(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012944
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】媒体搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/52 20060101AFI20230119BHJP
B65H 3/54 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B65H3/52 330B
B65H3/54 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116720
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】大塚 翔太
(72)【発明者】
【氏名】庭田 智行
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA03
3F343FB01
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JD22
3F343JD33
3F343KB05
3F343LA04
3F343LA15
3F343LC25
3F343LD24
3F343MB04
3F343MB14
3F343MC07
3F343MC12
(57)【要約】
【課題】消費電力を低減させつつ、適切な力で分離ローラを給送ローラ側に押圧し続けることが可能な媒体搬送装置を提供する。
【解決手段】媒体搬送装置は、媒体を給送する給送ローラと、給送ローラに対向して配置される分離ローラと、電力が供給されることによって駆動力を発生するモータと、駆動力に従って第1方向に回転して分離ローラを給送ローラ側に押圧するカム部材と、モータとカム部材との間に設けられ、駆動力をモータからカム部材へ伝達し、且つ、モータへの電力の供給が遮断されてもカム部材を第1方向と反対の第2方向に回転させずに、カム部材が分離ローラを給送ローラ側に押圧し続けるように設けられた駆動力伝達部と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を給送する給送ローラと、
前記給送ローラに対向して配置される分離ローラと、
電力が供給されることによって駆動力を発生するモータと、
前記駆動力に従って第1方向に回転して前記分離ローラを前記給送ローラ側に押圧するカム部材と、
前記モータと前記カム部材との間に設けられ、前記駆動力を前記モータから前記カム部材へ伝達し、且つ、前記モータへの電力の供給が遮断されても前記カム部材を前記第1方向と反対の第2方向に回転させずに、前記カム部材が前記分離ローラを前記給送ローラ側に押圧し続けるように設けられた駆動力伝達部と、
を有することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記駆動力伝達部は、ウォーム及びウォームホイールを含むウォームギアを含む、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記駆動力伝達部は、トルクリミッタを含む、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記駆動力伝達部は、減速ギアを含む、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記駆動力伝達部は、ラチェットギアを含む、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記駆動力伝達部は、ワンウェイクラッチを含む、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
前記分離ローラを支持する支持部と、
一端が前記カム部材に取り付けられ、且つ、他端が前記支持部に取り付けられた第1弾性部材と、
一端が固定され、且つ、他端が前記支持部に取り付けられた第2弾性部材と、をさらに有する、請求項1~6の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
前記カム部材の回転量を測定する測定部と、
作業者による前記カム部材の位置の設定を受け付けたときに前記測定部により測定された回転量に基づく値を設定する設定部と、をさらに有する、請求項1~7の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置に関し、特に、給送ローラ及び分離ローラを用いて媒体を給送する媒体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体を搬送しながら撮像するスキャナ等の媒体搬送装置は、給送ローラ及び分離ローラを用いて複数の媒体を分離する機能を有する。このような媒体搬送装置では、媒体を良好に分離できるように、分離ローラを給送ローラ側に適切に押圧させる必要がある。分離ローラを給送ローラ側に押圧させる力は、部品毎のばらつき又はローラの摩耗状態等に応じて変化するため、装置毎に調整される必要がある。従来、媒体搬送装置は、モータが発生させた駆動力を用いて、分離ローラを給送ローラ側に押圧させる力を調整しつつ、調整した力で分離ローラを給送ローラ側に押圧し続けるようにモータを制御していた。
【0003】
分離ローラとトルクリミッタ付きのリタードローラとによる用紙分離機構を備え、リタードローラを分離ローラに対して接離する方向に付勢して両者の間の押圧力を変更できる給紙装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
媒体搬送装置では、消費電力を低減させつつ、適切な力で分離ローラを給送ローラ側に押圧し続けることが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、消費電力を低減させつつ、適切な力で分離ローラを給送ローラ側に押圧し続けることが可能な媒体搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る媒体搬送装置は、媒体を給送する給送ローラと、給送ローラに対向して配置される分離ローラと、電力が供給されることによって駆動力を発生するモータと、駆動力に従って第1方向に回転して分離ローラを給送ローラ側に押圧するカム部材と、モータとカム部材との間に設けられ、駆動力をモータからカム部材へ伝達し、且つ、モータへの電力の供給が遮断されてもカム部材を第1方向と反対の第2方向に回転させずに、カム部材が分離ローラを給送ローラ側に押圧し続けるように設けられた駆動力伝達部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、媒体搬送装置は、消費電力を低減させつつ、適切な力で分離ローラを給送ローラ側に押圧し続けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【
図3】駆動力伝達機構130等について説明するための模式図である
【
図4】ウォーム132等について説明するための模式図である。
【
図7】内側筐体120から取り外した状態の付圧機構140を示す斜視図である。
【
図8】駆動力伝達機構130及び付圧機構140を上流側から見た模式図である。
【
図9】媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【
図10】記憶装置160及び処理回路170の概略構成を示す図である。
【
図11】設定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図12】媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図13】他の駆動力伝達機構230について説明するための模式図である。
【
図14】他の駆動力伝達機構330について説明するための模式図である。
【
図15】他の駆動力伝達機構430等について説明するための模式図である。
【
図16】(A)、(B)はラチェットギア432について説明するための模式図である。
【
図17】付圧機構440について説明するための模式図である。
【
図18】付圧機構440について説明するための模式図である。
【
図19】他の駆動力伝達機構530等について説明するための模式図である。
【
図20】他の実施形態に係る処理回路670の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一側面に係る媒体搬送装置について図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0011】
