(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129765
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】粒子捕集装置及びこれを使用する粒子捕集方法
(51)【国際特許分類】
B01D 47/02 20060101AFI20230912BHJP
B01D 47/06 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B01D47/02 A
B01D47/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034007
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 俊介
(72)【発明者】
【氏名】横林 孝康
(72)【発明者】
【氏名】生杉 浩一
(72)【発明者】
【氏名】佐田 忠行
【テーマコード(参考)】
4D032
【Fターム(参考)】
4D032AA01
4D032BA03
4D032BB17
4D032BB18
(57)【要約】
【課題】攪拌容器からの粒子捕集溶液の減少を抑えることができる粒子捕集装置を提供する。
【解決手段】粒子捕集装置1は、外筒2と、内筒3と、螺旋板4と、攪拌容器5とを備える。外筒2は、外部から空気Aが導かれる。内筒3は、外筒2の内部に配置される。螺旋板4は、外筒2と内筒3との間に配置されて、空気Aを旋回させながら下方に導く。攪拌容器5は、外筒2の下に接続されて、外筒2からの旋回している空気Aで粒子捕集溶液Lを攪拌する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から空気が導かれる外筒と、
前記外筒の内部に配置された内筒と、
前記外筒と前記内筒との間に配置されて空気を旋回させながら下方に導く螺旋板と、
前記外筒の下に接続されて前記外筒からの旋回している空気で粒子捕集溶液を攪拌する攪拌容器と
を備える、粒子捕集装置。
【請求項2】
前記螺旋板は、前記外筒に向かって下方向に傾斜したものである、請求項1に記載の粒子捕集装置。
【請求項3】
外部から前記外筒に導かれる空気に前記粒子捕集溶液を噴霧する噴霧器と、
前記攪拌容器から前記噴霧器まで前記粒子捕集溶液を循環させる循環経路と
をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の粒子捕集装置。
【請求項4】
前記螺旋板は、前記内筒の外周面に取り付けられたものである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の粒子捕集装置。
【請求項5】
外部から空気が導かれる外筒と、
前記外筒の内部に配置された内筒と、
前記外筒の下に接続されて前記外筒からの空気で粒子捕集溶液を攪拌する攪拌容器と、
外部から前記外筒に導かれる空気に前記粒子捕集溶液を噴霧する噴霧器と、
前記攪拌容器から前記噴霧器まで前記粒子捕集溶液を循環させる循環経路と
を備える、粒子捕集装置。
【請求項6】
前記外筒の内周面は、上下方向に沿った溝を有するものである、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の粒子捕集装置。
【請求項7】
前記内筒の上に接続されて前記内筒からの空気を外部に排出する排気筒をさらに備え、
前記排気筒は、前記外筒よりも大径で、且つ、径方向よりも軸方向の方が長いものである、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の粒子捕集装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の粒子捕集装置を使用する粒子捕集方法であって、
外部から空気を前記外筒に導き、
前記外筒からの空気で前記攪拌容器の前記粒子捕集溶液を攪拌する、粒子捕集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子捕集装置及びこれを使用する粒子捕集方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒子捕集装置は、空気に含まれる粒子を捕集する装置である。粒子捕集装置は、捕集した粒子を測定する機構を備えることで、粒子測定装置となる。
【0003】
