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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129476
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】高周波プラズマ発生装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20230907BHJP
   C23C 16/509 20060101ALI20230907BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230907BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H05H1/46 M
C23C16/509
H01L21/31 C
H01L21/302 101B
H05H1/46 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023114416
(22)【出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】303034908
【氏名又は名称】村田 正義
(72)【発明者】
【氏名】村田正義
(57)【要約】
【課題】
高周波プラズマ発生装置の分野では、液晶デイスプレイや有機ELデイスプレイ等の高品質化・大画面化・低コスト化等への対応のため、電源の高周波数化及び基板サズの更なる大型化が試みられているが、依然として、電磁波特有の定在波に起因するプラズマの不均一化という問題を抱えている。この問題を解決可能なプラズマ発生装置を提供すること。
【解決手段】
矩形型非接地電極の前記接地電極に対向しない面の4つ辺の辺中央部にそれぞれに設けた給電点から供給される第1の電力と、前記接地電極に対向しない面の4つの角部に設けた各給電点から供給される第2、第3、第4及び第5の電力を時間的に切り替えて供給し、前記第1の電力が生成するゼロ次のベッセル関数型のプラズマと、前記第2、第3、第4、及び第5の電力が生成する余弦波型のプラズマを重畳させることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性ガス供給系及び排気系を備えた反応容器と、矩形平板型の非接地電極と、前記非接地電極に対向して配置される接地電極と、少なくとも高周波電源と整合器と真空装置用電流導入端子と給電導体を有する高周波電力供給手段と、前記非接地電極に設けられた複数の給電点を備え、前記非接地電極に設けられた前記複数の給電点に前記高周波電源の出力である高周波電力を供給し、前記非接地電極と前記接地電極に挟まれたプラズマ生成領域でプラズマを発生させ、前記プラズマ生成領域に収容された基板にプラズマ処理を施す高周波プラズマ発生装置において、
前記複数の給電点は、前記矩形平板型の非接地電極の前記接地電極に対向しない面の4つの辺の辺中央部及び4つの角部にそれぞれに設けられ、
前記高周波電力供給手段は、各前記4つの辺の辺中央部に設けられた給電点に供給される第1の高周波電力と、前記4つの角部に設けられた各前記給電点にそれぞれに供給される第2、第3、第4及び第5の高周波電力を、時間的に切り替えて供給することを特徴とする高周波プラズマ発生装置。
【請求項2】
前記高周波電力供給手段は、前記第1の高周波電力と、前記第2の高周波電力と、前記第3の高周波電力と、前記第4の高周波電力と、前記第5の高周波電力とを、時間的にこの順序で、それぞれの所要時間に区切って、繰り返して供給することを特徴とする請求項1に記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項3】
前記高周波電力供給手段は、前記第1の高周波電力を供給する第1の時間帯と、前記第2ないし第5の高周波電力が供給される第2の時間帯を設定し、前記第1の時間帯と前記第2の時間帯を交互に繰り返しながら前記第1の高周波電力と、前記第2ないし第5の高周波電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項4】
前記高周波電力供給手段は、前記第1の高周波電力を供給する時間帯を、前記第2ないし第5の高周波電力を供給する時間帯に比べて長く設定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項5】
前記高周波電力供給手段は、周波数13.56MHz、又は27.12MHz、又は40.68MHz、又は54.24MHz、又は67.8MHzを発生する高周波電源を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項6】
前記反応性ガスは、少なくともシランガス又は有機シランガスを含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の高周波プラズマ発生装置。
【請求項7】
前記反応性ガスは、少なくとも水素又は酸素又は塩素を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の高周波プラズマ発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大面積基板を対象にした高周波プラズマ発生装置に関する。特に、プラズマCVDによる薄膜形成、プラズマALDによる薄膜形成及びプラズマエッチングによる微細加工に用いられる大面積高周波プラズマ発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶デイスプレイ、有機ELデイスプレイ及び各種半導体デバイス等の製造には、プラズマCVD装置、プラズマALD装置及びプラズマエッチング装置等が活用されている。
近年、プラズマCVD装置、プラズマALD装置及びプラズマエッチング装置の応用分野では、液晶ディスプレイパネル及び有機ELディスプレイパネルの大画面化、高品質化、低価格化のニーズが更に強くなり、それらの生産に用いるマザーガラスの大型化への取り組みが、鋭意進められている。なお、マザーガラスの寸法は、第10世代:2,880mmx3,100mm、第11世代:3,000mmx3,320mmと言われている。
プラズマ応用分野において、プラズマ処理の高品質化を図るには、プラズマダメージ(イオン衝撃による基板の損傷)を抑制することが必要である。プラズマダメージ(イオン衝撃による基板の損傷)を抑制する手段として、電源周波数を工業周波数の13.56MHzより高くすることが効果的であることが、一般に知られている。
しかしながら、電源周波数を高くすると、工業周波数である13.56MHz(真空中での波長:22.12m)の場合に比べて、波長が短くなるので、プラズマ生成領域である電極間に供給電力の定在波が発生する。前記定在波の発生は、均一なプラズマの生成を阻害する、という問題を起こす。この定在波に起因するプラズマの不均一化という問題は、プラズマを励起する電磁波固有の現象であることから、高周波プラズマ発生装置では避けて通れない問題である。
【0003】
特許文献1には、容量結合型平行平板プラズマ処理装置の電源の高周波数化の問題に関し、以下に示す主旨の記述がある。
従来、上部電極への給電は給電棒を介して行っており、給電棒の周囲をチャンバーと略同一寸法の箱で覆って電磁波を遮蔽している。しかし、給電棒のインダクタンスが非常に大きいため、上部電極への供給高周波電力の周波数が高くなると、プラズマからの反射波の高調波が給電棒のインダクタンス成分のために反射され、さらに給電棒が設置されている箱の中の至るところで反射し、反射した高調波がプラズマに接触している上部電極表面に戻る。電極径が大きい場合、電極表面に定在波が生成されやすい。その結果、電極表面の電界分布が不均一になる。特許文献1に記載のプラズマCVD装置は、板状部材を非接地電極に対向配置し、且つ該電極にローパスフィルターを設けることにより給電棒のインダクタンスを低下させるとともに、高調波をグランドに落とすことを特徴としている。
【0004】
特許文献2には、容量結合型平行平板プラズマ処理装置の電源の高周波数化の問題に関し、以下に示す主旨の記述がある。