図1は、イメージスキャナとして構成された媒体搬送装置100を示す斜視図である。媒体搬送装置100は、原稿である媒体を搬送し、撮像する。媒体は、用紙、薄紙、厚紙又はカード等である。媒体搬送装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。なお、搬送される媒体は、原稿でなく印刷対象物等でもよく、媒体搬送装置100はプリンタ等でもよい。
【0012】
媒体搬送装置100は、第1筐体101、第2筐体102、載置台103、排出台104、操作装置105及び表示装置106等を備える。
【0013】
第1筐体101は、媒体搬送装置100の上側に配置され、媒体つまり時、媒体搬送装置100内部の清掃時等に開閉可能なようにヒンジにより第2筐体102に係合している。
【0014】
載置台103は、搬送される媒体を載置可能に第2筐体102に係合している。載置台103は、第2筐体102の媒体供給側の側面に、不図示のモータによって略鉛直方向(高さ方向)A1に移動可能に設けられる。排出台104は、排出された媒体を保持可能に第1筐体101上に形成され、排出された媒体を積載する。
【0015】
操作装置105は、ボタン等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による入力操作を受け付け、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。表示装置106は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。
【0016】
図1において矢印A2は媒体搬送方向を示し、矢印A3は媒体排出方向を示し、矢印A4は媒体搬送方向と直交する幅方向を示す。以下では、上流とは媒体搬送方向A2又は媒体排出方向A3の上流のことをいい、下流とは媒体搬送方向A2又は媒体排出方向A3の下流のことをいう。
【0017】
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0018】
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、第1媒体センサ111、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114、第2媒体センサ115、第3媒体センサ116、第1~第8搬送ローラ117a~h、第1~第8従動ローラ118a~h及び撮像装置119等を有している。
【0019】
なお、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114、第1~第8搬送ローラ117a~h及び/又は第1~第8従動ローラ118a~hのそれぞれの数は一つに限定されず、複数でもよい。その場合、複数のピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114、第1~第8搬送ローラ117a~h及び/又は第1~第8従動ローラ118a~hは、それぞれ幅方向A4に間隔を空けて並べて配置される。
【0020】
第1筐体101の、第2筐体102と対向する面は媒体の搬送路の第1ガイド101aを形成し、第2筐体102の、第1筐体101と対向する面は媒体の搬送路の第2ガイド102aを形成する。
【0021】
第1媒体センサ111は、載置台103に、即ち給送ローラ113及び分離ローラ114より上流側に配置され、載置台103における媒体の載置状態を検出する。第1媒体センサ111は、媒体が接触している場合、又は、媒体が接触していない場合に所定の電流を流す接触検知センサにより、載置台103に媒体が載置されているか否かを判別する。第1媒体センサ111は、載置台103に媒体が載置されている状態と載置されていない状態とで信号値が変化する第1媒体信号を生成して出力する。なお、第1媒体センサ111は接触検知センサに限定されず、第1媒体センサ111として、光検知センサ等の、媒体の有無を検出可能な他の任意のセンサが使用されてもよい。
【0022】
ピックローラ112は、第1筐体101に設けられ、媒体搬送路と略同一の高さまで上昇した載置台103に載置された媒体と接触して、その媒体を下流側に向けて給送する。
【0023】
給送ローラ113は、第1筐体101内に、ピックローラ112より下流側に設けられ、載置台103に載置されてピックローラ112により給送された媒体をさらに下流側に向けて給送する。分離ローラ114は、いわゆるブレーキローラ又はリタードローラであり、第2筐体102内に、給送ローラ113に対向して配置される。給送ローラ113及び分離ローラ114は、媒体の分離動作を行い、媒体を分離して一枚ずつ給送する。給送ローラ113は、分離ローラ114に対して上側に配置されており、媒体搬送装置100は、いわゆる上取り方式により媒体を給送する。なお、給送ローラ113は、分離ローラ114に対して下側に配置され、いわゆる下取り方式により媒体を給送してもよい。
【0024】
第2媒体センサ115は、給送ローラ113及び分離ローラ114より下流側且つ第1搬送ローラ117a及び第1従動ローラ118aより上流側、即ち撮像装置119より上流側に配置され、その位置に搬送された媒体を検出する。第2媒体センサ115は、給送ローラ113及び分離ローラ114より下流側であれば、搬送経路内の何れの位置に配置されてもよい。第2媒体センサ115は、媒体搬送路に対して一方の側(例えば第2筐体102側)に設けられた発光器及び受光器と、媒体搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置(例えば第1筐体101側)に設けられた導光管とを含む。発光器は、LED(Light Emitting Diode)等であり、媒体搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、フォトダイオード等であり、発光器により照射され、導光管により導かれた光を受光する。第2媒体センサ115と対向する位置に媒体が存在するときは、発光器から照射された光は媒体により遮られるため、受光器は発光器から照射された光を受光しない。受光器は、受光する光の強度に基づいて、第2媒体センサ115の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで信号値が変化する第2媒体信号を生成して出力する。
【0025】
第3媒体センサ116は、第2媒体センサ115より下流側且つ第1搬送ローラ117a及び第1従動ローラ118aより上流側、即ち撮像装置119より上流側に配置され、その位置に搬送された媒体を検出する。第3媒体センサ116は、第2媒体センサ115より下流側であれば、搬送経路内の何れの位置に配置されてもよい。第3媒体センサ116は、媒体搬送路に対して一方の側(例えば第2筐体102側)に設けられた発光器及び受光器と、媒体搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置(例えば第1筐体101側)に設けられた導光管とを含む。発光器は、LED等であり、媒体搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、フォトダイオード等であり、発光器により照射され、導光管により導かれた光を受光する。第3媒体センサ116と対向する位置に媒体が存在するときは、発光器から照射された光は媒体により遮られるため、受光器は発光器から照射された光を受光しない。受光器は、受光する光の強度に基づいて、第3媒体センサ116の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで信号値が変化する第3媒体信号を生成して出力する。
【0026】
なお、第2媒体センサ115及び/又は第3媒体センサ116において、導光管の代わりに、ミラー等の反射部材が使用されてもよい。また、第2媒体センサ115及び/又は第3媒体センサ116において、発光器及び受光器は、媒体搬送路を挟んで対向して設けられてもよい。また、第2媒体センサ115及び/又は第3媒体センサ116は、媒体が接触している場合、又は、媒体が接触していない場合に所定の電流を流す接触検知センサ等により、媒体の存在を検出してもよい。
【0027】
第1~第8搬送ローラ117a~h及び第1~第8従動ローラ118a~hは、給送ローラ113及び分離ローラ114より下流側に設けられ、給送ローラ113及び分離ローラ114により給送された媒体を下流側に向けて搬送する。
