(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129472
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】発光結晶及びその製造
(51)【国際特許分類】
C09K 11/66 20060101AFI20230907BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20230907BHJP
C09K 11/02 20060101ALI20230907BHJP
C09K 11/74 20060101ALI20230907BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230907BHJP
C08K 3/16 20060101ALI20230907BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20230907BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230907BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20230907BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230907BHJP
【FI】
C09K11/66
C09K11/08 A ZNM
C09K11/02 Z
C09K11/74
C08L101/00
C08K3/16
C08K5/00
G02B5/20
B82Y20/00
B82Y40/00
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023114328
(22)【出願日】2023-07-12
(62)【分割の表示】P 2021065765の分割
【原出願日】2016-05-25
(31)【優先権主張番号】15002279.6
(32)【優先日】2015-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514211884
【氏名又は名称】アファンタマ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】ノルマン アルベルト リュッヒンガー
(72)【発明者】
【氏名】マレック オスザイカ
(57)【要約】
【課題】発光結晶(LC)の提供。
【解決手段】本発明は、発光結晶(LC)、より詳細には式M
1
aM
2
bX
cの量子ドット(QD)の分野に関し、基材は明細書中に定義したものである。本発明は、そのような発光結晶の製造方法、特に液体の存在下でミリングボールの補助によって適切な出発物質を分散させることによる方法を;発光結晶を含む組成物に、電子機器、装飾的コーティングに;及び発光結晶を含む中間体に提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2~50nm径の発光結晶の製造方法であって、前記発光結晶は、式(I)の化合物から選択され、
M1
aM2
bXc (I)
式中:
M1は、Cs、Rb、K、Na、Liから選択される一つ又は複数のアルカリ金属を表し、
M2は、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBiからなる群から選択される一つ又は複数の金属を表し、
Xは、Cl、Br、及びIからなる群から選択される一つ又は複数のハロゲン化物を表し、
aは、1~4を表し、
bは、1~2を表し、
cは、3~9を表し;
前記方法は、以下の工程:
(a)固体材料を提供することであって、前記固体材料は、(i)aモルのM1、bモルのM2、及びcモルのXの化学量論的組成を有し、かつ(ii)少なくとも15nmの平均粒径、及び典型的には15nm~100μmの多分散径分布を有する、ことと;
(b)前記材料を液体の存在下で分散させることであって、前記液体は、(i)液体界面活性剤、(ii)界面活性剤及び溶媒の組合せ、(iii)界面活性剤、溶媒、及びプレポリマー又はポリマーの組合せ、並びに(iv)界面活性剤及び液体プレポリマーの組合せから選択され、前記分散は、撹拌されたミリングボールによって生じる、ことと
を含む、方法。
【請求項2】
工程(b)の分散は、
10~1000μmのボール径を有する撹拌されたミリングボールによって生じ;及び/又は
懸濁液の単位質量当たりにかかる少なくとも100W/kgの比パワー入力によって生じ;及び/又は
120℃未満の温度で生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発光結晶がCs1Pb1X3の群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒が、脂肪族炭化水素(直鎖、分岐鎖、及び環状炭化水素を含む)、芳香族炭化水素、エーテル(グリコールエーテルを含む)、エステル、アルコール、ケトンの群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び双性イオン界面活性剤の群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プレポリマーが、アクリレート、カーボネート、スルホン、エポキシ、ビニル、ウレタン、イミド、エステル、フラン、メラミン、スチレン、及びシリコーン、特にアクリレート、ウレタン、スチレン、及びシリコーンの群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)において、前記固体材料が、
気相反応及び乾式ミリングを含む乾式合成処理によって得られ;又は
湿式合成処理によって得られ;又は
式(I)の正味の化学量論的組成に対応する二以上の前駆体の化学量論的反応によってインサイチュで形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記乾式合成処理は、分解、及び熱分解処理、例えばフレーム溶射熱分解処理を含む、気相処理であり;
前記湿式合成処理は、溶媒ベース相又は水相からの沈殿処理であり;
前記インサイチュでの形成は、界面活性剤と、任意に溶媒、及び/又は液体プレポリマー、及び/又は溶解した固体ポリマーとの存在下、出発物質をボールミリングすることで起こる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
固体材料:液体材料(溶媒+界面活性剤)の質量比が0.0001~0.5の範囲であり;及び/又は
界面活性剤:固体材料の質量比が100~0.1の範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
合成された発光結晶の一つ又は複数のハロゲン原子Xを、アニオン交換によって他のハロゲン原子に置き換える工程;及び/又は
二以上の種類の式(I)の発光結晶を組み合わせる工程
を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(i)請求項1又は3に記載の、2~5nm径の式(I)の発光結晶と;
(ii)非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び双性イオン界面活性剤の群から選択される界面活性剤であるが、オレイルアミン、オレイン酸、及びトリオクチルホスフィンを除く、界面活性剤と;
(iii)任意の溶媒であって、脂肪族炭化水素(直鎖、分岐鎖、及び環状炭化水素を含む)、芳香族炭化水素、エーテル(グリコールエーテルを含む)、エステル、アルコール、ケトンの群から好ましくは選択される、溶媒と;
(iv)任意のポリマー又はプレポリマーであって、アクリレート、エポキシ、ウレタン、スチレン、シリコーン、及び環状オレフィンコポリマーの群から好ましくは選択される、ポリマー又はプレポリマーと
を含む、懸濁液の形態の組成物。
【請求項12】
発光結晶(i):液体材料(ii)+(iii)+(iv)の質量比が0.0001~0.5の範囲であり;及び/又は
界面活性剤(ii):発光結晶(i)の質量比が100~0.05の範囲であり;及び/又は
ポリマー又はプレポリマーの濃度は、組成物の合計の0.1~30質量%の範囲である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び双性イオン界面活性剤の群から選択され、及び
前記界面活性剤は、4~30の炭素原子を有するアルキル又はアルキル-エーテル鎖の群から選択される無極性末端基を含む、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
溶媒(iii)を含まず、
LC/QD(i):液体材料(プレポリマー(iv)+界面活性剤(ii))の質量比が、好ましくは0.0001~0.5の範囲である、請求項11~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
界面活性剤(ii)は液体界面活性剤であり、溶媒(iii)及びプレポリマー(iv)を含まず、
界面活性剤(ii):LC/QD(i)の質量比が100~1の範囲である、