印加周波数を上昇させると、高周波電流は電極のごく表面しか流れないようになり、給電棒から電極に供給された高周波電力は、電極裏面を通って電極の円周方向に至り、電極のプラズマ接触面を円周側から中心に向かって徐々に供給される。また、上部電極の円周部分は絶縁体(容量成分)で囲まれており、絶縁体の外側のチャンバーは保安接地されている。このため、上部電極のプラズマ接触面で干渉作用により定在波が形成され、電極径方向での電界分布が不均一になる。特許文献2に記載のプラズマCVD装置は、給電部材の給電位置を移動させる移動機構を有する(給電棒の位置を時間的に変化させる)ことを特徴としている。
【0005】
特許文献3には、容量結合型平行平板プラズマ処理装置の電源の高周波数化の問題に関し、以下に示す主旨の記述がある。
基板の大型化に伴う電極の大型化には、定在波の問題がある。高周波電源として、通常13.56MHz又は27.12MHzの周波数の高周波電源が用いられ得る。基板のサイズが1m×1m以下では、堆積すべき膜の種類に応じて成膜条件を最適化することにより、得られる膜厚分布は±10%以下にすることができる。しかし、基板サイズが1m×1m以上になると、定在波の発生により、膜厚分布の所望の均一性を確保することができなくなる。
特許文献3に記載のプラズマCVD装置は、非接地電極に複数個の誘電体が埋め込まれ、 前記電極に供給する高周波電力の周波数の波長をλとする時、電極の中心を中心とする直径がλ/8~λ/4の範囲に設定された第1の円形領域では、前記電極の表面における金属の表面積と前記誘電体の表面積の割合が7:3~5:5であることを特徴とする。
【0006】
特許文献4には、容量結合型平行平板プラズマ処理装置の電源の高周波数化の問題に関し、以下に示す主旨の記述がある。
従来のプラズマCVD装置では、シャワープレート電極の裏側の面(プラズマ発生領域から見て裏側の面)の中心1点を介して高周波電圧を印加している。この従来の方法では、該シャワープレート電極の面積が増大すると、成膜ガスを均一にプラズマ化することが原理的に困難である。これは高周波特有の定在波の問題である。
特許文献4に記載のプラズマCVD装置は、シャワーヘッド電極の構造が、原料ガスを大面積状態に拡散させ、流れ分布を均一化する手段を内包した容器状のヘッド本体と、前記ヘッド本体の開口を覆い、ガス噴出孔を備えた一枚のシャワープレートを備えること、複数の電源装置を有し、各前記電源装置には位相制御装置が接続され、前記位相制御装置は、各前記電源装置が出力する高周波電圧の位相をそれぞれ制御するように構成され、各前記電源装置は、前記ヘッド本体の底面に中心から等距離で異なる位置に配置された給電点にそれぞれ接続されること、を旨とする特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-331996
【特許文献2】特開2001-060581
【特許文献3】特開2006-324603
【特許文献4】特開2005-220368
【0008】
【非特許文献1】高橋秀俊、電磁気学(1963)、裳華房、319-322
【非特許文献2】R.P.Feynman, R.B.Leightion, M.L.Sands著(戸田盛和訳)、ファインマン物理学、四:電磁波と物性(1971)、岩波書店、24-28
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、高周波プラズマ発生装置に関する問題として、主に定在波に起因するプラズマの不均一化の問題が指摘されている。しかしながら、前記問題は、必ずしも電磁気学的知見を総合的に駆使して明確に解明された訳ではなく、実験的あるいは経験的な知見を基に問題解決の試みが続けられているというのが現状である。
本発明者は、従来の代表的装置である矩形型電極を用いた高周波プラズマ発生装置に関し、電磁エネルギーの流れを示すポインテイングベクトルP=ExB(ただし、E:電場、B:磁場)の伝播経路に着目し、それを分析、評価することにより、問題点の所在を検討した。その結果、以下に示すように、高周波プラズマ発生装置における定在波に起因する問題の所在及び解決すべき課題を明確に把握できた。
【0010】
特許文献1及び2に記載の高周波プラズマ発生装置は、図11に示されるように、円筒型の真空容器100a、円板型の非接地電極101a及び円板型の接地電極102aからなる一対の平行平板型電極(容量結合型平行平板電極)、高周波電源103a、整合器104a、給電棒105a、給電点106a等を備え、該一対の平行平板型電極間にプラズマ107aを生成し、基板108aにプラズマ処理を行う。なお、非接地電極101aは、非接地電極本体101aaとシャワープレート電極101abで構成される。前記非接地電極101aaは、図示しない反応ガス導入口と前記反応ガス導入口に連結された空洞113aを有し、ガス噴出孔114aを有するシャワープレート電極101abと連結面112aを介して連結されている。
図11に示されるプラズマ発生装置において、高周波電源103aの出力である高周波電力は、整合器104a、給電棒105a及び給電点106aを介して、円筒型の真空容器100aの壁と円板型の非接地電極101aの裏側面(プラズマ107aから見て裏側)の間、及び該真空容器100aの壁と該非接地電極101aの側面の間を伝播し、シャワープレート電極101abと接地電極102aの間に供給される。
即ち、この高周波電力の流れは、給電棒105aから供給され、円筒型の真空容器100aの内壁に沿って伝播し、該一対の円板型電極101a、102aの周辺からその間に流れ込む円筒波状(円柱波状)の形態になっている。
高周波電源103aの出力である高周波電力Pは、電磁気学の知見によると(例えば、非特許文献1参照)、ポインテイングベクトルP=ExB(joule/m・s)で表され、波動として伝播する。ただし、Eは電界(ベクトル表示)、Bは磁界(ベクトル表示)である。図11及び図12に示されるプラズマ発生装置の場合、高周波電力Pの伝播は、模式的に、図11及び図12の109aa、109abのように示される。即ち、図11及び図12において、一対の平行平板型電極(容量結合型平行平板電極)101a、102a間の電界Eは、該一対の電極101a、102aの表面(プラズマ107aに接する面)の法線方向を向き、磁界Bは該一対の電極101a、102aの中心軸110aを中心にした円111aの接線方向を向いている。なお、磁界Bは、アンペールの法則により、電界E方向に流れる変位電流の方向に対して右ネジを回転する方向に発生することにより、円111aで表されるように、渦巻き状に発生する。したがって、ポインテイングベクトルP=ExBは該電極周辺から中心軸110aの方向を向いている。これは、高周波電源103aの出力である高周波電力Pが、円板型電極の周辺から中心軸110aへ集中するように、円筒波状(円柱波状)の形態で流れ込む、ということを意味している。なお、円筒波状(円柱波状)の形態で流れ込む高周波電力は、該一対の電極101a、102a内部で消費される。
高周波プラズマ発生装置が、図11及び図12に示されるような円筒型の容器100aに配置され、中心軸110aを中心にした軸対称型の一対の円板型電極101a、102aを備え、該一対の円板型電極101a、102aの周辺部から円筒波状の形態で電力が供給されるという構造を有する場合、高周波電力Pが円板型電極の周辺から中心軸110aへ集中するように流れ込む円筒波状(円柱波状)の形態であることから、該一対の電極101a、102a間の電界は、例えば、非特許文献2に記載されているように、ゼロ次のベッセル関数J(2πr/λ)で表される。
即ち、電力波の波長をλ、中心軸110aからの距離をrで表すと、該一対の電極101a、102a間に発生する電界Eは、波長λと中心軸からの距離rに依存し、次式で表される。
E=E・J(2πr/λ) ・・・(1)
ただし、Eは定数、J(2πr/λ)はゼロ次のベッセル関数である。ゼロ次のベッセル関数J(2πr/λ)は、図13に示されるように、2πr/λ=2.405、5.520、8.634を満たす場合、J(2πr/λ)=0となる。
式(1)は、一対の円板型電極の半径Rが、R=(λ/2π)x2.405=0.383λより大きいサイズの場合は、電界がゼロという領域が発生することを意味している。なお、ゼロ次のベッセル関数J(2πr/λ)に依存する一対の電極101a、102a間の電界分布は、前記一対の電極101a,102aの斜視図で見ると、模式的に、図14のように示される。
したがって、特許文献1及び2に記載のプラズマ発生装置では、一対の円板型電極の半径Rが、R=(λ/2π)x2.405=0.383λ以上である場合、電界分布の均一化は電磁気学的に無理がある、という問題がある。