【0028】
撮像装置119は、媒体搬送路を挟んで相互に対向して配置された第1撮像装置119a及び第2撮像装置119bを含む。第1撮像装置119aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を有する等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)によるラインセンサを有する。また、第1撮像装置119aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置119aは、搬送される媒体の表面を撮像して入力画像を生成し、出力する。
【0029】
同様に、第2撮像装置119bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を有する等倍光学系タイプのCISによるラインセンサを有する。また、第2撮像装置119bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、A/D変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置119bは、搬送される媒体の裏面を撮像して入力画像を生成し、出力する。
【0030】
媒体搬送装置100は、第1撮像装置119a及び第2撮像装置119bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。
【0031】
載置台103に載置された媒体は、ピックローラ112、給送ローラ113がそれぞれ媒体給送方向A5、A6に回転することによって、第1ガイド101aと第2ガイド102aの間を媒体搬送方向A2に向かって搬送される。一方、分離ローラ114が媒体給送方向の反対方向A7に回転することによって、載置台103に複数の媒体が載置されている場合、載置台103に載置されている媒体のうち給送ローラ113と接触している媒体のみが分離される。
【0032】
媒体は、第1ガイド101aと第2ガイド102aによりガイドされながら、第1~第2搬送ローラ117a~117bが矢印A8~A9の方向に回転することによって、撮像装置119の撮像位置に送り込まれ、撮像装置119によって撮像される。さらに、媒体は、第3~第8搬送ローラ117c~117hがそれぞれ矢印A10~A15の方向に回転することによって排出台104上に排出される。
【0033】
図3は、駆動力伝達機構130及び付圧機構140について説明するための模式図である。
図3は、分離ローラ114の周辺を上流側から見た模式図である。
【0034】
図3に示すように、媒体搬送装置100は、内側筐体120、第1モータ121、駆動力伝達機構130及び付圧機構140をさらに有する。
【0035】
内側筐体120は、分離ローラ114の下方に配置され、第2筐体102内に固定される。
【0036】
第1モータ121は、モータの一例であり、後述する処理回路からの制御に従って、電力が供給されることによって、回転軸121aを回転させて、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧させるための駆動力を発生する。
【0037】
駆動力伝達機構130は、駆動力伝達部の一例であり、第1モータ121と、付圧機構140が有するカム部材141との間に設けられ、第1モータ121により発生された駆動力をカム部材141へ伝達する。駆動力伝達機構130は、ベルト131、ウォーム132及びウォームホイール133及びカム部材シャフト134等を含む。
【0038】
ベルト131は、第1モータ121の回転軸121aとウォーム132の回転軸であるウォームシャフト132aとの間に吊架される。ウォーム132及びウォームホイール133は、ウォームギアを構成する。ウォーム132は、ベルト131を介して、第1モータ121の回転に伴って回転するように設けられる。ウォームホイール133は、ウォーム132と歯合するように設けられ、且つ、カム部材シャフト134に取り付けられる。カム部材シャフト134は、カム部材141の回転軸である。カム部材シャフト134は、幅方向A4に延伸する棒状部材であり、ウォームホイール133の回転に伴って回転するように、内側筐体120に支持される。
【0039】
図4は、ウォーム132及びウォームホイール133について説明するための模式図である。
【0040】
図4に示すように、ウォーム132は、円筒ウォームであり、ウォーム132の側面には、ねじ状の歯車が形成される。ウォームホイール133は、ウォーム132の側面に形成されたねじ状の歯車に歯合する斜歯を有する。これにより、ウォームホイール133は、ウォーム132の回転に伴って回転する。一方、ウォーム132の溝の進み角は、ウォームホイール133側からウォーム132側へ回転が伝達できない大きさに設定される。そのため、ウォーム132は、ウォームホイール133側からの回転に従って回転しない。
【0041】
図5は、
図3の付圧機構140をA-A’線断面で切断して側方から見た斜視図である。
図6は、
図3の付圧機構140をA-A’線断面で切断して側方から見た側面図である。
図6には、分離ローラ114に加えて、ピックローラ112、給送ローラ113、第1~第2搬送ローラ117a~b及び第1~第2従動ローラ118a~bが示されている。
図7は、内側筐体120から取り外した状態の付圧機構140を示す斜視図である。
【0042】
図3及び
図5~
図7に示すように、付圧機構140は、第1モータ121により発生され、駆動力伝達機構130により伝達された駆動力に従って、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧させるための機構である。付圧機構140は、カム部材141、支持部材142、第1弾性部材143、第2弾性部材144及びカム部材センサ145等を有する。
【0043】
カム部材141は、カム部材シャフト134の回転に従って回転(揺動)するように、カム部材シャフト134に取り付けられる。カム部材141は、係合部141a及び被検出部141bを有する。係合部141aは、第1弾性部材143を取り付けるための凹部である。被検出部141bは、カム部材141の回転(揺動)に連動して回転(揺動)する板状部材である。
【0044】
支持部材142は、支持部の一例であり、内側筐体120に揺動可能に支持され、分離ローラ114を支持する。支持部材142は、第1板状部材142a、第2板状部材142b、支持部材シャフト142c、第1係合部材142d及び第2係合部材142e等を有する。
【0045】
第1板状部材142a及び第2板状部材142bは、それぞれ幅方向A4と直交する方向に延在するように、幅方向A4に間隔を空けて並べて配置される。第1板状部材142a及び第2板状部材142bのそれぞれの上流側且つ上側の端部には、分離ローラ114の回転軸である分離ローラシャフト114aが取り付けられる。また、第1板状部材142a及び第2板状部材142bの内側の面には、支持部材シャフト142c、第1係合部材142d及び第2係合部材142eのそれぞれの幅方向A4の端部が取り付けられる。
【0046】
支持部材シャフト142cは、支持部材142の揺動軸であり、幅方向A4に延伸する棒状部材である。支持部材シャフト142cは、内側筐体120に回転可能に支持され、支持部材シャフト142cの幅方向A4の両端は、第1板状部材142a及び第2板状部材142bの内側の面に取り付けられる。これにより、第1板状部材142a及び第2板状部材142bに取り付けられた分離ローラシャフト114a及び分離ローラ114は、支持部材シャフト142cの回転に従って、内側筐体120に対して揺動可能に支持される。
【0047】
第1係合部材142dは、幅方向A4に延伸する棒状部材であり、第1係合部材142dの幅方向A4の両端は、第1板状部材142a及び第2板状部材142bの内側の面に取り付けられる。
【0048】
第2係合部材142eは、幅方向A4に延伸する棒状部材であり、第2係合部材142eの幅方向A4の両端は、第1板状部材142a及び第2板状部材142bの内側の面に取り付けられる。
【0049】
第1弾性部材143は、引張コイルばね等であり、第1弾性部材143の一端は、カム部材141の係合部141aに取り付けられ、第1弾性部材143の他端は、支持部材142の第1係合部材142dに取り付けられる。第1弾性部材143は、カム部材シャフト134及びカム部材141の回転に伴って引っ張られ、第1係合部材142dに、上流側に向かう力を付与する。なお、第1弾性部材143は、カム部材141の回転によって、第1係合部材142dに、上流側に向かう力を付与するものであればどのようなものでもよく、圧縮コイルばね、板ばね等の、引張コイルばね以外のばねでもよい。また、第1弾性部材143は、ゴム等の、ばね以外の弾性部材でもよい。
