(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129764
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】液体撮影装置の浮遊物除去方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20230912BHJP
C02F 1/40 20230101ALI20230912BHJP
G01N 15/06 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G01N21/17 A
C02F1/40 F
G01N15/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034006
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 耕大
(72)【発明者】
【氏名】冨田 麻未
(72)【発明者】
【氏名】池田 俊一
【テーマコード(参考)】
2G059
4D051
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB06
2G059DD02
2G059DD04
2G059DD05
2G059DD12
2G059DD15
2G059EE01
2G059FF01
2G059FF08
2G059GG02
2G059KK04
4D051AA01
4D051AA06
4D051AB01
4D051CA11
(57)【要約】
【課題】本体ケース内に侵入した浮遊物を容易に除去することができる液体撮影装置の浮遊物除去方法を提供する。
【解決手段】液体5中に分散する粒子12を撮影する第1撮影区域38と、粒子12が沈降した上澄み液を撮影する第2撮影区域39とが、仕切体40で仕切られて本体ケース20内に形成され、本体ケース20内の液面35が仕切体40の上端部40aよりも下方に位置する第1の上下関係で液面35を撮影する液体撮影装置10から浮遊物62を除去する方法であって、仕切体40と液面35との上下関係を、液面35が仕切体40の上端部40aよりも上方に位置する第2の上下関係に変更する第1工程と、除去用流体53を液面35に向かって噴射し、第2撮影区域39の浮遊物62を、仕切体40の上方を通過させて第1撮影区域38へ移動させる第2工程と、仕切体40と液面35との上下関係を第2の上下関係から第1の上下関係に戻す第3工程とを有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に分散する粒子を撮影する第1撮影区域と、液体中の粒子が沈降した上澄み液を撮影する第2撮影区域とが、仕切体で仕切られて本体ケース内に形成され、
第1撮影区域の下端開口部と第2撮影区域の下端開口部とが本体ケースの外部における液面下に没しており、
第1撮影区域の下端開口部は第2撮影区域の下端開口部よりも上方に位置しており、
本体ケース内の液面が仕切体の上端部よりも下方に位置する第1の上下関係で本体ケース内の液面を撮影する液体撮影装置から浮遊物を除去する浮遊物除去方法であって、
仕切体と本体ケース内の液面との上下関係を、本体ケース内の液面が仕切体の上端部よりも上方に位置する第2の上下関係に変更する第1工程と、
流体を本体ケース内の液面に向かって噴射し、第2撮影区域の液面の浮遊物を、仕切体の上方を通過させて第1撮影区域へ移動させる第2工程と、
仕切体と本体ケース内の液面との上下関係を第2の上下関係から第1の上下関係に戻す第3工程とを有することを特徴とする液体撮影装置の浮遊物除去方法。
【請求項2】
本体ケースは、上端部が密閉されているとともに、下端部が液面下に没した状態で開放されており、
第1工程において、本体ケース内を大気開放することにより、本体ケース内の液面を上昇させて、仕切体と本体ケース内の液面との上下関係を第1の上下関係から第2の上下関係に変更することを特徴とする請求項1に記載の液体撮影装置の浮遊物除去方法。
【請求項3】
第3工程において、本体ケース内に気体を供給することにより、本体ケース内の液面を下降させて、仕切体と本体ケース内の液面との上下関係を第2の上下関係から第1の上下関係に戻すことを特徴とする請求項2に記載の液体撮影装置の浮遊物除去方法。
【請求項4】
本体ケース内に気体を供給して、気体と共に第1撮影区域の浮遊物を第1撮影区域の下端開口部から本体ケースの外へ排出する第4工程をさらに有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の液体撮影装置の浮遊物除去方法。
【請求項5】
本体ケースは液面に対して傾斜しており、
