IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 名倉 則友の特許一覧

<>
  • 特開-マスク 図1
  • 特開-マスク 図2
  • 特開-マスク 図3
  • 特開-マスク 図4
  • 特開-マスク 図5
  • 特開-マスク 図6
  • 特開-マスク 図7
  • 特開-マスク 図8
  • 特開-マスク 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012970
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230119BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
A41D13/11 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116779
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】521312488
【氏名又は名称】名倉 則友
(74)【代理人】
【識別番号】100155985
【弁理士】
【氏名又は名称】二間瀬 覚
(72)【発明者】
【氏名】名倉 則友
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA04
2E185CB07
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】吸気抵抗を抑えつつ、飛沫の飛散を抑制することのできるマスクを提供する。
【解決手段】マスク10は、少なくとも鼻腔を覆う。マスク10は、顔面から離間した位置で鼻腔を含む顔面の一部を覆うカバー11であって、カバー11の周部に顔面に当接する当接部を有するカバー11と、カバー11において顔面左側に対応する左側部12L、及びカバー11において顔面右側に対応する右側部とを有する。マスク10は、左側部12L及び右側部の少なくとも一方に設けられていてカバー11の顔面側である内側とカバー11の反顔面側である外側との間に通気を確保する側部通気部13とを備える。側部通気部13は、カバー11の内側とカバー11の外側とを連通させるとともに、カバー11の内側からカバー11の外側を見通すことのできない通気通路を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも鼻腔を覆うマスクであって、
顔面から離間した位置で鼻腔を含む顔面の一部を覆うカバーであって、前記カバーの周部に顔面に当接する当接部を有する前記カバーと、
前記カバーにおいて顔面左側に対応する左側部、及び前記カバーにおいて顔面右側に対応する右側部と、
前記左側部及び前記右側部の少なくとも一方に設けられていて前記カバーの顔面側である内側と前記カバーの反顔面側である外側との間に通気を確保する側部通気部と、
前記左側部と前記右側部とに接続されていて前記カバーを顔面に装着させる装着部材とを備え、
前記側部通気部は、前記カバーの内側と前記カバーの外側とを連通させるとともに、
前記カバーの内側から前記カバーの外側を見通すことのできない通気通路を有している
ことを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記側部通気部は、前記カバーの内側から前記カバーの外側に排出される空気の流れる方向を顔面の後側の方向とする
請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記側部通気部は、少なくとも一部が顔面の頬に対向する位置に設けられており、前記カバーの内側から前記カバーの外側を見通すことができないように配置された複数のフィンにより前記通気通路が構成されている
請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記複数のフィンは、前記カバーの内側に配置される内側フィンと、前記カバーの外側に配置される外側フィンとを有し、
前記内側フィンは、前記カバーの内側から前記カバーの外側に向かう方向において少なくとも鼻腔のある方向に延びるフィンであり、
前記外側フィンは、前記カバーの内側から前記カバーの外側に向かう方向において少なくとも鼻腔のある方向とは反対の方向に延びるフィンである
請求項3に記載のマスク。
【請求項5】
前記カバーは、内側カバーと前記内側カバーの外側に配置される外側カバーとを有し、
前記内側カバーは、鼻腔に対向する位置よりも上方、かつ、前記外側カバーの上端よりも下方に前記内側カバーの上端を有し、
前記外側カバーは、前記内側カバーよりも上方になる前記外側カバーの上端を含んで前記内側カバーの外側面に沿って下方に延びるとともに、前記内側カバーに接触しない前記外側カバーの下端を有し、
前記カバーは、前記内側カバーと前記外側カバーとの間の一部に、前記内側カバーの上端を内側入口とし、前記外側カバーの下端を外側出口として連通させる連通空間を有している
請求項1から4のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項6】
前記側部通気部は、前記通気通路に、通気性を有するとともに飛沫を付着させることのできるフィルターを有している
請求項1から5のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項7】
前記カバーは、鼻腔と口とを覆う
請求項1から6のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項8】
前記当接部は、可撓性を有する部材からなり、前記カバーの周部の少なくとも一部に凸設されている
請求項1から7のいずれか一項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔面に装着されるマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気を浄化するフィルターによる濾過作用の高いマスクとして、特許文献1に記載のようなマスクが知られている。このマスクは、濾過作用を高める効果を手軽に実現できるとともに、呼吸や会話のし易い構造をしている。
【0003】
