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特開2023-129775積層セラミック電子部品及び積層セラミック電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129775
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品及び積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
H01G4/30 201D
H01G4/30 201C
H01G4/30 201K
H01G4/30 201N
H01G4/30 516
H01G4/30 513
H01G4/30 512
H01G4/30 311D
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034024
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】冨川 千鶴
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E001AJ01
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC33
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ23
(57)【要約】
【課題】内部電極を多層化できるとともに、セラミック素体の構造欠陥を抑制することが可能な積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、外部電極と、を具備し、第1軸方向の寸法が第3軸方向の寸法よりも大きく構成される。セラミック素体は、内部電極が積層された電極積層部と、第1及び第2カバー部と、サイドマージン部と、を有する。複数の内部電極は、第1カバー部側の第1軸方向周縁部にまとまって配置された複数の第1周縁内部電極と、第2カバー部側の第1軸方向周縁部にまとまって配置された複数の第2周縁内部電極と、複数の周縁内部電極よりも第2軸方向中央側にまとまって配置された複数の中央内部電極と、で構成される。複数の周縁内部電極各々は、複数の中央内部電極各々よりも、セラミック粒子の含有割合が多い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に配置され、前記第1軸に直交する第2軸に沿った両側に交互に引き出された複数の内部電極と、を含む電極積層部と、
前記電極積層部を挟んで前記第1軸方向に対向する第1及び第2カバー部と、
前記電極積層部を挟んで前記第1軸及び前記第2軸と直交する第3軸方向に対向する第1及び第2サイドマージン部と、
を有するセラミック素体と、
前記複数の内部電極に接続され、前記セラミック素体を挟んで前記第2軸方向に対向する第1及び第2外部電極と、
を具備し、
前記第1軸方向の寸法が前記第3軸方向の寸法よりも大きく構成され、
前記複数の内部電極は、
前記第1カバー部側の前記第1軸方向周縁部にまとまって配置された複数の第1周縁内部電極と、
前記第2カバー部側の前記第1軸方向周縁部にまとまって配置された複数の第2周縁内部電極と、
前記複数の第1及び第2周縁内部電極よりも前記第2軸方向中央側にまとまって配置された複数の中央内部電極と、で構成され、
前記複数の第1及び第2周縁内部電極各々は、前記複数の中央内部電極各々よりも、セラミック粒子の含有割合が多い
積層セラミック電子部品。
【請求項2】
第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に配置され、前記第1軸に直交する第2軸に沿った両側に交互に引き出された複数の内部電極と、を含む電極積層部と、
前記電極積層部を挟んで前記第1軸方向に対向する第1及び第2カバー部と、
前記電極積層部を挟んで前記第1軸及び前記第2軸と直交する第3軸方向に対向する第1及び第2サイドマージン部と、
を有するセラミック素体と、
前記複数の内部電極に接続され、前記セラミック素体を挟んで前記第2軸方向に対向する第1及び第2外部電極と、
を具備し、
前記第1軸方向の寸法が前記第3軸方向の寸法よりも大きく構成され、
前記複数の内部電極は、セラミック粒子を含み、かつ、
前記第1カバー部側の前記第1軸方向周縁部にまとまって配置された複数の第1周縁内部電極と、
前記第2カバー部側の前記第1軸方向周縁部にまとまって配置された複数の第2周縁内部電極と、
前記複数の第1及び第2周縁内部電極よりも前記第2軸方向中央側にまとまって配置された複数の中央内部電極と、で構成され、
前記複数の第1及び第2周縁内部電極各々は、前記複数の中央内部電極各々よりも、含有するセラミック粒子の平均粒径が大きい
積層セラミック電子部品。
【請求項3】
第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に配置され、前記第1軸に直交する第2軸に沿った両側に交互に引き出された複数の内部電極と、を含む電極積層部と、
前記電極積層部を挟んで前記第1軸方向に対向する第1及び第2カバー部と、
前記電極積層部を挟んで前記第1軸及び前記第2軸と直交する第3軸方向に対向する第1及び第2サイドマージン部と、
を有するセラミック素体と、
前記複数の内部電極に接続され、前記セラミック素体を挟んで前記第2軸方向に対向する第1及び第2外部電極と、
を具備し、
前記第1軸方向の寸法が前記第3軸方向の寸法よりも大きく構成され、
前記複数の内部電極は、
前記第1カバー部側の前記第1軸方向周縁部にまとまって配置された複数の第1周縁内部電極と、
前記第2カバー部側の前記第1軸方向周縁部にまとまって配置された複数の第2周縁内部電極と、
前記複数の第1及び第2周縁内部電極よりも前記第2軸方向中央側にまとまって配置された複数の中央内部電極と、で構成され、
前記複数の第1及び第2周縁内部電極各々は、前記複数の中央内部電極各々よりも、前記第1軸方向における厚みが厚い
積層セラミック電子部品。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記複数の内部電極は、前記第3軸方向の端部の位置が前記第3軸方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている
積層セラミック電子部品。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記電極積層部は、前記第1軸方向に沿って、
前記複数の第1周縁内部電極が配置された第1周縁領域と、
前記複数の中央内部電極が配置された中央領域と、
前記複数の第2周縁内部電極が配置された第2周縁領域と、に区分され、
前記第1及び第2周縁領域各々の前記第1軸方向における寸法は、前記電極積層部の前記第1軸方向における寸法の、10%以上30%である
積層セラミック電子部品。
【請求項6】
第1電極層が形成された複数の中央用セラミックシートと、前記第1電極層よりも焼結性の低い第2電極層が形成された複数の周縁用セラミックシートと、内部電極を含まない複数のカバー用セラミックシートを準備し、
前記複数の中央用セラミックシートを第1軸方向に積層し、前記積層された複数の中央用セラミックシートの前記第1軸方向両側に前記複数の周縁用セラミックシートを積層し、前記積層された複数の周縁用セラミックシートの前記第1軸方向両側に前記複数のカバー用セラミックシートを積層することで、前記第1及び第2電極層の端部が露出した、前記第1軸に直交する第2軸に垂直な第1及び第2側面を有する積層チップを形成し、
前記積層チップの前記第1及び第2側面に、第1及び第2サイドマージン部を形成し、
前記積層チップと、前記第1及び第2サイドマージン部と、を有する未焼成のセラミック素体を焼成することで、前記第1軸方向の寸法が前記第2軸方向の寸法よりも大きいセラミック素体を焼成する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第2電極層は、前記第1電極層よりも、導電性材料に対するセラミック材料の含有割合が多い
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第1及び第2電極層は、セラミック粉末を含み、
前記第2電極層は、前記第1電極層よりも、前記セラミック粉末の平均粒径が大きい
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第2電極層は、前記第1電極層よりも、前記第1軸方向における厚みが厚い
積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミック電子部品は、複数のセラミック層と、複数の内部電極とが交互に積層された構成を有する。このような積層セラミック電子部品は、例えば、導電性ペースト等からなる未焼成の電極層が形成されたセラミックグリーンシートを積層し、焼成することにより作製される。焼成により、未焼成の電極層が内部電極となり、セラミックグリーンシートがセラミック層となる。
【0003】
