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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129539
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】乳剤性ローション剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20230907BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230907BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230907BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230907BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230907BHJP
   A61P 17/16 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61K8/34
A61K9/107
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/06
A61K47/18
A61K47/32
A61P17/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023118811
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000113908
【氏名又は名称】マルホ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 尚人
(74)【代理人】
【識別番号】100186772
【弁理士】
【氏名又は名称】入佐 大心
(72)【発明者】
【氏名】竹下 朋芳
(57)【要約】
【課題】乳化安定性などに優れた、硫酸化多糖類またはその塩を含有する新たな水中油型乳剤性ローション剤を提供すること。
【解決手段】本発明として、例えば、硫酸化多糖類またはその塩(特にヘパリン類似物質)、およびミリスチルアルコールまたはオレイルアルコールを含有することを特徴とする水中油型乳剤性ローション剤を挙げることができる。
本発明に係る水中油型乳剤性ローション剤は、少なくとも粘度や乳化粒子径において従来のものと比べ同等以上に優れる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸化多糖類またはその塩、およびミリスチルアルコールまたはオレイルアルコールを含有することを特徴とする、水中油型乳剤性ローション剤。
【請求項2】
硫酸化多糖類が、ムコ多糖の多硫酸化物である、請求項1に記載の水中油型乳剤性ローション剤。
【請求項3】
ムコ多糖の多硫酸化物が、ヘパリン類似物質である、請求項2に記載の水中油型乳剤性ローション剤。
【請求項4】
さらに、界面活性剤、炭化水素系基剤、保湿剤、増粘剤、pH調節剤、安定化剤および保存剤からなる群から選択される1種以上の成分を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の水中油型乳剤性ローション剤。
【請求項5】
さらに、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、炭化水素、ポリオール、アルカノールアミン、カルボキシビニルポリマー、およびパラオキシ安息香酸エステルからなる群から選択される1種以上の成分を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の水中油型乳剤性ローション剤。
【請求項6】
さらに、ポリオキシエチレンセチルエーテル、モノステアリン酸グリセリン、白色ワセリン、スクワラン、グリセリン、アルカノールアミン、カルボキシビニルポリマー、およびパラオキシ安息香酸エステルからなる群から選択される1種以上の成分を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の水中油型乳剤性ローション剤。
【請求項7】
ヘパリン類似物質、セタノール、ミリスチルアルコール、ポリオキシエチレンセチルエーテル、モノステアリン酸グリセリン、白色ワセリン、スクワラン、グリセリン、ジイソプロパノールアミン、カルボキシビニルポリマー、およびパラオキシ安息香酸エステルを含有することを特徴とする、水中油型乳剤性ローション剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、医薬部外品等として有用な、硫酸化多糖類を有効成分として含む水中油型の乳剤性ローション剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ローション剤とは、一般に、有効成分を水性の液中に溶解または微細均等に分散して製した皮膚に塗布する液状の外用剤である。そして、その状態によって、懸濁性ローション剤、乳剤性ローション剤、あるいは溶液性ローション剤に分類される。特に、乳剤性ローション剤は、別名乳液と呼ばれることもあり、その使用感の良さから水中油型のものが好まれている。
水中油型の乳剤性ローション剤は、水中油型乳剤性軟膏(クリーム剤)と同様に乳化系であるため、基本的には油性成分、水性成分、および界面活性剤(乳化剤)を構成成分とするが、同じ乳化系であっても外相(水相)が固化していないためにそのエマルションの安定化は困難とされている。その解決方法としては外相の粘度を高める方法が知られており、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース等に代表される水溶性高分子を増粘剤として添加する方法が一般的に用いられている。
【0003】