つまり、特許文献1に記載のマスクは、通気性の無い材料からなるパッド本体の中央付近(顔装着時に口に対向する位置)に通気用のマスク側吸排気部を設けている。パッド本体は、鼻孔と口元を一定の距離を隔てて覆うように立体成形され、呼吸時にも撓むことのない十分な剛性を持たせた構造である。これにより鼻孔や口元にマスクが付着することを防止する。また、パッド本体の周縁には、通気性を有するフィルター材(部)からなりマスク着用者の顔面と隙間なく密着する構造の接顔側吸排気部を設ける。また、マスク側吸排気部の周囲には、マスク当接部を設ける。マスク当接部は、その先端辺をマスクに当接することで、清浄な空気のみが吸引できるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-12896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために飛沫の飛散を抑制することが求められている。飛散を抑制するにしても、呼吸により排出される空気量は、維持しつつ、ウイルスを広範囲に飛散させない工夫が求められている。例えば、医療用マスクとしては、ウイルスを透過させない特殊なフィルターの装着されたマスクが知られている。こうした医療用マスクであれば飛沫の飛散が抑止されて感染の予防効果が高い一方で、吸気抵抗が高いため一般の生活場面では息苦しさを与えてしまうおそれがある。また、特許文献1に記載されたマスクなどに利用される一般的なフィルターは、吸気抵抗は低いものも少なくないが、ウイルスを含む唾液等の飛沫が一旦保持されたとしても、時間の経過に応じて飛沫やウイルスがフィルターを通り抜けてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的は、吸気抵抗を抑えつつ、飛沫の飛散を抑制することのできるマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するマスクは、少なくとも鼻腔を覆うマスクであって、顔面から離間した位置で鼻腔を含む顔面の一部を覆うカバーであって、前記カバーの周部に顔面に当接する当接部を有する前記カバーと、前記カバーにおいて顔面左側に対応する左側部、及び前記カバーにおいて顔面右側に対応する右側部と、前記左側部及び前記右側部の少なくとも一方に設けられていて前記カバーの顔面側である内側と前記カバーの反顔面側である外側との間に通気を確保する側部通気部と、前記左側部と前記右側部とに接続されていて前記カバーを顔面に装着させる装着部材とを備え、前記側部通気部は、前記カバーの内側と前記カバーの外側とを連通させるとともに、前記カバーの内側から前記カバーの外側を見通すことのできない通気通路を有している。
【0008】
このような構成によれば、鼻腔を覆うカバーの内側の空間と外側とが通気通路により連通されていることから、鼻腔の呼気に対する空気抵抗が低く抑えられる。また、通気通路は、カバーの内側とカバーの外側との間を見通すことのできない通路であることから、マスクの内側から外側に排出される呼気の勢いが低減され、呼気に含まれている飛沫の飛散が抑制されるようになる。
【0009】
また、飛沫の飛散する方向が顔面の左側方向及び右側方向の少なくとも一方になることから、飛沫の顔面正面方向への飛散が抑制される。
【0010】
こうした、飛沫の飛散が抑制されることにより、飛沫と共に拡散されるウイルスなどによる感染症などの感染の拡大を抑えることができるようにもなる。
【0011】
好ましい構成として、前記側部通気部は、前記カバーの内側から前記カバーの外側に排出される空気の流れる方向を顔面の後側の方向とする。
【0012】
好ましい構成として、前記側部通気部は、少なくとも一部が顔面の頬に対向する位置に設けられており、前記カバーの内側から前記カバーの外側を見通すことができないように配置された複数のフィンにより前記通気通路が構成されている。
【0013】
好ましい構成として、前記複数のフィンは、前記カバーの内側に配置される内側フィンと、前記カバーの外側に配置される外側フィンとを有し、前記内側フィンは、前記カバーの内側から前記カバーの外側に向かう方向において少なくとも鼻腔のある方向に延びるフィンであり、前記外側フィンは、前記カバーの内側から前記カバーの外側に向かう方向において少なくとも鼻腔のある方向とは反対の方向に延びるフィンである。
【0014】
好ましい構成として、前記カバーは、内側カバーと前記内側カバーの外側に配置される外側カバーとを有し、前記内側カバーは、鼻腔に対向する位置よりも上方、かつ、前記外側カバーの上端よりも下方に前記内側カバーの上端を有し、前記外側カバーは、前記内側カバーよりも上方になる前記外側カバーの上端を含んで前記内側カバーの外側面に沿って下方に延びるとともに、前記内側カバーに接触しない前記外側カバーの下端を有し、前記カバーは、前記内側カバーと前記外側カバーとの間の一部に、前記内側カバーの上端を内側入口とし、前記外側カバーの下端を外側出口として連通させる連通空間を有している。
【0015】
好ましい構成として、前記側部通気部は、前記通気通路に、通気性を有するとともに飛沫を付着させることのできるフィルターを有している。
【0016】
好ましい構成として、前記カバーは、鼻腔と口とを覆う。
【0017】
好ましい構成として、前記当接部は、可撓性を有する部材からなり、前記カバーの周部の少なくとも一部に凸設されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、吸気抵抗を抑えつつ、飛沫の飛散を抑制することのできることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態におけるマスクの模式図。
図2】同実施形態におけるマスクの内側である背面を示す平面図。
図3】同実施形態におけるマスクの外側である正面を示す正面図。
図4】同実施形態におけるマスクの左側面を示す側面図。
図5】同実施形態におけるマスクの内側カバーの正面を示す正面図。
図6】同実施形態におけるマスクの内側カバーの左側面を示す側面図。
図7図3の7A-7A切断線における断面構造を模式的に示す断面図。
図8図6の8A-8A切断線における端面構造を模式的に示す端面図。
図9図3の7A-7A切断線における端面構造を模式的に示す端面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図9を参照して、マスクの一実施形態について説明する。
【0021】
図1を参照して、マスク10は、頭部1における顔面2に装着される。マスク10は、装着部材としての首バンド18とヘッドバンド19とを備えている。マスク10は、首バンド18による首3への固定によって顔面2に装着される。また、マスク10は、ヘッドバンド19による後頭部4への固定によってより確実に顔面2に装着されてもよい。マスク10は、顔面2のうち、鼻5の鼻腔5H(図8参照)を覆うように顔面2に装着される。また、マスク10は、顔面2のうち口6(図8参照)を覆うように顔面2に装着されてもよい。
【0022】
マスク10は、概略的に、顔面2の一部を覆うカバー11と、カバー11のうち顔面2の正面から側方に延びる側部12と、側部12に設けられた側部通気部13とを備えている。側部通気部13は、少なくとも一部が頬に対向する位置に設けられている。なお、カバー11には、側部12であって、正面に対して左側に延びる左側部12Lと、正面に対して右側に延びる右側部12R(図2参照)とを有してる。なお、左側部12Lと右側部12R(図2参照)とはカバー11の正面に対して左右対称の構造をしていることから、左右を区別して説明する必要のない場合、単に側部12と記載する。
【0023】
図2図6を参照して、マスク10について詳細に説明する。
【0024】