セラミック材料は、金属よりも焼結温度が高い。このため、セラミックグリーンシートと、金属を含む電極層とは、異なる焼結挙動を示す。焼成工程においては、セラミック材料の焼結温度まで昇温されるため、電極層が過度に焼結され、球状化や途切れを生じやすい。例えば、特許文献1には、内部電極の球状化や途切れを抑制するため、内部電極形成用ペーストに、セラミック粒子を添加する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-311985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、近年の電子部品の小型化や高機能化に伴い、内部電極及びセラミック層が薄くなるとともに、内部電極の積層数が増加する傾向にある。このため、内部電極の球状化や途切れに伴う積層セラミック電子部品全体の歪みが、より生じやすくなる。さらに、内部電極の積層数が増加することで、セラミック素体の焼成時において、内部電極が積層された領域の積層方向の収縮量が大きくなる。これにより、セラミック素体の積層方向における周縁の領域に大きな応力が生じ、クラック等の構造欠陥が生じやすくなる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、内部電極を多層化できるとともに、セラミック素体の構造欠陥を抑制することが可能な積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、第1及び第2外部電極と、を具備する。
前記セラミック素体は、電極積層部と、第1及び第2カバー部と、第1及び第2サイドマージン部と、を有する。
前記電極積層部は、第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に配置され、前記第1軸に直交する第2軸に沿った両側に交互に引き出された複数の内部電極と、を含む。
前記第1及び第2カバー部は、前記電極積層部を挟んで前記第1軸方向に対向する。
前記第1及び第2サイドマージン部は、前記電極積層部を挟んで前記第1軸及び前記第2軸と直交する第3軸方向に対向する。
前記第1及び第2外部電極は、前記複数の内部電極に接続され、前記セラミック素体を挟んで前記第2軸方向に対向する。
前記積層セラミック電子部品は、前記第1軸方向の寸法が前記第3軸方向の寸法よりも大きく構成される。
前記複数の内部電極は、
前記第1カバー部側の前記第1軸方向周縁部にまとまって配置された複数の第1周縁内部電極と、
前記第2カバー部側の前記第1軸方向周縁部にまとまって配置された複数の第2周縁内部電極と、
前記複数の第1及び第2周縁内部電極よりも前記第2軸方向中央側にまとまって配置された複数の中央内部電極と、で構成される。
前記複数の第1及び第2周縁内部電極各々は、前記複数の中央内部電極各々よりも、セラミック粒子の含有割合が多い。
【0008】
本発明の他の形態に係る積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、第1及び第2外部電極と、を具備する。
前記セラミック素体は、電極積層部と、第1及び第2カバー部と、第1及び第2サイドマージン部と、を有する。
前記電極積層部は、第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に配置され、前記第1軸に直交する第2軸に沿った両側に交互に引き出された複数の内部電極と、を含む。
前記第1及び第2カバー部は、前記電極積層部を挟んで前記第1軸方向に対向する。
前記第1及び第2サイドマージン部は、前記電極積層部を挟んで前記第1軸及び前記第2軸と直交する第3軸方向に対向する。
前記第1及び第2外部電極は、前記複数の内部電極に接続され、前記セラミック素体を挟んで前記第2軸方向に対向する。
前記積層セラミック電子部品は、前記第1軸方向の寸法が前記第3軸方向の寸法よりも大きく構成される。
前記複数の内部電極は、
前記第1カバー部側の前記第1軸方向周縁部にまとまって配置された複数の第1周縁内部電極と、
前記第2カバー部側の前記第1軸方向周縁部にまとまって配置された複数の第2周縁内部電極と、
前記複数の第1及び第2周縁内部電極よりも前記第2軸方向中央側にまとまって配置された複数の中央内部電極と、で構成される。
前記複数の第1及び第2周縁内部電極各々は、前記複数の中央内部電極各々よりも、含有するセラミック粒子の平均粒径が大きい。
【0009】
本発明のさらに他の形態に係る積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、第1及び第2外部電極と、を具備する。
前記セラミック素体は、電極積層部と、第1及び第2カバー部と、第1及び第2サイドマージン部と、を有する。
前記電極積層部は、第1軸方向に積層された複数のセラミック層と、前記複数のセラミック層の間に配置され、前記第1軸に直交する第2軸に沿った両側に交互に引き出された複数の内部電極と、を含む。
前記第1及び第2カバー部は、前記電極積層部を挟んで前記第1軸方向に対向する。
前記第1及び第2サイドマージン部は、前記電極積層部を挟んで前記第1軸及び前記第2軸と直交する第3軸方向に対向する。
前記第1及び第2外部電極は、前記複数の内部電極に接続され、前記セラミック素体を挟んで前記第2軸方向に対向する。
前記積層セラミック電子部品は、前記第1軸方向の寸法が前記第3軸方向の寸法よりも大きく構成される。
前記複数の内部電極は、
前記第1カバー部側の前記第1軸方向周縁部にまとまって配置された複数の第1周縁内部電極と、
前記第2カバー部側の前記第1軸方向周縁部にまとまって配置された複数の第2周縁内部電極と、
前記複数の第1及び第2周縁内部電極よりも前記第2軸方向中央側にまとまって配置された複数の中央内部電極と、で構成される。
前記複数の第1及び第2周縁内部電極各々は、前記複数の中央内部電極各々よりも、前記第1軸方向における厚みが厚い。
【0010】
これらの構成では、第1及び第2周縁内部電極は、前記複数の中央内部電極よりも、焼結性が低くなる。このため、第1及び第2周縁内部電極の過剰な焼結が抑制され、球状化及び途切れが抑制される。従って、特にセラミック素体の第1軸方向周縁部における歪みが抑制される。また、第1及び第2周縁内部電極の熱収縮挙動が、焼結性の低いカバー部及びサイドマージン部等に近づくことで、これらの間の応力が抑制される。したがって、第1軸方向の寸法が第3軸方向の寸法よりも大きく構成されたセラミック素体であっても、セラミック素体の第1軸方向周縁部におけるクラック等の構造欠陥を抑制することができる。
【0011】
また、前記複数の内部電極は、前記第3軸方向の端部の位置が前記第3軸方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っていてもよい。
【0012】
また、前記電極積層部は、前記第1軸方向に沿って、
前記複数の第1周縁内部電極が配置された第1周縁領域と、
前記複数の中央内部電極が配置された中央領域と、
前記複数の第2周縁内部電極が配置された第2周縁領域と、に区分され、
前記第1及び第2周縁領域各々の前記第1軸方向における寸法は、前記電極積層部の前記第1軸方向における寸法の、10%以上30%であってもよい。
【0013】
本発明のさらに他の形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、第1電極層が形成された複数の中央用セラミックシートと、前記第1電極層よりも焼結性の低い第2電極層が形成された複数の周縁用セラミックシートと、内部電極を含まない複数のカバー用セラミックシートを準備する工程を含む。
前記複数の中央用セラミックシートを第1軸方向に積層し、前記積層された複数の中央用セラミックシートの前記第1軸方向両側に前記複数の周縁用セラミックシートを積層し、前記積層された複数の周縁用セラミックシートの前記第1軸方向両側に前記複数のカバー用セラミックシートを積層することで、前記第1及び第2電極層の端部が露出した、前記第1軸に直交する第2軸に垂直な第1及び第2側面を有する積層チップが形成される
前記積層チップの前記第1及び第2側面に、第1及び第2サイドマージン部が形成される。
前記積層チップと、前記第1及び第2サイドマージン部と、を有する未焼成のセラミック素体を焼成することで、前記第1軸方向の寸法が前記第2軸方向の寸法よりも大きいセラミック素体が焼成される。
【0014】
例えば、前記第2電極層は、前記第1電極層よりも、導電性材料に対するセラミック材料の含有割合が多くてもよい。
例えば、前記第1及び第2電極層は、セラミック粉末を含み、
前記第2電極層は、前記第1電極層よりも、前記セラミック粉末の平均粒径が大きくてもよい。
例えば、前記第2電極層は、前記第1電極層よりも、前記第1軸方向における厚みが厚くてもよい。
これらにより、第2電極層の焼結性を、第1電極層の焼結性よりも低くすることができ、セラミック素体の第1軸方向周縁部におけるクラック等の構造欠陥を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、内部電極を多層化できるとともに、セラミック素体の構造欠陥を抑制することが可能な積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図2図1のA-A'線に沿った上記積層セラミックコンデンサの断面図である。
図3図1のB-B'線に沿った上記積層セラミックコンデンサの断面図である。
図4】上記第1実施形態の比較例に係る積層セラミックコンデンサの断面図であり、図3と同様の位置における断面を示す。
図5図3の拡大図であり、Aは、上記第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの第1周縁領域の一部を模式的に示す図であり、Bは、上記積層セラミックコンデンサの中央領域の一部を模式的に示す図である。
図6】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