硫酸化多糖、その中でもヘパリン類似物質は、例えば、クリーム剤(O/W型、W/O型)、ローション剤、フォーム剤、スプレー剤といった剤型で血行促進・皮膚保湿剤として使用されている。硫酸化多糖の塩を含有する製剤としては、コンドロイチン硫酸エステルの多硫酸エステルを有効成分とする皮膚用保湿剤が特許文献1に開示されている。かかる特許文献においては、当該皮膚用保湿剤の剤型として、洗浄料、クリーム類、化粧水類、オシロイ類および口紅が挙げられている。今日の剤型分類に従った場合のローション剤に分類されるものとしては、化粧水類に分類されているところの植物汁液性化粧水、アルカリ性化粧水、アストリンジェントローション、ハンドローション、乳液、ファンデーションローションおよびクレンジングローションが該当するが、水中油型乳剤性ローション剤におけるエマルションの安定化技術を必要としない溶液性ローション剤がその中心である。また、乳液、即ち乳剤性ローション剤の安定性についても特に触れられていない。
【0004】
コンドロイチン硫酸エステルの多硫酸エステルのような硫酸化多糖類またはその塩を含有する乳剤性ローション剤を、上記したようなエマルションの安定化手法、即ち水溶性高分子を添加することにより安定化することも考えられるが、硫酸化多糖類またはその塩は水溶性高分子による増粘効果を阻害する傾向があり、硫酸化多糖類またはその塩を含有する水中油型乳剤性ローション剤においては、かかる方法によるエマルションの安定化は困難である。
【0005】
また、一般に、乳剤性のローション剤は、他の外用剤(油脂性軟膏及び乳剤性軟膏)と比較して配合される油性成分が少ないことから、使用感に優れており、同時に皮膚への残り感が少ないという利点を有しているが、皮膚被覆性が乏しいことに起因した効力の持続化に問題があるとされている。
【0006】
硫酸化多糖類またはその塩を含有する水中油型の乳剤性ローション剤に関する上記のような問題点に対して、還元ラノリンのような乳化安定化剤を配合する発明が開示されている(特許文献2)。かかる特許文献によれば、還元ラノリンのような乳化安定化剤を配合することにより、エマルションの安定性を確保すると共に、皮膚の保湿効果が乳剤性軟膏(クリーム)と同等に優れた水中油型乳剤性ローション剤を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60-112708号公報
【特許文献2】特開平11-180821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記水中油型の乳剤性ローション剤におけるエマルションの安定性等の課題は、乳剤性ローション剤において一般に求められる課題である。他の含有成分との組合せや経済性等、将来を含めた諸事情の可能性を考慮すれば、一通りに限らず多様な解決策が提供されることが社会的に好ましい。
【0009】
本発明は、乳化安定性などに優れた、硫酸化多糖類またはその塩を含有する新たな水中油型乳剤性ローション剤を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、一定の高級脂肪族アルコールを乳化安定化剤として配合することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
本発明として、例えば、以下のものを挙げることができる。
[1]硫酸化多糖類またはその塩、およびミリスチルアルコールまたはオレイルアルコールを含有することを特徴とする、水中油型乳剤性ローション剤。
[2]硫酸化多糖類が、ムコ多糖の多硫酸化物である、上記[1]に記載の水中油型乳剤性ローション剤。
[3]ムコ多糖の多硫酸化物が、ヘパリン類似物質である、上記[2]に記載の水中油型乳剤性ローション剤。
[4]さらに、界面活性剤、炭化水素系基剤、保湿剤、増粘剤、pH調節剤、安定化剤および保存剤からなる群から選択される1種以上の成分を含有する、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の水中油型乳剤性ローション剤。
[5]さらに、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、炭化水素、ポリオール、アルカノールアミン、カルボキシビニルポリマー、およびパラオキシ安息香酸エステルからなる群から選択される1種以上の成分を含有する、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の水中油型乳剤性ローション剤。
[6]さらに、ポリオキシエチレンセチルエーテル、モノステアリン酸グリセリン、白色ワセリン、スクワラン、グリセリン、アルカノールアミン、カルボキシビニルポリマー、およびパラオキシ安息香酸エステルからなる群から選択される1種以上の成分を含有する、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の水中油型乳剤性ローション剤。
[7]ヘパリン類似物質、セタノール、ミリスチルアルコール、ポリオキシエチレンセチルエーテル、モノステアリン酸グリセリン、白色ワセリン、スクワラン、グリセリン、ジイソプロパノールアミン、カルボキシビニルポリマー、およびパラオキシ安息香酸エステルを含有することを特徴とする、水中油型乳剤性ローション剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る、硫酸化多糖類またはその塩、特にヘパリン類似物質を含有する水中油型乳剤性ローション剤は、少なくとも粘度や乳化粒子径において従来のものと比べ同等以上に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳述する。
本発明に係る水中油型乳剤性ローション剤(以下、「本発明ローション剤」という。)は、硫酸化多糖類またはその塩、およびミリスチルアルコールまたはオレイルアルコールを含有することを特徴とする。