請求項11~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
(i)請求項1又は2に記載の、2~50nm径の式(I)の発光結晶と;
(ii)非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び双性イオン界面活性剤の群から選択される界面活性剤であるが、オレイルアミン、オレイン酸、及びトリオクチルホスフィンを除く、界面活性剤と;
(iii)硬化/固化ポリマーであって、好ましくはアクリレートポリマー、エポキシポリマー、ウレタンポリマー、スチレンポリマー、シリコーンポリマー、及び環状オレフィンコポリマーの群から選択される、硬化/固化ポリマーと
を含む、固体ポリマー組成物。
【請求項17】
LC/QD:マトリクス(ポリマー+界面活性剤)の質量比が0.0001~0.1の範囲であり;
及び/又は
界面活性剤:LC/QDの質量比が100~0.05の範囲である、
請求項16に記載の固体ポリマー組成物。
【請求項18】
一つ又は複数の層によってコーティングされたシート状の基材を含む中間品であって、前記層の少なくとも一つは機能層であり、前記機能層は請求項16又は17に記載の組成物を含む、中間品。
【請求項19】
前記機能層は青色光を白色光に変換する、請求項18に記載の中間品。
【請求項20】
電子機器及び光デバイスの群から選択される装置であって、前記装置は、基材及び機能層を含み;前記機能層は、請求項1又は3に記載の式(I)のLC/QDと、請求項1、5又は13のいずれか一項に記載の界面活性剤とを含む、
装置。
【請求項21】
ディスプレイ、モバイル機器、発光装置、及び太陽電池からなる群から選択される装置であって、特にLCDディスプレイ又は量子ドットLED(QLED)である、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
基材、及びコーティング、特に装飾的コーティングを含む物品であって、前記コーティングは、請求項1又は3に記載の式(I)のLC/QDと、請求項1、5又は13のいずれか一項に記載の界面活性剤とを含む、物品。
【請求項23】
(a)基材を提供することと、
(b)好ましくは請求項11~15のいずれか一項に記載の組成物をコーティング又は印刷し、続いて乾燥及び/又は固化させることによって、請求項16又は17に記載の固体ポリマー組成物を前記基材に堆積することと、
を含む、請求項18又は19に記載の中間品を製造する方法。
【請求項24】
請求項18又は19に記載の中間品を製造するための;又は請求項20又は21に記載の装置を製造するための;又は請求項22に記載の物品を製造するための、請求項11~15のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項25】
青色光を白色光に変換するための、特に発光ダイオード(LED)又は液晶表示装置における、請求項16又は17に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光結晶(LC)、より詳細には量子ドット(QD)の分野に関する。本発明は、そのような発光結晶の製造方法を、発光結晶を含む組成物に、及びLCを含む電子機器、装飾的コーティング、及び中間体に提供する。
【背景技術】
【0002】
発光結晶、具体的には量子ドットは、公知の分類の材料である。そのようなQDは、電子機器、例えば発光ダイオード又はディスプレイなどの工業的及び商業的な製品に多くの用途がある。
【0003】
Loredana Prodesescu等(ナノレター(Nano Lett.)、2015年、15巻、3692~3696頁)は、新規な分類の高品質な発光量子ドット(QD)を開示している。QDは、安価な化学品を用いて、非常に高い寸法制度で合成され;QD径は、合成パラメータ、例えば温度及び反応時間を調整することによって制御された。しかしながら、該方法は、(この材料の組成物の粒子成長速度が非常に速いことによって)制御することが難く、スケールアップが難しいので、非常に少量のみ合成された。更に、反応は、非化学量論的であるので、大量の副生成物につながる。更に、該反応は、(反応温度が高いので)オクタデセンのような高沸点溶媒中でのみ行うことができ、このことは、最終的な用途のためにトルエンのような低沸点溶媒中でQDが必要な場合、溶媒交換を必要とする。この合成ルートは、標準的な研究設備を用いた「ホットインジェクション法」として知られている。これらの不利な点のため、QDの合成方法は、商業的に魅力的でなく、QDを高価にしている。
【0004】
Pfenninger他(国際公開第2007/109734号)は、類似の材料を開示しているが、減圧堆積によって薄膜の形態で得られた。そのような製造方法もまた不利であると考えられる。
【0005】
Guo他(国際公開第2014/007966号)は、C5~C8カルボン酸を更に含む、CdSe又はInPに基づくコア-シェルタイプの標準的発光QDを開示している。標準的CdSe及びInPは、所望の光学機能性を達成するために、より大きなバンドギャップの半導体シェル(例えばZnS)を必要とする。この更なる合成の工程は、それらの価格を更に上昇させ、多くの用途にとって不利である。
【0006】
Dandang Zhang他(JACS、2015年、9230~33頁)は、ハロゲン化セシウム鉛ペロブスカイトナノワイヤの液相合成を開示している。前述のProdesescuのように、文献は、標準的な研究設備を用いたホットインジェクション法でナノワイヤを得ることを開示している。そのようなナノワイヤは、量子ドットではない。
【0007】
小島陽広他(特開2014-078392号明細書)は、ペロブスカイト化合物を含む電子発光素子を開示している。ペロブスカイトは、融解溶融(melt-dissolving)と呼ばれる特定の溶液処理によって得られる。これは、目的物化合物を結晶化させる工程を含む、ボトムアップの方法である。そのような処理は、スケールアップが難しく、制御が難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、技術水準のこれらの欠点の少なくともいくつかを軽減することである。特に、本発明の目的は、LC/QDの改善された製造方法を提供することである。更なる目的は、電子機器、及び光デバイス、及び装飾的コーティングなどの多種多様な用途に適するLC/QDを含む、新たな物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、請求項1に記載の方法、請求項9に記載のインク、請求項17に記載の中間品、及び請求項に記載の使用によって達成される。本発明の更なる側面は、明細書及び独立請求項に開示されており、好ましい実施形態は、明細書及び従属請求項に開示されている。本発明は、特に以下:
発光結晶、具体的には量子ドットの製造方法(第1の側面);
「インク」又は「プレポリマー分散体」とも呼ばれる、懸濁液の形態の組成物、及びその使用(第2の側面);
固体ポリマー組成物、及びその使用(第3の側面);
中間品(第4の側面);
電子機器、光デバイス、及びコーティング表面を含む物品などの装置(第5の側面);
ポリマー組成物の製造方法(第6の側面);
中間品の製造方法(第7の側面);及び
装置の製造方法(第8の側面)
を提供する。
【0010】
本発明を以下詳細に記載する。本明細書中に提供/開示されている様々な実施形態、選択、及び範囲は、自由に組み合わせてもよいことを理解されたい。更に、特定の実施形態によっては、選択した定義、実施形態、又は範囲を適用しなくてもよい。
【0011】
別途記載しない限り、本明細書において以下の定義を適用する。
【0012】
本発明の文脈において使用する用語「a」、「an」、「the」、及び同様の用語は、本明細書中に特に明記しない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含するものとする。更に、用語「挙げられる(including)」、「含有する(containing)」、及び「含む(comprising)」は、本明細書において、それらのオープンで非限定的な意味で用いる。用語「含有する(containing)」は、「含む(comprising)」、及び「から成る(consisting of)」の両方を含む。
【0013】
本明細書中に別途示さない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、割合は質量%とする。
【0014】
用語「発光結晶」(LC)は、本分野で知られており、半導体物質でできた2~50nmのナノ結晶を意味する。用語は、典型的には3~15nmの範囲、最高50nmのナノ結晶である、量子ドットを含む。好ましくは、発光結晶は、ほぼ等軸(例えば球又は立方)である。粒子は、3つの直交次元の全てのアスペクト比(長軸方向:短軸方向)が1~2である場合、ほぼ等軸であるとみなす。
【0015】
