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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129516
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】蓄熱ユニット
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/02 20060101AFI20230907BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
F28D20/02 E
F28D20/00 G
F28D20/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117049
(22)【出願日】2023-07-18
(62)【分割の表示】P 2019065992の分割
【原出願日】2019-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】中條 晃伸
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、熱エネルギーが頻繁に変化する熱源であっても、熱源の熱エネルギーに対応する適切な蓄熱材を簡単に設置することができる蓄熱ユニットを提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、筐体と、前記筐体内に設置され、蓄熱材が充填されたカートリッジと、を備えたことを特徴とする、蓄熱ユニットを提供する。この蓄熱ユニットによれば、蓄熱材が充填されたカートリッジを簡易的に交換することができるため、蓄熱材の周囲の温度などの環境が変化した場合でも、その温度の対応する適切な蓄熱材を使用することができる。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設置され、蓄熱材が充填されたカートリッジと、を備えたことを特徴とする、蓄熱ユニット。
【請求項2】
前記筐体内に設置するカートリッジの数又は配置は、変更可能であることを特徴とする、請求項1に記載の蓄熱ユニット。
【請求項3】
前記カートリッジの形状は、筒状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の蓄熱ユニット。
【請求項4】
前記カートリッジは、内部空間に反応流体が通るための流路部材を備え、前記流路部材は発泡体により形成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載された蓄熱ユニット。
【請求項5】
複数のカートリッジから排出された反応流体を、まとめて回収するための合流路を備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄熱ユニット。
【請求項6】
蓄熱材が充填されたカートリッジを備えた蓄熱ユニットの使用方法であって、
熱エネルギーを有する流体の経路の所望の熱エネルギーが得られる位置を探索するステップと、
前記位置に前記カートリッジを配置するステップと、を備えたことを特徴とする、蓄熱ユニットの使用方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱材を含む蓄熱ユニットに関する。さらに、本発明は、ごみ焼却炉、製鋼炉などの炉設備に好適に利用される蓄熱ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ焼却炉、製鋼炉などの炉設備では、高温の排ガスが発生するため、排ガスの有する熱エネルギーを熱交換機により回収及び利用している。例えば、特許文献1には、有機性廃棄物の再資源化装置において、排ガスの有する熱エネルギーを熱交換機で回収し、回収した熱エネルギーを排気ファンの駆動源として利用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-106506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炉設備から排出される排ガスは、1500℃程度の温度を有しており、100℃程度まで冷却した後に施設外へ排気している。そのため、配管を通過する排ガスの温度は、位置によって異なる。また、炉設備を頻繁に停止する施設の場合には、停止するたびに排ガスの温度が低下しており、所定の位置を通過する排ガスの温度も大きく変化する。
【0005】
