表される単量体はその異性体までも含む代表化学式を意味する。
【0074】
前記第1のアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は6,000~12,000であることが好ましい。前記分子量の範囲内で優れた耐腐食性、透過率、および密着性を示すことができる。
【0075】
前記第2のアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は20,000~30,000であることが好ましい。前記分子量の範囲内で優れた耐腐食性、透過率、および密着性を示すことができる。
【0076】
前記第1のアルカリ可溶性樹脂と第2のアルカリ可溶性樹脂の混合重量比は、50:50~90:10であり、好ましくは、70:30~80:20であってよい。前記第1のアルカリ可溶性樹脂の含量が前記下限よりも少なくなると、低温硬化性が低下し且つパターン境界部の段差のたるみ現象により解像度が低下したり、現像後の残渣が発生することがあり、また前記上限よりも多いと、パターン形成性が低下することがあり且つ貯蔵安定性が低下して長期間の保管後に性能が低下することがある。
【0077】
前記第1のアルカリ可溶性樹脂と第2のアルカリ可溶性樹脂は、それぞれ独立して、上述した繰り返し単位のほかにも当該技術分野で公知の他の単量体から形成された繰り返し単位をさらに含んでよい。
【0078】
前記他の単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-o-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-m-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-p-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-o-メチルフェニルマレイミド、N-m-メチルフェニルマレイミド、N-p-メチルフェニルマレイミド、N-o-メトキシフェニルマレイミド、N-m-メトキシフェニルマレイミド、N-p-メトキシフェニルマレイミドなどのN-置換マレイミド系化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類;シクロペンチル(メタ)アクリレート、2-メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレートなどの脂環族(メタ)アクリレート類;3-(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-3-エチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-トリフルオロメチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-フェニルオキセタン、2-(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、2-(メタクリロイルオキシメチル)-4-トリフルオロメチルオキセタンなどの不飽和オキセタン化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上混合して用いられてよい。
【0079】
前記第1のアルカリ可溶性樹脂および第2のアルカリ可溶性樹脂は、酸価がそれぞれ独立して20~200(KOHmg/g)の範囲であることが好ましい。酸価が前記範囲にあると、優れた現像性および経時安定性を示すことができる。
【0080】
前記アルカリ可溶性樹脂の含量は特に限定されないが、例えば、感光性樹脂組成物中の全固形分100重量部に対して、10~90重量部、好ましくは、25~70重量部で含まれてよい。前記の範囲内で含まれると、現像液への溶解性が十分になって現像性に優れ、優れた機械的物性を持つ耐腐食パッシベーション膜を形成できるようにする。
【0081】
前記光重合性化合物は、製造工程中において架橋密度を増加させ、耐腐食パッシベーション膜の機械的特性を強化させる役割をする。
【0082】
前記光重合性化合物は、光および後述する光重合開始剤の作用で重合され得る化合物であって、単官能光重合性化合物、二官能光重合性化合物、又は三官能以上の多官能光重合性化合物などが挙げられる。
【0083】
前記単官能光重合性化合物の具体的な例としては、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、N-ビニルピロリドンなどが挙げられ、市販品としては、アロニックスM-101(東亜合成)、KAYARAD TC-110S(日本化薬)、又はビスコート158(大阪有機化学工業)などが挙げられる。
【0084】