即ち、特許文献1及び特許文献2に記載のプラズマ発生装置は、前記一対の電極間の電界分布がゼロ次のベッセル関数J(2πr/λ)に依存することから、基板サイズが略0.383λ以上である場合には大面積化への対応が出来ない、という課題を有する。
【0011】
特許文献3及び4に記載の高周波プラズマ発生装置は、図15及び図16に示されるように、矩形筒型の真空容器100b、矩形板型の非接地電極101b及び矩形板型の接地電極102bからなる一対の平行平板型電極(容量結合型平行平板電極)、複数の高周波電源103b-1、103b-2、103b-3、103b-4、複数の整合器104b-1、104b-2、104b-3、104b-4、電極中心から等距離で異なる複数の位置に配置された複数の給電棒105b-1、105b-2、105b-3、105b-4等を備え、該一対の平行平板型電極間にプラズマ107bを生成し、基板108bにプラズマ処理を行う。なお、前記非接地電極101bは、非接地電極本体101baとシャワープレート電極101bbから構成される。前記非接地電極本体101baは、図示しない反応ガス導入口と前記反応ガス導入口に連結された空洞113bを有し、ガス噴出孔114bを有するシャワープレート電極101bbと連結面112bを介して連結されている。
図15及び図16に示される高周波プラズマ発生装置において、高周波電源103b-1、103b-2、103b-3、103b-4の出力である高周波電力は、整合器104b-1、104b-2、104b-3、104b-4、給電棒105b-1、105b-2、105b-3、105b-4を介して、矩形筒型の真空容器100bの壁と矩形板型の非接地電極101bの裏側面(プラズマ107bから見て裏側)の間、及び該真空容器100bの壁と該非接地電極本体101bの側面の間を伝播し、該一対の平行平板型電極101bb、102b間に供給される。
この場合、ポインテイングベクトルP=ExBは、図15及び図16に示される109ba、109bbのように表される。これは、高周波電源103b-1、103b-2、103b-3、103b-4の出力である高周波電力が一対の矩形電極101b、102bの周辺から中心軸110bへ集中するように流れ込む角筒波状(矩形筒波状)の形態になっている。なお、角筒波状(矩形筒波状)の形態で流れ込む高周波電力は、該一対の電極101b、102b内部で消費される。
図16において、一対の平行平板型電極(容量結合型平行平板電極)101b、102b間の電界Eは、該一対の電極101b、102bの表面(プラズマ107bに接する面)の法線方向を向き、磁界Bは該一対の電極101b、102bの中心軸110bを中心にした円111bの接線方向を向いている。なお。磁界Bは、アンペールの法則により、電界E方向に流れる変位電流の方向に対して右ネジを回転する方向に発生するので、円111bで表されるように、渦巻き状に発生する。
高周波プラズマ発生装置が、図15及び図16に示されるような矩形筒状容器100bに、中心軸110bを中心にした軸対称型の一対の矩形板型電極101b、102b及び矩形筒形の電力伝播路を備える構造の場合、該一対の電極101b、102b間の電界は、前記特許文献1及び前記特許文献2に記載のプラズマ発生装置と同様に、電力波の波長λと中心軸110bからの距離rの関数であるゼロ次のベッセル関数J(2πr/λ)に依存する。
即ち、該一対の電極101b、102b間に発生する定在波の電界Eは、波長λと中心軸からの距離rに依存し、次式で表される。
E=E・J(2πr/λ) ・・・(1)
ただし、Eは定数、J(2πr/λ)はゼロ次のベッセル関数である。ゼロ次のベッセル関数J(2πr/λ)は、図13に示されるように、2πr/λ=2.405、5.520、8.634を満たす場合、J(2πr/λ)=0となる。これは、矩形板型の電極の中心から辺までの距離Lが、L==(λ/2π)x2.405=0.383λより大きいサイズの場合は、電界がゼロという領域が発生することを意味している。なお、ゼロ次のベッセル関数J(2πr/λ)に依存する一対の電極101b、102b間の電界分布は、前記一対の電極101b、102bの斜視図で見ると、模式的に、図17のように示される。
したがって、特許文献3及び特許文献4に記載のプラズマ発生装置は、矩形板型の電極の中心から辺までの距離Lが、L=(λ/2π)x2.405=0.383λ以上である場合、電界の均一化は電磁気学的に無理がある、という問題がある。
即ち、特許文献3及び4に記載のプラズマ発生装置は、前記一対の電極間の電界分布がゼロ次のベッセル関数J(2πr/λ)に依存することから、基板サイズが略0.383λ以上である場合には大面積化への対応が出来ない、という課題を有する。
【0012】
本発明は、上述した従来の代表的装置である矩形型電極を用いた高周波プラズマ発生装置の前記電極間の電界分布がゼロ次のベッセル関数J(2πr/λ)に依存することから大面積プラズマの均一化ができない、という問題を解決可能な高周波プラズマ発生装置を提供することを目的とする。
即ち、本発明は、プラズマCVD、プラズマALD及びプラズマエッチング等のプラズマ処理に用いられる矩形型電極を用いた高周波プラズマ発生装置に関し、均一なプラズマの発生が可能である高周波プラズマ発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、反応性ガス供給系及び排気系を備えた反応容器と、矩形平板型の非接地電極と、前記非接地電極に対向して配置される接地電極と、少なくとも高周波電源と整合器と真空装置用電流導入端子と給電導体を有する高周波電力供給手段と、前記非接地電極に設けられた複数の給電点を備え、前記非接地電極に設けられた前記複数の給電点に前記高周波電源の出力である高周波電力を供給し、前記非接地電極と前記接地電極に挟まれたプラズマ生成領域でプラズマを発生させ、前記プラズマ生成領域に収容された基板にプラズマ処理を施す高周波プラズマ発生装置において、
前記複数の給電点は、前記矩形平板型の非接地電極の前記接地電極に対向しない面の4つの辺の辺中央部及び4つの角部にそれぞれに設けられ、
前記高周波電力供給手段は、各前記4つの辺の辺中央部に設けられた給電点に供給される第1の高周波電力と、前記4つの角部に設けられた各前記給電点にそれぞれに供給される第2、第3、第4及び第5の高周波電力を、時間的に切り替えて供給することを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記高周波電力供給手段は、前記第1の高周波電力と、前記第2の高周波電力と、前記第3の高周波電力と、前記第4の高周波電力と、前記第5の高周波電力とを、時間的にこの順序で、それぞれの所要時間に区切って、繰り返して供給することを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明において、前記高周波電力供給手段は、前記第1の高周波電力を供給する第1の時間帯と、前記第2ないし第5の高周波電力が供給される第2の時間帯を設定し、前記第1の時間帯と前記第2の時間帯を交互に繰り返しながら前記第1の高周波電力と、前記第2ないし第5の高周波電力を供給することを特徴とする。
第4の発明は、第1の発明から第3の発明のいずれか一つの発明において、前記高周波電力供給手段は、前記第1の高周波電力を供給する時間帯を、前記第2ないし第5の高周波電力を供給する時間帯に比べて長く設定することを特徴とする。
第5の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれか一つの発明において、前記高周波電力供給手段は、周波数13.56MHz、又は27.12MHz、又は40.68MHz、又は54.24MHz、又は67.8MHzを発生する高周波電源を備えることを特徴とする。
第6の発明は、第1の発明から第5の発明のいずれか一つの発明において、前記反応性ガスは、少なくともシランガス又は有機シランガスを含むことを特徴とする。
第7の発明は、第1の発明から第5の発明のいずれか一つの発明において、前記反応性ガスは、少なくとも水素又は酸素又は塩素を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成された本発明の高周波プラズマ発生装置は、矩形型電極を用いる高周波プラズマ発生装置において、電極中央部領域に生成されるゼロ次のベッセル関数型プラズマと4つの隅角部に近い領域に生成される余弦波型プラズマを時間的に分離して交互に供給し、且つ前記ゼロ次のベッセル関数型プラズマと前記余弦波型プラズマを重畳させることが可能な高周波電力供給手段を備えることにより、大面積プラズマの均一化が可能となるという効果を奏する。即ち、従来の装置が抱えるプラズマの不均一性を解消可能な新規の高周波プラズマ発生装置を提供可能である。