図7】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図であり、Aは、第1中央用セラミックシートの平面図であり、Bは、第2中央用セラミックシートの平面図である。
図8】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図であり、Aは、第1周縁用セラミックシートの平面図であり、Bは、第2周縁用セラミックシートの平面図である。
図9】上記積層セラミックコンデンサの製造過程における、積層シートの斜視図である。
図10】上記積層セラミックコンデンサの製造過程における、積層チップの斜視図である。
図11】上記積層セラミックコンデンサの製造過程における、未焼成のセラミック素体の斜視図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサの一部を模式的に示す拡大図であり、Aは、第1周縁領域の一部を模式的に示す図であり、Bは、中央領域の一部を模式的に示す図である。
図13】本発明の第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す断面図であり、図3と同様の位置における断面を示す。
図14図13の拡大図であり、Aは、上記積層セラミックコンデンサの第1周縁領域の一部を模式的に示す図であり、Bは、上記積層セラミックコンデンサの中央領域の一部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は、積層セラミックコンデンサ10に対して固定された固定座標系を規定する。
【0018】
<第1実施形態>
[積層セラミックコンデンサの全体構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。図2は、積層セラミックコンデンサ10の図1のA-A'線に沿った断面図である。図3は、積層セラミックコンデンサ10の図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0019】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極13aと、第2外部電極13bと、を備える。セラミック素体11は、X軸に垂直な第1端面及び第2端面と、Y軸に垂直な第1側面及び第2側面と、Z軸に垂直な第1主面及び第2主面と、を有する直方体として構成される。なお、「直方体」とは、実質的に直方体状であればよく、例えばセラミック素体11の各面を接続する稜部が丸みを帯びていてもよい。
【0020】
セラミック素体11の主面、端面、及び側面はいずれも、平坦面として構成される。本実施形態に係る平坦面とは、全体的に見たときに平坦と認識される面であれば厳密に平面でなくてもよく、例えば、表面の微小な凹凸形状や、所定の範囲に存在する緩やかな湾曲形状などを有する面も含まれる。
【0021】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11のZ軸方向の寸法TがY軸方向の寸法Wよりも大きい高背型として構成される。つまり、積層セラミックコンデンサ10では、セラミック素体11の寸法Tを大きくすることで大容量を確保しつつ、Y軸方向に制限された実装スペースに実装可能となる。
【0022】
具体的に、積層セラミックコンデンサ10は、例えば以下のようなサイズを有する。積層セラミックコンデンサ10のX軸方向における寸法Lは、例えば、0.2mm以上1.2mm以下である。積層セラミックコンデンサ10のY軸方向における寸法Wは、例えば、0.1mm以上0.7mm以下である。積層セラミックコンデンサ10のZ軸方向における寸法Tは、例えば、0.15mm以上1.0mm以下である。積層セラミックコンデンサ10の寸法Wに対する寸法Tの倍率は、例えば、1.2倍以上2.0倍以下である。積層セラミックコンデンサ10の寸法Lに対する寸法Tの倍率は、例えば、0.6倍以上1.0倍以下である。なお、積層セラミックコンデンサ10のある方向における「寸法」は、当該方向における最大寸法とする。
【0023】
また、以下の説明において、「Z軸方向中央側」とは、積層セラミックコンデンサ10をZ軸方向に2等分する仮想的なX-Y平面に近い側をいい、「Z軸方向周縁側」又は「Z軸方向外側」とは、上記仮想的なX-Y平面から遠い側をいう。
【0024】
外部電極13a,13bは、セラミック素体11を挟んでX軸方向に対向しており、セラミック素体11の端面を覆っている。例えば、図1に示す外部電極13a,13bは、セラミック素体11の端面から主面及び側面に延出している。なお、外部電極13a,13bの形状は、図1に示す例に限定されない。
【0025】
外部電極13a,13bは、金属材料を主成分として含む。外部電極13a,13bを構成する金属材料としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、及びこれらの合金などが挙げられる。なお、本実施形態で主成分とは、最も含有割合の高い成分を言うものとする。
【0026】
セラミック素体11は、積層体14と、第1サイドマージン部15aと、第2サイドマージン部15bと、を有する。積層体14は、X軸に垂直な第1端面14a及び第2端面14bと、Y軸に垂直な第1側面14c及び第2側面14dと、Z軸に垂直な第1主面14e及び第2主面14fと、を有する直方体として構成される。
【0027】
サイドマージン部15a,15bは、積層体14を挟んでY軸方向に対向する。サイドマージン部15a,15bは、積層体14の側面14c,14dをそれぞれ覆っている。
【0028】
積層体14は、電極積層部16と、第1カバー部17aと、第2カバー部17bと、を有する。カバー部17a,17bは、電極積層部16をZ軸方向上下から被覆し、積層体14の一対の主面を構成している。
【0029】
電極積層部16は、Z軸方向に積層された複数のセラミック層18と、セラミック層18の間に配置され、Y軸に沿った両側に交互に引き出された第1内部電極12a及び第2内部電極12bと、を含む。本実施形態において、セラミック層18と、内部電極12a,12bとは、いずれもX-Y平面に沿って延びるシート状に構成される。内部電極12a,12bは、Z軸方向に沿って交互に配置されている。つまり、内部電極12a,12bは、セラミック層18を挟んでZ軸方向に対向している。
【0030】
第1内部電極12aは、第1外部電極13aに覆われた第1端面14aに引き出されている。一方、第2内部電極12bは第2外部電極13bに覆われた第2端面14bに引き出されている。つまり、内部電極12a,12bは、第1及び第2端面14a,14bに交互に引き出される。これにより、第1内部電極12aは第1外部電極13aのみに接続され、第2内部電極12bは第2外部電極13bのみに接続される。
【0031】
内部電極12a,12bは、電極積層部16のY軸方向の全幅にわたって形成され、その端部が積層体14の側面14c,14dまで延びている。積層体14の側面14c,14dがサイドマージン部15a,15bによって覆われていることで、積層体14の側面14c,14dにおける内部電極12a,12b間の絶縁性を確保することができる。
【0032】
このような構成により、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極13a,13b間に電圧が印加されると、内部電極12a,12b間の複数のセラミック層18に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極13a,13b間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0033】
セラミック層18は、内部電極12a,12b間の各セラミック層18の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスを主成分として含む。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0034】
なお、誘電体セラミックスは、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、チタン酸マグネシウム(MgTiO)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Ti,Zr)O)、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム((Ba,Ca)(Ti,Zr)O)、ジルコン酸バリウム(BaZrO)、酸化チタン(TiO)などの組成系でもよい。
【0035】
サイドマージン部15a,15b及びカバー部17a,17bも、絶縁性セラミックスを主成分として含み、好ましくは、セラミック層18と同様の組成系の誘電体セラミックスを主成分として含む。これにより、電極積層部16とその周囲との物性の違いに起因する応力を緩和することができる。
【0036】
各セラミック層18のZ軸方向における厚みは、セラミック粒子の粒径を考慮しつつ、静電容量を高める観点から、例えば、0.1μm以上1.0μm以下とすることができる。セラミック層18の厚みは、セラミック層18の複数箇所において測定された厚みの平均値とする。一例として、走査型電子顕微鏡によって観察された視野中のセラミック層18から6層を選択し、各層において均等に離間した5箇所の厚みを測定する。そして、得られた30箇所の厚みの平均値を、セラミック層18の厚みとする。