前記二官能光重合性化合物の具体的な例としては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイルオキシエチル)エーテル、3-メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、市販品としては、アロニックスM-210、M-1100、M-1200(東亜合成)、KAYARAD HDDA(日本化薬)、ビスコート260(大阪有機化学工業)、AH-600、AT-600又はUA-306H(共栄社化学社)などが挙げられる。
【0085】
前記三官能以上の多官能光重合性化合物の具体的な例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシル化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどがあり、市販品としては、NK ESTER ATM-4E(新中村化学工業)、NK ESTER A-DPH-12E(新中村化学工業)、A-9570(新中村化学工業)、アロニックスM-309、M-520(東亜合成)、KAYARAD TMPTA、KAYARAD DPHA又はKAYARAD DPHA-40H(日本化薬)などが挙げられる。
【0086】
前記で例示した光重合性化合物は、単独で又は2種以上混合して用いてよい。
【0087】
前記光重合性化合物の含量は特に限定されないが、例えば、感光性樹脂組成物中の全固形分100重量部に対して、10~90重量部で含まれることが好ましく、30~80重量部で含まれることがより好ましい。光重合性化合物が前記の含量範囲で含まれると、優れた耐久性を有することができ、且つ現像性を向上させることができる。
【0088】
前記光重合開始剤は、前記光重合性化合物を重合できるものであれば、その種類を特に制限することなく用いることができる。特に、前記光重合開始剤は、重合特性、開始効率、吸収波長、入手性、価格などの観点から、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ビイミダゾール系化合物、オキシム系化合物、およびチオキサントン系化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を用いることが好ましい。
【0089】
前記アセトフェノン系化合物の具体的な例としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン-1-オン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オンなどが挙げられる。
【0090】
前記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、0-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルスルフィド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどがある。
【0091】
前記トリアジン系化合物の具体的な例としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0092】
前記ビイミダゾール系化合物の具体的な例としては、2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラ(アルコキシフェニル)ビイミドダゾール、2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラ(トリアルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール又は4,4',5,5'位のフェニル基がカルボアルコキシ基で置換されているビイミダゾール化合物などが挙げられる。これらのうち、2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4'、5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールが好ましく用いられる。
【0093】
前記オキシム系化合物の具体的な例としては、o-エトキシカルボニル-α-オキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-オクタンジオン、-1-(4-フェニルチオ)フェニル、-2-(o-ベンゾイルオキシム)、エタノン、-1-(9-エチル)-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル、1-(o-アセチルオキシム)などが挙げられ、市販品として、CGI-124(チバガイギー社)、CGI-224(チバガイギー社)、イルガキュア OXE-01(BASF社)、イルガキュア OXE-02(BASF社)、N-1919(ADEKA社)、NCI-831(ADEKA社)などがある。