本発明による高周波プラズマ発生装置は、大画面液晶デイスプレイ、大画面有機ELデイスプレイ、大面積太陽電池及び各種半導体デバイス等の分野にける大面積均一のプラズマ生成が可能であり、製品製造コストの低減及び性能向上への貢献度は著しく大きいことから、産業上の貢献度は著しく大きい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成を示す模式的断面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である高周波電力供給手段の構成を示す模式的構成図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である複数の高周波電源から出力されるパルス電力のタイミング順序を示すタイムチャートである。
図4図4は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である矩形型の非接地電極の裏面の4つの辺の辺中央部に設けられた給電点57a、57b、57c、57dから供給される第1の電力P1の伝播形態を示す模式的断面図である。
図5図5は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である矩形型非接地電極の裏面の4つの辺の辺中央部に設けられた給電点57a、57b、57c、57dから供給される第1の電力P1により発生するプラズマを接地電極側から見た場合の模式的説明図である。
図6図6は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である矩形型非接地電極の裏面の4つの辺の辺中央部に設けられた給電点57a、57b、57c、57dから第1の電力P1を供給した際に発生する電界の模式的説明図(シャワープレート電極2bの頂点17a-1と17d-1を結ぶ線に沿った電界)である。
図7図7は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である矩形型非接地電極の4つの角部に設けられた給電点17a、17b、17c、17dの中の一つである17aから供給された第2の電力P2の伝播形態を示す模式的断面図である。
図8図8は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である矩形型非接地電極の前記給電点17aから供給される第2の電力P2により生成されるプラズマの概念(余弦波型のプラズマ)を示す模式的説明図(a)、(b)である。
図9図9は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置で生成されるプラズマを接地電極3からシャワープレート電極2bの方向で見た場合の模式的説明図(a)及びシャワープレート電極2bの頂点17a-1と17d-1を結ぶ線に沿った電界分布の模式的説明図(b)である。
図10図10は、本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である複数の高周波電源から出力されるパルス電力のタイミング順序を示すタイムチャートである。
図11図11は、円形型電極を有する従来の高周波プラズマ発生装置の構成を示す模式的断面図である。
図12図12は、円形型電極を有する従来の高周波プラズマ発生装置における電力の伝播とポインテイングベクトルを示す模式的説明図である。
図13図13は、ゼロ次のベッセル関数J(2πr/λ)のグラフである。2πr/λ=2.405、5.520、8.634を満たす領域で、J(2πr/λ)=0となる。
図14図14は、円形型電極を有する従来の高周波プラズマ発生装置の電界分布を示す模式的説明図である。
図15図15は、矩形型電極を有する従来の高周波プラズマ発生装置の構成を示す模式的断面図である。
図16図16は、矩形型電極を有する従来の高周波プラズマ発生装置における電力の伝播とポインテイングベクトルを示す模式的説明図である。
図17図17は、矩形型電極を有する従来の高周波プラズマ発生装置の電界分布を示す模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同様の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更可能である。また、以下に示す図面は、説明の便宜上、各部材の縮尺が、実際と異なる場合がある。また、各図面間においても、縮尺が、実際と異なる場合がある。
【0017】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成について、図1図9を参照して、説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成を示す模式的断面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である高周波電力供給手段の構成を示す模式的構成図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である複数の高周波電源から出力されるパルス電力のタイミング順序を示すタイムチャートである。図4は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である矩形型の非接地電極の裏面の4つの辺の辺中央部に設けられた給電点57a、57b、57c、57dから供給される第1の電力P1の伝播形態を示す模式的断面図である。図5は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である矩形型非接地電極の裏面の4つの辺の辺中央部に設けられた給電点57a、57b、57c、57dから供給される第1の電力P1により発生するプラズマを接地電極側から見た場合の模式的説明図である。図6は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である矩形型非接地電極の裏面の4つの辺の辺中央部に設けられた給電点57a、57b、57c、57dから第1の電力P1を供給した際に発生する電界の模式的説明図(シャワープレート電極2bの頂点17a-1と17d-1を結ぶ線に沿った電界)である。図7は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である矩形型非接地電極の4つの角部に設けられた給電点17a、17b、17c、17dの中の一つである17aから供給された第2の電力P2の伝播形態を示す模式的断面図である。図8は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である矩形型非接地電極の前記給電点17aから供給される第2の電力P2により生成されるプラズマの概念(余弦波型のプラズマ)を示す模式的説明図(a)、(b)である。図9は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置で生成されるプラズマを接地電極3からシャワープレート電極2bの方向で見た場合の模式的説明図(a)及びシャワープレート電極2bの頂点17a-1と17d-1を結ぶ線に沿ったプラズマの強さの分布の模式的説明図(b)である。
【0018】
本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置は、図1及び図2に示されるように、排気系を有する反応容器1と図示しない反応性ガス供給系と前記反応性ガスをプラズマ化する電極2、3及び高周波電力供給手段8を備えている。
反応容器1は、図1に示されるように、箱状の反応容器である。反応容器1の内部には、後述の非接地電極の電極本体2aと後述のシャワープレート電極2bから成る非接地電極2と、後述の接地電極3が、後述の反応性ガスをプラズマ化するための一対の電極として配置される。
反応容器1は、図示しない真空ポンプに接続された排気口9a、9bを備えている。排気口9a、9bは、図示しない真空ポンプと組み合わせて稼働させることにより、反応容器1の内部を所定の圧力に調整し、該圧力を保持することが可能である。また、反応容器1内部を高真空度に真空引きすることが可能である。