第1の上下関係において、本体ケース内の液面の位置が第1撮影区域の下端開口部の最上位の箇所に相当することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液体撮影装置の浮遊物除去方法。
【請求項6】
第2撮影区域に設けられた濁度判定標識の上方に浮遊物が存在することを検出すると、第1~第3工程を実行することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液体撮影装置の浮遊物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体ケース内に、液体中に分散する粒子を撮影する第1撮影室と、液体中の粒子が沈降した上澄み液を撮影する第2撮影室とを有する液体撮影装置の浮遊物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体撮影装置としては、例えば
図15に示すように、凝集槽208内に貯留された汚泥200を撮影するものがある。
【0003】
この液体撮影装置201は、汚泥200中に分散する凝集フロック202を撮影する第1撮影室203と、凝集フロック202が沈降した上澄み液204を撮影する第2撮影室205とが、仕切壁206で仕切られて、円筒状の本体ケース207内に形成されている。
【0004】
第1撮影室203の下端開口部209と第2撮影室205の下端開口部210とが本体ケース207の外部における液面211下に没しており、第1撮影室203の下端開口部209は第2撮影室205の下端開口部210よりも上方に位置している。
【0005】
本体ケース207には、本体ケース207内の液面212を撮影するカメラ213が備えられている。また、本体ケース207には空気供給装置214が接続され、圧縮空気215が空気供給装置214から本体ケース207内に供給される。第1撮影室203内には背景板216が設けられている。第2撮影室205内には、濁度判定標識217と、本体ケース207内の汚泥200を揚水して本体ケース207の外へ排出する揚水管218とが設けられている。
【0006】
これによると、圧縮空気215を空気供給装置214から本体ケース207内に供給することにより、第2撮影室205内の上澄み液204が、圧縮空気215の気泡に同伴して、揚水管218を通って本体ケース207の外へ排出され、これに伴って、凝集槽208内の汚泥200が第2撮影室205の下端開口部210から第2撮影室205内に流入する。
【0007】
これにより、本体ケース207内の液面212が仕切壁206の上端部よりも下方に位置し、このような位置関係で本体ケース207内の液面212を撮影する。この撮影で得られた画像に基づいて、汚泥200中に含まれる凝集フロック202の個数や大きさおよび汚泥200の上澄み液204の濁度等を観測する。
【0008】
尚、上記のような液体撮影装置201は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら上記の従来形式では、凝集槽208内の汚泥200は撹拌装置222で撹拌されるため、密度(比重)が水よりも小さい浮遊物220(空気を含んだフロック,スポンジ,油脂の固まり,昆虫の死骸等)が、汚泥200と共に、第2撮影室205の下端開口部210から第2撮影室205内に流入し、第2撮影室205内の液面212に浮かび上がることがある。
【0011】
このような浮遊物220が第2撮影室205内に留まってしまうと、第2撮影室205の濁度判定標識217の上方が浮遊物220で遮られ、濁度判定標識217の画像に浮遊物220が映り込んでしまうため、汚泥200の上澄み液204の正確な濁り具合を求めることが困難になり、実際の濁り具合とは異なる不正確な値を示すことがあった。
【0012】
このような浮遊物220は第2撮影室205内から本体ケース207の外に排出され難く、上記のような不具合が発生した場合、作業者が本体ケース207全体を汚泥200の液面211の上方へ完全に引き上げ、浮遊物220を手で取り除く必要があり、浮遊物220の除去に手間を要するといった問題がある。
【0013】
同様に、浮遊物220は、第1撮影室203の下端開口部209から第1撮影室203内に流入し、第1撮影室203内の液面212に浮かび上がることもある。しかしながら、第1撮影室203の下端開口部209は第2撮影室205の下端開口部210よりも上方に位置しており、さらに、凝集槽208内の汚泥200が撹拌されているため、第1撮影室203内の液面212の浮遊物220は、撹拌の際に生じた汚泥200の流れの影響を受けて、第1撮影室203の下端開口部209を通り、本体ケース207の外に自動的に排出され易い。このため、浮遊物220が第1撮影室203内に留まってしまう不具合は発生し難い。
【0014】