【0037】
内部電極12a,12bは、金属材料を主成分として含む。当該金属材料としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、及びこれらの合金などが挙げられる。
【0038】
各内部電極12a,12bのZ軸方向における厚みは、内部電極12a,12bの連続性を高めるとともに、電極積層部16を多層化して静電容量を高める観点から、例えば、0.1μm以上1.0μm以下とすることができる。内部電極12a,12bの厚みは、内部電極12a,12bの複数箇所において測定された厚みの平均値とする。一例として、走査型電子顕微鏡によって観察された視野中の内部電極12a,12bから6層を選択し、各層において均等に離間した5箇所の厚みを測定する。そして、得られた30箇所の厚みの平均値を内部電極12a,12bの厚みとする。
【0039】
セラミック素体11は、誘電体セラミックスの焼結体として構成される。一方で、電極積層部16に含まれる内部電極12a,12bは、金属材料を含むため、誘電体セラミックスとは異なる焼結挙動を有する。具体的に、内部電極12a,12bは、誘電体セラミックスよりも焼結温度が低く、焼結が速く進行する。これらの焼結挙動の差に伴い、従来の構成の積層セラミックコンデンサでは、以下のような問題があった。
【0040】
図4は、従来の積層セラミックコンデンサ20の断面図であり、図3と同様の位置における断面を示す。積層セラミックコンデンサ20では、セラミック素体21の電極積層部26全体において、内部電極22a,22bが実質的に同一の構成を有し、同一の焼結性を有する。
【0041】
例えば、セラミック素体21の焼成工程では、誘電体セラミックスに合わせて焼成温度が設定されるため、内部電極22a,22bが過度に焼結されやすい。これにより、途切れ、球状化といった内部電極22a,22bの変形が生じることがある。さらに、内部電極22a,22bの薄型化によって、このような変形が生じる可能性が高まる。
【0042】
さらに、セラミック素体21が高背型である場合には、内部電極22a,22bの積層数が多くなるため、内部電極22a,22bの変形によってセラミック素体21全体に歪みが生じやすくなる。この歪みは、内部電極22a,22bの積層方向であるZ軸方向の周縁部で顕著になりやすいため、電極積層部26のZ軸方向周縁部を覆うカバー部17a,17b及びサイドマージン部15a,15bに応力が生じやすくなる。
【0043】
また、内部電極12a,12bは、誘電体セラミックスよりも焼結温度が低く、誘電体セラミックスよりも焼結に伴う収縮開始温度が低い。つまり、焼成工程において、電極積層部26は、周囲のカバー部17a,17b及びサイドマージン部18a,18bと比較して、先に収縮が開始する。
【0044】
さらに、セラミック素体21が高背型である場合には、電極積層部26の積層方向であるZ軸方向の収縮量の差が大きくなりやすい。これにより、電極積層部26のZ軸方向周縁部と、それを覆うカバー部17a,17b及びサイドマージン部15a,15bとの間に、収縮量の差に起因する応力が集中しやすくなる。
【0045】
この結果、図4に示すように、従来の高背型の積層セラミックコンデンサ20では、電極積層部26とカバー部17a,17bとの境界近傍、及び電極積層部26とサイドマージン部15a,15bとの境界近傍に、応力に伴うクラックC1,C2が生じやすくなる。
【0046】
例えば、図4に示すクラックC1は、焼成工程において、電極積層部26のZ軸方向における収縮にカバー部17a,17bが追従できず、カバー部17a,17bと電極積層部26との間の応力が大きくなることによって生じ得る。
【0047】
また例えば、図4に示すクラックC2は、焼成工程において、電極積層部26とサイドマージン部15a,15bとのZ軸方向における収縮量の差が大きくなり、サイドマージン部15a,15bと電極積層部26との間の応力が大きくなることによって生じ得る。さらに、後述する製造方法で示すように、サイドマージン部15a,15bを後付する工法を採用した場合には、電極積層部26及びカバー部17a,17bの積層体とサイドマージン部15a,15bとの境界部が剥離しやすくなり、クラックC2が特に生じやすくなる。
【0048】
これに対し、図1~3に示す本実施形態の積層セラミックコンデンサ10では、電極積層部16のカバー部17a,17b側に配置された内部電極12a,12bと、電極積層部16のZ軸方向中央側に配置された内部電極12a,12bと、の焼結性を変化させることにより、クラックC1,C2の発生を抑制することができる。以下、本実施形態の電極積層部16の詳細な構成について説明する。
【0049】
図3に示すように、内部電極12a,12bは、複数の第1周縁内部電極121と、複数の第2周縁内部電極122と、複数の中央内部電極123と、で構成される。周縁内部電極121,122は、中央内部電極123よりも焼結性が低い内部電極である。
【0050】
第1周縁内部電極121は、第1カバー部17a側のZ軸方向周縁部にまとまって配置される。第2周縁内部電極122は、第2カバー部17b側のZ軸方向周縁部にまとまって配置される。中央内部電極123は、周縁内部電極121,122よりもZ軸方向中央側にまとまって配置される。なお、複数の内部電極が「まとまって配置される」とは、複数の内部電極が、セラミック層18を介してZ軸方向に連続的に配置されることを意味する。具体的に、周縁内部電極121,122は、Z軸方向における最外層の内部電極と、その内部電極からセラミック層18を介して連続的に配置された複数の内部電極と、である。
【0051】
電極積層部16は、Z軸方向に沿って、第1周縁内部電極121が配置された第1周縁領域161と、中央内部電極123が配置された中央領域163と、第2周縁内部電極122が配置された第2周縁領域162と、に区分される。電極積層部16全体のZ軸方向における寸法を100%とした場合の、周縁領域161,162各々のZ軸方向における寸法の割合の下限値は、例えば10%以上、より好ましくは15%以上であり、当該割合の上限値は、例えば30%以下、より好ましくは25%以下である。電極積層部16全体のZ軸方向における寸法を100%とした場合の、中央領域163のZ軸方向における寸法の割合の下限値は、例えば40%以上、より好ましくは50%以上であり、当該割合の上限値は、例えば80%以下、より好ましくは70%以下である。
【0052】
第1周縁領域161は、Z軸方向における最外層の第1周縁内部電極121から、Z軸方向において最も中央側の第1周縁内部電極121までの領域とする。同様に、第2周縁領域162は、Z軸方向における最外層の第2周縁内部電極122から、Z軸方向において最も中央側の第2周縁内部電極122までの領域とする。中央領域163は、電極積層部16における、周縁領域161,162を除く領域とする。
【0053】
本実施形態において、周縁内部電極121,122と中央内部電極123との焼結性は、セラミック粒子の含有割合で制御する。セラミック粒子は、内部電極の材料として添加された誘電体セラミックスによって形成された結晶粒子である。セラミック粒子が内部電極中に含まれることで、内部電極の組成がセラミック層18、カバー部17a,17b及びサイドマージン部15a,15bの組成に近づく。これにより、内部電極の焼結挙動をセラミック層18、カバー部17a,17b及びサイドマージン部15a,15bの焼結挙動に近づけることができ、内部電極の焼結を遅らせ、過度な焼結及び急激な収縮を抑制することができる。
【0054】
図5A,Bは、図3の拡大図であり、図5Aは第1周縁領域161の一部を模式的に示し、図5Bは中央領域163の一部を模式的に示す。なお、第2周縁領域162は、第1周縁領域161と同様に構成されるため、図示を省略している。
【0055】
図5A,Bに示すように、本実施形態において、周縁内部電極121,122各々は、中央内部電極123各々よりも、セラミック粒子Pの含有割合が多い。これにより、特に焼結が進みやすい外層側の周縁内部電極121,122の過度な焼結が抑制され、周縁内部電極121,122の球状化及び途切れを抑制することができる。したがって、周縁内部電極121,122の球状化及び途切れに伴うセラミック素体11の歪みが解消され、周縁領域161,162を覆うカバー部17a,17b及びサイドマージン部18a,18bに生じる応力を抑制することができる。
【0056】
また、周縁内部電極121,122が中央内部電極123よりもセラミック粒子Pを多く含むことで、焼成工程における、周縁領域161,162の急激な収縮を抑制することができる。これにより、周縁領域161,162とカバー部17a,17b及びサイドマージン部15a,15bとの境界部近傍に生じる応力を抑制することができる。
【0057】
これらの応力緩和作用により、高背型の積層セラミックコンデンサ10において特に生じやすい、周縁領域161,162とカバー部17a,17bとの境界部近傍、及び周縁領域161,162とサイドマージン部15a,15bとの境界部近傍のクラックを効果的に抑制することができる。
【0058】
また、本発明者らは、後述する実施例で示すように、高背型の積層セラミックコンデンサ10においては、全ての内部電極12a,12bのセラミック粒子Pの添加量を一律に増加させるよりも、周縁内部電極121,122のセラミック粒子Pの添加量を中央内部電極123と比較して増加させる方がクラックの抑制効果が高いことを見出した。これに対しては、例えば以下の理由が考えられる。
【0059】