図2を参照して、カバー11は、樹脂等の剛性を有する素材より構成されている。例えば、カバー11は、各種の硬質プラスチック、好ましくは、ポリカーボネート樹脂から形成される。また、カバー11は、可撓性かつ弾性変形可能であって剛性を有する材料、熱可塑性のエラストマーや硬質のプラスチック、ゴムなどから形成することができる。カバー11は、鼻5と口6(図8参照)とを含む顔面2の一部を覆う大きさを有している。また、カバー11は、鼻5と口6(図8参照)を含む顔面2の一部を覆いつつ、顔面2に装着可能な形状を有している。例えば、カバー11は、周縁が顔面2に当接し、周縁よりも内側が顔面2から離間するように、顔面2の起伏に沿う面形状を有している。
【0025】
カバー11は、外側カバー20と内側カバー30とを有している。カバー11は、外側カバー20の内面21Aと、内側カバー30の外面31B(図5参照)とを相対向させて、組み合わされることにより構成されている。外側カバー20と内側カバー30とは、相対向する一部で当接し、所定の位置で相互に嵌合するとともに、ねじ止めや爪止め、圧入、スナップフィットなどにより組み合わせられる構造を有している。なお、本実施形態では、外側カバー20と内側カバー30とは、離合可能な態様で構成されているとよい。
【0026】
図3及び図4を参照して、外側カバー20は、顔面形状に対応する形状を有している。特に、外側カバー20の外面21Bは、鼻5の先端(鼻先)に対応した先端部分22Cを頂点とする緩やかな曲面からなる正面部28を有している。これにより、最も目にされる外見を曲線的な意匠とすることができる。正面部28は、上部に上端縁211、下部に下端縁212を有し、右側には右側部12Rが配置され、左側には左側部12Lが配置されている。なお、外側カバー20の面は、顔面側になる面が内面21A(図2参照)、反顔面側になる面が外面21Bであるとする。
【0027】
右側部12Rは、正面部28の右側において、上下方向上側に右側面23Rを有している。なお、右側部12Rにおいて右側面23Rの上下方向下方は、右側の側部通気部13を覆わない形状とされている。つまり、右側の側部通気部13を覆わない形状は、正面部28の右端27Rと右側面23Rの下端24Rとで区画されている。
【0028】
右側面23Rは、右側面を後方に延設されており、上部にはヘッドバンド19が取り付けられるヘッドバンド取付部25Rが設けられている。ヘッドバンド取付部25Rは、ヘッドバンドの着脱の際、着脱可能な取付部カバー26Rが取り付け可能になっている。
【0029】
左側部12Lは、正面部28の左側において、上下方向上側に左側面23Lを有している。なお、左側部12Lにおいて左側面23Lの上下方向下方は、左側の側部通気部13を覆わない形状とされている。つまり、左側の側部通気部13を覆わない形状は、正面部28の左端27Lと左側面23Lの下端24Lとで区画されている。
【0030】
左側面23Lは、左側面を後方に延設されており、上部にはヘッドバンド19が取り付けられるヘッドバンド取付部25Lが設けられている。ヘッドバンド取付部25Lは、ヘッドバンドの着脱の際、着脱可能な取付部カバー26Lが取り付け可能になっている。
【0031】
カバー11は、外側から見たとき、右側部12R及び左側部12Lにそれぞれ側部通気部13が配置されている。側部通気部13は、外側カバー20の右側面23R及び左側面23Lの下方であって、外側カバー20のない部分に配置される。側部通気部13は、内側カバー30の右側に通気領域35Rを有し、内側カバー30の左側に通気領域35Lを有している。各通気領域35R,35Lにはそれぞれ、外側フィン50が設けられている。
【0032】
図2を参照して、内側カバー30は、外側カバー20と顔面2との間に配置されている。内側カバー30は、外側カバー20の形状と顔面形状とに対応する形状を有している。例えば、内側カバー30は、カバー11の周縁に対応する部分は顔面2に当接し、周縁に対応しない部分は顔面2から離間する。なお、内側カバー30の表面であって顔面側を内面31A、反顔面側を外面31B(図5参照)とする。
【0033】
まず、内側カバー30の顔面に対向する内面31Aについて説明する。内側カバー30は、鼻5の先端(鼻先)に対応した先端部分311を頂点にして緩やかな曲面からなる正面部31を有している。内側カバー30は、正面部31の上部に上端としての上端縁312を有し、下部に下端としての下端縁313を有し、右側には中継部38Rを介して右側部32Rを有し、左側には中継部38Lを介して左側部32Lを有している。
【0034】
右側部32Rは、側面上部33Rと、側面下部36Rと、装着部材右側接続部34Rと、右側の側部通気部13とを有している。側面上部33Rは、外側カバー20の右側面23Rに対応する位置であって、右側部32Rにおいて上下方向上側に設けられている。側面下部36Rは、右側部32Rにおいて上下方向下側に設けられている。装着部材右側接続部34Rは、首バンド18が接続される部分であって、カバー11において正面に対して右側後端に設けられている。よって、中継部38Rと、側面上部33Rと、装着部材右側接続部34Rと、側面下部36Rとで囲まれる通気領域35Rに右側の側部通気部13が設けられる。通気領域35Rには、通気領域35Rの一部を覆う内側フィン37が設けられている。
【0035】
左側部32Lは、側面上部33Lと、側面下部36Lと、装着部材左側接続部34Lと、左側の側部通気部13とを有している。側面上部33Lは、外側カバー20の左側面23Lに対応する位置であって、左側部32Lにおいて上下方向上側に設けられている。側面下部36Lは、左側部32Lにおいて上下方向下側に設けられている。装着部材左側接続部34Lは、首バンド18が接続される部分であって、カバー11において正面に対して左側後端に設けられている。よって、中継部38Lと、側面上部33Lと、装着部材左側接続部34Lと、側面下部36Lとで囲まれる通気領域35Lに左側の側部通気部13が設けられる。通気領域35Lには、通気領域35Lの一部を覆う内側フィン37が設けられている。
【0036】
図2を参照して、カバー11の周縁には顔面2に当接する当接部60が設けられている。カバー11は、当接部60が顔面2に当接することにより顔面2から離間した位置に保持されて、鼻腔5H(図8参照)を含む顔面2の一部を覆う。
【0037】
当接部60は、例えばポリウレタン等のクッション性があって、かつ、通気性がない又は低い材料から構成されている。例えば、当接部60は、ゴム弾性を有する比較的に柔軟なゴム、プラスチック(ポリウレタン、シリコーン)等から形成することができる。また、当接部60は、可撓性かつ弾性変形可能であって多少の剛性を有する材料、エラストマーや軟質のプラスチック、ゴムなどから形成することもできる。当接部60は、マスク着用者の顔面2の凹凸を吸収できる程度の十分な厚さと柔軟性をもたせることで、カバー11の周縁の形状が装着者の顔面形状に多少合わないとしても、マスク装着時の軽い押し力のみで顔面2との間に隙間なく密着させることが可能となる。当接部60については単一素材の他、抗菌層や超極細繊維層などを付加した多重層構造を有していてもよい。
【0038】
当接部60は、カバー11の内側上縁に上当接部61を有し、カバー11の内側下縁に下当接部63を有している。