【0050】
第2弾性部材144は、ねじりコイルばね等であり、支持部材シャフト142cに取り付けられる。第2弾性部材144の一端は、内側筐体120に固定され、第2弾性部材144の他端は、支持部材142の第2係合部材142eに取り付けられ、第2弾性部材144は、第2係合部材142eに、上方に向かう力を付与する。なお、第2弾性部材144は、第2係合部材142eに、上方に向かう力を付与するものであればどのようなものでもよく、圧縮コイルばね、板ばね等の、ねじりコイルばね以外のばねでもよい。また、第2弾性部材144は、ゴム等の、ばね以外の弾性部材でもよい。
【0051】
カム部材センサ145は、発光器145a及び受光器145bを有する。発光器145a及び受光器145bは、対向し且つその間にカム部材141の被検出部141bが進入可能に設けられる。発光器145aは、LED等であり、受光器145bに向けて光を照射する。一方、受光器145bは、フォトダイオード等であり、発光器145aにより照射された光を受光する。発光器145aと受光器145bの間に被検出部141bが存在するときは、発光器145aから照射された光は被検出部141bにより遮られるため、受光器145bは発光器145aから照射された光を受光しない。受光器145bは、受光する光の強度に基づいて、発光器145aと受光器145bの間に被検出部141bが存在する状態と存在しない状態とで信号値が変化するカム部材信号を生成して出力する。
【0052】
以下、付圧機構140及び駆動力伝達機構130の動作について説明する。
【0053】
図8は、駆動力伝達機構130及び付圧機構140を上流側から見た模式図である。
【0054】
図8に示すように、第1モータ121へ電力が供給されて、第1モータ121が矢印A21の方向に回転すると、ベルト131及びウォームシャフト132aを介してウォーム132が矢印A21の方向に回転する。ウォーム132の回転に伴ってウォームホイール133が矢印A22の方向に回転し、カム部材シャフト134を介してカム部材141が矢印A22の方向に回転(揺動)する。
【0055】
図5に示すように、カム部材141が矢印A22の方向に回転(揺動)すると、第1弾性部材143が矢印A23の方向(上流側)に引っ張られ、第1係合部材142dには、第1弾性部材143によって、矢印A23の方向に向かう力が付与される。第1係合部材142dに矢印A23の方向に向かう力が付与されることにより、支持部材142の上流側且つ上側の端部に取り付けられた分離ローラ114は矢印A24の方向に押圧され、給送ローラ113側に押圧される。
【0056】
このように、カム部材141は、第1モータ121が発生した駆動力に従って矢印A22の方向に回転して分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧する。矢印A22の方向は第1方向の一例である。
【0057】
また、第2係合部材142eには、第2弾性部材144によって、矢印A25の方向(上方)に向かう力が付与される。第2係合部材142eに矢印A25の方向に向かう力が付与されることにより、支持部材142の上流側且つ上側の端部に取り付けられた分離ローラ114は矢印A24の方向に押圧され、給送ローラ113側に押圧される。
【0058】
一方、
図8に示すように、第1モータ121が矢印A21の反対方向に回転すると、ベルト131及びウォームシャフト132aを介してウォーム132が矢印A21の反対方向に回転する。ウォーム132の回転に伴ってウォームホイール133が矢印A22の反対方向に回転し、カム部材シャフト134を介してカム部材141が矢印A22の反対方向に揺動する。
【0059】
図5に示すように、カム部材141が矢印A22の反対方向に揺動すると、第1弾性部材143によって第1係合部材142dに付与される矢印A23の方向に向かう力は低減する。第1係合部材142dに付与される矢印A23の方向に向かう力が低減することにより、支持部材142の上流側且つ上側の端部に取り付けられた分離ローラ114に付与される給送ローラ113を押圧する力が低減する。
【0060】
このように、カム部材141は、第1モータ121が発生した駆動力に従って矢印A22の方向又は矢印A22の反対方向に回転して、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧させる力を調整する。矢印A22の反対方向は、第1方向と反対の第2方向の一例である。
【0061】
一方、
図5に示すように、カム部材141は、第1弾性部材143を矢印A23の方向に引っ張っており、逆に、カム部材141及びカム部材シャフト134には、第1係合部材142dによって、矢印A23の反対方向に向かう力が付与される。しかしながら、上記したように、ウォームホイール133側からの回転はウォーム132側へ伝達されない。そのため、第1モータ121への電力の供給が遮断された場合でも、カム部材141及びカム部材シャフト134は矢印A22の反対方向に回転せずに、カム部材141は分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧させ続ける。
【0062】
このように、ウォーム132及びウォームホイール133は、第1モータ121への電力の供給が遮断されても、カム部材141を矢印A22の反対方向に回転させずに、カム部材141が分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧し続けるように設けられる。したがって、媒体搬送装置100は、第1モータ121を制御して、分離ローラ114をセットした後は、第1モータ121への電力の供給を遮断することが可能となり、消費電力を低減させることが可能となる。
【0063】
図9は、媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0064】
媒体搬送装置100は、前述した構成に加えて、第2モータ151、インタフェース装置152、記憶装置160及び処理回路170等をさらに有する。
【0065】
第2モータ151は、一又は複数のモータを含み、処理回路170からの制御信号によって、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114、第1~第8搬送ローラ117a~hを回転させて媒体を給送及び搬送させる。なお、第1~第8従動ローラ118a~hは、第1~第8搬送ローラ117a~hの回転に従って従動回転するのでなく、第2モータ151からの駆動力によって回転するように設けられてもよい。また、第2モータ151は、処理回路170からの制御信号によって、載置台103を移動させる。
【0066】
インタフェース装置152は、例えばUSB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、不図示の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)と電気的に接続して読取画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置152の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース回路とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。
【0067】
記憶装置160は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置160には、媒体搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置160にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。
【0068】
処理回路170は、予め記憶装置160に記憶されているプログラムに基づいて動作する。処理回路170は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。処理回路170として、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。
【0069】