本発明は、本体ケース内に侵入した浮遊物を容易に除去することができる液体撮影装置の浮遊物除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本第1発明は、液体中に分散する粒子を撮影する第1撮影区域と、液体中の粒子が沈降した上澄み液を撮影する第2撮影区域とが、仕切体で仕切られて本体ケース内に形成され、
第1撮影区域の下端開口部と第2撮影区域の下端開口部とが本体ケースの外部における液面下に没しており、
第1撮影区域の下端開口部は第2撮影区域の下端開口部よりも上方に位置しており、
本体ケース内の液面が仕切体の上端部よりも下方に位置する第1の上下関係で本体ケース内の液面を撮影する液体撮影装置から浮遊物を除去する浮遊物除去方法であって、
仕切体と本体ケース内の液面との上下関係を、本体ケース内の液面が仕切体の上端部よりも上方に位置する第2の上下関係に変更する第1工程と、
流体を本体ケース内の液面に向かって噴射し、第2撮影区域の液面の浮遊物を、仕切体の上方を通過させて第1撮影区域へ移動させる第2工程と、
仕切体と本体ケース内の液面との上下関係を第2の上下関係から第1の上下関係に戻す第3工程とを有するものである。
【0016】
これによると、浮遊物が、液体と共に第2撮影区域の下端開口部から第2撮影区域内に流入し、第2撮影区域内に集まった場合、先ず、第1工程を実行することにより、仕切体が本体ケース内の液面下に没するため、本体ケース内の液面が、仕切体で仕切られることなく、第1撮影区域と第2撮影区域とにわたって連続的に形成される。
【0017】
次に、第2工程を実行することにより、第2撮影区域内の液面の浮遊物が仕切体の上方を通過して第1撮影区域内へ移動する。
【0018】
次に、第3工程を実行することにより、本体ケース内の液面が、仕切体で仕切られ、第1撮影区域内の液面と第2撮影区域内の液面とに分断される。
【0019】
第1撮影区域の下端開口部は第2撮影区域の下端開口部よりも上方に位置しているため、第1撮影区域内に集められた浮遊物を容易に第1撮影区域の下端開口部から排出することができる。これにより、本体ケース全体を汚泥の液面の上方へ完全に引き上げる必要はなく、本体ケース内に侵入した浮遊物を容易に除去することができる。
【0020】
本第2発明における液体撮影装置の浮遊物除去方法は、本体ケースは、上端部が密閉されているとともに、下端部が液面下に没した状態で開放されており、
第1工程において、本体ケース内を大気開放することにより、本体ケース内の液面を上昇させて、仕切体と本体ケース内の液面との上下関係を第1の上下関係から第2の上下関係に変更するものである。
【0021】
これによると、第1工程において、本体ケース内の気圧が大気圧まで下降するため、本体ケースを上下方向へ移動させることなく、仕切体と本体ケース内の液面との上下関係を第1の上下関係から第2の上下関係に変更することができる。これにより、本体ケース内に侵入した浮遊物を容易に除去することができる。
【0022】
本第3発明における液体撮影装置の浮遊物除去方法は、第3工程において、本体ケース内に気体を供給することにより、本体ケース内の液面を下降させて、仕切体と本体ケース内の液面との上下関係を第2の上下関係から第1の上下関係に戻すものである。
【0023】
これによると、第3工程において、本体ケースを上下方向へ移動させることなく、仕切体と本体ケース内の液面との上下関係を第2の上下関係から第1の上下関係に戻すことができる。これにより、本体ケース内に侵入した浮遊物を容易に除去することができる。
【0024】
本第4発明における液体撮影装置の浮遊物除去方法は、本体ケース内に気体を供給して、気体と共に第1撮影区域の浮遊物を第1撮影区域の下端開口部から本体ケースの外へ排出する第4工程をさらに有するものである。
【0025】
これによると、第3工程を実行した後、第4工程を実行することにより、第1撮影区域内の浮遊物が気体と共に第1撮影区域の下端開口部から本体ケースの外へ排出される。この際、第1撮影区域の下端開口部は第2撮影区域の下端開口部よりも上方に位置しているため、第1撮影区域内の浮遊物を容易に第1撮影区域の下端開口部から排出することができる。これにより、本体ケース全体を汚泥の液面の上方へ完全に引き上げる必要はなく、本体ケース内に侵入した浮遊物を容易に除去することができる。
【0026】
本第5発明における液体撮影装置の浮遊物除去方法は、本体ケースは液面に対して傾斜しており、
第1の上下関係において、本体ケース内の液面の位置が第1撮影区域の下端開口部の最上位の箇所に相当するものである。
【0027】
これによると、第3工程において、仕切体と本体ケース内の液面との上下関係を第2の上下関係から第1の上下関係に戻すことにより、本体ケース内の液面の位置が第1撮影区域の下端開口部の最上位の箇所に相当する。このため、第4工程において、気体と共に第1撮影区域内の浮遊物を第1撮影区域の下端開口部の最上位の箇所から本体ケース外へ容易に排出することができる。