本発明に係る硫酸化多糖類には、構成する主な単糖が、例えば、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン、D-グルクロン酸、L-イズロン酸、D-グルコース、D-ガラクトース、D-キシロースであり、該単糖の1種または2種以上を繰り返し単位とするポリマーを硫酸化した硫酸化多糖が含まれる。
【0014】
また、天然においてすでに硫酸基を有している多糖および天然においてすでに硫酸基を有している多糖をさらに人為的に硫酸化して得られたものも、本発明に係る硫酸化多糖に含まれる。
【0015】
さらに、本発明に係る硫酸化多糖類には、抗凝血作用を有する高分子物質であるヘパリン類似物質も含まれ、ヘパリン類似物質には糖により構成されていない高分子物質であって同様の性質を有するものも含まれる。
【0016】
本発明に係る硫酸化多糖の具体例としては、例えば、ヘパリン、コンドロイチン、ヒアルロン酸等のムコ多糖類の硫酸化物;コンドロイチンポリ硫酸と呼ばれるコンドロイチン硫酸Dおよびコンドロイチン硫酸E、ならびにケラタンポリ硫酸等の天然においてすでに硫酸基を有しているムコ多糖;前記のような天然において硫酸基を有している多糖をさらに硫酸化して得られた多硫酸化物;キチンの硫酸化物;デンプン、セルロース、グアガム、アラビアガム、コンニャクマンナン、寒天アガロース、アミロペクチンの硫酸化物等が挙げられる。
【0017】
これら硫酸化多糖の中でも、本発明においては、ムコ多糖の硫酸化物(天然においてすでに硫酸基を有しているムコ多糖およびそのさらなる硫酸化物を含む)が好ましく、特にコンドロイチン硫酸の多硫酸エステルが好ましい。
【0018】
上記したように、本発明に係る硫酸化多糖類にはヘパリン類似物質が含まれる。ヘパリン類似物質とは、日本薬局方外医薬品規格に定義されたヘパリン類似物質をいう。なお、日本薬局方外医薬品規格に定義されたヘパリン類似物質は、コンドロイチン硫酸の多硫酸エステルを主成分とする。本明細書においては、特に断らない限り、単にヘパリン類似物質とある場合は、日本薬局方外医薬品規格に定義されたヘパリン類似物質を意味する。
【0019】
硫酸化多糖類の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、これらの複数塩も含まれる。
【0020】
硫酸化多糖類が含有する硫酸基の数としては、繰り返し糖単位当たり平均0.55~5個、好ましくは平均0.7~2個である。また、上記多糖類が、コンドロイチンポリ硫酸等のように硫酸化前にすでに硫酸基を有しているムコ多糖の場合は、硫酸化多糖類が含有する硫酸基の数は、繰り返し糖単位当たり平均0.55~5個、好ましくは平均0.6~2.9個、より好ましくは平均0.7~2個である。
【0021】
硫酸化多糖類またはその塩の平均分子量は、1,000~10,000,000程度であることが適当であり、好ましくは、5,000~1,000,000程度、より好ましくは10,000~100,000程度である。
【0022】
本発明ローション剤には、これら硫酸化多糖類またはその塩を、一種単独で用いてもよく、任意の二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記したような多糖類に硫酸基を導入するための硫酸化反応は、例えば、次のようにして行う。
【0024】
まず、氷冷した適当な溶媒を用意し、これに硫酸化剤を加え混合物をうる。該混合物に原料の多糖類を加え、0℃~100℃にて1~10時間反応させて硫酸化を行う。
【0025】
使用する溶媒の量は、使用する原料多糖類の種類、目的とする硫酸化多糖類等によって変わり得るが、原料多糖類1gに対して10~30mLが適当である。硫酸化剤の使用量についても、使用する原料多糖類の種類および目的とする硫酸化多糖類に応じて適宜選択されるが、例えば原料多糖類1gに対して2~6g用いることができる。
【0026】
使用する溶媒は、使用する原料多糖類の種類および目的とする硫酸化多糖類に応じて適宜選択され特に限定されないが、例えば、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド等を挙げることができる。
【0027】
硫酸化剤についても、上記と同様に目的とする硫酸化多糖類が得られるものであれば特に限定されないが、例えば、クロロスルホン酸、トリエチルアミン-サルファトリオキサイド錯塩等を挙げることができる。
【0028】
本発明ローション剤中の硫酸化多糖類またはその塩の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではないが、本発明ローション剤の全量に対して0.05重量%~1.0重量%の範囲内が適当であり、0.1重量%~0.5重量%の範囲内が好ましく、特に0.2重量%~0.4重量%の範囲内がより好ましい。
【0029】
本発明ローション剤においては、ミリスチルアルコールおよびオレイルアルコールといった高級脂肪族アルコールの一方または両方を含むが、これらは一つには本発明ローション剤の安定化を図る成分ないし安定化を補助する成分(乳化安定化剤ないし乳化助剤)と考えることができる。そして、本発明においては、これら以外の乳化安定化剤ないし乳化助剤、例えば、還元ラノリンを本発明ローション剤が含有することを排除しないが、還元ラノリンは基本的に必要としない。
なお、還元ラノリンとは、別名水素添加ラノリンといい、ラノリンを水素添加(還元)して得られるものである。還元に際してラノリンを構成する脂肪酸も還元されてアルコールとなるため、還元ラノリンは、ラノリンを構成する高級アルコール類が水素添加されたアルコールと脂肪酸の水素添加によるアルコールの混合物である。
【0030】
本発明ローション剤中のミリスチルアルコールおよび/またはオレイルアルコールの含有量も、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではないが、本発明ローション剤の全量に対して0.05重量%~15.0重量%の範囲内が適当であり、0.1重量%~5.0重量%の範囲内が好ましく、0.3重量%~1.5重量%の範囲内がより好ましい。