【0039】
ところで、上当接部61の設けられるカバー11の内側上縁は、外側カバー20の上端縁211と、内側カバー30の側面上部33Rの上端縁331Rと、内側カバー30の側面上部33Lの上端縁331Lとから構成される。下当接部63の設けられるカバー11の内側下縁は、内側カバー30の下端縁313と、右側部32Rの側面下部36Rと、左側部32Lの側面下部36Lとを有している。つまり、カバー11の上縁は、外側カバー20と内側カバー30とから構成される。
【0040】
よって、上当接部61は、外側カバー20に配置される正面当接部62と、内側カバー30に配置されていて正面当接部62の延設方向の右端に連続配置される右当接部62Rと、内側カバー30に配置されていて正面当接部62の延設方向の左端に連続配置される左当接部62Lとから構成されている。つまり、正面当接部62と右当接部62Rとは連続配置されつつも分離されている。同様に、正面当接部62と左当接部62Lとは連続配置されつつも分離されている。これにより、カバー11は、周縁に当接部60が設けられつつ、外側カバー20と内側カバー30とを離合可能に構成されている。
【0041】
なお、カバー11の内側において、右側部32Rの後端には首バンド18の一端が接続される装着部材右側接続部34Rが設けられ、左側部32Lの後端には首バンド18の他端が接続される装着部材左側接続部34Lが設けられている。そして、本実施形態では、首3に掛けられた首バンド18の張力によりカバー11の右側部32Rと左側部32Lとが少なくとも弾性変形する。これにより、装着部材右側接続部34Rと装着部材左側接続部34Lとが顔面2に当接するときには、装着部材右側接続部34Rと装着部材左側接続部34Lとに当接部60を設けなくてもよい。一方、カバー11の内側において、右側部32Rや左側部32Lに隙間が生じるときには、気密性をより高めるために右側部32Rや左側部32Lに当接部60が設けられてもよい。
【0042】
次に、図5を参照して、内側カバー30の反顔面方向である外側について説明する。内側カバー30の外側は、外側カバー20の内側が組み合わせ可能に構成されている。内側カバー30の外側と外側カバー20の内側とは、組み合わされることによってそれらの一部が相互に相対向する。
【0043】
詳述すると、内側カバー30は、正面部31の外面31Bに設けられた連通部40と、正面部31の右側に連設される中継部38R及び右側部32Rと、正面部31の左側に連設される中継部38L及び左側部32Lとを備えている。
【0044】
連通部40は、正面部31の外面31Bに組み合わされる外側カバー20との間に通気性を有する空間を確保する。内側カバー30の外側と外側カバー20の内側とは高い気密性で組み合わされるとともに、連通部40では通気性が確保される。また内側カバー30は、連通部40の右側には順に、中継部38Rと右側部32Rとが配設され、連通部40の左側には順に、中継部38Lと左側部32Lとが配設されている。
【0045】
連通部40は、内側カバー30の外面31Bに凸設されており、内側カバー30の外面31Bと、外面31Bに離間して設けられた凸面44との間に連通路空間41を形成している。連通路空間41は、正面部31から外方に突設された支持部で凸面44が支えられることで、正面部31の外面31Bの外側に上下方向に連通する空間を確保している。
【0046】
また、連通部40は、正面部31の外面31Bにおいて、上側に上部口46を有し、下側に下部口43を有し、上部口46と下部口43との間が連通路空間41で連通されている。なお、連通部40は、上部口46には通路フィルター81(図9参照)を配置させることができてもよい。
【0047】
図5を参照して、内側カバー30は、左側部32Lにおいて内側フィン37の外側には、外側フィン50を配置可能な外側フィン配置部361が設けられている。外側フィン配置部361は、外側フィン50を離合可能に配置させることができる。なお、内側フィン37と外側フィン50との間には側部フィルター80(図8参照)を配置させることができてもよい。
【0048】
内側カバー30において右側の中継部38R及び左側の中継部38Lはそれぞれ、連通部40の厚さで内側カバー30に設けられている。右側の中継部38Rは、さらに右側に上述した右側部32Rと側部通気部13とが上下に並び配置されている。左側の中継部38Lは、さらに左側に上述した左側部32Lと側部通気部13とが上下に並び配置されている。側部通気部13は構造が対称であることから、説明の便宜上、以下では左右を分けることなく、いずれか一方について説明する。
【0049】
側部通気部13は、複数のフィンとしての内側フィン37と外側フィン50とを配置させることができる内外方向への幅としての厚さを有している。内側カバー30は、連通部40と同様の厚さが中継部38R,38Lに確保されていて、連通部40と中継部38R,38Lとの間に生じる段差が小さくなるか、無くなるようにしている。また、中継部38R,38Lにて調整された厚さと同様の厚さを各側部通気部13に確保することで、各中継部38R,38Lと対応する側部通気部13との間に生じる段差が小さくなるか、無くなるようにしている。
【0050】
図6を併せて参照して、内側カバー30は、その外側において、連通部40、中継部38R,38L及び側部通気部13まで段差が小さくなるか、生じないようになっている。これにより、内側カバー30は、その外側が外側カバー20を取り付けやすくできるとともに、外側カバー20の外形をなだらかな曲面で意匠性の高いものとすることができるようにもなっている。また、内側カバー30の外側と外側カバー20の内側とを高い気密性で組み合わせられるようにもなる。
【0051】
内側カバー30は、2つの中継部38R,38Lの間が連通部40で帯状に結ばれていることから、その外側に外側カバー20が組み合わされたとしても、連通部40の上方及び下方には、正面部31と外側カバー20とにより区画された空間が確保される。すなわち、正面部31の外面31Bには、正面部31の上端縁312から下端縁313までを連通する空間が形成されるようになっている。
【0052】
図6を参照して、外側フィン50は、はめ込みやねじなど、好適に固定し得る手段によって側部通気部13に固定配置されている。外側フィン50は、装着部材左側接続部34Lの方向、より好ましくは、マスク10に対して首3の方向である後方下向き(図において矢印EX1の示す方向)に、マスク10の内側の呼気が排出されるように配置されている。外側フィン50は、各種の硬質プラスチック、好ましくは、ポリカーボネート樹脂から形成される。また、外側フィン50は、可撓性かつ弾性変形可能であって剛性を有する材料、熱可塑性のエラストマーや硬質のプラスチック、ゴムなどから形成することができる。
【0053】
外側フィン50は、第1の外ブレード51、第2の外ブレード52及び第3の外ブレード53の3枚のブレードを有している。また、第1~第3の外ブレード51~53の間にはそれぞれ、吸気抵抗を感じさせない隙間が設けられている。なお、本実施形態では、外側フィン50は、ブレードを3枚有しているが、ブレードの枚数は1枚以上であれば何枚であってもよい。ここで、外側フィン50に対して、装着部材左側接続部34Lのある方向が後側である。