【0028】
本第6発明における液体撮影装置の浮遊物除去方法は、第2撮影区域に設けられた濁度判定標識の上方に浮遊物が存在することを検出すると、第1~第3工程を実行するものである。
【0029】
これによると、濁度判定標識の上方に浮遊する浮遊物を容易に除去することができ、浮遊物に遮られることなく、上澄み液中の濁度判定標識を撮影することができるため、濁度を正確に求めることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように本発明によると、第1工程から第3工程までを実行することにより、本体ケース全体を汚泥の液面の上方へ完全に引き上げる必要はなく、本体ケース内に侵入した浮遊物を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における液体撮影装置を備えた凝集槽を有する汚泥処理システムの一部を示す図である。
【
図4】同、液体撮影装置の本体ケースの斜視図である。
【
図5】同、液体撮影装置の本体ケース内に浮遊物が侵入したときの断面図である。
【
図6】同、液体撮影装置の浮遊物除去方法を説明する断面図であり、第1工程を示す。
【
図7】同、液体撮影装置の浮遊物除去方法を説明する断面図であり、第2工程を示す。
【
図8】同、液体撮影装置の浮遊物除去方法を説明する断面図であり、第3工程を示す。
【
図9】同、液体撮影装置の浮遊物除去方法を説明する断面図であり、第4工程を示す。
【
図10】本発明の第2の実施の形態における液体撮影装置の断面図である。
【
図11】本発明の第3の実施の形態における液体撮影装置の一部切欠き側面図である。
【
図12】本発明の第4の実施の形態における液体撮影装置の浮遊物除去方法において、浮遊物の有無を検出する方法を説明する図であり、浮遊物が存在していない状態を示す。
【
図13】同、浮遊物の有無を検出する方法を説明する図であり、白っぽい浮遊物が存在している状態を示す。
【
図14】同、浮遊物の有無を検出する方法を説明する図であり、黒っぽい浮遊物が存在している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0033】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、
図1に示すように、1は産業廃水処理システムの一部であり、凝集槽2と、その下流側に設置された沈殿池3とを有している。凝集槽2には、槽内に貯留される汚泥5(液体の一例)に高分子凝集剤6を注入する注入装置7と、凝集槽2内の汚泥5を攪拌する攪拌装置8と、液体撮影装置10とが備えられている。
【0034】
高分子凝集剤6を注入装置7から凝集槽2内の汚泥5に注入し、攪拌装置8で攪拌することにより、径の大きな凝集フロック12(液体中に分散する粒子の一例)が汚泥5中に形成される。
【0035】
また、沈殿池3では汚泥5中の凝集フロック12を沈殿させ、上澄み液13を沈殿池3の出口から取り出して中和処理等を行った後に放流する。
【0036】
図2~
図4に示すように、液体撮影装置10は、汚泥5中に分散する凝集フロック12と、凝集フロック12が沈降した上澄み液14とを同時に撮影するための装置であり、本体ケース20と、本体ケース20内に固定されたカメラ21(撮影手段の一例)と、背景板22と、濁度判定標識23と、第1照明装置24と、第2照明装置25と、本体ケース20内に圧縮空気26(気体の一例)を供給する空気供給装置27(気体供給装置の一例)と、本体ケース20内を大気開放する大気開放装置28と、上澄み液引き抜き装置29と、本体ケース20を凝集槽2に取り付ける取付部材30とを有している。
【0037】
本体ケース20は、金属製又は樹脂製の遮光体からなり、上端部が密閉されているとともに、下端部が汚泥5の液面33の下方に没した状態で開放されており、円筒状の周壁部31と、周壁部31の上端に設けられた天井部32とを有している。
【0038】
本体ケース20内は、凝集フロック12を撮影する半円筒状の第1撮影区域38と、上澄み液14を撮影する半円筒状の第2撮影区域39とに分けられている。すなわち、第1撮影区域38と第2撮影区域39とは、本体ケース20に設けられた仕切壁40(仕切体の一例)によって仕切られている。
【0039】
第1撮影区域38は本体ケース20の外部における汚泥5の液面33の下方に没する第1下端開口部41を有し、第2撮影区域39は上記液面33の下方に没する第2下端開口部42を有している。第1下端開口部41は第2下端開口部42よりも上方に位置している。
【0040】