【0019】
接地電極3は、反応容器1の所定の場所に、例えば、底面に配置される。 接地電極3と後述のシャワープレート電極2bは互いに対向して配置される。接地電極3には基板5が載置される。接地電極3は、前記排気口9a、9bと連携して用いられる通気穴9aa、9baを備えている。
接地電極3は、主面3aを有し、該主面3aで基板5と接し、保持する。基板5の温度は、接地電極3の内部に設けられた図示しない基板ヒータにより所定の温度に制御される。接地電極3の形状は、例えば、後述のシャワープレート電極2bと同様に、矩形である。寸法は、後述の非接地電極2より一回り大きい寸法で、ここでは、例えば、3.2mx3.2mである。
基板5は、図示しない基板搬入搬出用バルブを開閉することにより、大気側から接地電極の主面3aに搬入、載置され、目的とするプラズマ処理が行なわれた後、大気側へ搬出される。ここで、基板5のサイズを、例えば、3mx3mとする。
【0020】
非接地電極2は、図1に示されるように、図示しない反応性ガス供給源から反応性ガスを導入する反応性ガス導入口7と前記反応性ガスを拡散する空洞2cを有する非接地電極本体2aと、前記反応性ガスを噴出する多数の反応性ガス噴出孔2dを有する矩形平板型のシャワープレート電極2bとを図示しないボルトで締め付けて組み立てられるという構造を有する。即ち、前記非接地電極本体2aと前記シャワープレート電極2bは図示しない複数のボルトを用いて、締め付けられて、連結される。
非接地電極2は、絶縁材4を介して片持ち梁の棚1aにより反応容器1の壁に固定される。なお、非接地電極2は図示しない絶縁材を介して、真空容器1の天井に吊り下げて固定してもよい。
なお、非接地電極本体2aは、反応性ガス導入口7から導入された反応性ガスを拡散する空洞2cを介して、前記反応性ガスを後述の多数の反応性ガス噴出孔2dへ輸送する。
シャワープレート電極2bは、図1に示されるように、多数の反応性ガス噴出孔2dを備え、前記反応性ガス導入口7から導入され、前記電極本体2aの空洞2cで拡散されて輸送された反応性ガスを噴出する。反応性ガス噴出孔2dは、直径略0.4mm~略1mmの円形に形成される。ここでは、例えば、0.8mmとする。原料ガス噴出孔の直径を略1mm以上にすると、ガスの噴出量の空間分布が空洞2cの圧力依存度が強くなり、その結果、ガス噴出量が不均一に成る。それを略1mm以下にすると、空間分布は均一になるが、加工に際し多大の労力と費用が発生する。前記孔直径0.8mmはガスの噴出量の空間分布が均一であり、製作加工費を抑制できることで妥当な数値と言える。
シャワープレート電極2bの寸法は、基板5の大きさに対応して選ばれるが、例えば、基板5のサイズが3mx3mの場合、ほぼ同様のサイズに、例えば、3mx3mとする。
非接地電極本体2aは、図1及び図2に示されるように、前記非接地電極本体2aの接地電極3の主面3aと対向しない面の4つの辺の辺中央部及び4つの角部に、それぞれに高周波電力が供給される地点である給電点57a、57b、57c、57d、17a、17b、17c、17dが設けられる。
即ち、給電点57a、57b、57c、57dは、前記非接地電極本体2aの裏面(接地電極3と対向しない面)の4つの辺の辺中央部に設けられ、給電点17a、17b、17c、17dは、前記非接地電極本体2aの裏面の4つの頂点である角部に設けられる。
ここで、シャワープレート電極2bの接地電極3と対向する面の4つの頂点を、図2に示されるように、17a-1、17b-1、17c-1、17d-1と呼ぶ。
シャワープレート電極2bと接地電極3との間隔d、ガス圧力、及びプラズマ発生開始電圧との関係は、予め、後述の高周波電力供給手段を用いて実験を行い、そのデータに基いて選ばれる。なお、プラズマ発生に必要な印加電圧と、真空容器内部の圧力pと該間隔dの積(即ち、pd)の関係は、パッシェン則に従う、ことが知られている。
【0021】
前記シャワープレート電極2bと接地電極3の間に電力を供給する高周波電力供給手段8の構成は、図2に示される。前記高周波電力供給手段8に用いられる周波数は、周波数13.56MHz、又は27.12MHz、又は40.68MHz、又は54.24MHz、又は67.8MHzから選ばれる。その選定理由は、工業周波数13.56MHz及びその倍波に相当する電源は安価に入手できるから、である。なお、VHF(30MHz~300MHz)帯域から選ぶこともできる。高周波電源の合計出力は、例えば、10KW~50KWである。
高周波プラズマ発生装置の応用においては、イオンダメージを抑制するために周波数を高くすることが求められる。ここでは、例えば、工業周波数13.56MHzの2倍波である27.12MHzとする。27.12MHzの電磁波の波長は、真空中では11.06mであるが、プラズマ中では、波長が短縮するので、真空中の波長より短い。波長短縮率0.7として、略7.7mである。
高周波電力供給手段8は、図2に示されるように、給電点57aに高周波電力を供給するために、第1の高周波電源50と、電力4分配器51と、第1の整合器53aと、第1の真空装置用電流導入端子55aと、第1の給電導体56aと、を有する第1の高周波電力供給回路を備える。電力4分配器51は第1の高周波電源51の出力を4つに等分配し、同軸ケーブル52a、52b、52c、52dを介して、それぞれ第1、第2、第3及び第4の整合器53a、53b、53c、53dへ送電する。前記第1の給電導体56aは、インピーダンスの不連続的変化を抑制するために、前記第1の真空装置用電流導入端子55aの中心導体と同じ直径を有する棒状の金属材で形成するのが好ましい。
また、給電点57bに高周波電力を供給するために、第1の高周波電源50と、電力4分配器51と、第2の整合器53bと、第2の真空装置用電流導入端子55bと、第2の給電導体56bと、を有する第2の高周波電力供給回路を備える。前記第2の給電導体56bは、インピーダンスの不連続的変化を抑制するために、前記第2の真空装置用電流導入端子55bの中心導体と同じ直径を有する棒状の金属材で形成するのが好ましい。
また、給電点57cに高周波電力を供給するために、第1の高周波電源50と、電力4分配器51と、第3の整合器53cと、第3の真空装置用電流導入端子55cと、第3の給電導体56cと、を有する第3の高周波電力供給回路を備える。前記第3の給電導体56cは、インピーダンスの不連続的変化を抑制するために、前記第3の真空装置用電流導入端子55cの中心導体と同じ直径を有する棒状の金属材で形成するのが好ましい。
また、給電点57dに高周波電力を供給するために、第1の高周波電源50と、電力4分配器51と、第4の整合器53dと、第4の真空装置用電流導入端子55dと、第4の給電導体56dと、を有する第4の高周波電力供給回路を備える。前記第4の給電導体56dは、インピーダンスの不連続的変化を抑制するために、前記第4の真空装置用電流導入端子55dの中心導体と同じ直径を有する棒状の金属材で形成するのが好ましい。
【0022】
更に、給電点17aに高周波電力を供給するために、第2の高周波電源10aと、第5の整合器11aと、第5の真空装置用電流導入端子12aと、第5の給電導体13aと、を有する第5の高周波電力供給回路を備える。前記第5の給電導体13aは、インピーダンスの不連続的変化を抑制するために、前記第5の真空装置用電流導入端子12aの中心導体と同じ直径を有する棒状の金属材で形成するのが好ましい。
また、給電点17bに高周波電力を供給するために、第3の高周波電源10bと、第6の整合器11bと、第6の真空装置用電流導入端子12bと、第6の給電導体13bと、を有する第6の高周波電力供給回路を備える。前記第6の給電導体13bは、インピーダンスの不連続的変化を抑制するために、前記第6の真空装置用電流導入端子12bの中心導体と同じ直径を有する棒状の金属材で形成するのが好ましい。
また、給電点17cに高周波電力を供給するために、第4の高周波電源10cと、第7の整合器11cと、第7の真空装置用電流導入端子12cと、第7の給電導体13cと、を有する第7の高周波電力供給回路を備える。前記第7の給電導体13cは、インピーダンスの不連続的変化を抑制するために、前記第7の真空装置用電流導入端子12cの中心導体と同じ直径を有する棒状の金属材で形成するのが好ましい。
また、給電点17dに高周波電力を供給するために、第5の高周波電源10dと、第8の整合器11dと、第8の真空装置用電流導入端子12dと、第8の給電導体13dと、を有する第8の高周波電力供給回路を備える。前記第8の給電導体13dは、インピーダンスの不連続的変化を抑制するために、前記第8の真空装置用電流導入端子12dの中心導体と同じ直径を有する棒状の金属材で形成するのが好ましい。