一方で、蓄熱材は、その種類に応じて蓄熱に適した温度帯があることが知られている。蓄熱材を配管の所定の位置に設置すると、配管の温度の変化によって、所望する蓄熱反応を得ることができないことがある。
【0006】
本発明の課題は、熱エネルギーが頻繁に変化する熱源であっても、熱源の熱エネルギーに対応する適切な蓄熱材を簡単に設置することができる蓄熱ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、蓄熱材を備えた蓄熱装置を、蓄熱材が充填されたカートリッジタイプの蓄熱ユニットとすることにより、熱エネルギーが変化した場合でも、カートリッジを交換するだけで、熱エネルギーに対応する適切な蓄熱材を適用できることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の蓄熱ユニット、蓄熱ユニットの使用方法である。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の蓄熱ユニットは、筐体と、前記筐体内に設置され、蓄熱材が充填されたカートリッジと、を備えたことを特徴とするものである。
この蓄熱ユニットによれば、蓄熱材が充填されたカートリッジを簡易的に交換することができるため、蓄熱材の周囲の温度などの環境が変化した場合でも、その温度の対応する適切な蓄熱材を使用することができる。
【0009】
また、従来の蓄熱装置では、熱交換の効率を高めるために、熱エネルギーを有する流体を流通するための細管を使用している。一方で、炉設備からの排ガスには塵芥が含まれており、細管に流通した場合には、塵芥が細管を閉塞するなどのトラブルが発生しやすい。そのため、通常はフィルタ等により排ガスから塵芥を除去した後に、蓄熱装置に供している。そうすると、フィルタを通過する際に、熱のロスが生じるため、排ガスの熱エネルギーを有効に利用することができない。さらには、フィルタの耐熱性は高くないため、フィルタの耐熱性に耐え得る温度まで排ガスの温度を低下させる必要がある。
しかしながら、本発明の蓄熱ユニットによれば、カートリッジの外部に排ガスを流通させるため、排ガスの通過する空間を十分に確保することができるという効果がある。
【0010】
さらに、本発明の蓄熱ユニットの一実施態様としては、筐体内に設置するカートリッジの数又は配置は、変更可能であることを特徴とするものである。
上記特徴によれば、筐体内に設置するカートリッジの数や配置を変更できるため、カートリッジの数を変えることにより、排ガス等の熱エネルギーを有する流体の温度に応じて、適切な蓄熱材の量を調整することができる。また、カートリッジの配置を変えることにより、排ガス等に含まれる塵芥の量などに応じて、カートリッジの配置密度を変更することができる。
【0011】
さらに、本発明の蓄熱ユニットの一実施態様としては、カートリッジの形状は、筒状であることを特徴とするものである。
この特徴によれば、カートリッジの内部空間の深部まで熱が到達しやすいため、熱交換効率が高まり、蓄熱又は放熱しやすいカートリッジを提供することができる。
【0012】
さらに、本発明の蓄熱ユニットの一実施態様としては、カートリッジは、内部空間に反応流体が通るための流路部材を備え、前記流路部材は発泡体により形成されることを特徴とするものである。
この特徴によれば、カートリッジの内部空間に反応流体が通るための流路部材を備えているため、カートリッジの内部空間に充填された化学蓄熱材から生じる反応流体を、流路部材を介して効率よく排出することができる。また、発泡体を用いることにより、化学蓄熱材が流路部材から流出することを防止することができる。
【0013】
さらに、本発明の蓄熱ユニットの一実施態様としては、複数のカートリッジから排出された反応流体を、まとめて回収するための合流路を備えることを特徴とするものである。
この特徴によれば、複数のカートリッジから排出された反応流体をまとめるための合流路を備えるため、各カートリッジに取り付けられた配管の構成を簡素化することができる。
【0014】
上記課題を解決するための本発明の蓄熱ユニットの使用方法は、蓄熱材が充填されたカートリッジを備えた蓄熱ユニットの使用方法であって、熱エネルギーを有する流体の経路の所望の熱エネルギーが得られる位置を探索するステップと、前記位置に前記カートリッジを配置するステップと、を備えたことを特徴とするものである。
この蓄熱ユニットの使用方法によれば、熱エネルギーの有する流体の経路において、所望の熱エネルギーが得られる位置を探索するステップを備えるため、所定の蓄熱材に適した温度帯に蓄熱材を設置することができる。