第1撮影区域38の上方と第2撮影区域39の上方とは本体ケース20内において連通している。また、本体ケース20内の液面35は本体ケース20の外の液面33よりも低位置に保たれている。
【0041】
仕切壁40の上端部40aは第1下端開口部41よりも上位に設定されている。
図2に示すように、仕切壁40と本体ケース20内の液面35との上下関係は、撮影時において、本体ケース20内の液面35が仕切壁40の上端部40aよりも下方に位置する第1の上下関係に保たれる。この場合、本体ケース20内の液面35の位置は第1下端開口部41の位置に相当する。
【0042】
カメラ21は、本体ケース20の天井部32に取り付けられて、本体ケース20内の液面35よりも上方に位置しており、第1および第2撮影区域38,39を同時に撮影可能である。カメラ21にはケーブル47を介して画像処理装置(図示省略)が接続されている。
【0043】
第1照明装置24は、円環状の照明であり、カメラ21のレンズ部分の周囲を取り囲むようにして本体ケース20の天井部32に取り付けられており、本体ケース20内の液面35よりも上方から第1および第2撮影区域38,39を照射可能である。尚、第1照明装置24の光源には例えばLED等が使用されている。
【0044】
空気供給装置27は、エアポンプ等からなり、給気管48を介して本体ケース20の天井部32に接続されている。給気管48には給気弁49が設けられている。
【0045】
大気開放装置28は、本体ケース20の天井部32に接続された空気抜き管50と、空気抜き管50に設けられた大気開放弁51とを有している。
【0046】
背景板22は、撮影深さを制限するための板であり、第1撮影区域38に設けられて、本体ケース20内の液面35よりも下方の所定深さ位置に備えられている。背景板22には、光が透過し易い(透光性を有する)半透明の樹脂製或いはガラス製の板が用いられる。
【0047】
第2照明装置25は、背景板22の上面に映る凝集フロック12の影を消すための照明装置であり、仕切壁40に取り付けられて、背景板22の下方に位置している。尚、第2照明装置25には、例えば防水機能を有するLED等が使用されている。
【0048】
濁度判定標識23は、平板状の部材であり、第2撮影区域39に設けられて、本体ケース20内の液面35下に没している。濁度判定標識23の上面には、黒く着色された黒色領域55と、白く着色された白色領域56とが設けられている。
【0049】
第2撮影区域39で且つ濁度判定標識23の下方には、汚泥5中の凝集フロック12が沈降する凝集フロック沈降領域57が形成されている。
【0050】
上澄み液引き抜き装置29は、第2撮影区域39の汚泥5の上澄み液14を本体ケース20の外部へ引き抜く装置であり、本体ケース20に接続された引抜管59と、引抜管59に接続されたポンプ60および引抜弁61とを有している。
【0051】
また、本体ケース20の周壁部31には、本体ケース20内の液面35に向けて水53(除去用流体の一例、
図7参照)を噴射する噴射装置54が設けられている。尚、噴射装置54の噴射方向は、水53が本体ケース20内の液面35を第2撮影区域39から第1撮影区域38に向かって流れるように、傾斜している。
【0052】
以下、上記構成におる作用を説明する。
【0053】
図1に示すように、高分子凝集剤6を注入装置7から凝集槽2内の汚泥5に注入し、凝集槽2内の汚泥5を攪拌装置8で攪拌することにより、径の大きな凝集フロック12を凝集槽2内の汚泥5中に形成する。
【0054】
この際、
図2に示すように、第2撮影区域39の凝集フロック沈降領域57において汚泥5中の凝集フロック12が沈降するため、第2撮影区域39における液面35付近には、粗大化した凝集フロック12が少ない上澄み液14が出現し、濁度判定標識23は本体ケース20内の液面35下に没した状態で上澄み液14中に存在する。
【0055】
そして、第1照明装置24で第1および第2撮影区域38,39内を照射し、カメラ21で第1および第2撮影区域38,39内を撮影することにより、撮影された第1撮影区域38の液面35から、汚泥5中の凝集フロック12の画像が得られるとともに、撮影された第2撮影区域39の液面35から、濁度判定標識23の画像が得られる。
【0056】
このようにして得られた凝集フロック12の画像に基づいて、凝集フロック12の個数、大きさ、形状等を観測することができる。また、得られた濁度判定標識23の画像に基づいて、汚泥5中の凝集フロック12に妨げられることなく、第2撮影区域39の上澄み液14の濁度を求めることができる。
【0057】
また、上記のように本体ケース20内の液面35を撮影している時、大気開放弁51を閉じ、給気弁49を開いて、圧縮空気26を空気供給装置27から本体ケース20内に供給しており、これにより、本体ケース20内の気圧が大気圧よりも上昇し、本体ケース20内の液面35が本体ケース20の外の液面33よりも低い位置に保たれる。