【0023】
高周波電力供給手段8は、電力供給タイミング制御装置15を備え、前記第1、第2、第3、第4及び第5の高周波電源50、10a、10b、10c、10dの出力の時間帯及びタイミングを制御する。電力供給タイミング制御装置15と、前記第1、第2、第3、第4及び第5の高周波電源50、10a、10b、10c、10d、10dは、それぞれ、信号線20、20a、20b、20c、20dで接続され、制御信号の送受信ができる。
【0024】
ここで、第1の高周波電源50から第1、第2、第3及び第4の高周波電力供給回路を介して、それぞれ給電点57a、57b、57c、57dへ給電される電力を、第1の電力P1と呼ぶ。
第2の高周波電源10aから第5の高周波電力供給回路を介して給電点17aへ給電される電力を、第2の電力P2と呼ぶ。
第3の高周波電源10bから第6の高周波電力供給回路を介して給電点17bへ給電される電力を第3の電力P3と呼ぶ。
第4の高周波電源10cから第7の高周波電力供給回路を介して給電点17cへ給電される電力を、第4の電力P4と呼ぶ。
第5の高周波電源10dから第8の高周波電力供給回路を介して給電点17dへ給電される電力を、第5の電力P5と呼ぶ。
高周波電力供給手段8は、前記第1~第5の高周波電源50、10a、10b、10c、10dの出力である第1~第5の電力P1~P5の供給タイミング及び供給の時間帯を、電力供給タイミング制御装置15から送信される同期信号を用いて、制御する。即ち、第1、第2、第3、第4及び第5の高周波電源50、10a、10b、10c、10d、10dは、それぞれ、前記電力供給タイミング制御装置15から信号線20、20a、20b、20c、20dから送信される同期信号を参照して、出力電力の切り替え時間帯及び時間帯を制御する。
例えば、高周波電力供給手段8は、図3の示されるタイムチャートに従って、第1、第2、第3、第4及び第5の電力P1、P2、P3、P4、P5を時間的に切り替えて供給する。
【0025】
即ち、前記高周波電力供給手段8は、前記第1の高周波電力P1と、前記第2の高周波電力P2と、前記第3の高周波電力P3と、前記第4の高周波電力P4と、前記第5の高周波電力P5とを、時間的にこの順序で、それぞれの所要時間に区切って供給する。
前記第1の電力P1は、図3に示されるように、時間t1~t2に供給され、時間t2~t3の間(T1)を置いて、前記第2の電力P2は、時間t3~t4に供給され、時間t4~t5の間を置いて、前記第3の電力P3は、時間t5~t6に供給され、時間t6~t7の間を置いて、前記第4の電力P4は、時間t7~t8に供給され、時間t8~t9の間を置いて、前記第5の電力P5は時間t9~t10に供給される。そして、時間t10~t11の間を待って、前記第1の電力P1は、時間t11~t12に供給される。同様にして、第1、第2、第3、第4及び第5の電力P1、P2、P3、P4、P5が繰り返しながら供給される。
具体的には、図3に示されるタイムチャートにおいて、第1の電力P1の供給時間帯(パルス幅)Hw1及び繰り返し時間間隔T0を、例えば、500μ秒及び1m秒とする。第2の電力P2の供給時間帯(パルス幅)Hw2及び繰り返し時間間隔T0を、例えば、100μ秒及び1m秒とする。第3の電力P3の供給時間帯(パルス幅)Hw3及び繰り返し時間間隔T0を、例えば、100μ秒及び1m秒とする。第4の電力P4の供給時間帯(パルス幅)Hw4及び繰り返し時間間隔T0を、例えば、100μ秒及び1m秒とする。第5の電力P5の供給時間帯(パルス幅)Hw5及び繰り返し時間間隔T0を、例えば、100μ秒及び1m秒とする。なお、隣り合う供給時間帯の間隔T1を、例えば、20μ秒とする。
上記のように、第1、第2、第3、第4及び第5の電力P1、P2、P3、P4、P5は、異なる時間帯に供給されることから、それぞれの電力同志での干渉現象は発生しない。即ち、第1、第2、第3、第4及び第5の電力P1、P2、P3、P4、P5は、互いに独立した関係にある。
【0026】
次に、第1の電力P1が給電点57a、57b、57c、57dに供給される際に発生するプラズマの形態について、以下説明する。
第1の高周波電源50の出力を、例えば、20KWとし、図3に示されるタイムチャートにおいてP1のみ(P2、P3、P4、P5はゼロとする)を、第1、第2、第3及び第4の高周波電力供給回路を介して、給電点57a、57b、57c、57dに供給する。そうすると、第1の電力P1は、図4に示されるように、各前記給電点57a、57b、57c、57dからそれぞれ非接地電極本体2aと反応容器1の壁の間を伝播し、前記非接地電極本体2aの側面を通り、前記シャワープレート電極2bの周辺部から前記シャワープレート電極2bと接地電極3の間へ、角筒波状(矩形筒波状)の形態で流れ込む。即ち、第1の高周波電源50から給電点57a、57b、57c、57dに供給された電力は、図12及び図16に示される従来のプラズマ発生装置における電力波と同様に、一対の電極2b、3の間に角筒波状(矩形筒波状)の形態で流れ込む。
その結果、従来のプラズマ発生装置と同様に、一対の電極2b、3の間に、次式(1)で表せるゼロ次のベッセル関数に従う電界分布を有する電界Eが発生する。
E=E・J(2πr/λ) ・・・(1)
ただし、Eは定数、J(2πr/λ)はゼロ次のベッセル関数である。
前記第1の高周波電源50と前記第1、第2、第3及び第4の整合器53a、53b、53c、53dを所要の条件に調整すると、図4に示されるように、一対の電極2b、3の間にプラズマ16が発生する。
ここで、改めて、ゼロ次のベッセル関数J(2πr/λ)に依存するシャワープレート電極2bと接地電極3の間の電界分布の形態を模式的に、図5図6に示す。
矩形型非接地電極2の裏面の4つの辺のそれぞれの辺中央部に設けられた給電点57a、57b、57c、57dから供給される電力P1により発生するプラズマ16は、シャワープレート電極2bの中心部に極大値を持つゼロ次のベッセル関数で表される定在波が発生する。この定在波の電圧の強さは、図6に示される曲線で表わされる。ただし、横軸は、シャワープレート電極2bの頂点17a-1と17d-1を結ぶ線(line-x)である。
図6によれば、電界がほぼ一様な領域は、電極中心から略0.25λと見ることができる。即ち、シャワープレート電極2bと接地電極3の間に発生するプラズマは、該電極の中心から半径0.25λ程度の領域は一様なプラズマが発生する、と考えられる。これは、図5に示されるように、直径0.5λの円で囲まれる領域は一様なプラズマが生成されることを意味している。しかしながら、図5において、シャワープレート電極2bの4つの角部17a-1、17b-1、17c-1、17d-1に近い領域は、前記0.5λより遠い領域であるので、プラズマが弱い状態、あるいはプラズマが生成されない状態にある。
従って、第1の電力P1が給電点57a、57b、57c、57dに供給される際に発生するプラズマは、図6に示されるように、シャワープレート電極2bの中心点から直径0.5λの円で囲まれる領域Aでは、ほぼ一様なプラズマが生成される。上記第1の高周波電源50の場合、その周波数は27.12MHzであるので、そのプラズマ内部での波長は、波長短縮率0.7として、略7.7mである。
即ち、図5に示される直径0.5λの円で囲まれる領域Aは、直径略3.85mである。電極のサイズは、3mx3mであるので、図6に示される該電極の4つの角に近い領域Bを除いて、ほぼ一様なプラズマが生成される。ただし、該4つの角に近い領域Bでのプラズマは弱い。即ち、電極のサイズ:3mx3mを対象にした場合、プラズマは不均一である。
ここで、第1の電力P1が給電点57a、57b、57c、57dに供給され、シャワープレート電極2bの中心点から直径0.5λの円で囲まれる領域Aに生成されるプラズマを、ゼロ次のベッセル関数型プラズマと呼ぶ。ゼロ次のベッセル関数型プラズマは、図5に示されるように、シャワープレート電極2bの中心点から直径0.5λの円で囲まれる領域Aはほぼ均一な強さのプラズマに成る、という特徴を有する。
【0027】
次に、第2の電力P2が給電点17aに供給される際に発生するプラズマの形態について、以下説明する。