【0094】
前記チオキサントン系化合物としては、例えば、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどがある。
【0095】
また、前記光重合開始剤は、前記感光性樹脂組成物の感度を向上させるために、光重合開始助剤をさらに含んでよい。前記感光性樹脂組成物は、光重合開始助剤を含有することにより、感度がさらに高まって生産性を向上させることができる。
【0096】
前記光重合開始助剤としては、例えば、アミン化合物、カルボン酸化合物およびチオール基を有する有機硫黄化合物からなる群より選択される1種以上の化合物が好ましく用いられてよい。
【0097】
前記アミン化合物としては、具体的に、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの脂肪族アミン化合物、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(通称:ミヒラーケトン)、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどの芳香族アミン化合物を用いてよく、特に芳香族アミン化合物を用いることが好ましい。
【0098】
前記カルボン酸化合物は、芳香族ヘテロ酢酸類であることが好ましく、具体的には、フェニルチオ酢酸、メチルフェニルチオ酢酸、エチルフェニルチオ酢酸、メチルエチルフェニルチオ酢酸、ジメチルフェニルチオ酢酸、メトキシフェニルチオ酢酸、ジメトキシフェニルチオ酢酸、クロロフェニルチオ酢酸、ジクロロフェニルチオ酢酸、N-フェニルグリシン、フェノキシ酢酸、ナフチルチオ酢酸、N-ナフチルグリシン、ナフトキシ酢酸などが挙げられる。
【0099】
前記チオール基を有する有機硫黄化合物の具体的な例としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)などが挙げられる。
【0100】
前記光重合開始剤は、感光性樹脂組成物中の全固形分100重量部に対して、0.1~10重量部、好ましくは、0.1~5重量部で含まれてよい。前記光重合開始剤が前記範囲内で含まれると、感光性樹脂組成物が高感度化して露光時間が短縮するため生産性が向上し、且つ高解像度を維持することができる。
【0101】
また、前記光重合開始助剤をさらに用いる場合、前記光重合開始助剤は、感光性樹脂組成物中の全固形分100重量部に対して、0.1~10重量部、好ましくは、0.1~5重量部で含まれてよい。前記光重合開始助剤の使用量が前記範囲内にあると、感光性樹脂組成物の感度がさらに高まり、且つ前記組成物を用いて形成される光硬化膜の生産性が向上することがある。
【0102】
前記感光性樹脂組成物は、多官能チオール化合物をさらに含んでよい。
【0103】
前記多官能チオール化合物は、三官能以上のチオール化合物であって、架橋密度を向上させて耐腐食パッシベーション膜の耐久性および金属基材との密着性を向上させ、且つ高温での黄変現象を防止する機能をする。
【0104】
前記多官能チオール化合物は、三官能以上のチオール化合物であって、感光性樹脂組成物に用いられ得る化合物であれば特に限定されず、四官能以上のチオール化合物が好ましい。例えば、前記多官能チオール化合物は、下記化学式3で表される化合物であってよい。
【0105】
【0106】
前記式中、
Z1は、メチレン基又は炭素数2~10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基又はアルキルメチレン基であり、
Yは、存在しないか、-CO-、-O-CO-又は-NHCO-であり、
Xは、1個又は複数個のエーテル結合を有してよい炭素数2~70のn価の炭化水素基であるか、又は下記化学式4で表される3価の基であり、
nは、3~10の整数であり、
【0107】
【0108】
前記式中、
Z2、Z3、およびZ4は、互いに独立してメチレン基又は炭素数2~6のアルキレン基であり、
「*」は結合手を示す。
【0109】
前記多官能チオール化合物の含量は特に限定されないが、例えば、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、0.1~15重量部、好ましくは、1~10重量部の範囲であってよい。多官能チオール化合物が前記の含量範囲で含まれる場合、優れた低温硬化性能を示すことができる。
【0110】
前記感光性樹脂組成物は、前記成分の他、本発明の目的を損なわない範囲で当業者の必要に応じて他の高分子化合物、硬化剤、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの添加剤を併用することができる。
【0111】