【0058】
さらに、空気供給装置27から本体ケース20内に流入した圧縮空気26は、気泡64となって、第1撮影区域38の第1下端開口部41から本体ケース20の外へ排出される。これにより、
図2に示すように、仕切壁40と本体ケース20内の液面35との上下関係は、本体ケース20内の液面35が仕切壁40の上端部40aよりも下方に位置する第1の上下関係に保たれる。
【0059】
また、撮影時において、上澄み液引き抜き装置29のポンプ60を作動することにより、第2撮影区域39の上澄み液14が引抜管59を通って本体ケース20の外部に引き抜かれるため、本体ケース20の外部の汚泥5が第2下端開口部42から第2撮影区域39内に流入する。
【0060】
これにより、第2撮影区域39の汚泥5がゆっくりと入れ替えられるため、常に最新の性状の汚泥5を第2下端開口部42から第2撮影区域39に導入して、その濁度を測定することができる。
【0061】
また、第1下端開口部41は第2下端開口部42よりも上方に位置しており、凝集槽2内の汚泥5は攪拌装置8で攪拌されているため、攪拌時に発生する汚泥5の流れの影響を受けて、第1撮影区域38の汚泥5がゆっくりと入れ替えられる。これにより、常に最新の性状の汚泥5を第1撮影区域38に導入して、その凝集フロック12を観測することができる。
【0062】
また、
図5に示すように、汚泥5に混入した浮遊物62(空気を含んだフロック,スポンジ,油脂の固まり,昆虫の死骸等)が、第2下端開口部42から第2撮影区域39内に侵入し、第2撮影区域39における液面35に浮かんだ場合、以下のような方法で浮遊物62を除去する。
【0063】
先ず、
図6に示すように、第1工程において、仕切壁40と本体ケース20内の液面35との上下関係を、本体ケース20内の液面35が仕切壁40の上端部40aよりも上方に位置する第2の上下関係に変更する。
【0064】
すなわち、ポンプ60を止めて上澄み液14の引き抜きを停止し、給気弁49を閉じて空気供給装置27を停止し、大気開放弁51を開いて本体ケース20内を大気開放する。これにより、本体ケース20内の気圧が大気圧まで低下するため、本体ケース20を上下方向へ移動させることなく、本体ケース20内の液面35を上昇させて、第1の上下関係から第2の上下関係に変更することができ、本体ケース20内の液面35は、仕切壁40で仕切られることなく、第1撮影区域38と第2撮影区域39とにわたって連続的に形成される。尚、この場合、本体ケース20内の液面35は本体ケース20の外の液面33と同じ高さになる。
【0065】
次に、
図7の実線に示すように、第2工程において、噴射装置54から本体ケース20内の液面35に向かって水53を噴射し、第2撮影区域39における液面35の浮遊物62を第1撮影区域38へ移動させる。これにより、第2撮影区域39における液面35の浮遊物62は仕切壁40の上方を通過して第1撮影区域38に集められる。
【0066】
次に、
図8に示すように、第3工程において、仕切壁40と本体ケース20内の液面35との上下関係を第2の上下関係(
図7参照)から第1の上下関係に戻す。すなわち、大気開放弁51を閉じ、給気弁49を開いて空気供給装置27を作動させる。これにより、圧縮空気26が空気供給装置27から本体ケース20内に供給され、本体ケース20内の気圧が大気圧よりも上昇するため、本体ケース20を上下方向へ移動させることなく、本体ケース20内の液面35を下降させて、第2の上下関係(
図7参照)から第1の上下関係に戻すことができ、本体ケース20内の液面35は仕切壁40で仕切られて第1撮影区域38の液面35と第2撮影区域39の液面35とに分断される。
【0067】
その後、
図9に示すように、第4工程において、引き続き、空気供給装置27から本体ケース20内に圧縮空気26を供給して、圧縮空気26(気泡64)と共に第1撮影区域38の浮遊物62を第1撮影区域38の第1下端開口部41から本体ケース20の外へ排出する。
【0068】
この際、第1下端開口部41は第2下端開口部42よりも上方に位置しており、第1下端開口部41の近傍の汚泥5が凝集槽2内の撹拌によって生じる汚泥5の流れの影響を受けて常に入れ替わっているため、第1撮影区域38の浮遊物62を容易に第1下端開口部41から排出することができる。
【0069】
これにより、本体ケース20全体を汚泥5の液面33の上方へ完全に引き上げる必要はなく、本体ケース20を固定したままで、本体ケース20内に侵入した浮遊物62を容易に除去することができる。
【0070】
また、
図8に示すように、第3工程において、仕切壁40と本体ケース20内の液面35との上下関係を第2の上下関係から第1の上下関係に戻すことにより、本体ケース20内の液面35の位置が第1下端開口部41の位置に保たれるため、