また、カートリッジを交換する操作で、簡単に蓄熱材に蓄熱することができるため、蓄熱された蓄熱材を容易に準備することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱エネルギーが頻繁に変化する熱源であっても、熱源の熱エネルギーに対応する適切な蓄熱材を簡単に設置することができる蓄熱ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施態様の炉設備の排ガスの温度の変遷を示す概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様の蓄熱ユニットの構成を示す概略説明図である。
図3】本発明の第1の実施態様のカートリッジの構成を示す概略説明図である。
図4】本発明の実施態様のカートリッジの他の例を示す概略説明図である。
図5】本発明の実施態様のカートリッジの数や配置の例を示す概略説明図である。
図6】本発明の実施態様のカートリッジの数や配置の例を示す概略説明図である。
図7】本発明の第2の実施態様の蓄熱ユニットの構成を示す概略説明図である。
図8】本発明の実施態様の蓄熱ユニットの合流路の他の例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の蓄熱ユニットは、筐体と、前記筐体内に設置され、蓄熱材が充填されたカートリッジと、を備えたことを特徴とするものである。本発明の蓄熱ユニットは、蓄熱材を簡単に交換することができることから、頻繁に交換するような施設で利用することができる。例えば、炉設備などでは、多量の熱エネルギーを有する排ガスが生じることから、蓄熱材がすぐに蓄熱されるため、交換の頻度が高い。また、排ガスの温度は変わりやすいため、排ガスの温度に適した蓄熱材に交換する際にも好適に利用することができる。なお、蓄熱ユニットに蓄熱されたエネルギーは、熱を回収した施設内で使用してもよいし、施設外で使用してもよい。
【0018】
ここで、炉設備とは、例えば、ごみ焼却炉や火葬炉などの焼却炉、窯やロータリーキルンなどの焼成炉、製鋼炉や溶鉱炉などの溶錬炉、囲炉裏やストーブやオーブンなどの暖炉、蒸気船や蒸気機関車などの動力源となるボイラなどが挙げられる。製鋼炉は、操業と停止を頻繁に繰り返すことから、排ガスの温度が変化しやすいという観点から、本発明の蓄熱ユニットが好適に利用することができる。
【0019】
また、本発明の蓄熱ユニットは、筐体の内部に、蓄熱材が充填されたカートリッジを配置するものであり、排ガスなどの熱エネルギーを有する流体(以下、「熱流体」という。)がカートリッジの外側を通過し、カートリッジの外周面における熱交換により蓄熱材に熱エネルギーが供給されるものである。このようにカートリッジの外周面から熱交換する場合には、熱流体を細管に通して熱交換をする必要がないことから、塵芥などを含む排ガスを適用しても塵芥が細管に詰まるなどのトラブルを生じない。このような観点からも本発明の蓄熱ユニットは、排ガスの熱回収に好適に利用することができる。
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施態様を詳細に説明する。なお、本発明の実施態様の蓄熱ユニットの説明は、その使用方法の説明に置き換えることができる。また、実施態様に記載する蓄熱ユニットについては、本発明に係る蓄熱ユニットを説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0021】
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の実施態様の炉設備100の排ガスの温度の変遷を示す概略説明図である。図1に示すように、炉設備100は、炉101を備えており、炉101から排出された排ガスGは、約1000℃から約100℃まで温度を低下して、集塵機102に供給される。集塵機102に供給された排ガスGは、塵芥を取り除かれて炉設備100の外に排気される。
【0022】
排ガスGが通過する経路には、蓄熱ユニット1A、1B、1Cが配置されている。蓄熱ユニット1Aは、排ガスGの温度が1000~500℃程度である位置に配置され、蓄熱ユニット1Bは、排ガスGの温度が500~200℃程度である位置に配置され、蓄熱ユニット1Cは、排ガスGの温度が200~100℃程度である位置に配置されている。
通常の操業時には、これらの温度帯にそれぞれ適した蓄熱材を配置することにより、蓄熱材に熱エネルギーが蓄熱される。そして、蓄熱材に熱エネルギーが蓄熱されると、蓄熱材を交換する。本発明の蓄熱ユニットにおける蓄熱材の交換は、カートリッジを取り出し、新たなカートリッジを取り付けるのみであるため、簡単に交換することができる。
【0023】