【0031】
本発明において、硫酸化多糖類またはその塩とミリスチルアルコールおよび/またはオレイルアルコールの配合比率(重量)は、20:1~1:300の範囲内が適当であり、10:1~1:30の範囲内が好ましく、1:1~1:5の範囲内がより好ましい。
【0032】
本発明ローション剤がセタノールを含有する場合、そのセタノールの含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではないが、本発明ローション剤の全量に対して0.01重量%~5.0重量%の範囲内が適当であり、0.1重量%~2.0重量%の範囲内が好ましく、0.3重量%~1.0重量%の範囲内がより好ましい。
【0033】
本発明ローション剤は、その他、水中油型乳剤性ローション剤を形成するために一般に含まれる成分、例えば、界面活性剤、炭化水素系基剤、保湿剤、増粘剤、pH調節剤、安定化剤または保存剤を1種以上含有することができる。また、本発明は、水中油型乳剤性ローション剤に関するものであるから、適量の水(例:精製水、蒸留水、水道水、RO水)を含む。
【0034】
界面活性剤としては、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられ、これらを単独で用いても任意の2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明において用いうる陽イオン性界面活性剤としては、具体的には、例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0036】
本発明において用いうる陰イオン性界面活性剤としては、具体的には、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ヤシアルコールエトキシ硫酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0037】
本発明において用いうる非イオン性界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0038】
本発明において用いうる両性界面活性剤としては、具体的には、例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、イミダゾリン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0039】
上記界面活性剤の中、本発明においては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(具体例、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル)、グリセリン脂肪酸エステル(具体例、モノパルミチン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン、モノリノール酸グリセリン)が好ましい。
【0040】
上記界面活性剤の含有量は、乳化剤としての役割を果たす限り特に制限されるものではないが、例えば、本発明ローション剤の全量に対して0.2重量%~5重量%の範囲内であることが適当である。さらに、本発明ローション剤は、医薬品や化粧品等として用いられることが考えられるから、これら界面活性剤の中でも非イオン性界面活性剤を主体としてできうる限り少量含有することが好ましい。
【0041】
本発明ローション剤において含有しうる炭化水素系基剤としては、具体的には、例えば、流動パラフィン、スクワラン、合成スクワラン、白色ワセリン、セレシンワックス、固形パラフィン、マイクロスタリンワックス等の炭化水素が挙げられる。この中、例えば、スクワランや白色ワセリンが好ましい。
当該炭化水素系基剤は、単独であっても任意の2種以上の併用であってもよい。
【0042】
当該炭化水素系基剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではないが、例えば、本発明ローション剤の全量に対して1重量%~10重量%の範囲内であることが適当である。
【0043】
本発明ローション剤において含有しうる保湿剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、グルコース、マルトース、キシリトール、ソルビトール等のポリオール;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムが挙げられる。この中、グリセリン、1,3-ブチレングリコールが好ましい。
当該保湿剤は、単独であっても任意の2種以上の併用であってもよい。
【0044】
当該保湿剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではないが、例えば、本発明ローション剤の全量に対して5重量%~30重量%の範囲内であることが適当である。
【0045】
本発明ローション剤において含有しうる増粘剤としては、具体的には、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、キサンタンガム、ゼラチン等が挙げられる。この中、カルボキシビニルポリマーが好ましい。
当該増粘剤は、単独であっても任意の2種以上の併用であってもよい。
【0046】
当該増粘剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではないが、例えば、本発明ローション剤の全量に対して0.05重量%~1重量%の範囲内であることが適当である。
【0047】