処理回路170は、操作装置105、表示装置106、第1媒体センサ111、第2媒体センサ115、第3媒体センサ116、撮像装置119、カム部材センサ145、第1モータ121、第2モータ151、インタフェース装置152及び記憶装置160等と接続され、これらの各部を制御する。処理回路170は、第2モータ151を制御して媒体を搬送し、撮像装置119を制御して入力画像を取得し、取得した入力画像を、インタフェース装置152を介して情報処理装置に送信する。また、処理回路170は、第1モータ121を制御して分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧させる。
【0070】
図10は、記憶装置160及び処理回路170の概略構成を示す図である。
【0071】
図10に示すように、記憶装置160には、測定プログラム161、設定プログラム162及び制御プログラム163等の各プログラムが記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。処理回路170は、記憶装置160に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作することにより、測定部171、設定部172及び制御部173として機能する。
【0072】
図11は、設定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0073】
以下、
図11に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の設定処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置160に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路170により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。設定処理は、装置出荷前に、工場等において作業者により実施される。設定処理が実施される際、第1筐体101が開かれ、給送ローラ113の代わりに、分離ローラ114による押圧力を測定する測定器が、分離ローラ114と対向する位置に配置される。
【0074】
最初に、測定部171は、作業者によるカム部材141の調整の指示を受け付けるまで待機する(ステップS101)。カム部材141の調整の指示は、操作装置105又は情報処理装置を用いて入力され、測定部171は、操作装置105又はインタフェース装置152から、カム部材141の調整を指示する調整信号を受信した時に、カム部材141の調整の指示を受け付ける。
【0075】
カム部材141の調整の指示を受け付けた場合、測定部171は、第1モータ121を駆動し、カム部材141を回転させる(ステップS102)。
【0076】
測定部171は、まず、カム部材141を、被検出部141bがカム部材センサ145と対向しない非対向位置に配置させる。測定部171は、一定間隔毎に、カム部材141を
図5の矢印A22の反対方向(分離ローラ114が下方に移動する方向)に所定量ずつ回転させるとともに、カム部材センサ145からカム部材信号を受信する。測定部171は、受信したカム部材信号の信号値が、被検出部141bが発光器145aと受光器145bの間に存在しないことを示す場合に、カム部材141が非対向位置に配置されたと判定する。
【0077】
次に、測定部171は、一定間隔毎に、カム部材141を
図5の矢印A22の方向(分離ローラ114が上方に移動する方向)に所定量ずつ回転させるとともに、カム部材センサ145からカム部材信号を受信する。測定部171は、カム部材信号の信号値が、被検出部141bが発光器145aと受光器145bの間に存在しないことを示す値から、発光器145aと受光器145bの間に存在することを示す値に変化した時に、カム部材141が基準位置に配置されたと判定する。測定部171は、カム部材141が基準位置に配置されてから第1モータ121を駆動した駆動量を計測し続ける。
【0078】
次に、測定部171は、作業者によるカム部材141の初期位置の設定を受け付けるまで待機する(ステップS103)。カム部材141の初期位置の設定は、操作装置105又は情報処理装置を用いて入力される。測定部171は、操作装置105又はインタフェース装置152からカム部材141の初期位置を設定するための設定信号を受信した時に、カム部材141の初期位置の設定を受け付ける。作業者は、分離ローラ114と対向する位置に配置された測定器を監視し、分離ローラ114による押圧力が装置の仕様を満たす大きさに到達した時に、カム部材141の現在位置を初期位置として設定する。
【0079】
カム部材141の初期位置の設定を受け付けた場合、測定部171は、第1モータ121を停止させてカム部材141の回転を停止させ、カム部材141の回転量を測定する(ステップS104)。測定部171は、カム部材141が基準位置に配置されてから第1モータ121を駆動した駆動量を、カム部材141の基準位置からの回転量として測定する。
【0080】
次に、設定部172は、作業者によるカム部材141の初期位置の設定を受け付けたときに測定部171により測定された回転量に基づく値を、初期設定値として記憶装置160に設定し(ステップS105)、ステップS101へ処理を戻す。例えば、設定部172は、ステップS104において測定された回転量自体を初期設定値として設定する。なお、設定部172は、ステップS104において測定された回転量に対応する、カム部材141の物理位置、角度等を初期設定値として設定してもよい。
【0081】
複数の媒体搬送装置100において、第1モータ121の駆動量が同一であっても、弾性部材の特性のばらつき、カム部材141の初期配置位置のばらつき等により、分離ローラ114が給送ローラ113を押圧する押圧力が異なる可能性がある。媒体搬送装置100は、カム部材141の基準位置からの回転量に基づく値を初期設定値として設定する。これにより、各媒体搬送装置100は、弾性部材の特性のばらつき、カム部材141の初期配置位置のばらつき等に依存せずに、押圧力が同一となる位置に分離ローラ114を配置させることが可能となる。
【0082】
なお、測定部171は、カム部材センサ145と異なる種類のセンサを用いて、カム部材141の回転量を測定してもよい。例えば、測定部171は、カム部材141が接触している場合、又は、カム部材141が接触していない場合に所定の電流を流す接触検知センサにより、カム部材センサ145が基準位置に配置されているか否かを判定してもよい。また、被検出部141bには多数のスリット(光の透過穴)が形成されてもよい。その場合、測定部171は、発光器145aと受光器145bの間にスリットが存在する状態と、スリットが存在せずに被検出部141bにより遮られている状態との変化回数に基づいて、カム部材141の基準位置からの回転量を測定することができる。
【0083】
上記したように、複数の媒体搬送装置100において、弾性部材の特性のばらつき及びカム部材141の位置のばらつきにより、分離ローラ114の押圧力が変化する可能性がある。特に、カム部材141の位置のばらつきによる分離ローラ114の押圧力への影響は大きく、カム部材141の位置がわずかに変化するだけでも、分離ローラ114の押圧力は大きく変化する。
【0084】
媒体搬送装置100は、一端がカム部材141に固定された第1弾性部材143と、一端が内側筐体120に固定された第2弾性部材144との二つの弾性部材により、分離ローラ114が支持される支持部材142に力を付与する。第2弾性部材144は、第1モータ121の駆動量に関係なく支持部材142に一定の力を付与し、第1弾性部材143は、第1モータ121の駆動量に応じた力を支持部材142に付与する。媒体搬送装置100は、第2弾性部材144として、ばね定数が第1弾性部材143のばね定数より十分に大きいばねを使用することにより、支持部材142に付与する力の大部分を第2弾性部材144によって発生させることができる。その場合、支持部材142に付与される力のうち、第1弾性部材143により付与する力の割合は小さくなり、カム部材141の位置のばらつきによる分離ローラ114の押圧力への影響が低減される。したがって、媒体搬送装置100は、第2弾性部材144と第1弾性部材143を用いることにより、カム部材141の移動量のばらつきによる分離ローラ114の押圧力の変動を低減させ、媒体を安定して分離することができる。
【0085】
図12は、媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0086】
以下、