また、炉設備100の操業を停止した場合には、排ガスGの温度は変動するため、排ガスGの各位置の温度に適応可能な所定の蓄熱材を配置することが好ましい。なお、蓄熱材を配置する前に、熱流体が通過する経路において、蓄熱材の所望の熱エネルギーが得られる位置を探索することが好ましい。探索する方法としては、例えば、排ガスGが通過する経路に所定の間隔ごとに温度計を設置することによって、蓄熱材の所望の熱エネルギーが得られる位置を探索すればよい。
【0024】
なお、蓄熱された蓄熱材は、炉設備100内の装置の加熱に利用してもよいし、他の設備の加熱などに利用してもよい。特に、炉設備100内の集塵機102などの加温のために利用することが好ましい。炉設備100は、操業を停止した場合に、集塵機102の温度が低下する。そして、集塵機102の温度が低下すると、結露が生じてフィルタなどの閉塞を生じるため、集塵機102の温度が低下した際には、蓄熱材により集塵機102を加温すればよい。集塵機102の加温手段としては、熱エネルギーが蓄熱された蓄熱材のカートリッジを、集塵機102の近傍に設置された筐体に配置して放熱すればよい。
【0025】
[蓄熱ユニット]
図2には、本発明の第1の実施態様の蓄熱ユニット1の構成を図示する。図2に示すように、本発明の蓄熱ユニット1は、筐体3と、筐体3の内部に設置されたカートリッジ2を備える。また、カートリッジ2の内部には、蓄熱材が充填されている。なお、カートリッジ2の構造については、後述する。
【0026】
(筐体)
筐体3は、内部にカートリッジ2を配置できるものであれば、その形状や大きさ等について特に限定されない。また、排ガスGなどの熱流体を導入するための熱流体導入部31、熱流体を排出するための熱流体排出部32を備えており、内部に熱流体が流通できるように構成されている。なお、カートリッジ2の交換作業中は、熱流体の流通を停止することが望ましいため、熱流体導入部31の前段には、バルブ(図示略)を備えることが好ましい。
【0027】
筐体3の内部には、カートリッジ2を保持するためのホルダ(図示略)を備えている。ホルダにより、内部に熱流体が流通してもカートリッジ2の移動を制限し、カートリッジ2を固定することができる。
【0028】
筐体3は、例えば、排ガスGの通過する配管の所定の位置にカートリッジ2のホルダを設けて筐体3とするものや、排ガスGの通過する配管から分岐した配管に筐体3を配置したものなどが挙げられる。前者の場合には、排ガスGの配管を筐体3として利用できるという点で、新たな設備や配管を必要としないため、導入しやすいという利点がある。また、後者の場合には、分岐した配管に筐体3を配置するため、炉設備100の操業を停止することなく、筐体3への熱流体の導入を停止してカートリッジ2を交換することができる。
【0029】
(カートリッジ)
図3には、本発明の第1の実施態様のカートリッジ2の構成を示す概略説明図を図示する。図3に示すように、カートリッジ2は、蓄熱材25を充填する容器となる本体21、本体21の内部空間に設置され、流体が通るための流路部材23、及び、蓋体22を備える。また、蓋体24には、流路部材23を通過した流体を排出又は導入するための通気口24が形成されている。
【0030】
<本体>
本体21は、蓄熱材25を充填する空間を備えるものであれば、その形状や大きさなどは特に制限されない。形状としては、例えば、円筒状、楕円筒状、三角筒状、四角筒状、多角筒状、星型筒状などの筒状、球状、立方体状、板状などが挙げられる。本体の内部空間の深部まで熱が到達しやすいという観点からカートリッジ2の本体21は筒状であることが好ましい。
【0031】
本体21の素材は、特に制限されないが、耐熱に優れ、熱伝導性に優れたものであることが好ましい。例えば、ステンレス、アルミ、鉄、銅、合金などの金属部材や、セラミック、石膏や、陶器などが挙げられる。熱伝導性に優れるという観点から、金属部材であることが好ましい。
【0032】
<蓋体>
蓋体22は、本体21とともにカートリッジの容器を構成するものであれば、その形状や大きさなどは特に制限されない。また、素材も本体21と同様の素材を使用すればよい。
なお、本体21と蓋体22の接合部は、パッキン等の気密手段を設けることにより、反応ガスRが通気しないように気密性に優れた構造とすることが好ましい。
【0033】
蓋体22には、化学蓄熱材を加熱することにより発生した反応ガスRを通過する通気口24が形成されている。通気口24は、蓄熱時には、化学蓄熱材から発生した反応ガスRをカートリッジの外へ排出するものである。一方で、放熱時には、反応ガスRを通気口24により導入し、発熱反応を行う。
【0034】