前記感光性樹脂組成物の粘度は20cP以下、例えば、5~20cPであってよい。前記感光性樹脂組成物の粘度が20cPを超えると、コーティング性の低下により塗膜表面の平坦性が不足することがあり、特に、下部基材の表面に異物がある場合、異物部位の段差が増加することがある。
【0112】
前記耐腐食パッシベーション膜は、可視光透過率が89%以上、好ましくは、95%以上であってよい。
【0113】
前記可視光透過率は、可視光全域の波長、例えば、360nm~740nmの範囲における透過率を意味する。
【0114】
前記耐腐食パッシベーション膜の可視光透過率が89%未満であると、金属特有の美麗な外観特性を維持し難いことがある。
【0115】
前記耐腐食パッシベーション膜の厚さは、1~5μm、好ましくは、1.5~2.5μmであってよい。前記耐腐食パッシベーション膜の厚さが1μm未満であると、金属箔の粗さによってコーティングがうまく施されなかったり、外部水分が浸透したり、十分な膜厚の未確保により耐腐食性が低下することがあり、また5μmを超えると、硬化時間が増加して生産性が低下したり、放熱性能が低下することがある。
【0116】
前記金属箔への耐腐食パッシベーション膜の密着力は、ASTM D3359規格で5B水準であってよい。
【0117】
前記金属箔への耐腐食パッシベーション膜の密着力が5B未満であると、耐腐食性が低下したり、外部水分が浸透したり、あるいは後工程の加工段階で膜浮き不良が発生することがある。
【0118】
前記耐腐食パッシベーション膜は、感光性樹脂組成物から形成され、必要に応じてパターニングされていてよい。前記パターニングは、通常のフォトリソグラフィ方法を用いて行われてよい。
【0119】
本発明の一実施形態は、前記放熱板の製造方法に関する。
【0120】
本発明の一実施形態に係る放熱板の製造方法は、
金属箔の少なくとも一方の面に感光性樹脂組成物を塗布して塗膜を得る段階;
前記塗膜を乾燥する段階;
前記乾燥された塗膜を光硬化する段階;および
前記光硬化された塗膜をポストベークして耐腐食パッシベーション膜を形成する段階を含む。
【0121】
前記金属箔および耐腐食パッシベーション膜の構成成分、厚さ、物性などは、前記放熱板で説明したのと同様である。
【0122】
前記感光性樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコーティング法、スロットダイコーティング法、グラビアコーティング法、インクジェットプリンティング、ロール塗布法、スリットアンドスピンコーティング法などが挙げられる。
【0123】
前記塗膜の乾燥(プリベーク)は、一次乾燥で溶媒を揮発させてから光硬化反応サイトを密着させてより円滑に光硬化が行われるようにする工程であり、光硬化塗膜の緻密性の確保に寄与する。これは、90~110℃で1~10分、好ましくは、100℃で2分~5分程度行ってよい。
【0124】
前記プリベークは、オーブン、ホットプレートなどによって加熱することで行われる。
【0125】
前記光硬化は、光照射によって行ってよい。
【0126】
前記耐腐食パッシベーション膜をパターン化する場合は、前記光硬化する段階でマスクを用いて光照射を行い、前記光硬化する段階の後に光硬化された塗膜を現像する段階を含んでよい。
【0127】
このとき、露光部の全体に均一に平行光線が照射され、且つマスクと基板との正確な位置合わせが実施されるように、マスクアライナーやステッパなどの装置を用いることが好ましい。紫外線を照射すると、紫外線が照射された部位の硬化がなされる。
【0128】
前記紫外線としては、g線(波長:436nm)、h線、i線(波長:365nm)などを用いてよく、特にi線(波長:365nm)を用いてよい。紫外線の照射量は、必要に応じて適宜選択されてよく、例えば、70~200mJ/cm2、好ましくは、100~150mJ/cm2であってよい。
【0129】
前記現像は、非露光部分の感光性樹脂組成物を除去する目的から行われ、該現像によって所望のパターンが形成される。
【0130】
前記現像に適合した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液などを用いてよい。特に、KOHを0.01~0.1重量%、例えば、0.045重量%の濃度で含有するアルカリ水溶液を用いて常温で60~120秒間行ってよい。
【0131】
前記現像方法は、液添加法、ディッピング法、スプレー法などのいずれであってもよい。また、現像時に基板を任意の角度に傾けてもよい。
【0132】
現像後に水洗し、ポストベークを行う。
【0133】
ポストベークは、パターニングされた膜の硬化度を高め、パターンのテーパ角のリフローを高めるために行い、90~150℃、好ましくは、90~120℃で20~30分の条件にて熱処理により行われる。高信頼性が求められるとき、200℃までポストベーク温度を上げて過硬化を行うことにより、密着力や硬化度をさらに上昇させることができる。