図12に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置160に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路170により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。
【0087】
最初に、制御部173は、利用者により操作装置105又は情報処理装置を用いて媒体の読み取りの指示が入力されて、媒体の読み取りを指示する操作信号を操作装置105又はインタフェース装置152から受信するまで待機する(ステップS201)。
【0088】
次に、制御部173は、第1媒体センサ111から第1媒体信号を取得し、取得した第1媒体信号に基づいて、載置台103に媒体が載置されているか否かを判定する(ステップS202)。載置台103に媒体が載置されていない場合、制御部173は、一連のステップを終了する。
【0089】
一方、載置台103に媒体が載置されている場合、制御部173は、記憶装置160に設定された初期設定値に従って、第1モータ121を駆動し、カム部材141を回転させて、カム部材141を初期位置に配置させる(ステップS203)。制御部173は、ステップS102の処理と同様にして、カム部材141を回転させて、カム部材141が基準位置を通過してから、初期設定値に相当する量だけ第1モータ121を駆動することにより、カム部材141を初期位置に配置させる。これにより、分離ローラ114の押圧力が、装置の仕様を満たす大きさに設定される。
【0090】
次に、第2モータ151を駆動し、載置台103を媒体とピックローラ112が当接する位置に移動させる。制御部173は、第2モータ151を駆動し、ピックローラ112、給送ローラ113、分離ローラ114、第1~第8搬送ローラ117a~hを回転させ、載置台103に載置された媒体を給送及び搬送させる(ステップS204)。
【0091】
次に、制御部173は、媒体の先端が第3媒体センサ116の位置を通過するまで待機する(ステップS205)。制御部173は、第3媒体センサ116から第3媒体信号を定期的に受信し、第3媒体信号の信号値が、媒体が存在しないことを示す値から存在することを示す値に変化した場合、媒体の先端が第3媒体センサ116の位置を通過したと判定する。
【0092】
次に、制御部173は、媒体の先端が第2媒体センサ115の位置を通過してから第3媒体センサ116の位置を通過するまでに媒体と給送ローラ113の間で発生したスリップの度合いをスリップ度として算出する。制御部173は、算出したスリップ度を記憶装置160に記憶する(ステップS206)。
【0093】
制御部173は、媒体の先端が第2媒体センサ115の位置を通過してから第3媒体センサ116の位置を通過するまでの、給送ローラ113を駆動するモータの駆動量を取得する。制御部173は、第2媒体センサ115及び第3媒体センサ116から定期的に第2媒体信号及び第3媒体信号を取得し、媒体の先端が第2媒体センサ115及び第3媒体センサ116の位置を通過したタイミングを検出する。制御部173は、媒体の先端が第2媒体センサ115の位置を通過してから第3媒体センサ116の位置を通過するまでに、給送ローラ113を回転させるために第2モータ151に供給したパルス信号のパルス数を駆動量として取得する。
【0094】
制御部173は、例えば以下の式(1)に従って、スリップ度Sを算出する。
S=(T1/T2-1)×100 (1)
ここで、T1は、媒体の先端が第2媒体センサ115の位置を通過してから第3媒体センサ116の位置を通過するまでの、給送ローラ113による媒体の搬送距離である。T1は、上記で取得した駆動量に、1パルスあたりの給送ローラ113による搬送距離を乗算することにより算出される。T2は、第2媒体センサ115の位置と第3媒体センサ116の位置との間の距離である。即ち、給送ローラ113が媒体をスリップさせた量が大きいほどスリップ度は大きくなる。
【0095】
次に、制御部173は、媒体の先端が第1搬送ローラ117aの位置を通過するまで待機する(ステップS207)。制御部173は、ステップS205において媒体の先端が第3媒体センサ116の位置を通過したと判定してから所定時間が経過した時に、媒体の先端が第1搬送ローラ117aの位置を通過したと判定する。所定時間は、媒体が第3媒体センサ116の位置から第1搬送ローラ117aの位置まで移動するまでに要する時間にマージンを加えた値に設定される。
【0096】
次に、制御部173は、ピックローラ112、給送ローラ113及び分離ローラ114を停止させるように第1モータ121を制御する(ステップS208)。これにより、以降、媒体は第1搬送ローラ117aにより搬送され、ピックローラ112、給送ローラ113及び分離ローラ114は、搬送される媒体によって連れ回る。
【0097】
次に、制御部173は、撮像装置119に媒体を撮像させて、撮像装置119から入力画像を取得し、取得した入力画像を、インタフェース装置152を介して情報処理装置へ送信することにより出力する(ステップS209)。
【0098】
次に、制御部173は、第1媒体センサ111から受信する第1媒体信号に基づいて、載置台103に媒体が残っているか否かを判定する(ステップS210)。
【0099】
載置台103に媒体が残っている場合、制御部173は、記憶装置160に記憶されたスリップ度に従って、第1モータ121を駆動し、カム部材141を回転させて、分離ローラ114の押圧力を変化させる(ステップS211)。媒体搬送装置100は、スリップ度と、カム部材141の配置位置(カム部材をその位置に配置するための第1モータ121の駆動量)との関係を示すテーブルを予め記憶装置160に記憶しておく。カム部材141の配置位置は、スリップ度が大きいほど、分離ローラ114の押圧力が大きくなる位置に設定される。制御部173は、そのテーブルを参照して、記憶装置160に記憶されたスリップ度に対応する第1モータ121の駆動量を特定する。制御部173は、ステップS203の処理と同様にして、カム部材141を回転させて、カム部材141が基準位置を通過してから、特定した駆動量だけ第1モータ121を駆動することにより、カム部材141をスリップ度に応じた配置位置に配置させる。これにより、制御部173は、給送ローラ113が摩耗して媒体がスリップする度合いが大きくなった場合に、分離ローラ114の押圧力を大きくして、媒体のスリップの発生を抑制させることが可能となる。
【0100】
なお、制御部173は、直近の所定回数のスリップ度の平均値、中央値、最小値又は最大値等の統計値を算出し、算出した統計値に対応する第1モータ121の駆動量を特定してもよい。これにより、制御部173は、スリップが発生しやすい特定の媒体の影響を受けて、カム部材141を頻繁に移動させることを抑制でき、媒体を安定して搬送させることができる。
【0101】
次に、制御部173は、ピックローラ112、給送ローラ113及び分離ローラ114を再回転させるように第1モータ121を制御し(ステップS212)、ステップS205へ処理を移行して、ステップS205~S210の処理を繰り返す。
【0102】
一方、載置台103に媒体が残っていない場合、制御部173は、第2モータ151を停止し、第1~第8搬送ローラ117a~hを停止させ(ステップS213)、一連のステップを終了する。
【0103】
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧させるためのカム部材141に第1モータ121からの駆動力を伝達する駆動力伝達機構130を有する。駆動力伝達機構130は、カム部材141を停止させるためのホールド電流を第1モータ121へ流さなくても、カム部材141が逆方向に回転することを阻止する。これにより、媒体搬送装置100は、消費電力を低減させつつ、適切な力で分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧し続けることが可能となった。
【0104】
また、媒体搬送装置100は、電磁クラッチ等の、分離ローラ114にかかるトルクを切り替え可能な高価な部品を用いることなく、分離ローラ114による分離力を適切に設定することが可能となり、装置コストを低減させることが可能となった。
【0105】
図13は、他の駆動力伝達機構230について説明するための模式図である。
図13は、駆動力伝達機構230及び付圧機構140を上流側から見た模式図である。
【0106】
駆動力伝達機構230は、駆動力伝達機構130の代わりに用いられる。駆動力伝達機構230は、駆動力伝達機構130と同様の構造及び機構を有する。但し、駆動力伝達機構230は、ウォーム132及びウォームホイール133を含まず、その代わりに、第1ギア232、第2ギア233及びトルクリミッタ235を含む。