従来の粒子測定装置は、旋回促進面を備える(例えば、特許文献1参照)。旋回促進面は、内部に導かれる空気を旋回しながら上方に導く。特許文献1に記載の粒子測定装置では、内部に導かれた空気が旋回していることで、空気に含まれる粒子の運ばれる先は、粒径の大小に応じて異なる。粒子が運ばれた先では、粒径に応じた測定が行われる。したがって、特許文献1に記載の粒子測定装置では、粒径の小さい粒子でも、精度よく測定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的に、粒子を捕集するには、粒子捕集溶液を使用することが効率的である。粒子捕集溶液は、攪拌容器に収容されるとともに、空気で攪拌されることにより、空気に含まれる粒子を捕集する。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の粒子測定装置では、粒子捕集溶液の使用を前提としていない。このため、特許文献1に記載の粒子測定装置で粒子捕集溶液を使用した場合、粒子捕集溶液は、旋回しながら上方に導かれる空気に少しずつ運ばれてしまって、徐々に減少することになる。
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、攪拌容器からの粒子捕集溶液の減少を抑えることができる粒子捕集装置及びこれを使用する粒子捕集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面によれば、粒子捕集装置は、外筒と、内筒と、螺旋板と、攪拌容器とを備える。外筒は、外部から空気が導かれる。内筒は、外筒の内部に配置される。螺旋板は、外筒と内筒との間に配置されて、空気を旋回させながら下方に導く。攪拌容器は、外筒の下に接続されて、外筒からの旋回している空気で粒子捕集溶液を攪拌する。
【0009】
本発明の他の一局面によれば、粒子捕集装置は、外筒と、内筒と、攪拌容器と、噴霧器と、循環経路とを備える。外筒は、外部から空気が導かれる。内筒は、外筒の内部に配置される。攪拌容器は、外筒の下に接続されて、外筒からの旋回している空気で粒子捕集溶液を攪拌する。噴霧器は、外部から外筒に導かれる空気に粒子捕集溶液を噴霧する。循環経路は、攪拌容器から噴霧器まで粒子捕集溶液を循環させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粒子捕集装置及びこれを使用する粒子捕集方法によれば、攪拌容器からの粒子捕集溶液の減少を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係る粒子捕集装置の概略縦断面図である。
【
図2】実施形態2に係る粒子捕集装置の概略縦断面図である。
【
図3】実施形態3に係る粒子捕集装置の概略縦断面図である。
【
図5】実施形態3の変形例に係る粒子捕集装置の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、以下に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」又は「後」の特定の位置と方向とを意味する用語が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、実際に実施される際の方向とは関係しないものである。
[実施形態1]
【0013】
図1を参照して、実施形態1に係る粒子捕集装置1を説明する。
図1は、実施形態1に係る粒子捕集装置1の概略縦断面図である。
【0014】
図1に示されるように、粒子捕集装置1は、外筒2と、内筒3と、螺旋板4と、攪拌容器5とを備える。外筒2は、外部から空気Aが導かれる。内筒3は、外筒2の内部に配置される。螺旋板4は、外筒2と内筒3との間に配置されて、空気Aを旋回させながら下方に導く。螺旋板4は、外筒2に向かって下方向に傾斜したものであり、言い換えれば、内筒3に向かって上方向に傾斜したものであることが好ましい。攪拌容器5は、外筒2の下に接続されて、外筒2からの旋回している空気Aで粒子捕集溶液Lを攪拌する。粒子捕集溶液Lを攪拌した空気Aは、内筒3の内側を下から上に通って排出される。一方、粒子捕集溶液Lは、攪拌により、空気Aに含まれていた粒子を捕集する。したがって、粒子にウイルス等が付着していれば、攪拌により、ウイルス等も粒子とともに粒子捕集溶液Lに捕集される。
【0015】