また、通気口24には、化学蓄熱材を保管するために、バルブ等の密封手段を設けることが好ましい。カートリッジ2を密封することにより、化学蓄熱材に熱エネルギーを蓄熱した状態のまま、保管することができる。
【0035】
<蓄熱材>
蓄熱材25は、例えば、加熱時に蓄熱生成物と反応ガスRに分離し、放熱時にこの逆の反応を行う化学蓄熱材や、所定の温度で相転移し、潜熱を吸収又は放出する潜熱蓄熱材や、顕熱を吸収又は放出する顕熱蓄熱材などが挙げられる。
【0036】
化学蓄熱材を構成する蓄熱生成物と反応ガスRとしては、例えば、酸化カルシウム(CaO)と水蒸気(HO)、塩化カルシウム(CaCl)と水蒸気(HO)、臭化カルシウム(CaBr)と水蒸気(HO)、ヨウ化カルシウム(CaI)と水蒸気(HO)、酸化マグネシウム(MgO)と水蒸気(HO)、塩化マグネシウム(MgCl)と水蒸気(HO)、塩化亜鉛(ZnCl)と水蒸気(HO)、塩化ストロンチウム(SrCl)とアンモニア(NH)、臭化ストロンチウム(SrBr)とアンモニア(NH)、酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO)、酸化マグネシウム(MgO)と二酸化炭素等(CO)が挙げられる。取り扱いが容易であるという観点から、化学蓄熱材は、反応ガスRとして水蒸気を利用するものであることが好ましい。
また、本発明における化学蓄熱材としては、高温での化学蓄熱が可能な蓄熱生成物と反応ガスRとして、酸化カルシウムと水蒸気の組み合わせ(400~500℃)や酸化マグネシウムと水蒸気の組み合わせ(300~400℃)を用いることが好ましい。
【0037】
潜熱蓄熱材としては、例えば、マンニトール(166.5℃)、トランスポリブタジエン(145℃)、エリスリトール(119℃)、塩化マグネシウム6水和物(117℃)などが挙げられる(括弧内は相転移温度)。
また、顕熱蓄熱材としては、煉瓦、砂利などが挙げられる。
【0038】
<流路部材>
流路部材23は、本体21の深部に充填された化学蓄熱材から発生した反応ガスRを、通気口24に導くための部材である。流路部材23の形状は、内部に流体が通過できる空間が形成されていればよく、例えば、発泡体、不織布、多孔質体、網体、パンチング孔を有する多孔筒体などが挙げられる。化学蓄熱材の流出を確実に防止するという観点から、発泡体、不織布、多孔質体が好ましく、発泡体が特に好ましい。
【0039】
また、流路部材23の素材は、耐熱性に優れるものであれば、特に制限されないが、例えば、アルミ、鉄、ニッケル、及びそれらの合金などの金属部材や、セラミック、石膏、陶器などが挙げられる。
【0040】
カートリッジ本体21の内部空間における流路部材23の配置は特に制限されないが、本体21の深部に充填された化学蓄熱材から発生した反応ガスRを通気口24に導くという目的を鑑みると、通気口24から本体21の中央を貫通するように配置することが好ましい。また、本体21の内部空間に複数の流路部材を配置してもよいし、一つの流路部材を分岐して、本体21の内部空間の広範囲に配置してもよい。
【0041】
(カートリッジの他の例)
図4は、本発明の実施態様のカートリッジの他の例を示す概略説明図である。
図4(A)のカートリッジ2Aは、四角柱の本体21Aと四角柱の流路部材23Aを備えたものである。
図4(B)のカートリッジ2Bは、星型筒状の本体21Bと網体で形成された流路部材23Bを備えたものである。星型筒状とすることにより、カートリッジ本体の表面積が大きくなることから、蓄熱材25への熱供給及び蓄熱材25からの熱放出の効率が向上するという効果がある。
図4(C)のカートリッジ2Cは、板状の本体21Cと複数の通気口24及び流路部材23を備えたものである。複数の流路部材23を設けることにより、カートリッジを大型化することができる。
【0042】
(カートリッジの配置例)
図5図6は、筐体3内に配置されたカートリッジの配置の例を示す概略説明図である。なお、図5図6は、筐体3を上から見た平面図である。
図5(A)は、筐体3に、カートリッジ2を縦横に整列して配置した例である。縦横に整列して配置する場合、設置が容易であるなどの効果がある。
図5(B)は、排ガスGの流れ方向に整列した複数列が、隣の列と流れ方向前後にずれるように配置された例である。この配列の場合、図5(A)の配列と比べて、排気ガスGの通過する流路幅の最小値が大きくなり、圧力損失が低下するという効果がある。
図6(A)は、筐体3内において、カートリッジ2を異なる密度では配置した例である。
図6(B)は、円筒状のカートリッジ2と、板状のカートリッジ2Cを併用して配置した例である。