LCは、その用語が示すように、ルミネセンスを示す。本発明の文脈において、発光結晶は、典型的には、界面活性剤の存在のため他の粒子から空間的に分離された単結晶粒子である。それは、直接バンドギャップ(典型的には、1.1~3.8eV、より典型的には1.4~3.5eV、更により典型的には1.7~3.2eVの範囲)を示す、半導体材料である。バンドギャップに等しい又はより高い電磁放射を伴う照光に応じて、価電子帯電子は伝導帯へと励起され、価電子帯に電子ホールを残す。成形された励起子(電子-電子ホール対)は次に、LCバンドギャップ値周辺の中心にある最大強度で、少なくとも1%のフォトルミネセンス量子収量を示す、フォトルミネセンスの形態で放射的に再結合する。外部の電子及び電子ホール源と接触して、LCはエレクトロルミネセンスを示すことができる。本発明の文脈において、LCは、機械的ルミネセンス(例えばピエゾルミネセンス)も、化学的ルミネセンスも、電気化学的ルミネセンスも、熱ルミネセンスも示さない。
【0016】
用語「量子ドット」(QD)は知られており、特に、典型的に3~15nmの直径を有する半導体ナノ結晶を意味する。この範囲において、QDの物理的直径はバルク励起ボーア半径より小さく、量子閉じ込め効果を優勢にしている。その結果、QDの電子状態、したがってバンドギャップは、QD組成及び物理的径の関数であり、すなわち、吸収/発光の色はQDの径に関連する。QDサンプルの光学的品質は、それらの均一性に直接関連する(より単分散なQDは、発光のより小さなFWHMを有する)。QDがボーア半径より大きい径に達すると、量子閉じ込め効果は妨げられ、励起子再結合のための非放射経路が支配的になることがあるので、サンプルはもはや発光性でないことがある。したがって、QDは、特にその径及び径分布によって画定される、ナノ結晶の特定のサブグループである。QDの特性はこれらのパラメータに直接関連し、それらとナノ結晶を区別する。
【0017】
用語「溶媒」は、本分野で知られており、特に脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル(グリコール-エーテルなど)、エステル、アルコール、ケトンが挙げられる。上記の有機物は、一つ又は複数の置換基によって、例えば、ハロゲン(例えばフルオロ)、ヒドロキシ、C1~4アルコキシ(例えばメトキシ若しくはエトキシ)、及びアルキル(例えばメチル、エチル、イソプロピル)によって置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。上記の有機物は、直鎖、分岐鎖、及び環状の誘導体を含む。分子内に不飽和結合があってもよい。上記化合物は、4~24固の炭素原子、好ましくは5~12固の炭素原子、最も好ましくは6~10固の炭素原子を典型的に有する。
【0018】
用語「界面活性剤」、「配位子」、「分散剤(dispersant)」、及び「分散剤(dispersing agent)」は本分野で知られており、本質的に同じ意味を有する。本発明の文脈において、これらの用語は、懸濁液又はコロイドで使用されて粒子の分離を改善し、凝集又は沈殿を妨ぐ、溶媒以外の有機物質を意味する。理論に限定されないが、界面活性剤は、粒子を溶媒に加える前又は後に、物理的又は化学的に粒子表面に付着し、これによって所望の効果を提供すると考えられる。用語「界面活性剤」は、ポリマー材料及び小分子を含み;界面活性剤は、極性官能性末端基、及び無極性末端基を典型的に含む。本発明の文脈において、溶媒(例えばトルエン)は界面活性剤とはみなされない。
【0019】
懸濁液という用語は知られており、固体である内相(i.p.)と液体である外相(e.p.)との、不均一な流体を意味する。外相は、一つ又は複数の分散剤/界面活性剤、任意に一つ又は複数の溶媒、及び任意に一つ又は複数のプレポリマーを含む。
【0020】
用語「ポリマー」は知られており、有機及び無機合成材料を含む。「プレポリマー」という用語は、モノマー及びオリゴマーの両方を含む。
【0021】
用語「溶液処理」は当該分野で知られており、溶液ベースの(=液体の)出発物質を用いて、基材へのコーティング又は薄膜の適用を意味する。本発明の文脈において、溶液処理は、商品、例えば、電子機器、光デバイス、及び(装飾的)コーティングを含む物品の製造、並びにQD複合材又はQD層を含む中間品の製造に関する。典型的に、一つ又は複数の懸濁液の適用は、周囲条件で行われる。
【0022】
用語「QD複合材」は、LC/QD、界面活性剤、及びマトリクスを含む、固体無機/有機複合材材料を意味する。QD複合材の形態としては、フィルム、繊維、及びバルク材料が挙げられる。LC/QDは電子的にアドレスされていないので、QD複合材は、LC/QDが光学的機能のみを果たす用途に使用される。
【0023】
QD複合材において、LC/QDを互いに空間的に分離するために、LC/QDは、マトリクス、例えばポリマーマトリクス又は無機マトリクス中に組み込まれる。用途に応じて、QD複合材フィルムの厚みは、幅広い範囲に渡って様々であってよいが、典型的には1~1000ミクロンである。
【0024】
用語「QD層」は、発光結晶(具体的にはQD)及び界面活性剤を含む薄層を意味し、更なる成分、例えばマトリクス/バインダー)を含まず、又は本質的に含まない。QD層は、量子ドット発光ダイオード(QLED)、又は量子ドット太陽電池などの様々な用途が見つかってもよい。これらの用途において、LC/QDは、電子的にアドレスされ;電圧を適用することによって、電流がQD層中を流れる。用途に応じて、QD層の厚みは幅広い範囲にわたって様々であってよいが、典型的には3~200nm、好ましくは5~100nm、最も好ましくは6~30nmである。QD層は、LC/QDの単分子層で構成されることができ、したがって、使用されるLC/QDのサイズに等しい厚みを有し、したがって、厚みの下限を画定する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明は、図を参照することでよりよく理解される。
【0026】
【
図1a】
図1aは、本発明の様々な側面を概説する。
【
図1b】
図1bは、本発明の様々な側面を概説する。
図1bにおいて、x軸は粒子径を示し、y軸は粒子数を示す。
【
図2】
図2は、本発明により合成された典型的なQDのTEM画像を示し、結晶構造の立方晶の性質を示す。
【
図3】
図3は、沈殿によって調製した典型的な出発固体材料粉末のSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第一の側面において、本発明は、発光結晶、具体的には量子ドットの分類からの発光結晶を製造する方法に関する。より具体的には、本発明は、2~50nm径、好ましくは3~15nm径の発光結晶を製造する方法に関し、上記発光結晶は、式(I)の化合物から選択され、
M1
aM2
bXc (I)
式中:
M1は、Cs、Rb、K、Na、Liから選択される一つ又は複数のアルカリ金属を表し、
M2は、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBiからなる群から選択される一つ又は複数の金属を表し、
Xは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、シアニド、チオシアネート、イソチオシアネート、及びスルフィドからなる群から選択される一つ又は複数のアニオンを表し、好ましくはCl、Br、及びIからなる群から選択される一つ又は複数のハロゲン化物を表し、
aは、1~4を表し、
bは、1~2を表し、
cは、3~9を表し;
上記方法は、以下に定義される固体材料を提供する工程(a)と、以下に定義される液体の存在下で上記材料を分散させる工程(b)とを含む。
【0028】
以下、本発明の態様を更に詳細に説明する。
【0029】
LC/QDは、環境に敏感な材料であることが知られている。まず、それらは、非放射再結合経路を誘起する凝集をする傾向があり、低減されたルミネセンス量子収量につながる。したがって、一旦合成したら、LC/QDを安定させる手段を講じなければならない。本明細書に記載されている方法は、安定な懸濁液(「インク」)の形態でLC/QDを提供する改善された製造方法を開示することによって、この要求を満たす。
【0030】
本明細書に記載されている方法は、まず材料を従来のように合成し、次に大きさを低減し、安定化してLC/QDを得るので、「トップダウン」のアプローチであると考えてもよい。この方法は、「ボトムアップ」アプローチであるKovalenko(上記)において知られ、記載されているものとは反対である。発明の方法を更に示すが、以下に提供される実験によって制限されるものではない。
【0031】
本明細書に記載されている方法は、優れた特性を有するLC/QDを提供する。第一に、小さなFWHM値(発光ピークの幅;例えば、507nmでの放出について19nm)が観察される。第二に、高いルミネセンス量子収量が観察される(例えば507nmでの放出について71%)。したがって、発明の方法によって提供されるLC/QDは、電子機器及び光デバイスの多くの用途に適している。更に、本発明の方法によって提供されるLC/QDは、コーティング(非電子的/非光学的)物品、例えば装飾的コーティングにも適している。
【0032】
発明の方法は、公知の製造方法と比較して優れている。第一に、それははるかにロバストであり、容易にアップスケールすることができる。第二に、必要な出発物質がより少なく、生じる副生成物がより少ない。第三に、低沸点溶媒中で直接合成を行うことができるので、LC/QD合成の後、低沸点溶媒(例えばトルエン)への溶媒交換が必要ない。その結果、製造費が著しく低減され、LC/QDを多くの用途に利用可能にする。