螺旋板4が空気Aを旋回させながら下方に導くことで、空気Aは、旋回する方向及び内筒3の軸方向の下方に整流される。すなわち、螺旋板4により旋回しながら攪拌容器5に導かれる空気Aは、粒子捕集溶液Lの攪拌に適した流れになる。したがって、粒子捕集溶液Lは、適切に攪拌されるので、内筒3から排出される空気Aに運ばれにくくなる。結果として、粒子捕集溶液Lが攪拌容器5から減少することを抑えることができる。
【0016】
特に、螺旋板4が外筒2に向かって下方向に傾斜することで、螺旋板4により旋回しながら攪拌容器5に導かれる空気Aは、粒子捕集溶液Lの攪拌に一層適した流れになる。したがって、粒子捕集溶液Lは、一層適切に攪拌されるので、内筒3から排出される空気Aに一層運ばれにくくなる。結果として、粒子捕集溶液Lが攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。
【0017】
螺旋板4は、外筒2及び内筒3とともに、軸方向が上下方向である。螺旋板4は、内筒3の外周囲を螺旋状に且つ内筒3の軸方向に沿って配置される板である。好ましくは、螺旋板4の上面と水平面とのなす角度θが、15°以上45°以下である。一層好ましくは、水平面と螺旋板4の上面とのなす角度θが、25°以上35°以下である。当該角度θにより、旋回しながら攪拌容器5に導かれる空気Aは、粒子捕集溶液Lの攪拌に一層適した流れになる。したがって、粒子捕集溶液Lは、一層適切に攪拌されるので、内筒3から排出される空気Aに一層運ばれにくくなる。結果として、粒子捕集溶液Lが攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。
【0018】
好ましくは、螺旋板4が、内筒3の外周面に取り付けられたものである。これにより、空気Aは、旋回する方向及び内筒3の軸方向の下方に整流される。すなわち、螺旋板4により旋回しながら攪拌容器5に導かれる空気Aは、粒子捕集溶液Lの攪拌に一層適した流れになる。したがって、粒子捕集溶液Lは、一層適切に攪拌されるので、内筒3から排出される空気Aに一層運ばれにくくなる。結果として、粒子捕集溶液Lが攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。
【0019】
好ましくは、螺旋板4の外周端が、外筒2の内周面に非接触である。これにより、外筒2の内周面に付着した粒子捕集溶液Lは、外筒2の内周面を伝って攪拌容器5に導かれる。したがって、粒子捕集溶液Lが攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。
【0020】
好ましくは、螺旋板4の下端が、外筒2の上下方向における中間よりも下に位置する。また、一層好ましくは、螺旋板4の螺旋が、半周以上(より一層好ましくは1周以上)である。当該螺旋板4により、粒子捕集溶液Lは、外筒2の空気Aを導く側まで逆流しにくい。したがって、粒子捕集溶液Lが攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。
【0021】
粒子捕集溶液Lは、水又は水を媒体とする溶液であれば限定されず、添加物が添加された液体でもよい。添加物が添加されることで、粒子の捕捉の促進、粒子の安定化、及び、粒子捕集溶液Lの安定化への寄与という効果を奏する。添加物の例には、pH調整剤、バッファー、酸化防止剤、抗菌剤、抗生剤、キレート剤、栄養塩、界面活性剤、消泡剤、及び、培地などが挙げられるが、これらの有無は特に限定されない。
【0022】
好ましくは、攪拌容器5は、内径が下ほど小さくなり、言い換えれば、内周面が逆円錐形状である。攪拌容器5の粒子捕集溶液Lは、空気Aと接触する上面で大面積になるからである。このため、空気Aに含まれる粒子が効率的に粒子捕集溶液Lに捕集されるので、攪拌容器5に導く空気Aの速度を高くしなくて済む。したがって、攪拌されている粒子捕集溶液Lは、内筒3から排出される空気Aに一層運ばれにくくなるので、攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。さらに、攪拌容器5が逆円錐形状であることにより、空気Aの吸入速度が高い場合、粒子捕集溶液Lは、逆円錐の形状に沿ってせりあがる。したがって、粒子捕集溶液Lは、内筒3から排出される空気Aに一層運ばれにくくなるので、攪拌容器5から減少することを一層抑えることが出来る。なお、攪拌容器5は、下端部に土台51を有してもよい。
【0023】
粒子捕集装置1は、外部から外筒2に空気Aを導く構成として、外筒2に空気Aを導く空気導入部10と、外部から空気導入部10に空気Aを送るエアポンプ(不図示)とを備えてもよい。エアポンプ(不図示)は、空気Aの上流側から空気Aを送るものに限られず、空気Aの下流側から空気Aを吸うものでもよい。