【0107】
ベルト131は、第1モータ121の回転軸121aと第1ギア232の回転軸である第1ギアシャフト232aとの間に吊架される。第1ギア232は、第2ギア233と歯合するように設けられる。第2ギア233は、カム部材シャフト134に取り付けられる。
【0108】
トルクリミッタ235は、カム部材シャフト134上に、リミット値より大きいトルクがかかるまでカム部材シャフト134の回転を阻止するように設けられる。トルクリミッタ235のリミット値は、第1弾性部材143の引っ張り力及び分離ローラ114の自重によって、カム部材141が矢印A22の反対方向に回転しようとする力より大きい値に設定される。第1モータ121は、トルクリミッタ235にリミット値より大きいトルクがかかるようにベルト131、第1ギア232及び第2ギア233を介してカム部材シャフト134を回転させる。一方、カム部材141が矢印A22の反対方向に回転しようとする時にトルクリミッタ235にかかるトルクはリミット値より小さいため、第1弾性部材143の引っ張り力及び分離ローラ114の自重によるカム部材シャフト134の回転は阻止される。
【0109】
即ち、トルクリミッタ235は、第1モータ121により発生された駆動力を第1モータ121からカム部材141へ伝達させて、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧させるようにカム部材141を回転させる。一方、トルクリミッタ235は、第1モータ121への電力の供給が遮断されても、カム部材141を矢印A22の反対方向に回転させずに、カム部材141が分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧し続けるように設けられる。したがって、媒体搬送装置は、第1モータ121を制御して、分離ローラ114をセットした後は、第1モータ121への電力の供給を遮断することが可能となり、消費電力を低減させることが可能となる。
【0110】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、駆動力伝達機構230がトルクリミッタ235を有する場合も、消費電力を低減させつつ、適切な力で分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧し続けることが可能となった。
【0111】
図14は、さらに他の駆動力伝達機構330について説明するための模式図である。
図14は、駆動力伝達機構330及び付圧機構140を上流側から見た模式図である。
【0112】
駆動力伝達機構330は、駆動力伝達機構130の代わりに用いられる。駆動力伝達機構330は、駆動力伝達機構130と同様の構造及び機構を有する。但し、駆動力伝達機構330は、ウォーム132及びウォームホイール133を含まず、その代わりに、第1ギア332、第1減速ギア333、第2減速ギア335及び第2ギア336を含む。
【0113】
ベルト131は、第1モータ121の回転軸121aと第1ギア332の回転軸である第1ギアシャフト332aとの間に吊架される。第1ギア332は、第1減速ギア333の大きい方の歯車と歯合し、第1減速ギア333の小さい方の歯車は、第2減速ギア335の大きい方の歯車と歯合し、第2減速ギア335の小さい方の歯車は、第2ギア336と歯合する。第2ギア336は、カム部材シャフト134に取り付けられる。
【0114】
第1減速ギア333及び第2減速ギア335は、第1モータ121の回転に伴って回転し、第2ギア336、カム部材シャフト134及びカム部材141を回転させる。一方、第1減速ギア333及び第2減速ギア335の減速比は、第1弾性部材143の引っ張り力及び分離ローラ114の自重によってカム部材141が矢印A22の反対方向に回転しようとする時に、第2ギア336の回転を阻止する大きさに設定される。これにより、第1弾性部材143の引っ張り力及び分離ローラ114の自重によるカム部材141の回転は阻止される。
【0115】
即ち、第1減速ギア333及び第2減速ギア335は、第1モータ121により発生された駆動力を第1モータ121からカム部材141へ伝達させて、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧させるようにカム部材141を回転させる。一方、第1減速ギア333及び第2減速ギア335は、第1モータ121への電力の供給が遮断されても、カム部材141を矢印A22の反対方向に回転させずに、カム部材141が分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧し続けるように設けられる。したがって、媒体搬送装置は、第1モータ121を制御して、分離ローラ114をセットした後は、第1モータ121への電力の供給を遮断することが可能となり、消費電力を低減させることが可能となる。なお、減速ギアの数は、二つに限定されず、一つ又は三つ以上でもよい。
【0116】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、駆動力伝達機構330が第1減速ギア333及び第2減速ギア335を有する場合も、消費電力を低減させつつ、適切な力で分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧し続けることが可能となった。
【0117】
図15は、さらに他の駆動力伝達機構430及び付圧機構440について説明するための模式図である。
図15は、駆動力伝達機構430及び付圧機構440を上流側から見た模式図である。
【0118】
駆動力伝達機構430は、駆動力伝達機構130の代わりに用いられる。駆動力伝達機構430は、駆動力伝達機構130と同様の構造及び機構を有する。但し、駆動力伝達機構430は、ウォーム132及びウォームホイール133を含まず、その代わりに、ラチェットギア432及びギア433を含む。また、駆動力伝達機構430は、カム部材シャフト134の代わりに、カム部材シャフト434を含む。
【0119】
ベルト131は、第1モータ121の回転軸121aとラチェットギア432の回転軸であるラチェットギアシャフト432aとの間に吊架される。ラチェットギア432は、ギア433と歯合する。ギア433は、カム部材シャフト434に取り付けられる。カム部材シャフト434は、付圧機構440が有するカム部材441から、ラチェットギア432の反対側には突出しないように設けられる。
【0120】
図16(A)、(B)は、ラチェットギア432について説明するための模式図である。
【0121】
図16(A)、(B)に示すように、ラチェットギア432は、歯車部432b及び歯止め部432cを含む。歯止め部432cは、歯車部432bの矢印A21の方向への回転を許容しつつ、歯車部432bの矢印A21の反対方向への回転を制限するように、歯車部432bと対向する位置に設けられる。これにより、ラチェットギア432は、矢印A21の方向にのみ回転可能となり、ギア433及びカム部材シャフト434は矢印A22の方向にのみ回転可能となる。したがって、第1弾性部材143の引っ張り力及び分離ローラ114の自重によるカム部材141の回転は阻止される。
【0122】
図17及び
図18は、付圧機構440について説明するための模式図である。
図17及び
図18は、付圧機構440を側方から見た側面図である。
【0123】
付圧機構440は、付圧機構140の代わりに用いられる。付圧機構440は、付圧機構140と同様の構造及び機構を有する。但し、付圧機構440は、カム部材141の代わりに、カム部材441を有する。
【0124】
カム部材441は、カム部材シャフト434の回転に従って回転(揺動)するように、カム部材シャフト434に取り付けられる。カム部材441は、係合部441a及び被検出部441bを有する。係合部441aの一端には、カム部材441の、ラチェットギア432と反対側の面に設けられた突起部441cが係合され、係合部441aの他端には、第1弾性部材143が取り付けられる。これにより、突起部441cは、カム部材441の回転に従って移動し、係合部441aは、突起部441cの移動に伴って移動する。被検出部441bは、被検出部141bと同様の板状部材であり、カム部材441の回転(揺動)に連動して回転(揺動)する。
【0125】