セラミック素体11は、焼成過程において、収縮開始温度の低い電極積層部16の中央部に向かって収縮する一方で、カバー部17a,17b及びサイドマージン部15a,15bのZ軸方向周縁部は、この中央部から遠いこともあり、相対的に収縮しにくい。このため、収縮過程におけるセラミック素体11は、Z軸方向周縁部に位置する角部が外方に突出するような形状に歪みやすい。本実施形態では、周縁内部電極121,122のセラミック粒子Pの添加量を中央内部電極123と比較して増加させることで、周縁内部電極121,122の収縮が緩やかになり、このZ軸方向周縁部の歪みも緩和される。つまり、周縁内部電極121,122は、セラミック素体11のZ軸方向周縁部との間で、焼成による歪みを緩衝する緩衝層のような作用を発揮し、この歪みによるクラックを抑制できる。
【0060】
また仮に、電極積層部16の焼結抑制効果を十分に得るため、全ての内部電極12a,12bに対して一律にセラミック粒子Pを多く添加したとする。この場合は、内部電極12a,12bにおいてセラミック粒子Pが粒成長しやすくなり、内部電極12a,12bの連続性が低下するリスクが高まる。多くの内部電極12a,12bにおいて連続性が低下した場合、積層セラミックコンデンサ10の歪みが生じやすくなるとともに、静電容量の低下が懸念される。
【0061】
したがって、本実施形態においては、電極積層部16のZ軸方向周縁部に位置する周縁内部電極121,122の焼結性を、中央内部電極123に対して低下させることで、静電容量の低下を抑制し、高背型のセラミック素体11のクラックを効果的に抑制することができる。
【0062】
内部電極中のセラミック粒子Pの含有割合は、例えば以下のように測定できる。
まず、積層セラミックコンデンサのY-Z平面に平行な断面を切り出す。この断面は、積層セラミックコンデンサのX軸方向における中央部の断面とする。そして、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡を用いて、視野内に5~10層程度の内部電極が入る倍率で、電極積層部の各領域の断面を撮像する。撮像した画像から、内部電極の面積に占めるセラミック粒子の面積の割合を算出する。
【0063】
各領域のセラミック粒子の含有割合の評価方法について説明する。例えば、電極積層部16のZ軸方向最外層近傍の5~10層の内部電極について、視野中の内部電極の面積に占めるセラミック粒子の面積の割合の平均値を算出し、この平均値を周縁内部電極におけるセラミック粒子の含有割合とする。同様に、電極積層部のZ軸方向中央部の5~10層の内部電極について、視野中の内部電極の面積に占めるセラミック粒子の面積の割合の平均値を算出し、この平均値を中央内部電極におけるセラミック粒子の含有割合とする。算出された周縁内部電極におけるセラミック粒子の含有割合と、中央内部電極におけるセラミック粒子の含有割合と、を比較して、周縁内部電極におけるセラミック粒子の含有割合の方が大きいか否か判定する。
【0064】
周縁内部電極121,122におけるセラミック粒子Pの含有割合は、例えば、5%以上25%以下である。中央内部電極123におけるセラミック粒子Pの含有割合は、例えば、0%以上20%以下である。中央内部電極123のセラミック粒子Pの含有割合に対する、周縁内部電極121,122のセラミック粒子Pの含有割合の倍率は、例えば、1.2倍以上5倍以下である。
【0065】
周縁内部電極121,122におけるセラミック粒子Pの含有割合を多くするためには、周縁内部電極121,122の材料に対してセラミック粒子Pを多く添加すればよい。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について説明する。
【0066】
[積層セラミックコンデンサの製造方法]
図6は、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。図7~11は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、図6に沿って、図7~11を適宜参照しながら説明する。
【0067】
(ステップS01:セラミックシート準備)
ステップS01では、中央内部電極123を形成するための中央用セラミックシート101と、周縁内部電極121,122を形成するための周縁用セラミックシート102と、第1及び第2カバー部17a,17bを形成するためのカバー用セラミックシート103と、を準備する。なお、以下の説明において、これら3種のセラミックシートを、「セラミックシート101」、「セラミックシート102」、「セラミックシート103」とも称する。セラミックシート101,102,103は、複数のチップに対応する領域を有する大判のシートとして構成される。
【0068】
図7A,B及び図8A,Bに示すセラミックシート101,102,103は、未焼成のセラミックグリーンシートとして構成される。セラミックシート101,102,103の材料を混合してスラリーを得る。当該材料は、誘電体セラミックスの粉末と、バインダ樹脂と、有機溶媒と、を含む。これらの材料をボールミル等で混合したスラリーを、ロールコーターやドクターブレードなどを用いてシート状に成形する。セラミックシート101,102の厚みは、焼成後のセラミック層18の厚みに応じて調整される。セラミックシート103の厚みは、焼成後のカバー部17a,17bの厚みに応じて適宜調整される。
【0069】
中央用セラミックシート101には、中央内部電極123に対応する未焼成の第1電極層E1が形成される。周縁用セラミックシート102には、周縁内部電極121,122に対応する未焼成の第2電極層E2が形成される。なお、図9を参照し、カバー用セラミックシート103には、電極層が形成されない。
【0070】
本実施形態において、電極層E1,E2は、導電性ペーストにより形成される。導電性ペーストは、基本的には、導電性材料としての導電体粉末と、バインダ樹脂と、有機溶媒等を含む。導電体粉末は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、及びこれらの混合物や合金等で構成される。さらに、導電性ペーストは、セラミック材料を含んでいてもよい。セラミック材料は、例えば、誘電体セラミックスの粉末であるセラミック粉末である。
【0071】
本実施形態において、第2電極層E2は、導電体粉末(導電性材料)に対するセラミック材料の含有割合が第1電極層E1よりも多い。これにより、後述する焼成工程において、第2電極層E2の焼結性が第1電極層E1よりも低くなり、第2電極層E2の焼結を第1電極層E1よりも遅らせることができる。
【0072】
具体的に、第2電極層E2における、導電性材料に対するセラミック材料の含有割合は、例えば5質量%以上25質量%以下である。また、第2電極層E2と第1電極層E1の、導電性材料に対するセラミック材料の含有割合の差は、例えば5質量%以上25質量%以下である。なお、本実施形態において、第1電極層E1は、セラミック材料を含んでいなくてもよい。
【0073】
これらの導電性ペーストは、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等によって、図7A,B及び図8A,Bに示すようなパターンでセラミックシート101,102に印刷される。これにより、第1電極層E1及び第2電極層E2が形成される。
【0074】
セラミックシート101,102において、電極層E1,E2は、いずれも、X軸方向に平行な切断線Lxを横切り、かつY軸方向に平行な切断線Lyに沿って延びる複数の帯状のパターンを有する。なお、切断線Lx,Lyは、後述する切断工程において、各チップに個片化するための仮想線である。
【0075】
さらに、セラミックシート101,102各々においても、上述の内部電極12a,12bに対応する、2種類の電極層パターンのセラミックシートを準備する。
【0076】
具体的に、図7A,Bに示すように、中央用セラミックシート101として、第1電極層E1のパターンがX軸方向に1チップ分ずれた第1及び第2中央用セラミックシート101a,101bを準備する。同様に、図8A,Bに示すように、周縁用セラミックシート102として、第2電極層E2のパターンがX軸方向に1チップ分ずれた第1及び第2周縁用セラミックシート102a,102bを準備する。
【0077】
図7A及び図8Aに示すように、第1中央用セラミックシート101aの第1電極層E1と第1周縁用セラミックシート102aの第2電極層E2のパターンは同一であり、これらは第1内部電極12aに対応する。図7B及び図8Bに示すように、第2中央用セラミックシート101bの第1電極層E1と第2周縁用セラミックシート102bの第2電極層E2のパターンは同一であり、これらは第2内部電極12bに対応する。
【0078】
(ステップS02:積層)
ステップS02では、準備した中央用セラミックシート101と、周縁用セラミックシート102と、カバー用セラミックシート103と、を積層することで、大判の積層シート104が形成される。
【0079】
図9に示すように、積層シート104では、中央用セラミックシート101がZ軸方向に積層される。さらに、周縁用セラミックシート102が、積層された中央用セラミックシート101のZ軸方向両側(上下)に積層される。さらに、カバー用セラミックシート103が、積層された周縁用セラミックシート102のZ軸方向両側(上下)に積層される。中央用セラミックシート101の積層体は、電極積層部16の中央領域163に対応する。周縁用セラミックシート102の積層体は、電極積層部16の周縁領域161,162に対応する。カバー用セラミックシート103の積層体は、カバー部17a,17bに対応する。