[実施形態2]
【0024】
図2を参照して、実施形態2に係る粒子捕集装置1を説明する。
図2は、実施形態2に係る粒子捕集装置1の概略縦断面図である。実施形態2では、螺旋板4を備えなくてもよい点、並びに、噴霧器6及び循環経路7を備える点が、実施形態1と異なる。以下、実施形態2が実施形態1と異なる点を説明する。
【0025】
図2に示されるように、粒子捕集装置1は、噴霧器6と、循環経路7とをさらに備える。噴霧器6は、外部から外筒2に導かれる空気Aに粒子捕集溶液Lを噴霧する。噴霧器6は、例えば、空気導入部10に設けられる。循環経路7は、攪拌容器5から噴霧器6まで粒子捕集溶液Lを循環させる。
【0026】
攪拌容器5で粒子を捕集した粒子捕集溶液Lは、攪拌容器5から循環経路7により噴霧器6に至る。噴霧器6に至った粒子捕集溶液Lは、噴霧器6により、外部から外筒2に導かれる空気Aに噴霧される。噴霧された粒子捕集溶液Lは、霧状になるので、空気Aに接触する表面積が大きくなる。このため、空気Aに含まれる粒子が効率的に粒子捕集溶液Lに捕集されるので、攪拌容器5に導く空気Aの速度を高くしなくて済む。したがって、攪拌されている粒子捕集溶液Lは、内筒3から排出される空気Aに一層運ばれにくくなるので、攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。
【0027】
好ましくは、噴霧器6が、粒子捕集溶液Lの空気Aに接触する表面積を一層大きくするものである。具体的に説明すると、噴霧器6は、粒子捕集溶液Lを、直径200μm以下の霧状、連続的に噴霧、及び、噴霧される流量が100mm3/s以上、の少なくともいずれかにするものである。当該噴霧器6により、空気Aに含まれる粒子が効率的に粒子捕集溶液Lに捕集されるので、攪拌容器5に導く空気Aの速度を高くしなくて済む。したがって、攪拌されている粒子捕集溶液Lは、内筒3から排出される空気Aに一層運ばれにくくなるので、攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。
【0028】
好ましくは、循環経路7の上流端が、攪拌容器5の底部に接続されている。攪拌により粒子捕集溶液Lの液位が変化しても、攪拌容器5の底部には粒子捕集溶液Lが安定して存在するからである。このため、粒子捕集溶液Lが安定して攪拌容器5から循環経路7により噴霧器6に至る。粒子捕集溶液Lが安定して噴霧器6から噴霧されると、攪拌容器5に導く空気Aの速度を高くしなくて済む。したがって、攪拌されている粒子捕集溶液Lは、内筒3から排出される空気Aに一層運ばれにくくなるので、攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。
【0029】
なお、図示されないが、循環経路7には、粒子又は粒子に付着したウイルス等を検出する検出器が接続されてもよい。循環経路7により循環された粒子捕集溶液Lが再び粒子を捕集するので、粒子捕集溶液Lにおける粒子の濃度が上昇する。粒子捕集溶液Lにおける粒子の濃度が上昇することにより、粒子又は粒子に付着したウイルス等が検出器で検出されやすくなる。
【0030】
図2には、攪拌容器5に導かれる空気Aが旋回している状態を示す。しかしながら、粒子捕集装置1は、攪拌容器5に導く空気Aを、必ずしも旋回させなくてよく、粒子捕集溶液Lを攪拌すれば足りる。なお、粒子捕集装置1は、螺旋板4を備えなくても、外部から外筒2に導かれる空気Aの角度により、空気Aを旋回させることが可能である。
[実施形態3]
【0031】
図3及び
図4を参照して、実施形態3に係る粒子捕集装置1を説明する。
図3は、実施形態3に係る粒子捕集装置1の概略縦断面図である。
図4は、
図3のIV-IV断面図である。実施形態3では、実施形態1と実施形態2とを組み合せた上で、さらなる構成を備える。以下、主としてさらなる構成を説明する。なお、
図3では、図面による理解を容易にするために、外筒2と内筒3との間の空気A、及び、攪拌容器5に導かれた空気Aを省略する。
【0032】
図3に示されるように、粒子捕集装置1は、実施形態1及び2の構成と同じく、外筒2と、内筒3と、螺旋板4と、攪拌容器5と、噴霧器6と、循環経路7とを備える。
【0033】