【0033】
式(I)の発光結晶/量子ドット:本発明の方法は、2~50nm、特に3~15nmの平均径を有するLC/QDを提供する。発光ピークの小さいFWHM値によって示されるように、LC/QDは、狭い径分布を更に有する。
【0034】
一実施形態において、本発明は式(I)のLC/QDに関し、式中、a=1、b=1、c=3である。
【0035】
一実施形態において、本発明は式(I)のLC/QDに関し、式中、M1=Csである。
【0036】
一実施形態において、本発明は式(I)のLC/QDに関し、式中、M2=Pbである。
【0037】
一実施形態において、本発明は式(I)のLC/QDに関し、式中、Xは、Cl、Br、Iの群から選択される少なくとも2つの素子の組合せである。
【0038】
一実施形態において、本発明は、Cs1Pb1X3、特にCsPbBr3、CsPbBr2Iから選択される、式(I)のLC/QDに関する。この実施形態は、CsBrとPbBr2、又はCsIとPbBr2の混合物の対応するモル混合物を含む。
【0039】
一つの更なる実施形態において、本発明は、ドープされた材料を更に含む、すなわち、式中M1の一部が他のアルカリ性の金属と置き換えられ、又は式中M2の一部が他の遷移金属若しくは希土類素子と置き換えられ、又は式中Xの一部が他のハロゲン化物と置き換えられた、式(I)のLC/QDに関する。
【0040】
一つの更なる実施形態において、本発明は、M1SnX3、M1
3Bi2X9、M1GeX3から選択される式(I)のLC/QDに関する。
【0041】
式(I)の化合物は、化学量論及び非化学量論的化合物を含む。式(I)の化合物は、化学量論的であり、b及びcは自然数を表し;それらは、非化学量論的であり、b及びcは整数を表す。一つの更なる実施形態において、本発明は、式中Xの一部が、シアニド、チオシアネート、イソチオシアネート、及びスルフィドからなる群から選択される一つ又は複数のアニオンと置き換えられた、式(I)のLC/QDに関する。例示的な実施形態は、
M1
aM2
bX1
c’X2
c’’ (I-1)
と特定され、式中:
M1、M2、a、bは、上記で特定したものであり;
X1は、特定されたハロゲン化物を表し;
X2は、シアニド、チオシアネート、イソチオシアネート、及びスルフィドから選択されるアニオンを表し;
c’+c’’は、3~9の実数を表し、c’/c’’は0.9より大きい。
スルフィドは2-であるので、c’’を算出するとき二回計数する。
【0042】
式(I-1)の例示的な実施形態としては、CsPbCl2.9CN0.1、CsSnBr2(SCN)1、Cs3Bi2Br8.8(NCS)0.2、及びCsPbBr0.43I2.43S0.07が挙げられる。
【0043】
固体材料:工程(a)で提供される適切な固体材料は、少なくとも15nmの平均粒径、及び多分散径分布、典型的には15nm~100μm、より典型的には50nm~50μmを有する。固体材料の粒子径は、SEM、TEM、又はBETによって決定される。
【0044】
更に、そのような固体材料は、所望のLC/QDの化学組成に対応する化学組成を有する。したがって、そのような固体材料は、aモルのM1、bモルのM2、及びcモルのXの化学量論的組成を有する。
【0045】
そのような材料は、例えば以下に概説するように、(a1)、(a2)、(a3)の異なる方法によって本発明の方法に提供してもよい。材料は、公知の方法によって、連続的又は不連続的に工程(b)へと提供してもよい。
【0046】
湿式合成処理(a1):式(I)による固体材料の製造は、それ自体は公知である。最も一般的な方法としては、湿式合成処理、例えば、溶媒ベース相又は水相からの沈殿処理が挙げられる。材料は、公知の方法によって、連続的又は不連続的に工程(b)へと提供してもよい。
【0047】
この方法は、「トップダウン」であると考えてもよい:湿式合成によって得られる固体出発物質は、15nmより大きい平均粒径(BET、SEM、又はTEMで測定される)を有する、多分散粒子径分布を示すのに対して、合成された発光結晶は、2~50nmの平均径を有する非常に狭い径分布を示す(
図1bを参照)。本明細書に記載されている方法に従うことで、狭い径分布、及び2~50nmの粒子径を得るために、出発物質の平均粒径及び多分散性が低減される。
【0048】
気相の乾式合成処理(a2-1):式(I)による固体材料を製造する代替の方法としては、気相中での乾式合成処理、特に分解及び熱分解処理、例えば、フレーム溶射熱分解処理が挙げられる。この処理によって得られる固体材料は、典型的に(a1)に比べて小さい。
【0049】
この方法は、「トップダウン」であると考えてもよい:乾式合成によって得られる固体出発物質は、15nmより大きい平均粒径(BET、SEM、又はTEMで測定される)を有する、多分散粒子径分布を示すのに対して、合成された発光結晶は、2~50nmの平均径を有する非常に狭い径分布を示す(
図1bを参照)。したがって、出発物質の少なくとも一部は、大きさが低減される。
【0050】
ミリングによる乾式合成処理(a2-2):式(I)による固体材料を製造する更なる方法としては、前駆体材料の乾式ミリングが挙げられる。この実施形態において、固体材料は、式aM1
1X1、及びM2
bX(c-a)を有する二以上の乾燥前駆体の混合物であり、式中、置換基は上記で定義したものである。例えば、CsPbBr3、Cs4PbBr6は、前駆体CsI及びPbBr2の対応するモル混合物によって利用可能であり、又はCsPbBr2Iは、前駆体CsBr及びPbBr2の対応する混合物によって利用可能である。次に乾式ミリング処理、例えば、乳棒と乳鉢を使用して、又は撹拌されたミリングボールを含む処理で、式(I)による乾燥結晶材料が得られる。この処理は、ミリングによって誘起される固相反応であるとみなすことができる。
【0051】
インサイチュ形成(a3):式(I)による固体材料のための更なる代替としては、インサイチュ形成、例えば、分散処理の間の固相反応が挙げられる。この実施形態において、固体材料は、式aM1
1X1、及びM2
bX(c-a)を有する二以上の乾燥前駆体の混合物であり、式中、置換基は上記で定義したものである。例えば、CsPbBr3、Cs4PbBr6は、前駆体CsI及びPbBr2の対応するモル混合物によって利用可能であり、又はCsPbBr2Iは、前駆体CsBr及びPbBr2の対応する混合物によって利用可能である。次に固体材料の2つの前駆体の反応によって、分散処理の間に(すなわちインサイチュで)、式(I)による結晶材料が形成される。
【0052】
上記の前駆体は、次に公知の方法、例えば湿式合成処理、乾式合成処理によって入手可能である。当業者は、式(I)の発光結晶を得る適切な前駆体を選択する立場にある。
また、使用される前駆体は、得られるLC/QDより大きいので、この方法は「トップダウン」であると考えてもよい。
【0053】
一実施形態において、固体材料の平均粒径(BET、SEM、又はTEMによって決定される)は、少なくとも15nm、好ましくは15nm~100μm、より好ましくは50nm~50μmの間である。
【0054】
有利な実施形態において、固体材料は、式(I)の最終的なLC/QDと同じ化学量論を有する単一の組成物から成る。
【0055】
工程(b):理論に限定されないが、液相中に出発物質を分散させると、多くの効果が同時に、又は続いて起こると考えられる。
【0056】
第一に、固体材料は、液相内に均一に分布する。
【0057】
第二に、固体材料は界面活性剤と接触する。これによって材料が被覆され、液相中で安定化すると考えられる。
【0058】
第三に、固体材料の粒子径が低減される。理論に限定されないが、2つの生じるメカニズム:(1)最終的なLC/QD径より大きい粒子の機械的破砕/分裂、(2)最終的なLC/QD径より小さい粒子のオストワルド成熟及び焼結によって、単分散粒子径分布が得られると考えられる。
【0059】
特定の実施態様において、固体出発物質の平均粒径は、対応して合成されたLC/QDの平均粒径の、少なくとも1.5倍(好ましくは少なくとも2倍、最も好ましくは少なくとも5倍)大きい。
【0060】
液体:上記に概説したように、工程(b)の分散は液相中で行われる。適切な液体は、(i)液体界面活性剤、(ii)(液体又は固体)界面活性剤と溶媒との組合せ、(iii)(液体又は固体)界面活性剤と、溶媒と、(液体又は固体)プレポリマー又はポリマーとの組合せ、及び(iv)(液体又は固体)界面活性剤と液体プレポリマーとの組合せから選択してもよい。
【0061】
実施形態(i)において、液相は、液体界面活性剤から成る(又は本質的に成る)。この実施形態は、溶媒を用いない単純な系であるため有利である。
【0062】
実施形態(ii)において、液相は、(液体又は固体)界面活性剤と溶媒との組合せから成る(又は本質的に成る)。この実施形態は、固体界面活性剤の使用を可能にするので有利である。
【0063】