【0134】
ポストベークは、フリーベークと同様に、オーブン、ホットプレートなどを用いて行う。
【0135】
前記ポストベークを相対的に低温で行うことで生産性や密着力を向上させることができる。
【0136】
本発明の一実施形態は、上述した放熱板を含む画像表示装置に関する。前記画像表示装置としては、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光素子(OLED)などが挙げられるが、これらに限定されることではなく、適用が可能な当技術分野で知られたあらゆる画像表示装置を含んでよい。特に、前記画像表示装置はフレキシブルディスプレイであってよい。
【0137】
以下、実施例、比較例および実験例により本発明をより具体的に説明する。なお、これらの実施例、比較例および実験例は本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらに限定されないことは当業者にとって明らかである。
【0138】
合成例1:第1のアルカリ可溶性樹脂の合成
還流冷却器、滴下漏斗および攪拌機を備えた1Lのフラスコ内に窒素を0.02L/分で流し込んで窒素雰囲気とし、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル250gを入れて攪拌しながら70℃まで加熱した。次いで、下記化学式aおよび化学式bで表される化合物の混合物((モル比は50:50)132.2g(0.60mol)、グリシジルメタクリレート42.7g(0.30mol)およびメタクリル酸8.6g(0.10mol)をジエチレングリコールメチルエチルエーテル100gに溶解して投入した。
【0139】
【0140】
調製された溶液を、滴下漏斗を用いてフラスコ内に滴下した後、重合開始剤の2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)27.9g(0.11mol)をジエチレングリコールメチルエチルエーテル200gに溶解した溶液を、別途の滴下漏斗を用いて4時間に亘ってフラスコ内に滴下した。重合開始剤の溶液の滴下が終了した後、70℃で4時間維持し、その後、室温まで冷却させ、固形分36.7質量%、酸価59mgKOH/g(固形分換算)の下記化学式1-1aで表される繰り返し単位を含む第1のアルカリ可溶性樹脂(A-1)の溶液を得、重量平均分子量(Mw)は8,400、分子量分布は1.89であった。
【0141】
【0142】
前記式中、oは60mol%、pは30mol%、qは10mol%を示す。
【0143】
合成例2:第2のアルカリ可溶性樹脂の合成
還流冷却器、滴下漏斗および攪拌機を備えた1Lのフラスコ内に窒素を0.02L/分で流し込んで窒素雰囲気とし、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルアセテート200gを加えて100℃に昇温した後、スチレン10.4g(0.10モル)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルメタクリレート55.1g(0.25モル)、メタクリル酸12.9g(0.15モル)、グリシジルメタクリレート71.1g(0.50モル)を加えた後、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.0gをジエチレングリコールメチルエチルエーテル100gに溶解させた溶液を滴下ロートから2時間にかけてフラスコに滴下した後、さらに100℃で5時間攪拌を続けた。
反応の終了後、固形分酸価が55mgKOH/gの下記化学式2-1aで表される繰り返し単位を含む第2のアルカリ可溶性樹脂(A-2)を得た。GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は23,500であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。
【0144】
【0145】
前記式中、oは10mol%、pは25mol%、qは15mol%、rは50mol%を示す。
【0146】
製造例1:感光性樹脂組成物の製造
前記合成例1の第1のアルカリ可溶性樹脂9.22重量%、前記合成例2の第2のアルカリ可溶性樹脂3.95重量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート8.78重量%、下記化学式3aで表される多官能チオール化合物0.66重量%、光重合開始剤として2,2'-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4',5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール(B-CIM、保土谷化学工業)0.77重量%および下記化学式4aで表されるオキシム系化合物0.44重量%、溶媒としてジエチレングリコールメチルエチルエーテル26.60重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30.40重量%および3-メトキシ-1-ブタノール19.00重量%、そして酸化防止剤として4,4'-ブチリデンビス[6-tert-ブチル-3-メチルフェノール](BBM-S、住友精密化学)0.18重量%を混合して感光性樹脂組成物を製造した。