【0080】
より詳細に、中央用セラミックシート101の積層体においては、第1中央用セラミックシート101aと第2中央用セラミックシート101bとが交互に積層される。同様に、周縁用セラミックシート102の積層体においては、第1周縁用セラミックシート102aと第2周縁用セラミックシート102bとが交互に積層される。
【0081】
なお、実際には、セラミックシート101,102,103は、積層シート104におけるZ軸方向下側から順に積層されてもよい。また、各セラミックシート101,102,103の積層時、及び/又は全てのセラミックシート101,102,103の積層後に、Z軸方向から圧着してもよい。
【0082】
各セラミックシート101,102,103の積層枚数は、焼成後の各領域のZ軸方向における寸法を考慮して適宜調整される。本実施形態において、例えば、電極積層部16に対応するセラミックシート101,102の積層数は、200層以上1000層以下である。セラミックシート101,102の全ての積層数を100%とした場合の、Z軸方向上側又は下側の一方に積層される周縁用セラミックシート102の積層数の割合の下限値は、例えば10%以上、より好ましくは15%以上であり、当該割合の上限値は、例えば30%以下、より好ましくは25%以下である。つまり、ここでいう周縁用セラミックシート102の積層数は、第1周縁領域161又は第2周縁領域162の一方に対応する周縁用セラミックシート102の積層数である。セラミックシート101,102の全ての積層数を100%とした場合の、中央用セラミックシート101の積層数の割合の下限値は、例えば40%以上、より好ましくは50%以上であり、当該割合の上限値は、例えば70%以下、より好ましくは80%以下である。
【0083】
(ステップS03:切断)
ステップS03では、図9の積層シート104を切断線Lx,Lyに沿って切断する。これにより、積層シート104が個片化され、積層チップ114が形成される。積層シート104の切断には、例えば、押し切り刃や回転刃などを用いることができる。
【0084】
図10は、積層チップ114を示す斜視図である。なお、同図に示す電極層E1,E2の積層数は、模式的に示したものであり、図1~3とは異なっている。
【0085】
同図に示すように、積層チップ114は、Y軸に垂直な第1側面S1及び第2側面S2と、X軸に垂直な第1端面及び第2端面と、Z軸に垂直な第1主面及び第2主面と、を有する。側面S1,S2は、切断線Lxに対応する切断面である。端面は、切断線Lyに対応する切断面である。また、積層チップ114は、未焼成の電極層E1,E2が積層された電極積層部16に対応する領域を有する。側面S1,S2には、未焼成の電極層E1,E2の端部が露出している。
【0086】
(ステップS04:サイドマージン部形成)
ステップS04では、ステップS03で得られた積層チップ114の側面S1,S2に未焼成の第1及び第2サイドマージン部115a,115bを設ける。これにより、図11に示すように、側面S1,S2が第1及び第2サイドマージン部115a,115bによって覆われた未焼成のセラミック素体111が得られる。未焼成のセラミック素体111のサイズは、焼成後のセラミック素体11において、Z軸方向における寸法が、Y軸方向における寸法よりも大きくなるように調整される。
【0087】
サイドマージン部115a,115bの形成方法は、特に限定されない。例えば、サイドマージン部115a,115bは、側面S1,S2でセラミックシートを打ち抜くことにより、形成されてもよい。あるいは、サイドマージン部115a,115bは、セラミックスラリーを塗布又はディップすることにより、形成されてもよい。
【0088】
(ステップS05:焼成)
ステップS05では、ステップS04で得られたセラミック素体111を焼成することにより、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。このセラミック素体11では、Z軸方向における寸法が、Y軸方向における寸法よりも大きくなるように構成される。ステップS05によって、サイドマージン部115a,115bがサイドマージン部15a,15bになる。
【0089】
ステップS05における焼成温度は、セラミック素体111の焼結温度に基づいて決定することができる。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系材料を用いる場合には、焼成温度は1000~1300℃程度とすることができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0090】
本ステップにおいては、まず、焼結温度の低い電極層E1,E2から焼結が開始する。その後、焼結温度の高い誘電体セラミックスからなるカバー部17a,17b、サイドマージン部15a,15b及びセラミック層18の焼結が開始する。焼結に伴い、焼結の速い電極層E1,E2の方が、誘電体セラミックスよりも大きく収縮する。
【0091】
本実施形態では、第2電極層E2は、第1電極層E1よりも、導電性材料に対するセラミック材料の含有割合が多い。このため、Z軸方向における中央側に位置する第1電極層E1よりも、Z軸方向における周縁側に位置する第2電極層E2の方が、低い焼結性を有する。つまり、第2電極層E2は、第1電極層E1よりも緩やかに焼結が進行する。これにより、第2電極層E2の急激な収縮が抑制され、第2電極層E2と、その周囲のカバー部17a,17b及びサイドマージン部15a,15bとの間の応力が緩和される。
【0092】
また、比較的加熱されやすいZ軸方向周縁側に位置する第2電極層E2の過度な焼結が抑制される。これにより、第2電極層E2の球状化及び途切れが抑制され、これらに伴うセラミック素体11の歪みも抑制される。
【0093】
本ステップにおいては、焼結の進行に伴って、電極層E1,E2に含まれる一部のセラミック粒子が、電極層E1,E2の外部に移行することがある。但し、このようなセラミック粒子の移行量は、電極積層部16内において偏りがないと考えられる。これにより、電極層E1,E2におけるセラミック材料の含有割合と、焼成後の内部電極12a,12bのセラミック粒子の含有割合とは、ほぼ正の相関を有する。したがって、第2電極層E2のセラミック材料の含有割合を第1電極層E1よりも多くすることで、焼成後においても、周縁内部電極121,122のセラミック粒子の含有割合を、中央内部電極123よりも多くすることができる。
【0094】
(ステップS06:外部電極形成)
ステップS06では、ステップS05で得られたセラミック素体11のX軸方向両端部に外部電極13a,13bを形成することにより、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。ステップS06における外部電極13a,13bの形成方法は、公知の方法から任意に選択可能である。例えば、セラミック素体11のX軸方向両端部に導電性ぺーストを塗布し、焼き付けることで、外部電極13a,13bが形成されてもよい。また、この焼き付け膜上に、1又は複数のメッキ膜を形成してもよい。
【0095】
以上により、積層セラミックコンデンサ10が完成する。この製造方法では、電極層E1,E2が露出した積層チップ114の側面S1,S2にサイドマージン部115a,115bが形成されるため、セラミック素体11における複数の内部電極12a,12bのY軸方向の端部の位置が、0.5μm以内の範囲で揃う。
【0096】
<第2実施形態>
周縁内部電極121,122(第2電極層E2)の焼結性を低下させる方法は、第1実施形態で説明したような、周縁内部電極121,122(第2電極層E2)のセラミック粒子Pの含有割合を多くする方法に限定されない。例えば、以下で説明するように、セラミック粒子Pの平均粒径を調整することで、周縁内部電極121,122(第2電極層E2)の焼結性を低下させてもよい。
【0097】
本発明の第2実施形態における積層セラミックコンデンサは、図1図3に示す積層セラミックコンデンサ10と同様の基本構成を有するため、これらの図面を参照しつつ、同一の符号を用いて説明する。
【0098】
図3に示すように、本実施形態においても、積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11は、電極積層部16と、第1及び第2カバー部17a,17bと、を有し、Z軸方向の寸法がY軸方向の寸法よりも大きく構成される。
電極積層部16の内部電極12a,12bは、複数の第1周縁内部電極121と、複数の第2周縁内部電極122と、複数の中央内部電極123と、で構成される。
電極積層部16は、Z軸方向に沿って、第1周縁内部電極121が配置された第1周縁領域161と、中央内部電極123が配置された中央領域163と、第2周縁内部電極122が配置された第2周縁領域162と、に区分される。
【0099】
図12A,Bは、図5A,Bと同様の拡大図であり、図12Aは第1周縁領域161の一部を模式的に示し、図12Bは中央領域163の一部を模式的に示す。なお、第2周縁領域162は、第1周縁領域161と同様に構成されるため、図示を省略している。
【0100】
本実施形態において、周縁内部電極121,122と中央内部電極123との焼結性は、セラミック粒子Pの平均粒径で制御される。内部電極中のセラミック粒子Pの平均粒径を大きくすることで、内部電極中の導電体(金属)の焼結が抑制され、内部電極の焼結を遅らせることができる。これにより、内部電極の熱収縮挙動をカバー部17a,17b及びサイドマージン部15a,15bの熱収縮挙動に近づけることができ、過度な焼結及び急激な収縮を抑制することができる。