図15に示すように、第1モータ121へ電力が供給されて、第1モータ121が矢印A21の方向に回転すると、ベルト131及びラチェットギア432が矢印A21の方向に回転する。ラチェットギア432の回転に伴ってギア433が矢印A22の方向に回転し、カム部材シャフト434を介してカム部材441が矢印A22の方向に回転する。
図17及び
図18に示すように、カム部材441が矢印A22の方向に回転すると、突起部441cは、第1係合部材142dから離れた位置に配置され、係合部441aにより第1弾性部材143が矢印A23の方向(上流側)に引っ張られる。これにより、分離ローラ114は給送ローラ113側に押圧される。
【0126】
一方、第1モータ121が矢印A21の方向にさらに回転すると、カム部材441が矢印A22の方向にさらに回転し、突起部441cが第1係合部材142dに近付く。これにより、係合部441aによって第1弾性部材143に付与される矢印A23の方向に向かう力は低減する。これにより、分離ローラ114に付与される給送ローラ113を押圧する力が低減する。
【0127】
一方、
図18に示すように、カム部材441は、第1弾性部材143を矢印A23の方向に引っ張っており、逆に、カム部材441及びカム部材シャフト434には、第1係合部材142dによって、矢印A23の反対方向に向かう力が付与される。しかしながら、上記したように、ラチェットギア432は、カム部材シャフト434の矢印A22の反対方向への回転を阻止する。そのため、第1モータ121への電力の供給が遮断された場合でも、カム部材441は矢印A22の反対方向に回転せずに、カム部材441は分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧し続ける。
【0128】
付圧機構440が用いられる場合、
図11のステップS102、
図12のステップS203、S211において、測定部171又は制御部173は、カム部材441を一方向(矢印A22の方向)にのみ回転させることにより、カム部材441を移動させる。
【0129】
このように、ラチェットギア432は、第1モータ121により発生された駆動力を第1モータ121からカム部材441へ伝達させて、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧させるようにカム部材441を回転させる。一方、ラチェットギア432は、第1モータ121への電力の供給が遮断されても、カム部材441を矢印A22の反対方向に回転させずに、カム部材441が分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧し続けるように設けられる。したがって、媒体搬送装置は、第1モータ121を制御して、分離ローラ114をセットした後は、第1モータ121への電力の供給を遮断することが可能となり、消費電力を低減させることが可能となる。
【0130】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、駆動力伝達機構230がラチェットギア432を有する場合も、消費電力を低減させつつ、適切な力で分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧し続けることが可能となった。
【0131】
図19は、さらに他の駆動力伝達機構530及び付圧機構440について説明するための模式図である。
図19は、駆動力伝達機構530及び付圧機構440を上流側から見た模式図である。
【0132】
駆動力伝達機構530は、駆動力伝達機構130の代わりに用いられる。駆動力伝達機構530は、駆動力伝達機構130と同様の構造及び機構を有する。但し、駆動力伝達機構530は、ウォーム132及びウォームホイール133を含まず、その代わりに、第1ギア532、第2ギア533及びワンウェイクラッチ535を含む。また、駆動力伝達機構430は、カム部材シャフト134の代わりに、カム部材シャフト534を含む。駆動力伝達機構530が使用される場合、付圧機構140の代わりに、付圧機構440が用いられる。
【0133】
ベルト131は、第1モータ121の回転軸121aと第1ギア532の回転軸である第1ギアシャフト532aとの間に吊架される。第1ギア532は、第2ギア533と歯合するように設けられる。第2ギア533は、カム部材シャフト534に取り付けられる。カム部材シャフト534は、カム部材シャフト434と同様に、付圧機構440が有するカム部材441から、第2ギア533の反対側には突出しないように設けられる。
【0134】
ワンウェイクラッチ535は、カム部材シャフト534の矢印A22の方向の回転を許容しつつ、カム部材シャフト534の矢印A22の反対方向の回転を制限するように、カム部材シャフト534上に設けられる。これにより、第1弾性部材143の引っ張り力及び分離ローラ114の自重によるカム部材141の回転は阻止される。
【0135】
このように、ワンウェイクラッチ535は、第1モータ121により発生された駆動力を第1モータ121からカム部材441へ伝達させて、分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧させるようにカム部材441を回転させる。一方、ワンウェイクラッチ535は、第1モータ121への電力の供給が遮断されても、カム部材441を矢印A22の反対方向に回転させずに、カム部材441が分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧し続けるように設けられる。したがって、媒体搬送装置は、第1モータ121を制御して、分離ローラ114をセットした後は、第1モータ121への電力の供給を遮断することが可能となり、消費電力を低減させることが可能となる。
【0136】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、駆動力伝達機構230がワンウェイクラッチ535を有する場合も、消費電力を低減させつつ、適切な力で分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧し続けることが可能となった。
【0137】
図20は、他の実施形態に係る媒体搬送装置の処理回路670の概略構成を示す図である。
【0138】
処理回路670は、媒体搬送装置100の処理回路170の代わりに使用され、処理回路170の代わりに、設定処理及び媒体読取処理等を実行する。処理回路670は、測定回路671、設定回路672及び制御回路673等を有する。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
【0139】
測定回路671は、測定部の一例であり、測定部171と同様の機能を有する。測定回路671は、操作装置105又はインタフェース装置152から調整信号を受信したときに、第1モータ121を制御するとともに、カム部材センサ145からカム部材信号を受信し、受信したカム部材信号に基づいて、カム部材141の回転量を測定する。測定回路671は、測定結果を設定回路672に出力する。
【0140】
設定回路672は、設定部の一例であり、設定部172と同様の機能を有する。設定回路672は、測定回路671からカム部材141の回転量の測定結果を受信し、受信した測定結果に基づいて初期設定値を記憶装置160に設定する。
【0141】
制御回路673は、制御部の一例であり、制御部173と同様の機能を有する。制御回路673は、記憶装置160から初期設定値を読み出し、読み出した初期設定値に基づいて第1モータ121を制御する。また、制御回路673は、操作装置105又はインタフェース装置152から操作信号を、第1媒体センサ111から第1媒体信号を、第2媒体センサ115から第2媒体信号を、第3媒体センサ116から第3媒体信号を受信する。制御回路673は、受信した各信号に基づいて、第2モータ151を制御するとともに、撮像装置119から入力画像を取得し、インタフェース装置152に出力する。
【0142】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、処理回路670によって設定処理及び媒体読取処理を実行する場合も、消費電力を低減させつつ、適切な力で分離ローラ114を給送ローラ113側に押圧し続けることが可能となった。
【符号の説明】
【0143】
100 媒体搬送装置、113 給送ローラ、114 分離ローラ、121 第1モータ、130 駆動力伝達機構、132 ウォーム、133 ウォームホイール、235 トルクリミッタ、333 第1減速ギア、335 第2減速ギア、432 ラチェットギア、141、441、カム部材、142 支持部材、143 第1弾性部材、144 第2弾性部材、171 測定部、172 設定部