粒子捕集装置1は、さらなる構成として、排気筒8を備える。排気筒8は、内筒3の上に接続されて、内筒3からの空気Aを上端から外部に排出する。排気筒8は、外筒2と同径又は外筒2よりも大径で(D≧d)、且つ、径方向よりも軸方向の方が長いものである(D<H)。好ましくは、排気筒8が、上部に排気管80と、下部に漏斗部81とを有する。漏斗部81は、下方ほど縮径する。
【0034】
排気筒8の内周面には、内筒3からの空気Aに運ばれていた粒子捕集溶液Lが付着しやすい。なぜなら、内筒3から排気筒8に導かれた空気Aは、外筒2及び内筒3での旋回が維持されたままだからである。排気筒8の内部において、空気Aの旋回が維持されていることにより、当該空気Aに運ばれている粒子捕集溶液Lが排気筒8の内周面に付着する。排気筒8の内周面に付着した粒子捕集溶液Lは、排気筒8及び内筒3の内周面を伝って、攪拌容器5に戻る。排気筒8が下部に漏斗部81を有することにより、排気筒8の内周面に付着した粒子捕集溶液Lは、漏斗部81の内周面を自重により速やかに伝うので、速やかに攪拌容器5に戻る。したがって、粒子捕集溶液Lが攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。
【0035】
外筒2に導かれる空気Aに粒子捕集溶液Lが噴霧されると、旋回している空気Aに運ばれている霧状の粒子捕集溶液Lは、内筒3の外周面に付着しやすい。内筒3の外周面に付着した粒子捕集溶液Lは、内筒3の外周面を下端まで伝ってから、内筒3の内周面を上昇して、内筒3から排出される空気Aに運ばれやすい。
【0036】
しかしながら、螺旋板4が内筒3の外周面に取り付けられていることで、粒子捕集溶液Lは、内筒3の外周面に付着しても、螺旋板4により外筒2の内周面まで導かれる。このため、粒子捕集溶液Lは、内筒3の外周面における下端まで至りにくいので、内筒3の内周面を上昇しにくい。したがって、粒子捕集溶液Lは、内筒3から排出される空気Aに一層運ばれにくくなるので、攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。
【0037】
特に、螺旋板4が外筒2に向かって下方向に傾斜することで、螺旋板4により旋回しながら攪拌容器5に導かれる空気Aは、運んでいる粒子捕集溶液Lを内筒3の外周面よりも外筒2の内周面に付着させやすい。このため、粒子捕集溶液Lは、内筒3の外周面における下端まで至りにくいので、内筒3の内周面を上昇しにくい。したがって、粒子捕集溶液Lは、内筒3から排出される空気Aに一層運ばれにくくなるので、攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。
【0038】
外筒2の内周面は、上下方向に沿った溝21(以下、縦溝21)を有する。螺旋板4が外筒2に向かって下方向に傾斜することで、螺旋板4により旋回しながら攪拌容器5に導かれる空気Aは、霧状の粒子捕集溶液Lを外筒2の内周面に付着させやすい。外筒2の内周面に付着した粒子捕集溶液Lは、縦溝21を伝って攪拌容器5に導かれる。したがって、粒子捕集溶液Lが攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。
【0039】
縦溝21は、外筒2に空気Aが導かれる高さから、外筒2の下端まで至る。
図4に示されるように、縦溝21は、複数(例えば4本)であり、等間隔に形成される。縦溝21は、等間隔に形成されることにより、旋回している空気Aから粒子捕集溶液Lを効率的に縦溝21に取り込む。
【0040】
各縦溝21は、横断面視において、開口面21mよりも奥面21fの方が空気Aの進行方向に位置する形状である。各縦溝21は、当該形状により、旋回している空気Aから粒子捕集溶液Lを効率的に縦溝21に取り込む。
【0041】
旋回している空気Aから粒子捕集溶液Lが効率的に縦溝21に取り込まれることで、粒子捕集溶液Lは、空気Aとともに排出されずに、縦溝21を伝って攪拌容器5に導かれる。したがって、粒子捕集溶液Lが攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。
[実験例]
【0042】
実施形態3で説明した排気筒8、螺旋板4及び4本の縦溝21が、効果にどの程度寄与するかを調べるために、次の実験例1~4に示す実験を行った。
【0043】
実験例1では、実施形態3に係る粒子捕集装置1から、螺旋板4及び4本の縦溝21を備えない装置を使用した。実験例2では、実施形態3に係る粒子捕集装置1から、螺旋板4を備えない装置を使用した。実験例3では、実施形態3に係る粒子捕集装置1から、4本の縦溝21を備えない装置を使用した。実験例4では、実施形態3に係る粒子捕集装置1を使用した。