第5の高周波電力供給回路を用いて、第2の高周波電源10aの出力を、例えば、2KWとし、図3に示されるタイムチャートにおいてP2のみ(P1、P3、P4、P5はゼロとする)を、給電点17aに供給する。そうすると、第2の電力P2は、図7に示されるように、給電点17aから前記非接地電極本体2aの側面と反応容器1の壁の間を通り、前記シャワープレート電極2bの角部からシャワープレート電極2bと接地電極3の間へ、球面波状に広がりながら流れ込む。シャワープレート電極2bと接地電極3の間へ流れ込んだ第2の電力P2は、図8(a)に示されるように、球面状の形態で進行し、伝播する。そして、球面波状の第2の電力P2は、進行方向の反応容器1の壁で反射し、後退波P21となって、戻ってくる。なお、図8(a)は、接地電極3からシャワープレート電極2bの方向を見た場合の模式的説明図である。
第2の電力P2の進行波と前記後退波P21は、一般的に、余弦波状の定在波を形成する。しかしながら、前記後退波P21は球面波状に広がって電力の減衰が大きいために、前記後退波P21は定在波を作るほどの強さがない。したがって、第2の電力P2が給電点17aに供給される際に発生するプラズマは、図8(b)に示されるように、給電点17a近傍に極大値を有する減衰の大きい余弦波状の形態になる。
前記第2の高周波電源10aと前記第5の整合器11aを所要の条件に調整すると、図7に示されるように、一対の電極2b、3の間にプラズマ16aが発生する。このプラズマ16aは、給電点17a近傍に極大値を有する減衰の大きい余弦波状の形態のプラズマである。なお、余弦波状の形態を有するプラズマの場合、極大値近傍の領域λ/8程度はほぼ一様な強さのプラズマである。
ここで、第2の電力P2が給電点17aに供給される際に発生し、図8(b)に示される余弦波状の形態のプラズマを余弦波型プラズマと呼ぶ。
【0028】
次に、第3の電力P3が給電点17bに供給される際に発生するプラズマの形態について、以下説明する。
第6の高周波電力供給回路を用いて、第3の高周波電源10bの出力を、例えば、2KWとし、図3に示されるタイムチャートにおいてP3のみ(P1、P2、P4、P5はゼロとする)を、給電点17bに供給する。そうすると、第3の電力P3は、第2の電力P2の場合と同様に、給電点17bから前記非接地電極本体2aの側面と反応容器1の壁の間を通り、前記シャワープレート電極2bの角部からシャワープレート電極2bと接地電極3の間へ、球面波状に広がりながら流れ込む。そして、前記第3の高周波電源10bと前記第6の整合器11bを所要の条件に調整すると、一対の電極2b、3の間に余弦波型プラズマが発生する。
次に、第4の電力P4が給電点17cに供給される際に発生するプラズマの形態について、以下説明する。
第7の高周波電力供給回路を用いて、第4の高周波電源10cの出力を、例えば、2KWとし、図3に示されるタイムチャートにおいてP4のみ(P1、P2、P3、P5はゼロとする)を、給電点17cに供給する。そうすると、第4の電力P4は、第2の電力P2の場合と同様に、給電点17cから前記非接地電極本体2aの側面と反応容器1の壁の間を通り、前記シャワープレート電極2bの角部からシャワープレート電極2bと接地電極3の間へ、球面波状に広がりながら流れ込む。そして、前記第4の高周波電源10cと前記第4の整合器11cを所要の条件に調整すると、第2電力と同様の余弦波型プラズマが発生する。
次に、第5の電力P5が給電点17dに供給される際に発生するプラズマの形態について、以下説明する。
第8の高周波電力供給回路を用いて、第5の高周波電源10dの出力を、例えば、2KWとし、図3に示されるタイムチャートにおいてP5のみ(P1、P2、P3、P4はゼロとする)を、給電点17dに供給する。そうすると、第5の電力P5は、第2の電力P2の場合と同様に、給電点17dから前記非接地電極本体2aの側面と反応容器1の壁の間を通り、前記シャワープレート電極2bの角部からシャワープレート電極2bと接地電極3の間へ、球面波状に広がりながら流れ込む。そして、前記第5の高周波電源10dと前記第8の整合器11dを所要の条件に調整すると、第2電力と同様の余弦波型プラズマが発生する。
【0029】
次に、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の操作手順を、例えば、水素プラズマの発生への応用を例に取り、以下説明する。
反応容器1内部に、例えば、水素ガスを導入して、圧力を所要の値、例えば、66Paに設定し、維持する。電極間隔は、パッシェン則に従う条件に整える。例えば,電極間隔を15mmとする。
電力供給タイミング制御装置15と、第1~第5の高周波電源50、10a、10b、10c、10dと、第1~第8の整合器53a、53b、53c、53d、12a、12b、12c、12dを連携して高周波電力供給手段8の条件を、上述した値に設定する。
そうすると、シャワープレート電極2bと接地電極3の間に、図3に示されるタイムチャートに従った時間帯で第1の電力P1によりゼロ次のベッセル関数型プラズマが発生し、時間的に順次、第2,第3、第4及び第5の電力P2、P3、P4、P5による余弦波型プラズマが発生する。これらのプラズマは互いに独立した電力で生成されることから、干渉しないので定在波を生成しない。その結果、時間的に平均化して見ると、それぞれのプラズマが重畳されたプラズマになる。
即ち、図9(a)、(b)に示されるように、一対の電極2b、3の大部分の領域にゼロ次のベッセル関数型プラズマ16が形成され、4つの角部分には余弦波型プラズマ16a、16b、16c、16dが形成される。ゼロ次のベッセル関数型プラズマ16と余弦波型プラズマ16a、16b、16c、16dは干渉しないことから、一対の電極2b、3のプラズマは、図9(b)に示されるように、それらを重畳した形態になる。その結果、時間平均的にサイズ3mx3mの電極の全面亘り、ほぼ一様な強さのプラズマが得られる。
なお、プラズマCVDによる薄膜の形成では、例えば、Si系薄膜の形成ではプラズマで発生するSiHラジカルが膜形成の前駆体であり、かつ他のラジカル種に比べて寿命が長いことから、時間平均的に均一であるプラズマは高品質のSi系薄膜の形成が可能である。
【0030】
次に、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の薄膜形成への応用について、図1図9を参照して説明する。説明の便宜上、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の代表的応用例としてプラズマCVDによる微結晶シリコン膜の形成を例にとり、以下に説明する。
図示しない原料ガスの供給源から原料ガスが選ばれる。ここでは、例えば、微結晶シリコン膜を形成することから、ガス供給条件は、例えば、シランガスと水素を選び、流量比を水素流量/シランガス流量=100/1とする。
先ず、反応容器1の図示しない基板搬入搬出バルブを開いて、基板5を接地電極3の主面3aに載置する。次に、基板搬入搬出バルブを閉じた後、図示しない真空ポンプにより、排気口9a及び排気口9bを介して、反応容器1内部を所定の真空度にする。
その後、図示しないシランガス源及び図示しない水素ガス源から、それぞれ図示しないシランガス及び水素ガスのマスフローコントローラで所定の流量を制御されたシランガス及び水素ガスを反応ガス導入管7へ輸送し、前記シランガス及び前記水素ガスを、空洞2cを介して、反応ガス噴出孔2dから噴出させる。
次に、図示しない排気バルブ制御装置により図示しない排気バルブの開閉度を制御し、反応容器1の内部圧力を、略133Pa~略1333Paに保つ。なお、反応容器1の真空引きに用いる真空ポンプと製膜時に用いる真空ポンプは、異なるものを別々に用いてもよい。ここでは、例えば、250Paに設定し、維持する。
【0031】
次に、図3に示されるタイムチャートに従って、第1、第2、第3、第4及び第5の電力P1、P2、P3、P4、P5を以下に述べるように設定する。
第1の高周波電源50の出力を、即ち、第1の電力P1の出力を、例えば、20KW、第1の電力P1の供給時間帯(パルス幅)Hw1及び繰り返し時間間隔T0を、例えば、500μ秒及び1m秒とし、第2の高周波電源10aの出力、即ち、第2の電力P2を、例えば、2KW、第2の電力P2の供給時間帯(パルス幅)Hw2及び繰り返し時間間隔T0を、例えば、100μ秒及び1m秒とし、第3の高周波電源10bの出力、即ち、第3の電力P3を、例えば、2KW、第3の電力P3の供給時間帯(パルス幅)Hw3及び繰り返し時間間隔T0を、例えば、100μ秒及び1m秒とし、第4の高周波電源10cの出力、即ち、第4の電力P4を、例えば、2KW、第4の電力P4の供給時間帯(パルス幅)Hw4及び繰り返し時間間隔T0を、例えば、100μ秒及び1m秒とし、第5の高周波電源10dの出力、即ち、第5の電力P5を、例えば、2KW、第5の電力P5の供給時間帯(パルス幅)Hw5及び繰り返し時間間隔T0を、例えば、100μ秒及び1m秒とする。なお、隣り合う供給時間帯の間隔T1を、例えば、20μ秒とする。