【0054】
第1の外ブレード51は最も後側に配置され、第2の外ブレード52は第1の外ブレード51よりも前側に配置され、第3の外ブレード53は第2の外ブレード52よりも前側に配置されている。
【0055】
第1~第3の外ブレード51~53はそれぞれ、マスク10の前後方向には所定の幅を有し、マスク10の厚さ方向には剛性を確保し得る薄い厚さを有している。また、第1~第3の外ブレード51~53はそれぞれ、マスク10の厚さ方向である内側から外側に対して後側かつ下側へ傾く所定の傾きを有している。換言すると、所定の傾きは、内側からの呼気を後側かつ下側である矢印EX1の示す方向に流すことができる傾きである。
【0056】
なお、第1~第3の外ブレード51~53は、強度確保や剛性確保のためにその一部が相互に接続されていてもよい。また、第1~第3の外ブレード51~53は、所定の傾きを調整可能な可動式であってもよい。
【0057】
図7を参照して、内側フィン37は、内側カバー30に一体成型されている。内側フィン37は、装着部材左側接続部34Lの方向、より好ましくは、マスク10の内側を前面から流れてきた呼気が、マスク10に対して首3の方向である後方下向き(図において矢印EX2の示す方向)から流入するように配置されている。内側フィン37は、内側カバー30と同様の材料である各種の硬質プラスチック、好ましくは、ポリカーボネート樹脂から形成される。なお、内側フィン37は、離合可能な別部材として形成されて、はめ込みやねじなどの固定手段により側部通気部13に固定配置されてもよい。
【0058】
内側フィン37は、第1の内ブレード71、第2の内ブレード72、第3の内ブレード73、第4の内ブレード74、第5の内ブレード75の5枚のブレードを有している。また、第1~第5の内ブレード71~75の間にはそれぞれ、吸気抵抗を感じさせない隙間が設けられている。なお、本実施形態では、内側フィン37は、ブレードを5枚有しているが、ブレードの枚数は1枚以上であれば何枚であってもよい。ここで、内側フィン37に対して、装着部材左側接続部34Lのある側が後側である。
【0059】
第1の内ブレード71は最も後側に配置され、第2の内ブレード72は第1の内ブレード71よりも前側に配置され、第3の内ブレード73は第2の内ブレード72よりも前側に配置され、第4の内ブレード74は第3の内ブレード73よりも前側に配置され、第5の内ブレード75は第4の内ブレード74よりも前側に配置されている。
【0060】
第1~第5の内ブレード71~75はそれぞれ、マスク10の前後方向には所定の幅を有し、マスク10の厚さ方向には剛性が確保し得る薄い厚さを有し、第1~第5の内ブレード71~75の後側辺37Aから前側に向かって、マスク10の厚さ方向に対して所定の傾きを有している。所定の傾きは、内側から外側に対して前側かつ上側へ傾く傾きである。換言すると、所定の傾きは、内側からの呼気を前側かつ上側である矢印EX2の方向に流入させることができる傾きである。
【0061】
なお、第1~第5の内ブレード71~75は、強度確保や剛性確保のためにその一部が1つ以上の内ブレード連結部76で相互に接続されていてもよい。
【0062】
図7及び図8を参照して、側部フィルター80について説明する。側部フィルター80は、内側フィン37と外側フィン50との間に設けられている。側部フィルター80は、通気性を維持しつつ、抗菌性能や除菌効果などを有するフィルターであると好ましい。側部フィルター80は、フィルター材として単一素材の他、フィルター効果を高める為に抗菌層や超極細繊維層などを付加した多重層構造であってもよい。例えば、側部フィルター80は、側部通気部13に外側フィン50を取り付ける前に、内側フィン37の外側に配置されることにより、内側フィン37と外側フィン50との間に配置される。側部フィルター80は、内側フィン37の外側を覆う形状を有しており、その形状を保持することのできる剛性がフレームで付与されていてもよい。
【0063】
図8を参照して、側部通気部13について詳述する。
【0064】
側部通気部13は、内側から外側に向かって内側フィン37、側部フィルター80、及び外側フィン50が広い面を相対向させて配置されている。このとき、鼻腔5Hからの呼気B1や口からの呼気B2が内側カバー30に沿って側部通気部13の方向に呼気Bとして流れる。呼気Bは、内側フィン37において、後側下側から流入して前側上側である矢印EX2の方向に流れる。そして、呼気Bは、側部フィルター80を通過して、外側フィン50において、前側上側から流入して後側下側である矢印EX1の方向に排気される。
【0065】
このとき、呼気Bは内側カバー30の内側に沿って後側に流れてくるが、内側フィン37には、例えば90度よりも大きな角度で曲がり、矢印EX2の向きで流入する。これにより、まず側部通気部13は、呼気Bの排出される鼻腔5Hや口6から見通せる経路を有していない。つまり、呼気Bは、マスク10の内側から外側に流れる経路が見通せない蛇行した経路となっている。
【0066】
また、側部通気部13は、内側フィン37と外側フィン50とが配置された状態で通気領域35Lを内側から外側まで見通すことのできる経路を有していない。換言すると、通気領域35Lにおいて、内側フィン37の隙間と外側フィン50の隙間とで形成される通気通路70は、内側から外側までを見通すことができないように構成されている。つまり、呼気Bは、側部通気部13において、マスク10の内側から外側に流れる経路が、見通せない蛇行する経路となっている。
【0067】
詳述すると、内側フィン37は、第1~第5の内ブレード71~75が外側に向かって前側上側に傾いているため、各ブレードで呼気の入口となる後側辺37A(図7参照)の位置が、呼気の出口となる前側辺の位置よりも内側(手前)に配置されている。
【0068】
すなわち、第1の内ブレード71は、後側辺が接続部34の対向面342よりも内側に配置され、前側辺が第2の内ブレード72の後側辺よりも外側(マスク内側から見て奥)に配置される。同様に、第2の内ブレード72は、後側辺が第1の内ブレード71の前側辺よりも内側に配置され、前側辺が第3の内ブレード73の後側辺よりも外側に配置される。第3の内ブレード73は、後側辺が第2の内ブレード72の前側辺よりも内側に配置され、前側辺が第4の内ブレード74の後側辺よりも外側に配置される。第4の内ブレード74は、後側辺が第3の内ブレード73の前側辺よりも内側に配置され、前側辺が第5の内ブレード75の後側辺よりも外側に配置される。第5の内ブレード75は、後側辺が第4の内ブレード74の前側辺よりも内側に配置され、前側辺が中継部38Lの内面後側辺よりも外側に配置される。
【0069】