本発明ローション剤において含有しうるpH調節剤としては、例えば、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸、酒石酸、dl-リンゴ酸、氷酢酸等が挙げられる。この中、アルコールアミンが好ましく、その中でもジイソプロパノールアミンがより好ましい。
当該pH調節剤は、単独であっても任意の2種以上の併用であってもよい。
【0048】
当該pH調節剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではないが、例えば、本発明ローション剤の全量に対して0.05重量%~1重量%の範囲内であることが適当である。
【0049】
本発明ローション剤において含有しうる安定化剤または保存剤ないし防腐剤(以下、「安定化剤等」という。)としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラベン(パラオキシ安息香酸エステル);フェノキシエタノール、1,3-ブチレングリコールが挙げられる。
当該安定化剤または保存剤は、単独であっても任意の2種以上の併用であってもよい。
【0050】
当該安定化剤等の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではないが、例えば、本発明ローション剤の全量に対して0.05重量%~1重量%の範囲内であることが適当である。
【0051】
本発明ローション剤においては、その他、医薬品、化粧品等の分野において用いられる、例えば、油脂類、ロウ類、脂肪酸、エステル類等を含有することができる。これら他の成分は、使用目的に応じて適宜組み合わせて配合することができる。
【0052】
本発明ローション剤において含有しうる油脂類としては、具体的には、例えば、オリーブ油、大豆油、ツバキ油、パーム油、ヒマシ油等が挙げられる。
【0053】
本発明ローション剤において含有しうるロウ類としては、具体的には、例えば、ミツロウ、カルナバロウ、モクロウ、液状ラノリン、硬質ラノリン等が挙げられる。
【0054】
本発明ローション剤において含有しうる脂肪酸としては、具体的には、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。
【0055】
本発明ローション剤において含有しうるエステル類としては、具体的には、例えば、乳酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等が挙げられる。
【0056】
上記その他の成分の含有量は、用途、所望の使用感等により適宜変更しうるものであり特に制限されないが、感触面を考慮すると本発明ローション剤の全量に対して1.0~30重量%以下の範囲内が適当である。
【0057】
更に、本発明ローション剤は、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、上記した以外に、化粧品や医薬品に用いられる成分を含有することができる。例えば、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤、薬剤、分散剤等が挙げられる。
【実施例0058】
以下、実施例および試験例(実施例等)を掲げて本発明を詳しく説明するが、本発明は以下の実施例等の態様に何ら限定されるものではない。
【0059】
[参考例と実施例1~5]
表1に示す各処方に従い、常法により各水中油型乳剤性ローション剤を調製した。なお、参考例は、特許文献2に記載の発明の一態様である。
【0060】
【表1】
【0061】
[試験例1]
参考例および実施例1~5について、50℃、4週間後の相分離の有無、粘度、乳化粒子径、および性状を観察した。相分離の有無は目視で行い、粘度はモジュラーコンパクトレオメータ(MCR302)で測定した。乳化粒子径は、各製剤少量をスライドガラス上にとり、カバーグラスを被せた後、顕微鏡観察(対物レンズ:40倍あるいは100倍、接眼レンズ10倍)により行った。評価は、下記基準で行った。
【0062】
(評価基準)
A:1~2μmの乳化粒子のみ
B:1~数μmの乳化粒子が混在
B’:1~数μmの乳化粒子が中心で、十数μmの乳化粒子を含む
C:1~十数μmの乳化粒子が混在
C’:1~十数μmの乳化粒子が中心で、数十μmの乳化粒子を含む
D:1~数十μmの乳化粒子が混在
E:その他
その結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示す結果から明らかな通り、本発明ローション剤に係る実施例1~5は、粘度および乳化粒子径において、参考例と同等以上であった。皮膚に適用した際も白残りやダマがより低減されており、高品質のローション剤を得ることができた。
【0065】
[比較例]
上記実施例のオレイルアルコールおよびミリスチルアルコールを、セタノールまたはステアリルアルコールに替えて、表3に示す各処方に従い、常法により各水中油型乳剤性ローション剤を調製した。
【0066】
【表3】
【0067】
[試験例2]
各比較例について、前記実施例等と同様に、50℃、4週間後の相分離の有無、粘度、乳化粒子径、および性状を観察した。その結果を表4に示す。
【0068】
【表4】

表4に示す結果から明らかな通り、還元ラノリンならびにオレイルアルコールおよびミリスチルアルコールを含有せず、代わりにセタノールまたはステアリルアルコールを含有した比較例の場合、乳化粒子径および粘度は増大傾向にあり、参考例と比べて劣るものであった。
【0069】
[実施例6~11]
表5に示す各処方に従い、常法により各水中油型乳剤性ローション剤を調製した。
【0070】
【表5】
【0071】
実施例6~11に関しても、粘度および乳化安定性において優れていた。皮膚に適用した際も白残りやダマがより低減されており、高品質のローション剤を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明ローション剤は、上記試験例の結果などから明らかな通り、乳化安定性などに優れており、本発明は、例えば、医薬品分野や化粧品分野において有用である。