【0044】
実験例1~4のいずれも、実験条件として、実験時間を5分、外部から外筒2に導かれる空気Aの流量を5000[cm3/s]、粒子捕集溶液Lを水、排気筒8の内径Dを50[mm]、排気筒8の軸方向長さHを60[mm]、外筒2の内径dを40[mm]、外筒2の高さを65[mm]、攪拌容器5の高さを120[mm]、攪拌容器5の内周面の鉛直軸に対する傾きを10[°]とした。
【0045】
実験例1~4における他の実験条件、及び、実験結果を次の表1に示す。
【0046】
【0047】
表1に示されるように、実験例4では、「左列の平均」、つまり、「粒子捕集装置全体での粒子捕集溶液の重量」の「実験後」の平均(以下、実験後の平均重量)が11.47gと大きかった。さらに、攪拌容器5から粒子捕集溶液Lが消失しなかったので、最も好ましい結果となった。
【0048】
実験例3では、「左列の平均」、つまり、実験後の平均重量が11.82gと最も大きかった。しかしながら、粒子捕集溶液Lは、多くが攪拌容器5ではなく排気筒8に残っていたので、最も好ましいとは言えない。したがって、2番目に好ましい結果となった。
【0049】
実験例2では、「左列の平均」、つまり、実験後の平均重量が9.83gと最も小さかった。しかしながら、攪拌容器5から粒子捕集溶液Lが消失した回数が実験例1と同じく1回であり、攪拌容器5から粒子捕集溶液Lが消失するまでの時間が実験例1よりも長い5分00秒だったので、最も好ましくないとは言えない。したがって、3番目に好ましい結果となった。
【0050】
実験例1では、前述した実験例2~4についての説明により、4番目に好ましい結果となった。
【0051】
実験例1~4の実験結果から、最も好ましいのは、実験例4の構成、つまり、実施形態3に係る粒子捕集装置1である。次に好ましいのは、実験例3の構成、つまり、実施形態3に係る粒子捕集装置1から4本の縦溝21を備えない構成である。その次に好ましいのは、実験例2の構成、つまり、実施形態3に係る粒子捕集装置1から螺旋板4を備えない構成である。その次に好ましいのは、実験例1の構成、つまり、実施形態3に係る粒子捕集装置1から螺旋板4及び4本の縦溝21を備えない構成である。
【0052】
なお、実施形態3に係る粒子捕集装置1から排気筒8、螺旋板4及び4本の縦溝21を備えない構成でも、実施形態2で説明したように、噴霧器6及び循環経路7を備えるのであれば、攪拌容器5からの粒子捕集溶液Lの減少を抑えることができる。
【0053】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の速度、材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0054】
実施形態1~3では、内筒3の内側について詳細に説明しなかった。ここで、
図5に示されるように、粒子捕集装置1は、内筒3の内側に配置された小筒30と、内筒3の上端と小筒30の上端とを接続することで封止する輪状板31とを備えてもよい。粒子捕集溶液Lは、内筒3の内周面を上昇した場合、内筒3の内周面における上端に達しても、輪状板31及び小筒30に妨げられるので外部に排出されない。したがって、粒子捕集溶液Lが攪拌容器5から減少することを一層抑えることができる。
【0055】
実施形態1~3では、粒子捕集溶液Lに捕集される粒子の種類について説明しなかった。ここで、粒子は、粒子捕集溶液Lに捕集されるものであれば、特に制限されない。粒子は、例えば、気相中に存在するいわゆる塵、埃、エアロゾルや、胞子、微生物といった生物由来物、ウイルス、そしてそれらの複合体等である。
【0056】
実施形態1及び2では、実施形態3で説明した排気筒8及び縦溝21について説明しなかった。ここで、実施形態1及び2は、排気筒8及び縦溝21の一方又は両方を備えてもよい。なお、実施形態1が備える縦溝21は、螺旋板4のうち最下段(下面が攪拌容器5に面する)までの高さで足りる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、粒子捕集装置を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0058】
A 空気
L 粒子捕集溶液
1 粒子捕集装置
2 外筒
3 内筒
4 螺旋板
5 攪拌容器
6 噴霧器
7 循環経路
8 排気筒
10 空気導入部
21 縦溝
30 小筒
31 輪状板
51 土台
80 排気管
81 漏斗部