【0147】
【0148】
実施例1:放熱板の製造
金属箔として銅箔基材(成分:Cu/Ni合金、Cu 97重量%、Ni 3重量%、厚さ:100μm)の一方の面に前記製造例1の感光性樹脂組成物をスピンコートした後、ホットプレート(Hot plate)を用いて100℃で5分間プリベークを行った。この後、常温に冷却後、石英ガラス製のフォトマスクとの間隔を180μmにしてi線(波長:365nm)を100mJ/cm2で照射した。光照射の後、0.045重量%のKOH水溶液に前記塗膜を常温で60秒間浸漬して現像し、水洗および乾燥の後、クリーンオーブンを用いて110℃で20分間ポストベークを行った。次いで、常温に冷却後、前記銅箔基材の他の一方の面に前記製造例1の感光性樹脂組成物をスピンコートした後、同様な段階を繰り返し行って、銅箔基材の両面に耐腐食パッシベーション膜が形成された放熱板を製造した。
【0149】
実験例1:耐腐食性の評価
前記実施例の放熱板の耐腐食性を、WEISS SC450を用いて金属の塩水腐食加速評価法に従い下記のように評価した。比較のために、耐腐食パッシベーション膜が形成されていない銅箔基材(成分:Cu/Ni合金、Cu 97重量%、Ni 3重量%、厚さ:100μm)の耐腐食性も同様の条件下で評価した。
【0150】
具体的に、製造された放熱板の4面をテープで固定してテスト領域(test area)をオープンし、当該領域に5重量%濃度の塩水(NaCl)を連続噴霧して35℃で72時間放置してから、放置前後の表面状態を比較して腐食の程度を判断した。
【0151】
実施例の放熱板の耐腐食性は、塩水噴霧下で放置した後、銅箔基材の表面の腐食発生部位を確認して評価した。
【0152】
【0153】
図2は、塩水放置前の銅箔基材の表面写真である。
図3は、塩水放置後の、耐腐食パッシベーション膜が形成されていない銅箔基材の表面写真であり、
図4は、塩水放置後の、実施例1の放熱板の銅箔基材の表面写真である。
【0154】
図2~
図4から、本発明に係る感光性樹脂組成物から形成される耐腐食パッシベーション膜を含む実施例1の放熱板は耐腐食性に優れるのに対し、耐腐食パッシベーション膜が形成されていない銅箔基材の耐腐食性は不良であることが確認できる。
【0155】
実験例2:透過率
透過率は、分光測色計(Minolta CM-3600A)を用いて測定した。
【0156】
試料の測定前に大気(air)下でホワイト補正(White Calibration)を行い、試料のない状態で100%の透過率が出るか否かを確認した。この後、試料を載置して360~740nmの波長域の透過率を測定した。
金属箔に耐腐食パッシベーション膜を塗布してから透過率を測定すると、金属箔によって透過率の確認が不可能であり、耐腐食パッシベーション膜を基材なしに形成することはできないため、光学用透明基材(23μmのPET)の透過率と透明基材に塗布された耐腐食パッシベーション膜の透過率とを比較して透過率を得た。
【0157】
【0158】
図5から、耐腐食パッシベーション膜が可視光(360~740nm)波長帯で89%以上の透過率を示すことが確認できる。
【0159】
実験例3:密着力
密着力の評価は、標準規格ASTM D3359の規格に準拠して実施した。
具体的に、耐腐食パッシベーション膜の上面に1mm間隔で横と縦方向にそれぞれ11本ずつカッターで切り込みを入れて裁断して横縦それぞれ1mmの100個の正方形格子を形成した。その後、ニチバン社(Nichiban)のCT-24接着テープを前記裁断した面に貼り付けてから該接着テープを剥がし取るときに一緒に剥離される面の状態を測定し、下記基準で評価した。
【0160】
<評価基準>
5B:剥離された面がない場合
4B:剥離された面が総面積に対して5%未満である場合
3B:剥離された面が総面積に対して5%以上15%未満である場合
2B:剥離された面が総面積に対して15%以上35%未満である場合
1B:剥離された面が総面積に対して35%以上65%未満である場合
0B:剥離された面が総面積に対して65%以上である場合
その結果、本発明に係る感光性樹脂組成物から形成される耐腐食パッシベーション膜を含む実施例1の放熱板は、5B水準の密着力を示すことが確認された。
【符号の説明】
【0161】
100:金属箔
201:第1の耐腐食パッシベーション膜
202:第2の耐腐食パッシベーション膜