なお、図7を参照して、本実施形態では、第1の内ブレード71は、接続部34と側面下部36Lとに端部が固定され、通気領域35Lの一部を覆っている。第2の内ブレード72は、接続部34と側面下部36Lとに端部が固定され、通気領域35Lの一部を覆っている。第3の内ブレード73は、接続部34と側面下部36Lとに端部が固定され、通気領域35Lの一部を覆っている。第4の内ブレード74は、側面上部33Lと中継部38Lとに端部が固定され、通気領域35Lの一部を覆っている。第5の内ブレード75は、側面上部33Lと中継部38Lとに端部が固定され、通気領域35Lの一部を覆っている。
【0070】
よって、側部通気部13において通気領域35Lの多くの部分が第1~第5の内ブレード71~75に覆われている。なお、本実施形態では、第1~第5の内ブレード71~75の両端部は、通気領域35Lを区画する辺のうち交差する配置となる辺にそれぞれ固定されていることから第1~第5の内ブレード71~75の長さの相違が大きい。
【0071】
これにより、側部通気部13の通気領域35Lにおいて、内側から外側を見通すことのできる領域が、内側フィン37を構成する第1~第5の内ブレード71~75により形成される隙間を含んでいる通気通路70を構成する通気空間に規制される。
【0072】
外側フィン50は、第1~第3の外ブレード51~53が外側に向かって後側下側に傾いているため、各ブレードで呼気の入口となる前側辺の位置が、呼気の出口となる後側辺の位置よりも外側に配置されている。
【0073】
すなわち、第1の外ブレード51は、後側辺が接続部34の対向面341よりも外側に配置され、前側辺が第2の外ブレード52の後側辺よりも内側(マスク外側から見て奥)に配置される。第2の外ブレード52は、後側辺が第1の外ブレード51の前側辺よりも外側に配置され、前側辺が第3の外ブレード53の後側辺よりも内側に配置される。第3の外ブレード53は、後側辺が第2の外ブレード52の前側辺よりも外側に配置され、前側辺が中継部38Lの外面後側辺よりも内側に配置される。
【0074】
なお、図6を参照して、本実施形態では、第1の外ブレード51は、中継部38Lと側面上部33Lとに端部が固定され、通気領域35Lの一部を覆っている。第2の外ブレード52は、中継部38Lと側面上部33Lとに端部が固定され、通気領域35Lの一部を覆っている。第3の外ブレード53は、中継部38Lと側面上部33Lとに端部が固定され、通気領域35Lの一部を覆っている。
【0075】
よって、側部通気部13において通気領域35Lの多くの部分が第1~第3の外ブレード51~53に覆われている。なお、本実施形態では、第1~第3の外ブレード51~53の両端部は、通気領域35Lを区画する辺のうち交差する配置となる辺にそれぞれ固定されているため、第1~第3の外ブレード51~53の長さの相違が大きい。
【0076】
これにより、側部通気部13の通気領域35Lにおいて、内側から外側を見通すことのできる領域が、外側フィン50を構成する第1~第3の外ブレード51~53により形成される隙間を含んでいる通気通路70を構成する通気空間に規制される。
【0077】
また、本実施形態では、側部通気部13の通気領域35Lにおいて、内側から外側を見通すことができないように、内側フィン37と外側フィン50とが組み合わされている。詳述すると、側部通気部13は、内側フィン37により形成される内側から外側を見通すことのできる領域(通気空間)と、外側フィン50により形成される内側から外側を見通すことのできる領域(通気空間)とが直線状になる経路(見通し経路)を有していない。
【0078】
これにより、内側フィン37と外側フィン50とが組み合わされたとき、マスク10の内側から外側を見通すことができないようになっている。
【0079】
また、内側フィン37と外側フィン50とが組み合わされたとしても側部通気部13は、吸気抵抗を感じさせないか、無いように構成されている。
【0080】
続いて、図9を参照して、連通部40について詳述する。マスク10は、正面において内側カバー30と外側カバー20との間に、上方から呼気B3を流入させて、下方に呼気B4を排出させる連通空間14を有している。
【0081】
連通空間14は、内側カバー30において上端縁312を含む外面31Bと外側カバー20の内面21Aとの間で形成する上部通路14Aと、内側カバー30において下端縁313を含む外面31Bと外側カバー20の内面21Aとの間で形成する下部通路14Bと、上部通路14Aと下部通路14Bとの間に上述する連通部40と通路フィルター81とを有している。
【0082】
通路フィルター81は、側部フィルター80と同様の効果を生じるものであり、側部フィルター80と同様の通気性を維持しつつ、抗菌性能や除菌効果などを有するフィルターであると好ましい。通路フィルター81は、連通空間14を通過する呼気B3に作用するように連通空間14に配置されている。詳述すると、通路フィルター81は、連通部40に設けられたフィルター設置部45に配置される。
【0083】
例えば、フィルター設置部45は、図5に示すように、連通部40を左右に延設される上部口46に対応する形状に形成されている。通路フィルター81は、フィルター設置部45に載置可能な形状であればよく、例えば、細長い円弧の帯状である。
【0084】
通路フィルター81は、内側カバー30に外側カバー20を取り付けるときに、連通部40のフィルター設置部45と外側カバー20の内面21Aに突設されたフィルター押さえ42との間に挟み込まれるように配置することにより、上部通路14Aと下部通路14Bとの間に配置される。通路フィルター81は、フレームなどで形状が保持されていてもよい。なお、通路フィルター81は、連通空間14を通過する呼気B3に作用するように配置されるのであれば、配置構造は限定されない。なお、フィルター押さえ42は、外側カバー20の内面21Aに別途取り付けられたものであっても、一体成型されていてもよい。また、フィルター押さえ42は、内側カバー30を外側カバー20に組み立てるための嵌めこみ構造や固定する構造を有していてもよい。
【0085】
連通部40は、内側カバー30と外側カバー20との間に通気可能な離間距離を維持させるとともに、カバー11の上部通路14Aと下部通路14Bとの間に連通を維持する。連通部40は、内側カバー30の外面31Bに突設された柱状部材に凸面44が支持されることで内側カバー30の外面31Bと凸面44との間に上下に連通し、吸気抵抗が抑えられた連通路空間41を維持している。つまり、連通部40は、内側カバー30と外側カバー20との間において連通空間14の連通を維持させている。
【0086】
連通空間14について詳述する。連通空間14は、鼻腔5Hからの呼気B1や口からの呼気B2が内側カバー30に沿って内面31Aから外面31Bに回り込む呼気B3として上部通路14Aに流入される。また、連通空間14は、上部通路14Aに流れ込んだ呼気B3を、通路フィルター81と連通部40と下部通路14Bを通過した呼気B4として、内側カバー30に沿って下端縁313から下側、好ましくは下側後向きに排出することで、首3の方向に流れるようにしている。
【0087】
つまり、連通空間14は、呼気B3が内側カバー30を内面31Aから外面31Bに回り込むように流入することから、呼気B3が排出される鼻腔5Hや口6から見通せる経路を有していない。つまり、呼気B3は、マスク10の内側から外側に流れる経路が蛇行する経路となっており、直線状になる経路(見通し経路)を有していない。