実施形態(iii)において、液相は、(液体又は固体)界面活性剤と、一つ又は複数の溶媒と、(液体又は固体)プレポリマー又はポリマーとの組合せから成る(又は本質的に成る)。この実施形態は、以下に定義するような中間体を製造するために直接使用してもよい組成物を提供するので有利である。
【0064】
実施形態(iv)において、液相は、液体プレポリマーから成る(又は本質的に成る)。この実施形態は、溶媒を含まず、以下に定義するような中間体を製造するために直接使用してもよい組成物を提供するので有利である。
【0065】
溶媒:溶媒という用語は上記で定義した。誤解を避けるため、溶媒との用語は、界面活性剤もプレポリマーも含まない。
【0066】
有利にも、溶媒は、炭化水素(直鎖、分岐鎖、及び環状炭化水素を含む)、芳香族炭化水素、エーテル(グリコールエーテルを含む)、エステル、アルコール、ケトンの群から選択される。好ましくは、溶媒は、直鎖及び分岐鎖C5~24アルカンの群から選択され、上記アルカンは、非置換であるか、又はフェニル若しくはナフチルによって置換されている。最も好ましくは、溶媒は、直鎖C5~15アルカン、及びトルエンの群から選択される。
【0067】
更なる実施形態において、溶媒は、140℃未満、好ましくは120℃未満の沸点を示す。本発明の方法の有益な側面として、以前の方法、例えば上述したProtesescu又はZhang(両者とも140~200℃の合成方法を用いている)と比べて非常に低い温度でLC/QDを得ることが可能である。
【0068】
プレポリマー:用語プレポリマーは、上記で定義した。有利にも、プレポリマーは、アクリレート、カーボネート、スルホン、エポキシ、ビニル、ウレタン、イミド、エステル、フラン、メラミン、スチレン、及びシリコーンの群から選択される。好ましくは、プレポリマーは、アクリレート、ウレタン、スチレンの群から選択される。特に好ましくは、プレポリマーは、アクリレートの群から選択される。
【0069】
界面活性剤:本発明の文脈において、幅広い種類の界面活性剤を用いてもよい。適切な界面活性剤は、繰り返し実験で決定してもよく;その選択は、次の工程において用いられるポリマー、及び固体材料の性質に主に依存する。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤の分類から選択してもよい。二以上の界面活性剤を組み合わせて肯定的特性を改良することは、本技術分野において知られており;そのような界面活性剤の組合せもまた、本発明の対象である。
【0070】
非イオン性界面活性剤としては:マレイン酸ポリマー、例えば、ポリ(無水マレイン酸-オルト-1-オクタデセン)、ポリアミン、アルキルアミン、(例えば、N-アルキル-1,3-プロピレン-ジアミン、N-アルキルジプロピレン-トリアミン、N-アルキルトリプロピレン-テトラアミン、N-アルキルポリプロピレン-ポリアミン)、ポリ-(エチレンイミン)、ポリエステル、アルキルエステル(例えば、セチルパルミチン酸)、アルキルポリグリコールエーテル(例えば3~25個のエトキシ単位(EO)を有する脂肪族アルコールポリグリコールエーテル、例えばDehypon E124)、及びオキソアルコールポリグリコールエーテル)、混合アルキル/アリールポリグリコールエーテル、アルキルポリグルコシド(APG)、脂肪族アルコール、例えば、ステアリルアルコール(例えばLorol C18TM)が挙げられる。
【0071】
非イオン性界面活性剤としては、更に、ポリマーエトキシレート及び/又はプロポキシレート(EO/PO)付加体界面活性剤、例えば、脂肪族アルコールアルコキシレート、アルコールEO/PO付加体(脂肪族アルコールEO/PO付加体、オキソアルコールEO/PO付加体を含む)、EO/POブロックコポリマー、エチレンジアミンエチレンオキシド-プロピレンオキシド(EO/PO)ブロックコポリマー、末端キャップ(脂肪族)アルコールEO付加体及びEO/PO付加体(例えばブチル末端キャップ)、カルボン酸のエステル、特にEO/PO付加体及びソルビタンエステル(例えばSPANの群から)が挙げられる。
【0072】
非イオン性界面活性剤としては、アルコキシシラン、及びその加水分解生成物が更に挙げられる。
【0073】
非イオン性界面活性剤としては、アルキルホスフィン、酸化アルキルホスフィン(例えば、酸化トリオクチルホスフィン-TOPO)、及びアルキルチオールが更に挙げられる。
【0074】
非イオン性界面活性剤としては、脂肪酸のアルキルエステル(例えば、セチルパルミチン酸、ラウリン酸、カプリン酸)が更に挙げられる。
【0075】
非イオン性界面活性剤の好ましい分類は、アルキルイミン、アルキルアミン、例えばジオクチルアミン、オレイルアミン、オクタデシルアミン、ヘキサデシルアミンである。
【0076】
カチオン性界面活性剤としては:アルキルアンモニウムハロゲン化物、より具体的には、アルキルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド、ジアルキルジメチルアンモニウムハロゲン化物、例えばジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、トリアルキルメチルアンモニウムハロゲン化物、例えばトリオクチルメチルアンモニウムクロリド、ジ第四級(diquarternary)ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0077】
双性界面活性剤としては:ベタイン、例えばカプリル酸グリシネート、ココアミドプロピルベタイン、及びココアンホジ酢酸二ナトリウムが挙げられる。
【0078】
アニオン性界面活性剤としては、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、及びカルボキシレートが挙げられる。具体例としては、アルキルエーテルのリン酸エステル、アンモニウムラウリルサルフェート、アルカリラウリルサルフェート、及び関連するアルキルエーテルサルフェート、例えばアルカリラウレスサルフェートが挙げられる。
【0079】
アニオン性界面活性剤の好ましい分類は、脂肪酸、例えばオレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸の分類のカルボキシレートである。
【0080】
好ましい実施形態において、界面活性剤は、以下のリストから選択される:SP 13300、SP 20000、SP 24000SC、SP 41000、SP540、BYK9077、Hypermer KD1-SO-(AP)、Span65、Span80、Span85、メトキシ-エトキシ-エトキシ-酢酸、オレイルアミン、オレイン酸、ステアリン酸、ポリ(無水マレイン酸-オルト-1-オクタデセン)、及びTOPO。
【0081】
更に好ましい実施形態において、界面活性剤は、以下のリストから選択される:SP 13300、SP 20000、SP 24000SC、SP 41000、SP540、BYK9077、Hypermer KD1-SO-(AP)、Span65、Span80、Span85、メトキシ-エトキシ-エトキシ-酢酸、ステアリン酸、ポリ(無水マレイン酸-オルト-1-オクタデセン)、及びTOPO、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジオクチルアミン。
【0082】
更なる実施形態において、界面活性剤は、4~30個、好ましくは6~24個、最も好ましくは8~20個の炭素原子を有する、アルキル又はアルキル-エーテル鎖の群から選択される無極性末端基を含む、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び双性イオン界面活性剤の群から選択される。
【0083】
更なる実施形態において、界面活性剤は、式RO-(C2H4O)m(C3H6O)n-(式中、m及びnは、独立して0~10であるが、m+n>2、Rは、C1~5-アルキルである)を有するアルキルエーテルの群から選択される一つ又は複数の化学的部分を有する、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び双性イオン界面活性剤の群から選択される。
【0084】
更なる実施形態において、アニオン性界面活性剤は、式(II):
R(OC
nH
2n)
qOCH
2C(O)OH (II)
で表される、ポリエーテル尾部を含むモノカルボン酸から選択され、式中、RはC
1~5-アルキルであり、qは0~5の整数であり、nは1~3の整数である。その分類の5つの特に好ましい化合物は、
【化1】
であり、式中、qは0~4である。これは、Rがメチル、nが2、かつqが0~4の整数である式(II)の化合物に対応する。その分類の特に好ましい化合物は、
【化2】
である。
【0085】