図9に示すように、第4工程において、圧縮空気26(気泡64)と共に第1撮影区域38の浮遊物62を第1下端開口部41から本体ケース20の外へ容易に排出することができる。
【0071】
(第2の実施の形態)
先述した第1の実施の形態では、
図2に示すように、本体ケース20は液面33,35に対して垂直に設置されているが、以下に説明する第2の実施の形態では、
図10に示すように、本体ケース20は、液面33,35に対して、仕切壁40の上部が第2撮影区域39の側へ傾斜するとともに仕切壁40の下部が第1撮影区域38の側へ傾斜する傾斜方向52へ、所定の傾斜角度αで傾斜している。
【0072】
この場合、第1の上下関係において、本体ケース20内の液面35の位置が第1下端開口部41の最上位の箇所41aに相当する。
【0073】
これによると、第1および第2撮影区域38,39内の液面35を撮影する際、空気供給装置27から本体ケース20内に流入した圧縮空気26は、気泡64となって、第1撮影区域38の第1下端開口部41の最上位の箇所41aから本体ケース20の外へ排出される。これにより、仕切壁40と本体ケース20内の液面35との上下関係は、本体ケース20内の液面35が仕切壁40の上端部40aよりも下方に位置する第1の上下関係に保たれる。
【0074】
また、浮遊物62が第2撮影区域39内の液面35に浮かんだ場合、第1の実施の形態と同様に、第3工程において、仕切壁40と本体ケース20内の液面35との上下関係を第2の上下関係から第1の上下関係に戻すことにより、本体ケース20内の液面35の位置が第1下端開口部41の最上位の箇所41aに相当するため、第4工程において、圧縮空気26(気泡64)と共に第1撮影区域38の浮遊物62を第1下端開口部41の最上位の箇所41aから本体ケース20の外へ容易に排出することができる。
【0075】
(第3の実施の形態)
先述した第2の実施の形態では、
図10に示すように、本体ケース20は液面33,35に対して傾斜方向52へ所定の傾斜角度αで傾斜しているが、以下に説明する第3の実施の形態では、
図4の仮想線および
図11に示すように、本体ケース20は、液面33,35に対して、仕切壁40の厚み方向に延びる軸心周りの方向91へ所定の傾斜角度αで傾斜している。
【0076】
これによると、第1および第2撮影区域38,39内の液面35を撮影する際、空気供給装置27から本体ケース20内に流入した圧縮空気26は、気泡64となって、第1撮影区域38の第1下端開口部41の最上位の箇所41aから本体ケース20の外へ排出される。これにより、仕切壁40と本体ケース20内の液面35との上下関係は、本体ケース20内の液面35が仕切壁40の上端部40aよりも下方に位置する第1の上下関係に保たれる。
【0077】
また、浮遊物62が第2撮影区域39の液面35に浮かんだ場合、第1の実施の形態と同様に、第3工程において、仕切壁40と本体ケース20内の液面35との上下関係を第2の上下関係から第1の上下関係に戻すことにより、本体ケース20内の液面35の位置が第1下端開口部41の最上位の箇所41aに相当するため、第4工程において、圧縮空気26(気泡64)と共に第1撮影区域38の浮遊物62を第1下端開口部41の最上位の箇所41aから本体ケース20の外へ容易に排出することができる。
【0078】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、濁度判定標識23の上方に浮遊物62が存在することを検出すると、第1~第4工程を実行する。この際、浮遊物62の検出は
図12~
図14に示すような方法で行う。尚、
図12~
図14では、図を見易くするために、本来なら黒く表示すべき黒色領域55を白く表示している。
【0079】
カメラ21で第1および第2撮影区域38,39内を撮影し、得られた濁度判定標識23の画像における黒色領域55を第1の経路71(
図12~
図14の実線で示す矢印参照)に沿ってスキャンして黒色領域55の明度を求めるとともに、白色領域56を第2の経路72(
図12~
図14の実線で示す矢印参照)に沿ってスキャンして白色領域56の明度を求め、求められた明度が所定の明度以上であれば「明」と判定し、所定の明度未満であれば「暗」と判定する。
【0080】
例えば、
図12に示すように、濁度判定標識23の上方に浮遊物62が存在しない場合、黒色領域55および白色領域56をそれぞれスキャンすることにより、黒色領域55では全て「暗」と判定され、白色領域56では全て「明」と判定される。
【0081】
また、
図13に示すように、濁度判定標識23の上方に白っぽい浮遊物62が存在している場合、黒色領域55および白色領域56をそれぞれスキャンすることにより、白色領域56では全て「明」と判定されるが、黒色領域55では、浮遊物62の画像部分が「明」と判定され、それ以外の部分は「暗」と判定される。