【0088】
また、連通空間14は、内側カバー30の上端縁312を含む上部通路14Aの内側入口14Cから、内側カバー30の下端縁313を含む下部通路14Bの外側出口14Dまで、直線状になる経路(見通し経路)を有していない。つまり、連通空間14は、マスク10の内側から外側を見通すことができないように構成されている。
【0089】
また、図2及び図9を参照して、当接部60について詳述する。
【0090】
当接部60の上当接部61は、外側カバー20の内面21Aにおいて上端縁211の近傍に同上端縁211に沿って延設されている。また、当接部60の下当接部63は、内側カバー30の内面31Aにおいて下端縁313の近傍に同下端縁313に沿って延設されている。
【0091】
カバー11は、連通部40及び中継部38R,38L等で外側カバー20と内側カバー30とが剛性を有して組み合わされている。カバー11は、首バンド18によって顔面2の方向に張力が加えられることにより、形状が維持されつつ弾性変形する。これにより、顔面2に好適に装着されるようになる。
【0092】
また、当接部60は、マスク装着時の軽い押し力のみで顔面2との間に当接する。例えば、上当接部61は、鼻5の上部や頬の上部に当接して、カバー11の上部において内側と外側との間の気密性を高く維持することができる。また、下当接部63は、口6の下方のあごの正面とその左右に当接して、カバー11の下部において内側と外側との間の気密性を高く維持することができる。また、カバー11は、装着部材左側接続部34Lや装着部材右側接続部34Rの張力により顔面2に当接するとともに、首バンド18も顔面2に当接することにより、カバー11の側部後側において内側と外側との間の気密性を高く維持することができる。
これにより、本実施形態のマスク10は、吸気抵抗を抑えつつ、飛沫の飛散を抑制することができる。
【0093】
本実施形態の効果について説明する。
【0094】
(1)鼻腔5Hを覆うカバー11の内側の空間と外側とが内側フィン37の隙間と外側フィン50の隙間とで形成される通気通路70により連通されていることから、鼻腔5Hの呼気に対する空気抵抗が低く抑えられる。また、通気通路70は、カバー11の内側とカバー11の外側との間を見通すことのできない通路であることから、マスク10の内側から外側に排出される呼気Bの勢いが低減され、呼気Bに含まれている飛沫の飛散が抑制されるようになる。
【0095】
また、飛沫の飛散する方向が顔面2の左側方向及び右側方向の少なくとも一方になることから、飛沫の顔面正面方向への飛散が抑制される。
【0096】
こうした、マスク10の構成によって飛沫の飛散が抑制されることにより、飛沫と共に拡散されるウイルスなどによる感染症などの感染の拡大を抑えることができるようにもなる。
【0097】
(2)カバー11の内側から外側に排出される空気、いわゆる呼気Bの排出される方向が顔面2よりも後方の方向(後側)であるため、飛沫が飛散するとしても顔面後方にすることができる。つまり、会話のとき向き合うことの多い正面とは相違する方向に呼気の排出方向を制御することができる。これにより、会話相手へ向かう飛沫を低減することができる。
【0098】
また、呼気Bの流れる方向がマスク10により変更されることで、呼気Bの排出される勢いが抑制されて、これによっても飛沫の飛散を抑えることができる。
【0099】
(3)鼻腔5Hから排出される呼気B1は、カバー11内での流れの向きが頬に沿う方向に変更されることで側部通気部13からマスク10の外側に排出される呼気Bの勢いが抑制される。
【0100】
また、通気通路70を外側フィン50と内側フィン37との複数のフィンにより構成すれば、見通すことのできない通路の形成が容易になる。また、複数のフィンによれば、呼気Bの排出方向を好適に規制することができる。
【0101】
(4)カバー11の内側からカバー11の外側を見通すことのできない通気通路70を内側フィンと外側フィンとの組み合わせで構成することができる。
【0102】
(5)内側カバー30と外側カバー20との間に、カバー11の内側と外側とを連通させる連通空間14が形成される。連通空間14の内側入口14Cは鼻腔5Hより上方に設けられることから鼻腔5Hからの呼気B1が連通空間14に直接流入しない。換言すると、呼気B1の流れの向きが大きく変更されてから連通空間14に流入する。こうした流通方向の転換により、呼気B3に含まれる飛沫の勢いが低減されて、飛沫の飛散が抑えられるようになる。
【0103】
また、連通空間14の外側出口14Dが内側カバー30の下端に設けられることで、呼気の排出方向が下方になることから飛沫の飛散が抑えられるようにもなる。
【0104】
(6)通気通路70に通気性を有するとともに飛沫を付着させることのできる側部フィルター80を有していることから、吸気抵抗を抑えた状態で、呼気Bに含まれている飛沫の飛散がより抑制されるようになる。
【0105】
(7)カバー11は鼻腔5Hと口6とを覆うことから、鼻腔5Hだけでなく、口6からの呼気B2に対しても、その呼気B2に含まれる飛沫の飛散が抑えられるようになる。
【0106】
(8)カバー11と顔面2との間の密閉性が可撓性を有する当接部60により確保されることから、カバー11の内側から外側に呼気Bが漏れることが抑えられて、呼気Bに含まれる飛沫の飛散が抑えられるようになる。
【0107】
(変形例)
【0108】
なお、上記実施形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
【0109】
・上記実施形態では、カバー11と顔面2との間の気密性が当接部60により確保される場合について例示した。しかしこれに限らず、当接部は、気密性が確保されるのであれば、布材などであってもよいし、布材などを含み構成されていてもよい。
【0110】
・上記実施形態では、装着部材左側接続部34Lや装着部材右側接続部34Rには当接部60が設けられていない場合について例示したが、これに限らず、装着部材左側接続部34Lや装着部材右側接続部34Rにも当接部が設けられていてもよい。
また、装着部材左側接続部34Lや装着部材右側接続部34Rを含まない部分に当接部60が設けられている場合について例示したが、これに限らず、飛沫の飛散に影響の小さい部分には当接部を省いてもよい。
【0111】
・上記実施形態では、カバー11は鼻腔5Hと口6とを覆う場合について例示したが、これに限らず、カバー11は少なくとも鼻腔5Hを覆えばよい。これにより、鼻呼吸に対応することができる。また、マスクが口を覆わなければ、飲食に対応したマスクともなる。
【0112】
・上記実施形態では、内側フィン37と外側フィン50との間に側部フィルター80を配置する場合について例示した。しかしこれに限らず、呼気の飛沫やウイルスなどの飛散を抑制することができるのであれば、側部フィルター80は通気通路70の任意の位置に設けられていてもよいし、通気通路70の入口又は出口に設けられていてもよい。
【0113】