分散処理:適切な分散処理としては、ミリングボールを含む分散方法が挙げられる。好ましい実施形態において、分散方法は、好ましくは撹拌ボールミルを用いてボールミリングすることである。好ましい実施形態において、ボール径は、5mm未満、好ましくは500ミクロン未満である。更なる実施形態において、分散方法は、10~1000μm、好ましくは20~500μmのボール径を有するボールミリングである。更なる実施形態において、分散方法は、少なくとも10W/kg、好ましくは100W/kg、最も好ましくは1000W/kgの、懸濁液の単位質量当たりにかかる比パワー入力を有するボールミリングである。一つの更なる実施形態において、分散処理の間の懸濁液の温度は、140℃未満、好ましくは120℃未満、最も好ましくは70℃未満である。驚くべきことに、撹拌されたミリングボールを用いることにより、上記に定義したような固体材料が、優れた光学特性(高い量子収量、小さなFWHM)を有するLC/QDへと変換され、優れた特性、及び低い反応温度を有するLC/QDを提供することができることが分かった。これは、公知の方法に勝る顕著な利点であると考えられる。
【0086】
本発明の方法の更なる実施形態において、固体材料:液体材料の質量比(溶媒+プレポリマー+界面活性剤)は0.0001~0.5、好ましくは0.0005~0.1、最も好ましくは0.001~0.05の範囲である。
【0087】
本発明の方法の更なる実施形態において、界面活性剤:固体材料の質量比は100~0.1、好ましくは50~0.5、最も好ましくは20~1の範囲である。
【0088】
後処理:更なる実施形態において、合成したままのLC/QDに、例えば以下の工程(b-2)、(b-3)、(b-4)及び(b-5)で概説するような後処理を行ってもよい。
【0089】
そのような後処理の一実施形態において、合成されたLC/QDのハロゲン原子Xは、アニオン交換によって、完全又は部分的に、他のハロゲン原子と置き換えることができる。アニオン交換(b-2)について、特に、ハロゲン化アルカリ、例えば、NaI、KI、LiI、及びハロゲン化鉛、例えばPbI2を使用してもよい。これは、発光ピークの微調整を可能にする。
【0090】
そのような後処理の更なる実施形態において、二以上の種類の式(I)の発光結晶を混合する。異なる種類の発光結晶を混合することによって、すなわち、そのような発光結晶から成る2つの懸濁液を組み合わせることによって、組成物の発光ピークが調整される。(b-5)
【0091】
更なる実施形態において、本発明の組成物は、合成された組成物の透析濾過によって、過剰な界面活性剤から精製してもよい。(b-3)
【0092】
更なる実施形態において、本発明の組成物のLC/QDの固形分は、合成された組成物の透析濾過又は溶媒蒸発によって増加してもよい。(b-4)
【0093】
第二の側面において、本発明は、「インク」とも呼ばれる懸濁液の形態の組成物、及びその使用に関する。以下、本発明の態様を更に詳細に説明する。
【0094】
したがって、本発明は、(i)本明細書に記載されているような式(I)の発光結晶と;(ii)本明細書に記載されているが、オレイルアミン、オレイン酸、及びトリオクチルホスフィンを除く界面活性剤と;(iii)本明細書に記載されているような任意の溶媒と;(iv)本明細書に記載されているような、任意のポリマー又はプレポリマーとを含む、懸濁液の形態の組成物を提供する。そのような組成物は新規であり、本発明の第一の側面に記載されているような本発明の方法によって得られてもよい。
【0095】
一実施形態において、本発明は、その量子収量が20%より高い、好ましくは50%より高い、最も好ましくは70%より高い懸濁液を提供する。
【0096】
更なる実施形態において、本発明は、可視発光についてのLC/QDのFWHMが、50nm未満、好ましくは40nm未満、最も好ましくは30nm未満である懸濁液を提供する。
【0097】
更なる実施形態において、本発明は、480~550nm又は600~680nmの間に発光ピークを有するLC/QDのFWHMが、40nm未満、好ましくは30nm未満、最も好ましくは20nm未満である懸濁液を提供する。
【0098】
更なる実施形態において、本発明は、480~530nmの間に発光ピークを有するLC/QDのFWHMが、40nm未満、好ましくは30nm未満、最も好ましくは20nm未満である懸濁液を提供する。
【0099】
成分(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の量は、幅広い範囲に渡って様々であってよく、なかでも、その使用目的及び界面活性剤の性質に依存する。
【0100】
一実施形態において、発光結晶(i):液体材料(ii)+(iii)+(iv)の質量比は0.0001~0.5、好ましくは0.0005~0.3、最も好ましくは0.001~0.1の範囲である。
【0101】
一つの更なる実施形態において、界面活性剤(ii):発光結晶(i)の質量比は100~0.05、好ましくは50~0.2、最も好ましくは20~1の範囲である。
【0102】
一つの更なる実施形態において、ポリマー又はプレポリマーの濃度は、組成物の合計の0.1~30質量%、好ましくは0.5~20質量%、最も好ましくは1~10質量%の範囲である。
【0103】
上記に概説したように、成分(i)及び(ii)は必須であるが、成分(iii)及び(iv)は任意である。したがって、本発明は、以下を含む(すなわち、含む(comprising)、又はからなる(consisting of))インクに関する:
成分(i)及び(ii)を含み、(ii)は液体であり、(iii)及び(iv)を含まない;
成分(i)、(ii)、(iii)を含み、(iv)を含まない;
成分(i)、(ii)、(iv)を含み、(iii)を含まない;
成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)を含む。
【0104】
一つの更なる実施形態において、組成物は、成分(i)、(ii)、(iii)及び(iv)を含み、成分(ii)は、芳香族炭化水素を含み、好ましくはトルエンであり、成分(iv)は、環状オレフィンコポリマーを含む。
【0105】
一つの更なる実施形態において、組成物は、成分(i)、(ii)、(iii)及び(iv)を含み、成分(ii)は、直鎖アルカン及び/又は芳香族炭化水素を含み、成分(iv)は、スチレンコポリマー及び/又はスチレンブロックコポリマーを含む。
【0106】
無溶媒インク:本発明は、本明細書に記載されている懸濁液の形態の、成分(i)、(ii)及び(iv)を含むが、しかしながら溶媒(iii)を含まない、又は本質的に含まない組成物を提供する。この実施形態において、LC/QD(i):液体材料(プレポリマー(iv)+界面活性剤(ii))の質量比は、好ましくは0.0001~0.5、好ましくは0.0005~0.3、最も好ましくは0.001~0.1の範囲である。そのような組成物は、無溶媒インクと呼ばれることがあり、後述するような中間体又は装置の製造者に供給することに特に適している。
【0107】
無溶媒インクに特に適するプレポリマーとしては、アクリレート、エポキシ、ウレタン、シリコーン、スチレンが挙げられる。再び、用語プレポリマーは、モノマー及びそのオリゴマーを含む。好ましくは、無溶媒インクは、アクリレートを含む。
【0108】
インクは、含まれる溶媒が10質量%未満、好ましくは1質量%未満である場合、無溶媒であるとみなす。
【0109】
更なる実施形態において、無溶媒インクは、重合開始剤、例えばラジカル光重合開始剤、又は温度感性ラジカル開始剤を更に含む。
【0110】
濃縮物:本発明は、溶媒(iii)を含まず、又は本質的に含まず、プレポリマー(iv)を含まず、又は本質的に含まず、界面活性剤(ii)は液体界面活性剤である、本明細書に記載されているような懸濁液の形態の組成物を提供する。この実施形態において、界面活性剤(ii):LC/QD(i)の質量比は、好ましくは100~1、好ましくは50~2、最も好ましくは20~10の範囲である。
【0111】
本明細書に記載されているインクは多くの用途があり、特に発光ダイオード(LED)を用いて、青色光を白色光に変換するために特に有用である。
【0112】
第三の側面において、本発明は、固体ポリマー組成物及びその使用に関する。固体ポリマー組成物との用語は、本明細書に記載されているようなLC/QDを含む有機又は無機のポリマーマトリクスを意味する。以下、本発明の態様を更に詳細に説明する。
【0113】
一実施形態において、本発明は、(i)本明細書に記載されているようなLC/QDと、(ii)本明細書に記載されているが、オレイルアミン、オレイン酸、及びトリオクチルホスフィンを除く界面活性剤と、(iii)好ましくは有機ポリマーから選択される硬化/固化ポリマーとを含む、固体ポリマー組成物を提供する。
【0114】
更なる実施形態において、有機ポリマーは、アクリレートポリマー、カーボネートポリマー、スルホンポリマー、エポキシポリマー、ビニルポリマー、ウレタンポリマー、イミドポリマー、エステルポリマー、フランポリマー、メラミンポリマー、スチレンポリマー、及びシリコーンポリマーの群から好ましくは選択される。したがって、上記ポリマーは、本明細書に記載されているプレポリマーの繰返し単位を好ましくは含む。更に、ポリマーは、直鎖又は架橋であることができる。
【0115】
更なる実施形態において、有機ポリマーは、アクリレートポリマー、エポキシポリマー、ウレタンポリマー、スチレンポリマー、シリコーンポリマー、及び環状オレフィンコポリマーの群から好ましくは選択される。したがって、上記ポリマーは、本明細書に記載されているプレポリマーの繰返し単位を好ましくは含む。更に、ポリマーは、直鎖又は架橋であることができる。
【0116】