【0082】
また、
図14に示すように、濁度判定標識23の上方に黒っぽい浮遊物62が存在している場合、黒色領域55および白色領域56をスキャンすることにより、黒色領域55では全て「暗」と判定されるが、白色領域56では、浮遊物62の画像部分が「暗」と判定され、それ以外の部分は「明」と判定される。
【0083】
これにより、黒色領域55をスキャンした際、
図12に示すように、判定が全て「暗」になるとともに、白色領域56のスキャンした際、判定が全て「明」になった場合、濁度判定標識23の上方に浮遊物62が存在していないと判断し、第1~第4工程を実行しない。
【0084】
また、黒色領域55をスキャンした際、
図13に示すように、判定が「暗」から「明」および「明」から「暗」に変わった場合、濁度判定標識23の上方に白っぽい浮遊物62が存在していると判断し、第1~第4工程を実行する。
【0085】
また、白色領域56をスキャンした際、
図14に示すように、判定が「明」から「暗」および「暗」から「明」に変わった場合、濁度判定標識23の上方に黒っぽい浮遊物62が存在していると判断し、第1~第4工程を実行する。
【0086】
上記第4の実施の形態では、濁度判定標識23の画像における黒色領域55と白色領域56とをそれぞれスキャンし、「明」と「暗」との変化に基づいて浮遊物62の有無を検出しているが、濁度判定標識23の画像における黒色領域55と白色領域56とをそれぞれ二値化処理することによって、浮遊物62の有無を検出してもよい。これによると、濁度判定標識23の上方に浮遊物62が存在しない場合、二値化処理後の黒色領域55の画像が全て黒色になるとともに、二値化処理後の白色領域56の画像が全て白色になる。
【0087】
また、濁度判定標識23の上方に白っぽい浮遊物62が存在している場合、二値化処理後の黒色領域55の画像は、浮遊物62に相当する部分が白色になり、それ以外の部分が黒色になる。また、濁度判定標識23の上方に黒っぽい浮遊物62が存在している場合、二値化処理後の白色領域56の画像は、浮遊物62に相当する部分が黒色になり、それ以外の部分が白色になる。
【0088】
これにより、二値化処理後の黒色領域55の画像中の白色部分の面積が一定面積以上である場合、或いは、白色領域56の画像中の黒色部分の面積が一定面積以上である場合、浮遊物62が存在していると判断し、第1~第4工程を実行する。また、二値化処理後の黒色領域55の画像中の白色部分の面積が一定面積未満であり、且つ、白色領域56の画像中の黒色部分の面積が一定面積未満である場合、浮遊物62が存在していないと判断し、第1~第4工程を実行しない。
【0089】
上記各実施の形態では、
図2に示すように、本体ケース20は上端部が密閉されているとともに下端部が汚泥5の液面33の下方に没した状態で開放されているが、本体ケース20の上端部が開放されたものでもよい。この場合、本体ケース20内の液面35は本体ケース20の外の液面33と同じ高さになり、本体ケース20を上下方向に移動自在とし、第1工程において、本体ケース20を下降させて仕切壁40の上端部40aを本体ケース20内の液面35よりも下方に水没させることにより、仕切壁40と本体ケース20内の液面35との上下関係を、第1の上下関係から第2の上下関係に変更することができる。また、第3工程において、本体ケース20を上昇させて仕切壁40の上端部40aを本体ケース20内の液面35よりも上方に突出させることにより、仕切壁40と本体ケース20内の液面35との上下関係を第2の上下関係から第1の上下関係に戻すことができる。
【0090】
上記各実施の形態では、
図7に示すように、除去用流体の一例として水53を噴射装置54から噴射しているが、水53に限定されるものではなく、水53以外の液体又は空気等の気体を噴射してもよい。
【0091】
上記各実施の形態では、
図2に示すように、気体の一例として、圧縮空気26を空気供給装置27から本体ケース20内に供給しているが、圧縮空気26以外の気体を供給してもよい。
【0092】
上記各実施の形態では、液体の一例として汚泥5を挙げ、液体中に分散する粒子の一例として凝集フロック12を挙げたが、汚泥5および凝集フロック12に限定されるものではなく、液体撮影装置10を用いて、凝集フロック12以外の粒子を含んだ汚泥5以外の液体を撮影してもよい。
【符号の説明】
【0093】
5 汚泥(液体)
10 液体撮影装置
12 凝集フロック(粒子)
14 上澄み液
20 本体ケース
23 濁度判定標識
26 圧縮空気(気体)
33,35 液面
38 第1撮影区域
39 第2撮影区域
40 仕切壁(仕切体)
41,42 下端開口部
41a 最上位の箇所
53 水(除去用流体)
62 浮遊物