【0101】
このため、本実施形態において、周縁内部電極121,122各々は、中央内部電極123各々よりも、セラミック粒子Pの平均粒径が大きい。これにより、周縁内部電極121,122の球状化及び途切れを抑制することができる。また、焼成工程における、周縁領域161,162の急激な収縮を抑制することができる。これらの応力緩和作用により、高背型の積層セラミックコンデンサ10において特に生じやすい、周縁領域161,162とカバー部17a,17bとの境界部、及び周縁領域161,162とサイドマージン部15a,15bとの境界部近傍のクラックを効果的に抑制することができる。
【0102】
また、後述する実施例で示すように、全ての内部電極12a,12bのセラミック粒子Pの平均粒径を一律に増加させるよりも、周縁内部電極121,122のセラミック粒子Pの平均粒径を中央内部電極123と比較して増加させる方が、クラックの抑制効果を高めることができる。
【0103】
内部電極中のセラミック粒子の平均粒径は、例えば以下のように測定できる。
まず、積層セラミックコンデンのY-Z平面に平行な断面を切り出す。この断面は、積層セラミックコンデンサのX軸方向における中央部の断面とする。そして、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡を用いて、視野内に5~15層程度の内部電極が入る倍率で、電極積層部の各領域の断面を撮像する。撮像した画像から、内部電極におけるセラミック粒子の平均粒径を算出する。
【0104】
各領域のセラミック粒子の平均粒径の評価方法について説明する。例えば、電極積層部のZ軸方向最外層近傍の5~15層の内部電極について、視野中の内部電極に含まれるセラミック粒子の粒径の平均値を算出し、この平均値を周縁内部電極におけるセラミック粒子の平均粒径とする。同様に、電極積層部のZ軸方向中央部の5~15層の内部電極について、視野中の内部電極に含まれるセラミック粒子の粒径の平均値を算出し、この平均値を中央内部電極におけるセラミック粒子の平均粒径とする。なお、平均粒径は、5個以上のセラミック粒子の平均粒径であることが好ましい。算出された周縁内部電極におけるセラミック粒子の平均粒径と、中央内部電極におけるセラミック粒子の平均粒径と、を比較して、周縁内部電極におけるセラミック粒子の平均粒径の方が大きいか否か判定する。
【0105】
周縁内部電極121,122におけるセラミック粒子Pの平均粒径は、例えば、10nm以上30nm以下である。中央内部電極123におけるセラミック粒子Pの平均粒径は、例えば、5nm以上20nm以下である。また、中央内部電極123のセラミック粒子Pの平均粒径に対する、周縁内部電極121,122のセラミック粒子Pの平均粒径の倍率は、例えば、1.5倍以上5倍以下である。周縁内部電極121,122におけるセラミック粒子Pの平均粒径を大きくするためには、周縁内部電極121,122の材料に対して平均粒径の大きいセラミック粒子Pを添加すればよい。
【0106】
本実施形態のセラミックコンデンサの製造方法は、第1実施形態と同様のステップを含むことができるが、電極層E1,E2の組成が異なる。
【0107】
本実施形態において、電極層E1,E2は、セラミック粉末を含み、第2電極層E2は、第1電極層E1よりもセラミック粉末の平均粒径が大きい。具体的に、第2電極層E2におけるセラミック粉末の平均粒径は、例えば10nm以上30nm以下である。第1電極層E1におけるセラミック粉末の平均粒径は、例えば5nm以上20nm以下である。また、第1電極層E1のセラミック粉末の平均粒径に対する、第2電極層E2のセラミック粉末の平均粒径の倍率は、例えば、1.5倍以上5倍以下である。
【0108】
これにより、ステップS05の焼成工程において、Z軸方向における中央側に位置する第1電極層E1に対して、Z軸方向における周縁側に位置する第2電極層E2の焼結性を低く抑えることができる。したがって、セラミック素体11のクラックを効果的に抑制することができる。
【0109】
なお、焼結の進行に伴って、電極層E1,E2に含まれる誘電体セラミックスの粒成長が生じることで、導電性ペーストに添加したセラミック粉末の粒径と、焼成後のセラミック粒子の粒径とが異なる場合がある。一方で、導電性ペーストに添加したセラミック粉末の粒径が大きい方が、焼成後のセラミック粒子の粒径も大きくなりやすい。このため、導電性ペーストに添加したセラミック粉末の平均粒径と、焼成後のセラミック粒子の平均粒径との間には正の相関があると言える。したがって、第2電極層E2のセラミック粉末の平均粒径を第1電極層E1よりも大きくすることで、焼成後においても、周縁内部電極121,122のセラミック粒子Pの平均粒径を中央内部電極123よりも大きく調整することができる。
【0110】
<第3実施形態>
また、内部電極の厚みを調整することで、焼結性を調整することもできる。
以下、上述の第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0111】
図13は、本発明の第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサ30の断面図であり、図3と同様の位置における断面を示す。図13に示すように、積層セラミックコンデンサ30のセラミック素体31は、電極積層部36と、カバー部17a,17bと、サイドマージン部15a,15bと、を有し、Z軸方向の寸法TがY軸方向の寸法Wよりも大きく構成される。
【0112】
電極積層部36の内部電極32a,32bは、複数の第1周縁内部電極321と、複数の第2周縁内部電極322と、複数の中央内部電極323と、で構成される。
電極積層部36は、Z軸方向に沿って、第1周縁内部電極321が配置された第1周縁領域361と、中央内部電極323が配置された中央領域363と、第2周縁内部電極322が配置された第2周縁領域362と、に区分される。
【0113】
本実施形態において、周縁内部電極321,322と中央内部電極323との焼結性は、各内部電極32a,32bの厚みで制御される。内部電極32a,32bの厚みを大きくすることで、内部電極32a,32bの焼結を遅らせることができる。これにより、内部電極32a,32bの焼結挙動をカバー部17a,17b及びサイドマージン部15a,15bの焼結挙動に近づけることができる。
【0114】
図14A,Bは、図13に示す電極積層部36の拡大図であり、図14Aは第1周縁領域361の一部を模式的に示し、図14Bは中央領域363の一部を模式的に示す。なお、第2周縁領域362は、第1周縁領域361と同様に構成されるため、図示を省略している。
【0115】
本実施形態において、周縁内部電極321,322各々は、中央内部電極323各々よりもZ軸方向に厚く構成される。例えば、図14A,Bを参照し、第1周縁内部電極321のZ軸方向における厚みD1は、中央内部電極323のZ軸方向における厚みD2よりも厚い。これにより、周縁内部電極321,322の球状化及び途切れを抑制することができる。また、焼成工程における、周縁領域361,362の急激な収縮を抑制することができる。これらの応力緩和作用により、高背型の積層セラミックコンデンサ10において特に生じやすい、周縁領域361,362とカバー部17a,17bの境界部近傍、及び周縁領域361,362とサイドマージン部15a,15bの境界部近傍のクラックを効果的に抑制することができる。
【0116】
本実施形態において、各内部電極32a,32bの厚みは、第1実施形態で説明した方法で測定することができる。具体的に、周縁内部電極321,322各々の厚みは、例えば、0.2μm以上1.5μm以下である。中央内部電極323各々の厚みは、例えば、0.1μm以上1.0μm以下である。中央内部電極323各々の厚みに対する周縁内部電極321,322各々の厚みの倍率は、例えば、1.5倍以上3.0倍以下である。
【0117】
なお、本実施形態において、内部電極32a,32bは、セラミック粒子を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。内部電極32a,32bがセラミック粒子を含む場合には、周縁内部電極321,322各々のセラミック粒子の含有割合は、中央内部電極323各々のセラミック粒子の含有割合以上であることが好ましい。また、この場合には、周縁内部電極321,322各々のセラミック粒子の平均粒径は、中央内部電極323各々のセラミック粒子の平均粒径以上であることが好ましい。
【0118】
本実施形態のセラミックコンデンサの製造方法は、第1実施形態と同様のステップを含むことができるが、電極層E1,E2の形成方法が異なる。
本実施形態において、第2電極層E2は、第1電極層E1よりも厚く形成される。例えば、第2電極層E2の導電性ペーストの塗布厚みを、第1電極層E1の導電性ペーストの塗布厚みよりも厚くすることができる。
具体的に、第2電極層E2各々の塗布厚みは、例えば、0.25μm以上2.0μm以下である。第1電極層E1各々の塗布厚みは、例えば、0.12μm以上1.5μm以下である。第1電極層E1各々の塗布厚みに対する第2電極層E2各々の塗布厚みの倍率は、例えば、1.5倍以上3.0倍以下である。
【0119】
これにより、ステップS05の焼成工程において、Z軸方向周縁側に位置する第2電極層E2の焼結性を、Z軸方向中央側に位置する第1電極層E1の焼結性よりも低く抑えることができる。したがって、セラミック素体31のクラックを効果的に抑制することができる。