一実施形態において、有機ポリマーは、スチレンコポリマー及び/又はスチレンブロックコポリマー、好ましくは、スチレン及びイソプレンのブロックコポリマー、スチレン、エチレン、及びブテンのブロックコポリマーを含む。
【0117】
一実施形態において、LC/QD:上記固体ポリマー組成物中のマトリクス(ポリマー+界面活性剤)の質量比は0.0001~0.1、好ましくは0.0005~0.05、最も好ましくは0.001~0.02の範囲である。
【0118】
一実施形態において、界面活性剤:上記固体ポリマー組成物中のLC/QDの質量比は100~0.05、好ましくは50~0.2、最も好ましくは20~1の範囲である。
【0119】
更なる実施形態において、本発明の固体ポリマー組成物の量子収量は20%より高く、好ましくは50%より高く、最も好ましくは70%より高い。
【0120】
更なる実施形態において、可視発光についての本発明の固体ポリマー組成物のFWHMは50nm未満、好ましくは40nm未満、最も好ましくは30nm未満である。
【0121】
第四の側面において、本発明は、一つ又は複数の層でコーティングされたシート状基材を含む中間品であって、上記層の少なくとも一つは機能層であり、上記機能層は本明細書に記載されている固体ポリマー組成物を含む、中間品に関する。以下、本発明の態様を更に詳細に説明する。
【0122】
有利な実施形態において、機能層は青色光を白色光に変換する。したがって、本発明は、特に発光ダイオード(LED)を用いて、又は液晶ディスプレイにおいて、青色光を白色光に変換するための固体ポリマー組成物の使用を提供する。
【0123】
第五の側面において、本発明は、新規な装置/物品に関する。以下、本発明の態様を更に詳細に説明する。
【0124】
一実施形態において、本発明は、電子機器及び光デバイスの群から選択される装置であって、上記装置は基材及び機能層を含む、装置を提供し;上記機能層は、本明細書に記載されているような式(I)のLC/QDと、本願明細書に記載されているが、オレイルアミン、オレイン酸、及びトリオクチルホスフィンを除く界面活性剤を含む。そのような装置は、ディスプレイ、モバイル機器、発光装置、及び太陽電池からなる群から選択されてもよく、特に、装置は液晶表示装置又は量子ドットLED(QLED)である。
【0125】
一実施形態において、本発明は、基材、及びコーティング、特に装飾的コーティングを含む物品を提供し、上記コーティングは、本明細書に記載されているような式(I)のLC/QDと、本願明細書に記載されているが、オレイルアミン、オレイン酸、及びトリオクチルホスフィンを除く界面活性剤とを含む。
【0126】
第六の側面において、本発明は、本明細書に記載されているようなポリマー組成物の製造方法に関する。方法は、本明細書において一つの又は唯一の出発物質として記載されているようなインクを用いること以外は本技術分野において知られている工程を含む。
【0127】
第七の側面において、本発明は、本明細書に記載されているような中間品の製造方法に関する。以下、本発明の態様を更に詳細に説明する。
【0128】
本発明による中間品は、溶液処理によって得られてもよい。これは、大面積及び連続操作に適する単純な技術によって全ての層を製造することを可能にするので、著しい利点であると考えられる。したがって、本発明は、本明細書に記載されているような中間品を製造する方法を提供し、上記方法は、(e)基材を提供する工程と、(f)好ましくは本明細書に記載されているようなインクを印刷し、続いてコーティングを乾燥及び/又は固化させることによって、本明細書に記載されているような固体ポリマー組成物を上記基材上に堆積する工程とを含む。
【0129】
第八の側面において、本発明は、本明細書に記載されているような電子機器の製造方法に関する。以下、本発明の態様を更に詳細に説明する。
【0130】
上記の中間品から始まる装置の製造は、それ自体知られているが、本発明の特定の中間品にはまだ適用されていない。
【実施例0131】
更に本発明を説明するために、以下の例を提供する。これらの例は、本発明の範囲を制限する意図なく提供する。他に記載がなければ、化学品の全てはアルドリッチから購入した。
【0132】
例1:沈殿法によって得られた固体材料からの合成
【0133】
PbBr2及びCsBrを酸性条件で混合することによって、三臭化セシウム鉛(CsPbBr3)を合成した。すなわち、2mmolのPbBr2(0.731g、98% ABCR)を、3mLの濃縮HBr(48%、アルファエイサー)に溶解した。2mmolのCsBr(0.426g、99.9% ABCR)を、1mLのH2Oに溶解し、PbBr2溶液に加えた。溶液から直ちに明るい橙色の固体が沈殿した。固体を濾過し、純粋なEtOHで4回洗浄し、減圧下で5時間乾燥させて、1.12gの純粋な斜方晶CsPbBr3を得た(収率96.8%)。この材料は、全くルミネセンスを示さない。SEM分析法は、平均粒径が0.5~6ミクロンの範囲であることを示した。
【0134】
乾燥CsPbBr3粉末を、オレイルアミン(70%、アルドリッチ)(CsPbBr3:オレイルアミン=1:10)、及びトルエン(>99.7%、フルカ)に加えた。CsPbBr3の最終濃度は1%であった。次に混合物を、周囲条件で1時間、200ミクロンの径を有するイットリウム安定化ジルコニアビーズを用いたボールミリングを行うことによって分散させ、緑のルミネセンスを有するインクを得た。Perkin Elmer Lambda 45 分光光度計、及びHamamatsu R928 光電管を備えるPerkin Elmer LS50B 分光蛍光計を用いて、10mmのクォーツキュベット内に入れた空気平衡溶液中のインクの吸収及びルミネセンス特性をそれぞれ記録した。励起波長での吸光度値が0.1以下になるまで、インクをトルエンで薄めた。
【0135】
上記のインクのフォトルミネセンス量子収量は71%であり、507nmに中心をおく発光ピークを有した。放出のFWHMは19nmと決定された。0.1MのNaOH中のフルオレセイン(分析参照グレード、アルドリッチ)溶液を、フォトルミネセンス量子収量標準として用いた。
【0136】
インクのTEM分析(
図2)は、非常に狭い粒子径分布を有する立方晶形の粒子の存在を示した。
【0137】
インクのXRD分析のため、QDをアセトニトリルで沈殿させ、分析のために乾燥させた。立方晶CsPbBr3が支配的な相であった。
【0138】
トルエンの代わりに純粋なメタクリル酸メチルを使用した以外は、上記の実験を繰り返した。最終的なインクは、わずかに青色シフトされた放出を示した。
【0139】
例2:フレーム溶射熱分解によって得られた固体材料からの合成
【0140】
CsPbBr3前駆体の調整のために、2.5mmolのセシウム酢酸塩(0.48g、ABCR)、2.5mmolの2-エチルヘキサン酸鉛(1.23g、ストレム)を、2-エチルヘキサン(アルドリッチ)に加え、混合物を150℃で1時間加熱することによって溶解させた。室温に冷却した後、7.5mmolのブロモベンゼン(1.18g、アルドリッチ)を、混合物に加えた。得られた溶液を、キシレンで質量1:2に薄めた。前駆体をスプレーノズルに供給し(9mLmin-1、HNP Mikrosysteme、ミクロ環状ギアポンプmzr-2900)、酸素で分散させ(9lmin-1、PanGas tech)、予め混合したメタン-酸素フレーム(CH4:1.2lmin-1、O2:2.2lmin-1)で着火した。オフガスは、減圧ポンプ(Busch、Seco SV1040CV)によって、約20m3h-1で、ガラス繊維フィルター(Schleicher & Schuell)を通してろ過した。得られた酸化物粉末を、ガラス繊維フィルターから集めた。得られた粉末のXRD分析は、CsPbBr3の組成物を確認した。SEM分析法は、平均粒径が500nm未満であることを示した。
【0141】
CsPbBr3粉末を、Span65(アルドリッチ)(CsPbBr3:Span65=1:10)及びトルエン(>99.7%、フルカ)に加えた。CsPbBr3の最終濃度は、0.2%であった。次に、混合物を、50ミクロンの径を有するイットリウム安定化ジルコニアビーズを用いて、周囲条件で30分間ボールミリングすることによって分散させ、緑のルミネセンスを有するインクを得た。例1に示すように、インクの吸収及びルミネセンス特性を記録した。上記のインクのフォトルミネセンス量子収量は37%であり、511nmに中心をおく発光ピークを有した。放出のFWHMは、25nmと決定された。
【0142】
インクのXRD分析のため、QDをアセトニトリルで沈殿させ、分析のために乾燥させた。立方晶CsPbBr3が支配的な相であった。
【0143】
例3:2つの異なる前駆体の混合物で構成される固体材料からの合成
【0144】
CsPbBr3の正味の化学量論的組成に至るものと等しいモル比で、商業的なCsBr(99.9%、ABCR)、及びPbBr2(98%、ABCR)の粉末を混合した。塩混合物を、オレイルアミン(70%、アルドリッチ)(CsPbBr3:オレイルアミン=1:10)、及びトルエン(>99.7%、フルカ)に加えた。CsPbBr3の最終濃度は、0.2%であった。次に、混合物を、50ミクロンの径を有するイットリウム安定化ジルコニアビーズを用いて、周囲条件で150分間ボールミリングすることによって分散させ、緑色のルミネセンスを有するインクを得た。例1に示すように、インクの吸収及びルミネセンス特性を記録した。上記のインクのフォトルミネセンス量子収量は48%であり、503nmに中心をおく発光ピークを有した。放出のFWHMは、37nmと決定された。