なお、図5図6の配置の例は、カートリッジを筐体の上下方向に立設した例であるが、カートリッジは、水平方向に横向きに配置しても、排気ガスGの流れ方向と平行方向に配置しても、斜め方向に倒して配置してもよい。
【0043】
〔第2の実施態様〕
図7は、本発明の第2の実施態様の蓄熱ユニット10Aの構成を示す概略説明図である。図7(A)は、蓄熱ユニット10Aの正面図であり、図7(B)は、蓄熱ユニット10Aの平面図である。
第2の実施態様の蓄熱ユニット10Aは、複数のカートリッジ2から排出された反応ガスRを、まとめて回収するための合流路4Aを備えたものである。これ以外の構成は、第1の実施態様と同様である。
図7(B)に示すように、合流路4Aは、筐体3内に配置されたすべてのカートリッジ2から排出された反応ガスRをまとめて回収するための流路である。合流路4Aによれば、複数のカートリッジ2から排出された反応ガスRをまとめることができるため、配管の構成を簡素化することができる。
【0044】
図8は、本発明の実施態様の蓄熱ユニットの合流路の他の例を示す概略説明図である。図8に記載された蓄熱ユニット10Bは、列ごとに反応ガスRをまとめるための合流路4B、複数の合流路4Bをさらにまとめる合流路4Cにより構成されるものである。なお、合流路4Bと合流路4Cは取り外し可能に連結されている。
この蓄熱ユニット10Bは、列ごとにまとめことができるため、カートリッジ2が粗大化せずに、取り扱いやすいものである。
【0045】
なお、本発明の蓄熱ユニットは、適宜変更することができる。例えば、排ガスGに塵芥が大量に含まれる場合には、蓄熱ユニットの前段に除塵機を設置してもよい。
除塵機は、排気ガスGから塵芥を除去するためのものである。除塵機は、排気ガスGから塵芥を除去できる固気分離装置であれば、特に制限されず、例えば、フィルタや粒子充填層などを通過させるろ過分離装置や、電気集塵機や、重力により分離する重力分離装置や、サイクロンなど遠心力により分離する遠心分離装置などが挙げられる。
【0046】
除塵機は、排気ガスGの温度が500℃以上で塵芥を除去することが好ましい。ダイオキシンなどの有害物質は、排気ガスG中の塵芥と気体成分との反応により生じるものであり、排気ガスGが300~500℃まで冷却する際に発生する。よって、500℃以上で排気ガスから塵芥を除去することにより、除塵後の空気の温度が蓄熱ユニットで低下しても、ダイオキシンなどの有害物質の発生が抑制されるという効果を奏する。
また、除塵機は、排気ガスGの温度が800℃以下で塵芥を除去することが好ましい。排気ガスGの温度が800℃以下の場合、除塵機が高度な耐熱性を有する必要がなくなるため、多様な除塵機を利用することができる。
【0047】
除塵機は、500℃以上で塵芥を除去するという観点から、耐熱性に優れたものを使用することが好ましい。耐熱性に優れた除塵機としては、例えば、セラミックフィルターや、電気集塵機や、サイクロンなどが挙げられる。
【0048】
また、本発明の蓄熱ユニットの筐体に、塵芥除去口などの塵芥除去手段を設けてもよい。これにより、排ガスG中の塵芥が筐体内にたまった場合に、塵芥除去手段により簡単に塵芥を除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の蓄熱ユニットは、炉設備の排ガスなどの熱流体から熱を蓄熱するために利用することができる。また、蓄熱材が充填されたカートリッジは、熱エネルギーを保管したり、農業用ビニールハウスの熱源や、農業用温水殺菌用の熱源や、災害時の入浴用の熱源など炉設備以外での熱源として利用したりすることができる。
【符号の説明】
【0050】
100…炉設備、101…炉、102…集塵機、1,1A,1B,1C,10A,10B…蓄熱ユニット、2,2A,2B,2C…カートリッジ、21,21A,21B,21C…本体、22…蓋体、23,23A,23B…流路、24…通気口、25…蓄熱材、3…筐体、31…熱流体導入部、32…熱流体排出部、4A,4B,4C…合流路、G…排ガス、R…反応ガス

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-08-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉と集塵機との間に蓄熱ユニットが配置される炉設備
【請求項2】
前記蓄熱ユニットは、熱流体の温度に適応可能な反応温度の異なる蓄熱材が充填される請求項1に記載の炉設備。
【請求項3】
前記蓄熱ユニットは、カートリッジであることを特徴とする請求項1に記載の炉設備。
【請求項4】
前記蓄熱ユニットは、蓄熱材に熱エネルギーが蓄熱されるとカートリッジを取り出し、新たなカートリッジを取り付ける請求項3に記載の炉設備。