・上記実施形態では、内側フィン37と外側フィン50との間に側部フィルター80を配置する場合について例示した。しかしこれに限らず、通気通路70によって飛散が抑えられるのであれば、側部フィルター80が設けられていなくてもよい。
【0114】
・上記実施形態では、連通空間14の内側入口14Cが鼻腔5Hよりも上に設けられている場合について例示した。しかしこれに限らず、連通空間14の内側入口14Cは、鼻腔5Hからの排気が向きを変えて進入するように設けられていればよい。これによっても、呼気B3の向きの変化によって飛沫の勢いが抑えられて飛散が抑制されるようになる。
【0115】
・上記実施形態では、連通空間14の外側出口14Dがカバー11の下端に設けられる場合について例示した。しかしこれに限らず、連通空間14の外側出口は、特に正面への飛沫の飛散を抑制することができれば、例えば、下方又は下方以外にあって側方や後方に外側出口が設けられていてもよい。
【0116】
・上記実施形態では、連通空間14の外側出口14Dが外側に開放されている場合について例示したがこれ見限らず、連通空間14の外側出口14Dに、衣服の内側に繋がる筒状の袋や管を接続してもよい。これにより、排気が衣服内に導入されることから、特に正面への飛沫の飛散を抑制することができる。
【0117】
・上記実施形態では、カバー11の厚み方向としての内側から外側に向けて内側フィン37と外側フィン50とが配置されている場合について例示した。しかしこれに限らず、カバー11の厚み方向に連続する1枚のフィンが側部通気部に複数配列されることでカバーの内側からカバーの外側を見通すことのできない通路を形成してもよい。また、逆にカバーの厚み方向に分離された3つ以上のフィンが配置されていてもよい。これにより、通気通路の構造の自由度が高められる。
【0118】
・上記実施形態では、通気通路70は、内側フィン37から外側フィン50まで、見通せる経路を有していない場合について例示した。しかしこれに限らず、通気通路70は、内側フィン37から外側フィン50まで、見通せる経路が一部に含まれていてもよい。これによっても、見通せる経路を有していない部分によって、飛沫の拡散が抑制されるとともに、流路の蛇行によっても飛沫の拡散が抑制されるようになる。
【0119】
・上記実施形態では、通気通路70は、内側フィン37と外側フィン50とを組み合わせることでカバー11の内側からカバー11の外側まで見通すことのできない通路を構成する場合について例示した。しかしこれに限らず、通気通路は、カバー11の内側からカバー11の外側まで見通すことのできない通路を構成することができれば、湾曲したブレードの組合せによって見通せない経路が構成されていてもより。また、通気通路は、カバー11の内側からカバー11の外側まで見通せない通路を構成することができれば、見通せない通気孔が複数設けられた部材であってもよい。これにより、通気通路の構造の自由度が高められる。
【0120】
・上記実施形態では、カバー11の一側部には1つの側部通気部13が設けられる場合について例示した。しかしこれに限らず、カバー11の一側部に複数の側部通気部が設けられてもよい。これにより、側部通気部の配置の自由度や、排気方向の自由度や、側部通気部の構成の自由度の少なくとも1つが高められるようになる。
【0121】
・上記実施形態では、側部通気部13は、顔面後方かつ下方に呼気を排気する場合について例示した。しかしこれに限らず、側部通気部は、飛沫の飛散を抑制することができると考えられる任意の方向に呼気を排気させてよい。例えば、顔面後方において水平方向や上方向など任意の方向を選択することもできる。また、複数の方向、例えば、下方と水平方向の2方向や、下方と上方の2方向に排気させてもよい。これにより、側部通気部の排気方向の自由度が高められて、用途に応じた態様にすることができる。
【0122】
・また、側部通気部13は排気の全部または一部を、首筋や肩、背中顎舌など、人体に沿う方向に排気させてもよい。これにより、呼気に含まれている飛沫を自身の身体や衣服に保持させることができるようになる。すなわち、飛沫の飛散を抑制させることができる。
【0123】
・また、側部通気部13の外側に、衣服の内側に繋がる筒状の袋や管を接続してもよい。これにより、排気が衣服内に導入されることから、より飛沫の飛散を抑制することができる。
【0124】
・上記実施形態では、左側部12Lと右側部12Rとにそれぞれ側部通気部13が設けられている場合について例示したが、これに限らず、側部通気部13が、左側部12L及び右側部12Rの一方に設けられていてもよい。これにより、マスクの構造を簡易にすることができる。また、呼気の排気方向をより規制することもできる。
【0125】
・上記実施形態では、首バンド18とヘッドバンド19とが設けられている場合について例示したが、これに限らず、マスク10を顔面に固定できるのであれば、首バンド18のみでもよいし、ヘッドバンド19のみでもよい。また、マスク10を顔面に固定できるのであれば、耳バンドでもよい。また、首バンド、ヘッドバンド及び耳バンドのうちの少なくとも2つが設けられていてもよい。これにより、装着態様に適したマスクの装着方法を提供することができるようになる。
【符号の説明】
【0126】
1 頭部
2 顔面
3 首
4 後頭部
5 鼻
5H 鼻腔
6 口
10 マスク
11 カバー
12 側部
12L 左側部
12R 右側部
13 側部通気部
14 連通空間
14A 上部通路
14B 下部通路
14C 内側入口
14D 外側出口
18 首バンド
19 ヘッドバンド
20 外側カバー
21A 内面
21B 外面
22C 先端部分
23L 左側面
23R 右側面
24L,24R 下端
25L,25R ヘッドバンド取付部
26L,26R 取付部カバー
27L 左端
27R 右端
28 正面部
30 内側カバー
31 正面部
31A 内面
31B 外面
32L 左側部
32R 右側部
33L,33R 側面上部
34 接続部
34L 装着部材左側接続部
34R 装着部材右側接続部
35L,35R 通気領域
36L,36R 側面下部
37 内側フィン
37A 後側辺
38R,38L 中継部
40 連通部
41 連通路空間
42 フィルター押さえ
43 下部口
44 凸面
45 フィルター設置部
46 上部口
50 外側フィン
51 第1の外ブレード
52 第2の外ブレード
53 第3の外ブレード
60 当接部
61 上当接部
62 正面当接部
62L 左当接部
62R 右当接部
63 下当接部
70 通気通路
71 第1の内ブレード
72 第2の内ブレード
73 第3の内ブレード
74 第4の内ブレード
75 第5の内ブレード
76 内ブレード連結部
80 側部フィルター
81 通路フィルター
211 上端縁
212 下端縁
311 先端部分
312 上端縁
313 下端縁
331L,331R 上端縁
341,342 対向面
361 外側フィン配置部
B,B1,B2,B3,B4 呼気
EX1,EX2 矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9