【0145】
インクのXRD分析のため、QDをアセトニトリルで沈殿させ、分析のために乾燥させた。立方晶CsPbBr3が支配的な相であった。
【0146】
例4:異なる分散方法を用いた沈殿法によって得られた固体材料からの合成
【0147】
メチルスルホキシド(DMSO)溶液からPbBr2及びCsIを混合することによって、二臭化ヨウ化セシウム鉛(CsPbBr2I)を合成した。すなわち、1mmolのPbBr2(0.367g、98% ABCR)を、2mLのDMSO(>99.7%、アクロス)中に溶解させた。1mmolのCsI(0.259g、99.9%、アルファエイサー)を、1mLのDMSO中に溶解し、PbBr2溶液に加えた。20mLのトルエン(99.7%、フルカ)を添加した後、明赤色の固体が溶液から直ちに沈殿した。固体を濾過し、純粋なEtOHで4回洗浄し、減圧下で5時間乾燥させて、0.58gの純粋な斜方晶系CsPbBr2Iを得た(収率92.6%)。この材料は、全くルミネセンスを示さない。
【0148】
0.02gの得られた塩を、9.78gのテトラデカン(99%、アルドリッチ)、0.2gのオレイルアミン(70%、アルドリッチ)、50ミクロンの径を有する10gのイットリウム安定化ジルコニアビーズ、及び3cmのマグネットバーを含む30mLのガラスバイアル内に入れた。混合物を、1000rpm、120℃で4時間混合した。室温に冷却した後、インクを0.45umのPTFEフィルターを通して濾過し、黄色のルミネセンスが観察された。例1に示すように、インクの吸収及びルミネセンス特性を記録した。フォトルミネセンスは、30nmの発光ピークのFWHMを有する、552nmに中心におく発光ピークによって特徴づけられた。
【0149】
以下の更なる実験はすべて、同様の処理パラメータを使用したボールミリングによって行った(LC/QD:界面活性剤の比率=1:10、ミリングビーズ径=50ミクロン、ミリング時間=30分、インク中のLC/QD濃度=0.2%、光学特性評価のために0.45μmPTFEシリンジフィルターで濾過、光学特性評価は例1におけるものと同一である)。
【0150】
【0151】
例10:乾式ミリング法で得られた固体材料からの合成
【0152】
PbBr2及びCsBrをミリングすることによって、三臭化セシウム鉛(CsPbBr3)を合成した。すなわち、2mmolのPbBr2(0.731g、98% ABCR)、及び2mmolのCsBr(0.426g、99.9% ABCR)を、イットリウム安定化ジルコニアビーズ(直径2mm)で2時間ミリングして、1.08gの純粋な斜方晶CsPbBr3を得た(収率93.3%)。この材料は、ルミネセンスを全く示さなかった。SEM分析法は、平均粒径が0.5~6ミクロンの範囲であることを示した。
【0153】
橙色のCsPbBr3粉末を、オレイルアミン(70%、アルドリッチ)(CsPbBr3:オレイルアミン=5:1)、及びトルエン(>99.7%、フルカ)に加えた。CsPbBr3の最終濃度は、1%であった。次に混合物を、周囲条件で1時間、50ミクロンの径を有するイットリウム安定化ジルコニアビーズを用いたボールミリングを行うことによって分散させ、緑のルミネセンスを有するインクを得た。例1に示すように、インクの吸収及びルミネセンス特性を記録した。
【0154】
上記のインクのフォトルミネセンス量子収量は85%であり、502nmに中心をおく発光ピークを有した。放出のFWHMは、19nmと決定された。
【0155】
次に、緑色放出インクを、トルエン中10%の環状オレフィンコポリマー(COC、TOPAS Advanced Polymers)溶液と混合し、ガラス基材にコーティングし、60℃で15分間乾燥させた。乾燥後、積分球を備える分光蛍光計(Quantaurus Absolute PL 量子収量測定システム C1134711、Hamamatsu)で、フィルムの得られた光学特性を測定した。フィルムのフォトルミネセンス量子収量は80%であり、502nmに中心をおく発光ピークを有した。FWHMは、19nmと決定された。
【0156】
例11:合成後の放出波長の調整
【0157】
例10からの固体CsPbBr3材料を、オレイルアミン(70%、アルドリッチ)(CsPbBr3:オレイルアミン=2:1)、及びn-ヘプタン(99%、アルドリッチ)に加えた。CsPbBr3の最終濃度は、1%であった。次に混合物を、周囲条件で1時間、50ミクロンの径を有するイットリウム安定化ジルコニアビーズを用いたボールミリングを行うことによって分散させ、緑のルミネセンスを有するインクを得た。例1に示すように、インクの吸収及びルミネセンス特性を記録した。上記のインクのフォトルミネセンス量子収量は89%であり、501nmに中心をおく発光ピークを有した。放出のFWHMは、20nmと決定された。
【0158】
PbI2及びCsIをミリングすることによって、三ヨウ化セシウム鉛(CsPbI3)を合成した。すなわち、2mmolのPbI2(0.922g、99%、アルドリッチ)、及び2mmolのCsI(0.519g、99%、ABCR)を、イットリウム安定化ジルコニアビーズ(直径2mm)で2時間ミリングして、1.387gの純粋な斜方晶CsPbI3を得た(収率96.2%)。この材料は、ルミネセンスを全く示さなかった。
【0159】
黄色のCsPbI3粉末を、オレイルアミン(70%、アルドリッチ)(CsPbBr3:オレイルアミン=2:1)、及びn-ヘプタン(99%、アルドリッチ)に加えた。CsPbI3の最終濃度は、1%であった。次に混合物を、周囲条件で3時間、50ミクロンの径を有するイットリウム安定化ジルコニアビーズを用いたボールミリングを行うことによって分散させ、赤色のルミネセンスを有するインクを得た。例1に示すようにインクの吸収及びルミネセンス特性を記録したが、しかしながら、MeOH中のクレシルバイオレット(アルドリッチ)溶液をフォトルミネセンス量子収量標準として用いた。上記のインクのフォトルミネセンス量子収量は61%であり、674nmに中心をおく発光ピークを有した。放出のFWHMは、48nmと決定された。
【0160】
次に、1mLの緑色放出CsPbBr3インクを、150μlの赤色放出CsPbI3インクと混合した。混合物は直ちに放出波長を変え、529nmに中心をおき、58%のフォトルミネセンス量子収量、及び21nmのFWHMを有することがわかった。元のCsPbBr3インク(501nm)及びCsPbBrI3インク(676nm)に由来するフォトルミネセンスの痕跡はなかった。
【0161】
更なる試験において、0.5mLの緑色放出CsPbBr3インクを、1mLの赤色放出CsPbI3インクと混合した。混合物は直ちに放出波長を変え、640nmに中心をおき、86%のフォトルミネセンス量子収量、及び37nmのFWHMを有することがわかった。再び、元のCsPbBr3インク(501nm)及びCsPbBrI3インク(676nm)に由来するフォトルミネセンスの痕跡は見つからなかった。
【0162】
例12:無溶媒系
【0163】
例10の0.5gの緑色放出インクを、1gのPermabond UV681 UV-硬化性接着剤(Permabond Engineering Adhesives)と混合した。緑色放出インク中に存在する溶媒を、80℃で90分間混合物を加熱することによって除去した。次に、残った材料を2つのガラススライドの間にコーティングし、30秒間UV硬化させ(UVACUBE 100、 Honle UV Technology)、固体ポリマーフィルムにした。得られたフィルムの光学特性を、例10のように測定した。フィルムのフォトルミネセンス量子収量は77%であり、502nmに中心をおく発光ピークを有した。FWHMは、19nmと決定された。
【0164】
例13:スチレンブロックコポリマーを有する組成物及び固体ポリマー組成物
【0165】
例11からの0.5gの緑色放出インク(CsPbBr3インク)を、5gの、トルエン中10質量%のポリスチレン-ブロック-ポリイソプレン-ブロック-ポリスチレン(アルドリッチ、スチレン14質量%)と混合した。次に、材料をガラススライド上にコーティングし、60℃で硬化させて固体ポリマーフィルムにした。得られたフィルムの光学特性を、例10のように測定した。フィルムのフォトルミネセンス量子収量は84%であり、501nmに中心をおく発光ピークを有した。FWHMは、20nmと決定された。
【0166】
例11からの0.5gの緑色放出インク(CsPbBr3インク)を、5gの、n-ヘプタン中10質量%のポリスチレン-ブロック-ポリ(エチレン-ran-ブタジエン)-ブロック-ポリスチレン(アルドリッチ)と混合した。次に、材料をガラススライド上にコーティングし、60℃で硬化させて固体ポリマーフィルムにした。得られたフィルムの光学特性を、例10のように測定した。フィルムのフォトルミネセンス量子収量は83%であり、501nmに中心をおく発光ピークを有した。FWHMは、20nmと決定された。