【0032】
そうすると、図9(a)に示されるように、一対の電極2b、3間に、ゼロ次のベッセル関数型プラズマ16と、余弦波型プラズマ16a、16b、16c、16dが重畳された状態で発生する。該ゼロ次のベッセル関数型プラズマ16及び該余弦波型プラズマ16a、16b、16c、16dは、原料ガスのSiH、水素Hをプラズマ化する。その結果、SiH、水素Hが解離し、微結晶シリコン膜形成の前駆体であるSiHラジカル、Hラジカル等を発生する。SiHラジカル、Hラジカルは拡散して、基板5の表面に堆積する。
【0033】
次に、微結晶シリコン膜の厚みは該プラズマ生成時間に比例するので、上記第1、第2,第3、第4及び第5の高周波電源50、10a、10b、10c、10dの出力供給開始から所定の時間が経過した時点で、それらの出力をゼロにする。
製膜時間は、予め取得されたデータに基づいて決められる。ここでは、1分~20分、例えば2分とする。なお、製膜時間は、電極間隔、基板温度、シランガスの流量、水素ガスの流量、圧力、電力等の関係に係わるデータを、予め把握し、そのデータを基に決められる。
目的とする微結晶シリコン膜の製膜が終了後、上記シランガスガス及び水素ガスの供給を停止し、反応容器1内部を、一旦、高い真空度に真空引きする。その後、反応容器1を大気条件に戻す。反応容器1が大気条件に戻された後、図示しない基板搬入搬出バルブを開とし、基板5を取り出す。反応容器1から取り出された基板5には、均一な微結晶シリコン膜が形成されている。
【0034】
なお、上述した本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の薄膜形成への応用では、プラズマCVDによる微結晶シリコン膜形成を例にとり、説明したが、有機シランガスを含む反応性ガスを用いたプラズマCVDによる薄膜形成あるいはプラズマALDによる薄膜形成への応用も可能である。また、水素、酸素又は塩素を含む反応性ガスを用いたプラズマエッチングへの応用も可能である。
【0035】
本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置を用いた薄膜形成装置は、上述の通り、周波数27.12MHzの高周波電源を用いて、電極サイズ3mx3mの矩形平板型の非接地電極の前記接地電極に対向しない面の少なくとも4つの辺の辺中央部及び4つの角部にそれぞれに給電点が設けられ、前記4つの辺の辺中央部に設けられた給電点に供給される第1の高周波電力と、前記4つの角部に設けられた給電点にそれぞれ供給される第2、第3、第4及び第5の高周波電力とを、時間的に切り替えて供給することを特徴とし、従来の高周波プラズマ発生装置では困難であるサイズ3mx3mの基板への微結晶シリコン膜形成が可能であることを示した。
なお、ここでは、周波数を27.12MHzとし、基板サイズを3mx3mとしているが、この数値に限定されることはない。周波数を工業周波数13.56MHzに選ぶことにより、基板サイズ5mx5m級プラズマの均一化は可能である。
本発明による高周波プラズマ発生装置は、大画面液晶デイスプレイ、大画面有機ELデイスプレイ、大面積太陽電池及び各種半導体デバイス等の分野にける大面積均一のプラズマ生成が可能であり、製品製造コストの低減及び性能向上への貢献度は著しく大きいことから、産業上の貢献度は著しく大きい。
また、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置は、プラズマCVDを用いた微結晶シリコン膜の形成への応用であるが、これに限定されず、反応性ガスとして、水素又は酸素又は塩素等を用いるプラズマエッチング装置及びプラズマALD装置としての応用が可能であることは、当然のことである。
【0036】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置について、図10を参照して、説明する。図1ないし図9も参照する。
図10は、本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の構成部材である複数の高周波電源から出力されるパルス電力のタイミング順序を示すタイムチャートである。
第1の電力P1と、第2、第3、第4、第5の電力P2、P3、P4、P5のタイミング順序を、図10に示すように、先ず 、第1の電力P1を発生し、次に、第2、第3、第4、第5の電力P2、P3、P4、P5を発生し、これを、時間的に交互に繰り返す。第1の電力P1は、給電点57a、57b、57c、57dに給電する。第2の電力P2は、給電点17aに給電する。第3の電力P3は、給電点17bに給電する。第4の電力P4は、給電点17cに給電する。第5の電力P5は、給電点17dに給電する。
図10において、第1の電力P1の供給時間帯(パルス幅)Hw1及び繰り返し時間間隔T0を、例えば、500μ秒及び640μ秒とする。第2、第3、第4及び第5のP2、P3、P4、P5の供給時間帯(パルス幅)Hw3及び繰り返し時間間隔T0を、例えば、100μ秒及び640μ秒とする。第1の電力P1の供給時間帯(パルス幅)Hw1と第2、第3、第4及び第5のP2、P3、P4、P5の供給時間帯(パルス幅)Hw3の間隔T2は、例えば、20μ秒とする。
即ち、第1の電力P1と、第2、第3、第4及び第5の電力P2、P3、P4、P5は、異なる時間帯に供給されることから、前記第1の電力P1と、第2、第3、第4及び第5の電力P2、P3、P4、P5の電力間での干渉現象は発生しない。第2、第3、第4及び第5の電力P2、P3、P4、P5は、同じ時間帯に供給されるが、互いに充分に長い距離を伝播するので、干渉波の強度は弱い、と考えられる。したがって、第2、第3、第4及び第5の電力P2、P3、P4、P5同志の干渉による定在波はプラズマの不均一化に与える影響は小さいと、考えられる。
【0037】
本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の操作手順は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置の場合と同様である。
本発明の第2の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置は、本発明の第1の実施形態に係わる高周波プラズマ発生装置と比べて、第1、第2、第3、第4及び第5の電力P1、P2、P3、P4、P5のタイミングチャートがシンプルであるという特徴がある。
【符号の説明】
【0038】
1・・・反応容器、
2・・・非接地電極、
2a・・・非接地電極本体、
2b・・・シャワープレート電極、
2c・・・空洞、
2d・・・反応性ガス噴出孔、
3・・・接地電極、
5・・・基板、
8・・・高周波電力供給手段、
50・・・第1の高周波電源、
10a・・・第2の高周波電源、
10b・・・第3の高周波電源、
10c・・・第4の高周波電源、
10d・・・第5の高周波電源、
53a、53b、53c、53d・・・第1、第2、第3及び第4の整合器、
11a、11b、11c、11d・・・第5、第6、第7及び第8の整合器、
55a、55b、55c、55d・・・第1、第2、第3及び第4の真空装置用電流導入端子、
12a、12b、12c、12d・・・第5、第6、第7及び第8の真空装置用電流導入端子、
56a、56b、56c、56d・・・第1、第2、第3及び第4の給電導体、
13a・・・第5の給電導体、
13b・・・第6の給電導体、
13c・・・第7の給電導体、
13d・・・第8の給電導体、
15・・・電力供給タイミング制御装置、
16・・・ゼロ次のベッセル関数型プラズマ、
16a、16b、16c、16d・・・余弦波型プラズマ、
57a、57b、57c、57d・・・第1、第2、第3及び第4の給電点、
17a、17b、17c、17d・・・第5、第6、第7及び第8の給電点、
P1・・・第1の電力、
P2・・・第2の電力、
P3・・・第3の電力、
P4・・・第4の電力、
P5・・・第5の電力。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17