【0120】
<他の実施形態>
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば本発明の実施形態は各実施形態を組み合わせた実施形態とすることができる。
【0121】
周縁内部電極と中央内部電極(第2電極層)との焼結性を制御する手段は、上述の例に限定されない。例えば、中央内部電極(第1電極層)が、周縁内部電極(第2電極層)よりも焼結助剤を多く含むことで、周縁内部電極(第2電極層)の焼結性を中央内部電極の焼結性よりも低下させることができる。焼結助剤としては、公知の焼結助剤を用いることができ、例えば、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)等が挙げられる。
【0122】
あるいは、第2電極層に含まれる導電体粉末の平均粒径を、第1電極層に含まれる導電体粉末の平均粒径よりも大きくしてもよい。導電体粉末の粒径を大きくすることで、導電体粉末の単位体積(又は単位質量)当たりの表面積を小さくすることができる。つまり、導電体粉末の粒径を大きくすることで、導電体粉末が焼けにくくなり、焼結性を低下させることができる。
【0123】
また、積層セラミックコンデンサの製造方法において、ステップS06の外部電極の形成工程の一部を、ステップS05の焼成工程の前に行ってもよい。例えば、ステップS06の外部電極を形成するための導電性ペーストの塗布を、ステップS05の前に行い、セラミック素体11の焼結と、外部電極の焼付とを同時に行ってもよい。
【0124】
さらに、本発明は、積層セラミックコンデンサのみならず、積層体と一対のサイドマージン部とを有する積層セラミック電子部品全般に適用可能である。本発明を適用可能な積層セラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサ以外に、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【実施例0125】
[試験例1]
試験例1として、本発明の第1実施形態の実施例について説明する。なお、以下の説明において、「部」は「質量部」を示す。
【0126】
まず、組成の異なる複数の導電性ペーストA~Fを準備した。導電性ペーストA~Fは、Niからなる導電体粉末と、有機溶剤等の有機ビヒクルと、を含み、さらに、導電体粉末100質量部に対して0~25質量部のセラミック粉末を含むものとした。導電体粉末の平均粒径は、150nmとした。セラミック粉末は、チタン酸バリウムを主成分とするものであり、この平均粒径は、30nmとした。
導電性ペーストA~Fにおけるセラミック粉末の含有割合を、表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
積層セラミックコンデンサの各サンプルを、上述の製造方法に基づいて作製した。
まず、チタン酸バリウムを主成分とする複数のセラミックグリーンシートを作製した。このセラミックグリーンシートのセラミック粉末の平均粒径は約150nmとした。中央用セラミックシートとして、セラミックグリーンシート上に、導電性ペーストA~Fのうちの1種類を印刷し、この印刷膜を第1電極層とした。同様に、周縁用セラミックシートとして、セラミックグリーンシート上に、導電性ペーストA~Fのうちの1種類を印刷し、この印刷膜を第2電極層とした。カバー用セラミックシートとして、導電性ペーストを印刷していないセラミックグリーンシートを準備した。各サンプルで用いた導電性ペーストの種類を、表2に示す。
【0129】
【表2】
【0130】
サンプル1-1~1-14のうち、第2電極層におけるセラミック粉末の含有割合が、第1電極層におけるセラミック粉末の含有割合よりも大きいサンプル1-2,1-4,1-5,1-9,1-11,1-12,1-14が、本実施形態の実施例に相当する。その他のサンプルが、本実施形態の比較例に相当する。
【0131】
続いて、所定の枚数のカバー用セラミックシート、130層の周縁用セラミックシート、390層の中央用セラミックシート、130層の周縁用セラミックシート、所定の枚数のカバー用セラミックシートを積層して積層シートを作製した。この積層シートに対してステップS03~S06の各工程を行い、積層セラミックコンデンサのサンプルを作製した。
【0132】
各サンプルは、X軸方向における寸法が1.0mm、Y軸方向における寸法が0.5mm、Z軸方向における寸法が0.8mmとなるように作製された。また、焼成後のセラミック層及び内部電極の平均厚みはいずれも約0.6μm、カバー部の厚みは35μmとした。
【0133】
作製された積層セラミックコンデンサの各サンプルの6面全てを外観検査し、クラックの発生の有無について評価した。この結果を、表2に示す。
【0134】
表2に示すように、第2電極層におけるセラミック粉末の含有割合が、第1電極層におけるセラミック粉末の含有割合以下である、サンプル1-1,1-3,1-6,1-7,1-8,1-10,1-13では、クラックが発生した。これに対し、第2電極層におけるセラミック粉末の含有割合が、第1電極層におけるセラミック粉末の含有割合よりも大きい、サンプル1-2,1-4,1-5,1-9,1-11,1-12,1-14では、クラックは発生しなかった。これにより、第2電極層におけるセラミック粉末の含有割合を、第1電極層におけるセラミック粉末の含有割合よりも多くすることで、クラックの発生を抑制できることがわかった。
【0135】
[試験例2]
試験例2として、本発明の第2実施形態の実施例について説明する。
【0136】
まず、組成の異なる複数の導電性ペーストC,G,Hを準備した。なお、導電性ペーストCは、試験例1で用いた導電性ペーストCと同一である。
導電性ペーストC,G,Hは、Niからなる導電体粉末と、有機溶剤等の有機ビヒクルと、を含み、さらに、導電体粉末100質量部に対して10質量部のセラミック粉末を含むものとした。導電性ペーストC,G,Hは、平均粒径の異なるセラミック粉末を含むものとした。導電性ペーストA~Fにおける導電体粉末及びセラミック粉末の平均粒径を、表3に示す。
【0137】
【表3】
【0138】
積層セラミックコンデンサの各サンプルを、試験例1と同様に作製した。各サンプルで用いた導電性ペーストの種類を、表4に示す。サンプル2-1~2-7のうち、第2電極層におけるセラミック粉末の平均粒径が、第1電極層におけるセラミック粉末の平均粒径よりも大きいサンプル2-2,2-3,2-5が、本実施形態の実施例に相当する。その他のサンプルが、本実施形態の比較例に相当する。
【0139】
【表4】
【0140】
作製された積層セラミックコンデンサの各サンプルの6面全てを外観検査し、クラックの発生の有無について評価した。この結果を、表4に示す。
【0141】
表4に示すように、第2電極層におけるセラミック粉末の平均粒径が、第1電極層におけるセラミック粉末の平均粒径以下である、サンプル2-1,2-4,2-6,2-7では、クラックが発生した。これに対し、第2電極層におけるセラミック粉末の平均粒径が、第1電極層におけるセラミック粉末の平均粒径よりも大きい、サンプル2-2,2-3,2-5では、クラックは発生しなかった。これにより、第2電極層におけるセラミック粉末の平均粒径を、第1電極層におけるセラミック粉末の平均粒径よりも大きくすることで、クラックの発生を抑制できることがわかった。
【0142】
[試験例3]
試験例3として、本発明の第3実施形態の実施例について説明する。
【0143】
試験例1及び2で用いた導電性ペーストCを準備した。そして、積層セラミックコンデンサのサンプル3-1~3-5を、試験例1と同様に作製した。但し、サンプル3-1~3-5では、第1及び第2電極層における導電性ペーストCの塗布厚みを、表5に示すように設定した。また、各サンプルの第1電極層と第2電極層の積層数も、表5に示すように設定した。サンプル3-1~3-5のうち、第2電極層の塗布厚みが第1電極層の塗布厚みよりも厚いサンプル3-1,3-2が、本実施形態の実施例に相当する。その他のサンプルが、本実施形態の比較例に相当する。
【0144】
【表5】
【0145】
作製された積層セラミックコンデンサの各サンプルの6面全てを外観検査し、クラックの発生の有無について評価した。この結果を、表5に示す。
【0146】
表5に示すように、第2電極層における導電性ペーストの塗布厚みが、第1電極層における導電性ペーストの塗布厚み以下である、サンプル3-3,3-4,3-5では、クラックが発生した。これに対し、第2電極層における導電性ペーストの塗布厚みが、第1電極層における導電性ペーストの塗布厚みよりも厚い、サンプル3-1,3-2では、クラックは発生しなかった。これにより、第2電極層における導電性ペーストの塗布厚みを、第1電極層における導電性ペーストの塗布厚みよりも厚くすることで、クラックの発生を抑制できることがわかった。
【符号の説明】
【0147】
10,30 積層セラミックコンデンサ
11,31 セラミック素体
12a,12b,32a,32b 内部電極
121,321 第1周縁内部電極
122,322 第2周縁内部電極
123,323 中央内部電極
13a,13b 外部電極
15a,15b サイドマージン部
16,36 電極積層部
161,361 第1周縁領域
162,362 第2周縁領域
163,363 中央領域
17a,17b カバー部
18 セラミック層
R セラミック粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14